説明

遮水シート接合部の検査方法

【課題】接合部の下側の接合に不良がある場合でも通水路内を減圧することによって不良を塞ぐことができるような遮水シートの接合方法の提供を課題とする。
【解決手段】遮水シート1、2の接合部3には重ね合わせて接合する遮水シート同士の間に未加硫ゴムからなる接合テープ4、5を、間隔をあけて2列配置することで2列の接合テープ4、5間に通水路6を形成し、前記通水路6内に水を送り込んで接合部3を冷却すると共に加圧して接合部3における不良箇所を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遮水シート接合部の検査方法にかかわり、詳しくは夏場等の高温時にでも接合部の検査が正常に行うことができる遮水シート接合部の検査方法に係わる。
【背景技術】
【0002】
産業廃棄物や一般廃棄物を廃棄して貯めておく埋め立て型の廃棄物処分場では、処分場から漏出する汚水が地下に浸透して環境汚染を引き起こす危険性があり、これを防止するために、処分場の底面に遮水工を施すことが義務付けられている。この遮水工として様々なものが挙げられるが、一般に確実性、安全性、施工性、そして経済性の面から樹脂製のシートやゴム製の遮水シートを敷設する方法がしばしば採用されている。
【0003】
貯水池、溜池、プール等の凹所に貯水する施設の底面には、漏水を防止するために、廃棄物処分場と同様に遮水シートが敷設される。更に、地中構造物などにおいては、地下水が構造物の内部に漏水するのを防止するために、構造物を覆って遮水シートが敷設される場合がある。そして、これらの遮水シートは広大な面積を有する廃棄物処分場や貯水池などの貯水施設の底面や構造物の周囲を一枚の遮水シートによって一度に覆うことは施工上困難なため、複数の遮水シートを用いて現場で接合一体化することにより、廃棄物処分場や貯水施設、地下構造物の周囲全域を覆うという工事が行われている。
【0004】
しかし、このような遮水シートを現場で接合する方法では、現場で接合した接合部分に接合不良を生じる場合があり、この接合不良による欠陥箇所から汚水や貯水が漏出する等問題があった。従来、遮水シートの接合部の適性検査は抜き取り試験により接合部の接着力試験を行うか、また施工現場において遮水シート接合部の未着部分に空気を圧入し、一定時間、一定圧を保持した後、圧力の減少がなければ空気の流出が起こらなかったとして評価されていた。しかし、この方法は塩化ビニル等の合成樹脂製遮水シートにおいて適している反面、ゴム等の弾性に富むシートにおいては接合部分が粘着な状態であること、また比較的低モジュラスであるため,欠陥が生じていなくても圧力の減少が認められることがあり、欠陥部分が正確に判断しにくいという問題があった。
【0005】
また、他の方法として超音波検査器を接合部に当接させて、欠陥部を検出する方法もあるが、この方法においても融着による接合が行われている樹脂シートには適当であるが、異質の接着剤層が介在しているゴムシートの場合には適用できないという問題があった。更に、本出願人はこれらの問題を改善するために、特許文献1に開示しているように、予め作られた遮水シート接合部の未着部分に煙送風機を具備した針部を挿入し、該針部の貫通孔から煙を送り込んだ後、該煙の上記シートの外部へ流出箇所を観察する方法を提案した。
【0006】
また、特許文献2には遮水シート同士の接合において、接合部に通水路を形成しその通水路内を減圧した状態で前記通水路内の圧力の変動を検知することで接合部に欠陥箇所があり漏れがあるかどうかを検査する方法が開示されている。
【0007】
接合部内を加圧することによっても検査を行うことはできるが、加圧すると方法を採ると接着している接合部を剥がす方向の力がかかるので圧力をあまり上げることができず一度の作業で検査できる接合部の長さには制限があった。ところが通水路内を減圧する方法とすることで接合部を剥がす心配がないので大きく減圧することができて、一度検査できる接合部の長さを長く設定することができるので検査作業の効率も上げることができる。
【0008】
【特許文献1】特公平7−37072号公報
【特許文献2】特開平10−67050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記のように、接合部に形成した通水路内を加圧もしくは減圧して圧力の変動を監視する方法を採ることで接合部における欠陥を予め見つけることができ、最終的に接合不良のない遮水層とすることができる。
【0010】
しかし、前記のようなエアーによる加圧検査・減圧検査では、夏場の高温時において、シートが伸びやすくなる、接合部の剥離強度が低下するといったことがあり、検査時の圧力保持が困難で、欠陥がなく漏水が発生していないのに圧力が変動することがあり、検査精度や検査効率が悪くなるという問題があった。特に、シートの素材がアスファルト系の場合は、バーナーや熱風による融着にて接合し、シート厚みが3〜5mmと厚いため、接合部内部の温度が下がりにくい。また、40℃を超えると接合部の剥離強度が大きく低下するので、圧力の保持ができなくなる。
【0011】
また、エアーによる漏水の検査作業は、欠陥の有無を確認する検査自体は簡便であるが、欠陥があることがわかった後に、欠陥箇所を特定することが困難であった。
【0012】
そこで、本発明では欠陥箇所の特定が容易であると共に夏場の高温時であっても、より精度の高い検査を行うことができる遮水シート接合部の検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上のような目的を達成するために本発明の請求項1では、遮水シート同士を接合した接合部における漏れを検査する方法において、遮水シートの接合部には重ね合わせて接合する遮水シート同士の重ね合わせ代において接合部の幅方向に間隔をおいて2列の接合を行うことで2列の接合間に通水路を形成し、該通水路内に水を注入し、該通水路内の水の変化を捉えることで接合部の欠陥を検出することを特徴とする。
【0014】
請求項2では、水の変化が前記通水路内の圧力変動である請求項1記載の遮水シート接合部の検査方法としている。
【0015】
請求項3では、水の変化が前記通水路からの水の漏出である請求項1記載の遮水シート接合部の検査穂法としている。
【0016】
請求項4では、通水路内の水の変化を捉えるのに先立って、通水路内に水を流して、遮水シートの温度を下げる工程を含む請求項1〜3のいずれかに記載の遮水シート接合部の検査方法としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1では、接合部に形成した通水路に水を注入して、その水の変化を捉えることで接合部の欠陥を検出する方法を採っているので、夏場など高温時であっても通水路に注入した水で接合部が冷却されて、より精度の高い検査を行うことができるものである。
【0018】
請求項2では、通水路内の水の変化を捉える方法として水の圧力変動を採用しており、欠陥がどの場所にあったとしても、欠陥の有無をすぐに検知することができる。
【0019】
請求項3では、通水路内の水の変化を捉える方法として通水路からの水の漏出を採用しており、視認で欠陥の有無だけでなく欠陥箇所をすぐに特定することができるというメリットを有する。
【0020】
請求項4では、通水路内に水を流して接合部における遮水シートの温度を確実に下げてから検査を行うものであり、より精度の高い検査を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、更に本発明の検査方法について添付図面に従って説明する。図1は本発明の検査方法で検査する遮水シートの接合方法を示す断面図である。
【0022】
遮水シート1、2は例えば図2に示すように底面T、法面Nから形成される廃棄物処分場の下地Gに遮水シート1、2を敷き詰めてその上に産業廃棄物等を廃棄し、廃棄物からの汚水が下地Gに染み込まないようにしている。遮水シート1、2を下地Gの全面に敷き詰めるには遮水シート1同士を接合することで下地G全面を覆うことができるだけの広大なものとする。
【0023】
遮水シート同士の接合部3には予め工場内で接合を行ってから現場へ持ち込む部分もあるが、現場にて接合を行う部分も多数あり、接合部の水密性には十分に注意して接合部3からの漏水を防止しなければならない。そこで遮水シート同士の端部を接合した後に接合不良箇所等の有無や不良箇所の特定を行うための検査方法に関するものである。
【0024】
接合部3では、上側遮水シート1の端部と下側遮水シート2の端部を重ね合わせ、その重ね合わせた端部の間に厚みの等しい2つの接合テープ4、5を、間隔を持って配置介在し、上下の遮水シート2、3と2つの接合テープ4、5に囲まれた水密性を有する通水路6を形成している。通水路6は通常所定長さ単位で区画されており、区画ごとに検査をおこなうようになっている。
【0025】
この状態で通水路6内に水を注入して加圧し、その後の通水路6内の圧力変化を観察する。圧力に変動があった場合は、接合部3のどこかに不良部分があって減圧されている通水路6内に空気が入り込んでいると判断することができるので不良箇所があることがわかる。
【0026】
不良箇所がなければそれでその区画の検査を終わるが、不良箇所がある場合は通水路6に沿って視認でチェックし、水漏れが発生している箇所を探す。図3に示すごとき水漏れ箇所8を発見したらその箇所が欠陥箇所であることがわかり場所を特定することができる。
【0027】
不良箇所を特定できれば、その箇所を増し貼りするなどの方法で修復する。修復が完了すれば通水路6のその不良箇所を含む区画に再び水を注入して不良箇所の有無を確かめる。不良箇所があれば水漏れ箇所を探して不良箇所の特定を行い、このような工程を繰り返し行い、また区画された通水路6の全区画で検査を行うことで不良箇所のない接合部3を得ることができる。
【0028】
以上の例では、遮水シート1、2同士の接合を接着テープ4、5を介在させて接着することで行う例を説明したが、接着テープ4、5による接着した接合部3に限られるものではなく、熱融着により接合を行い、接合部3内に通水路6を設けたような場合にも適用することができる。
【0029】
遮水シート1、2の接着テープ4、5による接着、また熱融着による融着のいずれにおいても、夏場などで高温時には、まず一つには遮水シート1、2を構成する材料が軟化して伸びやすくなる。そうすると前記の通水路6に水を注入して圧力をかけても遮水シート1、2に伸びが発生することで圧力が低下することがある。また、接着テープ4、5の強度が低下してやはり伸びが発生することで、通水路6内の水の圧力が低下してしまうといったこともある。
【0030】
そうすると接合部3に不良があることで水圧が低下しているのか、遮水シート1、2や接着テープ4、5の伸びによって水圧が低下しているのかを判定することができず、検査の精度が損なわれてしまう。
【0031】
本発明においては、通水路6に水を注入しており、そうすることで接合部3における遮水シート1や接着テープ4、5を水にて冷却することができる。よって、夏場などの気温が高く遮水シート1、2や接着テープ4、5が軟化して非常に伸びやすい状況になっており、水圧をかけてもそれらの伸びによって圧力が低下して精度の高い検査を行うことができなかった、もしくはあまり高い圧力をかけることができなかったのを、通水路6内に水を注入することで冷却されることで、伸びによる圧力の低下を小さく抑えることができて精度の高い検査を行うことができる。
【0032】
本発明の請求項4に係る発明では、接合部3の検査を行う際に、まず、接合部3の通水路6内に水を連続的に注入して、温度がある程度低下するまで通水路6内に水を流し続けて、温度が十分に下がってから、通水路6内に水圧をかけて、圧力の低下や水の漏出状況等の水の変化を捉える実際の検査の工程に入るとしている。
【0033】
そうすることによって、より正確で精度の高い検査を行うことができるようになる。通水路6内に水を流すことによる冷却工程であるが、図4に示すごとく通水路6内の一方の端の入水口10からポンプ11を用いて水を流しこむ。入水口10には不定形シール材12等を配置して、ポンプ10に接続されたホース13の先端の挿入管14を入水口10の前記不定形シール材12に差し込んで、水を送り込んでいる。そして、他端の吐出口15から水が吐き出され、吐出口15から吐き出される水の温度を測定し、水温が30℃以下になるまで水を流し続ける。吐出口15から出る水温が30℃以下になると、水を流すのをやめる。吐出口15を不定形シール材12等で密封した状態で入水口10から所定の水圧になるように水を送り込み、通水路6内を一定の水圧に保つ。ホース13の中間位置には圧力ゲージ16が取り付けられている。
【0034】
その状態でしばらく放置して水圧の変化がないかを確認する。水圧が低下してきた場合は、どこかに欠陥箇所があることになるので、水が漏れている箇所を目視で確認し、そうすることで漏水箇所を特定することができる。
【0035】
このような検査において、上側遮水シート1の端部に配置した接合テープ5と遮水シート1、2の間の接合不良であれば遮水シート表面から不良箇所の様子を目視で確認することができるので、場所の特定も容易であり、修復作業もほとんどの場合可能である。しかし、下側遮水シート2の端部に配置した接合テープ4と遮水シート1、2の間で接合不良となっている場合、不良箇所の特定も困難であり修復作業も不可能に近い。不良箇所の特定も修復も行うことができなければその区画については不合格という結果が確定してしまい。場合によっては遮水シートを取り替えるなどして接合を最初からやり直さなければならない。そこで接合テープ4の外側にシール材7を配置することによってより安全を期することができるので好ましい。
【0036】
このとき通水路6を形成する接合テープ4、5のうち下側遮水シートの端部に配置した接合テープ4の外側にシール材7を配していてもよく、更に、図5のように前記シール材7だけでなく、接合部3の表面側に接合テープ9を増し張りしておくことも可能である。
【0037】
本発明における遮水シート1、2として用いることができるものは、例えばエチレン・プロピレン・ジエンモノマー、ブチルゴム、あるいはそれらのブレンド物からなる加硫ゴム、塩化ビニル、酢酸ビニル等の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴム化アスファルトなどを挙げることができる。
【0038】
接着テープ4、5としては、自然加硫型ゴムテープ、合成樹脂製テープを用いることができ、遮水シートが熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーなどの場合には熱融着により接合しても構わない。また、液状の接着剤としては,自然加硫型、2液混合タイプ、ブチルゴム系接着剤が使用される。特に、本発明においては遮水シートを現場で接合する場合に作業性が改善され、且つ十分な接合力を有する自然加硫型ゴムテープを用いるのが好ましい。このテープの厚さは0.5〜3.0mmのものが用いられ、幅は例えば幅70〜200mmの広いものと、10〜70mmの狭い2種類のテープを用いる。通水路6の幅及び高さはこれらの接合テープ4、5の配置及び厚みで決まり、接合テープ4、5の厚みを0.5〜3.0としているが、0.5mm未満であると接合強度が不十分となりやすく、3.0mmを超えて高くすると接合部3の段差が大きくなってしまうので好ましくない。接合部3の表面に増し張りする接合テープ8は片面だけの接着であることから、表面側にゴムシートを積層した2層構造のテープにする。この増し張りの接合テープ8は検査に先立って設けておいてもよいし、検査が終わった後に検査に合格したものに追加的に増し張りを施しておくといった使い方でも構わない。
【0039】
シール材7としてはシリコン系、変性シリコン系、ブチルゴム系、ウレタン系、チオコール系、ポリサルファイド系、ポリイソブチレン系の素材を用いることができ、例えばブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、エチレンプロピレンターポリマー(EPT)等に充填材、軟化材、粘着材等を配合したゴム組成物を挙げることができる。ある程度の形状を保持する必要があることと十分なシール性を発揮する必要があり、針入度(1/10mm,25℃)が200〜600の範囲のものが好ましい。針入度(1/10mm,25℃)が200未満であると転圧時にシール材が流れてしまうといった問題があり、600を超えると流動しにくくなって接合部に不良箇所があっても流れ込むことができず孔を塞いでくれないのでシール材7を配置する目的を果たすことができない。
【0040】
シール材7は、幅が5〜20mmの範囲であって、厚みを0.5〜3mmの範囲とすることが好ましい。幅が5mm未満であったり厚みが0.5mm未満であったりするとシール性が十分に確保できない場合があって本発明の目的が達成できないことがあるので好ましくない。また、幅が20mmを超えても得られるシール性はあまり変わらず接合部の幅を広くするだけである。厚みが3mmを超えると接合部3の段差を大きくしてしまうことにもつながるので好ましくない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】遮水シートの接合部の断面図である。
【図2】廃棄物処分場の概要図である。
【図3】遮水シート接合部の別の例を示す断面図である。
【図4】遮水シート接合部の異常箇所を示す断面斜視図である。
【図5】本発明の検査方法を実施している様子を示す平面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 遮水シート
2 遮水シート
3 接合部
4 接合テープ
5 接合テープ
6 通水路
7 シール材
8 異常箇所
9 接合テープ
10 入水口
11 ポンプ
12 不定形シール材
13 ホース
14 挿入管
15 吐出口
16 圧力ゲージ
G 下地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮水シート同士を接合した接合部における漏れを検査する方法において、遮水シートの接合部には重ね合わせて接合する遮水シート同士の重ね合わせ代において接合部の幅方向に間隔をおいて2列の接合を行うことで2列の接合間に通水路を形成し、該通水路内に水を注入し、該通水路内の水の変化を捉えることで接合部の欠陥を検出することを特徴とする遮水シート接合部の検査方法。
【請求項2】
水の変化が前記通水路内の圧力変動である請求項1記載の遮水シート接合部の検査方法。
【請求項3】
水の変化が前記通水路からの水の漏出である請求項1記載の遮水シート接合部の検査穂法。
【請求項4】
通水路内の水の変化を捉えるのに先立って、通水路中に水を流して、遮水シートの温度を下げる工程を含む請求項1〜3のいずれかに記載の遮水シート接合部の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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