説明

遠隔講義システム

【課題】多人数参加型・双方向の遠隔講義において、講師が生徒を指名する際の操作負荷を軽減する。
【解決手段】遠隔講義システムは、講義を受講する生徒がそれぞれ使用する生徒端末と、生徒端末と通信ネットワークを介して接続され講師が使用する講師端末と、講師端末に対して所定の入力操作が行われたとき、複数の生徒端末のそれぞれを特定する生徒識別子の中から所定の手順に従って一の被指名生徒識別子を選択する指名順計算処理部とを備える。講師端末の表示装置の所定領域には、被指名生徒識別子によって特定される生徒端末に対応する生徒を特定する情報が表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信ネットワークを利用した遠隔講義システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、講義室に生徒が集まり、その講義室に設置された中継システムを用いて遠隔地の講師と接続して講義を行うテレビ会議形式の遠隔講義が行われてきた。
【0003】
ネットワークの広帯域化、クライアント端末として用いられるパソコンなどの低価格化により、講義室に多数の生徒が集まるのではなく、生徒が自宅などから個別の端末を用いて中継ネットワークに接続する遠隔講義(個別遠隔講義)が可能となってきている。
【0004】
このようなシステムを用いた多人数参加型(セミナー形式)の遠隔講義では、講師の音声、映像、電子白板情報などが講義サーバ経由で生徒端末に配信される。講師は講義中に、必要に応じて講師端末から画面切り替えや発言者選択などの講義進行操作を行う。
【0005】
以下、遠隔講義に関する従来技術の文献例を挙げる。
【特許文献1】特開2002−117153号公報
【特許文献2】特開2002−333820号公報
【特許文献3】特開2007−102344号公報
【特許文献4】特開平11−338339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
セミナー形式の遠隔講義において、講師は生徒を指名して回答を求める。セミナー形式の遠隔講義では、こうした双方向の通信によって生徒の理解度を確かめることができる利点がある。
【0007】
しかしながら、遠隔講義では、講師は生徒と直接の面識がない、生徒個別の情報について把握できない、参加中の生徒の受講状況を知ることが難しい、などの状況が発生する可能性がある。このような事情のために、講師がどの生徒を指名するのが適切か判断に迷う場面が発生する可能性がある。
【0008】
特に、生徒毎に端末を用いて接続する個別遠隔講義においてセミナー形式の遠隔講義を実施すると、参加者の数が多数に上る場合があるという事情がある。そうした場合、通常の講義画面では映像や講義資料の表示領域が大部分を占めるため、参加者の一覧状況を把握することが難しい。そのため、講師がどの生徒を指名するのが適切か判断することが一層困難になる可能性がある。
【0009】
こうした遠隔講義システムにおいては、講師にとって、どの生徒を指名するか判断しながら、さらに講義の進行に必要な画面の切り替えなどの操作を行うことは負担となる。講義の円滑な進行のためには、このような負荷は小さいことが望まれる。
【0010】
またシステムによっては、講師が生徒を指名するために、参加している生徒の一覧から該当生徒を選択する操作と、発言可能とする操作とが必要とされる。つまり、一人の生徒を指名するために、複数の入力操作が要求される場合があり、この煩雑さも講師の負担となる。
【0011】
以上のことから、本願の発明者は、遠隔講義システムにおいて講師が生徒を指名するときの操作を簡略化することができれば、講師の負荷を大きく低減することが可能であるという着想を得た。
【0012】
多人数参加型(セミナー形式)の遠隔講義において、講師が講義中に生徒を指名する際の操作負荷を軽減する技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明による遠隔講義システムは、講義を受講する複数の生徒がそれぞれ使用する複数の生徒端末と、複数の生徒端末と通信ネットワークを介して接続され、講師が使用する講師端末と、講師端末に対して所定の入力操作が行われたとき、複数の生徒端末のそれぞれを特定する生徒識別子の中から、複数の生徒端末のそれぞれに関して予め登録された情報に基づいて所定の手順に従って一の被指名生徒識別子を選択する指名順計算処理部とを備える。講師端末の表示装置の所定領域には、被指名生徒識別子によって特定される生徒端末に対応する生徒を特定する情報が表示される。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、多人数参加型(セミナー形式)の遠隔講義において、講師が講義中に生徒を指名する際の操作負荷を軽減することを可能とする技術が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための最良の形態について説明する。図1は、本実施の形態における遠隔講義システムの構成を示す。ネットワーク12に講義サーバ1、データベース3、講師端末5及び複数の生徒端末6が接続される。講師端末5と生徒端末6は、パソコン、携帯端末、ブラウザ機能搭載機器、専用装置などに所定のソフトウェアをインストールすることによって実現される。
【0016】
講義サーバ1には指名順設定11が登録される。講義サーバ1には更に、遠隔講義システムに生徒として登録している参加者のそれぞれについて、入退室時間と遠隔講義に参加した時間とを記録した運用ログ2が登録される。データベース3には、生徒情報7と講義情報8とを含む講義関連情報4が格納される。生徒情報7には、受講生徒毎の氏名を含むプロフィールと、講義受講記録、成績ログなどが含まれる。生徒端末6は、その入力装置から生徒状況9を取得する。
【0017】
講師端末5は、CPUによって実行されるプログラムによって実現される機能ブロックである指名順計算処理部10を有する。指名順計算処理部10は、講義サーバ11が記憶する指名順設定11を読み込む。指名順設定11は、生徒を指名する順序を所定のアルゴリズムに従って決定し表示する機能を有するコンピュータプログラムであり、どのような情報が指名に用いられるか、指名に用いられる情報のそれぞれの優先度(重み付け係数)、指名後の指名順更新の手順、指名順一覧の表示方法を含む。講師が個別に指名順設定を行う場合は、講師端末5が備える入力装置から指名順個別設定11aを入力することにより行う。
【0018】
この遠隔講義システムを利用する生徒の情報は、予めデータベース3に生徒情報7として登録される。講師端末5からの入力操作により、あるいは他の遠隔装置からの信号により遠隔講義が開始されると、講師端末5はネットワーク12を介して講義サーバ1に接続され、その講義のための接続が確保される。生徒(多人数参加型講義の場合、複数の生徒)は、生徒端末6からネットワーク12を介して講義サーバ1に接続して、その講義にアクセスする。
【0019】
講義サーバ1の運用ログ2には、講師及び生徒の入室及び退室、即ち講師端末5及び生徒端末6が当該講義にアクセスするための通信セッションの接続及び切断が記録される。講義が始まると、講義サーバ1はデータベース3の講義関連情報4にアクセスする。生徒端末6は、自機器に接続された機器から得た情報や入力装置に対する入力操作から生徒状況9を取得する。講師端末5の指名順計算処理部10は、指名順設定11において指名順を計算するために要求されている情報を運用ログ2、講義関連情報4、生徒情報9から取得する。こうした情報の流れが図1の矢印に示されている。
【0020】
図2は、遠隔講義の参加者(講師と生徒)の端末の表示装置によって表示される講義画面1を示す。講義画面21の参加者一覧23の領域には、講師名、講義に参加している生徒(当該講義のために講義サーバ1に接続している生徒端末6に対応して生徒情報7に登録されている生徒)のそれぞれの名前又はユーザIDが生徒情報7、講義情報8から取得されて表示される。講師が講師端末5の操作によって生成した映像は、映像表示領域24に表示される。講師が講師端末5を操作することによって表示する資料類は電子白板25や子画面26に表示される。表示画面上の操作部22には操作アイコン類が表示され、講師端末5又は生徒端末6の入力装置によってその操作アイコン類に対して操作を行うことにより講義運用が行われる。
【0021】
講義の進行中、講師により生徒の発言が許可されていない間は、講師端末5から入力された音声と映像が各々の生徒端末6に配信される。各々の生徒の音声は、他の生徒端末6に配信されない。
【0022】
講師は遠隔講義中に、実際の講義でも行われるように生徒の反応を見る目的などで、講義サーバ1を介した音声通信、文字通信などにより生徒を指名して発言を促す。講師が自分の意思によって生徒を指名したい場合は、入力装置に対して生徒端末を特定する操作を行うことにより、講師端末5に指名する順序を示す指名順個別設定11aを設定する。この場合、生徒を指名する入力操作を行うと、その操作に応答して、指名順個別設定11aに設定された順に生徒端末が指定され、その生徒端末6と講師端末5との音声通信が開始される。
【0023】
本実施の形態における遠隔講義システムは、講義に参加している生徒の中から一人の生徒を自動的に選択して指名する機能を有する。図3はこの自動指名機能が使用されるときのデータの流れ、図4はこの機能を説明するためのフローチャートである。
【0024】
講義開始時に、講師端末1の指名順計算処理部10は、指名順設定2を読み込む(ステップS1)。指名順設定2には指名に用いる情報である指名情報の選択と、優先度(重み付け係数)、ある生徒に対する指名が終わった後に指名順を更新する手順、指名順一覧の表示方法を含む。指名順計算処理部10は更に、指名順設定に従い必要な指名情報を講義サーバ1に対して要求する。講義サーバ1は、運用ログ2及びデータベース3から要求された指名情報を収集して講師端末5に返信する(ステップS2)。
【0025】
指名情報には生徒情報7、講義情報8、運用ログ2などの講義サーバ1側に格納された情報に加え、生徒端末6上で収集され講義サーバ1を経由して受信した生徒状況9が含まれる。生徒状況9は、それぞれの生徒が生徒端末6を操作した端末操作時間、最も最近に生徒端末6を操作してから現在までの時間を示す端末無操作時間、生徒端末6のカメラによって撮影された生徒の映像、その映像を画像認識して得られる情報(生徒の挙手など)、生徒が発言を希望するときに生徒端末6を操作することによって生成される発言希望情報からなる。
【0026】
指名順計算処理部10は、講義に参加している生徒に関して受信した生徒情報を指名順設定2に従い数値化、重み付けして指名順決定要素とする(ステップS3、S4)。指名順計算処理部10は、指名順決定要素から生徒一覧を整列した指名順一覧を生成し指名処理部30へ格納する(ステップS5)。講師が操作部31上から指名アイコン32を押下すると、指名処理部30は指名順一覧の上位から順に生徒を自動的に選択し、選択した生徒の生徒端末6を発言状態へと移行させる(ステップS6)。指名後は指名順設定に従い指名順一覧を更新する(ステップS7)。このような動作により、講師は生徒のいずれかを選択する入力操作を行う必要なく、生徒を指名して発言を促すことができる。
【0027】
講師が生徒を指名するとき、遠隔講義システムは、次の2つの処理を実行する。
(1)指名アイコン32の押下に応答して生徒端末を自動的に選択する。
(2)指名された生徒の発言を可能にする。すなわち、講師端末5と指名された生徒端末6とを音声通信できるように接続する。
この2つの処理は、講師が指名アイコン32を押下したとき、自動的に連続して実行されることが望ましい。このような処理により、講師は生徒の発言を求めるとき、いつも同じ1ボタンの入力動作を行うだけで、いずれかの生徒との音声通信を開始することができる。
【0028】
発言状態においては、指名された生徒の生徒端末6と講師端末5は双方向に音声通信できるように接続される。且つ、指名された生徒の生徒端末6から入力される音声と、講師端末5から入力される音声とは、当該講義に参加しており指名されていない生徒の生徒端末6にも配信される。このような音声通信の接続が、講師による指名アイコン32の押下により1アクションで確立される。
【0029】
図5は、状況に変化があったときの指名順の更新動作のフローチャートである。指名順計算処理部10は、講義への入室、退出(すなわち生徒端末6と講義サーバ1の間で確立される講義セッションの接続、切断)、生徒の挙手などのように指名順計算処理に用いる情報の変化を監視する。変化があった場合は、受信した変更情報(どの生徒が入室、退出又は挙手をしたかを示す情報)を受信し、指名順決定要素を計算し指名順一覧を更新する。
【0030】
従来の遠隔講義では、生徒が発言を希望するときは自主的に挙手などの発言を希望する旨を示す動作を行って講師が発言を許可することにより、もしくは講師が参加者一覧から生徒を選ぶことにより、生徒の講師に対する発言が可能となった。遠隔講義では参加者はお互いが見えず、また講師からは生徒を一望することが出来ないため、双方向コミュニケーションでの円滑な運用が難しかった。特に講師が生徒を指名する場合は、直接の面識がない、生徒個別の状況が把握出来ないなど指名対象の選択が難しい場合が多い。また、指名する生徒を発言状態とするために手順として数ステップを要する操作が必要であった。
【0031】
本実施の形態における遠隔講義システムでは、データベース、運用ログ、生徒端末から生徒の成績、事前アンケートなどの結果、講義出席記録、生徒の講義中状況を収集し、講師に対して一定の基準により指名順を事前に提供することで単純な一つの操作で指名を行うことが出来る。
【0032】
以上の説明において、「講義」は授業、教育、セミナー等、教育形式を表す言葉で置き換えることが出来る。
【0033】
本実施の形態の変形例を以下に示す。
図6に示すように、各情報の収集を行う機能や図1の指名順計算処理部10に相当する機能を有する指名順計算処理部10aは、講義サーバ1aに存在してもよい。
図7に示すように、データベース3は講義サーバ1上に存在してもよい。
図8に示すように、運用ログ情報2は、ネットワーク12に接続された講義サーバ1とは別のログサーバ13上に存在してもよい。
図9に示すように、複数の講義サーバとデータベース、ログサーバにより大規模システムを構成出来る。講義関連情報、氏名順設定、運用ログを講義サーバ外に持つことで講義サーバの増設によりシステム拡張が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】遠隔講義システムの構成を示す。
【図2】遠隔講義の参加者の端末に表示される画面を示す。
【図3】自動指名機能が使用されるときのデータの流れを示す。
【図4】自動指名機能の動作を示す。
【図5】指名順の更新動作を示す。
【図6】遠隔講義システムの構成の例を示す。
【図7】遠隔講義システムの構成の例を示す。
【図8】遠隔講義システムの構成の例を示す。
【図9】遠隔講義システムの構成の例を示す。
【符号の説明】
【0035】
1 講師端末
2 運用ログ
3 データベース
4 講義関連情報
5 講師端末
6 生徒端末
7 生徒情報
8 講義情報
9 生徒状況
10 指名順計算処理部
11 指名順設定
11a 指名順個別設定
12 ネットワーク
21 講義画面
22 操作部
23 参加者一覧
24 映像表示
25 電子白板
26 子画面
30 指名処理部
31 操作部
32 指名アイコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
講義を受講する複数の生徒がそれぞれ使用する複数の生徒端末と、
前記複数の生徒端末と通信ネットワークを介して接続され、講師が使用する講師端末と、
前記講師端末に対して所定の入力操作が行われたとき、前記複数の生徒端末のそれぞれを特定する生徒識別子の中から、前記複数の生徒端末のそれぞれに関して予め登録された情報に基づいて所定の手順に従って一の被指名生徒識別子を選択する指名順計算処理部
とを具備し、
前記講師端末の表示装置の所定領域には、前記被指名生徒識別子によって特定される生徒端末に対応する生徒を特定する情報が表示される
遠隔講義システム。
【請求項2】
請求項1に記載された遠隔講義システムであって、
前記指名順計算処理部は、前記被指名生徒識別子を指定すると、前記講師端末と前記被指名生徒識別子よって特定される生徒端末との間での音声通信を開始する
遠隔講義システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された遠隔講義システムであって、
前記所定の入力操作には、前記複数の生徒のうちのいずれかを特定する操作は含まれない
遠隔講義システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載された遠隔講義システムであって、
前記指名順計算処理部は、前記複数の生徒に対する指名順序を示す指名順序リストを自動的に生成して記憶し、
前記被指名生徒識別子は、前記所定の入力操作に応答して、記憶された前記指名順序リストの順序に従って一人ずつ前記被指名生徒識別子を指定する
遠隔講義システム。
【請求項5】
請求項4に記載された遠隔講義システムであって、
前記指名順計算処理部は、前記複数の生徒のうち前記講師の講義に参加している参加者に変動があったとき、その変動に応じて前記指名順序リストを更新する
遠隔講義システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載された遠隔講義システムであって、
前記講師端末の表示装置には前記複数の生徒のうち前記講師が行っている講義に参加している参加者の一覧が表示され、前記被指名生徒識別子は、前記一覧に表示されている参加者の前記生徒端末を特定する前記生徒端末識別子の中から指定される
遠隔講義システム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載された遠隔講義システムであって、
更に、前記遠隔講義システムにおける前記複数の生徒の成績又は出席の履歴を示す生徒情報を記録するデータベースを具備し、
前記指名順計算処理部は、前記生徒情報に基づいて前記被指名生徒識別子を指定する
遠隔講義システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−139667(P2009−139667A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316415(P2007−316415)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】