説明

遠隔受信機によって使用される衛星追跡データの完全性を監視する方法及び装置

遠隔受信機によって使用される衛星追跡データの完全性を監視する方法及び装置が開示される。一実施例では、第1の衛星追跡データのセットはサーバーで受信される。第2の衛星追跡データのセットの完全性データは第1の衛星追跡データのセットを使用して生成される。完全性データは次に第2の衛星追跡データのセットを有する少なくとも1台の遠隔受信機へ発信される。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
[0001]本発明は、一般に衛星測位システムに関し、特に、遠隔受信機によって使用される衛星追跡データの完全性の監視に関する。
【関連技術の説明】
【0002】
[0002]全地球測位システム(GPS)は、位置を計算するために複数の衛星からの測定量を使用する。GPS受信機は、通常は、地上又は地上付近で衛星から発信された信号の発信と受信機によって受信された信号の受信との間の時間遅延を計算することによりそれらの位置を決定する。光速倍された時間遅延は、受信機から受信機の視野内の各衛星までの距離を与える。GPS衛星は衛星配置データ、すなわち、いわゆる「暦」データを受信機へ発信する。暦データの他に、衛星は、衛星信号と関連した絶対時刻情報を受信機へ発信し、すなわち、絶対時刻信号が2番目のウィーク信号として送信される。この絶対時刻信号は受信機が、各受信信号が各衛星によって発信されたときの時間タグを明白に決定することを可能にさせる。各信号の正確な発信の時刻を知ることにより、受信機は各衛星が信号を発信したときに居た場所を計算するために暦データを使用する。最終的に、受信機は、受信機位置を計算するために衛星位置の知識を衛星までの計算距離と組み合わせる。
【0003】
[0003]より詳細には、GPS受信機は、軌道を周回するGPS衛星から発信され、固有擬似ランダム雑音(PN)符号を含むGPS信号を受信する。GPS受信機は、受信PN符号信号系列と内部生成PN信号系列との間の時間シフトを比較することにより信号の発信と受信との間の時間遅延を決定する。
【0004】
[0004]各発信GPS信号は直接シーケンススペクトル拡散信号である。商業目的に利用できる信号は標準測位サービスによって提供される。これらの信号は、1575.42MHz(L1周波数)の搬送波上で1.023MHzの拡散率をもつ直接シーケンス拡散信号を利用する。各衛星は、特定の衛星を識別し、複数台の衛星から同時に発信された信号を、いずれかの1個の信号が他の信号から受ける干渉が非常に小さい状態で、受信機によって受信することを可能にさせる、固有PN符号(C/A符号として知られている)を発信する。PN符号系列長は、1ミリ秒の時間に対応する1023チップである。1023チップの1サイクルはPNフレームと呼ばれる。各受信されたGPS信号は1023チップの1.023MHz反復PNパターンから構築される。非常に低い信号レベルでも、PNパターンは依然として観測され、多数のフレームを処理し、原則的に平均化することにより、曖昧性のない時間遅延測定量を提供する。これらの測定された時間遅延は、1ミリ秒PNフレーム境界のモジュロとして知られているので「サブミリ秒擬似距離」と呼ばれる。それぞれの衛星への各遅延と関連したミリ秒の整数部を解消することにより、真の、曖昧性のない、擬似距離が取得される。曖昧性のない擬似距離を決定するプロセスは、「整数値ミリ秒曖昧性解消」と呼ばれる。
【0005】
[0002]4個の擬似距離のセットは、GPS信号の発信の絶対時刻及びそれらの絶対時刻における衛星位置の知識と共に、GPS受信機の位置を解決するために十分である。発信の絶対時刻は、発信の時刻における衛星の位置を決定するため、したがって、GPS受信機の位置を決定するために必要である。GPS衛星は約3.9km/sで移動するので、地上から観測される衛星の距離は最大で±800m/sの率で変化する。絶対タイミング誤差は、タイミング誤差の1ミリ秒毎に0.8mまでの距離誤差という結果になる。これらの距離誤差はGPS受信機位置に同様の大きさの誤差を生じる。したがって、10msの絶対時刻精度は約10mの位置精度に十分である。10msを超える絶対タイミング誤差は大きな位置誤差をもたらすので、典型的なGPS受信機は、約10ミリ秒以上の精度に達する絶対時刻を必要としている。
【0006】
[0003]GPS受信機が衛星から暦データをダウンロードすることは、常にゆっくりであり(18秒より速くない)、困難であることが多く、(信号強度が非常に低い環境では)不可能であることもある。これらの理由のため、衛星からの発信を待つ代わりに他の手段を用いて、衛星軌道及びクロックデータをGPS受信機へ送信することが有利であることが長い間知られている。衛星軌道及びクロックデータ、すなわち、「補助データ」をGPS受信機へ提供するこの技術は、「アシストGPS」、又は、A−GPSとして知られている。
【0007】
[0004]A−GPSシステム内の補助データは、衛星信号取得を支援する情報のような短期データ、暦データのような中期データ、又は、暦のグループ、若しくは、その他のタイプの長期衛星軌道及びクロックモデル(一般に、「衛星追跡データ」と呼ばれる)のような長期データである。例えば、衛星信号取得支援データは、典型的に、数分間に亘り有効であり、衛星暦データは、典型的に、数時間に亘り有効であり、長期軌道及びクロックデータは数日間に亘り有効である。遠隔受信機は、したがって、衛星信号を取得するため、ある種のケースでは、位置を計算するため、補助データを使用する。補助データが配信された時刻と支援データが遠隔受信機によって使用された時刻との間で、補助データが基礎を置く衛星軌道/クロックデータが無効になることもあり得る。例えば、所与の衛星内のクロックは、期待されるレンジ外にドリフトしている可能性があり、所与の衛星の軌道は期待されるレンジを越えて変化している可能性がある。遠隔受信機が無効な衛星軌道/クロックデータと関連した予め取得された補助データを使用するならば、計算された装置位置は大幅に誤っている可能性がある。
【0008】
[0005]したがって、当分野において、アシスト測位システムにおいて遠隔受信機へ配信される衛星補助データの完全性を監視する方法及び装置の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0009】
[0005]遠隔受信機によって使用される衛星追跡データの完全性を監視する方法及び装置について記載される。本発明の一実施形態では、第1の衛星追跡データのセットは、サーバで受信される。例えば、第1の衛星追跡データのセットは、基準局のネットワーク、衛星制御局、又は、その他のタイプの通信ネットワークのうちの一つ以上から受信される。衛星追跡データは、衛星軌道データ、衛星クロックデータ、又は、その両方を含む。第2の衛星追跡データのセットの完全性データは第1の衛星追跡データのセットを使用して発生される。完全性データは次に第2の衛星追跡データのセットを有する少なくとも1台の遠隔受信機へ発信される。例えば、完全性データは1台以上の健康ではない衛星を識別する。
【0010】
[0006]上記の本発明の特長が詳細に理解されるように、上記の要約された発明のより詳しい説明が実施形態を参照することにより記載され、実施形態の一部が添付図面に示される。しかし、注意すべきことは、添付図面は発明の典型的な実施形態だけを示し、発明はその他の同等に効果的な実施形態を認めるので、添付図面が発明の範囲を制限していると考えられるべきでないという点である。
【0011】
[0016]理解を容易にするため、図面に共通した同じ要素を指定するため、可能な限り、同じ参照番号が使用されている。
【発明の詳細な説明】
【0012】
[0017]図1は測位システム100の例示的な実施形態を表すブロック図である。システム100はサーバー102及び遠隔受信機104を備える。例による明瞭さの目的のため、システム100は単一の遠隔受信機104だけと共に示されている。しかし、サーバー102は1台以上の遠隔受信機と通信することが理解されるである。遠隔受信機104は、ワイヤレス通信システム106(例えば、携帯電話ネットワーク)、インターネットのようなその他のタイプの通信リンク108、又は、その両方を介して、サーバー102と通信する。遠隔受信機104は、コンステレーション内の複数台の衛星105によってブロードキャストされた衛星信号を捕捉し、衛星の未知位置を突き止めるため衛星105までの擬似距離を測定する。例えば、遠隔受信機104は、GPSコンステレーション内の複数台のGPS衛星までの擬似距離を測定する。衛星信号の捕捉、位置の計算、又は、その両方を支援するため、遠隔受信機104はサーバー102から衛星追跡データ(以下、「補助データ」と呼ばれる)を受信する。
【0013】
[0018]本発明の一実施形態では、遠隔受信機104は、衛星信号の捕捉を支援するためサーバー102からの補助データを使用し、測定された擬似距離を、ワイヤレス通信システム106を使用して、サーバー102へ発信する。サーバー102はその後に、遠隔受信機104の未知位置を解決するため擬似距離を使用する。位置は、ワイヤレス通信システム106を介して遠隔受信機104へ発信されるか、又は、インターネット経由のような別の方式で第三者リクエスタ199が利用できるようにされる。別の実施形態では、遠隔受信機104は、擬似距離をサーバーへ発信することなく、自分自身の位置を計算するために測定された擬似距離を使用する。遠隔受信機104は、衛星信号の捕捉、位置の計算、又は、それらの両方を支援するために、サーバー102からの補助データを使用する。
【0014】
[0019]サーバー102は、遠隔受信機104へ配信される補助データを生成するために、コンステレーションと関連した種々の測定量及び情報(以下、「衛星追跡情報」と称される)を使用する。サーバー102は、衛星信号受信機のネットワーク(「基準ネットワーク110」)、衛星制御局112(例えば、GPSにおけるマスター制御局)、又は、この情報のその他の供給源(例えば、インターネット経由)のような外部供給源から衛星追跡情報を受信する。基準ネットワーク110は、コンステレーション内のすべての衛星からの衛星追跡情報を収集する複数の追跡局、少数の追跡局、又は、世界の特定の領域についての衛星追跡情報だけを収集する単一の追跡局を含む。衛星追跡情報は、例えば、衛星ナビゲーションメッセージ(例えば、暦)、符号位相測定量、及び、ドップラー測定量のうちの少なくとも一つを含む。本発明の一実施形態では、サーバー102は、複数台の衛星105に関する衛星ナビゲーションデータのうちの暦部分を受信する。暦データを配信する典型的なシステムは、2002年6月25日に発行され、その全体が参照として本明細書に組み込まれた、米国特許第6,411,892号に記載されている。衛星制御局から直接的に暦情報を取得する例示的なシステムは、2002年2月22日に出願された、その全体が参照として本明細書に組み込まれた、米国特許出願第10/081,164号(代理人書類番号GLBL020号に記載されている。
【0015】
[0020]衛星追跡情報を使用して生成された補助データは、短期間、中期間、又は、長期間に亘り有効であり、衛星信号の捕捉及び/又は位置の計算を支援する情報を含む。例えば、補助データは、符号位相及びドップラー測定量、又は、遠隔受信機104における期待擬似距離のモデル(「擬似距離モデル」)のような捕捉支援データを含む。衛星信号を捕捉するため擬似距離モデルを配信し使用する典型的なシステムは、2002年9月17日に発行され、その全体が参照として本明細書に組み込まれた、米国特許第6,453,237号に記載されている。別の実施形態では、補助データは、暦情報又は長期軌道モデルを含む。暦情報又は長期軌道モデルを配信し使用する例示的なシステムは、2003年4月1日に発行され、その全体が参照として本明細書に組み込まれた、米国特許第6,542,820号に記載されている。
【0016】
[0021]補助データのタイプとは無関係に、補助データが基礎を置く衛星追跡情報が無効になるならば、遠隔受信機104は補助データを使用して衛星信号を適切に獲得するか、若しくは、位置を計算することが可能ではないか、又は、大幅に低下した精度で位置を計算する。よって、本発明の一実施形態では、サーバー102は遠隔受信機104によって使用されている補助データの完全性を監視する。以下で詳述されるように、サーバー102は、衛星追跡データを取得し、衛星追跡データを使用して補助データの完全性データを生成する。サーバー102によって獲得された衛星追跡データは補助データより新しい。サーバー102によって生成される完全性データは、その後に、遠隔装置104へ発信される。
【0017】
[0022]図2は衛星測位システム受信機200の例示的な実施形態を表すブロック図である。受信機200は図1に示された遠隔受信機104として使用される。受信機104は、例示的に、衛星信号受信機202、ワイヤレストランシーバー204、マイクロコントローラ206、メモリ208、及び、モデム210(又は、その他の通信ポート)を備える。衛星信号受信機202はアンテナ212を介して衛星信号を受信する。衛星信号受信機202は、周知の手法で擬似距離を形成するために衛星信号を処理する。本発明と共に使用される例示的なアシストGPS受信機は米国特許第6,453,237号に記載されている。擬似距離は、マイクロコントローラ206を介して、ワイヤレストランシーバー204へ結合される。ワイヤレストランシーバー204は、アンテナ214を使用して、サーバーにおける位置計算のための擬似距離を発信する。或いは、擬似距離は、受信機200による位置計算のためメモリ208内に格納される。
【0018】
[0023]メモリ208は、ランダムアクセスメモリでも、読み出し専用メモリでも、リムーバブルストレージでも、ハードディスクストレージでも、又は、このような記憶装置のどのような組み合わせでもよい。メモリ208は、サーバーによって配信され、衛星信号の捕捉、位置の計算、又は、その両方を支援するため使用される補助データ216を格納する。補助データ216は、ワイヤレストランシーバー204を使用してワイヤレスリンク経由で、又は、モデム210(若しくは、装置をコンピュータネットワークへ接続するその他の通信ポート)を使用してコンピュータネットワーク(例えば、インターネット)経由で受信される。
【0019】
[0024]図3は、衛星測位システムサーバー300の例示的な実施形態を表すブロック図である。サーバー300は図1に示されたサーバー102として使用される。サーバー300は、図示的に、中央処理ユニット(CPU)302、入力/出力(I/O)回路304、サポート回路306、メモリ308、及び、サーバークロック310を備える。サーバー300は、装置データベース312を含むか、又は、装置データベース312に結合される。サポート回路306は、CPU202の動作を円滑にする周知の回路、例えば、クロック回路、キャッシュ、電源などを備える。メモリ308は、ランダムアクセスメモリでも、読み出し専用メモリでも、リムーバブルストレージでも、ハードディスクストレージでも、又は、このようなメモリ装置のいかなる組み合わせでもよい。サーバークロック310は、遠隔受信機によって発信された擬似距離の到着時刻を示すように時間遅れを与えるため使用される。
【0020】
[0025]衛星追跡情報(例えば、暦、符号位相測定量、搬送波位相測定量、ドップラー測定量)は、I/O回路304を使用してこのような情報の外部供給源(例えば、基準ネットワーク、衛星制御局、インターネット)から受信される。サーバー300は遠隔装置により使用される補助データを計算するために衛星追跡情報を使用する。遠隔受信機へ配信された補助データの完全性を監視するため、サーバー300は、配信された補助データのタイプと、補助データが配信された遠隔受信機と、時刻と、この補助データが期限切れになるときとを記録する。一実施形態では、表350は、遠隔装置ID、補助データが遠隔装置へ配信された日時、配信された補助データのタイプ、補助データの期限切れ時刻によって定義されたエントリー(例えば、3個が示されている)を有する装置データベース312内に格納される。例えば、エントリー352は、捕捉支援データが「1」というIDを有する装置へ時刻t1に配信され、その捕捉支援データはt1から10分間で期限が切れるようにセットされていることを示す。エントリー354は、暦データが「2」というIDを有する装置へ時刻t2に配信され、その暦データはt2から4時間で期限が切れるようにセットされていることを示す。エントリー356は、長期軌道(LTO)データが「3」というIDを有する装置へ時刻t3に配信され、LTOデータはt3から2日間で期限が切れるようにセットされていることを示す。サーバー300は、完全性データ314を生成するために、装置データベース312において識別された遠隔装置によって使用されている補助データの完全性を監視する。完全性データ314は、後述されるように、メモリ308に格納され、遠隔装置へ発信される。
【0021】
[0026]図4は、本発明による遠隔受信機で使用される衛星追跡データの完全性を監視するプロセス400の例示的な実施形態を表すフローチャートである。プロセス400は、衛星測位システム受信機によって使用されている補助データの完全性を監視するために衛星測位システムサーバーによって実行される。プロセス400はステップ402で始まり、そこで、遠隔受信機によって使用される1セット以上の補助データと関連した健康ではない衛星が識別される。例えば、後述されるプロセス500、600、700及び900のうちの一つ以上のプロセスが健康ではない衛星を識別するため使用される。
【0022】
[0027]任意のステップ403で、停波の期間が識別された健康ではない衛星毎に決定される。例えば、識別された健康ではない衛星毎の停波の期間は、図9のプロセス900に関して後述されるように、衛星制御局によって生成された停波通知データから獲得される。ステップ404で、健康ではない衛星毎の識別情報、及び、既知であるならば、対応する停波の期間を含む完全性データが生成される。停波期間が未知であるならば、完全性データは停波の期間を含まないか、又は、停波の期間が所定の値、若しくは、使用中の補助データの特有のタイプに基づく値(例えば、補助データが4時間に亘り有効であるならば4時間)にセットされる。
【0023】
[0028]完全性データは、その後に、補助データのセットを使用して遠隔受信機へ発信される。本発明の一実施形態では、ステップ406において、完全性データは、識別された健康ではない衛星に応じて、影響を受ける遠隔受信機へ発信される。すなわち、健康ではないとして識別された衛星が存在するならば、完全性データがこの健康ではない衛星による影響を受ける補助データを有する遠隔受信機へ発信される。よって、完全性データは、健康ではない衛星が識別されたときに限り送信され、このような識別された健康ではない衛星による影響を受ける遠隔受信機だけに送信される。別の実施形態では、ステップ405において、完全性データは識別された健康ではない衛星に応じてすべての遠隔受信機へ発信される。別の実施形態では、ステップ408において、完全性データは所定の発信スケジュールに従って遠隔受信機へ発信される。例えば、完全性データは、健康ではない衛星が識別されてもされなくても、定期的に補助データのセットを使用してすべての遠隔受信機へブロードキャストされる。さらに別の実施形態では、ステップ410において、完全性データは遠隔受信機からの要求に応じて遠隔受信機へ発信される。
【0024】
[0029]図5は、本発明による健康ではない衛星を識別するプロセス500の例示的な実施形態を表すフローチャートである。プロセス500はステップ502から始まり、現在の衛星追跡データのセットが取得される。現在の衛星追跡データのセットは、基準ネットワーク、衛星制御局、及び/又は、インターネット経由のようなその他の情報供給源から受信される。ステップ504で、衛星軌道データ、衛星クロックデータ、又は、両方(以下、軌道/クロックデータとして総称される)が衛星追跡データから抽出される。ステップ506で、軌道/クロックデータは、ずれを特定するために、遠隔受信機によって使用されている1セット以上の補助データのうちの軌道/クロックデータと比較される。例えば、補助データが生成された時刻以降、衛星の軌道は変化し、又は、衛星のクロックはドリフトしている。よって、現在の衛星追跡データのセットから抽出された軌道/クロックデータと補助データの基礎となる軌道/クロックデータとの間にはずれがある。
【0025】
[0030]ステップ508で、特定されたずれが所定のスレッショルドを超過するかどうかの決定が行われる。例えば、衛星の軌道は、所定のスレッショルドを超えて変化している可能性があり、又は、衛星のクロックは所定のスレッショルドの外側にドリフトしている可能性がある。もしそうであるならば、プロセス500はステップ510へ進む。そうでなければ、プロセス500はステップ512で終わる。ステップ510で、特定されたずれと関連した1台以上の影響を受ける衛星は健康ではないとして警告される。
【0026】
[0031]図6は、本発明による健康ではない衛星を識別するプロセス600の別の例示的な実施形態を表すフローチャートである。プロセス600はステップ602から始まり、現在の衛星追跡データのセットが取得される。現在の衛星追跡データのセットは、基準ネットワーク、衛星制御局、及び/又は、インターネット経由のようなその他の情報供給源から受信される。ステップ604で、衛星の健康データは現在の衛星追跡データから抽出される。上述のように、暦は特定の衛星のための正確な衛星軌道及び時刻モデル情報を含む。その上、暦は、衛星の健康の表示(「健康状態」)をさらに含む。GPSにおいて、例えば、暦の変化は、ブロードキャストされる暦の健康状態を変更することによりMCSにより知らされる。ステップ606で、衛星の健康データは健康ではない衛星の有無を識別するために解析される。
【0027】
[0032]図7は、本発明による健康ではない衛星を識別するプロセス700のさらに別の例示的な実施形態を表すフローチャートである。プロセス700はステップ702から始まり、衛星信号が既知位置を有する1台以上の基準局で受信される。ステップ704で、各基準局の位置が遠隔受信機によって使用されている1セット以上の補助データを使用して計算される。ステップ706で、計算された位置が基準局の既知位置と比較される。基準局の位置を計算するため使用された所定の補助データのセットが健康ではない衛星に起因して無効であるならば、計算された位置は間違っている。よって、ステップ708で、計算された位置がそれぞれの既知位置を所定のスレッショルドだけ超えるかどうかが決定される。もしそうであるならば、プロセス700はステップ710へ進む。そうでなければ、プロセス700はステップ712で終わる。ステップ710で、特定されたずれと関連した1台以上の影響される衛星は健康ではないとして警告される。
【0028】
[0033]図8は本発明によるサーバーから完全性データを要求するプロセス800の例示的な実施形態を表すフローチャートである。プロセス800はステップ802から始まり、遠隔受信機から複数の衛星までの擬似距離が測定される。ステップ804で、遠隔受信機の位置が擬似距離と遠隔受信機内に格納された衛星追跡データとを使用して計算される。例えば、衛星追跡データはサーバーによって配信された補助データである。ステップ806で、計算された位置の有効性が推定される。計算された位置の有効性が推定される多数の周知の技術が存在する。例えば、測定された擬似距離と関連した事後残差が形成される。事後残差は誤差を含む擬似距離を識別するため解析される。いずれかの擬似距離が誤差を含むことが判明したならば、計算された位置は無効であると推定される。その他の技術が有効性を推定するため使用される。例えば、(事前位置及び時刻と遠隔受信機に格納された衛星追跡データとに基づく)期待擬似距離は、事前擬似距離残差を生ずるために測定された擬似距離と比較される。特定のスレッショルドを超える事前擬似距離残差は、無効な衛星追跡データを示す。有効性を推定する別の実施例は、計算された位置を事前位置と比較することである。特定のスレッショルドを超える位置差は、無効な衛星追跡データを示す。その他の実施例は、これらの方法のいずれかの組み合わせを使用するだけでなく、これらの方法の変形を使用する(計算高度、時刻などを期待高度、時刻などと比較する)。
【0029】
[0034]ステップ808で、計算された位置が有効であるかどうかについて決定がなされる。もしそうであるならば、プロセス800はステップ802へ戻り、繰り返される。そうでなければ、プロセス800はステップ810へ進み、完全性データがサーバーから要求される。完全性データは、遠隔受信機内に格納された衛星追跡データが依然として有効であるかどうかを決定するために使用される。
【0030】
[0035]図9は、本発明による健康ではない衛星を識別するプロセス900の別の例示的な実施形態を表すフローチャートである。プロセス900はステップ902から始まり、衛星制御局によって生成された停波通知データが受信される。例えば、停波通知データは、衛星制御局から直接的に受信され、又は、インターネット経由のような他の供給源を介して受信される。例えば、GPSでは、衛星コンステレーションは、マスター制御局(MCS)の制御下で世界中の局によって監視される。MCSは、インターネット上でNANU(Notice Advisories to Navstar Users)を提供することにより、将来のため計画されたか、又は、計画されていない即時の衛星停波を知らせる。
【0031】
[0036]ステップ904で、停波通知データは、健康ではない衛星を識別するため解析される。ステップ906で、識別された健康ではない衛星毎の停波の期間が決定される。例えば、識別された健康ではない衛星の停波の期間はNANUから取得される。停波通知データを使用することにより、本発明は、完全性の変更が将来計画されているか、又は、無計画であり、かつ、即時であるかどうかとは無関係に、遠隔受信機によって使用されている補助データが常にGPSコンステレーションの最新完全性状態を反映することを保証する。
【0032】
[0037]本発明の方法及び装置はGPS衛星に関して説明されているが、教示内容は擬似衛星、又は、衛星と擬似衛星の組み合わせを利用する測位システムに同様に適用可能であることが理解される。擬似衛星は、一般にGPS時刻と同期された、Lバンド搬送波信号上で変調されたPN符号(GPS信号に類似している)をブロードキャストする地上発信機である。本明細書で使用されるような用語「衛星」は、擬似衛星、又は、擬似衛星の均等物を包含することが意図され、本明細書で使用されるような用語「GPS信号」は、擬似衛星又は擬似衛星の均等物からのGPSのような信号を包含することが意図されている。
【0033】
[0038]さらに、以上の検討中、本発明は、米国の全地球測位システム(GPS)での適用に関して説明されている。しかし、これらの方法が類似した衛星システム、特に、ロシアのGlonassシステム及び欧州のGalileoシステムにも同様に適用可能であることは明白である。本明細書で使用される用語「GPS」は、ロシアのGlonassシステム及び欧州のGalileoシステムをはじめとして、このような代替的な衛星測位システムを包含する。
【0034】
[0039]以上の説明は本発明の図示的な実施形態を対称としているが、本発明のその他の実施形態及びさらなる実施形態が発明の基本的な範囲を逸脱することなく考えられ、発明の基本的な範囲は特許請求の範囲の記載によって定められる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】測位システムの例示的な実施形態を表すブロック図である。
【図2】図1の測位システムと共に用いる衛星測位システム受信機の例示的な実施形態を表すブロック図である。
【図3】図1の測位システムと共に用いる衛星測位システム受信機の例示的な実施形態を表すブロック図である。
【図4】本発明による遠隔受信機によって使用される衛星追跡データの完全性を監視するプロセスの例示的な実施形態を表すフローチャートである。
【図5】本発明による健康ではない衛星を識別するプロセスの例示的な実施形態を表すフローチャートである。
【図6】本発明による健康ではない衛星を識別するプロセスの別の例示的な実施形態を表すフローチャートである。
【図7】本発明による健康ではない衛星を識別するプロセスのさらに別の例示的な実施形態を表すフローチャートである。
【図8】本発明によるサーバーから完全性データを要求するプロセスの例示的な実施形態を表すフローチャートである。
【図9】本発明による健康ではない衛星を識別するプロセスの別の例示的な実施形態を表すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバーで第1の衛星追跡データのセットを受信するステップと、
前記第1の衛星追跡データのセットを使用して第2の衛星追跡データのセットの完全性データを生成するステップと、
前記完全性データを前記第2の衛星追跡データのセットを有する少なくとも1台の遠隔受信機へ発信するステップと、
を備える方法。
【請求項2】
前記第1の衛星追跡データのセットを使用して付加的な衛星追跡データのセットの付加的な完全性データを生成するステップと、
前記付加的な完全性データを前記付加的な衛星追跡データのセットを有する遠隔受信機へ発信するステップと、
をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ある時間に亘って前記サーバーで付加的な衛星追跡データのセットを受信するステップと、
前記付加的な衛星追跡データのセットを使用して前記完全性データを更新するステップと、
をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記完全性データが前記少なくとも1台の遠隔受信機へ定期的に発信される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記完全性データが前記少なくとも1台の遠隔受信機からの要求に応じて前記少なくとも1台の遠隔受信機へ発信される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
基準局で衛星信号を受信するステップと、
前記衛星信号及び前記第2の衛星追跡データのセットを使用して前記基準局の位置を計算するステップと、
前記完全性データを補強するため前記位置を前記基準局の既知位置と比較するステップと、
をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記完全性データがスレッショルドを超える前記既知位置からの前記位置の偏差に応じて前記遠隔受信機へ発信される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の衛星追跡データのセットが第1の軌道データと第1のクロックデータのうちの少なくとも一方を含み、前記第2の衛星追跡データのセットが第2の軌道データと第2のクロックデータのうちの少なくとも一方を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記生成するステップが、
軌道のずれを特定するために前記第1の軌道データを前記第2の軌道データと比較する工程と、
クロックのずれを特定するために前記第1のクロックデータを前記第2のクロックデータと比較する工程と、
のうちの少なくとも一方を備える、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記完全性データがスレッショルドを超える特定された軌道のずれと別のスレッショルドを超える特定されたクロックのずれのうちの少なくとも一方に応じて前記遠隔受信機へ発信される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の衛星追跡データのセットが衛星の健康データを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記生成するステップが、健康ではない衛星を識別するために前記衛星の健康データを解析する工程を備える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記完全性データが識別された健康ではない衛星に応じて前記遠隔受信機へ発信される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の衛星追跡データのセットが基準局のネットワークと衛星制御局のうちの少なくとも一方から受信される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の衛星追跡データのセットが暦データを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の衛星追跡データのセットが擬似距離モデルと暦データと長期衛星軌道データのうちの少なくとも一つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記完全性データが少なくとも1台の健康ではない衛星の識別情報と前記少なくとも1台の健康ではない衛星の停波の期間のうちの少なくとも一方を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
遠隔受信機からコンステレーション内の複数の衛星までの擬似距離を測定するステップと、
前記擬似距離及び前記遠隔受信機内に格納された衛星追跡データを使用して前記遠隔受信機の位置を計算するステップと、
前記位置が有効であるかどうかを推定するステップと、
無効な位置に応じてサーバーから前記衛星追跡データの完全性データを要求するステップと、
を備える方法。
【請求項19】
前記完全性データが前記サーバーによって受信された別の衛星追跡データのセットを使用して生成される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記推定するステップが、
前記擬似距離に関連した事後残差を形成する工程と、
誤差を含む擬似距離を特定するために前記事後残差を解析する工程と、
を備える、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記完全性データが特定された誤差を含む擬似距離に応じて要求される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
第1の衛星追跡データのセットを受信する手段と、
第2の衛星追跡データのセット及び前記第2の衛星追跡データのセットを有する少なくとも1台の遠隔受信機の識別情報を格納するデータベースと、
前記第1の衛星追跡データのセットを使用して前記第2の衛星追跡データのセットの完全性データを生成するプロセッサと、
前記完全性データを前記少なくとも1台の遠隔受信機へ発信する手段と、
を備える、衛星測位システムサーバー。
【請求項23】
前記第1の衛星追跡データのセットが暦データを含む、請求項22に記載のサーバー。
【請求項24】
前記第2の衛星追跡データのセットが擬似距離モデルと暦データと長期衛星軌道データのうちの少なくとも一つを含む、請求項22に記載のサーバー。
【請求項25】
前記完全性データが、少なくとも1台の健康ではない衛星の識別情報と前記少なくとも1台の健康ではない衛星の停波の期間のうちの少なくとも一方を含む、請求項22に記載のサーバー。
【請求項26】
衛星測位システム受信機からコンステレーション内の複数の衛星までの擬似距離を測定する衛星信号受信機と、
衛星追跡データを格納するメモリと、
前記擬似距離及び前記衛星追跡データを使用して前記衛星測位システム受信機の位置を計算し、前記位置が有効であるかどうかを推定するプロセッサと、
無効な位置に応じて前記衛星追跡データと関連した完全性データの要求をサーバーへ発信するワイヤレストランシーバーと、
を備える、衛星測位システム受信機。
【請求項27】
ワイヤレストランシーバー及び第1の衛星追跡データのセットを格納するメモリを有する遠隔受信機と、
前記遠隔受信機とワイヤレス通信するサーバーと、
を備え、
前記サーバーが第2の衛星追跡データのセットを受信し、前記第2の衛星追跡データのセットを使用して前記第1の衛星追跡データのセットの完全性データを生成し、前記完全性データを前記遠隔受信機へ発信し、
前記遠隔受信機が前記ワイヤレストランシーバーを使用して前記完全性データを受信する、
測位システム。
【請求項28】
衛星制御局によって生成された停波通知データを受信するステップと、
健康ではない衛星及び前記健康ではない衛星の対応する停波の期間を特定するために前記停波通知データを解析するステップと、
前記特定された健康ではない衛星及び前記停波の期間に応じて衛星追跡データのセットの完全性データを生成するステップと、
前記完全性データを前記衛星追跡データのセットを有する少なくとも1台の遠隔受信機へ発信するステップと、
を備える方法。
【請求項29】
前記衛星制御局が全地球測位システム(GPS)衛星のマスター制御局(MCS)であり、
前記停波通知データが1個以上のNANU(Notice Advisories to Navstar Users)を含む、
請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記完全性データが前記少なくとも1台の遠隔受信機へ定期的に発信される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記完全性データが前記少なくとも1台の遠隔受信機からの要求に応じて前記少なくとも1台の遠隔受信機へ発信される、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記停波通知データがインターネットを介して受信される、請求項28に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−511766(P2007−511766A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539974(P2006−539974)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/038117
【国際公開番号】WO2005/050242
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(504174973)グローバル ロケート, インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】