説明

遠隔診断モデリング

本発明は、診断及び保守点検方法に関し、診断及び保守点検アセンブリは複数のシステム、特に複数の車両を診断及び保守点検する中央サーバ、システム及びコンピュータプリグラムで構成されている。各システムは、前記システムの基礎となる少なくとも一つのシステム関連信号を発する。これにより診断及び/又は保守点検の基礎は、各システムに対してシステム関連信号間の少なくとも1つの関連性を決定し、前記決定された関連性を相互比較し、前記比較の結果に基づいて複数のシステムにおいて判定することにより決定される。その関連性は重要な関連性であって、前記判定された重要な関連性に基づいて、診断及び/又は保守点検の判断が下される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断及び保守点検方法、中央サーバ及びシステムを備える診断及び保守点検アセンブリ、並びに、各システムがシステムの診断オン/オフ及び/又は保守点検オン/オフの基準となる少なくとも1つのシステム関連信号を発する複数のシステム、特に複数の車両の、不良検出用コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
以下に、車両への利用に関連して本発明を詳細に説明するが、本発明は、その他のいかなる機械システムにも電気システムにも適用可能である。好適な実施形態に関して詳細に説明するが、かかる実施形態は、本発明の特許可能な範囲を限定するものではない。
【0003】
その他の機械システム又は電気システムとは、例えばエレベータ、ロボット、現金自動預け払い機、エスカレータ、航空機、船舶、及びそれらのサブシステムのことである。主なサブシステムとして、例えば、センサネットワークが挙げられる。また、本発明を、ルータ等の異なるサブシステム内の異常を監視したり検出したりするためのデータネットワークにも、通信にも適用可能である。更に、本発明による方法では、様々な運転シナリオ及び様々な車両用途の区分が可能になり、作業計画を改善したり動作可能時間を延長させたりすることができる。
【0004】
関連技術として、1台又は複数の車両を監視可能な診断及び保守点検方法が既知である。この方法では、車両から、車両の状態、サービスの要求、保守点検記録、及び操作特性が、診断及び保守点検を行うサービスセンターへ送信される。収集されたデータは、車両ごとに予め定義された基準データと比較される。サービスセンターでは、検出された基準データとの偏差に基づいて、修理、サービス、又は保守点検が必要かどうかを判定する。また、サービスセンターからは、更新情報を送信したり、車両の保守点検予定を変更したりすることもできる。
【0005】
例えば、エンジンオイル、オイルフィルタ、ブレーキ板、又はフロントガラスのワイパーブレード等の消耗部品の交換のようなサービス要求は、所定の日数又は走行距離に基づいて規定されていた。期間満了後、必要な規定の保守点検を実施するために、車両を修理工場まで運ぶ必要があった。この保守点検は、たとえ消耗部品が依然として使用可能な場合も実施されていた。その結果、修理工場への足労が頻繁になり、修理中は車両を利用できず、その結果、特に商用車の場合、不可避的な不使用期間のためコストが増大する。
【0006】
しかし、エラーや不具合を発生前に検出するためには、車両の有用性を確保するための車両点検の間隔を短くする必要がある。更に、複数の異なる機械的及び電気的部品があるため、車両が実際に動作不良を起こしている場合には、不具合の調査に時間がかかる。診断及びその後の修理にかかる時間を短縮するには、いくつかのセンサで車両を常に監視し、対応する複数の信号をサービスセンターに送信することが必要であろう。無線通信の助けがあっても、1台の車両から大量のデータがサービスセンターへ送られることは、その妨げになる。従って、殆どの方法では、車両の状態を監視し、予め選択された車両のサブシステムに対応するように事前に定められた、限られた一組のパラメータを利用している。或るパラメータが、予めそのパラメータに対して定められた基準から逸脱している場合に、修理、保守点検、又は診断のために車両を修理工場へ運ぶことが要求される。しかし、監視されていないサブシステムで不具合が発生した場合、その不具合の原因を探るために全ての車両システムを調査しなければならず、これには非常に時間がかかる。
【0007】
関連技術において既知の方法において更なる不都合な点として、監視されているパラメータの基準値は理想値として規定されているので、この理想値は実使用に則しているとは限らず、殆どの場合は車両の耐用年数の間だけに対応しており、経年劣化を考慮していないことが挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、複数のシステム内のエラーや不具合を短時間で検出及び予測し、最適な保守点検を可能にする、改良された診断及び保守点検方法並びにアセンブリを開示することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1に記載の方法、請求項14に記載のアセンブリ、請求項19に記載の中央サーバ、請求項20に記載のシステム、請求項21に記載のコンピュータプログラム、及び請求項22に記載のコンピュータ読取可能媒体によって達成される。
【0010】
本発明の概念は、各システムからもたらされるシステムの状態を示すシステム関連信号が、信号間の重要な関連性を示すことができたりできなかったりするという課題に基づく。システム間の互換性比較により、ある関連性が重要であるか否かが判定される。この比較のためには、適切な測定基準を設けることが好ましい。重要な関連性が検出された場合、この重要な関連性を、システム間で比較したり、1台のシステムで時間間隔をおいて比較したりすることに基づいて、個々のシステムの保守点検及び/又は修理の必要性が判定される。上記の方法は、時間と共に更新可能であり、例えば、消耗などに対応可能であり、当初の設計段階では想定していなかったサブシステムを監視することができる。更に、重要な関連性により、不具合とサブシステムとが関連付けられ、それによって不具合の調査にかかる時間を短縮できる。
【0011】
この関連性は、同一のシステムの異なる時点における関連信号どうしの関連性であってもよく、その場合、システムの経年挙動の検出が可能になる。或いは、この関連性は、異なるシステムの同じ時点における関連信号どうしの関連性であってもよく、その場合、対応するシステム関連信号によって特徴付けられるシステム又はシステム部品間の相互作用がわかる。更に、異なるシステムの異なる時点における関連信号どうしの関連性を判定することも可能であり、これにより、システム又はシステム部品間の相互作用の経年挙動がわかる。
【0012】
本発明の好適な一実施形態において、この関連性は、自己相関も考慮した、線形又は非線形の相関マトリックスを用いて表される。例えば、線形又は非線形の互換性は、相関マトリックスの固有ベクトルを用いて表されてもよい。別の好適な実施形態では、この関連性は、測定値の結合分布、好ましくはヒストグラム又はクラスタを用いて表わされ、後者については位相情報を有していても有さなくてもよい。
【0013】
また、検出された重要な関連性に対してノルムを定義することが好ましく、複数のシステムの重要な関連性を比較することによってノルムを定義するのが好適である。更に、定義されたノルムからの偏差を検出することが好ましい。保守点検及び/又は修理が必要かどうかの判定はその後、検出されたノルムからの偏差の存在、及び/又は検出された偏差が重要かどうか、に基づいてなされてもよい。
【0014】
全システムの重要な関連性を比較することによってノルムを定義することの利点は、実使用の条件が考慮されることである。定義されたノルムは、例えば実験室や試験台において決定される理想値ではなく、実際の操作条件においてシステム自体により決定される。また、どのシステムを調査するかを事前に定めることなく、システム関連信号間の重要な関連性の発生を判定することができるので、システムの操作が影響するシステム関連信号が得られる限り、いずれのシステムの調査も可能である。
【0015】
ノルムの定義及び/又はノルムからの偏差を、統計的手法、特に、統計的分類法を用いて検出することが好ましく、偏差の重要性は、信頼性試験の統計により数値化される。
【0016】
好適な一実施形態において、システム関連信号間の関連性は、モデルを信号に適合させることにより判定され、それによって、モデル、関連するモデルパラメータ、モデル出力、及び適合度が定義される。モデルにより、システム関連信号間の関連性を捉えることができるので、システムに関する情報取得に考慮が必要なものは、例えばモデルパラメータ又はモデル出力であり、これだけで簡単なデータ表示が得られる。その関連性が重要か否かはその後、複数のシステム内のモデルの適合度及び分散を考慮することで判定される。更に、モデルを横断的に検証してもよい。
【0017】
適合モデルにおける変化を解析することにより、例えばシステムの不具合を検出することができ、既存のモデルを改良/適合することで、システムの経年効果にモデルを適合させることができる。
【0018】
好適な一実施形態において、モデルをシステム自体に適合させて、それぞれのシステムについて、どのセンサ及びシステム関連信号を監視するかを選択した後、適合モデルどうしを比較する。この比較の結果に基づいて、最良のモデル又はノルムモデルが定義され、これが保守点検又は修理が必要か否かの判定基準となる。
【0019】
また、モデルパラメータ及び/又はモデル出力のノルム値の定義によってノルムを定義することも、ノルム値の決定に全てのシステムのモデルパラメータ/出力が反映されることになるので、有利であろう。
【0020】
好適な一実施形態において、モデルパラメータ及び/又はモデル出力のノルム値が、統計的な手法によって定められる。単純なものの十分に好適な手法は、モデルパラメータ及び/又は出力の平均値を計算することである。その後、調査対象のモデルパラメータ/出力が、例えばガウス確率密度モデルによって得られる平均値付近の適切なパラメータ分布が示す範囲外にあるか否かの検出によって、ノルムからの偏差の有無を判定してもよい。
【0021】
更に別の好適な実施形態において、特に、常に重要な関連性のモデルパラメータ及び/又はモデル出力を判定することと、モデルパラメータ及び/又はモデル出力を対応するノルム値と比較することとにより、重要な関連性を監視し、これによってノルム値からの偏差を検出することができる。また、例えば、モデルを経年変化に対応するよう適合させ続けることが好ましい。これは、異なるモデルについて適合を繰り返すことで、適切なモデルを選択することによってなされる。その利点は、ある程度の使用後又は特定の環境下での使用中にのみ発生するシステム間の相互作用を検出できるということである。例えば、砂漠のように乾燥した高温環境下の車両の摩耗は、高湿度条件下の車両の摩耗とは異なる。その結果、重要な関連性及びそのノルムは、当初のものと異なるだけではなく、車両の運転中にも異なってくる。
【0022】
好適な一実施形態において、本システムは、モデル自体の関連性及び/又は適合度を判定するステップを実行する。この結果、保守点検又は修理を実施する必要があるかどうか判定するために中央サーバ、特に、サービスセンターに送信されるデータ量が低減される。関連性の比較、重要な関連性の判定、偏差の検出、及び検出された偏差が保守点検又は修理の必要性にとって重要かどうかの判定などのその他のステップは、複数のシステムの関連性を考慮に入れながら、好ましくは中央サーバによって実行される。しかし、中央サーバが全てのステップを実行して、システムはシステム関連信号を中央サーバに送信するのみというものも、それとは逆に、システムが全てのステップを実行するもの、システム/中央サーバへのステップの割り当てが異なるものも可能である。
【0023】
別の好適な実施形態において、中央サーバとシステムとの間の通信用に、無線通信装置を開示する。
【0024】
データ量を更に低減するために、所定のシステム関連信号間の関連性を判定する要求を送信することが有利であり、どのシステム関連信号間の関連性を判定すべきかの選択は、無作為的な検索方法を用いても、任意的な検索方法を用いても、その両方を用いても可能である。
【0025】
更に有利で好適な実施形態を、添付の特許請求の範囲、以下の詳細な説明、及び図面に明示する。
【0026】
本発明の好適な実施形態を図解する添付図面に対応させて以下の詳細な説明を参照することにより、当業者は本発明を明快に理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による方法の好適な一実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
これより、それぞれに保守点検及び診断がなされるいくつかのサブシステムを備える、一連(=複数)の車両に関連して、本発明を説明する。好適な一実施形態として以下に示すサブシステムは、診断及び保守点検が実施される空気サスペンションシステムである。空気サスペンションシステムは、システムを例示するものにすぎない。車両に搭載され得る他のどのサブシステムも、車両そのものも、同様にシステムと考えることができる。
【0029】
本明細書では一連の車両に関連して説明するが、例えばエレベータ、ロボット、現金自動預け払い機、エスカレータ、航空機、船舶、及びそのサブシステムなど、いかなる機械システム及び電気システムにも本発明を適用することができる。重要なサブシステムとは、例えば、センサネットワークである。また、データネットワーク又は通信にも本発明を適用し、ルータ等の異なるサブシステム内の異常を監視及び検出することもできる。更に、本発明による方法では、様々な運転シナリオ及び様々な車両用途の区分が可能になり、作業計画を改善したり動作可能時間を延長させたりすることができる。
【0030】
例示的な空気サスペンションシステムでは、例えばベローや湿式タンクに設けられたセンサから、例えばベローにおける圧力(P)及びレベル(L)並びに蓄圧タンク圧(P)等のシステム関連信号が得られる。空冷システムを調査する場合は、例えばVfan(ファン速度)、τ(エンジントルク)、及びTcm(冷媒温度)等のシステム関連信号が適当であろう。システム関連信号は、そのシステムの設計者及び/又は専門家によって、無作為に又は任意的なに選択される。
【0031】
本発明による方法により、新品車両に発生し得るシステム関連信号間の未知の関連性、及び車両の耐用年数に伴い進行する関連性も、検出することができる。従って、経年変化を示す関連性も、保守点検及び診断に利用可能である。
【0032】
未知の関連性の検出のために、その関連性が判定されるシステム関連信号が無作為に選択される。それにより、第1サブシステムのシステム関連信号と第2サブシステムのシステム関連信号との間の関連性を判定することができるが、サブシステムとはメインシステムの一部である。例えば、車両(=メインシステム)内のブレーキ板の温度(=ブレーキシステムのシステム関連信号=サブシステム1)と、同じ車両(=メインシステム)内の空気冷媒(=空冷システムのシステム関連信号=サブシステム2)の間に関連性があるか否かを判定することが可能である。
【0033】
本発明により、上述のように2つのサブシステム又はサブシステムの2つのシステム関連信号を検証できるだけでなく、複数のサブシステム及び/又は複数のシステム関連信号も検証できることは言うまでもない。また、1台の車両、及び車両内の例えば少なくとも2つの噴射装置を備えるエンジンにおいて、その噴射装置は複数のシステムの役割を果たし、システム関連信号は例えば噴射ノズルの開口と噴射温度に関するものであってもよい。明らかなように、このことから、いかなる点であっても大量生産品とみなされるあらゆる製品が、システムの役割を果たすということが言える。
【0034】
関連性があるか否かは、1台の調査対象(メイン)システムでは判定されず、(メイン)システム、又はメインシステムのサブシステムの選択された同じシステム関連信号の関連性を判定するための、複数の(メイン)システム間で判定される。例えば、殆どの(メイン)システムと、選択されたシステム関連信号と間に関連性がみられる場合、その関連性は重要であると思われる。
【0035】
たとえ新品車両のシステム関連信号間に関連性が検出されなかったとしても、車両の耐用年数に関して関連性が現れるかも知れない。従って、ある程度の時間が経ってからシスレム関連信号間の関連性を判定し直すことも可能であり、好適でさえある。
【0036】
図1に示すフローチャートを参照して説明する好適な実施形態では、調査対象のシステム関連信号にモデルを適合させることによって、関連性の有無が判定され、これによってモデル、関連するモデルパラメータ、モデル出力、及び適合度が定義される。モデルは、システムの一部であるシステム関連信号間の関連性をコードする。例えば、上述したように、調査対象のサブシステムは、車両の空気サスペンションシステムであってもよい。
【0037】
車両自体は、例えばオンボードコンピュータ等、モデルをシステム関連信号に適合させるよう構成された判定部を備える。同様に、システム関連信号は、車両内のセンサネットワーク又は1つのセンサから、例えばバス又は車両内通信ネットワーク等を介して、センサから判定部に送信される。
【0038】
本発明による方法の好適な一実施形態のフローチャートを図1に示す。図1の第1ステップ1において、関連性を判定すべきシステム関連信号が選択される。この選択は、例えば、一連の車両に保守点検及び診断を実施する(中央サーバを備えた)サービスセンターで働くサービスエンジニア又は専門家が行う。使用されるシステム関連信号は、例えばサービスセンター自体が自動的に構成するものであってもよい。システム関連信号の選択には、無作為検索方法も任意的な検索方法も利用することができ、任意的な検索方法は、1台の車両の収集データに基づくものであってよい。
【0039】
第2ステップ2では、サービスセンターがシステム関連信号用のモデル構造を指定するが、このモデル構造は、調査される関連性を記述するので、システム、サブシステム、又はシステム間の互換性の特徴を示す。このモデル仕様は、複数のシステムに送信されるか、又は想定されているケースでは、一連の車両それぞれに送信される。また、それぞれの車両(システム)に信号を異なる構成で送信し、車両の操作中に、各車両の最適化アルゴリズムを用いてモデルを測定データに適合させることも可能である(ステップ3)。モデルの適合によってモデル、モデルパラメータ、モデル出力、及び適合度に関するデータが作成される。
【0040】
例えば、想定される空気サスペンションシステムには、例えばベローにおける圧力(P)及びレベル(L)並びに蓄圧タンク圧(Pw)等の、継続的に測定される多くのシステム関連信号がある。これらのシステム関連信号からは、信号がtからtまでの時点で測定されたとして、次のように表わされる、本質的に興味深い信号が得られる。
【0041】
【数1】

【0042】
この信号表及びモデル仕様を基に、例えば異なる数式などの、全て又はいくつかの信号の間の関連性を記述するモデルを適合させることが可能で、これによってサービスセンターから、モデルの一部となる式中のどの信号も制御することができ、更に、全ての考え得る組合せを適合させることができる。例えば、
【0043】
モデル1:
【数2】

或いは、
【0044】
モデル2:
【数3】

のような式が得られ、このとき、モデルパラメータM=[abc](又は後者の場合M=[abcd])は、1台の車両の測定データに適用される最適化の手法(最小2乗法等)を用いて求められる。このパラメータ適合は車両に対して行われ、それぞれの車両からは、その特定の車両について測定された関連性を記述する一式のパラメータが返信される。
【0045】
一定値を有する信号には、特別な配慮が必要である。モデルによっては、例えば遅延に基づく線形モデルなど、明確に除外しなければならないものがある。その他のモデルでは、例えば共分散がない等の理由で自動的に無視されるので、明確な除外は必要ではない。
【0046】
ステップ4において更に、モデル出力及び適合度と同様に、各車両によって適合されたモデルパラメータがそれぞれの車両から送信され、サービスセンターに戻って来る。
【0047】
サービスセンターはステップ5において、異なる車両がその指定されたモデルにどの程度適合したかを比較し、その後モデル、モデルパラメータ、モデル出力、適合度、及び車両間でどの程度モデルパラメータが異なるかを比較することによって、最良のモデル仕様を選択する(ステップ6)。
【0048】
ステップ6において、サービスセンターは、適合度を比較し、モデルの分散を計算及び比較し、全車両のモデルのクロス確認を実行することにより、モデル構成によって記述された関連性が重要か否かを判定する。一連の車両全てにモデル構成を送信し、その後、それぞれの車両から、どの程度うまく適合したか(適合度)を返信することで、それぞれの信号構成がどの程度うまく適合するかをサービスセンターにおいてテストすることもできる。このようにして、適合エラーが最も少なく、且つ/又はパラメータの分散が最も大きい構成であるものが、最も適切な構成とみなされる。明らかなように、或るモデル構成が妥当な値を示すのは1台の車両のみにとってのみであっても、その構成を試す価値がある程非常に安定した高い品質(例えば低ノイズ)を示す、最適な構成であるとみなされることもある。そのような構成も最適な構成として認めることにより、例えば、この安定した関連性を示す車両は、一連のその他全車両とは全く異なる条件下で動作していることがわかるので、環境的な影響を無視することができる。
【0049】
車両間の関連性において、有意に分散するシステム関連信号間に、重要な関連性に対応する構成が見つかった場合、この構成は「興味深い」構成として記録される。例えば、2つ以上の構成の間で区別することが出来ない場合(適合エラーの信頼性範囲が別のモデルの範囲と重複する場合など)、2つ以上の構成を「興味深い」構成として選択することも可能である。
【0050】
次のステップ7では、選択された「興味深い」モデルが一連の車両全てに送信され、それぞれの車両に連続的に適合(適応)される(ステップ8)。その後、それぞれの車両から継続的に、計算されたモデルパラメータ、モデル出力、及び適合度が返信される(ステップ8)。その後、これらのデータに基づき、それぞれの車両の保守点検又は修理の必要性の判定結果が得られる。
【0051】
所定の適合時間の後、又は十分な数の車両を調査した後、ステップ9及びステップ10において、全車両のモデルパラメータを比較することによってモデルパラメータ及び/又はモデル出力のノルムをサービスセンターが決定できるように、十分なモデルパラメータ、出力、及び適合度がサービスセンターに蓄積され、適宜の統計的手法が適用される。例えば、モデルパラメータの平均値及び標準偏差を計算するだけでもよい。モデルの比較は、例えばパラメータ間のユークリッド距離、モデルパラメータ間のマハラノビス距離、ベクトルのKrzanowski近似、クラスタ中心間の距離、位相面の間のハウスドルフ距離等の、モデルのタイプに適した距離メトリック用いて行われる。明らかなように、統計手法としては、好適な実施形態として記載した線形モデルに限らず、例えば主成分分析、自己組織化マップ、又はランダムサンプルコンセンサス法等のような、その他の手法を用いてもよい。
【0052】
車両から送信されたデータは、一旦ノルム値が定義された時点から監視され、対応するノルム値と常に比較される(ステップ11)。モデルパラメータ/出力のうちの1つ(又はいくつか)の偏差がノルムと大幅に異なる場合、車両においてそれに対応するシステムに問題がある可能性が高い。そこで、サービスセンターから車両にソフトウェアのダウンロードを開始するなど、必要な対応を取ることにより、そのシステムをより詳細に診断することができる。
【0053】
統計的手法を利用して、顕著な偏差があるかどうかの判定を行うことが好ましい(ステップ12)。顕著な偏差は、例えば、継続的にサービスセンターに返信されるモデルパラメータM(kは車両台数をK台とする指数)の共分散行列Mstdを用いた横断的な検証によって判定される。また、モデルを継続的に計算し、例えばモデルパラメータ又は出力の変化が検出された場合、又は、所定の時間が経過した後のみ、パラメータを送信してもよい。Mstdを車両の部分集合のモデルパラメータの共分散行列、M ̄は同じ車両の部分集合のモデルパラメータの平均値とすると、これらの関係は次式のように表される。
【0054】
【数4】

これにより、例えば、1台の車両からのモデルパラメータとモデル(車両)の部分集合(一連の車両)のパラメータとの偏差が顕著であるかどうかを判定する信頼性試験の統計を用いて、パラメータの重要性を判定することができる。統計的試験として、例えば、多変量正規分布等を用いて、1台の車両と部分集合との間で検出された偏差を計算することが考えられる。
【0055】
顕著な偏差が検出された場合、サービスセンターから、ステップ13において、偏差が検出されたシステムに「故障」信号を設定し、その車両に例えば保守点検、修理、又は追加診断が必要である旨のメッセージを送信することができる(ステップ14)。
【0056】
また、サービスセンターは、値が決定される前に、他の車両とは異なる環境下又は他の車両とは異なる条件で使用されていたモデルを、母集団の車両からサービスセンターにおいて除外できるような機構を備えてもよい。例えば、修理やユーザーの休暇などのために長期間車両が使用されない、或いは、例えば通常は温暖な気候で使用されている車両を砂漠で使用するなど、予期せずして車両が異なる環境下で使用されることがある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各システムが少なくとも1つのシステム関連信号を発する複数のシステムを診断及び/又は保守点検する方法であって、
各システムに対して、システム関連信号の間の少なくとも1つの関連性を決定するステップと、
決定された関連性を相互比較するステップと、
比較の結果に基づいて、重要な関連性を判定するステップと、
前記判定された重要な関連性に基づいて、診断及び/又は保守点検の判断を下すステップとを含む方法。
【請求項2】
各システムに対して少なくとも1つの関連性を決定する前記ステップが、
異なる時点において、同じシステム関連信号の間で、且つ/或いは、
同じ時点において及び/又は異なる時点において、異なるシステム関連信号の間で、
実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記関連性が、線形又は非線形により表わされる相互関係であり、且つ/又は
該関連性の表現として、位相情報を含む又は含まないヒストグラム又はクラスタによる表現を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数のシステムの重要な関連性を比較することにより、前記決定された重要な関連性のノルムを定義するステップと、
該ノルムからの偏差を検出するステップと、
該ノルムからの偏差の重要性を判定するステップとのうち少なくとも1つを更に含み、
前記偏差を検出するステップ及び偏差の重要性を判定するステップが、好適には、統計的分類方法をはじめとする統計的方法によって実行され、
特に、前記偏差の重要性を判定するステップが、統計的信頼性試験によって実行される、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記診断及び/又は保守点検の判断が、
前記複数のシステムから個々のシステムに対して下され、且つ
好適には前記重要な関連性のノルムから検出された偏差に基づいて下される、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記関連性の決定は、モデルを信号に適合させることにより行われ、その結果、前記モデル、関連するモデルパラメータ、モデル出力、及び適合度が定義される、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記適合モデルのクロス確認を実行するステップと、
前記複数のシステムの中で適合したモデルの偏差を決定するステップとのうち少なくとも1つを更に含み、
前記重要な関連性の判定が、好適にはモデルの適合度及び/又はモデルの偏差に鑑み行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ノルムを定義するステップが、
モデルパラメータ及び/又はモデル出力のノルム値を定義するステップを含み、
前記ノルム値が特に、全システムのモデルパラメータ及び/又はモデル出力から決定される、請求項6又は請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記モデルパラメータ及び/又はモデル出力のノルム値が、
統計的方法、特に、M=[abc]且つabc=モデルパラメータ/出力の場合の平均値M ̄、及び/又は全てのシステムのモデルパラメータ/出力の共分散マトリックスを計算することによって定義され、
好適には前記ノルムからの顕著な偏差が、適切なパラメータ化分布、特に、正規確率密度モデルによって定義された許容範囲を外れている場合に定義される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記重要な関連性が、ノルムからの偏差を検出するために監視され、
該監視が、常に異なるモデルを適合させ、適合したモデルから適切なモデルを選択し、適切な適合モデルのモデルパラメータをノルム値と比較することによって実行される、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記関連性の決定及び/又は前記モデルの適合ステップが、各システム自体によって実行され、
前記関連性の決定及び/又は前記モデルの適合ステップ以外のステップが、好適にはサービスセンターによって実行され、
該サービスセンターが、好適には、前記各システムに対する前記関連性の決定の要求を、特に無線通信によって送信する、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記関連性が決定される少なくとも1つのシステム関連信号が、無作為又は任意的に決定される、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記システムが、車両機器又は建設機器、通信ネットワーク、及び/又はセンサネットワークをはじめとする機械システム又は電気システムである、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載の方法を実行するためのアセンブリであって、
診断及び/又は保守点検が実行される少なくとも2台のシステムであって、それぞれが、少なくとも1つのシステム関連信号を発し、且つ、該システム関連信号間の少なくとも1つの関連性を決定するよう構成された少なくとも2台のシステムと、
中央サーバであって、相互に決定された関連性を比較する比較部と、前記比較の結果に基づいて、重要な関連性を判定する判定部と、前記判定された重要な関連性に基づいて、診断及び/又は保守点検の判断を下す診断/保守点検部とを有する中央サーバとを備えるアセンブリ。
【請求項15】
前記中央サーバ及び各システムの両方が更に、
好適には、無線通信器を備えた通信装置をそれぞれに含み、
前記中央サーバの通信装置が、システム関連信号の間の少なくとも1つの関連性の要求を各システムに送信するよう構成され、
前記各システムの通信装置が、前記要求を受信して、要求された関連性についての信号を送信するよう構成されており、
前記中央サーバの通信装置が更に、前記送信された要求された関連性についての信号を受信するよう構成される、請求項14に記載のアセンブリ。
【請求項16】
前記各システムが、
異なる時点において同じシステム関連信号の間で、且つ/或いは、
同じ時点において及び/又は異なる時点において、異なるシステム関連信号の間で、少なくとも1つの関連性を決定するよう構成される、請求項14又は請求項15に記載のアセンブリ。
【請求項17】
前記各システムが更に、モデルの信号への適合を実行するよう構成されており、その結果、前記モデル、関連するモデルパラメータ、モデル出力、及び適合度が定義される、請求項14乃至請求項16のいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項18】
前記中央サーバが更に、請求項3乃至請求項12のいずれか1項に記載のステップを実行するよう構成されており、
前記中央サーバ及び/又はシステムのうち少なくとも1つが、好ましくは、前記関連性が決定されるシステム関連信号の選択を実行するよう構成されており、
前記選択が、好ましくは、無作為的な検索方法及び/又は任意的な検索方法を利用して実行される、請求項14乃至請求項17のいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項19】
請求項14乃至請求項18のいずれか1項に記載のアセンブリの一部として実装可能であり、
請求項1又は請求項3乃至請求項12のいずれか1項に記載の、対応する方法ステップを実行するよう構成された、中央サーバ。
【請求項20】
請求項14乃至請求項18のいずれか1項に記載のアセンブリの一部として実装可能であり、且つ、
請求項1又は請求項2、或いは、請求項6又は請求項11に記載の対応する方法ステップを実行するよう構成された、
少なくとも1つのシステム関連信号を発するシステムであって、
該システムは、好適には、車両機器又は建設機器、通信ネットワーク、及び/又はセンサネットワークをはじめとする機械システム又は電気システムである、システム。
【請求項21】
請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載の方法を実行する、複数のシステムを診断及び/又は保守点検するためのコンピュータプログラムであって、
請求項19に記載の中央サーバ及び/又は請求項20に記載のシステムの一部である中央演算処理装置(CPU)によって実行されるコンピュータプログラム。
【請求項22】
請求項21記載のコンピュータプログラムを備えるコンピュータ読取可能媒体。

【図1】
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【公表番号】特表2010−527089(P2010−527089A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508335(P2010−508335)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【国際出願番号】PCT/SE2008/000327
【国際公開番号】WO2008/140381
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(502196511)ボルボ テクノロジー コーポレイション (52)
【Fターム(参考)】