説明

適合試適用組成物

【課題】 歯科用補綴物作製時において精度の高い咬合面高さを得るために正確な皮膜厚さを提供することが可能であり、試適後には速やかに取り除くことが可能な適合試適用組成物を提供する。
【解決手段】 a)最大粒径が1〜100μmの範囲であってb)成分と硬化反応しないフィラー:5〜70重量% b)水,アルコール類,オイル類から選ばれる一種又は二種以上の基材成分:30〜95重量%とから成る適合試適用組成物とする。なお、b)成分には、更に、a)成分よりも最大粒子径の小さなフィラーを含んでもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯科用補綴物の作製時において正確な咬合面を設定するために用いる適合試適用組成物に関する。
【0002】
歯科用補綴物を作製し口腔内の患部へ固定する際には、歯科用セメント材料により合着を行うことが一般的である。その際に、歯科用セメント材料自体の厚みにより歯科用補綴物の浮き上がりが生じてしまうため、この浮き上がり量を想定して予め石膏模型上に例えばワックスを用いてセメントスペース一層確保している。しかし、浮き上がり量を正確に予測する事は非常に困難なので、実際には歯科用補綴物を口腔内に装着しても直ちに良好な咬合を得ることはできない。セメントスペースを大きくとり過ぎてしまうと、咬合面が低い状態で装着してしまうことになるので十分な咬合機能が得られないという問題があり、逆に高い状態で装着してしまうと、歯科用補綴物や対合歯の破折の原因となる。そのため良好な咬合を得るためには歯科用補綴物を装着した後に咬合調整が必要となる。作製された歯科用補綴物の咬合面高さの精度が悪く咬合調整の量が大く必要な場合には、口腔内への最終的な固定に時間がかかるばかりではなく、咬合面を大きく切削して咬合調整を行うことになるため歯科用補綴物の耐久性を低下させてしまうという問題もあった。
【0003】
近年、オールセラミックスに代表されるように歯科用補綴物の進歩も著く、CAD/CAMによって従来加工が難しかったジルコニア材料も歯科用補綴物へ応用されるようになってきた。特にインプラント治療においては、顎骨に埋入するインプラントフィクスチャーが天然歯のように歯根膜を持たないことから緩圧能力が低いという欠点がある。歯科用セメントの皮膜層による浮き上がりによって咬合面が設計よりも高い状態で補綴物を装着してしまうと、フィクスチャー周辺の骨吸収が起きてしまったり最悪の場合にはフィクスチャーが破折したり脱落したりしまうという危険性があった。そのために、インプラント治療においてはより正確な咬合面の高さが必要である(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
従来のセメントスペースを確保する方法は一般的にワックスを用いていた。しかしワックスはその厚みを術者が調整しなければならないという問題があり、一様に均一で正確なセメントスペースを確保することはできなかった。セメントスペースの厚さを正確に得るためには、実際に使用するセメントを用いて適合を確認する方法が一番正確である。しかしながら、歯科用セメントは本来が歯科用補綴物を強固に合着させるための材料であるため接着力が強いという問題があり、試適後に補綴物を支台歯から撤去する作業が非常に面倒であり、撤去後の補綴物からセメントを取り除く作業にも時間がかかるという問題となっていた。
【特許文献1】特表2001-519687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、歯科用補綴物作製時において精度の高い咬合面高さを得るために正確な皮膜厚さを提供することが可能であり、試適後には速やかに取り除くことが可能な適合試適用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、使用する歯科用セメントと同等の浮き上がりを安定して再現できる組成物であって、それ自体は硬化しないという組成物を使用すると、歯科用補綴物作製時にセメントによる浮き上がりを正確に提供することができ、組成物自体が硬化しないために容易に口腔内や支台模型からの撤去が可能であり、水洗や拭き取り操作等による補綴物からの取り除き作業も容易であることを見出して本発明を完成した。
【0007】
即ち本発明は、
a)最大粒径が1〜100μmの範囲であってb)成分と硬化反応しないフィラー:5〜70重量%
b)水,アルコール類,オイル類から選ばれる一種又は二種以上の基材成分:30〜95重量%
とから成る適合試適用組成物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る適合試適用組成物は、歯科用補綴物の作製時における補綴物の浮き上がり量を正確に知ることができ、歯科用補綴物を口腔内から撤去が容易である優れた組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で用いるa)成分の最大粒径が1〜100μmの範囲であってb)成分と硬化反応しないフィラーは、使用する歯科用セメントと同様の方法で使用した際に歯科用セメントと同じ厚さのセメント皮膜となるように最大粒子径が設定されている。最大粒子径の範囲は従来からの一般的な歯科用セメントの厚さの範囲である1〜100μmであることが必要である。a)成分のフィラーは、後述するb)成分の基材成分と硬化反応しないことが必要であり、硬化反応してしまうと口腔内からの補綴物の撤去や補綴物からの組成物の除去が困難となる。また、b)成分と硬化反応してしまうフィラーでは、硬化反応の際に被膜厚さが変化してしまうので適合性の確認に適さない。a)成分であるフィラーは、組成物中に5〜70重量%の範囲で配合される。5重量%よりも少ないか70重量%を超えると浮き上がり量を十分に確認することができず、適合を正確に確認することができない。また、70重量%より多いと組成物が固くなりすぎて組成物の操作性が低下する。
【0010】
a)成分のフィラーは、後述するb)成分と硬化反応しないフィラーであって、その最大粒子径が組成物に求められる厚さ(後に使用されるセメントの厚さ)に調整されている必要がある。a)成分のフィラーとしては、好ましくは、無機系フィラーとしては石英粉末,アルミナ粉末,シリカ粉末,カオリン,タルク,炭酸カルシウム,ケイ酸カルシウム,バリウムガラス,酸化チタン,ホウケイ酸ガラス,コロイダルシリカ等がある。また、シリケートセメント粉末,グラスアイオノマーセメント粉末等の従来の歯科用セメントの粉末もb)成分の選択によって硬化反応しない条件下で使用できる。
【0011】
有機系フィラーとしては、メタクリレート又はアクリレートのモノマーを触媒により重合硬化させたフィラーが使用可能である。重合硬化後に粉砕したフィラーも使用可能であるが、粒子径が整い易い懸濁重合による球形フィラーが好ましい。メタクリレート又はアクリレートのモノマーは従来から広く使用されているものが利用可能であり特に限定されないが、具体例的には以下の物質を挙げることができる。メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパン、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ポリオキシテトラメチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールメタントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート又はこれらのアクリレート、2,2−ビス(メタクリロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン又はこれらのアクリレート、また分子中にウレタン結合を有するメタクリレート又はアクリレートとして、ジ−2−メタクリロキシエチル−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート又はこれのアクリレート、その他、ウレタン結合を含むメタクリレート又はアクリレートなどで不飽和二重結合を多く含むものも使用可能である。
【0012】
無機系フィラーをメタクリレート若しくはアクリレートのモノマーで固めて粉砕した有機無機複合フィラーも利用できる。なお、無機系フィラー及びメタクリレート若しくはアクリレートのモノマーの種類はこれ等を限定する理由はない。上記の有機系フィラー,無機系フィラー,有機無機複合フィラーは単独または二種類以上を混合して用いることもできる。
【0013】
b)水,アルコール類,オイル類から選ばれる一種又は二種以上の基材成分:30〜95重量%は、前記a)成分であるフィラーを分散するための基材となる。アルコール類としてはエタノール,1−プロパノール,2−プロパノール,2−メチル−2−プロパノール,グリセリン,ジグリセリン,ポリグリセリン,プロピレングリコール,ジプロピレングリコール,ポリプロピレングリコール,ソルビトール,マンニトール,エチレングリコール,ジエチレングリコール,ポリエチレングリコール,ポリエチレングリコールモノメチルエーテル等を例示することができる。しかしながら、アルコール類は後述するオイル類にも含まれるためにアルコール類とオイル類とを明確に区別することはできない。
【0014】
オイル類としては、油脂やロウ類を用いることができる他、それらを加水分解、水添、高圧水素還元、エステル化等の工程を経てそれぞれ誘導体としたものや、それらの合成品も用いることができる。具体的には、脂肪酸とグリセリンがエステル結合したもので、化学的にはトリグリセリドという油脂類や、高級脂肪酸と高級アルコールのエステルであるロウ類や、原油を分留精製して得られ、炭素と水素のみから成る化合物である炭化水素類や、天然の油脂およびロウの構成成分であり、一般式RCOOH等で表される化合物である高級脂肪酸や、炭素原子数6以上の一価アルコールである高級アルコールや、酸とアルコールとから脱水して得られる有機化合物であるエステル類等が挙げられる。
【0015】
油脂類は、天然から得られるものを脱色,脱臭の工程を経て精製したものの他、水素添加を行い硬化油としたものを使用することもできる。具体的には、アボカド油,アーモンド油,オリーブ油,キャロット油,キューカンバー油,キャンドルナッツ油,グレープシード油,ゴマ油,小麦胚芽油,コメ胚芽油,コメヌカ油(コメ油),サフラワー油,シアバター(シア脂),大豆油,茶油(茶実油、茶種子油),月見草油,ツバキ油,トウモロコシ胚芽油(マゾラ油),ナタネ油,パーシック油(杏仁油、桃仁油),ハトムギ油,パーム油,パーム核油,ヒマシ油,硬化ヒマシ油(カスターワックス),ヒマワリ油(サンフラワー油),へ一ゼルナッツ油,マカデミアナッツ油,メドウホーム油,綿実油,モクロウ,ヤシ油,落花生油(ピーナツ油),ローズヒップ油等の植物油脂、オレンジラフィー油,牛脂,タートル油(アオウミガメ油),ミンク油,卵黄油,粉末卵黄油(水素添加卵黄油)等の動物油脂等が挙げられる。
【0016】
ロウ類には、自然界に動物性ロウおよび植物性ロウとして存在しているものの他に遊離脂肪酸、遊離アルコール、炭化水素、樹脂等が使用できる。具体的には、マッコウ鯨油等の動物性液体ロウ、ミツロウ,鯨ロウ,ラノリンの動物性固体ロウ、ホホバ油等の植物性液体ロウ、カルナウバロウ,キャンデリラロウ等の植物性固体ロウ、モンタンロウ等の鉱物性固体ロウ等が挙げられる。ロウ類はラノリンのような例外はあるものの、一般に固体で硬いため本組成物の基材としては使用し難いので油脂類と混合して粘度を調製してから用いることが好ましい。
【0017】
炭化水素は、化学的に極めて不活性で酸化変質することがなく、乳化しやすい等の理由で使用されるものであり、原油を分留精製して得られる炭化水素C15以上の飽和なパラフィン系炭化水素とよばれるものや、スクワランやプリスタンのように動物性油脂から分別採取されるものも使用できる。具体的には、α−オレフィンオリゴマー,スクワラン,植物性スクワラン,CDスクワラン,セレシン(地ロウ),パラフィン(固形パラフィン),プリスタン,ポリエチレン末,マイクロクリスタリンワックス,流動パラフィン,ワセリン等が挙げられる。
【0018】
高級脂肪酸としては、天然の油脂類を脂肪酸とグリセリンに加水分解して得た脂肪酸をさらに蒸留精製することにより得られる物質の他、イソステアリン酸等合成脂肪酸も用いることができる。C12以上の飽和脂肪酸およびオレイン酸で、低級脂肪酸や高度不飽和脂肪酸は刺激性や臭気があり、酸敗しやすい等の欠点があるため使用され難い。具体的には、アラキドン酸,イソステアリン酸,ウンデシレン酸,オレイン酸,ステアリン酸,パルミチン酸,ベヘニン酸,ミリスチン酸,ラウリン酸,ラノリン脂肪酸,硬質ラノリン脂肪酸,軟質ラノリン脂肪酸,リノール酸,リノレン酸等が挙げられる。
【0019】
高級アルコールとしては、ロウ類を加水分解(けん化解)して得た分解アルコールの他、脂肪酸の高圧水素還元による還元アルコール,石油資源からの合成アルコールも用いることができる。具体的には、イソステアリルアルコール,オレイルアルコール,オクチルドデカノール,キミルアルコール(グリセリルモノセチルエーテル)、コレステロール(コレステリン),シトステロール(シトステリン),ステアリルアルコール,セタノール(セチルアルコール、パルミチルアルコール),セトステアリルアルコール,セラキルアルコール(モノオレイルグリセリルエ一テル),デシルテトラデカノール,バチルアルコール(グリセリルモノステアリルエーテル),フィトステロール(フィトステリン),ヘキシルデカノール,ベヘニルアルコール,ラウリルアルコール,ラノリンアルコール,水素添加ラノリンアルコール等が挙げられる。
【0020】
エステル類としては、具体的には、アセチル化ラノリン(酢酸ラノリン),イソステアリン酸イソセチル(イソステアリン酸ヘキシルデシル),イソステアリン酸コレステリル,エルカ酸オクチルドデシル(EOD),オクタン酸セチル(2−エチルヘキサン酸セチル),オクタン酸セトステアリル(2−エチルヘキサン酸セトステアリル、イソオクタン酸セトステアリル),オレイン酸オクチルドデシル,オレイン酸デシル,ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル,ステアリン酸イソセチル(ステアリン酸ヘキシルデシル),ステアリン酸コレステリル,ステアリン酸ブチル,長鎖−αヒドロキシ脂肪酸コレステリル(GLコレステリル),トリミリスチン酸グリセリン,乳酸セチル,乳酸ミリスチル,パルミチン酸イソプロピル(IPP、イソプロピルパルミテート),ヒドロキシステアリン酸コレステロール,ミリスチン酸イソトリデシル(MITD),ミリスチン酸イソプロピル(lPM、イソプロピルミリステート),ミリスチン酸オクチルドデシル(MOD)ミリスチン酸ミリスチル,ラウリン酸ヘキシル,ラノリン脂肪酸イソプロビル,ラノリン脂肪酸コレステリル,リンゴ酸ジイソステアリル等が挙げられる。
【0021】
上記オイル類は、単独であっても、2種以上を組み合わせて使用してもよく、その配合割合は、組成物の形状,使用の形態,他成分との関係によって生ずる粘度等を考慮して適宜設定することができる。なおオイル類は、不飽和脂肪酸に起因する酸敗による異臭や皮膚刺激の間題が懸念されるため、組成物には天然のビタミンEや合成酸化防止剤を必要に応じて添加することが好ましい。
【0022】
本発明に係る適合試適用組成物においては、b)成分に水を含む場合には、b)成分に更にc)水溶性高分子を水100重量部に対して0.1〜60重量部含むことが好ましい。水溶性高分子としてはアルギン酸ナトリウム,アルギン酸プロピレングリコールエステル,カルボキシメチルセルロース,カルボキシメチルセルロースナトリウム,カルボキシメチルセルロースカルシウム,デンプングリコール酸ナトリウム,デンプンリン酸エステルナトリウム,ポリアクリル酸ナトリウム,メチルセルロース,結晶セルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,ポリビニルピロリドン等ポリビニルアルコール,アセチル化セルロース,ヒドロキシルエチルセルロース,ポリアクリル酸、ポリマレイン酸等のポリカルボン酸,ポリメタクリル酸,ポリアクリルアミド,ポリビニルアミン,ポリサッカロイド類,ポリビニルスルホン酸,ポリオキシエチレン等がある。水溶性高分子は水の粘度を調整でき、特にb)成分としてアルコール類及びオイル類を含まない場合には、水溶性高分子としてポリカルボン酸を用いると歯科用セメントと同様の操作性を本組成物に与えることができるので好ましい。
【0023】
水溶性高分子は水100重量部に対して0.1〜60重量部含まれることが好ましく、0.1重量部未満では組成物の粘度が不足する傾向があり、60重量部を超えると粘度が高く操作性が悪化する傾向がある。
【0024】
本発明に係る適合試適用組成物においては、b)成分に更にa)成分よりも最大粒子径の小さなフィラーを増粘材として配合しても良い。増粘材として配合されるフィラーとしてはa)成分に使用可能な無機系フィラーが使用可能であり、特に最大粒子径2〜600nmのコロイダルシリカが好ましい。
【0025】
本発明で使用するb)成分は組成物全体中に30〜95重量%配合される必要がある。30重量%未満では組成物の粘度が高くなり過ぎて操作性が悪化し、また、正確な皮膜厚さを得ることができない。一方、95重量%を超えても操作性が悪くなり正確な皮膜厚さを得ることができない。
【0026】
本発明に係る適合試適用組成物には、使い勝手の点で適度の粘着性を与えるために粘着材を配合することもできる。粘着材としてはグァーガム,カジブビーンガム,タラガム,タマリンドシードガム,アラビアガム,トラガントガム,カラヤガム,カラギナン,キサンタンガム,ジェランガム,カードラン,ラクトース,キチン,キトサン,キトサミン等の物質を挙げることできる。
【0027】
本発明に係る適合試験用組成物は、a)成分とb)成分とを混合した液状あるいはペースト状で供給されてもよく、粉成分としてa)成分と液状成分としてb)成分とに分けて供給されても良い。
【0028】
更に、本発明に係る適合試適用組成物には、その効果を損なわない範囲で紫外線吸収剤,pH調整剤,酸化防止剤,香料,色素等を適宜配合してもよい。
【実施例】
【0029】
<実施例>
表1に示した配合に従い、実施例1〜4のペースト状の適合試適用組成物を作製した。それぞれの適合試適用組成物に対して適合性及び洗浄性の試験を行い評価した。結果を表1に纏めて示す。
【0030】
<適合性試験>
2枚の平坦なガラス板を密着させて重ね合わせ、2枚の厚さ(A)を2μm単位で計測する。上側のガラス板を取り除き、試料ペースト0.1±0.05mLを下側のガラス板の上面中央に載せる。これを加重装置の加重中心線に合わせて同装置の基盤上に置く。先に取り外しておいた上側のガラス板を、最初の厚さ計測時と同じ向きにしてセメントに中心を合わせて再び載せる。150±2Nの荷重を押板を介して試料に対し垂直方向に、かつ中心線を合わせて注意深く負荷する。ペーストが2枚のガラス板間を完全に満たしていることを確認する。1分間以上荷重をかけた後、ガラス板を加重装置から取り出し、ガラス板2枚とセメント被膜の厚さの合計(B)を計測する。セメント被膜の厚さ(B−A)を求める。この試験を5回繰り返す。
【0031】
<洗浄性試験>
適合試験後のガラス板を剥がし、ペーストを20秒間の流水下で水洗を行った。水洗後ガラス表面のペーストの残存を目視にて確認した。
【0032】
<表1>(重量%)

グラスアイノマーセメント用粉末: (製品名 Fuji VII: ジーシー社製)
コロイダルシリカA(製品名 AEROSIL 200 平均粒子径12nm: 日本アエロジル社製)
コロイダルシリカB(製品名 AEROSIL 300 平均粒子径 7nm: 日本アエロジル社製)
市販の歯科用合着用セメント組成物 (製品名 フジ I : ジーシー社製)
【0033】
表1から明らかなように各実施例は、比較例1と比較して配合した最大粒径と略同じ皮膜厚さを安定して示している。また市販の硬化性セメントを用いた比較例2では洗浄後にセメントの残存が確認されたが、本発明の実施例においては確実に洗浄できたので、ガラス面に残存は全く確認されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)最大粒径が1〜100μmの範囲であってb)成分と硬化反応しないフィラー:5〜70重量%
b)水,アルコール類,オイル類から選ばれる一種又は二種以上の基材成分:30〜95重量%
とから成る適合試適用組成物。
【請求項2】
b)成分に水を含み、更にc)水溶性高分子を水100重量部に対して0.1〜60重量部含む請求項1に記載の適合試適用組成物。
【請求項3】
b)成分に、更に、a)成分よりも最大粒子径の小さなフィラーを含む請求項1または2に記載の適合試適用組成物。