遮熱材
【課題】垂木間への設置が野地板側と室内側の両側から行えるとともに施工性が向上され、起立部を垂木の側面へ確実に連結でき、遮熱効率が高められる遮熱材を提供する。
【解決手段】並行して延びる垂木間に配設される遮熱材1であって、対向する前記垂木の側面同士を連結させるように板状に形成された本体部6と、前記本体部6の前記垂木の側面側の端部に立設されて、連結手段により該垂木の側面に連結される起立部8と、前記本体部6と前記起立部8との境界に沿うように延びる第1スリット9と、前記第1スリット9から前記本体部6側へ向けて延びるとともに、互いに対向する一対の第2スリット10、10と、を備え、前記第1スリット9及び一対の前記第2スリット10、10に囲まれるように形成された弾性変形可能な舌片11が、前記本体部6の孔部12を開閉可能に閉塞することを特徴とする。
【解決手段】並行して延びる垂木間に配設される遮熱材1であって、対向する前記垂木の側面同士を連結させるように板状に形成された本体部6と、前記本体部6の前記垂木の側面側の端部に立設されて、連結手段により該垂木の側面に連結される起立部8と、前記本体部6と前記起立部8との境界に沿うように延びる第1スリット9と、前記第1スリット9から前記本体部6側へ向けて延びるとともに、互いに対向する一対の第2スリット10、10と、を備え、前記第1スリット9及び一対の前記第2スリット10、10に囲まれるように形成された弾性変形可能な舌片11が、前記本体部6の孔部12を開閉可能に閉塞することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野地板の室内側の面に設置された垂木同士の間に配設されて、屋根からの輻射熱を反射する遮熱材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の遮熱材として、例えば、下記特許文献1〜4に記載されたものが知られている。
特許文献1の通気層確保部材(遮熱材)は、野地板の室内側の面に設置されて並行に延びる垂木同士の間に、該野地板の室内側の面から室内側に離間して配設された板状部材(本体部)と、板状部材における垂木側の端部から野地板側へ向けて立ち上げられるとともに、その頂部から室内側へ向けて折り返された山状凸部(起立部)と、を備えている。
【0003】
山状凸部の頂部は、野地板の室内側の面に当接しており、これにより該野地板の室内側の面と板状部材との間に間隔が設けられて、通気層とされている。通気層が設けられることにより、屋根からの輻射熱が遮熱材に効率よく遮られて、室内空間に伝わりにくくなっている。また、山状凸部において頂部から折り返された折り返し部分が、垂木の側面に当接されている。
この種の遮熱材を垂木間に安定して装着するには、例えばタッカーの芯や釘等の連結手段を用いて、起立部を該垂木の側面に連結する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3400766号公報
【特許文献2】特開2007−138409号公報
【特許文献3】特開2000−213077号公報
【特許文献4】実用新案登録第3137988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来の遮熱材においては、下記の課題が生じていた。
すなわち、特許文献1の山状凸部のように、起立部が本体部の端部において野地板側から室内側へ反転して折り返された構造(二度折り)の場合、前記連結手段を用いて起立部を垂木の側面に連結するには、前記折り返し部分を室内側から留める必要があった。すなわち、遮熱材を垂木間に設置する施工は、室内側からのみ行え、野地板側(屋根側)からは行えなかった。
【0006】
また、使用される垂木の種類により、対向する垂木の側面同士の距離が、遮熱材の垂木間方向に沿う外形寸法(幅寸法)よりも大きく設定される場合がある。この場合、起立部が垂木の側面から離間して配置されることとなり、該起立部を垂木の側面に連結することが困難であった。
また、この種の遮熱材においては、前記通気層と室内空間とを確実に区画して、遮熱効率を高めることへの要求がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、垂木間への設置が野地板側と室内側の両側から行えるとともに施工性が向上され、起立部を垂木の側面へ確実に連結でき、遮熱効率が高められる遮熱材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
すなわち本発明は、並行して延びる垂木間に配設される遮熱材であって、対向する前記垂木の側面同士を連結させるように板状に形成された本体部と、前記本体部の前記垂木の側面側の端部に立設されて、連結手段により該垂木の側面に連結される起立部と、前記本体部と前記起立部との境界に沿うように延びる第1スリットと、前記第1スリットから前記本体部側へ向けて延びるとともに、互いに対向する一対の第2スリットと、を備え、前記第1スリット及び一対の前記第2スリットに囲まれるように形成された弾性変形可能な舌片が、前記本体部の孔部を開閉可能に閉塞することを特徴とする。
【0009】
この発明に係る遮熱材は、野地板の室内側の面に設置された垂木同士の間に配設されて、屋根からの輻射熱を反射させるものである。起立部は、本体部の垂木の側面側の端部に立設されているとともに、その先端が野地板の室内側の面に当接される。これにより、野地板の室内側の面と本体部との間に通気層が形成されて、遮熱効率が高められている。
【0010】
また、この遮熱材においては、起立部は本体部から立ち上げられているのみ(一度折り)であることから、従来における起立部の折り返し構造(二度折り)のような手間がかからず、施工時の作業効率が向上する。
【0011】
ここで、例えば、使用される垂木の種類により、対向する垂木の側面同士の距離が、遮熱材の垂木間方向に沿う外形寸法(幅寸法)よりも大きく設定される場合がある。このような場合には、遮熱材の起立部と垂木の側面との間に隙間が形成されることとなり、従来では起立部を垂木の側面に連結することが難しかったが、本発明によれば、起立部を垂木の側面に確実に連結できる。
【0012】
すなわち、本発明の遮熱材では、本体部と起立部との境界に沿うように延びて第1スリットが形成されているので、起立部は、垂木の側面側へ向けて撓むことができる。詳しくは、起立部に対して本体部から垂木の側面側へ向けて外力を加えることにより、第1スリットの溝幅が広げられつつ、起立部は本体部から離間するように撓まされて、垂木の側面に当設される。これにより、例えばタッカーの芯や釘等の連結手段を用いて、起立部を垂木の側面に確実に連結することができる。
【0013】
また、第1スリットから本体部側へ向けて延びるとともに、互いに対向する一対の第2スリットが形成されている。すなわち、第2スリットは本体部上に形成されており、これら第2スリット及び第1スリットに囲まれるように、弾性変形可能な舌片が形成されている。詳しくは、舌片の周囲のうち三方が第1、第2スリットで囲まれることにより、該舌片は本体部に連結される部位を支点に回動可能とされている。また、舌片が回動して本体部に開口される部位が孔部とされており、舌片は、この孔部を開閉可能に閉塞している。このような構成により、下記の効果が得られる。
【0014】
すなわち、遮熱材を垂木間に設置する施工が、野地板側(屋根側)と室内側の両側から行える。詳しくは、野地板側から起立部を垂木の側面に連結する際は、該起立部が野地板側の前記通気層に露出しているので、タッカー等の工具先端を起立部に押し当て、そのまま垂木の側面に留めることができる。また、室内側から起立部を垂木の側面に連結する際は、舌片を野地板側へ押し上げて回動させるとともに孔部を開口させ、この孔部を通してタッカー等の工具先端を起立部に押し当て、垂木の側面に留めることができる。
このように、遮熱材を垂木間に設置する作業が、野地板側と室内側の両側から行えるので、建物(家屋)の建築時・リフォーム時に係わらず、施工性が確保される。
【0015】
また、室内側から起立部を垂木の側面に連結した場合、孔部は、作業後に該孔部からタッカー等の工具先端を引き抜く際、舌片が弾性復元力で復元変形することにより自動的に閉塞されるようになっている。すなわち、起立部を垂木の側面に連結した後、特別な作業を必要とすることなく前記通気層と室内空間とを本体部が確実に区画して、該通気層の遮熱効率が高められている。
【0016】
また、本発明に係る遮熱材において、前記第1スリットは、前記第2スリットよりも前記舌片とは反対側へ向けて切り込まれていることとしてもよい。
【0017】
この場合、孔部を小さく形成しつつも、起立部は垂木の側面に向けて十分に撓むことができる。すなわち、孔部は施工時にのみ開閉されるものであることから、施工後は舌片に安定して閉塞されることが好ましい。孔部及び舌片を小さく形成することにより該舌片の自重が低減し、経時変化などにより舌片が回動して孔部が開口されるようなことが抑制される。またこのような効果を奏しつつも、起立部は十分に撓み変形可能とされているので、該起立部が垂木の側面に確実に当接されるとともに連結され、遮熱材は垂木間に安定して設置される。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る遮熱材によれば、垂木間への設置が野地板側と室内側の両側から行えるとともに施工性が向上され、起立部を垂木の側面へ確実に連結でき、遮熱効率が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る遮熱材の設置状態を説明する側断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る遮熱材を野地板側(屋根側)から垂木間に設置する状態を説明する斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る遮熱材を室内側(小屋裏側)から垂木間に設置する状態を説明する斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る遮熱材となる遮熱基材を示す平面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る遮熱材を垂木間に配設した状態を示す正面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る遮熱材の内部構造を説明する正断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る遮熱材となる遮熱基材の要部を示す平面図である。
【図8】図7の遮熱基材の要部を示す側断面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る遮熱材を垂木間に設置する方法を説明する要部側断面図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る遮熱材を垂木間に設置する方法を説明する要部側断面図であり、図5のZ部を拡大して示す図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る遮熱材を垂木間に設置する方法を説明する要部平面図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る遮熱材となる遮熱基材の要部の変形例を示す平面図である。
【図13】本発明の一実施形態に係る遮熱材となる遮熱基材の要部の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1〜図3に示すように、本実施形態に係る遮熱材1は、野地板2の室内3側の面に設置された垂木4同士の間に配設されて、屋根5からの輻射熱を反射させるものである。垂木4は、野地板2の室内3側の面に複数配設されているとともに、互いに並行して延びている。尚、図2は遮熱材1を野地板2側(屋根5側)から垂木4、4間に設置する状態を説明する図であり、図3は遮熱材1を室内3側(小屋裏側)から垂木4、4間に設置する状態を説明する図である。
【0021】
遮熱材1は、対向する垂木4の側面4a同士を連結させるように板状に形成された本体部6と、本体部6の垂木4の側面4a側の端部に立設されて、例えばタッカーの芯や釘等の連結手段7(図11参照)により該垂木4の側面4aに連結される起立部8と、を備えている。図示の例では、本体部6は矩形板状に形成され、起立部8は帯板状に形成されている。
【0022】
また、起立部8は、本体部6から野地板2側へ向けて立ち上げられており、該起立部8における野地板2側の先端は、野地板2の室内3側を向く面に当接されている(図10参照)。図2、図3において、起立部8は、本体部6の幅方向の両端部に一対設けられているとともに、該本体部6の長手方向に沿って延びており、該本体部6の面方向に対して垂直に立ち上げられている。
【0023】
この遮熱材1は、図4に示される矩形板状の遮熱基材Aの幅方向の両端部を立ち上げることにより、前述の形状とされている。すなわち、遮熱基材Aにおける幅方向の両端部がそれぞれ起立部8とされ、これら起立部8、8同士に挟まれた領域が本体部6とされている。また、図5に示すように、遮熱材1を垂木4、4間に設置する際は、本体部6に対して垂直に立ち上げられた起立部8の前記幅方向の外側を向く面が、垂木4の側面4aに当接される。
【0024】
図4において、遮熱材1(遮熱基材A)には、本体部6と起立部8との境界に沿うように延びる第1スリット9と、第1スリット9から本体部6側へ向けて延びるとともに、互いに対向する一対の第2スリット10、10とが形成されている。これら第1、第2スリット9、10は、遮熱材1を厚さ方向に貫通して形成されている。本実施形態の第1、第2スリット9、10は、例えばプレス型等を用いて切れ目を入れることにより形成されている。
【0025】
図4に示す例では、第2スリット10、10同士は、第1スリット9から本体部6側へ向かうに従い漸次互いの間隔を狭めるように傾斜して形成されている。また、第1スリット9は、本体部6の幅方向の両端にそれぞれ複数形成されている。また、各第1スリット9に対して、一対の第2スリット10、10がそれぞれ形成されている。
【0026】
尚、図7に示すように、第2スリット10、10同士は、第1スリット9から本体部6側へ向かって互いに平行に延びて形成されていてもよい。或いは、第2スリット10、10同士は、第1スリット9から本体部6側へ向かうに従い漸次互いの間隔を広げるように傾斜して形成されていてもよい。
【0027】
そして、この遮熱材1は、第1スリット9及び一対の第2スリット10、10に囲まれるように形成された弾性変形可能な舌片11が、本体部6の孔部12を開閉可能に閉塞する構成とされている。図4、図7において、舌片11は略矩形状をなしており、この舌片11に閉塞される孔部12は該舌片11と同一形状の略矩形穴状とされている。
【0028】
詳しくは、舌片11は、第2スリット10、10の第1スリット9とは反対側の端部同士をつなぐように延びるヒンジ部13を支点に回動可能とされており、この回動により、孔部12を開口させる(図7、図8参照)。
【0029】
図8に示す例では、本体部6と起立部8との境界に沿って凹溝状の折り溝14が形成されている。このような折り溝14を形成することによって、遮熱基材Aの起立部8を本体部6に対して容易に立ち上げることができる。尚、前記ヒンジ部13上に凹溝状の折り溝を形成してもよく、この場合、舌片11はヒンジ部13を支点に容易に回動できる。
【0030】
また、図4、図7において、第1スリット9は、第2スリット10よりも舌片11とは反対側へ向けて切り込まれている。図示の例では、第1スリット9は、一対の第2スリット10、10に対して、舌片11とは反対側へ向けてそれぞれ切り込まれている。
【0031】
また、図6に示すように、遮熱材1は、例えばPP等の樹脂材料からなる多孔板状の基体15と、基体15の表面に形成された金属蒸着層16と、金属蒸着層16の表面に形成された保護コーティング層17と、を備えている。
【0032】
基体15は、押し出し成形等により作製されており、該基体15には、断面矩形の複数の孔15aが形成されている。これら孔15aは、遮熱材1(遮熱基材A)の長手方向に沿って互いに並行して延びている。
【0033】
また、金属蒸着層16は、例えばアルミニウムからなり、この金属蒸着層16上に保護コーティング層17が設けられて一体とされた遮熱フィルムが、基体15上に張り合わせられることにより、遮熱材1が作製されている。
そして、遮熱材1を垂木4、4間に設置する際は、遮熱フィルム側が野地板2側を向くように配設することで、遮熱効率が高められている。
【0034】
以上説明したように、本実施形態に係る遮熱材1は、野地板2の室内3側の面に設置された垂木4、4同士の間に配設されて、屋根5からの輻射熱を反射させる。起立部8は、本体部6の垂木4の側面4a側の端部に立設されているとともに、その先端が野地板2の室内3側の面に当接される。これにより、野地板2の室内3側の面と本体部6との間に通気層21が形成されて、遮熱効率が高められている。
【0035】
また、この遮熱材1においては、起立部8は本体部6から立ち上げられているのみ(一度折り)であることから、従来における起立部の折り返し構造(二度折り)のような手間がかからず、施工時の作業効率が向上する。
【0036】
ここで、図2に示すように、例えば、使用される垂木4の種類により、対向する垂木4の側面4a同士の距離W2が、遮熱材1の垂木4、4間方向に沿う外形寸法(幅寸法)W1よりも大きく設定される場合がある。具体的には、前記距離W2が、前記外形寸法W1よりも8mm程度大きく設定されることがある。このような場合には、遮熱材1の起立部8と垂木4の側面4aとの間に隙間が形成されることとなり、従来では起立部8を垂木4の側面4aに連結することが難しかったが、本実施形態によれば、起立部8を垂木4の側面4aに確実に連結できる。
【0037】
すなわち、本実施形態の遮熱材1では、本体部6と起立部8との境界に沿うように延びて第1スリット9が形成されているので、起立部8は、垂木4の側面4a側へ向けて撓むことができる。詳しくは、図11に示すように、起立部8に対して本体部6から垂木4の側面4a側へ向けて外力を加えることにより、第1スリット9の溝幅が広げられつつ、起立部8は本体部6から離間するように撓まされて、垂木4の側面4aに当設される。これにより、例えばタッカーの芯や釘等の連結手段7を用いて、起立部8を垂木4の側面4aに確実に連結することができる。
【0038】
また、第1スリット9から本体部6側へ向けて延びるとともに、互いに対向する一対の第2スリット10、10が形成されている。すなわち、第2スリット10は本体部6上に形成されており、これら第2スリット10、10及び第1スリット9に囲まれるように、弾性変形可能な舌片11が形成されている。詳しくは、舌片11の周囲のうち三方が第1スリット9及び第2スリット10、10で囲まれることにより、該舌片11は本体部6に連結される部位(ヒンジ部13)を支点に回動可能とされている。また、舌片11が回動して本体部6に開口される部位が孔部12とされており、舌片11は、この孔部12を開閉可能に閉塞している。このような構成により、下記の効果が得られる。
【0039】
すなわち、遮熱材1を垂木4、4間に設置する施工が、野地板2側(屋根5側)と室内3側の両側から行える。詳しくは、図2に示すように、野地板2側から起立部8を垂木4の側面4aに連結する際は、該起立部8が野地板2側の前記通気層21に露出しているので、タッカー等の工具先端を起立部8に押し当て、そのまま垂木4の側面4aに留めることができる。また、図3に示すように、室内3側から起立部8を垂木4の側面4aに連結する際は、図9に示すように、舌片11を野地板2側へ押し上げてヒンジ部13を支点に回動させるとともに孔部12を開口させ、この孔部12を通してタッカー等の工具18先端を起立部8に押し当て、垂木4の側面4aに留めることができる。
このように、遮熱材1を垂木4、4間に設置する作業が、野地板2側と室内3側の両側から行えるので、建物(家屋)の建築時・リフォーム時に係わらず、施工性が確保される。
【0040】
また、室内3側から起立部8を垂木4の側面4aに連結した場合、図10に示すように、孔部12は、作業後に該孔部12からタッカー等の工具18先端を引き抜く際、舌片11が弾性復元力で復元変形することにより自動的に閉塞されるようになっている。すなわち、起立部8を垂木4の側面4aに連結した後、特別な作業を必要とすることなく前記通気層21と室内3空間とを本体部6が確実に区画して、該通気層21の遮熱効率が高められている。
【0041】
また、第1スリット9は、第2スリット10よりも舌片11とは反対側へ向けて切り込まれている。この場合、孔部12を小さく形成しつつも、起立部8は垂木4の側面4aに向けて十分に撓むことができる。すなわち、孔部12は施工時にのみ開閉されるものであることから、施工後は舌片11に安定して閉塞されることが好ましい。孔部12及び舌片11を小さく形成することにより該舌片11の自重が低減し、経時変化などにより舌片11が回動して孔部12が開口されるようなことが抑制される。またこのような効果を奏しつつも、起立部8は十分に撓み変形可能とされているので、該起立部8が垂木4の側面4aに確実に当接されるとともに連結され、遮熱材1は垂木4、4間に安定して設置される。
【0042】
また、図6において、遮熱材1の基体15には、該遮熱材1の長手方向に沿って延びる孔15aが複数形成されている。孔15aがこのように形成されることにより、隣り合う孔15a、15a同士の間に形成された壁部15bが長手方向に延在することとなり、遮熱材1の剛性が確保される。また、遮熱材1が複数の孔15aを有する中空構造とされているとともに、これら孔15aが長手方向に延びていることから、該遮熱材1の幅寸法W1を垂木4の側面4a同士の距離W2に対応して容易に調整でき、施工性が向上する。
【0043】
尚、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0044】
例えば、前述の実施形態では、第1スリット9及び第2スリット10は、切れ目を入れることにより形成されているとしたが、これに限定されるものではない。
図12は、本実施形態の変形例を示している。図示の例では、第1スリット19及び第2スリット20は、打ち抜き型等により打ち抜かれて形成されており、視認できる程度の溝幅を有している。この場合、施工時において舌片11及び孔部12の位置を認識しやすい。ただし、前述した実施形態のように、第1スリット9及び第2スリット10が切れ目で形成された場合には、製造時に端材(打ち抜き片)が出ず、かつ、設置後の遮熱効率が高められることからより好ましい。
【0045】
また、前述の実施形態では、第1スリット9は、一対の第2スリット10、10に対して、舌片11とは反対側へ向けてそれぞれ切り込まれているとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、第1スリット9は、一対の第2スリット10、10のうち、一方の第2スリット10に対してのみ舌片11とは反対側へ向けて切り込まれていることとしてもよい。
【0046】
また、図13に示すように、第2スリット10が、第1スリット9の端部から本体部6側へ向けて延びていても構わない。
【0047】
また、本体部6には、該本体部6の厚さ方向に貫通して微細な貫通孔(不図示)が複数穿孔されており、室内3側(小屋裏側)の湿気がこれら貫通孔を通過するとともに野地板2側(屋根5側)へ排出されるように構成してもよい。この場合、室内3側から本体部6の前記貫通孔を通して野地板2と本体部6との間の通気層21に流入した湿気は、該通気層21を通じて棟(建物)から排出される。よって、前述した遮熱効率が高められつつも室内3の湿気が排出されて、より快適な室内3空間とすることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 遮熱材
4 垂木
4a 側面
6 本体部
7 連結手段
8 起立部
9、19 第1スリット
10、20 第2スリット
11 舌片
12 孔部
【技術分野】
【0001】
本発明は、野地板の室内側の面に設置された垂木同士の間に配設されて、屋根からの輻射熱を反射する遮熱材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の遮熱材として、例えば、下記特許文献1〜4に記載されたものが知られている。
特許文献1の通気層確保部材(遮熱材)は、野地板の室内側の面に設置されて並行に延びる垂木同士の間に、該野地板の室内側の面から室内側に離間して配設された板状部材(本体部)と、板状部材における垂木側の端部から野地板側へ向けて立ち上げられるとともに、その頂部から室内側へ向けて折り返された山状凸部(起立部)と、を備えている。
【0003】
山状凸部の頂部は、野地板の室内側の面に当接しており、これにより該野地板の室内側の面と板状部材との間に間隔が設けられて、通気層とされている。通気層が設けられることにより、屋根からの輻射熱が遮熱材に効率よく遮られて、室内空間に伝わりにくくなっている。また、山状凸部において頂部から折り返された折り返し部分が、垂木の側面に当接されている。
この種の遮熱材を垂木間に安定して装着するには、例えばタッカーの芯や釘等の連結手段を用いて、起立部を該垂木の側面に連結する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3400766号公報
【特許文献2】特開2007−138409号公報
【特許文献3】特開2000−213077号公報
【特許文献4】実用新案登録第3137988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来の遮熱材においては、下記の課題が生じていた。
すなわち、特許文献1の山状凸部のように、起立部が本体部の端部において野地板側から室内側へ反転して折り返された構造(二度折り)の場合、前記連結手段を用いて起立部を垂木の側面に連結するには、前記折り返し部分を室内側から留める必要があった。すなわち、遮熱材を垂木間に設置する施工は、室内側からのみ行え、野地板側(屋根側)からは行えなかった。
【0006】
また、使用される垂木の種類により、対向する垂木の側面同士の距離が、遮熱材の垂木間方向に沿う外形寸法(幅寸法)よりも大きく設定される場合がある。この場合、起立部が垂木の側面から離間して配置されることとなり、該起立部を垂木の側面に連結することが困難であった。
また、この種の遮熱材においては、前記通気層と室内空間とを確実に区画して、遮熱効率を高めることへの要求がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、垂木間への設置が野地板側と室内側の両側から行えるとともに施工性が向上され、起立部を垂木の側面へ確実に連結でき、遮熱効率が高められる遮熱材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
すなわち本発明は、並行して延びる垂木間に配設される遮熱材であって、対向する前記垂木の側面同士を連結させるように板状に形成された本体部と、前記本体部の前記垂木の側面側の端部に立設されて、連結手段により該垂木の側面に連結される起立部と、前記本体部と前記起立部との境界に沿うように延びる第1スリットと、前記第1スリットから前記本体部側へ向けて延びるとともに、互いに対向する一対の第2スリットと、を備え、前記第1スリット及び一対の前記第2スリットに囲まれるように形成された弾性変形可能な舌片が、前記本体部の孔部を開閉可能に閉塞することを特徴とする。
【0009】
この発明に係る遮熱材は、野地板の室内側の面に設置された垂木同士の間に配設されて、屋根からの輻射熱を反射させるものである。起立部は、本体部の垂木の側面側の端部に立設されているとともに、その先端が野地板の室内側の面に当接される。これにより、野地板の室内側の面と本体部との間に通気層が形成されて、遮熱効率が高められている。
【0010】
また、この遮熱材においては、起立部は本体部から立ち上げられているのみ(一度折り)であることから、従来における起立部の折り返し構造(二度折り)のような手間がかからず、施工時の作業効率が向上する。
【0011】
ここで、例えば、使用される垂木の種類により、対向する垂木の側面同士の距離が、遮熱材の垂木間方向に沿う外形寸法(幅寸法)よりも大きく設定される場合がある。このような場合には、遮熱材の起立部と垂木の側面との間に隙間が形成されることとなり、従来では起立部を垂木の側面に連結することが難しかったが、本発明によれば、起立部を垂木の側面に確実に連結できる。
【0012】
すなわち、本発明の遮熱材では、本体部と起立部との境界に沿うように延びて第1スリットが形成されているので、起立部は、垂木の側面側へ向けて撓むことができる。詳しくは、起立部に対して本体部から垂木の側面側へ向けて外力を加えることにより、第1スリットの溝幅が広げられつつ、起立部は本体部から離間するように撓まされて、垂木の側面に当設される。これにより、例えばタッカーの芯や釘等の連結手段を用いて、起立部を垂木の側面に確実に連結することができる。
【0013】
また、第1スリットから本体部側へ向けて延びるとともに、互いに対向する一対の第2スリットが形成されている。すなわち、第2スリットは本体部上に形成されており、これら第2スリット及び第1スリットに囲まれるように、弾性変形可能な舌片が形成されている。詳しくは、舌片の周囲のうち三方が第1、第2スリットで囲まれることにより、該舌片は本体部に連結される部位を支点に回動可能とされている。また、舌片が回動して本体部に開口される部位が孔部とされており、舌片は、この孔部を開閉可能に閉塞している。このような構成により、下記の効果が得られる。
【0014】
すなわち、遮熱材を垂木間に設置する施工が、野地板側(屋根側)と室内側の両側から行える。詳しくは、野地板側から起立部を垂木の側面に連結する際は、該起立部が野地板側の前記通気層に露出しているので、タッカー等の工具先端を起立部に押し当て、そのまま垂木の側面に留めることができる。また、室内側から起立部を垂木の側面に連結する際は、舌片を野地板側へ押し上げて回動させるとともに孔部を開口させ、この孔部を通してタッカー等の工具先端を起立部に押し当て、垂木の側面に留めることができる。
このように、遮熱材を垂木間に設置する作業が、野地板側と室内側の両側から行えるので、建物(家屋)の建築時・リフォーム時に係わらず、施工性が確保される。
【0015】
また、室内側から起立部を垂木の側面に連結した場合、孔部は、作業後に該孔部からタッカー等の工具先端を引き抜く際、舌片が弾性復元力で復元変形することにより自動的に閉塞されるようになっている。すなわち、起立部を垂木の側面に連結した後、特別な作業を必要とすることなく前記通気層と室内空間とを本体部が確実に区画して、該通気層の遮熱効率が高められている。
【0016】
また、本発明に係る遮熱材において、前記第1スリットは、前記第2スリットよりも前記舌片とは反対側へ向けて切り込まれていることとしてもよい。
【0017】
この場合、孔部を小さく形成しつつも、起立部は垂木の側面に向けて十分に撓むことができる。すなわち、孔部は施工時にのみ開閉されるものであることから、施工後は舌片に安定して閉塞されることが好ましい。孔部及び舌片を小さく形成することにより該舌片の自重が低減し、経時変化などにより舌片が回動して孔部が開口されるようなことが抑制される。またこのような効果を奏しつつも、起立部は十分に撓み変形可能とされているので、該起立部が垂木の側面に確実に当接されるとともに連結され、遮熱材は垂木間に安定して設置される。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る遮熱材によれば、垂木間への設置が野地板側と室内側の両側から行えるとともに施工性が向上され、起立部を垂木の側面へ確実に連結でき、遮熱効率が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る遮熱材の設置状態を説明する側断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る遮熱材を野地板側(屋根側)から垂木間に設置する状態を説明する斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る遮熱材を室内側(小屋裏側)から垂木間に設置する状態を説明する斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る遮熱材となる遮熱基材を示す平面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る遮熱材を垂木間に配設した状態を示す正面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る遮熱材の内部構造を説明する正断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る遮熱材となる遮熱基材の要部を示す平面図である。
【図8】図7の遮熱基材の要部を示す側断面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る遮熱材を垂木間に設置する方法を説明する要部側断面図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る遮熱材を垂木間に設置する方法を説明する要部側断面図であり、図5のZ部を拡大して示す図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る遮熱材を垂木間に設置する方法を説明する要部平面図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る遮熱材となる遮熱基材の要部の変形例を示す平面図である。
【図13】本発明の一実施形態に係る遮熱材となる遮熱基材の要部の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1〜図3に示すように、本実施形態に係る遮熱材1は、野地板2の室内3側の面に設置された垂木4同士の間に配設されて、屋根5からの輻射熱を反射させるものである。垂木4は、野地板2の室内3側の面に複数配設されているとともに、互いに並行して延びている。尚、図2は遮熱材1を野地板2側(屋根5側)から垂木4、4間に設置する状態を説明する図であり、図3は遮熱材1を室内3側(小屋裏側)から垂木4、4間に設置する状態を説明する図である。
【0021】
遮熱材1は、対向する垂木4の側面4a同士を連結させるように板状に形成された本体部6と、本体部6の垂木4の側面4a側の端部に立設されて、例えばタッカーの芯や釘等の連結手段7(図11参照)により該垂木4の側面4aに連結される起立部8と、を備えている。図示の例では、本体部6は矩形板状に形成され、起立部8は帯板状に形成されている。
【0022】
また、起立部8は、本体部6から野地板2側へ向けて立ち上げられており、該起立部8における野地板2側の先端は、野地板2の室内3側を向く面に当接されている(図10参照)。図2、図3において、起立部8は、本体部6の幅方向の両端部に一対設けられているとともに、該本体部6の長手方向に沿って延びており、該本体部6の面方向に対して垂直に立ち上げられている。
【0023】
この遮熱材1は、図4に示される矩形板状の遮熱基材Aの幅方向の両端部を立ち上げることにより、前述の形状とされている。すなわち、遮熱基材Aにおける幅方向の両端部がそれぞれ起立部8とされ、これら起立部8、8同士に挟まれた領域が本体部6とされている。また、図5に示すように、遮熱材1を垂木4、4間に設置する際は、本体部6に対して垂直に立ち上げられた起立部8の前記幅方向の外側を向く面が、垂木4の側面4aに当接される。
【0024】
図4において、遮熱材1(遮熱基材A)には、本体部6と起立部8との境界に沿うように延びる第1スリット9と、第1スリット9から本体部6側へ向けて延びるとともに、互いに対向する一対の第2スリット10、10とが形成されている。これら第1、第2スリット9、10は、遮熱材1を厚さ方向に貫通して形成されている。本実施形態の第1、第2スリット9、10は、例えばプレス型等を用いて切れ目を入れることにより形成されている。
【0025】
図4に示す例では、第2スリット10、10同士は、第1スリット9から本体部6側へ向かうに従い漸次互いの間隔を狭めるように傾斜して形成されている。また、第1スリット9は、本体部6の幅方向の両端にそれぞれ複数形成されている。また、各第1スリット9に対して、一対の第2スリット10、10がそれぞれ形成されている。
【0026】
尚、図7に示すように、第2スリット10、10同士は、第1スリット9から本体部6側へ向かって互いに平行に延びて形成されていてもよい。或いは、第2スリット10、10同士は、第1スリット9から本体部6側へ向かうに従い漸次互いの間隔を広げるように傾斜して形成されていてもよい。
【0027】
そして、この遮熱材1は、第1スリット9及び一対の第2スリット10、10に囲まれるように形成された弾性変形可能な舌片11が、本体部6の孔部12を開閉可能に閉塞する構成とされている。図4、図7において、舌片11は略矩形状をなしており、この舌片11に閉塞される孔部12は該舌片11と同一形状の略矩形穴状とされている。
【0028】
詳しくは、舌片11は、第2スリット10、10の第1スリット9とは反対側の端部同士をつなぐように延びるヒンジ部13を支点に回動可能とされており、この回動により、孔部12を開口させる(図7、図8参照)。
【0029】
図8に示す例では、本体部6と起立部8との境界に沿って凹溝状の折り溝14が形成されている。このような折り溝14を形成することによって、遮熱基材Aの起立部8を本体部6に対して容易に立ち上げることができる。尚、前記ヒンジ部13上に凹溝状の折り溝を形成してもよく、この場合、舌片11はヒンジ部13を支点に容易に回動できる。
【0030】
また、図4、図7において、第1スリット9は、第2スリット10よりも舌片11とは反対側へ向けて切り込まれている。図示の例では、第1スリット9は、一対の第2スリット10、10に対して、舌片11とは反対側へ向けてそれぞれ切り込まれている。
【0031】
また、図6に示すように、遮熱材1は、例えばPP等の樹脂材料からなる多孔板状の基体15と、基体15の表面に形成された金属蒸着層16と、金属蒸着層16の表面に形成された保護コーティング層17と、を備えている。
【0032】
基体15は、押し出し成形等により作製されており、該基体15には、断面矩形の複数の孔15aが形成されている。これら孔15aは、遮熱材1(遮熱基材A)の長手方向に沿って互いに並行して延びている。
【0033】
また、金属蒸着層16は、例えばアルミニウムからなり、この金属蒸着層16上に保護コーティング層17が設けられて一体とされた遮熱フィルムが、基体15上に張り合わせられることにより、遮熱材1が作製されている。
そして、遮熱材1を垂木4、4間に設置する際は、遮熱フィルム側が野地板2側を向くように配設することで、遮熱効率が高められている。
【0034】
以上説明したように、本実施形態に係る遮熱材1は、野地板2の室内3側の面に設置された垂木4、4同士の間に配設されて、屋根5からの輻射熱を反射させる。起立部8は、本体部6の垂木4の側面4a側の端部に立設されているとともに、その先端が野地板2の室内3側の面に当接される。これにより、野地板2の室内3側の面と本体部6との間に通気層21が形成されて、遮熱効率が高められている。
【0035】
また、この遮熱材1においては、起立部8は本体部6から立ち上げられているのみ(一度折り)であることから、従来における起立部の折り返し構造(二度折り)のような手間がかからず、施工時の作業効率が向上する。
【0036】
ここで、図2に示すように、例えば、使用される垂木4の種類により、対向する垂木4の側面4a同士の距離W2が、遮熱材1の垂木4、4間方向に沿う外形寸法(幅寸法)W1よりも大きく設定される場合がある。具体的には、前記距離W2が、前記外形寸法W1よりも8mm程度大きく設定されることがある。このような場合には、遮熱材1の起立部8と垂木4の側面4aとの間に隙間が形成されることとなり、従来では起立部8を垂木4の側面4aに連結することが難しかったが、本実施形態によれば、起立部8を垂木4の側面4aに確実に連結できる。
【0037】
すなわち、本実施形態の遮熱材1では、本体部6と起立部8との境界に沿うように延びて第1スリット9が形成されているので、起立部8は、垂木4の側面4a側へ向けて撓むことができる。詳しくは、図11に示すように、起立部8に対して本体部6から垂木4の側面4a側へ向けて外力を加えることにより、第1スリット9の溝幅が広げられつつ、起立部8は本体部6から離間するように撓まされて、垂木4の側面4aに当設される。これにより、例えばタッカーの芯や釘等の連結手段7を用いて、起立部8を垂木4の側面4aに確実に連結することができる。
【0038】
また、第1スリット9から本体部6側へ向けて延びるとともに、互いに対向する一対の第2スリット10、10が形成されている。すなわち、第2スリット10は本体部6上に形成されており、これら第2スリット10、10及び第1スリット9に囲まれるように、弾性変形可能な舌片11が形成されている。詳しくは、舌片11の周囲のうち三方が第1スリット9及び第2スリット10、10で囲まれることにより、該舌片11は本体部6に連結される部位(ヒンジ部13)を支点に回動可能とされている。また、舌片11が回動して本体部6に開口される部位が孔部12とされており、舌片11は、この孔部12を開閉可能に閉塞している。このような構成により、下記の効果が得られる。
【0039】
すなわち、遮熱材1を垂木4、4間に設置する施工が、野地板2側(屋根5側)と室内3側の両側から行える。詳しくは、図2に示すように、野地板2側から起立部8を垂木4の側面4aに連結する際は、該起立部8が野地板2側の前記通気層21に露出しているので、タッカー等の工具先端を起立部8に押し当て、そのまま垂木4の側面4aに留めることができる。また、図3に示すように、室内3側から起立部8を垂木4の側面4aに連結する際は、図9に示すように、舌片11を野地板2側へ押し上げてヒンジ部13を支点に回動させるとともに孔部12を開口させ、この孔部12を通してタッカー等の工具18先端を起立部8に押し当て、垂木4の側面4aに留めることができる。
このように、遮熱材1を垂木4、4間に設置する作業が、野地板2側と室内3側の両側から行えるので、建物(家屋)の建築時・リフォーム時に係わらず、施工性が確保される。
【0040】
また、室内3側から起立部8を垂木4の側面4aに連結した場合、図10に示すように、孔部12は、作業後に該孔部12からタッカー等の工具18先端を引き抜く際、舌片11が弾性復元力で復元変形することにより自動的に閉塞されるようになっている。すなわち、起立部8を垂木4の側面4aに連結した後、特別な作業を必要とすることなく前記通気層21と室内3空間とを本体部6が確実に区画して、該通気層21の遮熱効率が高められている。
【0041】
また、第1スリット9は、第2スリット10よりも舌片11とは反対側へ向けて切り込まれている。この場合、孔部12を小さく形成しつつも、起立部8は垂木4の側面4aに向けて十分に撓むことができる。すなわち、孔部12は施工時にのみ開閉されるものであることから、施工後は舌片11に安定して閉塞されることが好ましい。孔部12及び舌片11を小さく形成することにより該舌片11の自重が低減し、経時変化などにより舌片11が回動して孔部12が開口されるようなことが抑制される。またこのような効果を奏しつつも、起立部8は十分に撓み変形可能とされているので、該起立部8が垂木4の側面4aに確実に当接されるとともに連結され、遮熱材1は垂木4、4間に安定して設置される。
【0042】
また、図6において、遮熱材1の基体15には、該遮熱材1の長手方向に沿って延びる孔15aが複数形成されている。孔15aがこのように形成されることにより、隣り合う孔15a、15a同士の間に形成された壁部15bが長手方向に延在することとなり、遮熱材1の剛性が確保される。また、遮熱材1が複数の孔15aを有する中空構造とされているとともに、これら孔15aが長手方向に延びていることから、該遮熱材1の幅寸法W1を垂木4の側面4a同士の距離W2に対応して容易に調整でき、施工性が向上する。
【0043】
尚、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0044】
例えば、前述の実施形態では、第1スリット9及び第2スリット10は、切れ目を入れることにより形成されているとしたが、これに限定されるものではない。
図12は、本実施形態の変形例を示している。図示の例では、第1スリット19及び第2スリット20は、打ち抜き型等により打ち抜かれて形成されており、視認できる程度の溝幅を有している。この場合、施工時において舌片11及び孔部12の位置を認識しやすい。ただし、前述した実施形態のように、第1スリット9及び第2スリット10が切れ目で形成された場合には、製造時に端材(打ち抜き片)が出ず、かつ、設置後の遮熱効率が高められることからより好ましい。
【0045】
また、前述の実施形態では、第1スリット9は、一対の第2スリット10、10に対して、舌片11とは反対側へ向けてそれぞれ切り込まれているとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、第1スリット9は、一対の第2スリット10、10のうち、一方の第2スリット10に対してのみ舌片11とは反対側へ向けて切り込まれていることとしてもよい。
【0046】
また、図13に示すように、第2スリット10が、第1スリット9の端部から本体部6側へ向けて延びていても構わない。
【0047】
また、本体部6には、該本体部6の厚さ方向に貫通して微細な貫通孔(不図示)が複数穿孔されており、室内3側(小屋裏側)の湿気がこれら貫通孔を通過するとともに野地板2側(屋根5側)へ排出されるように構成してもよい。この場合、室内3側から本体部6の前記貫通孔を通して野地板2と本体部6との間の通気層21に流入した湿気は、該通気層21を通じて棟(建物)から排出される。よって、前述した遮熱効率が高められつつも室内3の湿気が排出されて、より快適な室内3空間とすることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 遮熱材
4 垂木
4a 側面
6 本体部
7 連結手段
8 起立部
9、19 第1スリット
10、20 第2スリット
11 舌片
12 孔部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
並行して延びる垂木間に配設される遮熱材であって、
対向する前記垂木の側面同士を連結させるように板状に形成された本体部と、
前記本体部の前記垂木の側面側の端部に立設されて、連結手段により該垂木の側面に連結される起立部と、
前記本体部と前記起立部との境界に沿うように延びる第1スリットと、
前記第1スリットから前記本体部側へ向けて延びるとともに、互いに対向する一対の第2スリットと、を備え、
前記第1スリット及び一対の前記第2スリットに囲まれるように形成された弾性変形可能な舌片が、前記本体部の孔部を開閉可能に閉塞することを特徴とする遮熱材。
【請求項2】
請求項1に記載の遮熱材であって、
前記第1スリットは、前記第2スリットよりも前記舌片とは反対側へ向けて切り込まれていることを特徴とする遮熱材。
【請求項1】
並行して延びる垂木間に配設される遮熱材であって、
対向する前記垂木の側面同士を連結させるように板状に形成された本体部と、
前記本体部の前記垂木の側面側の端部に立設されて、連結手段により該垂木の側面に連結される起立部と、
前記本体部と前記起立部との境界に沿うように延びる第1スリットと、
前記第1スリットから前記本体部側へ向けて延びるとともに、互いに対向する一対の第2スリットと、を備え、
前記第1スリット及び一対の前記第2スリットに囲まれるように形成された弾性変形可能な舌片が、前記本体部の孔部を開閉可能に閉塞することを特徴とする遮熱材。
【請求項2】
請求項1に記載の遮熱材であって、
前記第1スリットは、前記第2スリットよりも前記舌片とは反対側へ向けて切り込まれていることを特徴とする遮熱材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−252340(P2011−252340A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127935(P2010−127935)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000010065)フクビ化学工業株式会社 (150)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000010065)フクビ化学工業株式会社 (150)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]