説明

遮音パネル

【課題】透光板を適切に保持し、透光板の変形に対応できる機能を確保しながら、透光面積の拡張を可能とする遮音パネルを提供する。
【解決手段】樹脂製で矩形の透光板(10)と、該透光板を囲う枠(20)とで構成される。該透光板は、起立状態の維持に必要な剛性を備えるための厚みを有し、該枠は、設置状態において水平方向に配置される横部材(21)と、該横部材に対し直交配置される縦部材(22)とで構成され、該透光板との接触面(20a)に、該横及び該縦部材の長さ方向に延びる溝(23)が形成される。該透光板の縁部(11)は該溝(23)に挟持されるとともに、上側に配置される2つの角部(12,12)周辺に設けられた貫通孔(13)を貫通する、該貫通孔よりも径の小さい一対の固定具(30)で該枠に固定される。該横部材は、該溝の底面(23a)の間隔が該透光板の高さ方向の長さ(H)よりも広くなるように配置され、該縦部材は、該横部材に対し移動自在に取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の側部に設置し、道路上で発生した騒音が周辺地域に広がることを防止する遮音パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
多くの車両が高速で通過する街中の道路においては、道路上で発生した騒音が周辺地域に広がることを防止するため、道路の側部に遮音壁が設置されることが多い。この遮音壁として、グラスウールを充填した箱状のパネルを積層したものが広く使用されてきたが、近年では、景観や日当たりなどを考慮し、透光性を有するパネルを積層したものが普及し始めている。そして、そのような、透光性を有するパネルとしては、樹脂で形成した矩形の透明な板(以下、透光板という)を金属製の枠で囲った型式のものが採用されている。
【0003】
ところが、透光板の強度は金属製の枠よりも低いため、透光板と枠との固定に単純なボルト締め構造を採用すると、車両の衝突等により衝撃が働いた場合に透光板の固定部分が破損し、道路周辺に飛散する危険性があった。また、透光板は、気温の変化による変形率が大きいため、自身の変形による透光板のゆがみを防止するためには、透光板と枠との固定部分に変形を吸収する機能を持たせる必要があった。
【0004】
そこで、透光板に衝撃が働いた場合にもその道路周辺への飛散を防止でき、また透光板の変形をその固定部分で吸収できる様々な取付構造が提案されている。そして、そのような取付構造として、特開平4−302608号公報(特許文献1)に開示されている取付構造が実用化されている。
【0005】
この特許文献1に開示されている取付構造では、透光板(特許文献1で「パネル」とされている部材)の一辺のみが透光板を貫通する取付具を介して枠(特許文献1で「取付フレーム」とされている部材)に固定され、残りの辺は挟持部材を介して枠に固定されている。そのため、挟持部材を介して固定された三辺は、取付具を介して固定した一辺よりも外れやすい構造となるため、衝撃発生時にはこの三辺が外れて衝撃力を逃がし、透光板の飛散を防止できる。また、透光板を挟持することで、その変形を吸収することが可能となる。
【特許文献1】特開平4−302608号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
透光板と枠とで構成されるパネルの場合、枠の幅が広くなれば、それだけ透光面積が減少し、景観を損ねる原因ともなるため、枠の幅はより狭いものが好ましい。しかしながら、上記取付構造では、透光板を保持するための剛性や、透光板の変形吸収のための隙間を確保するために、枠の幅を所定の値以上にする必要があった。そのため、上記取付構造を採用したパネルでは、より広い透光面積を求めることはできないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、透光板を適切に保持し、透光板の変形に対応できる機能を確保しながら、透光面積の拡張を可能とする遮音パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる遮音パネルは、樹脂製で矩形の透光板と、該透光板を囲う枠とで構成される。該透光板は、起立状態の維持に必要な剛性を備えるための厚みを有し、該枠は、設置状態において水平方向に配置される横部材と、該横部材に対し直交配置される縦部材とで構成され、設置状態における該透光板との接触面に、該縦部材及び該横部材のそれぞれの長さ方向に延びる溝が形成されてる。そして、該透光板の縁部は該溝に挟持されるとともに、設置状態において上側に配置される2つの角部周辺に設けられた貫通孔を貫通する、該貫通孔よりも径の小さい一対の固定具で該枠に固定されている。また、該横部材は、該溝の底面の間隔が該透光板の設置状態における高さ方向の長さよりも広い間隔を開けて配置されている。更に、該縦部材は、該横部材に対し移動自在に取り付けられている。
【0009】
該縦部材を該横部材に対し移動自在に取り付けるためには、例えば、該縦部材を、該横部材の側面に突き合わされた端面において、該横部材の該側面に設けられた該横部材の長さ方向に延びる長孔に挿通されたボルトを介して該横部材に固定してもよい。
【0010】
該横部材は、単一の部材で形成された、一箇所継ぎ目の断面形状を有する筒体であってもよい。なお、本発明において、継ぎ目とは、二つの部材同士を接合した際に生じる、機械的に連続していても物理的性質が不連続となる接合部をいう。すなわち、一箇所継ぎ目の断面形状を有する筒体とは、複数の部材を接合して筒体を形成したものではなく、押し出し成形等で形成された当初から周方向が連続している筒体のことをいうものとする。
【0011】
一箇所継ぎ目の断面形状を有する筒体としては、例えば、該透光板との接触面と、該接触面の長さ方向の両縁辺から該接触面に連続して該接触面と直交する方向に起立する一組の対向面と、該対向面の双方に連続し該接触面に対向する結合面を有するものであってもよい。そして、該結合面は、幅方向の半分側で該接触面により近づいた、中間位置で段差を形成する階段状となっているものであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる遮音パネルでは、透光板を、起立状態の維持に必要な剛性を備えるための厚みを有するものとしたため、枠に対する透光板の保持負担を低減することができ、その低減分に応じて枠の幅を小さくすることが可能となる。
【0013】
また、縦部材は、横部材に対し移動自在に取り付けられているため、透光板の長手方向(設置状態における水平方向)の変形に対し縦部材の移動で対応することが可能となり、縦部材に透光板を挟持させる際、変形吸収のための隙間を小さく或いは無くすることができる。そのため、縦部材の幅をより小さくすることが可能となる。なお、縦部材の移動は透光板の伸縮によるものであるが、これは、透光板が起立状態の維持に必要な剛性を有することで可能となる。
【0014】
一方、横部材は、透光板との接触面に設けられた溝の底面の間隔が、透光板の設置状態における高さ方向の長さよりも広くなるように配置されているため、透光板は、設置状態において上側に配置される横部材の溝の底面に対し隙間を開けて、設置状態において下側に配置される横部材の溝の底面に載った状態で挟持される。そのため、透光板の高さ方向の変形に対し、その上側の溝に形成された隙間で対応することが可能となる。
【0015】
また、長手方向及び高さ方向の何れの変形においても、透光板の長手方向及び高さ方向の縁部は、横部材及び縦部材に挟持されているため、それぞれの部材が自身の長手方向の変形を妨げることはない。
【0016】
従って、本発明にかかる遮音パネルによれば、透光板を適切に保持し、透光板の変形に対応できる機能を確保しながら、枠の幅を小さくして、透光面積を拡張することが可能となる。
【0017】
なお、透光板を枠で囲った型式のパネルには、透光板に衝撃が働いた場合にもその道路周辺への飛散を防止できる機能が求められることは記述の通りである。この点に関し、本発明にかかる遮音パネルでは、透光板の縁部が横部材及び縦部材に設けられた溝によって枠に挟持されているため、衝撃が生じた場合には透光板がこの溝から脱落してその衝撃を逃がし、道路周辺に飛散することを防止できる。この際、透光板は、設置状態において上側に配置される2つの角部に設けられた貫通孔を貫通する一対の固定具で枠に固定されているため、透光板全体が道路周辺に落下することを防止できる。従って、本発明にかかる遮音パネルによれば、従来の取付構造と同様の耐衝撃性が維持される。なお、固定具は、透光板の貫通孔よりも径が小さいため、透光板が温度変化により伸縮する場合でもその伸縮の妨げとはならない。従って、固定具が、透光板の変形に対応する枠の機能を低下させることもない。
【0018】
本発明にかかる遮音パネルにおいて、横部材が、単一の部材で形成された、一箇所継ぎ目の断面形状を有する筒体であれば、複数の部材で形成した場合と比較し応力の集中を防止し、捩れ剛性を高めることができる。そのため、横部材の幅をより小さくすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1〜5に、本発明にかかる遮音パネルの具体例を示す。図1は同遮音パネルの正面図、図2は図1のA−A矢視線に沿って見た断面を拡大して示す正断面図、図3は図1のB−B矢視線に沿って見た断面を拡大して示す側断面図、図4は横部材に設けられた長孔とその周辺部分を示す斜視図、図5は透光板の伸縮による縦部材の横部材に対する相対位置の変化を示し(a)は透光板の伸縮がない状態の一部拡大正面図(b)は透光板が伸びた状態の一部拡大正面図(c)は透光板が縮んだ状態の一部拡大正面図である。
【0020】
この遮音パネルは、樹脂製で矩形の透光板10と、この透光板10を囲う枠20とで構成される。透光板10は、起立状態の維持に必要な剛性を備えるための厚みを有し、枠20は、設置状態において水平方向に配置される横部材21と、横部材21に対し直交配置される縦部材22とで構成され、設置状態における透光板10と接触面20aに、横部材21及び縦部材22のそれぞれの長さ方向に延びる溝23が形成されている。そして、透光板10の縁部11は、シール材31を介して溝23に挟持されている。また、透光板1には、設置状態において上側に配置される2つの角部12、12周辺に貫通孔13が設けられており、この貫通孔13よりも径の小さい一対の固定具30で枠20に固定されている。
【0021】
横部材21は、溝23の底面23aの間隔が透光板10の設置状態における高さ方向の長さHよりも広くなるように配置されている。そして、透光板10は、図1において上側に配置された横部材21の溝23の底面23aに対し隙間Sを開けて、図1において下側に配置された横部材21の溝23の底面23aに載った状態で挟持されている。一方、縦部材21は、横部材22に対し移動自在に取り付けられている。
【0022】
この遮音パネルでは、透光板10を、起立状態の維持に必要な剛性を備えるための厚みを有するものとしたため、枠20に対する透光板10の保持負担を低減することができ、その低減分に応じて枠20の幅を小さくすることが可能となる。
【0023】
また、縦部材22は、横部材21に対し移動自在に取り付けられているため、透光板10の長手方向(水平方向)の変形に対し縦部材22の移動で対応することが可能となり、縦部材22に透光板10を挟持させる際、変形吸収のための隙間を小さく或いは無くすることができる。そのため、縦部材22の幅をより小さくすることが可能となる。
【0024】
一方、透光板10の高さ方向の変形に対しては、上側の横部材22の溝23に形成された隙間Sで対応することが可能となる。なお、長手方向及び高さ方向の何れの変形においても、透光板10の長手方向及び高さ方向の縁部11は、横部材21及び縦部材22に挟持されているため、それぞれの部材21、22が自身の長手方向の変形を妨げることはない。
【0025】
従って、この遮音パネルによれば、透光板10を適切に保持し、透光板10の変形に対応できる機能を確保しながら、枠20の幅を小さくして、透光面積を拡張することが可能となる。
【0026】
更に、この遮音パネルでは、透光板10の縁部11が溝23によって枠20に挟持されているため、衝撃が生じた場合には透光板10がこの溝23から脱落してその衝撃を逃がし、道路周辺に飛散することを防止できる。この際、透光板10は、設置状態において上側に配置される2つの角部12に設けられた貫通孔13を貫通する一対の固定具30で枠20に固定されているため、透光板10全体が道路周辺に落下することを防止できる。なお、固定具30は、透光板20の貫通孔13よりも径が小さいため、透光板10が温度変化により伸縮する場合でもその伸縮の妨げとはならない。従って、固定具30が、透光板10の変形に対応する枠20の機能を低下させることもない。
【0027】
縦部材22の端部には、矩形の板材をL字型に折り曲げて形成した連結用具32が取り付けられている。連結用具32は、直交する二面のうち一面32aが縦部材22の内面に溶接固定され、もう一方の面32bが、縦部材22の、横部材21の接触面20aに突き合わされる端面22aの一部を構成している。この端面22aを構成する面32aにはボルト挿通孔33が設けられており、このボルト挿通孔33と、横部材21に設けられた横部材21の長さ方向に延びる長孔24とに挿通されたボルト25を介して、縦部材22が横部材21に固定されている。ただし、縦部材22と横部材21の固定方法は、縦部材22が横部材21に対し移動自在であれば、制限はなく、その他の固定方法を採用してもよい。
【0028】
横部材21は、透光板10との接触面20aの長さ方向の両縁辺からこの接触面20aに連続して接触面20aと直交する方向に起立する一組の対向面21bと、対向面21bの双方に連続し接触面20aに対向する結合面21cを有する形状、すなわち、単一の部材で形成された、継ぎ目のない断面形状を有する筒体となっている。そして、結合面21cは、幅方向の半分側が前記接触面20aに対しより近づいた、中間位置で段差26を形成する階段状となっている。
【0029】
そのため、横部材21を、複数の部材で形成した場合や1枚の板を曲げて対向する縁部を接合して形成した場合と比較し、複数の部材や対向する縁部の継ぎ目において生じる応力の集中を防止し、捩れ剛性を高めることができる。そのため、横部材21の幅をより小さくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明にかかる遮音パネルの具体例を示す正面図である。
【図2】図1のA−A矢視線に沿って見た断面を拡大して示す正断面図である。
【図3】図1のB−B矢視線に沿って見た断面を拡大して示す側断面図である。
【図4】横部材に設けられた長孔とその周辺部分を示す斜視図である。
【図5】透光板の伸縮による縦部材の横部材に対する相対位置の変化を示し(a)は透光板の伸縮がない状態の一部拡大正面図(b)は透光板が伸びた状態の一部拡大正面図(c)は透光板が縮んだ状態の一部拡大正面図である。
【符号の説明】
【0031】
10 透光板
11 縁部
12 角部
13 貫通孔
20 枠
20a 接触面
21 縦部材
21b 対向面
21c 結合面
22 横部材
23 溝
23a 底面
24 長孔
25 ボルト
26 段差
30 固定具
31 シール材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製で矩形の透光板(10)と、該透光板(10)を囲う枠(20)とで構成され、
該透光板(10)は、起立状態の維持に必要な剛性を備えるための厚みを有し、
該枠(20)は、設置状態において水平方向に配置される横部材(21)と、該横部材(21)に対し直交配置される縦部材(22)とで構成され、設置状態における該透光板(10)との接触面(20a)に、該横部材(21)及び該縦部材(22)のそれぞれの長さ方向に延びる溝(23)が形成され、
該透光板(10)の縁部(11)は該溝(23)に挟持されるとともに、設置状態において上側に配置される2つの角部(12,12)周辺に設けられた貫通孔(13)を貫通する、該貫通孔(13)よりも径の小さい一対の固定具(30)で該枠(20)に固定され
該横部材(21)は、該溝(23)の底面(23a)の間隔が該透光板(10)の設置状態における高さ方向の長さ(H)よりも広くなるように配置され
該縦部材(22)は、該横部材(21)に対し移動自在に取り付けられている
ことを特徴とする遮音パネル。
【請求項2】
該縦部材(22)は、該横部材(21)の該接触面(20a)に突き合わされた端面(22a)において、該横部材(21)に設けられた該横部材(21)の長さ方向に延びる長孔(24)に挿通されたボルト(25)を介して該横部材(21)に固定されている請求項1に記載の遮音パネル。
【請求項3】
該横部材(21)は、単一の部材で形成された、一箇所のみの継ぎ目の断面形状を有する筒体である請求項1又は2に記載された遮音パネル。
【請求項4】
該筒体は、該接触面(20a)と、該接触面(20a)の長さ方向の両縁辺から該接触面(20a)に連続して該接触面(20a)と直交する方向に起立する一組の対向面(21b)と、該対向面(21b)の双方に連続し該接触面(20a)に対向する結合面(21c)を有し、該結合面(21c)は、幅方向の半分側が該接触面(20a)に対しより近づいた、中間位置で段差(26)を形成する階段状となっている請求項3に記載の遮音パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−169566(P2008−169566A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−1911(P2007−1911)
【出願日】平成19年1月10日(2007.1.10)
【出願人】(505398941)東日本高速道路株式会社 (66)
【出願人】(505398952)中日本高速道路株式会社 (94)
【出願人】(505398963)西日本高速道路株式会社 (105)
【出願人】(505317849)有限責任中間法人音・環境保全技術研究会 (1)
【Fターム(参考)】