説明

遮熱コーティング施工装置

【課題】より確実な施工を行うことができ、且つ、作業時間を短縮化できると共に、労力を軽減できる遮熱コーティング施工装置を提供することにある。
【解決手段】通気孔53が設けられた翼部52を有するガスタービン翼50に遮熱コーティングを施工する遮熱コーティング施工装置であって、ガスタービン翼を固定する固定治具11と、固定治具に位置調整可能に設けられた溶射装置15と、固定治具に位置調整可能に設けられ、位置情報をティーチング可能なドリル17と、溶射装置およびドリルを制御する制御装置18と、を備え、制御装置が、ドリルによるティーチングあるいは制御装置へ予め設定された範囲に基づき溶射装置を制御して、ガスタービン翼の翼部に溶射材を溶射して遮熱コーティングを行うと共に、ドリルによるティーチングに基づきドリルを制御して、ガスタービン翼の通気孔に対し穴あけ加工を行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮熱コーティング施工装置に関し、特にガスタービン翼を遮熱コーティングするときに用いて好適な遮熱コーティング施工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンでは、その効率を向上させるために、使用するガスの温度を高く設定している。このような高温のガスに晒されるガスタービン翼(動翼、静翼など)には、遮熱コーティング(Thermal Barrier Coating:TBC)が施工されている。TBCとは、被溶射物であるガスタービン翼の表面に、溶射により熱伝導率の小さい溶射材(例えば熱伝導率の小さいセラミックス系材料)を被覆したものである。
【0003】
ここで、ガスタービン翼への遮熱コーティング施工方法の一例および他例について図6および図7を用いて説明する。図6に示すように、ガスタービン翼100の翼部102に対して溶射ガン201により溶射材202を溶射する。これにより、翼部102表面に遮熱コーティング層104が形成される。ところで、ガスタービン翼100の翼部102には、全体(前縁側、後縁側、背側、腹側)に亘ってフィルム冷却孔(通気孔)103が上下方向に多数設けられている。そのため、溶射材202によりフィルム冷却孔103を塞ぐことがある。
【0004】
そこで、従来、作業者が溶射材で塞がれたフィルム冷却孔を図面と対比しながら探しこの孔に対し棒などを突き刺す穴あけ作業を行っている。しかしながら、フィルム冷却孔が多数あり、作業が煩雑であるため、作業に多大な時間を要する上に、溶射材で塞がれたフィルム冷却孔を見落とすなどの作業ミスが発生する可能性があった。
【0005】
また、フィルム冷却孔をマスキングして、当該孔内に溶射材が入らないようにする方法もある。例えば、図7に示すようなマスキング治具110を用いる方法がある。マスキング治具110は、1つの第一の軸部111と複数の第二の軸部112とを有し、第二の軸部112が第一の軸部111に接続し当該第一の軸部111に対し傾斜して延在している。マスキング治具110の第二の軸部112をガスタービン翼100のフィルム冷却孔103に差し込み、この状態にて溶射ガン201により溶射材202をガスタービン翼100の翼部102表面に溶射している。このとき、マスキング治具110により溶射ガン201に対して影となる箇所には遮熱コーティング層104が形成されないため、溶射ガン201の向きを変更するなどして遮熱コーティング層が形成されていない箇所105に対して溶射材202を溶射している。このように、TBCの施工が煩雑になり作業に多大な時間を要していた。
【0006】
また、TBCの施工を行う前にフィルム冷却孔内に樹脂などを流し込んでおき、TBCの施工を行った後に熱処理することにより、前記樹脂を灰化しこれを除去する方法もある。しかしながら、穴のサイズや深さによっては灰化が不完全で冷却孔内に樹脂が残留してしまう可能性があった。また、樹脂などを流し込む作業や灰除去作業などが生じて作業が煩雑になり作業に多大な時間を要していた。
【0007】
特許文献1には、コーティング前後の撮影画像からコーティング材料で塞がれたフィルム冷却開口部を特定し、工具によりフィルム冷却開口部を塞いでいるコーティング材料を除去する方法が開示されている。この方法では、フィルム冷却開口部を塞いでいるコーティング材料の除去作業が撮影画像に依存するため、撮影画像によってはコーティング材料で塞がれたフィルム冷却開口部を見落とすなどの作業ミスが発生する可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2009−510302号公報(例えば、段落[0037]〜[0039]、[図1]など参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した従来の遮熱コーティングの除去装置および方法にあっては、TBCの施工を行ったガスタービン翼に対して行う穴あけ作業に多大な時間を要すると共に、多大な労力を要していることから、これら作業時間を短くし、作業労力を軽減することが望まれていた。また、より確実な施工を行うことも望まれていた。
【0010】
以上のことから、本発明は、前述した課題を解決するために為されたもので、より確実な施工を行うことができ、且つ、作業時間を短縮化できると共に、労力を軽減できる遮熱コーティング施工装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決する第1の発明に係る遮熱コーティング施工装置は、
通気孔が設けられた翼部を有するガスタービン翼に遮熱コーティングを施工する遮熱コーティング施工装置であって、
前記ガスタービン翼を固定する固定手段を有する基台と、
前記基台に位置調整可能に設けられ、溶射材を溶射して遮熱コーティングを行う溶射手段と、
前記基台に位置調整可能に設けられ、位置情報をティーチング可能であって穴あけ加工を行う穴あけ工具と、
前記溶射手段および前記穴あけ工具を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記穴あけ工具によるティーチングあるいは制御手段へ予め設定された範囲に基づき前記溶射手段を制御して、前記ガスタービン翼の前記翼部に前記溶射材を溶射して遮熱コーティングを行う第一の制御部と、前記穴あけ工具によるティーチングに基づき前記穴あけ工具を制御して、前記ガスタービン翼の前記通気孔に対し穴あけ加工を行う第二の制御部とを有する
ことを特徴とする。
【0012】
上述した課題を解決する第2の発明に係る遮熱コーティング施工装置は、
第1の発明に係る遮熱コーティング施工装置であって、
前記制御手段にデータを送信可能に設けられ、前記ガスタービン翼のデータを保管するデータベースをさらに備え、
前記第二の制御部が、前記穴あけ工具による前記ティーチングに加えて前記ガスタービン翼のデータに基づき前記穴あけ工具を制御して、前記ガスタービン翼の前記通気孔に対し穴あけ加工を行う
ことを特徴とする。
【0013】
上述した課題を解決する第3の発明に係る遮熱コーティング施工装置は、
第1の発明に係る遮熱コーティング施工装置であって、
前記基台に揺動可能に設けられた基端アームと、前記基端アームに揺動可能に設けられ、前記溶射手段が装着される第一の先端アームと、前記基端アームに揺動可能に設けられ、前記穴あけ工具が装着される第二の先端アームとを備える
ことを特徴とする。
【0014】
上述した課題を解決する第4の発明に係る遮熱コーティング施工装置は、
第1の発明に係る遮熱コーティング施工装置であって、
前記基台に揺動可能に設けられた基端アームと、前記基端アームに揺動可能に設けられ、前記溶射手段および前記穴あけ工具を装着可能な先端アームを備える
ことを特徴とする。
【0015】
上述した課題を解決する第5の発明に係る遮熱コーティング施工装置は、
第1の発明に係る遮熱コーティング施工装置であって、
前記穴あけ工具はドリルであって、先端に中心軸に対して45度から75度の範囲で傾斜するテーパ部を備える
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る遮熱コーティング施工装置によれば、ティーチング機能を有することから、より確実な施工を行うことができ、且つ、作業時間を短縮化できると共に、労力を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一番目の実施形態に係る遮熱コーティング施工装置を模式的に示した図である。
【図2】遮熱コーティング施工装置による作業フローを示す図である。
【図3】本発明の第二番目の実施形態に係る遮熱コーティング施工装置を模式的に示した図である。
【図4】本発明の第三番目の実施形態に係る遮熱コーティング施工装置を模式的に示した図である。
【図5】本発明の第四番目の実施形態に係る遮熱コーティング施工装置を模式的に示した図である。
【図6】従来のガスタービン翼に対する遮熱コーティング施工の一例を説明するための図である。
【図7】従来のガスタービン翼に対する遮熱コーティング施工の他例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る遮熱コーティング施工装置について、各実施形態にて具体的に説明する。
【0019】
[第一番目の実施形態]
本発明の第一番目の実施形態に係る遮熱コーティング施工装置について、図1および図2を参照して説明する。
【0020】
本実施形態に係る遮熱コーティング施工装置10は、図1に示すように、ガスタービン翼50に遮熱コーティングを施工する装置であって、固定治具11とアーム本体12と溶射装置(溶射ガン)15とドリル(穴あけ工具)17と制御装置18とを具備する。ガスタービン翼50は、翼根51と翼根51の上部に設けられた翼部52とを有し、翼部52の全体に亘ってフィルム冷却孔(通気孔)53が多数(図1にて一部のみ図示)設けられている。
【0021】
固定治具11は、ガスタービン翼50を固定する固定具(図示せず)を有する基台である。
【0022】
アーム本体12は固定治具11に揺動可能に設けられる。アーム本体12は基端アーム13と第一の先端アーム(溶射装置用アーム)14と第二の先端アーム(ドリル用アーム)16とを備える。基端アーム13は固定治具11に揺動可能に設けられる。第一の先端アーム14は、基端アーム13の先端に揺動可能に設けられる。第一の先端アーム14の先端は、溶射装置15を装着可能に形成されている。第二の先端アーム16は、基端アーム13の先端に揺動可能に設けられる。第一の先端アーム14の先端は、ドリル17を装着可能に形成されている。これにより、固定治具11に固定されたガスタービン翼50における溶射対象部分(翼部52)に溶射装置15を移動して当該溶射対象部分に対して溶射することができる。また、前記ガスタービン翼50の翼部52のフィルム冷却孔(通気孔)53にドリル17を移動して穴あけ加工を行うことができる。
【0023】
溶射装置15は第一の先端アーム14の先端に設けられており、固定治具11に対し位置調整可能となっている。溶射装置15は、ガスタービン翼50の翼部52に溶射材を溶射して遮熱コーティングを行う装置である。
【0024】
ドリル17は第二の先端アーム16の先端に設けられており、固定治具11に対し位置調整可能となっている。ドリル17はティーチング機能を有し、穴あけ加工を行う工具である。ティーチング機能とは、ドリルの位置情報(三次元位置情報)を通信ケーブル19を介して制御装置18に送信し、制御装置18の記憶装置(図示せず)にてドリル17の位置情報を記憶しておく機能である。これにより、ドリル17を用いて、ガスタービン翼50のフィルム冷却孔53の位置情報を取得することができる。
【0025】
制御装置18は、アーム本体12に通信ケーブル19を介して接続して設けられる。制御装置18は、アーム本体12、溶射装置15、およびドリル17を制御する装置である。制御装置18は第一の制御部(図示せず)と第二の制御部(図示せず)とを有する。制御装置18の第一の制御部により、ドリル17によるティーチングに基づきアーム本体12および溶射装置15を制御して、ガスタービン翼50の翼部52に溶射材を溶射して遮熱コーティングを行っている。制御装置18の第二の制御部により、ドリル17によるティーチングに基づきアーム本体12およびドリル17を制御して、ガスタービン翼50のフィルム冷却孔53に対し穴あけ加工を行っている。
【0026】
続いて、上述した遮熱コーティング施工装置10を用いてガスタービン翼50に対し遮熱コーティングを施工する手順について、図1および図2を参照して説明する。
【0027】
まず、ガスタービン翼50を固定治具11に固定する(第一の工程S1)。これにより、ガスタービン翼50が所定の位置に配置され、その姿勢が保持される。
【0028】
第一の工程S1に引き続いて、ドリル17によりガスタービン翼50の翼部52に設けられた複数のフィルム冷却孔53の位置をティーチングする(第二の工程S2)。具体的には、作業者が、ドリル17が取り付けられた第二のアーム18および基端アーム13を動かして、ドリル17の先端をガスタービン翼50のフィルム冷却孔53の位置に配置する。この作業により、フィルム冷却孔53の位置情報を得て、この情報を制御装置18に保管することができる。この作業を各フィルム冷却孔53に対して行う。これにより、固定治具11で固定されたガスタービン翼50のフィルム冷却孔53の位置情報がティーチング情報として制御装置18に保管される。これにより、この情報に基づき、アーム本体12、溶射装置15、ドリル17を制御する際に利用することができる。
【0029】
第二の工程S2に引き続いて、ティーチング情報(複数のフィルム冷却孔53の位置情報)を溶射装置15に通知(送信)する(第三の工程S3)。これにより、溶射装置15が、溶射対象箇所である、ガスタービン翼50の翼部52のおおまかな位置を把握することができる。これは、溶射装置15から溶射される溶射材が溶射装置15の先端から放射状に拡散しており、翼部52の大まかな位置情報に基づき溶射装置15を移動しながら溶射することで、翼部52全体に対して溶射することが可能となるからである。
【0030】
第三の工程S3に引き続いて、ティーチング情報(複数のフィルム冷却孔53の位置情報)に基づき、アーム本体12を揺動しつつ溶射装置15によりガスタービン翼50の翼部52に対して溶射する(第四の工程S4)。
【0031】
第四の工程S4に引き続いて、ティーチング情報(複数のフィルム冷却孔53の位置情報)に基づき、アーム本体12を揺動しつつドリル17によりフィルム冷却孔53に対し穴あけ加工を行う(第五の工程S5)。これをティーチング情報で得られた全てのフィルム冷却孔53に対して行う。よって、ドリル17によりフィルム冷却孔53を塞いでいた溶射材を取り除くことができる。
【0032】
したがって、本実施形態に係る遮熱コーティング施工装置10によれば、ガスタービン翼50に対するティーチング作業、溶射作業、および穴あけ作業(加工)を、固定治具11に固定した状態にて一貫して行うため、複数のフィルム冷却孔53に対する位置合わせの作業を最初の1回の作業で済み、作業時間を短縮化し、労力を軽減できる。また、ティーチング作業、溶射作業、および穴あけ作業を、固定治具に固定した状態にて一貫して行うため、治具の取付け誤差が発生せず、穴あけ加工の精度を向上できる。また、溶射を行う前にフィルム冷却孔53のティーチング作業を行い、この作業で得られたティーチング情報に基づきドリル17による穴あけ加工を行うため、溶射材で塞がれたフィルム冷却孔53の見落としが無くなり、より確実な施工を行うことができる。
【0033】
[第二番目の実施形態]
本発明の第二番目の実施形態に係る遮熱コーティング施工装置について、図3を参照して説明する。
本実施形態に係る遮熱コーティング施工装置は、上述した第一番目の実施形態に係る遮熱コーティング施工装置が具備する制御装置にデータベースを接続した装置である。本実施形態では、上述した第一番目の実施形態に係る遮熱コーティング施工装置が具備する機器と同一機器には同一符号を付記している。
【0034】
本実施形態に係る遮熱コーティング施工装置20は、図3に示すように、制御装置18にデータを送受信可能に接続して設けられるデータベース21を具備する。このデータベース21には、ガスタービン翼50のデータが保管される。ガスタービン翼50のデータには、翼部に設けられたフィルム冷却孔(通気孔)53の位置情報を含む設計データや補修データなどが含まれている。また、制御装置18は、ドリル17によるティーチング情報に加えてガスタービン翼50のデータに基づきドリル17を制御して、ドリルによる穴あけ加工を行うことができるようになっている。これにより、ドリル17によるティーチング作業にて、フィルム冷却孔53の見落としを防ぐことができ、より確実な施工を行うことができる。
【0035】
したがって、本実施形態に係る遮熱コーティング施工装置20によれば、上述した第一番目の実施形態に係る遮熱コーティング施工装置10と同様な作用効果を奏する上に、複数のフィルム冷却孔53を一つずつティーチングする作業を行う必要が無くなり、穴位置情報を取得するための作業時間を短縮でき、より高速な処理が可能となる。労力を軽減することができる。また、より一層確実な施工を行うことができる。
【0036】
[第三番目の実施形態]
本発明の第三番目の実施形態に係る遮熱コーティング施工装置について、図4を参照して説明する。
本実施形態に係る遮熱コーティング施工装置は、上述した第一番目の実施形態に係る遮熱コーティング施工装置が具備するアーム本体を変更した装置である。本実施形態では、上述した第一番目の実施形態に係る遮熱コーティング施工装置が具備する機器と同一機器には同一符号を付記している。
【0037】
本実施形態に係る遮熱コーティング施工装置30は、図4に示すように、固定治具11に揺動可能に設けられるアーム本体31を具備する。アーム本体31は、基端アーム32と先端アーム33とを備える。基端アーム32は固定治具11に揺動可能に設けられる。先端アーム33は、基端アーム32の先端に揺動可能に設けられる。先端アーム33の先端は、溶射装置15およびドリル17を装着可能に形成されている。
【0038】
したがって、本実施形態に係る遮熱コーティング施工装置30によれば、上述した第一番目の実施形態に係る遮熱コーティング施工装置10と同様な作用効果を奏する上に、作業に応じて先端アーム33の先端に溶射装置15またはドリル17を装着することができるため、溶射装置およびドリルのそれぞれを装着するアームが不要となり、上述した第一番目の実施形態に係る遮熱コーティング施工装置10と比べて、構成機器を減らすことができる。これにより、装置を軽量化でき、装置コストを低減できる。また、メンテナンス作業も軽減化することができる。
【0039】
[第四番目の実施形態]
本発明の第四番目の実施形態に係る遮熱コーティング施工装置について、図5を参照して説明する。
本実施形態に係る遮熱コーティング施工装置は、上述した第一番目の実施形態に係る遮熱コーティング施工装置が具備するドリルを変更した装置である。本実施形態では、上述した第一番目の実施形態に係る遮熱コーティング施工装置が具備する機器と同一機器には同一符号を付記している。
【0040】
本実施形態に係る遮熱コーティング施工装置40は、図5に示すように、第二の先端アーム16に装着されたドリル41を具備する。このドリル41は、先端にテーパ部41aが設けられている。テーパ部41aは、ドリル41の軸心に対し45度から75度の範囲の角度で傾斜して形成されている。これは、テーパ部41aの傾斜角が45度より小さい場合や75度より大きい場合には、ドリル41をフィルム冷却孔53に向けて移動する力が、ドリル41を当該ドリル41の中心へ移動する力へと円滑に変換することができないからである。これにより、ドリル41により穴あけ加工を行うときに、ガスタービン翼50のフィルム冷却孔53に対してドリル41の軸心がずれていると、ドリル41のテーパ部41aがフィルム冷却孔53の縁部に接触する。このとき、ドリル41をフィルム冷却孔53に向けて移動する力がドリル41のテーパ部41aによりドリル41を当該ドリル41の中心へ移動する力へと円滑に変換される。その結果、ドリル41の中心がフィルム冷却孔53の中心に案内される。そのため、フィルム冷却孔53を塞いでいる部分の遮熱コーティング材のみをより確実に除去することができる。
【0041】
したがって、本実施形態に係る遮熱コーティング施工装置40によれば、上述した第一番目の実施形態に係る遮熱コーティング施工装置10と同様な作用効果を奏する上に、穴あけ加工時にフィルム冷却孔53の中心とドリル41の中心位置に誤差があった場合でも、ドリル41の中心がドリル41のテーパ部41aによりドリル41の中心がフィルム冷却孔53の中心に案内される。その結果、ドリル41の中心とフィルム冷却孔53の中心の位置ずれを許容して穴あけ作業を行うことができ、作業の効率化および作業の高精度化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る遮熱コーティング施工装置によれば、作業時間を短縮化しつつ、より確実な施工を行うことができ、且つ、作業時間を短縮化できると共に、労力を軽減できるため、ガスタービンなどの製造産業などで有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
10 遮熱コーティング施工装置
11 固定治具
12 アーム本体
13 基端アーム
14 第一の先端アーム
15 溶射装置
16 第二の先端アーム
17 ドリル
18 制御装置
19 通信ケーブル
20 遮熱コーティング施工装置
21 データベース
30 遮熱コーティング施工装置
31 アーム本体
32 基端アーム
33 先端アーム
40 遮熱コーティング施工装置
41 ドリル
41a テーパ部
50 ガスタービン翼
51 翼根
52 翼部
53 フィルム冷却孔(通気孔)
100 ガスタービン翼
101 翼根
102 翼部
103 フィルム冷却孔(通気孔)
104 遮熱コーティング部分
105 遮熱コーティングされていない部分
110 マスキング治具
111 第一の軸部
112 第二の軸部
201 溶射ガン
202 溶射材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気孔が設けられた翼部を有するガスタービン翼に遮熱コーティングを施工する遮熱コーティング施工装置であって、
前記ガスタービン翼を固定する固定手段を有する基台と、
前記基台に位置調整可能に設けられ、溶射材を溶射して遮熱コーティングを行う溶射手段と、
前記基台に位置調整可能に設けられ、位置情報をティーチング可能であって穴あけ加工を行う穴あけ工具と、
前記溶射手段および前記穴あけ工具を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記穴あけ工具によるティーチングあるいは制御手段へ予め設定された範囲に基づき前記溶射手段を制御して、前記ガスタービン翼の前記翼部に前記溶射材を溶射して遮熱コーティングを行う第一の制御部と、前記穴あけ工具によるティーチングに基づき前記穴あけ工具を制御して、前記ガスタービン翼の前記通気孔に対し穴あけ加工を行う第二の制御部とを有する
ことを特徴とする遮熱コーティング施工装置。
【請求項2】
請求項1に記載された遮熱コーティング施工装置であって、
前記制御手段にデータを送信可能に設けられ、前記ガスタービン翼のデータを保管するデータベースをさらに備え、
前記第二の制御部は、前記穴あけ工具による前記ティーチングに加えて前記ガスタービン翼のデータに基づき前記穴あけ工具を制御して、前記ガスタービン翼の前記通気孔に対し穴あけ加工を行う
ことを特徴とする遮熱コーティング施工装置。
【請求項3】
請求項1に記載された遮熱コーティング施工装置であって、
前記基台に揺動可能に設けられた基端アームと、前記基端アームに揺動可能に設けられ、前記溶射手段が装着される第一の先端アームと、前記基端アームに揺動可能に設けられ、前記穴あけ工具が装着される第二の先端アームとを備える
ことを特徴とする遮熱コーティング施工装置。
【請求項4】
請求項1に記載された遮熱コーティング施工装置であって、
前記基台に揺動可能に設けられた基端アームと、前記基端アームに揺動可能に設けられ、前記溶射手段および前記穴あけ工具を装着可能な先端アームとを備える
ことを特徴とする遮熱コーティング施工装置。
【請求項5】
請求項1に記載された遮熱コーティング施工装置であって、
前記穴あけ工具はドリルであって、先端に中心軸に対して45度から75度の範囲で傾斜するテーパ部を備える
ことを特徴とする遮熱コーティング施工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−102388(P2012−102388A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254472(P2010−254472)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】