説明

遮光フィルムとその製造方法

【課題】摺動性、光沢性の劣化が無く、導電性に優れ、さらに従来よりも軽量であって、液晶プロジェクタの光量調整用羽根やカメラのシャッター羽根などの光学機器部品として用いることができる遮光フィルムとその製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂フィルム基材(A)の片面もしくは両面に50〜150nmの膜厚を有する金属遮光膜(B)と、この金属遮光膜(B)上に、20〜140nmの膜厚を有する低反射性の金属酸化物膜(C)が形成された表面粗さが0.1〜0.7μm(算術平均高さRa)の遮光フィルムであって、前記樹脂フィルム基材(A)は、内部に10〜50体積%の空洞を含有する樹脂フィルムであり、前記金属遮光膜(B)と低反射性の金属酸化物膜(C)が、いずれもニッケル、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、マンガン、及びアルミニウムからなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有することを特徴とする遮光フィルムなどにより提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮光フィルムとその製造方法に関し、より詳しくは、摺動性、光沢性の劣化が無く、導電性に優れ、さらに従来よりも軽量であって、液晶プロジェクタの光量調整用羽根やカメラのシャッター羽根などの光学機器部品として用いることができる遮光フィルムとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、カメラ用のシャッター羽根や絞り羽根は、シャッタースピードが高速化し、極めて短時間に動作と停止を行うので、軽量化かつ高摺動性である必要がある。また、フィルムなどの感光材、CCDなどの撮像素子の前面を覆って光を遮るものなので、基本的に遮光性を必要とする。更に、光学機器用の羽根は、複数枚が互いに重なり合って動作するので滑らかな動作のために潤滑性が必要となる。また、各羽根間の漏れ光を防ぐために表面の反射率は低いことが望まれる。
一方、プレゼンテーション、ホームシアターなどの映像観賞用の投影装置である液晶プロジェクタの光量調整用絞り羽根として使用される遮光フィルムにおいても、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラと同様な特性が求められている。
【0003】
一般的に、上記遮光フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(以下:PETと略す
)などのプラスチックフィルムやSUS、SK材、Al等の金属薄板を基材としたものが実用化されている。カメラでは、基材が金属性の遮光フィルムをシャッター羽根、絞り羽根として用いる場合、羽根材を開閉する際に、金属板同士が擦れあって大きな騒音が発生する。また、液晶プロジェクタでは、映像が変化するときに各画像の輝度変化を和らげるために羽根を高速で移動する必要があり、羽根同士が擦れの騒音を繰り返すことになる。また、この騒音を低減するためには羽根を低速で動作することになり、この場合、画像の変化に光量調整が追いつかず、画像が不安定となるという問題があった。
前記問題や軽量化の観点から、近年の遮光フィルムの構成は、プラスチックフィルムを基材に用いることが主流となってきている。更に、発塵性の点から導電性も求められている。上記から、遮光フィルムの必要特性は、高遮光性、低光沢性、摺動性、導電性、低発塵性であるとされている。このような遮光フィルムの特性を満足するために、従来からさまざまな材料、フィルム構造を用いたものが提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、遮光性、低光沢性、導電性の点からランプ光源等から発せられる光を吸収させるためにカーボンブラック、チタンブラック等の導電性黒色微粒子をPETフィルムなどの樹脂フィルムに含浸させ遮光性及び導電性を持たせ、更に遮光フィルムの片面または両面をマット処理し、低光沢性とした遮光フィルムが開示されている。
また、特許文献2では、樹脂フィルム上に、遮光性と導電性を有するカーボンブラックなどの黒色顔料や潤滑剤、艶消し剤を含有した熱硬化性樹脂層を塗布し、遮光性、導電性、潤滑性、低光沢性を付与した遮光フィルムが開示されている。
さらに、特許文献3では、遮光羽根の剛性を高めるためプラスチック基材の両面に炭素繊維を含有する熱硬化性樹脂のプリプレグシートで強化した遮光羽根の構造が開示されている。
【0005】
近年ではデジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、液晶プロジェクタ等の高画質化にともない、更なるシャッター速度の向上が望まれている。シャッター速度を向上させるには、遮光フィルムを軽量化する必要がある。
そこで、本出願人は、ポリイミドなど耐熱性を有する樹脂フィルム基材(A)と、樹脂フィルム基材(A)の片面もしくは両面にスパッタリング法で形成された50nm以上の膜厚を有する酸化チタンまたは炭化酸化チタンからなる金属遮光膜(B)と、金属遮光膜(B)上に、スパッタリング法で形成された、酸素含有量がO/Ti原子数比として0.7〜1.4であって、炭素含有量がC/Ti原子数比として0.7以上である炭化酸化チタン膜からなる耐熱遮光フィルムを提案した(特許文献4)。
【0006】
上記のように、プラスチックフィルムを用いることで遮光フィルムは軽量化されるが、遮光性を持たせるためにカーボンブラック、チタンブラック等の導電性黒色微粒子をフィラーとして含有させたり、塗布すると、遮光フィルムはフィルム単体に比べれば重くなってしまう。しかし、軽量化のため、フィラーを減らしたり塗布する厚さを減らすと遮光性を損なってしまう。また、フィルム厚さを薄くすることも考えられるが、フィルムの強度が弱くなったり、成膜中にシワができるなどの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1−120503号公報
【特許文献2】特開平4−9802号公報
【特許文献3】特開2000−75353号公報
【特許文献4】WO2010/026853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、従来の技術の問題に鑑み、摺動性、光沢性の劣化が無く、導電性に優れ、さらに従来よりも軽量であって、液晶プロジェクタの光量調整用羽根やカメラのシャッター羽根などの光学機器部品として用いることができる遮光フィルムとその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上述した従来の技術の課題を解決するため、鋭意検討したところ、樹脂フィルム基材として、フィルム内部に空洞を持つ樹脂フィルムを用いると、同材質のものに比べてフィルム重量が軽量になることから、この樹脂フィルム基材に特定の金属遮光膜と、低反射性の金属酸化物膜を形成した遮光フィルムを軽量化でき、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、液晶プロジェクタなどのシャッター速度を高速化することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、樹脂フィルム基材(A)の片面もしくは両面に50〜150nmの膜厚を有する金属遮光膜(B)と、この金属遮光膜(B)上に、20〜140nmの膜厚を有する低反射性の金属酸化物膜(C)が形成された表面粗さが0.1〜0.7μm(算術平均高さRa)の遮光フィルムであって、前記樹脂フィルム基材(A)は、内部に10〜50体積%の空洞を含有する樹脂フィルムであり、前記金属遮光膜(B)と低反射性の金属酸化物膜(C)が、いずれもニッケル、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、マンガン、及びアルミニウムからなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有することを特徴とする遮光フィルムが提供される。
【0011】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、樹脂フィルム基材(A)の材質が、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、シンジオタクチック・ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、又はフッ素樹脂から選ばれた1種以上であることを特徴とする遮光フィルムが提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1〜2のいずれかの発明において、樹脂フィルム基材(A)の膜厚が、35μm以上であることを特徴とする遮光フィルムが提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、表面抵抗値が1000Ω/□(オーム・パー・スクエアと読む)以下であることを特徴とする遮光フィルムが提供される。
さらに、本発明の第5の発明によれば、第4の発明において、表面抵抗値が500Ω/□以下であることを特徴とする遮光フィルムが提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、樹脂フィルム基材(A)の両面に、前記金属遮光膜(B)と前記金属酸化物膜(C)が形成されており、フィルム基板を中心として対称の構造であることを特徴とする遮光フィルムが提供される。
さらに、本発明の第7の発明によれば、第6の発明において、両面に形成される前記金属遮光膜(B)と前記金属酸化物膜(C)は、金属元素の種類がそれぞれ同じであることを特徴とする遮光フィルムが提供される。
【0012】
一方、本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明に係り、表面粗さが0.2〜0.8μm(算術平均高さRa)の内部に空洞を含有する樹脂フィルム基材(A)をスパッタリング装置に供給し、不活性ガス雰囲気下かつ十分なガス圧でスパッタリングして、樹脂フィルム基材(A)上に前記金属遮光膜(B)を形成し、次に、不活性ガス雰囲気に酸素ガスを導入しながら十分なガス圧でスパッタリングして、前記金属遮光膜(B)上に前記金属酸化物膜(C)を形成することを特徴とする遮光フィルムの製造方法が提供される。
【0013】
また、本発明の第9の発明によれば、第8の発明において、スパッタリングガス圧が、0.2〜1.0Paであることを特徴とする遮光フィルムの製造方法が提供される。
また、本発明の第10の発明によれば、第8または第9の発明において、前記金属遮光膜(B)及び前記金属酸化物膜(C)が形成された遮光フィルムを、さらに、スパッタリング装置に供給し、スパッタリングによって樹脂フィルム基材(A)の裏面に前記金属遮光膜(B)及び前記金属酸化物膜(C)を順次形成することを特徴とする請求項8〜9のいずれかに記載の遮光フィルムの製造方法が提供される。
また、本発明の第11の発明によれば、第8〜10のいずれかの発明において、樹脂フィルム基材(A)が、ロール状に巻き取られてスパッタリング装置のフィルム搬送部にセットされることを特徴とする遮光フィルムの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の遮光フィルムは、内部に空洞を含有する樹脂フィルム基材を用いているので、従来の遮光フィルムに比べ、軽量化することができる。この遮光フィルムでは、最表面層となる低反射性の金属酸化物膜を金属遮光膜上に積層するので金属遮光膜の高い反射率を減少することができる。
また、前記金属遮光膜及び金属酸化物膜のスパッタリング成膜に際し、全く同じターゲットを使用することが可能なので、装置セッティング上のターゲット交換をする必要が無く、連続スパッタリングが可能であり、製造コストが安くなり、更に樹脂フィルムを中心に対称型である膜構造を有していることから、成膜時の膜応力による遮光フィルムの変形を生じないので生産性に優れている。
また、本発明の金属遮光膜及び低反射性の金属酸化物膜のスパッタリング法による成膜条件を最適化することで、前記膜は緻密な膜とすることができ、この緻密な最表面の膜によって該遮光フィルムの動作時に膜の剥がれがないので、基材フィルムのマット処理、具体的には、サンドブラスト法によるフィルム表面処理に伴い付着したショット材の脱落は起こらない。
したがって、本発明の遮光フィルムは、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラのシャッター羽根、絞り羽根や液晶プロジェクタの光量調整羽根用遮光フィルムとして使用でき、工業的に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の遮光フィルムの断面図である。
【図2】本発明の遮光フィルムを製造するのに用いる巻き取り式スパッタリング装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の遮光フィルムとその製造方法について、図1、2を参照しながら説明する。
【0017】
1.遮光フィルム
本発明の遮光フィルムは、樹脂フィルム基材(A)の片面もしくは両面に50〜150nmの膜厚を有する金属遮光膜(B)と、この金属遮光膜(B)上に、20〜140nmの膜厚を有する低反射性の金属酸化物膜(C)が形成された表面粗さが0.1〜0.7μm(算術平均高さRa)の遮光フィルムであって、前記樹脂フィルム基材(A)は、内部に10〜50体積%の空洞を含有する樹脂フィルムであり、前記金属遮光膜(B)と低反射性の金属酸化物膜(C)が、いずれもニッケル、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、マンガン、及びアルミニウムからなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有することを特徴とする。
【0018】
図1は、本発明の遮光フィルムの構成を示す模式的な図である。本発明の遮光フィルムは、基材としての樹脂フィルム1と、その表面に形成された金属遮光膜2と、その上に形成された低反射性の金属酸化物膜3から構成されている。金属遮光膜2と金属酸化物膜3は、いずれもニッケル、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、マンガン、及びアルミニウムからなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する。そして、その表面粗さが0.1〜0.7μm(算術平均高さRa)であるため低光沢性で、また表面欠陥が付きにくい。
【0019】
樹脂フィルム1の厚みは、35μm以上であり、特に50〜125μmの範囲であることが望ましい。厚みが35μmより薄いと、ハンドリングが悪く、フィルムに傷や折れ目などの表面欠陥が付きやすくなり、125μmより厚いと小型化が進む絞り装置や光量調整用装置へ遮光羽根を複数枚搭載することができないことがある。
【0020】
金属遮光膜は、遮光性のニッケル、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、マンガン、及びアルミニウムからなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有し、厚みが50〜150nmである。厚みが50nm未満であると、膜の光通過が生じて十分な遮光機能を持たず、膜厚が厚くなると遮光性が良くなるが、150nmを超えると、材料コストや成膜時間の増加による製造コスト高につながり、また膜の応力も大きくなって変形しやすくなる。十分な遮光性と低膜応力、低製造コストを考慮すると、金属遮光膜の膜厚は60〜140nmがより好ましい。金属酸化物膜の膜厚を60〜140nmとすることで可視域の反射率をより低減することができる。
【0021】
前記金属遮光膜と低反射性の金属酸化物膜は、樹脂フィルム基板の片面に形成されていてもよいが、両面に形成されている方が好ましい。両面に形成される場合は、各面の膜の材質が同じで、フィルム基板を中心として対称の構造であることが、より好ましい。基板の上に形成された薄膜は、基板に対して応力を与えるため、変形の要因となる。しかし、上記のように基板の両面に形成する前記金属遮光膜と低反射性の前記金属酸化物膜の材質を同じにして、基板を中心として対称の構造にすることで、応力のバランスが維持され、フラットな遮光フィルムを実現しやすい。
また、本発明の遮光フィルムは、表面抵抗値が1000Ω/□以下であることが好ましく、500Ω/□以下であることがより好ましい。
【0022】
(A)樹脂フィルム基材
本発明の遮光フィルムの基材である樹脂フィルムは、厚さが35μm以上であり、内部に空洞を有するものでなければならない。
上記樹脂フィルムの厚みは、35〜125μmの範囲が好ましく、より好ましくは50〜125μmである。35μmより薄い樹脂フィルムでは、ハンドリング性が悪くて取り扱いにくく、フィルムに傷や折れ目などの表面欠陥が付きやすくなるため好ましくない。ただし、樹脂フィルムが125μmより厚いと、小型化が進む絞り装置や光量調整用装置へ遮光羽根を複数枚搭載することができず、用途によっては所望の性能が得られなくなる場合がある。
【0023】
本発明において、空洞とは、樹脂フィルムの内部に存在する、真空状態のドメイン又は気相のドメインを意味する。樹脂フィルム基材は、空洞を有することで、通常の樹脂フィルムに比べて重量が軽くなる。
樹脂フィルム内部に含まれる空洞の量(含有率)は、10〜50体積%であることが必要である。10体積%未満では、重量減少の効果が小さく、また、50重量%より大きくなると、空洞の量が増えすぎてフィルムの強度が弱くなるため、好ましくない。空洞の量は、10〜30体積%であることがより好ましい。
ここで、前記空洞含有率は、空洞を含有する前の樹脂フィルムと空洞含有樹脂フィルムの各比重を測定し、前記比重に基づいて算出することができる。具体的には、前記空洞含有率は、下記の式(1)により求めることができる。
空洞含有率(体積%)={1−(空洞含有樹脂フィルムの密度)/(樹脂フィルムの密度)}×100 ・・・(1)
【0024】
空洞を有する樹脂フィルムとは、樹脂の種類や製造方法によって制限されるわけではないが、ポリアミド類(PA)(例えば、ナイロン−6など)、ポリアセタール類(POM)、ポリエステル類(例えば、PET、PEN、PTT、PBT、PPT、PHT、PBN、PES、PBSなど)、シンジオタクチック・ポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンサルファイド類(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン類(PEEK)、液晶ポリマー類(LCP)、またはフッ素樹脂から選ばれた1種以上のものが好ましい。その中でも、空洞含有樹脂フィルムの力学強度や製造の観点から、ポリエステル類、又はポリアミド類が好ましい。樹脂フィルムの空洞の形状、サイズなどは特に限定されず、球状、円筒状、角柱状など様々なものが使用できる。
【0025】
また、樹脂フィルムの製造方法としては、基材樹脂に対して非相溶性の樹脂を含有させ、少なくとも1軸方向に延伸する方法やインフレーション法、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法などの二軸延伸法を行い、次いで熱固定処理する方法などが挙げられ、基材樹脂には顔料や各種添加剤を配合しておくことができる。未延伸フィルム中の非相溶性樹脂の種類や含有量によって、得られる空洞の量を調整でき、延伸の程度によって空洞の形状、サイズを調整することができる。
アスペクト比とは、空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均長さをr(μm)として、前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さをL(μm)とした際のL/r比を意味する。前記アスペクト比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、10以上が好ましく、15以上がより好ましく、20以上が更に好ましい。
【0026】
市販品としては、例えば東洋紡株式会社の空洞含有ポリエステル系樹脂フィルム(登録商標:クリスパー)、東レ株式会社のポリエステル系フィルム(商品名:ルミラ−)、多層ボイド白色フィルムなどが使用できる。幾分空洞構造の出来方が異なるが、デュポン帝人アドバンスペーパー株式会社のメタ系アラミド繊維を用いたノーメックス(登録商標)紙である。ユポコーポレーションのミクロボイドフィルム(商品名:ユポ)も同様な構造を有するが、基材がポリプロピレン系であるため、比較的耐熱温度が低い用途で使用することが望ましい。
【0027】
樹脂フィルムは、その表面に算術平均高さRaが0.2〜0.8μmの微細な凹凸構造を有しているものを基材として用いることが望ましい。算術平均高さRaは、0.3〜0.7μmであることが好ましい。算術平均高さとは、算術平均粗さとも言われ、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計して平均した値である。Raが0.2μmより小さいと、フィルム表面に形成した金属遮光膜の密着性が得られず、十分な低光沢性や低反射性も得られない。また、Raが0.8μmを超えると、フィルム表面の凹凸が大きいため、凹部を被覆するためには金属遮光膜の膜厚が厚くなってしまうためコスト高となり好ましくない。
【0028】
樹脂フィルム表面の凹凸は、フィルム製造時に形成される場合もあるが、あとで表面を表面処理して形成することが一般的である。表面処理法には、例えば、ショット材に砂を使用したマット処理加工があるが、ショット材はこれに限定されない。また、フィルムを搬送しながらフィルム表面に凹凸を形成することもできるが、最適なRa値の凹凸は、マット処理中のフィルム搬送速度とショット材の種類、大きさに依存するので、これらの条件を最適化してフィルム表面の算術平均高さRa値が0.2〜0.8μmとなるように表面処理を行う。マット処理後のフィルムは、洗浄してショット材を除去した後、乾燥させる。フィルムの両面に金属遮光膜と低反射性の金属酸化物膜を形成する場合は、フィルムの両面をマット処理する。
【0029】
(B)金属遮光膜
本発明の遮光フィルムは、上記樹脂フィルム上に金属遮光膜が形成されている。スパッタリング法で金属遮光膜と低反射性の金属酸化物膜を形成すると高緻密性になることから、耐酸化性が優れ、さらにフィルムと金属遮光膜との密着性が良くなる。
【0030】
一般に金属遮光膜は酸化されると透明度が増加するため、金属遮光膜の耐酸化性は重要である。本発明の遮光フィルムに用いる金属遮光膜の材料は、耐酸化性に優れた元素周期表の4A族から7A族の遷移金属元素及びアルミニウムのうち1種類以上の元素を含有することが好ましい。具体的には、前記金属遮光膜は、ニッケル、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、マンガン、及びアルミニウムからなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する金属遮光膜であることが好ましい。さらに、上記元素から選ばれる金属の窒化物、炭化物、窒化炭化物であってもよい。上記元素を含有する金属遮光膜は、各元素が金属単体の状態では酸化されやすいものの、合金化し、組成を最適化すること、あるいは金属の窒化物、炭化物、窒化炭化物にすることにより、耐酸化性が優れたものとなる。
【0031】
密着性については、元来、有機物である樹脂フィルム基材と無機物である金属遮光膜との間では高い密着性を得ることが難しい。これは、樹脂フィルム基材と金属遮光膜の界面の密着性が不十分である場合、樹脂フィルム基材と金属遮光膜の熱膨張差により膜剥離が生じやすいからである。
このような熱膨張差による膜剥離を回避するには、樹脂フィルム基材と膜の高密着性を維持する必要があるが、本発明における金属遮光膜は、ニッケル、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、マンガン、及びアルミニウムからなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する金属遮光膜とすることが有効である。本発明で樹脂フィルムの表面に酸素の官能基を有していると、金属遮光膜中に適量含まれているニッケル、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、マンガン、アルミニウムなどの酸化されやすい元素と化学結合が生じて、フィルムと金属遮光膜間の密着性が強化される。
【0032】
(C)金属酸化物膜
また、本発明の遮光フィルムは、金属遮光膜の上に低反射性の金属酸化物膜を有している。樹脂フィルム基材に形成された金属遮光膜の反射率は高いが、金属遮光膜の上に低反射性の金属酸化物膜を積層することで、遮光フィルムの反射率を減少することができる。低反射性の金属酸化物膜は、単層でも酸素含有量や添加元素の種類及び添加量の異なる複数の層で構成されてもかまわない。また、金属遮光膜上に積層する低反射性の金属酸化物膜は、着色したものでも良い。
【0033】
本発明における低反射性の金属酸化物膜は、ニッケル、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、マンガン、及びアルミニウムからなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する金属酸化物膜であることが好ましい。これらの元素は、耐摩耗性、靭性が高いことから遮光羽根として動作する上でも利点がある。ここで、金属酸化物には、前記元素から選ばれる金属の窒化酸化物、炭化酸化物、窒化炭化酸化物も含まれる。これらの金属酸化物膜は、耐食性に優れ、下地の金属遮光膜との密着性に優れる。
具体的には、前記金属酸化物膜は、金属成分がチタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、マンガン、及びアルミニウムからなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有していることが好ましい。これらの元素は不動態を形成しやすいため、耐食性に優れているからである。
【0034】
前記金属酸化物膜の材料は、金属成分が金属遮光膜と同じでも異なっていてもよいが、金属遮光膜と同じ成分の金属酸化物膜とすることが望ましい。これにより、単一のスパッタリングターゲットを用いて、金属遮光膜と低反射性の金属酸化物膜の両方を成膜することができ、単一のカソードを有するスパッタリング装置で製造することができ、製造コストを低減することができる。上記金属酸化物膜の膜厚は、特に制限されないが、膜厚を20〜140nmとすることで可視域の反射率を低減することができる。
導電性については、樹脂フィルムが絶縁性のため静電気が発生しやすく、遮光羽根として動作した時に静電気が発生し、羽根同士がくっつかないために重要である。
本発明の遮光フィルムに用いる金属遮光膜及び金属酸化物膜の材料は、導電性を有しており、具体的な金属遮光膜及び金属酸化物膜としては、ニッケル、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、マンガン、及びアルミニウムからなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有している。金属遮光膜及び金属酸化物膜がこれらの元素を含有することで、表面抵抗値が10Ω/□以上である樹脂塗膜系などの遮光フィルムに比べ、表面抵抗値を10Ω/□以下と小さくすることができる。本発明の好ましい遮光フィルムは表面抵抗値が1000Ω/□以下であり、より好ましくは500Ω/□以下、更には100Ω/□以下である。
【0035】
2.遮光フィルムの製造方法
本発明の遮光フィルムの製造方法は、表面粗さが0.2〜0.8μm(算術平均高さRa)の内部に空洞を含有する樹脂フィルム基材(A)をスパッタリング装置に供給し、不活性ガス雰囲気下かつ十分なガス圧でスパッタリングして、樹脂フィルム基材(A)上にニッケル、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、マンガン、及びアルミニウムからなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する金属遮光膜(B)を形成し、次に、不活性ガス雰囲気に酸素ガスを導入しながら十分なガス圧でスパッタリングして、前記金属遮光膜(B)上にニッケル、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、マンガン、及びアルミニウムからなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する金属酸化物膜(C)を形成して遮光フィルムを得ることを特徴とする。
【0036】
本発明の遮光フィルムは、上記樹脂フィルム基材の表面に、スパッタリング法でニッケル、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、マンガン、及びアルミニウムからなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する金属遮光膜が形成され、前記金属遮光膜上に、反射防止効果を有するニッケル、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、マンガン、及びアルミニウムからなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する金属酸化物膜がスパッタリングで形成されている。本発明では、前記金属遮光膜および低反射性の前記金属酸化物膜がスパッタリング法で形成されているため、インクの塗布法や真空蒸着法と比べて膜の緻密性がよく、下地(基板や膜)との密着性が良好であるという特徴がある。
【0037】
本発明において、遮光フィルムは、上述のようにスパッタリング法で樹脂フィルム基材上に金属遮光膜と低反射性の金属酸化物膜を形成して製造される。スパッタリング法は、蒸気圧の低い材料の膜を基材上に形成する場合や精密な膜厚制御が必要となる時に有効な薄膜形成方法である。一般的に、約10Pa以下のアルゴンガス圧のもとで、基材を陽極とし、膜の原料となるスパッタリングターゲットを陰極として、この間にグロー放電を起こさせてアルゴンプラズマを発生させ、プラズマ中のアルゴン陽イオンを陰極のスパッタリングターゲットに衝突させてスパッタリングターゲット成分の粒子を弾き飛ばし、この粒子を基材上に堆積させて成膜する方法である。
上記、スパッタリング法は、アルゴンプラズマの発生方法で分けられ、高周波プラズマを用いるものは高周波(RF)スパッタリング法、直流プラズマを用いるものは直流(DC)スパッタリング法である。また、マグネトロンスパッタリング法は、スパッタリングターゲットの裏側に磁石を配置し、アルゴンプラズマをスパッタリングターゲット直上に集中させ、低ガス圧でもアルゴンイオンの衝突効率を上げて成膜する方法である。
【0038】
金属遮光膜と金属酸化物膜を成膜するには、例えば、図2に示した巻き取り式スパッタリング装置を用いることができる。この装置は、ロール状の樹脂フィルム基材1が巻き出しロール4にセットされ、ターボ分子ポンプ等の真空ポンプ5で真空槽6内を排気した後、巻き出しロール4から搬出されたフィルム1が途中、冷却キャンロール7の表面を通って、巻き取りロール8で巻き取られていく構成をとる。冷却キャンロール7の表面の対向側にはマグネトロンカソード9が設置され、このカソードには膜の原料となるターゲット10が取り付けてある。なお、巻き出しロール4、冷却キャンロール7、巻き取りロール8などで構成されるフィルム搬送部は、隔壁11でマグネトロンカソード8と隔離されている。
【0039】
まず、ロール状の樹脂フィルム基材1を巻き出しロール4にセットし、ターボ分子ポンプ等の真空ポンプ5で真空槽6内を排気する。その後、巻き出しロール4から樹脂フィルム基材1を供給し、途中、冷却キャンロール7の表面を通って、巻き取りロール8で巻き取られていくようにしながら、冷却キャンロール7とカソード間で放電させて、冷却キャンロール表面に密着搬送されている樹脂フィルム基材1に成膜する。なお、樹脂フィルム基材は、スパッタリング前に乾燥しておくことが望ましい。
本発明の遮光フィルムにおいて、金属遮光膜層は、例えばアルゴン雰囲気中においてニッケル、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、マンガン、及びアルミニウムからなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する金属又はそれらの合金のスパッタリングターゲットを使用した高周波(RF)または直流(DC)マグネトロンスパッタリング法により樹脂フィルム基材上に成膜形成される。
【0040】
金属遮光膜を成膜する時の成膜時のガス圧は、装置の種類などによっても異なるので一概に規定できないが、アルゴンプラズマが安定して成膜した膜の膜質が良好となり、樹脂フィルム基材との密着力を有するのに十分な程度とする。このためにガス圧は、1.0Pa以下、例えば、0.2〜1.0Paにすることが好ましい。これにより、ショット材が樹脂フィルム基材上に微量残存していても、ショット材の脱落や、金属遮光膜、低反射性の金属酸化物膜の剥がれがなくなる。成膜時のガス圧が0.2Pa未満であると、ガス圧が低いためスパッタリング法でのアルゴンプラズマが不安定となり、成膜した膜の膜質が悪くなる。また、成膜時のガス圧が1.0Paを超えた場合では、金属遮光膜の粒が粗くなり、高緻密な膜質でなくなるので樹脂フィルム基材との密着力が弱くなり、膜が剥がれてしまう。金属遮光膜の膜厚は、成膜時のフィルムの搬送速度とターゲットへの投入電力で制御される。
【0041】
樹脂フィルム基材上に金属遮光膜を成膜した後、この金属遮光膜上にニッケル、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、マンガン、及びアルミニウムからなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する金属酸化物膜を形成する。低反射性の酸化物層は、例えばアルゴン及び酸素ガス雰囲気中でニッケル、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、マンガン、アルミニウムの金属又はそれらの合金のスパッタリングターゲットを高周波(RF)又は直流(DC)マグネトロンスパッタリング法により形成される。
金属酸化物膜を成膜する時の成膜時のガス圧は、装置の種類などによっても異なるので一概に規定できないが、アルゴンプラズマが安定して成膜した膜の膜質が良好となり、樹脂フィルム基材との密着力を有するのに十分な程度とする。このために1.0Pa以下、例えば、0.2〜1.0Paにすることが好ましい。成膜時のガス圧が0.2Pa未満であると、ガス圧が低いためスパッタリング法でのアルゴンプラズマが不安定となり、成膜した膜の膜質が悪くなる。また、成膜時のガス圧が1.0Paを超えた場合では、金属酸化物膜の粒が粗くなり、高緻密な膜質でなくなるので金属遮光膜との密着力が弱くなり、膜が剥がれてしまう。金属酸化物膜の膜厚は、成膜時のフィルムの搬送速度とターゲットへの投入電力で制御される。
【0042】
本発明では金属酸化物膜の成膜工程でも、前記金属遮光膜のスパッタリングで使用したスパッタリング用ターゲットを変更することなく、全く同じターゲットを使用することが可能できる。したがって、装置セッティング上のターゲット交換をする必要が無く、連続したスパッタリングが可能であり、製造コストが安くなり、更に樹脂フィルム基材を中心に対称型の膜構造を形成できることから、成膜時の膜応力による遮光フィルムの変形を生じることもないので生産性に優れている。
これにより、基材フィルムの片面に金属遮光膜と金属酸化物膜が形成された遮光フィルムを得ることができる。さらに、この遮光フィルムを上記スパッタリング装置に供給し、同様にして、スパッタリングによって樹脂フィルム基材の裏面に金属遮光膜、及び金属酸化物膜を順次形成すれば、両面に金属遮光膜と金属酸化物膜が形成された遮光フィルムを得ることができる。
【0043】
なお、金属遮光膜と金属酸化物膜を成膜するのに、フィルム巻き取り式スパッタリング装置を例示し、連続的に成膜する方法について詳述したが、本発明は、これに限定されることなく、成膜時に基材フィルムの移動をさせずに行う回分式成膜方法を採用することもできる。この場合は、雰囲気ガスの切り替え、フィルム搬入・停止という操作が加わり煩雑となる。さらに、基材フィルムは、ロール状のものでなくとも、所定の大きさに切断された状態で装置内に固定してもよい。
【実施例】
【0044】
次に、本発明について、実施例、比較例を用いて具体的に説明する。なお、得られた遮光フィルムの評価は以下の方法で行った。
【0045】
(表面粗さ)
得られた遮光フィルムの算術平均高さRaを表面粗さ計((株)東京精密製、サーフコム570A))で測定した。
(導電性)
得られた遮光フィルムの表面抵抗値をJIS K6911に基づき測定した。
【0046】
(光学濃度、反射率)
分光光度計(日本分光社製V−570)を使用し、波長380nm〜780nmの可視光域の遮光性と反射率を測定した。遮光性は、分光光度計で測定される透過率(T)を次の式(2)により換算した。可視光領域における平均光学濃度は4以上、最大反射率は1%以下であることが必要である。
光学濃度=Log(1/T) ・・・(2)
(表面光沢度)
表面光沢度は、光沢度計でJIS Z8741に基づき測定した。表面光沢度は、3以下であれば光沢性が良好である。
【0047】
(密着性)
膜の密着性をJIS C0021に基づき評価した。評価は膜剥がれがない場合は良好(○)とし、膜剥がれがあるものは不十分(×)とした。
(重さ)
得られた遮光フィルムを、5cm角に切り取り、分析用天秤(エーアンドディ社製精密天秤、型式 GR−300)で質量を測定した。
【0048】
(実施例1)
図2に示した巻き取り式スパッタリング装置を用いて、樹脂フィルム基材上に金属遮光膜と金属酸化物膜の成膜を行った。
まず、冷却キャンロール7の表面の対向側にマグネトロンカソード9が設置された装置のカソードに膜の原料となるターゲット10(Tiターゲット)を取り付けた。巻き出しロール4、冷却キャンロール7、巻き取りロール8などで構成されるフィルム搬送部は、隔壁11でマグネトロンカソード8と隔離されている。次に、ロール状の樹脂フィルム基材1を巻き出しロール4にセットした。樹脂フィルム基材であるポリエステル系フィルム(登録商標:クリスパー、空洞:21体積%)は、予めサンドブラストによる表面加工を行い、算術平均高さRaを0.5μmとして、得られたポリエステル系フィルムをスパッタリング前に60℃で加熱し、乾燥しておいた。
次に、ターボ分子ポンプ等の真空ポンプ5で真空槽6内を排気した後、冷却キャンロール7とカソード間で放電させて、樹脂フィルム基材1を冷却キャンロール表面に密着搬送しながら成膜を行った。まず、Tiターゲットを設置したカソードから直流スパッタリング法で金属遮光膜を成膜した。金属遮光膜はスパッタリングガスに純アルゴンガス(純度99.999%)を用いて成膜を行った。成膜時のフィルムの搬送速度とターゲットへの投入電力を制御することで金属遮光膜の膜厚を制御した。巻き出しロール4から搬出された樹脂フィルム基材1は、途中、冷却キャンロール7の表面を通って、巻き取りロール8で巻き取った。
次に、このTiターゲットをカソードに設置したまま、金属遮光膜が形成されたロールをセットし、装置に供給し、このカソードから直流スパッタリング法で金属遮光膜上に低反射性の金属酸化物膜を成膜した。低反射性の金属酸化物膜はスパッタリングガスに酸素ガスを2%混合したアルゴンガスを用いて成膜を行った。成膜時のフィルムの搬送速度とターゲットへの投入電力を制御することで金属酸化物膜の膜厚を制御した。巻き出しロール4から搬出されたフィルム1は、途中、冷却キャンロール7の表面を通って、巻き取りロール8で巻き取った。フィルムの片面ずつ両面にこのような成膜を実施して、フィルム基材を中心に対称構造の遮光フィルムが得られるようにした。
こうして厚み75μmのポリエステル系フィルムの両面に、膜厚100nmの金属遮光膜と膜厚50nmの金属酸化物膜が順に、スパッタリング成膜された遮光フィルムを作製することができた。得られた金属遮光膜、低反射性の金属酸化物膜の組成は、ICP発光分析およびEPMA定量分析から、ターゲット組成とほぼ同じであることを確認した。前記のとおり、ポリエステル系フィルムのフィルムの表面は、予め所定の吐出時間、吐出圧力、搬送速度でサンドブラスト加工してあり、両面とも算術平均高さがRa0.5μmの微細な凹凸が形成されている。
次に、作製した遮光フィルムを前記の方法で評価した。この結果、光学濃度は4以上、最大反射率は1%以下であった。表面光沢度は、3以下となり光沢性は良好であった。また、表面抵抗値は、400Ω/□であり、表面の算術平均高さは、0.4μmであった。また、膜剥がれもなく、密着性は良好だった。得られた遮光フィルムの重量は0.2093gであった。作製した遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
得られた遮光フィルムは、平均光学濃度、最大反射率、表面光沢度、導電性のすべてについて良好であり、よって、このような遮光フィルムは、液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができ、1/6000〜1/12000といった高速シャッタースピードには対応可能である。
【0049】
(実施例2)
空洞の量が10体積%の樹脂フィルム基材を用いた以外は実施例1と全く同じ条件で遮光フィルムを作製した。
作製した遮光フィルムの評価を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
その結果、平均光学濃度、最大反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。作製した遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような遮光フィルムは、液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができ、1/6000〜1/12000といった高速シャッタースピードには対応可能である。
【0050】
(実施例3)
空洞の量が50体積%の樹脂フィルム基材を用いた以外は実施例1と全く同じ条件で遮光フィルムを作製した。
作製した遮光フィルムの評価を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
その結果、平均光学濃度、最大反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。作製した遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような遮光フィルムは、液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができ、1/6000〜1/12000といった高速シャッタースピードには対応可能である。
【0051】
(実施例4)
金属遮光膜の膜厚のみを50nmに変えた以外は実施例1と全く同じ条件で遮光フィルムを作製した。
作製した遮光フィルムの評価を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
その結果、平均光学濃度、最大反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。作製した遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような遮光フィルムは、液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができ、1/6000〜1/12000といった高速シャッタースピードには対応可能である。
【0052】
(実施例5)
金属遮光膜の膜厚のみを150nmに変えた以外は実施例1と全く同じ条件で遮光フィルムを作製した。
作製した遮光フィルムの評価を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
その結果、平均光学濃度、最大反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。作製した遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような遮光フィルムは、液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができ、1/6000〜1/12000といった高速シャッタースピードには対応可能である。
【0053】
(実施例6)
樹脂フィルムへのサンドブラストによる表面加工の条件を変えて、樹脂フィルム基材の算術平均高さRaを0.2μmにした以外は実施例1と全く同じ条件で遮光フィルムを作製した。
作製した遮光フィルムの評価を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
その結果、平均光学濃度、最大反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。作製した遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような遮光フィルムは、液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができ、1/6000〜1/12000といった高速シャッタースピードには対応可能である。
【0054】
(実施例7)
樹脂フィルムへのサンドブラストによる表面加工の条件を変えて、樹脂フィルム基材の算術平均高さRaを0.8μmにした以外は実施例1と全く同じ条件で遮光フィルムを作製した。
作製した遮光フィルムの評価を実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、平均光学濃度、最大反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。作製した遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような遮光フィルムは、液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができ、1/6000〜1/12000といった高速シャッタースピードには対応可能である。
【0055】
(実施例8)
フィルムの両面でなく片面にのみ金属遮光膜と低反射金属酸化物膜を成膜した以外は実施例1と全く同じ条件で遮光フィルムを作製した。
作製した遮光フィルムの評価を実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、平均光学濃度、最大反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。実施例1に比べると、若干の反りが見られるが、使用する際に接着固定すれば問題ない程度であった。作製した遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような遮光フィルムは、液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができ、1/6000〜1/12000といった高速シャッタースピードには対応可能である。
【0056】
(実施例9)
金属酸化物膜の膜厚のみを20nmに変えた以外は実施例1と全く同じ条件で遮光フィルムを作製した。
作製した遮光フィルムの評価を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
その結果、平均光学濃度、最大反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。作製した遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような遮光フィルムは、液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができ、1/6000〜1/12000といった高速シャッタースピードには対応可能である。
【0057】
(実施例10)
金属酸化物膜の膜厚のみを140nmに変えた以外は実施例1と全く同じ条件で遮光フィルムを作製した。
作製した遮光フィルムの評価を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
その結果、平均光学濃度、最大反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。作製した遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような遮光フィルムは、液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができ、1/6000〜1/12000といった高速シャッタースピードには対応可能である。
【0058】
(実施例11)
金属遮光膜および低反射性の金属酸化物膜を作製する際に、Wターゲットを用いた事以外は、全て実施例1と同様にして、遮光フィルムを試作した。
作製した遮光フィルムの評価を実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、平均光学濃度、最大反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。作製した遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような遮光フィルムは、液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができ、1/6000〜1/12000といった高速シャッタースピードには対応可能である。
【0059】
(実施例12)
金属遮光膜および低反射性の金属酸化物膜を作製する際に、Alターゲットを用いた事以外は、全て実施例1と同様の条件、構成で遮光フィルムの作製を行った。
作製した遮光フィルムの評価を実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、平均光学濃度、最大反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。作製した遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような遮光フィルムは、液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができ、1/6000〜1/12000といった高速シャッタースピードには対応可能である。
【0060】
(実施例13)
金属遮光膜および低反射性の金属酸化物膜を作製する際に、Moターゲットを用いた事以外は、全て実施例1と同様に、遮光フィルムを試作した。
作製した遮光フィルムの評価を実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、平均光学濃度、最大反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。作製した遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような遮光フィルムは、液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができ、1/6000〜1/12000といった高速シャッタースピードには対応可能である。
【0061】
(実施例14)
金属遮光膜および低反射性の金属酸化物膜を作製する際に、Taターゲットを用いた事以外は、全て実施例1と同様の条件、構成で遮光フィルムの作製を行った。
作製した遮光フィルムの評価を実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、平均光学濃度、最大反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。作製した遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような遮光フィルムは、液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができ、1/6000〜1/12000といった高速シャッタースピードには対応可能である。
【0062】
(実施例15)
金属遮光膜および低反射性の金属酸化物膜を作製する際に、Co−Mo合金ターゲットを用いた事以外は、全て実施例1と同様に、遮光フィルムを試作した。
作製した遮光フィルムの評価を実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、平均光学濃度、最大反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。作製した遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような遮光フィルムは、液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができ、1/6000〜1/12000といった高速シャッタースピードには対応可能である。
【0063】
(実施例16)
金属遮光膜および低反射性の金属酸化物膜を作製する際に、Mo−Nb合金ターゲットを用いた事以外は、全て実施例1と同様の条件、構成で遮光フィルムの作製を行った。
作製した遮光フィルムの評価を実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、平均光学濃度、最大反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。作製した遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような遮光フィルムは、液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができ、1/6000〜1/12000といった高速シャッタースピードには対応可能である。
【0064】
(実施例17)
金属遮光膜および低反射性の金属酸化物膜を作製する際に、Al−Ti合金ターゲットを用いた事以外は、すべて実施例1と同様に、遮光フィルムを試作した。
作製した遮光フィルムの評価を実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、平均光学濃度、最大反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。作製した遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような遮光フィルムは、液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができ、1/6000〜1/12000といった高速シャッタースピードには対応可能である。
【0065】
(実施例18)
金属遮光膜および低反射性の金属酸化物膜を作製する際に、TiCターゲットを用いた事以外は、すべて実施例1と同様に、遮光フィルムを試作した。
作製した遮光フィルムの評価を実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、平均光学濃度、最大反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。作製した遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような遮光フィルムは、液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができ、1/6000〜1/12000といった高速シャッタースピードには対応可能である。
【0066】
(実施例19)
金属遮光膜および低反射性の金属酸化物膜を作製する際に、TiNターゲットを用いた事以外は、すべて実施例1と同様に、遮光フィルムを試作した。
作製した遮光フィルムの評価を実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、平均光学濃度、最大反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。作製した遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような遮光フィルムは、液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができ、1/6000〜1/12000といった高速シャッタースピードには対応可能である。
【0067】
(実施例20)
成膜時のガス圧のみを0.2Paとしたこと以外は実施例1と同様の条件、構成で遮光フィルムを作製した。
作製した遮光フィルムの評価を実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、平均光学濃度、最大反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。作製した遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような遮光フィルムは、液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができ、1/6000〜1/12000といった高速シャッタースピードには対応可能である。
【0068】
(比較例1)
空洞を含まないポリエステルフィルム(東洋紡製:東洋紡エステルフィルム)を樹脂フィルムとして用いた以外は実施例1と全く同じ条件で遮光フィルムを作製した。
作製した遮光フィルムの評価を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
その結果、平均光学濃度、最大反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。しかし、遮光フィルムが空洞を含まないため、実施例の遮光フィルムに比べて重量0.2658gと重くなった。作製した遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような遮光フィルムは、液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することはできるが、1/6000〜1/12000といった高速シャッタースピードには対応できない。
【0069】
(比較例2)
金属遮光膜の膜厚のみを30nmに変えた以外は実施例1と全く同じ条件で遮光フィルムを作製した。
作製した遮光フィルムの評価を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
その結果、最大反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られたが、平均光学濃度が3.5となり、十分な遮光性が得られなかった。作製した遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような遮光フィルムは、液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができない。
【0070】
(比較例3)
金属遮光膜の膜厚のみを180nmに変えた以外は実施例1と全く同じ条件で遮光フィルムを作製した。
作製した遮光フィルムの評価を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
その結果、平均光学濃度、最大反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。しかし、金属遮光膜の膜厚が厚いため、製造に時間がかかり、コストも高くなる。作製した遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような遮光フィルムは、液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができるが、低コストで供給することが困難である。
【0071】
(比較例4)
樹脂フィルムへのサンドブラストによる表面加工の条件を変えて、樹脂フィルム基材の算術平均高さRaを0.1μmに変更した以外は実施例1と全く同じ条件で遮光フィルムを作製した。
作製した遮光フィルムの評価を実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、平均光学濃度などの特性は実施例1と同じものが得られたが、最大反射率は最大で2%、光沢度は5を示し、実施例1と比べて最大反射率と光沢度の大きい遮光フィルムであった。作製した遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような最大反射率や光沢度の値の大きい遮光フィルムを、シャッター羽根などに用いると表面反射の影響を受けるため利用することができない。
【0072】
(比較例5)
樹脂フィルムへのサンドブラストによる表面加工の条件を変えて、樹脂フィルム基材の算術平均高さRaを1.0μmに変更した以外は実施例1と全く同じ条件で遮光フィルムを作製した。
作製した遮光フィルムの評価を実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、最大反射率、光沢度などの特性は実施例1と同じものが得られたが、平均光学濃度は2を示し、実施例1と比べて平均光学濃度の低い遮光フィルムであった。作製した遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような平均光学濃度の低い遮光フィルムは、実施例とくらべると、かなり光を通すため、液晶プロジェクタの絞りの部材だけでなく多くの光学系用途に利用できない。
【0073】
(比較例6)
金属酸化物膜の膜厚のみを10nmに変えた以外は実施例1と全く同じ条件で遮光フィルムを作製した。
作製した遮光フィルムの評価を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
その結果、平均光学濃度などの特性は実施例1と同等のものが得られていたが、最大反射率が0.5%、光沢度が4と高くなった。作製した遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような最大反射率の高い遮光フィルムは、液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用できない。
【0074】
(比較例7)
金属酸化物膜の膜厚のみを150nmに変えた以外は実施例1と全く同じ条件で遮光フィルムを作製した。
作製した遮光フィルムの評価を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
その結果、平均光学濃度などの特性は実施例1と同等のものが得られていたが、最大反射率が0.7%、光沢度が4と高くなった。作製した遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような最大反射率の高い遮光フィルムは、液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用できない。
【0075】
(比較例8)
成膜時のガス圧のみを0.1Paとしたこと以外は実施例1と同様の条件、構成で遮光フィルムを作製した。しかし、ガス圧が低いためスパッタリング法でのアルゴンプラズマが不安定となり、成膜した膜の膜質が悪くなった。
作製した遮光フィルムの評価を実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、平均光学濃度、最大反射率、光沢度など膜特性のバラツキが大きかった。作製した遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような遮光フィルムは、製品としては品質保証が出来ないので、液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用できない。
【0076】
(比較例9)
成膜時のガス圧のみを1.2Paとしたこと以外は実施例1と同様の条件、構成で遮光フィルムを作製した。
作製した遮光フィルムの評価を実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、平均光学濃度、最大反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていたが、膜質が緻密でないため、密着性に問題があった。作製した遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような遮光フィルムは、密着性に劣るため、液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用できない。
【0077】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の遮光フィルムは、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラのレンズシャッターなどのシャッター羽根または絞り羽根や、カメラ付き携帯電話や車載モニターのレンズユニット内の固定絞りや、プロジェクタの光量調整用絞り装置(オートアイリスとも言う)の絞り羽根などの光学機器部品や耐熱遮光テープとして用いることができる。
【符号の説明】
【0079】
1 樹脂フィルム基材
2 金属遮光膜
3 低反射性の金属酸化物膜
4 巻き出しロール
5 真空ポンプ
6 真空槽
7 冷却キャンロール
8 巻き取りロール
9 マグネトロンカソード
10 ターゲット
11 隔壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルム基材(A)の片面もしくは両面に50〜150nmの膜厚を有する金属遮光膜(B)と、この金属遮光膜(B)上に、20〜140nmの膜厚を有する低反射性の金属酸化物膜(C)が形成された表面粗さが0.1〜0.7μm(算術平均高さRa)の遮光フィルムであって、
前記樹脂フィルム基材(A)は、内部に10〜50体積%の空洞を含有する樹脂フィルムであり、前記金属遮光膜(B)と低反射性の金属酸化物膜(C)は、いずれもニッケル、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、マンガン、及びアルミニウムからなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有することを特徴とする遮光フィルム。
【請求項2】
樹脂フィルム基材(A)の材質が、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、シンジオタクチック・ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、又はフッ素樹脂から選ばれた1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の遮光フィルム。
【請求項3】
樹脂フィルム基材(A)の膜厚が、35μm以上であることを特徴とする、請求項1に記載の遮光フィルム。
【請求項4】
表面抵抗値が1000Ω/□以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の遮光フィルム。
【請求項5】
表面抵抗値が500Ω/□以下であることを特徴とする請求項4に記載の遮光フィルム。
【請求項6】
樹脂フィルム基材(A)の両面に、前記金属遮光膜(B)と前記金属酸化物膜(C)が形成されており、フィルム基板を中心として対称の構造であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の遮光フィルム。
【請求項7】
両面に形成される前記金属遮光膜(B)と前記金属酸化物膜(C)は、金属元素の種類がそれぞれ同じであることを特徴とする請求項6に記載の遮光フィルム。
【請求項8】
表面粗さが0.2〜0.8μm(算術平均高さRa)の内部に空洞を含有する樹脂フィルム基材(A)をスパッタリング装置に供給し、不活性ガス雰囲気下かつ十分なガス圧でスパッタリングして、樹脂フィルム基材(A)上に前記金属遮光膜(B)を形成し、次に、不活性ガス雰囲気に酸素ガスを導入しながら十分なガス圧でスパッタリングして、前記金属遮光膜(B)上に前記金属酸化物膜(C)を形成することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の遮光フィルムの製造方法。
【請求項9】
スパッタリングガス圧が、0.2〜1.0Paであることを特徴とする請求項8に記載の遮光フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記金属遮光膜(B)及び前記金属酸化物膜(C)が形成された遮光フィルムを、さらに、スパッタリング装置に供給し、スパッタリングによって樹脂フィルム基材(A)の裏面に前記金属遮光膜(B)及び前記金属酸化物膜(C)を順次形成することを特徴とする請求項8〜9のいずれかに記載の遮光フィルムの製造方法。
【請求項11】
樹脂フィルム基材(A)が、ロール状に巻き取られてスパッタリング装置のフィルム搬送部にセットされることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の遮光フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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