説明

遮熱塗料組成物及び塗装構築物

【課題】 高反射率、低熱伝導を同時に満たし、かつ薄膜で機能する塗膜を形成することのでき、建築構造物の屋上や屋根、外壁などへの塗装用に好適な遮熱塗料組成物と、それから形成される塗膜を有する塗装構築物を提供する。
【解決手段】 中空球状又は鱗片状の低熱伝導体、構造助剤及びシランカップリング剤を含有する遮熱塗料組成物、及び、構築物表面の少なくとも1部に、この遮熱塗料組成物を塗布、乾燥して形成される塗膜を形成した塗装構築物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い遮熱性を有し、また太陽光などの熱エネルギーを効率良く反射することによって、熱エネルギーの侵入を防ぐ遮熱塗料組成物及びそれから形成される塗膜を有する塗装構築物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽光の熱エネルギーによる室内温度の上昇は、人間の感度の低下や不快感を与え、効率の低下、ミスや事故の発生を招く原因になる。これを防止する方法として、従来より、建築物の屋根、外壁などに遮熱効果を有する塗料が塗装されてきた。例えば、塗料中の顔料を改良して太陽光をより反射させることによって遮熱効果を得ている(例えば、特許文献1参照。)。これらの技術は、太陽光の反射効果のみを期待したものであるため、塗膜表面が太陽エネルギーにより上昇した場合は建築構造物に熱が伝わりやすい問題があった。一方、それらの問題を解決する方法として塗膜中に中空球状体を含有する技術もあるが(例えば、特許文献2参照。)、それ自体には遮熱効果がないため、塗膜表面に露出した場合は遮熱効果が低下する。また、この場合は塗装塗膜が厚くなりやすく、塗装作業が煩雑になり、経日において劣化しやすくなるなどの問題があった。
以上のように、従来から、太陽光を反射させる遮熱効果や、塗膜の断熱性を上げるという観点からそれぞれの研究開発がなされているが、高反射率、低熱伝導を同時に満たし、かつ薄膜で機能する塗料についてはまだ提案されていない。
【特許文献1】特開平2−185572号公報
【特許文献2】特開2001−64544号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、高反射率、低熱伝導を同時に満たし、かつ薄膜で機能する塗膜を形成することのできる遮熱塗料組成物と、それから形成される塗膜を有する塗装構築物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記ような問題に鑑み鋭意研究の結果、構造助剤により顔料等を表面に浮かび上がらせることにより遮熱性能を保持し、低熱伝導体を用いることにより断熱性能を向上させ、シランカップリング剤により塗膜中の有機物と低熱伝導体等の無機物を強固に結合させることにより耐水性を向上させることにより、高反射率で低熱伝導であり、かつ、薄膜で機能する塗膜を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
本発明は次のものに関する。
(1)中空球状又は鱗片状の低熱伝導体、構造助剤及びシランカップリング剤を含有することを特徴とする遮熱塗料組成物。
(2)中空球状の低熱伝導体が中空粒子あるいは真空粒子であることを特徴とする(1)に記載の遮熱塗料組成物。
(3)低熱伝導体を0.5〜9.9重量%含有し、低熱伝導体が透明もしくは半透明であって、粒子径が10〜200μmであることを特徴とする(1)に記載の遮熱塗料組成物。
(4)構造助剤を0.1〜10.0重量%含有し、構造助剤がシリカを主成分とするシリカ粉であることを特徴とする(1)に記載の遮熱塗料組成物。
(5)シランカップリング剤を0.01〜4.0重量%含有することを特徴とする(1)に記載の遮熱塗料組成物。
(6)ビヒクル、顔料、中空球状又は燐片状の低熱伝導体、構造助剤及びシランカップリング剤を含有することを特徴とする(1)に記載の遮熱塗料組成物。
(7)構築物表面の少なくとも一部に、(1)〜(6)いずれかに記載の遮熱塗料組成物を塗布、乾燥して形成される塗膜を形成したことを特徴とする塗装構築物。
(8)構築物が建築構造物であり、建築構造物の屋根、建築構造物の屋上及び建築構造物の外壁の少なくとも1つの少なくとも一部に該塗膜を形成したことを特徴とする(7)に記載の塗装構築物。
【発明の効果】
【0006】
本発明の遮熱塗料組成物では、低熱伝導体と構造助剤を用いることにより、塗布して形成された塗膜は、従来より問題となっていた太陽エネルギーによる塗膜表面の温度上昇を抑制することができる。また、本発明の遮熱塗料組成物では、シランカップリング剤を用いて塗料中の有機物と低熱伝導体等の無機物とを強固に結合させることにより、耐水性が向上するため、降雨による耐劣化効果も期待できる。さらに、本発明の遮熱塗料組成物は促進耐候性に優れ、建築構造物等の構築物に塗装した場合、長期において塗膜が劣化しない塗装構築物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
前述のような問題点を解決するために、本発明では以下のような手段によって遮熱塗料組成物及びそれらを塗膜形成した構築物を得た。本発明に使用される中空球状又は鱗片状の低熱伝導体の材質は種々のものが挙げられ、セラミック、火山灰(シラス)、フライアッシュ、セラミック質アルミナシリケート、ガラス、雲母等が挙げられるが、低熱伝導性の観点から、セラミック質アルミナシリケート、雲母が好ましい。また、塗料への着色のの観点からは、透明もしくは半透明の低熱伝導体が好ましい。低熱伝導体の粒子径は、10〜200μmであることが好ましく、60〜120μmであることがより好ましい。粒子径が10μm未満であると、低熱伝導性が得られなくなる傾向があり、200μmを超えると、塗膜に隙間を生じやすくなる傾向がある。なお、中空球状の低熱伝導体は、中空粒子又は真空粒子であることが好ましい。中空粒子とは、球状又は楕円形状をした粒子で、中心に空洞があるものを意味し、真空粒子とは、球状又は楕円形状をした粒子で、中心に真空の空洞があるものを意味する。このようなものとしては、例えば、シラスバルーン、セラミックバルーン、ムーンセラミックス等が挙げられる。
前記低熱伝導体の含有量は、遮熱塗料組成物に対して、0.5〜9.9重量%であることが好ましく、2.0〜7.0重量%であることがより好ましく、4.0〜6.0重量%であることがさらに好ましい。ここで、低熱伝導体の含有量が0.5重量%未満であると遮熱性効果が不十分となる傾向があり、9.9重量%を超えると塗料バランスがくずれ、接着力、粘度、耐クラック性などが低下する傾向がある。
【0008】
本発明に使用される構造助剤は種々のものが挙げられ、例えばシリカ、アルミニウムナトリウムシリケート、ケイ酸アルミナ、クレー等が挙げられるが、シリカを主成分とするシリカ粉が好ましく、例えばアルミニウムナトリウムシリケートが好ましい。前記構造助剤の含有量は、遮熱塗料組成物に対して、0.1〜10.0重量%であることが好ましく、0.5〜7.0重量%であることがより好ましく、1.0〜5.0重量%であることがさらに好ましい。ここで構造助剤の含有量が0.1重量%未満であると構造付与効果が不十分となる傾向があり、10.0重量%を超えると塗料の粘度、接着力、耐クラック性などが低下する傾向がある。構造助剤の粒子径は1.0〜70μmであることが好ましく、10〜40μmであることがより好ましい。
【0009】
本発明に使用されるシランカップリング剤は種々のものが挙げられ、例えばシランにビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、アミノ基、ウレイド基、クロロプロピル基、メルカプト基、イソシアネート基、スルフィド基等の官能基の少なくとも1種を持つ物が挙げられるが、官能基としてはエポキシ基が好ましい。具体例としては、官能基としてビニル基を有するシランとしては、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等が、エポキシ基を有するシランとしては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等が、メタクリロキシ基を有するシランとしては、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が、アミノ基を有するシランとしては、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン等が、ウレイド基を有するシランとしては、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が、メルカプト基を有するシランとしては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。前記シランカップリング剤の含有量は、遮熱塗料組成物に対して、0.01〜4.0重量%であることが好ましく、0.02〜3.0重量%含有合であることがより好ましく、0.03〜2.0重量%であることがさらに好ましい。ここで、シランカップリング剤の含有量が0.01重量%未満であると塗膜強度、耐水性向上の効果が不十分となる傾向があり、4.0重量%を超えると塗料バランスがくずれ、接着力、粘度、耐クラック性、などの低下や経日増粘する傾向がある。
【0010】
本発明の遮熱塗料組成物は、一般に、上記成分と共にその他の成分を充填又は混練して製造される。このような成分としては、造膜助剤、樹脂やエマルション樹脂等のビヒクル、可塑剤、顔料、分散剤、消泡剤等がある。本発明の遮熱塗料組成物の具体例としては、例えば、上記の低熱伝導体、構造助剤及びシランカップリング剤と、更にビヒクル及び顔料を必須成分とするものが挙げられる。
【0011】
造膜助剤としては、例えばブチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール、ブチルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテート、ベンジルアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル(商品名:2−エチルヘキシルグリコール(EHG))、トリエチレングリコールモノn−ブチルエーテル(商品名:ブチルトリグリコール(BTG))、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル(商品名:2−エチルヘキシルジグリコール(EHDG))等が挙げられる。前記造膜助剤を用いる場合、その含有量は、遮熱塗料組成物に対して、0.1〜20.0重量%であることが好ましく、0.5〜10.0重量%であることがより好ましく、1.0〜5.0重量%であることがさらに好ましい。ここで造膜助剤の含有量が0.1重量%未満では塗装時の成膜が得られくなる傾向があり、20重量%を超えると、成膜は良好であるが塗膜乾燥が悪化する傾向がある。
【0012】
本発明の遮熱塗料組成物に用いることのできるビヒクルとしては、例えば、合成樹脂等の樹脂や、水系エマルション樹脂等のエマルション樹脂が挙げられる。合成樹脂としては、例えば、アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル等の合成樹脂があり、中でもアクリル樹脂が好ましい。また水系エマルション樹脂としては、例えばシリコンアクリルエマルション、アクリルエマルション、ウレタンエマルション、ウレタンアクリルエマルション等があり、中でもシリコンアクリルエマルションが好ましい。更に、合成樹脂は、機械安定性が良く、ガラス転移温度(以下、Tgと略す)が0〜70℃のものが好ましい。ガラス転移温度が0℃未満では、付着性は良いが塗膜が柔軟すぎて、耐摩耗性、耐汚染性、乾燥性、塗膜強度が劣る傾向がある。70℃を超えると、過剰の造膜助剤の添加が必要となったり、塗料の粘度の著しい上昇や、塗膜の柔軟性の低下によるクラックが発生したり、更には塗膜の耐水性が低下するおそれがある。そのため合成樹脂のTgは10〜30℃がより好ましい。合成樹脂の重量平均分子量は100,000〜200,000が好ましい。重量平均分子量が100,000未満のものを使用すると、塗膜強度が弱すぎて、塗膜がちぎれるように剥離したり、耐汚染性が劣る傾向がある。また200,000を超えると、塗膜強度、耐汚染性は問題ないが、粘度が高くなる傾向がある。好ましくは150,000前後が良い。水系エマルション樹脂の場合は固形分濃度(以下、NVと略す)は43〜62重量%が好ましい。43重量%未満の場合、塗料中のNVが低くなりやすく、乾燥性が劣る傾向があり、62重量%を超えると塗料粘度の上昇や耐クラック性が低下する傾向がある。上記の合成樹脂、水系エマルション樹脂等のビヒクルを用いる場合、その配合量(水系エマルション樹脂の場合、水等を含めた水系エマルション樹脂総量の配合量をいう。実施例においても同様。)は、遮熱塗料組成物に対して10.0〜70.0重量%が好ましく、20.0〜60.0重量%がより好ましく、30.0〜50.0重量%がさらに好ましい。10.0重量%未満では塗料粘度の増加により作業性が傾向があり、一方70.0重量%を超えると乾燥性、汚染性が劣る傾向がある。
【0013】
可塑剤としては、フタル酸ジオクチル等のフタル酸エステル、リン酸トリエチルエステル、リン酸トリブチルエステル等のリン酸エステル、ポリエチレングリコール等のグリコール類、ベンジルアルコール、アセチルクエン酸系可塑剤、エポキシ系可塑剤、トリメット系可塑剤等が挙げられる。可塑剤を使用する場合、その配合量は、遮熱塗料組成物に対して0.5〜5.0重量%が好ましく、1.0〜4.0重量%がより好ましく、1.5〜2.5重量%がさらに好ましい。0.5重量%未満では低温時の可とう性が劣る傾向があり、一方5.0重量%を超えると乾燥性、汚染性が劣る傾向がある。
【0014】
顔料としては、特に制限なく、公知のものを使用することができるが、反射や遮熱効果の観点からは、白色顔料や黄色顔料が好ましく用いられる。白色顔料としては、例えば二酸化チタン、亜鉛華、リトポン、鉛白等があり、黄色顔料としては、例えば黄鉛、耐熱黄鉛、有機系黄色顔料等が挙げられる。また、必要に応じ蓄光顔料、蛍光顔料、夜光顔料等を単独、併用しても良い。顔料を使用する場合、その配合量は、特に前記白色顔料や黄色顔料の場合など、遮熱塗料組成物に対して、10.0〜70.0重量%が好ましく、10.0〜60.0重量%がより好ましく、20.0〜50.0重量%がさらに好ましい。10.0重量%未満では、塗料の不揮発分が低くなり乾燥性が低下したり、隠ぺい力が低下したりする傾向がある。一方70.0重量%を超えると、分散が困難になり、塗料粘度の上昇、流動性の悪化により塗装性が低下する傾向がある。
【0015】
本発明に使用しうる分散剤、消泡剤としては、特に制限はなく、塗料に通常用いられるものから適宜選択して使用することができる。分散剤及び消泡剤を使用する場合、その配合量は特に制限はないが、各々、遮熱塗料組成物に対して0.1〜5.0重量%が好ましく、0.3〜4.0重量%がより好ましく、0.5〜3.0重量%がさらに好ましい。0.1重量%未満では、塗料の分散、消泡性が低くなる傾向がある。一方5.0重量%を超えると、分散、消泡性は良好であるが、塗装時において塗膜表面にはじきや柚子肌現象が生じやすくなる。
【0016】
本発明の遮熱塗料組成物を用いる塗料の製造方法は特に制限はないが、顔料を用いる場合、まず、顔料を分散させる必要がある。この方法としては、ビヒクルとして合成樹脂を用いた場合には、通常、合成樹脂及び顔料を有機溶剤と混合し、この混合物を三本ロール、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、ニーダー等の各種分散、混錬装置を用いて混練するする方法がある。なお、ビヒクルとして水系エマルション樹脂等のエマルション樹脂を用いる場合には、有機溶剤を用いずに分散させることもできるし、必要に応じて有機溶剤を添加して分散させてもよい。
【0017】
この時用いる有機溶剤としては特に制限はなく、例えば、ケトン系、アルコール系、芳香族系等が挙げられる。具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、エチレングリコール、プロピレングリコール、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、ベンゼン、トルエン、キシレン、乳酸エチル、酢酸エチル等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0018】
ただし、有機溶剤の選定は、顔料、分散剤等、他の材料との組み合わせにおいて適切に決められるものであり、場合によっては、ある有機溶剤を用いると本発明の特徴である遮熱性能が特定の範囲からはずれることになれば、その有機溶剤はその系には使用できないことは自明である。したがって、用いる有機溶剤に制限はないが、その系に適した有機溶剤を選定しなければならない。
【0019】
また、顔料分散の際、ポリカルボン酸のアルキルアミン塩、アルキルアンモニウム塩、アルキルロールアンモニウム塩、アクリル系共重合物のアンモニウム塩、ポリカルボン酸ナトリウム塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アミノアルコール塩、ポリアミノアマイド系カルボン酸塩、ポリアミノアマイド系の極性酸エステル塩等の分散剤を用いると顔料の分散性や分散安定性が良好になり好ましい。
【0020】
これら顔料分散剤は、顔料100重量部に対して50重量部以下で用いることが好ましい。また、低熱伝導体、構造助剤、シランカップリング剤は顔料分散時に加えてもよく、分散後に加えてもよい。同様に有機溶剤も顔料の分散時に全量用いてもよく、有機溶剤の一部を分散後に加えてもよい。ただし、有機溶剤は分散時の合成樹脂及び顔料の全量100重量部に対して、分散時に少なくとも50重量部以上用いることが好ましい。50重量部未満では、分散時の粘度が高すぎて、特にボールミル、サンドミル、ビーズミル、デゾルバー等で分散する場合には分散が困難になる可能性がある。
【0021】
上記のようにして本発明の遮熱塗料組成物を調製し、構築物表面に塗布した後、乾燥させて塗膜を形成することにより、塗装構築物を得ることができる。遮熱塗料組成物の塗布方法としては、ハケ塗り、スプレー塗布、ロールコータ塗布が好ましいが、塗布する対象物により、静電塗装、カーテン塗装、浸漬方法等も適用可能である。さらに塗布後、乾燥させて塗膜化させる方法については、自然乾燥、焼き付け等の方法を用いることができ、塗料性状等によって適宜選択される。
本発明の遮熱塗料組成物の塗装における膜厚は100〜400μmが好ましく、200〜300μmがより好ましい。100μm未満では膜厚が薄いため隠ぺい性が劣り、遮熱特性が低下する傾向がある。400μmを超えると、隠ぺい性、遮熱特性は良好であるが、下地基材への追従性が低下する傾向がある。
【0022】
本発明の遮熱塗料組成物を表面に塗布、乾燥して塗膜を形成する構築物としては、特に制限はないが、塗膜が遮熱性、耐水性、耐候性等に優れることから、例えば、建築構造物に好適に用いられる。建築構造物の場合、屋根、屋上、外壁などの塗装に好適である。本発明の遮熱塗料組成物を用い手構築物に塗膜を形成する際には、例えば、建築構造物を構築するアルミ板、亜鉛メッキ鋼板、アルミ亜鉛メッキ鋼板、鉄板、ブリキ板、スレート板、コンクリート等やそれらに何らかの処理をした基材に下地処理、例えばプライマー等の塗布をしてから塗装するのが好ましい。例えばエポキシ系等のプライマーを10〜100μmの厚さで塗装した後、遮熱塗料組成物を塗装する方法がある。
以上の方法により本発明の遮熱塗料組成物及びそれらを塗膜形成した構築物が得られる。
【実施例】
【0023】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は実施例に何ら制限されるものではない。なお実施例中、特にことわりのないかぎり、「%」は「重量%」「部」は「重量部」を示す。
(実施例1)〜(実施例5)
表1に示すA〜Iの成分をデゾルバーで混合した後、鉄板及びガラス板に塗布した。
【0024】
【表1】

【0025】
A: 固形分:48重量%
C: ポリシロキサン
D: フタル酸ジオクチル
E: 二酸化チタン
F: 2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート
G: アルミニウムナトリウムシリケート、粒子径:10〜30μm
H: アルミナシリケート、中空粒子、粒子径:45〜80μm
I: γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
【0026】
(比較例1)
表1に示すA〜F及びHの成分をデゾルバーで混合した後、鉄板及びガラス板に塗布した。
(比較例2)
表1に示すA〜F及びGの成分をデゾルバーで混合した後、鉄板及びガラス板に塗布した。
(比較例3)
表1に示すA〜F及びIの成分をデゾルバーで混合した後、鉄板及びガラス板に塗布した。
(比較例4)
塗料未塗装の鉄板。
【0027】
(遮熱性試験板の作製)
厚さ0.8mmの鉄板にすきまが400μmのフィルムアプリケーターを用いて乾燥後の塗膜厚みが200±20μmになるように塗装した。
【0028】
(遮熱性試験)
上記の方法で作製した試験板を常温で3日間乾燥後、20cmの距離から250Wの赤外線電球(東芝ライテック(株)製、型番 IR110V250WRH)を照射して、塗膜表面温度の上昇を試験した。結果を表2に示す。
【0029】
(促進耐候性試験)
上記の方法で作製した試験板を常温で3日間乾燥後、(スガ試験機株式会社製、型番 WEL−SUN−HCH−BEN型)を用いて試験室温度 63±3℃、水量 2100±100ml/分、噴射時間 120分照射中に18分、放電電圧 50±2V、放電電流 60±2Aの条件にて促進耐候性試験を行った。結果を表2に示す。
【0030】
(耐水性試験板の作製)
厚さ1.7mmのガラス板にすきまが400μmのフィルムアプリケーターを用いて乾燥後の塗膜厚みが200±20μmになるように塗装し、常温で1日間乾燥後、25℃の水に浸漬させて浸漬時間と塗膜表面の変化を経察し、耐水性を評価した。結果を表3に示す。
【0031】
(塗膜の遮熱性試験及び耐水性試験結果)
【0032】
【表2】

【0033】
【表3】

【0034】
耐水性試験の評価判定(目視)
4:塗膜に変化無し
3:塗膜の若干剥がれ有り
2:塗膜剥がれ有り
1:塗膜が完全に剥がれて残っていない
【0035】
表2、3の低熱伝導体、構造助剤、シランカップリング剤をそれぞれ単独で使用している系(比較例1、2及び3)の場合には、遮熱性試験結果より塗膜表面温度が著しく上昇し、塗膜の耐水性試験においても塗膜変化による剥離が有り劣ることが分かる。また、表面に何も塗装していない(比較例4)鉄板は最も表面温度が上昇している。それに対し、低熱伝導体、構造助剤、シランカップリング剤を併用した系(実施例1〜5)は遮熱試験において塗膜表面温度の著しい上昇もなく、耐水性試験においても塗膜の変化による剥離もなかった。このように低熱伝導体、構造助剤、シランカップリング剤を併用して用いた遮熱塗料は遮熱性能に優れ、耐水性も良好であることを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空球状又は鱗片状の低熱伝導体、構造助剤及びシランカップリング剤を含有することを特徴とする遮熱塗料組成物。
【請求項2】
中空球状の低熱伝導体が中空粒子あるいは真空粒子であることを特徴とする請求項1記載の遮熱塗料組成物。
【請求項3】
低熱伝導体を0.5〜9.9重量%含有し、低熱伝導体が透明もしくは半透明であって、粒子径が10〜200μmであることを特徴とする請求項1記載の遮熱塗料組成物。
【請求項4】
構造助剤を0.1〜10.0重量%含有し、構造助剤がシリカを主成分とするシリカ粉であることを特徴とする請求項1記載の遮熱塗料組成物。
【請求項5】
シランカップリング剤を0.01〜4.0重量%含有することを特徴とする請求項1記載の遮熱塗料組成物。
【請求項6】
ビヒクル、顔料、中空球状又は燐片状の低熱伝導体、構造助剤及びシランカップリング剤を含有することを特徴とする請求項1記載の遮熱塗料組成物。
【請求項7】
構築物表面の少なくとも一部に、請求項1〜6いずれかに記載の遮熱塗料組成物を塗布、乾燥して形成される塗膜を形成したことを特徴とする塗装構築物。
【請求項8】
構築物が建築構造物であり、建築構造物の屋根、建築構造物の屋上及び建築構造物の外壁の少なくとも1つの少なくとも一部に該塗膜を形成したことを特徴とする請求項7記載の塗装構築物。

【公開番号】特開2006−45447(P2006−45447A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−231972(P2004−231972)
【出願日】平成16年8月9日(2004.8.9)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【出願人】(594179797)日立化成工材株式会社 (12)
【Fターム(参考)】