説明

遠隔入力装置

【課題】複雑な処理、制御を必要とせずに、メニュー画面上の反力エリアの中心にポインタを移動させ易く、操作性に優れた遠隔入力装置を提供する。
【解決手段】メニュー表示が表示される表示部300と、入力スイッチ190、位置検出部としてのX軸エンコーダ170とY軸エンコーダ175、および、2次元駆動部としてのX軸モータ150とY軸モータ155を備え、表示部300上へポインタを表示して遠隔入力操作する遠隔操作部100と、メニュー表示の座標に対応した力覚パターン及びポインタの位置座標に基づく反力並びにポインタの移動方向と逆向きに作用するブレーキ力を遠隔操作部100に力覚として付与する駆動部201と、ブレーキ力を時間に比例して低減調整する調整部202を備える操作制御部としての制御ECU200と、を有して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遠隔入力装置において、操作者によって操作される操作部に操作感を付与するものとして、力覚付与型の遠隔入力装置がある(例えば、特許文献1参照)。この遠隔入力装置は、操作者によって操作される操作部と、操作状態を検出する検出部と、操作部に力覚を付与するアクチュエータと、メニュー画面等の仮想平面及び仮想平面上に設定される操作ボタン等の複数の反力エリアを記憶する記憶手段と、検出部の出力信号に基づき仮想平面上におけるポインタを反力エリアに向かわせるようにアクチュエータの駆動制御を行う制御部とを有して構成されている。
【0003】
この遠隔入力装置によれば、制御部は、反力エリア内にポインタを引き込む目標位置として引込中心を設定し、ポインタが反力エリア内に進入したとき、ポインタを引込中心に向かわせるようにアクチュエータの駆動制御を行う。さらに、ポインタが進入する方向に応じて、進入方向と逆向きに反力エリア内の引込中心を移動し、所定の時間が経過すると引込中心を元の目標位置に戻すよう制御する。このため、ポインタが目標位置を通り過ぎることを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−108062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に示す遠隔入力装置は、所定の時間の経過前にポインタが目標位置と異なる移動された引込中心に停止した場合、所定の時間の経過後に、操作者の操作によることなく目標位置に向かってポインタを移動するようアクチュエータを駆動制御することとなるため、操作者の操作に違和感を与えることがあった。
【0006】
従って、本発明の目的は、メニュー画面上の反力エリアの中心にポインタを移動させ易く、操作性に優れた遠隔入力装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、メニュー表示が表示される表示部と、入力スイッチ、位置検出部、および、2次元駆動部を備え、前記表示部上へポインタを表示して遠隔入力操作する遠隔操作部と、前記メニュー表示の座標に対応した力覚パターン及び前記ポインタの位置座標に基づく第1の反力並びに前記ポインタの移動に基づく第2の反力を前記遠隔操作部に力覚として付与する駆動部と、前記メニュー表示上の前記第1の反力が作用する位置に前記ポインタが滞在した時間に基づいて前記第2の反力を低減調整する調整部を備える操作制御部と、を有することを特徴とする遠隔入力装置を提供する。
【0008】
上記遠隔入力装置の前記調整部は、前記メニュー表示上の前記第1の反力が作用する位置に前記ポインタが滞在した時間に基づいて前記第2の反力を低減調整して、予め定めた時間経過後に前記第2の反力を力覚として付与しないようにしてもよい。
【0009】
上記遠隔入力装置の前記第2の反力は、前記ポインタの進入方向と逆向きに作用するもの又は前記ポインタの移動方向と逆向きに移動速度に比例して作用するものであってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、メニュー画面上の反力エリアから他の選択ボタンにポインタを移動させ易く、操作性に優れた遠隔入力装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態に係る遠隔入力装置を構成する表示部、遠隔操作部が車両のセンターコンソールに装着された斜視図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態に係る遠隔入力装置を構成する遠隔操作部を示す斜視図である。
【図3】図3は、本発明の第1の実施の形態に係る遠隔入力装置の構成ブロック図である。
【図4】図4は、本発明の第1の実施の形態に係る遠隔入力装置1における表示部300に表示された表示メニュー例である。
【図5】図5は、本発明の第1の実施の形態に係る遠隔入力装置1における表示部300に表示された表示メニュー上での反力エリアと反力が働く方向を矢印で示した図であり、(b)は、表示メニュー画面に対応するX位置とX方向の反力レベルの関係を示す基本力覚パターン例であり、(c)は、表示メニュー画面に対応するY位置とY方向の反力レベルの関係を示す基本力覚パターン例であり、また、(d)は、表示メニュー画面に対応するX位置とポインタ320の移動方向と逆向きに働くブレーキ力の関係を示す基本力覚パターン例である。
【図6】図6(a)は、本発明の実施の形態に係る遠隔入力装置1のブレーキ力調整のための係数kの時間に対する特性を示すグラフ図であり、図6(b)は、ポインタがX方向に移動している場合であって、アイコンの反力エリアに進入した時点(t=0)におけるX方向の反力レベルの関係を示す力覚パターン例であり、図6(c)は、ポインタがX方向に移動している場合であって、アイコンの反力エリアに進入してから時間t=t1が経過した時点におけるX方向の反力レベルの関係を示す力覚パターン例であり、図6(d)は、アイコンの反力エリアに進入してから時間t=trefが経過した時点におけるX方向の反力レベルの関係を示す力覚パターン例である。
【図7】図7は、本発明の第2の実施の形態に係る遠隔入力装置1における表示部300に表示された表示メニュー上での反力エリアと反力が働く方向を矢印で示した図であり、(b)は、表示メニュー画面に対応するX位置とX方向の反力レベルの関係を示す基本力覚パターン例であり、また、(c)は、表示メニュー画面に対応するX位置とポインタ320の移動方向と逆向きに働くブレーキ力の関係を示す基本力覚パターン例である。
【図8】図8(a)は、ポインタがX方向に移動している場合であって、アイコンの反力エリアに進入した時点(t=0)におけるX方向の反力レベルの関係を示す力覚パターン例であり、図8(b)は、ポインタがX方向に移動している場合であって、アイコンの反力エリアに進入してから時間t=t1が経過した時点におけるX方向の反力レベルの関係を示す力覚パターン例であり、図8(c)は、アイコンの反力エリアに進入してから時間t=trefが経過した時点におけるX方向の反力レベルの関係を示す力覚パターン例である。
【図9】図9は、本発明の第3の実施の形態に係る遠隔入力装置1における表示部300に表示された表示メニュー上での反力エリアと反力が働く方向を矢印で示した図であり、(b)は、表示メニュー画面に対応するX位置とX方向の反力レベルの関係を示す基本力覚パターン例であり、また、(c)は、表示メニュー画面に対応するX位置とポインタ320の移動方向と逆向きに働くブレーキ力の関係を示す基本力覚パターン例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施の形態)
本発明の実施の形態に係る遠隔入力装置1は、メニュー表示が表示される表示部300と、入力スイッチ190、位置検出部としてのX軸エンコーダ170とY軸エンコーダ175、および、2次元駆動部としてのX軸モータ150とY軸モータ155を備え、表示部300上へポインタを表示して遠隔入力操作する遠隔操作部100と、メニュー表示の座標に対応した力覚パターン及びポインタの位置座標に基づく反力並びにポインタの移動方向と逆向きに作用するブレーキ力を遠隔操作部100に力覚として付与する駆動部201と、ブレーキ力を時間に比例して低減調整する調整部202を備える操作制御部としての制御ECU200と、を有して構成されている。
【0013】
ポインタによる選択、決定で特定の機能を実行するメニュー表示上の特定範囲を反力エリアという。例えば、特定の機能を実行するアイコン、また、そのアイコンの周辺領域で一定の機能が割り当てられた領域である。力覚パターンは、この反力エリアがメニュー表示に対応して形成された2次元データプロファイルである。具体的には、メニュー表示に対応して、X方向、Y方向距離Sと反力レベルFとの関係(F−S特性)が規定され、力覚パターンとして定義されている。このF−S特性は、記憶部に数値データ、テーブルとして格納され、所定の処理時に適宜参照される。
【0014】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る遠隔入力装置1を構成する遠隔操作部100が車両のセンターコンソール6に装着された場合の斜視図である。運転席5の左方で車両の中央付近に遠隔操作部100が設けられたセンターコンソール6が配置され、インスツルメントパネル8でステアリング7の左方、運転者から視認できる位置に表示部300が設けられている。
【0015】
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る遠隔入力装置1を構成する遠隔操作部100を示す斜視図である。遠隔操作部100には、ベース110およびベース110を覆うカバー111と、運転者が操作できるようにこのカバー111から突出して取付けられた操作ノブ120が設けられている。この操作ノブ120は、ベース110に取付けられたXY球面軸受1254に一端が支持されたノブシャフト125に取り付けられている。
【0016】
X方向にはノブシャフト125と当接しY方向にはノブシャフト125と摺動するX方向へスライド移動可能なXキャリッジ140と、Xキャリッジ140と直交しY方向にはノブシャフト125と当接しX方向にはノブシャフト125と摺動するY方向へスライド移動可能なYキャリッジ145により、2次元スライド機構が構成されている。操作ノブ120のXY操作により、ノブシャフト125はこの2次元スライド機構をX方向およびY方向に移動させる。
【0017】
一方、Xキャリッジ140、Yキャリッジ145は、それぞれの両端がX軸スライドガイド180とY軸スライドガイド185にそれぞれ支持されている。それぞれの一端側にはX軸ラックギア130、Y軸ラックギア135が取付けられており、このラックギアはベース110側に装着されたX軸モータ150、Y軸モータ155と歯合して、各モータから力覚パターンに基づいた反力を受ける。
【0018】
上記の反力は、2次元スライド機構およびノブシャフト125を介してX軸モータ150、Y軸モータ155からの力を操作ノブ120に作用させて反力を呈示する。すなわち、遠隔操作部100に対して力覚制御を行い、操作者が操作ノブ120を操作する際に適度な操作感覚を付与する。
【0019】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る遠隔入力装置1の構成ブロック図である。遠隔操作部100は、入力スイッチ190、位置検出部としてのX軸エンコーダ170とY軸エンコーダ175、および、2次元駆動部としてのX軸モータ150とY軸モータ155を備える。入力スイッチ190、X軸エンコーダ170、Y軸エンコーダ175、および、X軸モータ150、Y軸モータ155は、いずれも制御ECU200と接続されている。
【0020】
入力スイッチ190は、操作ノブ120の押圧操作によりスイッチONされて、制御ECU200にスイッチ信号を出力する。また、X軸エンコーダ170とY軸エンコーダ175は、操作ノブ120のXY操作によるX方向移動信号およびY方向移動信号を制御ECU200に出力する。一方、X軸モータ150、Y軸モータ155には、制御ECU200から力覚制御のための駆動電流が供給される。
【0021】
制御ECU200は、主に判断処理を行なうマイコン(CPU)、処理演算プログラム、メニュー画面の位置データ、力覚付与のための力覚パターン等を記憶しておく記憶部、演算処理の作業領域としてのRAM等から構成される。また、X軸モータ150とY軸モータ155をドライブするための駆動部201、後述する反力調整のための調整部202を備えている。この制御ECU200は表示部300に接続され、メニュー画面の位置データに基づいて表示部300にメニュー表示を行なうと共に、操作ノブ120のXY操作によるポインタを表示部300に表示する。
【0022】
また、制御ECU200は、CAN通信等の車載LANの車両通信バス400を介して制御対象機器、例えば、カーナビ装置401、エアコン装置402等と接続されている。これにより、表示部300に表示されたメニュー表示に対する遠隔操作部100の操作に基づいて、車両通信バス400を介して制御対象機器、例えば、カーナビ装置401、エアコン装置402等が遠隔制御される。
【0023】
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る遠隔入力装置1における表示部300に表示された表示メニュー例である。
【0024】
図4において、左上に原点Oをとり、右方向にX軸、下方向にY軸とする。表示メニュー310の上段には、エアコン装置402の3段階の風量調節のためのアイコン311、312、313が並んで表示され、下段には、3段階の温度調節のためのアイコン314、315、316が並んで表示されている。反力エリアは、アイコン311〜316、および、アイコンを取り巻く周辺領域317に区画されたエリアである。
【0025】
アイコン311〜313は、ポインタによる選択、決定によってエアコン装置402の3段階の風量調節の機能が割り当てられている。一方、アイコン314〜316は、ポインタによる選択、決定によってエアコン装置402の3段階の温度調節の機能が割り当てられている。周辺領域317は、ポインタによる選択、決定によって特定の機能が実行される設定とはされていない。
【0026】
図5は、本発明の第1の実施の形態に係る遠隔入力装置1における表示部300に表示された表示メニュー上での反力エリアと反力が働く方向を矢印で示した図であり、(b)は、表示メニュー画面に対応するX位置とX方向の反力レベルの関係を示す基本力覚パターン例であり、(c)は、表示メニュー画面に対応するY位置とY方向の反力レベルの関係を示す基本力覚パターン例であり、また、(d)は、表示メニュー画面に対応するX位置とポインタ320の移動方向と逆向きに働くブレーキ力の関係を示す基本力覚パターン例である。
【0027】
各反力エリア(311〜316、317)には、図5(a)に代表して示すように、それぞれ同様のパターンにより反力が作用する。すなわち、アイコン311〜316の各反力エリアでは、それぞれのアイコン中心に引き込むような反力が作用する。周辺領域317の反力エリアでは、反力は作用しない。
【0028】
図5(b)に示すように、X方向について、例えば、アイコン315の左側エッジ領域X1では、左側からポインタ320をアイコン中心方向へ移動させる場合、右側へ引込むために反力レベルはマイナス値Fxmに力覚パターンが設定されている。一方、アイコン315の右側エッジ領域X3では、右側からポインタ320をアイコン中心方向へ移動させる場合、左側へ引込むために反力レベルはプラス値Fxpに力覚パターンが設定されている。尚、上記の力覚パターンは図に示したように台形状に設定されているが、矩形状でもよく、また、角部を曲線状にした力覚パターン等でもよい。
【0029】
Y方向についても同様である。図5(c)に示すように、アイコン315の上側エッジ領域Y1では、上側からポインタ320をアイコン中心方向へ移動させる場合、下側へ引込むために反力レベルはマイナス値Fymに力覚パターンが設定されている。一方、アイコン315の下側エッジ領域Y3では、下側からポインタ320をアイコン中心方向へ移動させる場合、上側へ引込むために反力レベルはプラス値Fypに力覚パターンが設定されている。尚、上記の力覚パターンは図に示したように台形状に設定されているが、矩形状でもよく、また、角部を曲線状にした力覚パターン等でもよい。
【0030】
図5(d)に示すように、ポインタ320がアイコン315の左側エッジ領域X1から右向きに進入し、右側エッジ領域X3まで移動した場合、一定のブレーキ力F=Fb1が生じるよう設定されている。すなわち、図5(b)に示す力覚パターンと図5(d)に示す力覚パターンを足し合わせた反力が作用する。また、ポインタ320がアイコン315の右側エッジ領域X3から左向きに進入し、左側エッジ領域X1まで移動した場合、図5(b)に示す力覚パターンから図5(d)に示す力覚パターンを減じた反力が作用する。また、Y方向においてもポインタ320の進入方向に基づいてアイコン314の反力エリア内で同様のブレーキ力が作用するものとする。
【0031】
尚、図5(b)〜(d)に説明した力覚パターンは、他のアイコン311〜316においても同様に適用される。
【0032】
(本発明の第1の実施の形態に係る遠隔入力装置1の動作)
以下に、遠隔入力装置1の力覚制御時の反力の調整制御の動作を説明する。
【0033】
まず、制御ECU200は、ポインタ320の位置及び移動状態を判断する。すなわち、ポインタ320がアイコン等の特定の反力エリア(アイコン311〜316、周辺領域317)内を移動しているかどうかを判断する。移動状態の判断は、制御ECU200がX軸エンコーダ170、Y軸エンコーダ175から入力されるパルスをカウントし、一定時間内のパルスカウント値が閾値以下であるかどうかで判断することができる。
【0034】
ポインタ320の位置する反力エリア(アイコン311〜316、周辺領域317)に基づき、反力Fxi、Fyiを力覚パターンから求め、また、ポインタ320の移動方向と逆方向に作用するブレーキ力FBを求める。さらに、ブレーキ力FBにブレーキ力有効割合を示す係数k(<1)を乗じて、反力Fxi、Fyiと足し合わせた合力を反力とする。例えば、ポインタ320がx方向に移動している場合は、ポインタ320へ合力Fxi+kFの反力の呈示を行なう。
【0035】
図6(a)は、本発明の実施の形態に係る遠隔入力装置1のブレーキ力調整のための係数kの時間に対する特性を示すグラフ図である。
【0036】
図6(a)に示すように、係数kは、ポインタ320がアイコン314領域内に進入してから経過した時間tに比例して減少し、予め定めた時間t=trefにおいてk=0となるよう定義される。尚、ブレーキ有効係数kは、時間とともに減少するものであれば、非線型に振る舞うものでもよい。また、本発明の実施の形態では、反力エリアのうち、アイコン311〜316に限定して上記のブレーキ力の呈示及び調整制御を行なう。
【0037】
ここで、図6(b)は、ポインタ320がX方向に移動している場合であって、アイコン315の反力エリアに進入した時点(t=0)におけるX方向の反力レベルの関係を示す力覚パターン例である。図6(a)に示すように、t=0の時点においてブレーキ力有効割合k=1であるため、反力レベルFxは、図5(b)に示す力覚パターンにブレーキ力FB1を加えたものとなる。すなわち、反力レベルFx=0となる位置(引込中心)が目標位置X2からX4に変化する。
【0038】
次に、図6(c)は、ポインタ320がX方向に移動している場合であって、アイコン315の反力エリアに進入してから時間t=tが経過した時点におけるX方向の反力レベルの関係を示す力覚パターン例である。図6(a)に示すように、t=tの時点においてブレーキ力有効割合k=k1(0<k1<1)であるため、反力レベルFxは、図5(b)に示す力覚パターンにk1・Fb1を加えたものとなる。すなわち、反力レベルFx=0となる位置(引込位置)がX4からX5に変化する。
【0039】
次に、図6(d)は、アイコン315の反力エリアに進入してから時間t=trefが経過した時点におけるX方向の反力レベルの関係を示す力覚パターン例である。図6(a)に示すように、t=trefの時点においてブレーキ力有効割合k=0であるため、反力レベルFxは、図5(b)に示す力覚パターンと一致し、反力レベルFx=0となる位置がX2に戻る。
【0040】
尚、以上の説明において、ポインタがY方向に移動している状態では、Y方向に同様にブレーキ力調整制御が行われる。
【0041】
駆動部201は、上記演算による反力に対応する駆動電流を、X軸モータ150、Y軸モータ155に供給し、操作ノブ120に反力呈示を行なう。これにより、以上の一連の動作において、trefを、適切な値に設定することで、ポインタ320がアイコン315に差し掛かったときに、ポインタ320の移動方向と逆向きに適度にブレーキ力が作用し、目標位置と異なる引込中心X4にポインタ320を停止することなく又ポインタ320がX4からX2に操作者の操作によることなく移動するといった、操作ノブ120に対する不自然な反力呈示が生じにくくなる。
【0042】
(本発明の第1の実施の形態の効果)
アイコンの中心に向かう反力とともに、ポインタ320の移動方向と逆向きにブレーキ力を作用させ、そのブレーキ力をポインタ320がアイコンに進入してからの時間とともに減少させる構成としたため、アイコンの引込中心が進入時は進入方向と逆向きに移動し、時間とともにアイコンの中心へ移動することとなり、ポインタ320がアイコンの中心を通り過ぎることなく、かつポインタ320がアイコンの中心より手前の位置に停止することなく、さらには操作者の操作に違和感を与えることなくポインタ320をアイコンの中心に案内することができる。
【0043】
(第2の実施の形態)
図7は、本発明の第2の実施の形態に係る遠隔入力装置1における表示部300に表示された表示メニュー上での反力エリアと反力が働く方向を矢印で示した図であり、(b)は、表示メニュー画面に対応するX位置とX方向の反力レベルの関係を示す基本力覚パターン例であり、また、(c)は、表示メニュー画面に対応するX位置とポインタ320の移動方向と逆向きに働くブレーキ力の関係を示す基本力覚パターン例である。第2の実施の形態は、ブレーキ力の力覚パターンがアイコン内の位置によって変化する点で第1の実施の形態と異なる。
【0044】
図7(c)に示すように、ブレーキ力Fは、アイコン315の左端X1から中心X2に近づくに従って増加する。尚、この力覚パターンは、ポインタ320がアイコン315の左端X1から進入する場合のものであり、アイコン315の右端X3から進入する場合は、右端X3から中心X2に近づくに従って増加するものとなる。また、ブレーキ力Fは、ブレーキ有効割合kに応じて時間とともに減少する。
【0045】
(第2の実施の形態に係る遠隔入力装置1の動作)
図8(a)は、ポインタ320がX方向に移動している場合であって、アイコン315の反力エリアに進入した時点(t=0)におけるX方向の反力レベルの関係を示す力覚パターン例である。図6(a)に示すように、t=0の時点においてブレーキ力有効割合k=1であるため、反力レベルFxは、図7(b)に示す力覚パターンに図7(c)ブレーキ力Fb2を加えたものとなる。すなわち、反力レベルFx=0となる位置(引込中心)が目標位置X2及びX6に現れる。
【0046】
次に、図8(b)は、ポインタ320がX方向に移動している場合であって、アイコン315の反力エリアに進入してから時間t=tが経過した時点におけるX方向の反力レベルの関係を示す力覚パターン例である。図6(a)に示すように、t=tの時点においてブレーキ力有効割合k=k1(0<k1<1)であるため、反力レベルFxは、図7(b)に示す力覚パターンにk1・Fb2を加えたものとなる。すなわち、反力レベルFx=0となる位置(引込位置)がX6からX7に変化する。
【0047】
次に、図8(c)は、アイコン315の反力エリアに進入してから時間t=trefが経過した時点におけるX方向の反力レベルの関係を示す力覚パターン例である。図6(a)に示すように、t=trefの時点においてブレーキ力有効割合k=0であるため、反力レベルFxは、図7(b)に示す力覚パターンと一致し、反力レベルFx=0となる位置がX2のみとなる。
【0048】
(本発明の第2の実施の形態の効果)
第1の実施の形態と異なる力覚パターンを有するブレーキ力を呈示する場合であっても、第1の実施の形態と同様の効果を奏する。すなわち、アイコンの引込中心が最初は進入方向と逆向きに移動し、時間とともにアイコンの中心へ移動することとなり、ポインタ320がアイコンの中心を通り過ぎることなく、ポインタ320がアイコンの中心より手前の位置に停止することなく、さらには操作者の操作に違和感を与えることなくポインタ320をアイコンの中心に案内することができる。
【0049】
(第3の実施の形態)
図9は、本発明の第3の実施の形態に係る遠隔入力装置1における表示部300に表示された表示メニュー上での反力エリアと反力が働く方向を矢印で示した図であり、(b)は、表示メニュー画面に対応するX位置とX方向の反力レベルの関係を示す基本力覚パターン例であり、また、(c)は、表示メニュー画面に対応するX位置とポインタ320の移動方向と逆向きに働くブレーキ力の関係を示す基本力覚パターン例である。第3の実施の形態は、ブレーキ力に換えてアイコンの移動速度に応じて作用する粘性抵抗力を呈示する点で第1の実施の形態と異なる。
【0050】
図9(c)に示すように、粘性抵抗力を生じさせる粘性係数μは、アイコン315の左端X1から右端X3にかけて一定である。尚、粘性抵抗力は、ポインタ320の速度と粘性係数μとを乗じて求められ、ポインタ320の進行方向と逆向きに作用する。また、粘性抵抗力は、第1の実施の形態のブレーキ力有効割合kを粘性抵抗力有効割合として準用して時間とともに減少する。
【0051】
(本発明の第3の実施の形態の効果)
ブレーキ力に換えてポインタ320の速度に比例する粘性抵抗力を呈示するため、粘性抵抗有効割合kの時間依存性に加えて、粘性抵抗力の速度依存性が引込中心の目標位置への移動に寄与し、ポインタ320がアイコンに進入して時間が経過するにつれて、ポインタ320の移動速度が低下するにつれて反力が減少する。すなわち、より操作者の操作に違和感を与えることなくポインタ320をアイコンの中心に案内することができる。
【0052】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されず、本発明の技術思想を逸脱あるいは調整しない範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1…遠隔入力装置、5…運転席、6…センターコンソール、7…ステアリング、8…インスツルメントパネル、100…遠隔操作部、110…ベース、111…カバー、120…操作ノブ、124…球面軸受、125…ノブシャフト、125…球面軸受、130…X軸ラックギア、135…Y軸ラックギア、140…Xキャリッジ、145…Yキャリッジ、150…X軸モータ、155…Y軸モータ、170…X軸エンコーダ、175…Y軸エンコーダ、180…X軸スライドガイド、185…Y軸スライドガイド、190…入力スイッチ、200…制御ECU、201…駆動部、202…調整部、300…表示部、310…表示メニュー、311〜316…アイコン、317…周辺領域、320…ポインタ、400…車両通信バス、401…カーナビ装置、402…エアコン装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
メニュー表示が表示される表示部と、
入力スイッチ、位置検出部、および、2次元駆動部を備え、前記表示部上へポインタを表示して遠隔入力操作する遠隔操作部と、
前記メニュー表示の座標に対応した力覚パターン及び前記ポインタの位置座標に基づく第1の反力並びに前記ポインタの移動に基づく第2の反力を前記遠隔操作部に力覚として付与する駆動部と、前記メニュー表示上の前記第1の反力が作用する位置に前記ポインタが滞在した時間に基づいて前記第2の反力を低減調整する調整部を備える操作制御部と、
を有することを特徴とする遠隔入力装置。
【請求項2】
前記調整部は、前記メニュー表示上の前記第1の反力が作用する位置に前記ポインタが滞在した時間に基づいて前記第2の反力を低減調整して、予め定めた時間経過後に前記第2の反力を力覚として付与しないようにすることを特徴とする請求項1に記載の遠隔入力装置。
【請求項3】
前記第2の反力は、前記ポインタの進入方向と逆向きに作用するもの又は前記ポインタの移動方向と逆向きに移動速度に比例して作用するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の遠隔入力装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−227637(P2011−227637A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95665(P2010−95665)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】