説明

遠隔内視鏡ハンドルマニピュレーション

システムおよび方法は遠隔内視鏡ハンドルマニピュレーションを可能にする。本システムは、内視鏡に取り外し可能に取り付けられるように構成された制御ハウジングを有する。制御ハウジングに関連付けられたマニピュレータは、制御ハウジングを取り付けた内視鏡の制御デバイスに係合するように構成される。マニピュレータと駆動可能に連結したアクチュエータは、マニピュレータを移動させて、ハウジングに取り付けた内視鏡の制御デバイスを操作するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
経腔的内視鏡手術(NOTES)は、例えば口、鼻、尿道、膣および肛門などの自然孔に内視鏡を通すことで処置する外科手術である。内視鏡は、さらに、例えばトロッカーなどを用いることによって、へそあるいは一つの切開部位を通過させることもでき、シングルポートアクセス(SPA)とも呼ばれる。内視鏡は次に、内側切開部、例えば、胃、膣、血管または大腸などの切開部を通過する。NOTES処置を実施することにより、外側切開部または傷跡が抑制されるか、または完全に消失し得る。
【背景技術】
【0002】
本発明者の認識によると、NOTESのより幅広い実施を制限する要因は、とりわけ、現在の内視鏡手術が、一般的に、処置を実施する際に二〜三人の医者(外科医/内視鏡医)を必要とする点にある。ほとんどの内視鏡は、比較的単純な診断検査および処置を実施するように設計されているが、より複雑な外科手術を実施するようには設計されていない。内視鏡処置に必要な人員を削減するための手法として、遠隔制御またはロボット制御で内視鏡を制御するように設計したものがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような技術は現在商業的には利用可能ではない。さらに、そのような遠隔またはロボット制御による内視鏡の潜在的に高い経済コストは、その幅広い導入を制限する要因となる。本明細書において、発明者は遠隔内視鏡ハンドルマニピュレーション用のシステムまたは方法について記載する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
いくつかの実施形態では、遠隔内視鏡ハンドルマニピュレーションシステムは、内視鏡に取り外し可能に取り付けるように構成された制御ハウジングを有する。制御ハウジングに関連付けられたマニピュレータは、内視鏡の制御デバイスに係合するように構成され、内視鏡は制御ハウジングに取り付けられている。マニピュレータに駆動可能に連結したアクチュエータは、マニピュレータを移動させて、制御ハウジングに取り付けられた内視鏡とともに制御デバイスを操作するように構成されている。
【0005】
いくつかの実施形態では、遠隔内視鏡ハンドルマニピュレーションシステムを使用する方法は、内視鏡に制御ハウジングを取り付けるステップを有する。制御ハウジングのマニピュレータを、内視鏡の制御デバイスに係合させる。マニピュレータは、内視鏡の制御デバイスを操作するように制御される。
【0006】
いくつかの実施形態では、遠隔内視鏡ハンドルマニピュレーションシステムは、内視鏡の制御デバイスに係合する手段を有する。システムは、内視鏡の制御デバイスを遠隔制御する手段を有する。
【0007】
実施例1は遠隔内視鏡マニピュレーションの例示的なシステムを記載する。この実施例において、システムは内視鏡に取り外し可能に取り付けられるように構成された制御ハウジングを備える。マニピュレータが制御ハウジングに関連付けられている。マニピュレータは内視鏡の制御デバイスを係合するように構成され、内視鏡は制御ハウジングに取り付けられている。アクチュエータがマニピュレータに駆動可能に連結されている。アクチュエータは、制御ハウジングに取り付けられた内視鏡とともに制御デバイスを操作するように、マニピュレータを移動するように構成されている。
【0008】
実施例2において、マニピュレータが内視鏡の回転制御デバイスに係合するように構成された回転マニピュレータを有するように実施例1のシステムが随意的に構成される。
実施例3において、回転マニピュレータがステップモータを有するように、実施例1及び2の少なくともいずれか一つのシステムが随意的に構成される。
【0009】
実施例4において、回転制御デバイスが内視鏡のシャフトの移動を制御するように構成されたギアを有するように、実施例1乃至3のいずれか一つ以上のシステムが随意的に構成される。
【0010】
実施例5において、マニピュレータが、内視鏡の並進制御デバイスに係合するように構成された並進運動マニピュレータを有するように、実施例1乃至4のいずれか一つ以上のシステムが随意的に構成される。
【0011】
実施例6において、並進運動マニピュレータがソレノイドを有するように、実施例1乃至5のいずれか一つ以上のシステムが随意的に構成される。
実施例7において、並進運動マニピュレータが並進運動制御デバイスを制御するように構成され、かつ並進運動制御デバイスが、洗浄、吸引または注入を制御するように構成されるように、実施例1乃至6のいずれか一つ以上のシステムが随意的に構成される。
【0012】
実施例8において、実施例1乃至7のいずれか一つ以上のシステムは、制御ハウジングに通信可能に接続されたコントローラを随意的に備え、コントローラはマニピュレータを操作するためにアクチュエータに制御信号を送信するように構成される。
【0013】
実施例9において、コントローラがフットペダルを有するように、実施例1乃至8のいずれか一つ以上のシステムが随意的に構成される。
実施例10において、制御ハウジングが内視鏡ハンドルに取り外し可能に取り付けられるように、実施例1乃至9のいずれか一つ以上のシステムが随意的に構成される。
【0014】
実施例11において、制御ハウジングが内視鏡の一部を部分的に覆うように、実施例1乃至10のいずれか一つ以上のシステムが随意的に構成される。
実施例12は例示的な方法を記載する。この実施例において、方法は、制御ハウジングを内視鏡に取り付けるステップと、制御ハウジングのマニピュレータを内視鏡の制御デバイスに係合させるステップと、内視鏡の制御デバイスを操作するようにマニピュレータを制御するステップとを備える。
【0015】
実施例13において、マニピュレータを制御するステップが、随意的にマニピュレータを制御するためにフットペダルを用いるステップを含むように、実施例12の方法は随意的に実施される。
【0016】
実施例14において、制御デバイスを操作するようにマニピュレータを制御するステップが、内視鏡のシャフトの移動の制御を可能にするように、実施例12及び13のいずれか一つ以上の方法は随意的に実施される。
【0017】
実施例15において、制御デバイスを操作するようにマニピュレータを制御するステップが、内視鏡を用いた洗浄、吸引または注入の制御を可能にするように、実施例12乃至14のいずれか一つ以上の方法は随意的に実施される。
【0018】
実施例16において、実施例12乃至15のいずれか一つ以上の方法は、随意的に、内視鏡の一部の移動を阻止するように制御ハウジングを拘束するステップを有する。
実施例17において、制御ハウジングを内視鏡に取り付けるステップが、制御ハウジングを内視鏡ハンドルに取り付けるステップを有するように、実施例12乃至16のいずれか一つ以上の方法は随意的に実施される。
【0019】
この概説は、本発明の主題の概説を提供するものである。本発明を排他的または包括的に説明する意図はない。詳細な説明は、本発明についてさらなる情報を与えるものである。
【0020】
図面は、概して、例として、本明細書に記載する様々な実施形態を示すが、限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に基づくいくつかの実施形態による遠隔内視鏡ハンドルマニピュレーションシステムの図式的説明図であって、システムを内視鏡ハンドルから取り外した状態を示す。
【図2】本発明に基づくいくつかの実施形態による遠隔内視鏡ハンドルマニピュレーションシステムの図式的説明図であって、システムを内視鏡ハンドルに取り付けた状態を示す。
【図3】本発明に基づくいくつかの実施形態による遠隔内視鏡ハンドルマニピュレーションシステムの図式的説明図であって、システムを内視鏡ハンドルに取り付けた状態を示す。
【図4】本発明に基づくいくつかの実施形態による遠隔内視鏡ハンドルマニピュレーションシステムの斜視図であって、システムを内視鏡ハンドルに取り付けた状態を示す。
【図5】本発明に基づくいくつかの実施形態による遠隔内視鏡ハンドルマニピュレーションシステムの内部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明者の認識によると、とりわけ、現在の内視鏡技術は処置を実施するために二〜三人の医師(外科医/内視鏡医)を必要とする。ロボット内視鏡外科システムは、いまだ商業的に利用可能ではなく、もしそのようなシステムが利用可能になったとしても、そのようなシステムのコストがシステムの使用を妨げるであろう。
【0023】
そこで、本発明者は、内視鏡処置に必要な医師の数を一〜二人に削減可能な遠隔またはロボット制御の内視鏡ハンドルマニピュレーション用のシステムおよび方法を開発した。該システムおよび方法は既存の内視鏡機器を使用することができ、したがって、本システムおよび方法の使用に関連する付加的なコストを削減することができる。さらに、本システムおよび方法は容易に実施することができ、短期間で商業的に利用可能である。
【0024】
いくつかの実施例では、遠隔内視鏡ハンドルマニピュレーションシステムは、既存の内視鏡のハンドルの少なくとも一部にわたって一致する部分を有し、内視鏡ハンドルの一つ以上の制御を操作する。一実施例において、システムは医師または他の操作者が内視鏡ハンドルの一つ以上の制御を遠隔操作するために用いるコントローラを有する。一実施例においては、コントローラは、内視鏡の少なくともいくつかの態様を操作者が足により遠隔制御するためのフットペダルを有し、それによって操作者の手を自由にし、したがって、内視鏡処置の一つ以上の他の態様を実施することを容易にする。
【0025】
図1〜4を参照すると、一実施例において、内視鏡60は、シャフト64と、ハンドル62に関連付けられた一つ以上の制御デバイス70を有するハンドル62とを有する。一実施例において、制御デバイス70は、第一すなわち外側ギア70A及び第二すなわち内側ギア70B等の二個のギアを有し、これらのギアは、それぞれ内視鏡シャフト64の先端64Aの上下移動と、横方向移動を制御する。制御デバイス70はさらに、吸引/注入を制御するための第一ボタン70Cと、洗浄を制御するための第二ボタン70Dとを備える。図4に示すように、内視鏡60はさらに第三ボタン70Eを有し、当該ボタンを内視鏡の別の操作可能な態様を制御するために使用して、例えば、電源、カメラ、ライト、吸引または注入(例えば、もし吸引と注入が同一制御デバイスで制御できない場合)、または別の内視鏡機能のために用いる。
【0026】
使用にあたり、一実施例において、経腔的内視鏡手術(NOTES)は、シャフト64を患者の管腔(例えば口、鼻、尿道、肛門、膣もしくは他の管腔、またはへそもしくは一つの切開部など)内に導入するステップと、患者の身体内部の好適な位置にシャフト64を差し向けるステップとにより実行することができ、例えば外部からシャフト64を押し込むまたはねじるステップ(図2および3にシャフト64に沿って適切な位置に押し込むまたはねじる場合を示す)と、第一および第二のギア70A,70Bにより先端64Aの移動を制御するステップとにより実行される。一実施例において、図3および4に示すように、内視鏡60は、一つ以上の内視鏡装置またはツール80、例えば、鉗子、内視鏡用はさみ、電気メス、カメラ、ライトまたは他の機器もしくはツールなどを導入するためのポート64Cを含む。ポート64Cは、第一および第二のチャネル64Cおよび64Dを含むことができ、これにより二つのツールまたはデバイス80をシャフト64内に同時に挿入する。しかし、ポート64Cは、二つより多いかまたは少ないチャネルを有することができる。
【0027】
いくつかの実施例において、システム10を、既存の可撓性内視鏡60に取り付けて、内視鏡60の第一および第二のギア70A、70Bをコントローラ20により遠隔制御可能にする。一実施例において、コントローラ20はフットペダルインターフェース20を有する。このことは、一人の操作者の手を自由にし、かつ二人で、また可能であれば一人の操作者でもNOTES手術を実施することもできる。一実施例において、コントローラ20は、一つ以上の制御器22、例えばボタン、ペダルまたはスイッチを含み、これらの制御器22のうち一つ以上を操作者が例えば、足で操作して、内視鏡の態様を制御することができる。図1〜3に示すように、制御器22は四個の矢印ボタンを有して、内視鏡シャフト64の先端64Aの移動を制御する。他の制御器をコントローラ20上に設け、例えば、内視鏡60で用いられる吸引、注入、洗浄または一つ以上の内視鏡ツールもしくはデバイスの操作などの内視鏡60の一つ以上の他の態様を制御することができる。
【0028】
一実施例において、システム10の一つ以上のコンポーネントに動力を供給するため、システム10は、電源もしくは他の動力源を含むか、または接続されている。電源30は、外部電源、例えば壁のコンセントもしくは発電機に接続するプラグまたはコネクタを含むか、または一つ以上のバッテリを含むことができる。
【0029】
いくつかの実施例において、システム10は、内視鏡ハンドル62の移動を保持するか、またはそれ以外に抑制するためのクレードルまたはホルダ40を含むことができる。一実施例において、内視鏡60のハンドル62もしくは他の部分またはシステム10は、ホルダ40の一部上に付着させるか、取り付けるか、または設置される。ホルダ40の別の部分は、テーブル、スタンドまたは他の表面上に付着させるか、取り付けるか、または配置される。例えば、ホルダ40は、テーブル上に配置するための脚部もしくはベースを含むか、またはホルダはテーブルに固定接続するためのクランプを有する。一実施例において、ホルダ40を用いて、内視鏡60またはシステム10を使用中に、例えば、特定の配向に保持し、それによって操作者が内視鏡60またはシステム10を保持する必要をなくすことができる。ホルダ40を使用することにより、一人以上の操作者の一つ以上の手をさらに自由にして、操作者が一つ以上の他の作業を行えるようにすることができる。
【0030】
いくつかの実施例において、システム10は、一つ以上の標準的な可撓性内視鏡ハンドルに適合するように構成される。例えば、現在、内視鏡の大多数はオリンパス(Olympus)社とストルツ(Storz)社との二社により製造されており、両社が製造する内視鏡は、図1〜4に示すように、内側および外側に重なり合うギア制御器、および吸引および注入を制御するための個別のボタンを有する。
【0031】
図1〜4を参照すると、一実施例において、システム10はハウジング12を有し、このハウジングは、内視鏡ハンドル62の少なくとも一部に適合する寸法および形状に定められる。図4は、ハウジング12(点線で示す)をハンドル62の一部を覆って配置し、内視鏡60の制御デバイス70A,70B,70C,70D,70Eを制御するか、または相互作用するようにした実施例を示す。ハウジング12は、内視鏡ハンドル62に取り付けられ、例えば内視鏡ハンドル62の全体もしくは一部を包囲するシェルを形成するか、一つ以上のストラップ、クランプもしくは他のアタッチメントデバイスを用いるか、ハンドル62上にスナップ連結するための戻り止め構成を用いるか、あるいはハンドル62とハウジング12との間における摩擦係合を用いることによって、取り付けられる。図4にはハンドル62を概ね包囲する状況を示したが、いくつかの実施例においては、ハウジングは、一つ以上のストラップ、テープまたは接着剤を有するフレームまたは任意の他の構造とすることができ、ハンドル62または内視鏡60の他の部分に取り付け、一つ以上のマニピュレータを以下に説明するように位置決めし、内視鏡60の制御デバイスの制御または相互作用を可能にする。
【0032】
図1〜5を参照すると、一実施例において、ハウジング12は一つ以上のマニピュレータ14を含み、これらのマニピュレータ14は、ハウジング12をハンドル62に取り付けるとき、内視鏡60の一つ以上の制御デバイス70のそれぞれに整合するように位置決めされる。例えば、第一ギアマニピュレータ14Aは、内視鏡ハンドル62の第一ギア70Aに係合するように補完し合う形状および寸法に定められ、したがって、第一ギアマニピュレータ14Aの回転により、内視鏡ハンドル62の第一ギア70Aを回転させるように構成される。一実施例において、第二ギアマニピュレータ14Bは、内視鏡ハンドル62の第二ギア70Bに係合するように補完し合う形状および寸法に定められ、したがって、第二ギアマニピュレータ14Bの回転により、内視鏡ハンドル62の第二ギア70Bの回転が引き起こされる。一実施例においては、第一および第二のギアマニピュレータ14A,14Bは、第一および第二のアクチュエータ16A,16Bにそれぞれ駆動可能に連結される。例えば、第一および第二のギアマニピュレータ14A,14Bのそれぞれにおける外側端縁はギア歯を含み、該ギア歯は第一および第二のアクチュエータ16A,16Bの一つによって駆動されるウォームまたはピニオンによって係合されることができる。一実施例において、第一および第二のアクチュエータ16A,16Bは、回転アクチュエータ、例えばステップモータを有する。第一または第二のアクチュエータ16A,16Bは、例えばコントローラ20の異なる制御器22を動作させることにより、独立的に制御することができ、それによりコントローラ20を用いて内視鏡60の異なる態様を個別に操作者が制御することができる。
【0033】
引き続き図1〜5を参照すると、いくつかの実施例において、システム10は一つ以上の並進運動マニピュレータを含み、これらの並進運動マニピュレータは、ハウジング12を内視鏡ハンドル62に取り付けるとき、並進制御デバイス、例えば内視鏡ハンドル62のボタン、スライダ、スイッチに整合する。一実施例において、ハウジングは、第一、第二、第三のボタンマニピュレータ14C,14D,14Eを含み、これらのボタンマニピュレータ14C,14D,14Eは第一、第二、および第三のボタン70C,70D,70Eに整合するように構成され、したがって、第一、第二または第三のボタンマニピュレータ14C,14D,14Eの並進運動により、内視鏡ハンドル62の第一、第二または第三のボタン70C,70D,70Eが並進運動する。一実施例において、第一、第二および第三のボタンマニピュレータ14C,14D,14Eは、例えばソレノイドなどの並進運動アクチュエータの駆動部に連結された表面を備える。一実施例において、第一ボタンマニピュレータ14Cは第三アクチュエータ16Cに連結され、第二ボタンマニピュレータ14Dは第四アクチュエータ16Dに連結され、第三ボタンマニピュレータ14Eは第五アクチュエータ16Eに連結される。第三、第四および第五のアクチュエータ16C,16Dおよび16Eは、コントローラ20の各駆動制御器24(図1参照)によって独立して制御できる。このことによれば、操作者が内視鏡ハンドルで制御器を操作する必要なく、操作者はコントローラ20を用いて内視鏡60の一つ以上の態様を遠隔制御することができるようになる。マニピュレータおよびアクチュエータの数は増加または減少させることができ、内視鏡における並進運動制御器の数に対応させることができる。例えば、内視鏡の並進運動制御の手動駆動が望まれる場合、ハウジングにはいかなる並進運動アクチュエータをも設ける必要がない。この実施例においては、例えばハウジングは、操作者が一つ以上のボタン70C,70D,70Eにアクセス可能にする開口を含むか、または各アクチュエータに連結されるのではなくハウジング12の外部から操作者が手動操作する一つ以上のマニピュレータを含む。
【0034】
コントローラ20は、内視鏡60の制御デバイス70を操作(マニピュレート)するアクチュエータと電気的に通信すると上述したが、いくつかの実施例において、例えば回転シャフトまたは並進ワイヤもしくは並進シャフトを用いてコントローラからマニピュレータに機械的に駆動力を伝達することによって、コントローラをマニピュレータに機械的に連結することもできる。シャフトまたはワイヤは、アクチュエータ、例えばコントローラに関連づけられたステップモータまたはソレノイドなどのアクチュエータを用いて、回転または並進運動させることができる。
【0035】
システム10が内視鏡ハンドル62を覆って配置されると、システム10および内視鏡ハンドル62は、クレードルまたはホルダ40内に配置され、内視鏡先端64Aは、フットペダル20などのコントローラ20からの一つ以上の命令によりロボット制御されることができる。別の実施例においては、ホルダまたは保持部は、個別のコンポーネントとしてではなく、制御ハウジングまたは内視鏡(例えば内視鏡ハンドル)と一体化される。これにより、一人の操作者が内視鏡シャフト64を望むように片手でねじり、一つ以上のチャネル64C、64Dを通過する一つ以上の内視鏡機器80を他方の手で制御することが可能となり、したがって、一人の操作者がNOTES処置またはSPA手術を実施することが可能となる。このようなシステムは完全にロボット化したNOTES用内視鏡よりも安価である。なぜなら病院は市場で入手可能となるであろう新しいロボット化NOTES用内視鏡に投資する代わりに、本発明によるシステムおよび方法とともに既存の内視鏡を使用できるからである。
【0036】
他の実施例において、本システムは、一つ以上のチャネル64C,64Dを通過する一つ以上の内視鏡機器80を制御する一つ以上のアタッチメントを含む。一実施例において、システムは、内視鏡シャフト64のねじりを遠隔制御するデバイスを含む。例えば、一つ以上のアクチュエータを内視鏡シャフト64に取り付けて、軸線方向、回転方向、半径方向を含む一つ以上の方向に押し進めることができる。上述のシステム10を内視鏡機器制御および内視鏡シャフトねじり制御とともに使用する実施例においては、既存の内視鏡を、完全に遠隔制御またはロボット制御できる。
【0037】
いくつかの実施例において、遠隔内視鏡ハンドルマニピュレーションシステム10を使用する方法は、制御ハウジング12を内視鏡60のハンドル62に取り付けるステップであって、制御ハウジング12の少なくとも一つのマニピュレータ14A,14B,14C,14Dまたは14Eを、内視鏡ハンドル62の対応する制御デバイス70A,70B,70C,70Dおよび70Eに係合させる取り付けステップを有する。操作者は、少なくとも一つのマニピュレータ14A,14B,14C,14Dまたは14Eを遠隔制御して、内視鏡ハンドル62の少なくとも一つの制御デバイス70A,70B,70C,70Dおよび70Eを遠隔操作することができる。一実施例において、操作者はコントローラ20を用いて、内視鏡ハンドル62の少なくとも一つの制御デバイス70A,70B,70C,70Dおよび70Eを操作する。一実施例において、コントローラ20はフットペダル20を有し、操作者が内視鏡の一つ以上の態様を足により操作できるようにし、それによって操作者の腕および手を自由にする。一実施例において、操作者はシステム10の少なくとも一部を拘束し、例えば内視鏡ハンドル62の移動を阻止できる。一実施例において、システム10は、上述のようなホルダ40を用いて拘束される。このようにして、操作者は手を自由にすることができ、一つ以上のさらなる内視鏡操作を制御し、したがって、NOTESまたは他の内視鏡処置を実施するために必要な操作者の数を削減可能にする。
【0038】
(付記)
上述の詳細な説明は、詳細な説明の一部である添付図面を参照する。図面は、本発明を実施する特定の実施形態を示す。これらの実施形態を本明細書では“実施例(example)”と称する。このような実施例は、図示および記載した要素とは別の要素を含む場合がある。しかし、本発明者は、図示および記載した要素のみを設ける実施例をも意図する。
【0039】
本明細書で言及したすべての刊行物、特許および特許文献は、参照によりその全体を本明細書に組み込むものであるが、参照により個別に組み込むことができる。本明細書と参照して組み込んだそれらの文献との間での矛盾した使用法が存在する場合、組み込んだ参照における使用法は本明細書に対する補完的なものであると考慮すべきであり、一致しない矛盾した使用法は本明細書が制御する。
【0040】
本明細書において、任意の他の場合または「少なくとも一つ」もしくは「一つ以上」の使用とは別に、冠詞「a」および「an」を使用する場合、特許文献で共通するように、一つ以上を含むものである。本明細書において、用語「または(もしくは)」を非排他的なものに言及するのに使用する、すなわち他に明示しない限り、「AまたはB」は、「AであるがBではない」、「BであるがAではない」および「AおよびB」を含む。添付の特許請求の範囲において、英語用語「including」および「in which」は、それぞれ単語「comprising」および「wherein」と一般的英語では同義として使用する。また、添付した特許請求の範囲の請求項において、「including」および「comprising」は非限定的なものであり、すなわち、システム、デバイス、物品またはプロセスは、請求項内のそのような用語が依然として請求項の範囲内にあるとみなされた後、列挙されたもの以外の付加要素を含む。さらに、添付した特許請求の範囲において、用語「第一」、「第二」、「第三」等を単にラベルとして用いるが、それらの対象物の数的要件を課する意図はない。
【0041】
上述の説明は例示であり、限定する意図はない。例えば、上述の実施例(または一つ以上の態様)を、互いに組み合わせて使用することができる。他の実施形態を、当業者が上記の説明を見ることにより使用することができる。要約を米国特許法に適合するように設けて、読み手が技術開示の本質をすばやく理解することを可能にする。要約は請求項の権利範囲または意味を解釈あるいは限定するために用いられるものではない。また、上記のように、開示を能率化するために様々な態様をともに統合する。請求しない開示特徴が任意の請求項に対して不可欠であると解釈されるべきでない。むしろ、発明事項は、特別なに開示された実施形態の全ての特徴よりも少ない。したがって、添付の特許請求の範囲は、ここで詳細な説明に組み込まれ、各請求項は個々の実施形態にそれぞれ基づく。本発明の権利範囲は添付の特許請求の範囲により決定されるべきであり、このような特許請求の範囲の権限を有する均等物の全範囲を伴う。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔内視鏡マニピュレーションシステムであって、
内視鏡に取り外し可能に取り付けられるように構成された制御ハウジングと、
前記制御ハウジングに関連付けられたマニピュレータであり、前記制御ハウジングに取り付けられた前記内視鏡の制御デバイスに係合するように構成されたマニピュレータと、
前記マニピュレータに駆動可能に連結されるアクチュエータであり、前記制御ハウジングに取り付けられた前記制御デバイスを操作するために前記マニピュレータを移動させるように構成されたアクチュエータとを備えるシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、前記マニピュレータは、前記内視鏡の回転制御デバイスに係合するように構成された回転マニピュレータを有するシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムであって、前記回転マニピュレータはステップモータを有するシステム。
【請求項4】
請求項2に記載のシステムであって、前記回転制御デバイスは、前記内視鏡のシャフトの移動を制御するように構成されたギアを有するシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムであって、前記マニピュレータは、前記内視鏡の並進運動制御デバイスに係合するように構成された並進運動マニピュレータを有するシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のシステムであって、前記並進運動マニピュレータはソレノイドを有するシステム。
【請求項7】
請求項5に記載のシステムであって、前記並進運動マニピュレータは、洗浄、吸引および注入を制御するように構成された並進運動制御デバイスを制御するように構成されるシステム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムであって、前記ハウジングに通信可能に接続されるコントローラを備え、該コントローラは、前記マニピュレータを操作するために前記アクチュエータに制御信号を送信するように構成されるシステム。
【請求項9】
請求項8に記載のシステムであって、前記コントローラはフットペダルを有するシステム。
【請求項10】
請求項1に記載のシステムであって、前記制御ハウジングは、内視鏡ハンドルに取り外し可能に取り付けるように構成されるシステム。
【請求項11】
請求項1に記載のシステムであって、前記制御ハウジングは前記内視鏡の一部を部分的に覆うように構成されるシステム。
【請求項12】
内視鏡に制御ハウジングを取り付けるステップと、
前記制御ハウジングのマニピュレータを前記内視鏡の制御デバイスに係合させるステップと、
前記内視鏡の制御デバイスを操作するように前記マニピュレータを制御するステップとを有する方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、前記マニピュレータを制御するステップは、前記マニピュレータを制御するためにフットペダルを用いるステップを有する方法。
【請求項14】
請求項12に記載の方法であって、前記制御デバイスを操作するように前記マニピュレータを制御するステップは、前記内視鏡のシャフトの移動の制御を可能にする方法。
【請求項15】
請求項12に記載の方法であって、前記制御デバイスを操作するように前記マニピュレータを制御するステップは、前記内視鏡を用いて洗浄、吸引および注入を制御することを可能にする方法。
【請求項16】
請求項12に記載の方法であって、前記内視鏡の一部の移動を制限するように前記制御ハウジングを拘束するステップを有する方法。
【請求項17】
請求項12に記載の方法であって、前記制御ハウジングを内視鏡に取り付けるステップは、前記制御ハウジングを内視鏡ハンドルに取り付けるステップを有する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−510789(P2011−510789A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545877(P2010−545877)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【国際出願番号】PCT/US2009/000749
【国際公開番号】WO2009/099633
【国際公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(508344512)ザ トラスティーズ オブ コロンビア ユニバーシティ イン ザ シティ オブ ニューヨーク (3)
【氏名又は名称原語表記】THE TRUSTEES OF COLUMBIA UNIVERSITY IN THE CITY OF NEW YORK
【Fターム(参考)】