説明

遠隔診断システム

【課題】
集音手段で収集した内部音と外部音を送受信手段で遠隔地にある診断手段に送り、診断対象生体などの診断を行うシステムにおいて、内部音の増幅に、電気的増幅器を用いず、増幅を行い、低コストで、電気的トラブルのない集音手段を提供する。

【解決手段】
内部音と外部音の集音手段と、内部音及び又は外部音より行う診断対象生体などの遠隔診断手段と、両手段を繋ぐ送受信手段を有する遠隔診断システムにおいて、集音手段が次の手段を有する。
第1に、診断対象生体などの内部音集音部と、外部音集音部とを有する。
第2に、筺体内部に内部音及び外部音を電気的信号に変換して送受信手段に送るマイクロフォンを有する。
第3に、内部音と外部音との分離構造部及び内部音を増幅する増幅構造部とを筐体内部に電気的手段でない筐体設計により実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断対象生体や診断対象物体が発生する音である内部音と内部音以外の外部音を収集する集音手段と、内部音及び又は外部音より診断対象生体や診断対象物体の状態を診断する遠隔に存在する診断手段と、集音手段と診断手段とを繋ぐ送受信手段とを有する遠隔診断システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
聴診器を使用して得られる人体及び動物の心音・腸音・呼吸音・嚥下音等の内部音、配管設備・機器等物体の内部音などの正常・異常は、現場で専門家及びそれらの分野を熟知している者が聴診器を使用して診断するのが通常であった。
【0003】
しかし、専門家が各所に常時駐在しているわけではない。迅速に、又は定期的に専門家の診断を受けたい場合、その都度専門家のいる場所に診断対象生体及び診断対象物体を移動させなければならず、人体、動植物、物体が現場から移動不可能であれば、専門家の現場出向を依頼するしかない。本来専門家の数が少ないため、専門家の現場出向可否の問題、及び専門家が診断対象を実際に診断できるまでのタイムラグにおいて、異常の度合が大きくなり、最悪の場合、処置不可能となることがあった。
【0004】
医療の分野では、従来より,専用の通信端末を利用してユーザー側から病院などに設置されたホストパソコンへ計測データを送信するシステムは存在した。しかし,このシステムは1方向通信であり測定した患者データに対して医師がリアルタイムで対応できず,さらに,高価な通信端末やそれに対応した機器を有する専用の施設でしか利用できないものであった。
【0005】
そこで,特許文献2に示される眼科遠隔システムや特許文献1に示されるような携帯電話と電子聴診器を用いたシステムが提供された。特許文献1に示されるシステムでは,携帯電話に電子聴診器の聴診音を聴診データに変換する機構を設けるなど専用の携帯電話が必要となるものであって,聴診音を音の振動波として直接聞けるものでもなく,一般に普及している携帯電話で利用できるものでもなかった。その上,携帯電話の改良を伴うものであるので導入には多くの費用が必要とされるものであった。
【0006】
これらの問題点を解決するため特許出願人は、既に特願2008−279468号の特許出願を行った。この出願に係る発明では、聴診器により直接聴診音を聞くことができるとともに,その音を携帯電話やその他の記録媒体つき通信機器を利用して、遠隔地に音声データを送り,遠隔地での診断等の対処を可能とした。さらに、診断対象生体及び診断対象物体の異常を早期発見する手段として、音声で判断できる専門的な診断を自動解析によって行うことのできる聴診器音声データ送受信比較分析診断方法を同時に提供した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−159682号公開特許公報
【特許文献2】特開2008−284273号公開特許公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の解決課題は、次の通りである。
第1に、集音手段で収集した音を送受信手段で遠隔地にある診断手段に送り、遠隔地で診断対象生体や診断対象物体の診断を可能とする。
第2に、先の特許出願でも着目されていなかった内部音と外部音を区別して集音し、診断の対象とすることにより、診断対象生体や診断対象物体からの音とそれ以外の音を区別し、正確な診断を可能とする。
第3に、集音手段で内部音と外部音を区別して集音し、内部音を診断対象音とするとともに、通話音声を外部音として用いることを可能とする。
第4に、増幅が必要な内部音の増幅に、電気的増幅器(アンプ)を用いず、筺体設計による反射板で増幅を行うため、低コストで、電気的トラブルの原因を抑えた集音手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、第1の発明は、診断対象生体や診断対象物体が発生する音である内部音と内部音以外の外部音を収集する集音手段と、内部音及び又は外部音より診断対象生体や診断対象物体の状態を診断する遠隔に存在する診断手段と、集音手段と診断手段とを繋ぐ有線又は無線による送受信手段とを有する遠隔診断システムにおいて、集音手段が次の手段を有するものとする。
【0010】
第1に、診断対象生体や診断対象物体の音を直接聴音する内部音集音部を有する。
第2に、内部音以外の外部音を収集する外部音集音部を有する。
第3に、筺体内部に設置され内部音及び外部音を電気的信号に変換して前記送受信手段に送るマイクロフォンを有する。
第4に、筐体内部に設けた電気的手段でない筐体設計による分離壁でマイクロフォンに送られる内部音と外部音を分離する分離構造部を有する。
第5に、筺体内部に形成される電気的手段でない筺体設計による反射板でマイクロフォンに送られる内部音を増幅する増幅構造部を有する。
【0011】
第2の発明は、第1の発明における内部音集音部が、聴診器の集音ヘッドを用いたものである遠隔診断システムである。
【0012】
第3の発明は、第1又は第2の発明における診断手段が、診断能力を有する人及び又は内部音データより異常を検知することのできるソフトを組み込んだパソコンである遠隔診断システムである。
【0013】
第4の発明は、第1又は第2又は第3の発明の改良であって、次の手段を付加したことを特徴とする遠隔診断システムである。
第1に、上記診断手段たるパソコンから、診断対象生体や診断対象物体が発生する音である内部音と内部音以外の外部音を収集する集音手段に接続された送受信手段に定時に自動通信を行い、該送受信手段が自動着信して、該送受信手段から前記パソコンに内部音を取り入れる。
第2に、該パソコン内に組み込まれたソフトにより、診断対象生体及び診断対象物体の正常又は異常を検知する。
第3に、異常を検知した場合に、該パソコンが上記診断能力を有する人に対して該異常を通信する。
第4に、受信をした診断能力を有する人が、前記集音手段と接続された送受信手段に対して、手動により通信し、該集音手段と接続された送受信手段から聞こえた前記内部音及び外部音から前記異常との検知の信憑性を判断する。
【0014】
第5の発明は、第1から第4のいずれかの発明における送受信手段が、携帯電話である遠隔診断システムである。
【0015】
第6の発明は、第1又は第2又は第3の発明における送受信手段が、免許申請や使用登録の不要な電波を使用して無線通信を行う短距離通信デバイスであり、第1又は第2又は第3の発明における診断手段が、免許申請や使用登録の不要な電波を使用して無線通信を行うことが可能とされたパソコンを用いるものである遠隔診断システムである。
【0016】
第7の発明は、第1から第4のいずれかの発明における送受信手段が、診断手段との間の通信手段となる主たる送受信手段である携帯電話と、該携帯電話と集音手段との間の無線通信手段となる従たる送受信手段である短距離通信デバイスよりなるものであって、該短距離通信デバイスが免許申請や使用登録の不要な電波を使用して無線通信を行うものである遠隔診断システムである。
【0017】
第8の発明は、第1から第4のいずれかの発明の改良であって、上記主たる送受信手段である携帯電話と上記従たる送受信手段である短距離通信デバイスとの間に、中継デバイスを有するものであって、該中継デバイスが、音声入力部と、記録部と、前記携帯電話と通信を行う子機機能を有する通信デバイスと、前記短距離通信デバイスと通信を行う親機機能を有する通信デバイスとを有し、前記子機機能を有する通信デバイス及び前記親機機能を有する通信デバイスが、免許申請や使用登録の不要な電波を使用して無線通信を行うものである遠隔診断システムである。
【0018】
第9の発明は、第6又は第7又は第8の発明に次の手段を付加した遠隔診断システムである。即ち、集音手段における上記筐体に、診断対象生体や診断対象物体の音を直接聴音する内部音集音部と内部音以外の外部音を収集する外部音集音部とを設けると共に、上記短距離通信デバイスを前記筐体内部に設けた点を付加した遠隔診断システムである。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、集音手段で収集した音を送受信手段で遠隔地にある診断手段に送り、遠隔地で診断対象生体や診断対象物体の診断をする場合に、集音手段が内部音と外部音とを区別して集音するため、診断手段が診断対象生体や診断対象物体からの音(内部音)とそれ以外の音(外部音)を区別でき、正確な診断が可能となった。
【0020】
さらに、増幅が必要な内部音の増幅に、電気的増幅器(アンプ)を用いず、筺体設計による増幅(筐体内に反射板を設けて行う増幅)を行うため、低コストで、電気的トラブルの原因が抑えられた集音手段を提供することができ、動きの予測のできない動物(牛や豚などの家畜)に集音手段を装着し、診断を行うことができるものとなった。
【0021】
第5の発明の効果ではあるが、送受信手段として携帯電話を用いることで外部音として通話をしながら、内部音を診断対象音とすることが可能となった。その他、携帯電話の機能を使用し、集音の時間情報や位置情報なども得ることができるうえ、診断手段の存在すべき範囲も国内に限定されることなく広範囲となった。
【0022】
送受信手段に、免許申請や使用登録の不要な電波(例えば、2.4GHz帯の電波)を使用して無線通信を行う短距離通信デバイスを用いれば、畜舎など限定された狭い範囲内で家畜の遠隔診断を行う場合、当該システムを低コストで施行することができるものとなった。
【0023】
第4の発明の効果ではあるが、診断手段たるパソコンが、集音手段に接続された送受信手段に定時に自動通信を行い、該送受信手段が自動着信して、内部音を取り入れ、該パソコン内に組み込まれたソフトにより、正常又は異常を検知し、異常を検知した場合に、該パソコンが診断能力を有する人に対して該異常を通信し、受信をした診断能力を有する人が、手動により集音手段と接続された送受信手段に通信し、聞こえた内部音及び外部音から前記異常との検知の信憑性を判断することを行うので、自動的に診断ができるとともに、異常検知時にはより正確な診断ができる遠隔診断システムとなった。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】集音器の内部を示す断面説明図
【図2】集音器内部での内部音の進行を示す断面説明図
【図3】集音器内部での外部音の進行を示す断面説明図
【図4】牧場などに放牧されている家畜を診断対象とする場合の説明図
【図5】遠隔工場内の設備を診断対象とする場合の説明図
【図6】短距離通信デバイスを用いた場合の説明図
【図7】短距離通信デバイスと中継デバイスを用いた場合の説明図
【図8】畜舎内及び付近で飼育の家畜を診断対象とする場合の説明図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下,図面に従って,実施例とともに本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明における集音手段となる集音器1の内部を示す断面説明図であり、筐体2には内部音を収集する集音ヘッド3が取り付けられており、図1では示されていないが、筐体2には外部音(内部音以外の音)を収集する外部音進入層も形成されている。尚、集音ヘッド3は、通常用いられる聴診器(例えば、ナース型聴診器)の集音ヘッドであって良い。
【0026】
筐体2内部には、外部音及び内部音を拾い電気的信号に変換して送受信手段(この集音器1が用いられる実施例では携帯電話8となる)に送るマイクロフォン4と、筐体2内部に進入した外部音と内部音を分離するための分離チューブ5と、内部音を電気的手段でない手段で増幅するための後方反射板6及び前方反射板7が配置されている。
【0027】
図2は集音器1内部での内部音の進行を示す断面説明図であり、図3は集音器1内部での外部音の進行を示す断面説明図ある。図2中符号9、90、91で示される点線は内部音であり、図3中符号10で示される曲線は外部音である。
【0028】
内部音9と外部音10とは、集音ヘッド3及び外部音集音層(図示されていないが、図3中太い矢印付近の筐体2に形成されている)という別の進入口より集音器1内に入る。マイクロフォン4の周りに狭い内部音通音路11と外部通音路12を作る末広の分離チューブ5が設置され、内部音9と外部音10は該分離チューブ5により分離されて、マイクロフォン4に向かって進行する。
【0029】
具体的には、図3に示されるように外部音10は、外部音集音層より集音器1内部の筺体2の内側と分離チューブ5の外側で形成される外部音通音路12に入り、集音器1の筐体2の内側と分離チューブ5の外側で反射をしながら、曲線振動音となって図3に示されるように外部音通音路12内をマイクロフォン4に向かって進行する。尚、この曲線振動音がマイクロフォン4に集音される時は、内部音9に対し奥の位置(モノラルの場合)又は奥の左右の位置(ステレオの場合)の音として認識できるよう集音される。
【0030】
内部音9には、図2に示されるように、集音ヘッド3より直進して直接マイクロフォン4に向かう内部音90と、後方反射板6及び前方反射板7で反射してからマイクロフォン4に向かう内部音91との2種類がある。内部音91は、まず、集音ヘッド3よりマイクロフォン4の外側と分離チューブ5の内側の間で形成される内部音通音路11を後方に向かって進行する。その後、マイクロフォン4の後方に設けられる後方反射板6に反射し、分離チューブ5の内側面をなぞりながら内部音通音路11を前方に向かって進行し、マイクロフォン4の前方に設けられる前方反射板7に反射した後、マイクロフォン4に向かって進入する。
【0031】
この2種類の内部音90、91が存在することにより内部音9は増幅される。即ち、直進での集音のみの場合(内部音90)に対して2乗した音量値となり、音が大きくなった状態でマイクロフォン4に集音される。実施例での音の増幅は、前方反射板7及び後方反射板6の設置によっている。増幅の度合は、反射率、反射回数、反射角度、筐体の材質などで決定される。
【0032】
外部音10のプロセスは内部音9より若干遅れてマイクロフォン4に集音される。直接マイクロフォンに向かう内部音90及び反射してからマイクロフォンに向かう内部音91の合計の距離よりも外部音10の曲線での道のりの方が長いためである。従って、直線振動音である内部音9は外部音10に対して中央又は手前の位置の音として認識できるよう集音される。
【0033】
パソコン13には、内部音異常検知ソフトが組み込まれている。該ソフトについては後に述べる。
【0034】
図4は、牧場などに放牧されている家畜を診断対象とする場合の説明図であり、図5は、遠隔工場内の設備を診断対象とする場合の説明図である。この場合、送受信手段は携帯電話8であり、診断手段はパソコン13及び獣医14や遠隔監視者24など専門知識を有する人である。これらの実施例の場合、携帯電話8を用いているため、海外に携帯電話8をかければ他国間同士でも遠隔監視や診断ができる。
【0035】
まず、図4に示される牧場などに放牧されている家畜(牛A1、A2、A3、A4)を診断対象とする場合について説明する。携帯電話8は集音器1のマイクロフォン4と接続され、集音器1及び携帯電話8は診断対象となる牛A1、A2、A3、A4に装着されている。尚、集音器1の集音ヘッド3は、診断音の聴診に適する位置に直接接するよう装着されている。
【0036】
内部音異常検知ソフトは、次のように動作する。第1に、診断手段たるパソコン13から定時に牛A1、A2、A3、A4に装着された携帯電話8に自動的に電話をかける。この時、牛A1、A2、A3、A4に装着された携帯電話8が、自動着信をする。第2に、パソコン13は携帯電話8と通話して、内部音9をパソコン13に取り入れる。第3に、パソコン13で、例えば牛A4の内部音9が既に入力されている適正内部音データと異なり、異常であることを検知するとする。第4に、パソコン13が牛A4に異常がでたという知らせを獣医14及び牧場主15に送信する。受信した獣医14が本当に異常かどうか確認のため牛A4に装着された携帯電話8に電話をかける。牛A4に装着されている携帯電話8が自動着信し、このかけた電話で牛A4の内部音9及びその他の外部音10が聞こえ、総合的診断がなされる。
【0037】
次に、図5に示される遠隔工場内(危険区域C1、C2、C3、C4)の設備を診断対象とする場合について説明する。携帯電話8は、集音器1のマイクロフォン4と接続され、集音器1及び携帯電話8は診断対象となる危険区域C1、C2、C3、C4の設備に装着される。尚、集音器1の集音ヘッド3は、診断音の聴診に適する位置の危険区域C1、C2、C3、C4の設備に直接接するよう装着されている。
【0038】
内部音異常検知ソフトは次のように動作する。第1に、診断手段たるパソコン13から定時に危険区域C1、C2、C3、C4の設備に装着した携帯電話8に電話をかける。この時、危険区域C1、C2、C3、C4の設備に装着されている携帯電話8が、自動着信をする。第2に、パソコン13は、携帯電話8と通話して、設備の内部音9をパソコン13に取り入れる。第3に、パソコン13で、例えば危険区域C4の設備の内部音9が既に入力されている適正内部音データと異なり、異常であることを検知するとする。
【0039】
第4に、パソコン13が危険区域C4の設備に異常がでたという知らせを判断対象たる遠隔監視者24に送信する。受信した遠隔監視者24が本当に異常かどうか確認のため危険区域C4の設備に装着されている携帯電話8に電話をかける。危険区域C4の設備に装着されている携帯電話8が自動着信し、このかけた電話で危険区域C4の設備の内部音9及びその他の外部音10が聞こえ、総合的診断がなされる。
【0040】
以上は広範囲に診断対象が点在する場合の遠隔診断システムに関するものであり、比較的狭い畜舎内に存在する家畜(実施例では豚B1)などが診断対象の場合、送受信手段を免許申請や使用登録の不要な電波を使用して無線通信を行う短距離通信デバイスとすることも可能である。図6の実施例では、通常電話機の親機と子機との通信に使用される2.4GHz帯の無線通信電波を用いる短距離通信デバイス(以下、単に短距離通信デバイス17という)が、用いられる。
【0041】
短距離通信デバイス17は、通常電話機の子機に相当し、図6に示されるように、集音器1の筺体2内に内蔵される。集音器1の短距離通信デバイス17と通信を行うパソコン13側には、通常電話の子機と通信する親機に相当する通信デバイスを内蔵したものやUSBドングル(USB通信端末)が用いられる。図6に示される実施例では、短距離通信デバイス17による通信が主たる送受信手段となる。
【0042】
図7及び図8は、畜舎内及び付近で飼育の家畜(豚B1、B2、B3、B4)を診断対象とする場合の説明図である。図8が全体を示し、図7が部分を示す。このシステムでは、パソコン13は携帯電話18と通信し、集音器1の筺体2に内蔵された短距離通信デバイス17と該携帯電話18とが中継デバイス19を介して通信する。携帯電話18とパソコン13による通信が主たる送受信手段であり、携帯電話18と中継デバイス19との通信及び、中継デバイス19と短距離通信デバイス17との通信が従たる送受信手段である。
【0043】
図7及び図8における中継デバイス19は、音声入力部21、記録部22及び免許申請や使用登録の不要な電波(例えば、2.4GHz帯の電波)を使用して無線通信を行う短距離通信デバイス17、20とを有する。尚、中継デバイス19を必要とするのは、大量の診断対象の個別識別を可能とするためである。この時、中継デバイス19内の短距離通信デバイス17は、中継デバイス19と携帯電話18との短距離通信における子機として働き、中継デバイス19内の短距離通信デバイス20は、集音器1内の短距離通信デバイス17の親機として働く。
【0044】
短距離通信デバイス17が内蔵された集音器1は、診断対象となる畜舎16内及び付近の豚B1、B2、B3、B4に装着される。
【0045】
内部音異常検知ソフトは次のように動作する。第1に、定時にパソコン13から畜舎16内の携帯電話18に電話をかける。畜舎16内設置の携帯電話18は、自動着信し、豚B1、B2、B3、B4装着の短距離通信デバイス17に中継デバイス19を介して通信する。集音器1で集音している内部音9が、短距離通信デバイス17から中継デバイス19を介した携帯電話18の内部音9となる。
【0046】
第2に、携帯電話18で聞こえている内部音9をパソコン13に取り入れる。第3に、パソコン13で、例えば豚B4の内部音9が既に入力されている適正内部音データと異なり、異常を検知するとする。第4に、パソコン13が豚B4に異常がでたという知らせを獣医14及び牧場主15に送信する。受信した獣医14が本当に異常かどうか確認するため携帯電話18に電話をかける。携帯電話18が自動着信し、このかけた電話で豚B4の内部音9及びその他の外部音10が短距離通信デバイス17及び中継デバイス19を介して携帯電話18より聞こえ、総合的診断がなされる。
【符号の説明】
【0047】
1・・・・・・・・・・・・・・・集音器
2・・・・・・・・・・・・・・・筺体
3・・・・・・・・・・・・・・・集音ヘッド
4・・・・・・・・・・・・・・・マイクロフォン
5・・・・・・・・・・・・・・・分離チューブ
6・・・・・・・・・・・・・・・後方反射板
7・・・・・・・・・・・・・・・前方反射板
8、18、28・・・・・・・・・携帯電話
9・・・・・・・・・・・・・・・内部音
10・・・・・・・・・・・・・・外部音
11・・・・・・・・・・・・・・内部音通音路
12・・・・・・・・・・・・・・外部音通音路
13・・・・・・・・・・・・・・パソコン
14・・・・・・・・・・・・・・獣医
15・・・・・・・・・・・・・・牧場主
16・・・・・・・・・・・・・・畜舎
17、20・・・・・・・・・・・短距離通信デバイス
19・・・・・・・・・・・・・・中継デバイス
21・・・・・・・・・・・・・・音声入力部
22・・・・・・・・・・・・・・記録部
24・・・・・・・・・・・・・・遠隔監視者
90・・・・・・・・・・・・・・直接マイクロフォンに向かう内部音
91・・・・・・・・・・・・・・反射してからマイクロフォンに向かう内部音
A1、A2、A3、A4・・・・・牛
B1、B2、B3、B4・・・・・豚
C1、C2、C3、C4・・・・・危険区域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断対象生体や診断対象物体が発生する音である内部音と内部音以外の外部音を収集する集音手段と、内部音及び又は外部音より診断対象生体や診断対象物体の状態を診断する遠隔に存在する診断手段と、集音手段と診断手段とを繋ぐ有線又は無線による送受信手段とを有する遠隔診断システムにおいて、
集音手段が
診断対象生体や診断対象物体の音を直接聴音する内部音集音部と
内部音以外の外部音を収集する外部音集音部と
筺体内部に設置され内部音及び外部音を電気的信号に変換して前記送受信手段に送るマイクロフォンと
筐体内部に設けた電気的手段でない筐体設計による分離壁でマイクロフォンに送られる内部音と外部音を分離する分離構造部と
筺体内部に形成される電気的手段でない筺体設計による反射板でマイクロフォンに送られる内部音を増幅する増幅構造部とを、
有することを特徴とする遠隔診断システム。
【請求項2】
上記内部音集音部が聴診器の集音ヘッドを用いたものである請求項1記載の遠隔診断システム。
【請求項3】
上記診断手段が、診断能力を有する人及び又は内部音データより異常を検知することのできるソフトを組み込んだパソコンである請求項1又は2記載の遠隔診断システム。
【請求項4】
上記診断手段たるパソコンから、診断対象生体や診断対象物体が発生する音である内部音と内部音以外の外部音を収集する集音手段に接続された上記送受信手段に定時に自動通信を行い、
該送受信手段が自動着信して、該送受信手段から前記パソコンに内部音を取り入れ、
該パソコン内に組み込まれたソフトにより、診断対象生体及び診断対象物体の正常又は異常を検知し、
異常を検知した場合に、該パソコンが上記診断能力を有する人に対して該異常を通信し、
受信をした診断能力を有する人が、前記集音手段と接続された送受信手段に対して、手動により通信し、該集音手段と接続された送受信手段から聞こえた前記内部音及び外部音から前記異常との検知の信憑性を判断することを特徴とする請求項1又は2又は3記載の遠隔診断システム。
【請求項5】
上記送受信手段が、携帯電話である請求項1から4のいずれかに記載の遠隔診断システム。
【請求項6】
上記送受信手段が免許申請や使用登録の不要な電波を使用して無線通信を行う短距離通信デバイスであり、上記診断手段が、免許申請や使用登録の不要な電波を使用して無線通信を行うことが可能とされたパソコンを用いるものである請求項1又は2又は3記載の遠隔診断システム。
【請求項7】
上記送受信手段が、診断手段との間の通信手段となる主たる送受信手段である携帯電話と、該携帯電話と集音手段との間の無線通信手段となる従たる送受信手段である短距離通信デバイスよりなるものであって、該短距離通信デバイスが免許申請や使用登録の不要な電波を使用して無線通信を行うものである請求項1から4のいずれかに記載の遠隔診断システム。
【請求項8】
上記主たる送受信手段である携帯電話と上記従たる送受信手段である短距離通信デバイスとの間に、中継デバイスを有するものであって、
該中継デバイスが、音声入力部と、記録部と、前記携帯電話と通信を行う子機機能を有する通信デバイスと、前記短距離通信デバイスと通信を行う親機機能を有する通信デバイスとを有し、
前記子機機能を有する通信デバイス及び前記親機機能を有する通信デバイスが、免許申請や使用登録の不要な電波を使用して無線通信を行うものである請求項1から4のいずれかに記載の遠隔診断システム。
【請求項9】
上記集音手段における筐体に診断対象生体や診断対象物体の音を直接聴音する内部音集音部と内部音以外の外部音を収集する外部音集音部とを設けると共に、上記短距離通信デバイスを前記筐体内部に設けたものである請求項6又は7又は8記載の遠隔診断システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−217934(P2011−217934A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90036(P2010−90036)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(308036206)株式会社ハッピーリス (2)
【Fターム(参考)】