説明

遷移金属カルベン錯体の製造方法

少なくとも1つのカルベン配位子を有するシクロメタル化された遷移金属−カルベン錯体の製造方法であって、配位子前駆体と塩基、補助試薬及び少なくとも1つの金属M1を有する金属錯体とを反応させること(経路A)、又は配位子前駆体と塩基性補助試薬及び少なくとも1つの金属M1を有する金属錯体とを反応させること(経路B)を含む方法。更に、本発明は、Ag、Hg、Sb、Mg、B及びAlからなる群から選択される少なくとも1つの金属を有する塩から選択される補助試薬を、塩基と一緒に、シクロメタル化された金属錯体の製造方法において用いる使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのカルベン配位子を有するシクロメタル化された遷移金属−カルベン錯体の製造方法であって、配位子前駆体と塩基、補助試薬及び少なくとも1つの金属M1を有する金属錯体とを反応させること(経路A)、又は配位子前駆体と塩基性補助試薬及び少なくとも1つの金属M1を有する金属錯体とを反応させること(経路B)を含む方法に関する。更に、本発明は、Ag、Hg、Sb、Mg、B及びAlからなる群から選択される少なくとも1つの金属を有する塩から選択される補助試薬を、塩基と一緒に、シクロメタル化された金属錯体の製造方法において用いる使用に関する。
【0002】
有機発光ダイオード(OLED)においては、電流によって励起された場合に光を放出する材料の特性が用いられる。OLEDは、特に陰極線管及び液晶ディスプレイの代替として、平面ディスプレイの製造のために関心が持たれている。そのコンパクトな構造及び本来より低い電流消費に基づいて、OLEDを含む装置は、特に可搬用途、例えば携帯機器、ラップトップなどで使用するために適している。
【0003】
電流による励起に際して光を発する多数の材料が提案されている。
【0004】
WO2005/019373号では、少なくとも1つのカルベン配位子を有する遷移金属錯体を、有機発光ダイオード(OLED)において用いる使用が開示されている。前記錯体は、相応の配位子前駆体の脱プロトン化と、引き続いての所望の金属を含む好適な金属錯体との反応によって、他の補助試薬を添加せずに製造され、その際、得られる遷移金属錯体の収率は、部分的には改善に値するものである。
【0005】
技術水準においては、遷移金属カルベン錯体を、銀を含有する補助試薬の存在下で製造する方法が知られている。公知の方法は、特に銀−カルベン錯体の製造のためにAg2Oを使用して、引き続き別の金属にカルベン転位させ、金属カルベン錯体におけるハロゲン化物引き抜きあるいはアニオン交換のために銀塩、例えばAgBF4、AgCO2CF3、AgPF6、AgOTfを使用することに関連している。
【0006】
Mark E.Thompson他著のInorganic Chemistry,2005,44,7992−8003は、シクロメタル化されたN−複素環式カルベン配位子(NHC)を有するイリジウム錯体に関連する。3つのシクロメタル化されたカルベン配位子(CΛC:)を有するイリジウム錯体の製造は、相応のイミダゾリウム(pmiH+)もしくはベンゾイミダゾリウムヨージド塩(pmbH+)と酸化銀(I)(Ag2O)及び塩化イリジウム(III)水和物とを還流下で2−エトキシエタノール中で一工程で反応させることによって行われ、その際、所望のfac−及びmer−Ir(C∧C:)3−錯体が低い収率(その記載によれば10%未満)で以下の式:[(CΛC:)2IrCl]2の生成物と一緒に得られる。式[(CΛC:)2IrCl]2の生成物は、収率を高めるために、再び、1,2−ジクロロエタン中で相応のイミダゾリウム−もしくはベンゾイミダゾリウムヨージド塩及びAg2Oと反応させて、fac−及びmer−Ir(C∧C:)3−錯体を得ることができる。
【0007】
WO2005/113704号は、カルベン配位子を有する発光性化合物に関する。該化合物は、とりわけイリジウム−(ベンゾ−)イミダゾリリデン−カルベン錯体であってよい。これらは、実施例によれば、相応の(ベンゾ)イミダゾリウムヨージド塩とAg2O及び塩化イリジウム(III)水和物とを一工程で反応させることによって製造され、その際、所望のイリジウム錯体の収率は低い。
【0008】
Steven P.Noian他著のJ.Am.Chem.Soc.2004,126,5054−5055は、シクロメタル化された、ロジウムのN−複素環式カルベン錯体(NHC)に関する。詳細な説明によれば、二重シクロメタル化された錯体RhCl(N,N−ジ(t−ブチル)イミダゾール−2−イリデン))2は、[Rh(COE)2Cl]2とN,N−ジ(t−ブチル)イミダゾール−2−イリデン)とをベンゼン中で反応させることによって製造される。前記錯体は、他の工程において、AgPF6とのCH2Cl2中での反応によって転化させて14電子−Rh(III)錯体とすることができる。その銀塩は、Steven P.Noian他においてCl-の引き抜きのために使用されている。CH活性化は、既に該銀塩の添加前に存在する。
【0009】
Alfred F.Noels他著のCan.J.Chem.79:529−535(2001)は、とりわけ、トリアゾリニリデン−カルベン(1,3,4−トリフェニル−4,5−ジヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン)と二量体Ru錯体[RuCl2(p−シメン)]2とを過剰の塩基(EtN−i−Pr2)を添加しつつ化学量論的な反応をさせることによってシクロメタル化されたRu錯体であるRuCl(p−シメン)(トリアゾリニリデン)を製造することに関する。前記の錯体から、アセトニトリル中のAgBF4でのCl-の引き抜きによって相応のカチオン性錯体が得られる。Alfred F.Noels他においては、従ってSteven P.Noian他と同じ銀塩がCl-の引き抜きのために使用される。CH活性化は、既に該銀塩の添加前に存在する。
【0010】
本発明の課題は、簡単な反応操作で良好な収率で錯体が得られる、シクロメタル化されたカルベン錯体、特にIr(III)−カルベン錯体の製造方法を提供することである。
【0011】
前記課題は、少なくとも1つのカルベン配位子を有する一般式(I)
【化1】

[式中、記号は以下の意味を有する:
1は、Ir、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Fe、Ru、Os、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Cu及びAu、好ましくはIr、Os、Ru、Rh、Pd、Co及びPt、特に好ましくはIr、Pt、Rh及びOs、殊に好ましくはIrからなる群から選択される金属原子であって、相応の金属原子にとってそれぞれ可能な酸化段階のもの、更に好ましくはIr(I)及びIr(III)、特にIr(III)である;
carbenは、一般式(II)
【化2】

で示されるカルベン配位子である;
Lは、一座もしくは二座であってよい、モノアニオン性もしくはジアニオン性の配位子である;
Kは、中性の一座もしくは二座の配位子である;
nは、カルベン配位子の数であり、その際、nは、少なくとも1であり、好ましくは少なくとも2であり、かつnが1より大きい場合の式Iの錯体中のカルベン配位子は、同一もしくは異なってよい;
mは、配位子Lの数であり、その際、mは、0もしくは≧1であってよく、かつmが1より大きい場合の配位子Lは、同一もしくは異なってよい;
oは、配位子Kの数であり、その際、oは、0もしくは≧1であってよく、かつoが1より大きい場合の配位子Kは、同一もしくは異なってよい;
その際、合計n+m+oは、使用される金属原子の酸化段階及び配位数と、配位子のcarben、L及びKの配座数並びに配位子のcarben及びLの電荷に依存するが、nが少なくとも1であることを条件とする;
その際、一般式IIのカルベン配位子中の記号は、以下の意味を有する:
Do1は、C、P、N、O、S及びSi、好ましくはP、N、O及びS、特に好ましくはNからなる群から選択されるドナー原子である;
Do2は、C、N、P、O及びSからなる群から選択されるドナー原子である;
rは、Do1がCもしくはSiである場合に、2であり、Do1がNもしくはPである場合に、1であり、かつDo1がOもしくはSである場合に、0である;
sは、Do2がCである場合に、2であり、Do1がNもしくはPである場合に、1であり、かつDo1がOもしくはSである場合に、0である;
Xは、シリレン、アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR13、PR14、BR15、O、S、SO、SO2、CO、CO−O、O−CO及び(CR1617wからなる群から選択されるスペーサーであり、その際、1つ以上の隣接していない基(CR1617)は、NR13、PR14、BR15、O、S、SO、SO2、CO、CO−O、O−COによって交換されていてよく、好ましくはアルキレン、アリーレン、アルケニレン、シリレン、SOもしくはSO2であり、特に好ましくはC1〜C3−アルキレン、C6−1,2−アリーレンもしくはC2−アルケニレンであり、その際、場合によりスペーサーとしてあげられた基の炭素原子の少なくとも1つは、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基もしくはi−プロピル基で又はハロゲン基、好ましくはF、Cl、Br、特に好ましくはF、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボニル基、エステル基、アミノ基、アミド基、CHF2、CH2F、CF3、CN、チオ基及びSCNから選択されるドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基で置換されていてよく、殊に好ましくはメチレン、エテニレンもしくは1,2−フェニレンである;
wは、2〜10である;
13、R14、R15、R16、R17は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルである;
pは、0もしくは1であり、好ましくは0である;
qは、0もしくは1であり、好ましくは0である;
1、Y2は、それぞれ互いに無関係に、水素又はアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基及びアルケニル基からなる群から選択される炭素含有基であるか、又は
1及びY2は、一緒になってドナー原子Do1と窒素原子Nとの間に架橋を形成し、前記架橋は、少なくとも2個の原子を有し、好ましくは2〜3個の原子を有し、特に好ましくは2個の原子を有し、そのうち少なくとも1つが炭素原子であり、かつ他の原子が窒素原子もしくは炭素原子であることが好ましく、その際、前記架橋は飽和もしくは不飽和であってよく、好ましくは不飽和であってよく、かつ前記架橋の少なくとも2つの原子は、置換もしくは非置換であってよい;
3は、水素、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基もしくはアルケニル基、好ましくはアルキル基、ヘテロアリール基もしくはアリール基、特に好ましくはアルキル基である;又は
【化3】

であり、その際、Do2'、q′、s′、R3'、R1'、R2'、X′及びp′は、無関係に、Do2、q、s、R3、R1、R2、X及びpと同じ意味を有する;
更に、Y3及びY2は1つの架橋を介して互いに結合されていてよく、その際、該架橋は以下の意味:
アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR25、PR26、BR27、O、S、SO、SO2、SiR3233、CO、CO−O、O−CO及び(CR2829yを有してよく、その際、1つ以上の隣接していない基(CR2829)は、NR25、PR26、BR27、O、S、SO、SO2、SiR3233、CO、CO−O、O−COによって交換されていてよく、その際、yは、2〜10であり、かつR25、R26、R27、R28、R29、R32、R33は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを意味する;
1、R2は、互いに無関係に、水素、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基もしくはアルケニル基であり、好ましくは水素、アルキル基、ヘテロアリール基もしくはアリール基であるか、又は
1及びR2は、一緒になって、全体で3〜5個の原子を有する、好ましくは4個の原子を有する架橋を形成し、そのうち1もしくは2個の原子はヘテロ原子、好ましくはNであってよく、かつ残りの原子は炭素原子であるので、基
【化4】

は、5員ないし6員の環を、好ましくは6員の環を形成し、前記環は、場合により既に存在する二重結合の他に、1つの更なる二重結合を有するか、又は6員もしくは7員の環の場合には、2つの更なる二重結合を有してよく、かつ場合によりアルキル基もしくはアリール基で及び/又はドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基で置換されていてよく、かつ場合により少なくとも1つのヘテロ原子、好ましくはNを有してよく、その際、6員の芳香族環であってアルキル基もしくはアリール基で置換もしくは非置換である環が好ましいか、又は好ましい6員の芳香族環は、場合により少なくとも1つのヘテロ原子、好ましくはNを有してよい他の環、好ましくは6員の芳香族環と縮合されている;
更に、Y1及びR1は、1つの架橋を介して互いに結合されていてよく、その際、該架橋は、以下の意味:
アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−CO及び(CR2122xを有してよく、その際、1つ以上の隣接していない基(CR2122)は、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−COによって交換されていてよく、その際、xは、2〜10であり、かつR18、R19、R20、R21、R22、R30、R31は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを意味する;
3は、水素、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基もしくはアルケニル基であり、好ましくは水素、アルキル基、ヘテロアリール基もしくはアリール基である]のシクロメタル化されたカルベン錯体の製造方法において、一般式(III)
【化5】

[式中、
-は、モノアニオン性の対イオン、好ましくはハロゲン化物イオン、擬ハロゲン化物イオン、BF4-、BPh4-、PF6-、AsF6-もしくはSbF6-である;
Gは、Do2がCである場合に、Hを意味し、かつDo2がN、S、OもしくはPである場合に、Hもしくは自由電子対を意味し、式IIIの配位子前駆体中の他の記号は、式IIの配位子に関して挙げられた意味を有する]で示される配位子前駆体の反応を含み、その際、該反応が、塩基及びAg、Hg、Sb、Mg、B及びAlの塩、好ましくはAgの塩から選択される補助試薬の使用(経路A)又はAg、Hg、Sb、Mg、B及びAl、好ましくはAgからなる群から選択される少なくとも1つの金属を含有する塩基性の補助試薬の使用(経路B)を含み、その際、一般式IIIの前記の配位子前駆体を、
(A)塩基、少なくとも1つの金属M1を含有する金属錯体及び補助試薬と反応させ(経路A)、又は
(B)塩基性の補助試薬と反応させ、その際、保護されたカルベンを得て、引き続きその保護されたカルベンを少なくとも1つの金属M1を含有する金属錯体と反応させ(経路B)、
その際、シクロメタル化された式Iの金属錯体が得られる方法によって解決される。
【0012】
式IIの係る配位子及び式IIIの配位子前駆体であって式中のp及び/又はqが0であるものが好ましく、すなわちは、式IIの配位子と式IIIの配位子前駆体においては、スペーサーX及び/又はドナー原子Do2は存在しない。
【0013】
本発明による方法によって、シクロメタル化された遷移金属−カルベン錯体の製造を良好な収率で簡単な反応操作で可能にする。
【0014】
二座の配位子とは、遷移金属原子M1に2ヶ所で配位されている配位子を表す。本願の範囲では、概念"2つの配座"と概念"二座"とは同義である。一座の配位子とは、配位子の1ヶ所で遷移金属原子M1と配位する配位子を表す。
【0015】
使用される金属M1の配位数並びに使用される配位子L、K及びcarbenの性質と数とに依存して、相応の金属錯体の種々の異性体は、同じ金属M1の場合に、かつ使用される配位子K、L及びcarbenの同じ性質と数との場合に存在してよい。例えば、配位数6を有する金属M1との錯体(従って六座錯体)の場合に、例えばIr(III)錯体は、一般組成MA24の錯体である場合には、シス/トランス異性体が可能であり、同様に、一般組成MA33の錯体である場合には、fac/mer異性体(facial/meridional異性体)も可能である。配位数4を有する金属M1との正方平面型錯体、例えばPt(II)錯体の場合に、一般組成MA22の錯体である場合には、シス/トランス異性体が可能である。記号A及びBは、それぞれ配位子の結合位置であり、その際、一座配位子だけでなく、二座配位子も存在することができる。非対称の二座配位子は、上述の一般組成によれば、群A及び群Bを有する。
【0016】
当業者には、シス/トランス異性体あるいはfac/mer異性体が何を意味するかは知られている。八座錯体の場合に、シス異性体は、組成MA24の錯体である場合には、両方の群Aに隣接した八面体の頂点が占有されている一方で、両方の群Aは、トランス異性体である場合には、八面体の互いに向かい合った頂点が占有されていることを意味する。組成MA33の錯体の場合に、同じ種類の3つの群は、八面体表面に頂点を有する(facial異性体)か、又は経線を有する、すなわち3つの配位子結合位置の2つが互いにトランス位にある(meridional異性体)。八座の金属錯体におけるシス/トランス異性体あるいはfac/mer異性体の定義に関しては、例えばJ.Huheey,E.Keiter,R.Keiter,Anorganische Chemie:Prinzipien von Struktur und Reaktivitaet、Ralf Steudel訳の第二改訂拡張版,Berlin;New York:de Gruyter,1995,第575,576頁を参照のこと。
【0017】
正方平面錯体の場合には、シス異性体は、組成MA22の錯体である場合には、両方の群Aも両方の群Bも、隣接した四面体の頂点を占有し、一方で、トランス異性体である場合には、両方の群Aも両方の群Bも、それぞれ互いに対角に向かい合った四面体の頂点を占有していることを意味する。正方平面金属錯体におけるシス/トランス異性体の定義に関しては、例えばJ.Huheey,E.Keiter,R.Keiter,Anorganische Chemie:Prinzipien von Struktur und Reaktivitaet、Ralf Steudel訳の第二改訂拡張版,Berlin;New York:de Gruyter,1995,第557〜559頁を参照のこと。
【0018】
一般に、式Iの金属錯体の種々の異性体は、当業者に公知の方法に従って、例えばクロマトグラフィー、昇華もしくは結晶化によって分離することができる。
【0019】
従って、本発明は、式Iの遷移金属錯体のそれぞれの個々の異性体の製造にも、種々の異性体のそれぞれの任意の混合比における混合物の製造にも関する。
【0020】
特に、式Iで示され、その式中、金属原子M1がIr、Os、Rh及びPtからなる群から選択され、その際、Os(II)、Rh(III)、Ir(I)、Ir(III)及びPt(II)が好ましい本発明により製造される遷移金属錯体が好ましい。特に好ましくは、Irが使用され、好ましくはIr(I)及びIr(III)が使用され、殊に好ましくはIr(III)が使用される。
【0021】
好適なモノアニオン性又はジアニオン性の配位子L、有利にはモノアニオン性の配位子Lであって、一座又は二座であってよい配位子Lは、通常は、一座又は二座の、モノアニオン性又はジアニオン性の配位子として使用される配位子である。
【0022】
好適なモノアニオン性の一座の配位子は、例えばハロゲン化物イオン、特にCl-及びBr-、擬ハロゲン化物イオンCN-、シクロペンタジエニル(Cp-)、水素化物、遷移金属M1とσ結合を介して結合されているアルキル基、例えばCH3、遷移金属M1とσ結合を介して結合されているアルキルアリール基、例えばベンジルである。
【0023】
好適なモノアニオン性の二座の配位子は、例えばアセチルアセトネート及びその誘導体、ピコリネート、シッフ塩基、アミノ酸、アリールアゾール、例えばフェニルピリジン並びにWO02/15645号に挙げられる他の二座のモノアニオン性の配位子であり、その際、アセチルアセトネート及びピコリネートが好ましい。
【0024】
好適なジアニオン性の二座の配位子は、例えばジアルコレート、ジカーボネート、ジカルボキシレート、ジアミド、ジイミド、ジチオレート、ビスシクロペンタジエニル、ビスホスホネート、ビススルホネート及び3−フェニルピラゾールである。
【0025】
好適な中性の一座もしくは二座の配位子Kは、好ましくは、ホスフィン、モノホスフィンもビスホスフィンも;ホスホネート、モノホスホネートもビスホスホネートも及びその誘導体も、アルセネート、モノアルセネートもビスアルセネートも及びその誘導体も、ホスファイト、モノホスファイトもビスホスファイトも、CO、ピリジン、モノピリジンもビスピリジンも、ニトリル、ジニトリル、アリル、ジイミン、非共役ジエン及び共役ジエンであり、それらは、M1とπ錯体を形成する。特に好ましい中性の一座もしくは二座の配位子Kは、ホスフィン、モノホスフィンもビスホスフィンも、有利にはトリアルキル−、トリアリール−もしくはアルキルアリールホスフィン、特に好ましくはPAr3(式中、Arは置換もしくは非置換のアリール基であり、かつPAr3中の3つのアリール基は、同一もしくは異なってよい)、特に好ましくはPPh3、PEt3、PnBu3、PEt2Ph、PMe2Ph、PnBu2Ph;ホスホネート及びその誘導体、アルセネート及びその誘導体、ホスファイト、CO、ピリジン、モノピリジンもビスピリジンも(その際、ピリジンはアルキル基もしくはアリール基で置換されていてよい)、ニトリル及びM1とπ錯体を形成するジエン、好ましくはη4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、η4−1,3−ペンタジエン、η4−1−フェニル−1,3−ペンタジエン、η4−1,4−ジベンジル−1,3−ブタジエン、η4−2,4−ヘキサジエン、η4−3−メチル−1,3−ペンタジエン、η4−1,4−ジトリル−1,3−ブタジエン、η4−1,4−ビス(トリメチルシリル)−1,3−ブタジエン及びη2−もしくはη4−シクロオクタジエン(それぞれ1,3及びそれぞれ1,5)、特に好ましくは1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、1−フェニル−1,3−ペンタジエン、2,4−ヘキサジエン、ブタジエン、η2−シクロオクテン、η4−1,3−シクロオクタジエン及びη4−1,5−シクロオクタジエンである。殊に好ましい中性の一座の配位子は、PPh3、P(OPh)3、AsPh3、CO、ピリジン、ニトリル及びそれらの誘導体からなる群から選択される。好適な中性の一座もしくは二座の配位子は、好ましくは1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、1−フェニル−1,3−ペンタジエン、2,4−ヘキサジエン、η4−シクロオクタジエン及びη2−シクロオクタジエン(それぞれ1,3及びそれぞれ1,5)である。
【0026】
カルベン配位子の数nは、中性の遷移金属錯体であって、その遷移金属原子が配位数6を有するIr(III)である場合には、1〜3、有利には2又は3、特に有利には3である。nが1より大きくなりうる場合に、カルベン配位子は、同一又は異なってよい。
【0027】
カルベン配位子の数nは、遷移金属錯体であって、その遷移金属原子が配位数4を有するPt(II)である場合には、1又は2、有利には2である。nが1より大きくなりうる場合に、カルベン配位子は、同一又は異なってよい。
【0028】
モノアニオン性配位子Lの数mは、上述の場合には、0〜2、有利には0〜1、特に有利には0である。mが1より大きくなりうる場合に、配位子Lは、同一又は異なってよく、有利には配位子Lは同一である。
【0029】
中性配位子Kの数oは、Ir(III)の配位数6又はPt(II)の配位数4が、カルベン配位子及び配位子Lにより既に達成されているかどうかに依存している。Ir(III)が使用される場合に、nが3であり、かつ3つのモノアニオン性の二座のカルベン配位子が使用される場合には、oはこの場合には同様に0である。Pt(II)が使用される場合に、nが2であり、かつ2つのモノアニオン性の二座のカルベン配位子が使用される場合には、oはこの場合には同様に0である。
【0030】
基Y1及びY2に関しては、本発明の範囲においては以下のことが該当する:
基Y1及びY2の置換基は、一緒になって、全体で2ないし4つの、好ましくは2ないし3つの原子を有する架橋を形成でき、そのうち1もしくは2つの原子は、ヘテロ原子、好ましくはNであってよく、かつ残りの原子は炭素原子であるので、Y1及びY2は、一緒になって前記の架橋と5員ないし7員の、好ましくは5員ないし6員の環を形成し、前記環は場合により2つもしくは6員もしくは7員の場合には、3つの二重結合を有してよく、場合によりアルキル基もしくはアリール基及び/又はドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基で置換されていてよく、かつ場合によりヘテロ原子、好ましくはNを有してよく、その際、5員もしくは6員の芳香族環であって、アルキル基もしくはアリール基及び/又はドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基で置換もしくは非置換の環が好ましく、又は好ましくは5員もしくは6員の芳香族環は、更なる環であって場合により少なくとも1つのヘテロ原子、好ましくはNを有する環、好ましくは6員の芳香族環と縮合されている。
【0031】
基Y1は、基R1と架橋を介して結合されていてよく、その際、架橋は、以下の意味を有してよい:
アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−CO及び(CR2122x
その際、1つ以上の隣接していない基(CR2122)は、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−COによって置き換えられていてよく、その際、xは2〜10であり、かつR18、R19、R20、R21、R22、R30、R31は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを意味する。
【0032】
1及びY2が一緒になって架橋を形成し、その際、5員ないし7員の環が形成される場合に、基R1に結合する架橋は、直接的に5員ないし7員の環と結合されてよく、又は前記の環の置換基に結合されてよく、その際、5員ないし7員の環との直接的な結合が好ましい。特に好ましくは、5員ないし7員の環のN原子(一般式IIにおいて)に直接的に隣接する原子は、係る結合が存在する場合(例えば後に挙げる構造IIl、IIm、IIn、IIoを参照)に、架橋を介してR1と結合される。Y1及びY2が一緒に架橋することによって形成される5員ないし7員の環が他の5員ないし7員の環と縮合されている場合に、結合する架橋は、縮合環の1つの原子と結合されていてよい(例えば以下に挙げる構造IIkを参照)。
【0033】
以下に、特に好ましい構造を例として挙げる。表される架橋は、他の本発明により使用される配位子形中にも、例えば以下に挙げる式IIa〜jの配位子形にも存在してよい。
【0034】
【化6】

【0035】
基R18、R20、R21、R30及びR31は、既に前記に定義したものである。
【0036】
本願の範囲においては、概念アリール残基又はアリール基、ヘテロアリール残基又はヘテロアリール基、アルキル残基又はアルキル基、アルケニル残基又はアルケニル基及びアルキニル残基又はアルキニル残基は、以下の意味を有する:
アリール残基(又はアリール基)とは、6〜30個の炭素原子、有利には6〜18個の炭素原子の基本骨格を有する基であって、1つの芳香環又は複数の縮合された芳香環から構成されている基を表す。好適な基本骨格は、例えばフェニル、ナフチル、アントラセニル又はフェナントレニルである。前記の基本骨格は、非置換であってよい(すなわち、置換可能な全ての炭素原子は水素原子を有する)、又は基本骨格の1つ、複数又は全ての置換可能な位置は置換されていてよい。好適な置換基は、例えば、アルキル基、有利には1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、特に有利にはメチル基、エチル基もしくはi−プロピル基、アリール基、有利にはC6−アリール基(前記基は、更に置換されていてよく又は非置換であってもよい)、ヘテロアリール基、有利には、少なくとも1つの窒素原子を有するヘテロアリール基、特に有利にはピリジル基、アルケニル基、有利には1つの二重結合を有するアルケニル基、特に有利には、1つの二重結合及び1〜8個の炭素原子を有するアルケニル基又はドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基である。ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する好適な基は以下に挙げられるものである。殊に有利には、アリール基は、メチル、F、Cl、CN、アリールオキシ及びアルコキシからなる群から選択される置換基を有する。有利には、アリール残基又はアリール基は、C6〜C18−アリール基、特に有利にはC6−アリール基であり、該アリール基は、場合により上述の置換基の少なくとも1つで置換されている。特に有利には、C6〜C18−アリール基、好ましくはC6−アリール基は、上述の置換基の1又は2つを有し、その際、C6−アリール基の場合に、1つの置換基は、アリール基の他の結合位置に対してオルト位、メタ位又はパラ位に配置されており、かつ2つの置換基の場合に、それぞれアリール基の他の結合位置に対してメタ位又はオルト位に配置されているか又は1つの基がオルト位で1つの基がメタ位で配置されていてよく、又は1つの基がオルトもしくはメタ位に配置され、かつ他の基がパラ位に配置されている。
【0037】
ヘテロアリール残基又はヘテロアリール基とは、アリール基の基本骨格において少なくとも1つの炭素が1つのヘテロ原子によって交換されている点で前記のアリール基と異なる基を表す。有利なヘテロ原子は、N、O及びSである。殊に有利には、アリール基の基本骨格の1又は2つの炭素原子は、ヘテロ原子によって交換されている。特に、電子リッチな系、例えばピリジン及び5員の複素芳香族化合物、例えばピロール、フラン、ピラゾール、イミダゾール、チオフェンから選択される基本骨格が好ましい。該基本骨格は、その基本骨格の1つ、複数又は全ての置換可能な位置で置換されていてよい。好適な置換基は、既にアリール基に関して挙げたのと同じ置換基である。
【0038】
アルキル残基又はアルキル基とは、1〜20個の炭素原子、有利には1〜10個の炭素原子、特に有利には1〜8個の炭素原子を有する基を表すべきである。前記のアルキル基は、分枝鎖状又は非分枝鎖状であってよく、かつ場合により1又は複数のヘテロ原子、有利にはSi、N、O又はS、特に好ましくはN、OもしくはSによって中断されていてよい。更に、前記のアルキル基は、アリール基に関して挙げた置換基1又は複数で置換されていてよい。同様に、該アルキル基は、1つ又は複数のアリール基を有することも可能である。この場合に、前記のアリール基の全てが適している。特に、メチル及びイソプロピルからなる群から選択されるアルキル基が好ましい。
【0039】
アルケニル残基又はアルケニル基とは、少なくとも2個の炭素原子を有する上述のアルキル基に相当するが、アルキル基の少なくとも1つのC−C単結合が1つのC−C二重結合によって交換されていることが異なる基を表すべきである。有利には、アルケニル基は、1又は2つの二重結合を有する。
【0040】
アルケニル残基又はアルケニル基とは、少なくとも2個の炭素原子を有する上述のアルキル基に相当するが、アルキル基の少なくとも1つのC−C単結合が1つのC−C二重結合によって交換されていることが異なる基を表すべきである。有利には、アルキニル基は、1又は2つの三重結合を有する。
【0041】
アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン及びアルケニレンといった概念は、本発明の範囲においては、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基及びアルケニル基に関して挙げた意味を有するが、そのアルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、アルキニレン基及びアルケニレン基が式IIの配位子の原子に対して2つの結合箇所を有するという点で異なるものである。
【0042】
少なくとも2つの原子を有し、そのうち少なくとも1つが炭素原子であり、かつ他の原子が有利には窒素原子又は炭素原子であるY1及びY2から形成される架橋であって、飽和又は有利には不飽和であってよく、かつ少なくとも2つの架橋の原子が置換又は非置換であってよい架橋とは、以下の基を表すべきである:
− 2つの炭素原子を有するか1つの炭素原子と1つの窒素原子を有する架橋であって、炭素原子もしくは炭素原子と窒素原子とが二重結合によって互いに結合されているので、以下の式の1つを有し、有利には2つの炭素原子を有する架橋:
【化7】

[式中、
23、R24、R11及びR11'は、互いに無関係に水素、アルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、アリール又はドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基を意味するか、又は
23及びR24は、一緒になって、全体で3〜5個、有利には4個の原子を有する架橋を形成し、そのうち場合により1又は2つの原子が、ヘテロ原子、有利にはNであってよく、かつ残りの原子は炭素原子なので、この基は、5員ないし7員、有利には6員の環を形成し、該環は、場合により、既に存在する二重結合の他に、1つの他の二重結合を、又は6員又は7員の環の場合には、2つの他の二重結合を有してよく、かつ場合によりアルキル基又はアリール基及び/又はドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基で置換されていてよく、又は縮合されていてよい]。その場合に、6員の芳香族環であることが好ましい。該環は、アルキル基又はアリール基及び/又はドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基で置換されているか又は非置換であってよい。更に、前記の芳香族環、有利には前記の6員の芳香族環に、1又は複数の他の芳香族環が縮合されていてよい。この場合に、それぞれ考えられる縮合が可能である。これらの縮合された基は、更に置換されていてよく、有利にはアリール基の一般的な定義で挙げた基で置換されていてよい。
【0043】
− 2つの炭素原子を有する架橋であって、炭素原子が1つの単結合によって互いに結合されているので、以下の式を有する架橋:
【化8】

[式中、
4、R5、R6及びR7は、互いに無関係に、水素、アルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、アリールもしくはドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基を意味し、有利には水素、アルキル又はアリールを意味する]。
【0044】
ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基もしくは置換基は、本発明の範囲では以下の基を表す:
ドナー作用を有する基とは、+I効果及び/又は+M効果を有する基を表し、かつアクセプター作用を有する基とは、−I効果及び/又は−M効果を有する基を表す。ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する好適な基は、ハロゲン基、有利にはF、Cl、Br、特に好ましくはF、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボニル基、エステル基、オキシカルボニル基もカルボニルオキシ基も、アミン基、アミド基、CH2F−基、CHF2基、CH2F基、CF3基、CN基、チオ基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、ホウ酸基、ホウ酸エステル基、ホスホン酸基、ホスホン酸エステル基、ホスフィン基、スルホキシド基、スルホニル基、スルフィド基、ニトロ基、OCN、ボラン基、シリル基、スタネート基、イミノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、オキシム基、ニトロソ基、ジアゾ基、ホスフィンオキシド基、ヒドロキシ基もしくはSCN基である。殊には、F、Cl、CN、アリールオキシ及びアルコキシが好ましい。
【0045】

【化9】

は、好ましくは
【化10】

[式中、記号は以下の意味を有する:
4、R5、R6、R7、R8、R9、R11及びR11'は、水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキニルもしくはアルケニル又はドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基、好ましくは水素、アルキル、ヘテロアリールもしくはアリールである;
10は、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキニルもしくはアルケニルであるか、又はそれぞれ2つの基R10は、一緒になって、場合により少なくとも1つのヘテロ原子、好ましくはNを有してよい縮合環を形成し、好ましくはそれぞれ2つの基R10は、一緒になって縮合された芳香族C6環を形成し、その際、前記の環、好ましくは6員の芳香族環には、場合により1つ以上の他の芳香族環が縮合されていてよく、その際、それぞれの考えられる縮合が可能であり、かつ縮合された基は、更に置換されていてよく、又はR10は、ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基を意味する;
更に基a中のR4もしくはR5、基b中のR8、基c中の基R10及び基d中のR11は、R1と架橋を介して結合されていてよく、その際、該架橋は、以下の意味を有してよい:
アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−CO及び(CR2122xであり、その際、1つ以上の隣接していない基(CR2122)は、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−COによって置き換えられていてよく、その際、xは、2〜10であり、かつR18、R19、R20、R21、R22、R30、R31は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを意味し、その際、好ましくは適した架橋に該当する例は、前記に示したとおりである(式IIk〜oを参照のこと);
vは、0〜4、好ましくは0、1もしくは2、殊に好ましくは0であり、その際、vが0である場合に、式c中のアリール基の4個の炭素原子は、場合によりR10で置換されているが、それは水素原子を有する;
3は、水素、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基もしくはアルケニル基、好ましくはアルキル基、ヘテロアリール基もしくはアリール基、特に好ましくはアルキル基又は
【化11】

を意味し、式中、Do2'、q′、s′、R3'、R1'、R2'、X′及びp′は、無関係に、Do2、q、s、R3、R1、R2、X及びpと同じ意味を有する]からなる群から選択される。
【0046】
式IIのカルベン配位子の基
【化12】

は、好ましくは構造
【化13】

[式中、記号は以下の意味を有する:
Zは、CHもしくはNであり、その際、記号Zの0〜3、好ましくは0〜2、特に好ましくは0又は1は、Nを意味してよく、かつZは、1つの記号ZがNを意味する場合には、それは該基と基
【化14】

との結合箇所に対してo位、m位もしくはp位で、好ましくはo位もしくはp位で、配置されていてよい;
12は、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基、アルケニル基、好ましくはアルキル基もしくはアリール基であり、又はそれぞれ2つの基R12は、一緒になって、場合により少なくとも1つのヘテロ原子、好ましくはNを有してよい縮合環を形成し、好ましくはそれぞれ2つの基R12は、一緒になって縮合された芳香族C6環を形成し、その際、前記の環に、好ましくは6員の芳香族環に、場合により1つ以上の他の芳香族環が縮合されていてよく、その際、それぞれの考えられる縮合が可能であり、かつ前記の縮合された基は、再び置換されていてよく、又はR12は、ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基を意味する;
更に、構造
【化15】

の基は、芳香族の基本体を介してもしくは基R12の1つを介してY1と1つの架橋を介して結合されていてよく、その際、該架橋は以下の意味を有する:
アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−CO及び(CR2122xであり、その際、1つ以上の隣接していない基(CR2122)は、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−COによって置き換えられていてよく、その際、xは2〜10であり、かつR18、R19、R20、R21、R22、R30、R31は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを意味する;
tは、0〜4であり、その際、tが1より大きい場合に、基R12は同一もしくは異なってよく、好ましくはtは、0もしくは1であり、基R12がスペーサーXとの結合箇所に対してオルト位、メタ位もしくはパラ位で存在するのは、tが1の場合であり、もしくはpが0の場合に、カルベン炭素原子と隣接する窒素原子との結合箇所に対してその位置で存在する]を有する。
【0047】
式IIのカルベン配位子において、Y3は、上記に定義した基と同一又はそれとは異なってよく、かつ以下の、既に上述した意味を有してよい:
3は、水素、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基又はアルケニル基、有利にはアルキル基、ヘテロアリール基又はアリール基又は
【化16】

[式中、Do2'、q′、s′、R3'、R1'、R2'、X′及びp′は、無関係に、Do2、q、s、R3、R1、R2、X及びpと同じ意味を有する]を意味する。
【0048】
式IIで示され、その式中、式
【化17】

の基が構造
【化18】

を意味し、かつY3
【化19】

を意味し、Z′がZに関して挙げた意味を有してよいカルベン配位子の他に、カルベン配位子であって、式
【化20】

が構造
【化21】

を意味し、かつY3が水素、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基もしくはアルケニル基、好ましくはアルキル基、ヘテロアリール基もしくはアリール基、特に好ましくはアルキル基を意味するものが適している。
【0049】
記号の定義は、上述の定義に相当する。
【0050】
特に好ましいのは、
【化22】

[式中、記号は以下の意味を有する:
Z、Z′、Z′′は、同一もしくは異なってCHもしくはNであり、その際、
Zの場合に、記号Zの0〜2が、有利には0もしくは1がNを意味してよく、かつZは、1つの記号ZがNを意味する場合に、その基の基
【化23】

との結合箇所に対してo位もしくはp位で、好ましくはp位で配置されていてよい;
Z′の場合に、記号Z′の0〜2が、有利には0もしくは1がNを意味してよく、かつZ′は、1つの記号Z′がNを意味する場合に、その基の基
【化24】

との結合箇所に対してo位もしくはp位で、好ましくはp位で配置されていてよい;
Z′′の場合に、記号Z′′の0〜4が、好ましくは0〜3が、特に好ましくは0〜2が、殊に好ましくは0もしくは1がNを意味してよい;
12、R12'は同一もしくは異なって、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基もしくはアルケニル基、好ましくはアルキル基もしくはアリール基であり、又はそれぞれの2つの基R12もしくはR12'は、一緒になって、場合により少なくとも1つのヘテロ原子、有利にはNを有してよい縮合環を形成し、好ましくはそれぞれ2つの基R12もしくはR12'は、一緒になって縮合された芳香族のC6環を形成し、その際、前記環に、好ましくは6員の芳香族環に、場合により1つ以上の他の芳香族環が縮合されていてよく、その際、それぞれ考えられる縮合が可能であり、かつ縮合された基は、再び置換されていてよい、又はR12もしくはR12'は、ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基を意味する;
t及びt′は、0〜4であり、その際、tもしくはt′が1より大きい場合に、基R12もしくはR12'は、同一もしくは異なってよく、好ましくはtもしくはt′は0もしくは1であり、基R12もしくはR12'は、tもしくはt′が1である場合に、カルベン炭素原子に隣接する窒素原子との結合箇所に対してオルト位、メタ位もしくはパラ位で存在する;
4、R5、R6、R7、R8、R9、R11及びR11'は、水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキニルもしくはアルケニル又はドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基、好ましくは水素、アルキル、ヘテロアリールもしくはアリールである;
10は、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキニルもしくはアルケニル、好ましくはアルキル、ヘテロアリールもしくはアリールであるか、又はそれぞれ2つの基R10は、一緒になって、場合により少なくとも1つのヘテロ原子、有利にはNを有してよい縮合環を形成し、好ましくはそれぞれ2つの基R10は、一緒になって、縮合された芳香族のC6環を形成し、その際、前記の環に、好ましくは6員の芳香族環に、場合により1つ以上の他の芳香族環が縮合されていてよく、その際、それぞれの考えられる縮合が可能であり、かつ縮合された基は、再び置換されていてよく、又はR10は、ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基を意味する;
更に、構造
【化25】

の基は、芳香族の基本体を介して又は基R12の1つを介して、基a及びfにおいては、R4もしくはR5又はR4とR5が結合されている炭素原子と、基b及びgにおいては、R8又はR8が結合されている炭素原子と、基c及びhにおいては、基R10の1つ又はR10が結合されている炭素原子の1つと、そして基d及びiにおいては、R11又はR11が結合されている炭素原子と、1つの架橋を介して結合されていてよく、その際、該架橋は、以下の意味を有してよい:
アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−CO及び(CR2122xであり、その際、1つ以上の隣接していない(CR2122)は、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−COによって置き換えられていてよく、その際、xは、2〜10であり、かつR18、R19、R20、R21、R22、R30、R31は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを意味し、その際、構造
【化26】

の基が、架橋を介して、R4及びR5が結合されている炭素原子(基a及びf)と、R8が結合されている炭素原子(基b及びg)と、R10が結合されている炭素原子(基c及びh)と、又はR11が結合されている炭素原子(基d及びi)と結合されている場合に、それぞれの基R4もしくはR5、R8、基R10もしくはR11の1つは、1つの結合によって置き換えられて架橋となる;
vは、0〜4、好ましくは0、1もしくは2、殊に好ましくは0であり、その際、vが0である場合に、式c及びh中のアリール基の4つ炭素原子は、場合によりR10によって置換されていてよいが、水素原子を有する;
3は、水素、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基もしくはアルケニル基、好ましくはアルキル基、ヘテロアリール基もしくはアリール基、特に好ましくはアルキル基である]からなる群から選択される式IIの少なくとも1つのカルベン配位子である。
【0051】
本発明による方法により製造される式Iの遷移金属錯体は、配位数6を有する金属原子M1が使用される場合には、facial異性体又はmeridional異性体として又はfacial異性体とmeridional異性体の任意の量比からなる異性体混合物として存在するが、それはその錯体が上述のような組成MA33を有する場合である。例えば、式Iで示され、nが3を意味し、かつm及びoが0を意味する遷移金属錯体のfacial異性体とmeridional異性体が可能である。式Iの遷移金属錯体が組成MA24を有する場合については、該遷移金属錯体は、上述のような任意の量比のシス/トランス異性体の形で存在してよい。式Iの錯体のシス/トランス異性体は、例えば、M1が配位数6を有する金属原子であり、かつnが2を意味し、かつmが2を意味し、その際、両方の一座配位子Lが同じであり、kつoが0である場合か又はoが2を意味し、かつ両方の一座配位子Kが同じであり、かつmが0である場合に可能である。
【0052】
中性の遷移金属原子が配位数6を有するIr(III)である遷移金属錯体については、有利なモノアニオン性の二座のカルベン配位子の数nは、少なくとも1で最大3である。有利には、有利に使用されるモノアニオン性の二座のカルベン配位子の数は、2又は3、特に有利には3である。その際、nが1より大きい場合には、カルベン配位子は、同一又は異なってよい。
【0053】
式Iの遷移金属錯体は、配位数4を有する金属原子M1が使用され、それが正方平面錯体を形成する場合には、シス異性体又はトランス異性体として又はシス異性体又はトランス異性体からなる任意の量比の異性体混合物として存在しうるが、それはその錯体が上述のような組成MA22を有する場合である。例えば、式Iの遷移金属錯体のシス/トランス異性体は、nが2を意味し、かつm及びoが0を意味する場合に可能である。
【0054】
中性の遷移金属原子が配位数4を有するPt(II)である遷移金属錯体については、モノアニオン性の二座の配位子の数nは、1又は2、有利には1である。その際、n2である場合には、カルベン配位子は、同一又は異なってよい。
【0055】
殊に好ましくは、本発明による方法によって、式中のM1がIr(III)であり、それが配位数6を有する遷移金属錯体が製造される。殊に、nは前記のIr(III)錯体の場合には3であり、mは0であり、oは0であり、qは0であり、pは0であり、Do1がNであり、rが1であることが好ましく、その際、他の記号は、既に上述した意味を有する。
【0056】
式Iのシクロメタル化されたカルベン錯体は、本発明によれば、一般式(III)
【化27】

[式中、
-は、モノアニオン性の対イオン、好ましくはハロゲン化物イオン、例えばF-、Cl-、Br-、I-、擬ハロゲン化物イオン、BF4-、BPh4-、PF6-、AsF6-もしくはSbF6-、特に好ましくはハロゲン化物イオン、例えばF-、Cl-、Br-、I-もしくはBF4-、殊に好ましくはI-もしくはBF4-である;及び
Gは、Do2がCである場合に、Hを意味し、かつDo2がN、S、OもしくはPである場合に、H又は自由電子対を意味する;
他の式IIIの配位子前駆体中の記号は、式IIの配位子に関して挙げられた意味を有する]の配位子前駆体の反応によって得られ、その際、前記の反応は、塩基及びAg、Hg、Sb、Mg、B及びAlの塩から選択される補助試薬の使用(経路A)を含み、又はAg、Hg、Sb、Mg、B及びAlからなる群から選択される少なくとも1つの金属を有する塩基性の補助試薬の使用(経路B)を含み、その際、前記の一般式IIIの配位子前駆体は、
(A)塩基、少なくとも1つの金属M1を有する金属錯体及び補助試薬と反応させる(経路A)、又は
(B)塩基性の補助試薬と反応させ、その際、保護されたカルベンが得られ、引き続きその保護されたカルベンを、少なくとも1つの金属M1を有する金属錯体と反応させる(経路B)。
【0057】
式IIIの配位子前駆体の製造は、当業者に公知の方法に従って行われる。好適な方法は、例えばWO2005/019373号及びそこに引用される文献、例えばOrganic Letters,1999,1,953−956;Angewandte Chemie,2000,112,1672−1674に挙げられている。他の好適な方法は、例えばT.Weskamp他著のJ.Organometal.Chem.2000,600,12−22;G.Xu他著のOrg.Lett.2005,7,4605−4608;V.Lavallo他著のAngew.Chem.Int.Ed.2005,44,5705−5709に挙げられている。好適な幾つかの配位子前駆体は市販されている。
【0058】
本発明による方法によれば、式IIIの配位子前駆体の反応は、塩基及び補助試薬(経路A)の存在下で、又は塩基性の補助試薬(経路B)の存在下で行われる。本発明による方法では、式Iのシクロメタル化された金属錯体が良好な収率で得られることが判明した。
【0059】
本発明による方法の好ましい一実施態様においては、少なくとも1つの金属M1を有する金属錯体、式IIIの配位子前駆体、塩基及び補助試薬(経路A)又は少なくとも1つの金属M1を有する金属錯体、式IIIの配位子前駆体及び塩基性の補助試薬(経路B)は、規定の比率で互いに使用される。
【0060】
本発明による方法の経路Aに関しては、少なくとも1つの金属M1を有する金属錯体、式IIIの配位子前駆体、塩基及び補助試薬の比率は、金属原子M1とカルベン配位子の数nにあたり、1:1〜10:1〜10:0.5〜15、特に有利には1:1〜5:1〜5:1〜7、殊に好ましくは1:1〜2:1〜2:1〜1.5である。
【0061】
本発明による方法の経路Bに関しては、少なくとも1つの金属M1を有する金属錯体、式IIIの配位子前駆体及び塩基性の補助試薬の比率は、金属原子M1とカルベン配位子の数nにあたり、1:1〜10:0.5〜5、特に有利には1:1〜5:0.5〜2.5、殊に好ましくは1:1〜3:0.5〜1.5である。
【0062】
一般に、本発明による方法は、溶剤中で行われる。その際、溶剤という概念は、単独の溶剤も、溶剤混合物も意味する。好ましくは、非プロトン性溶剤が使用される。特に好ましくは、溶剤は、ジオキサン、ブタノン、THF、トルエン、キシレン、DMF、アセトニトリル、DMSO、NMP及びピリジンからなる群から選択される少なくとも1つの溶剤から選択される。殊に好ましくは、単独の溶剤としてジオキサンを含有するか、又はそれを上述の溶剤の1つとの混合物で含有する溶剤が使用される。驚くべきことに、本発明による方法の実施に際して、ジオキサンを含有する溶剤中で特に良好な収率を達成できることが判明した。
【0063】
本発明による方法は、一般に、60〜200℃、好ましくは70〜150℃の温度で実施される。
【0064】
少なくとも1つの金属M1を有する金属錯体は、Ir、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Fe、Ru、Os、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Cu及びAu、好ましくはIr、Os、Ru、Rh、Pd、Co及びPt、特に好ましくはIr、Pt、Rh及びOs、殊に好ましくはIrのそれぞれの相応の金属原子について可能な酸化段階のもの、好ましくはIr(I)もしくはIr(III)、特に好ましくはIr(I)からなる群から選択される少なくとも1つの金属を有する金属錯体である。好適な金属錯体は、当業者に公知である。好適な金属錯体のための例は、Pt(cod)Cl2、Pt(cod)Me2、Pt(acac)2、Pt(PPh32Cl2、PtCl2、[Rh(cod)Cl]2、Rh(acac)CO(PPh3)、Rh(acac)(CO)2、Rh(cod)2BF4、RhCl(PPh33、RhCl3×nH2O、Rh(acac)3、[Os(CO)322、[Os3(CO)12]、OsH4(PPH33、Cp2Os、Cp*2Os、H2OsCl6×6H2O、OsCl3×H2O並びに[(μ−Cl)Ir(η4−1,5−cod)]2、[(μ−Cl)Ir(η2−coe)22、Ir(acac)3、IrCl3×nH2O、(tht)3IrCl3、Ir(η3−アリル)3、Ir(η3−メタリル)3であり、その際、codは、シクロオクタジエンを意味し、coeは、シクロオクテンを意味し、acacは、アセチルアセトネートを意味し、thtは、テトラヒドロチオフェンを意味する。金属錯体は、当業者に公知の方法によって製造でき、もしくは市販されている。
【0065】
一般式Iのイリジウム(III)錯体(式I中のM1がIrである)の製造に際して、それは本願によれば特に好ましいが、例えばイリジウム(I)錯体もしくはイリジウム(III)錯体が使用され、特に[(μ−Cl)Ir(η4−1,5−cod)]2、[(μ−Cl)Ir(η2−coe)22、Ir(acac)3、IrCl3×nH2O、(tht)3IrCl3、Ir(η3−アリル)3、Ir(η3−メタリル)3が使用され、その際、codは、シクロオクタジエンを意味し、coeは、シクロオクテンを意味し、acacは、アセチルアセトネートを意味し、thtは、テトラヒドロチオフェンを意味する。特に好ましくは、Ir(I)錯体が、特に好ましくは[(μ−Cl)Ir(η4−1,5−cod)]2もしくは[(μ−Cl)Ir(η2−coe)22が使用される。
【0066】
本発明による方法における経路Aで使用される補助試薬並びに経路Bで使用される塩基性の補助試薬は、Ag、Hg、Sb、Mg、B及びAl、好ましくはAgからなる群から選択される金属を有する。
【0067】
経路A
本発明による方法は、経路Aによれば、一般式IIIの配位子前駆体と、塩基、少なくとも1つの金属M1を有する金属錯体及びAg、Hg、Sb、Mg、B及びAlの塩から選択される補助試薬との反応を含む。
【0068】
少なくとも1つの金属M1を有する金属錯体、式IIIの配位子前駆体、塩基及び補助試薬の好適な比率、好適な溶剤、好適な反応温度並びに好適な少なくとも1つの金属M1を有する金属錯体は、既に上述したものである。
【0069】
好適な経路Aにより使用される補助試薬は、上述の金属(Ag、Hg、Sb、Mg、B及びAl、好ましくはAg)の塩から選択される。好適な塩は、前記の金属の無機塩、例えばテトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロボレート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセネート、チオシアネート、シアネート、ニトレート、スルフェートもしくはペルクロレートもしくは前記の金属の有機塩、例えばトリフルオロアセテートもしくはトリフレートである。その際、上述の補助試薬は、単独で又は2つ以上の補助試薬の混合物の形で使用することができる。
【0070】
好ましくは経路Aで使用される補助試薬は、Ag(I)塩である。好適なAg(I)塩は、例えば無機塩、例えばAgBF4、AgPF6、AgSbF6、AgAsF6、AgSCN、AgOCN、AgNO3、Ag2SO4、AgClO4及び有機塩、例えばAg(COOCF3)、Ag(OTf)である。殊に好ましくは、AgBF4及びAgPF6である。
【0071】
塩基としては、本発明による方法の経路Aにおいては、好ましくはアルカリ金属−シリルアミド、アルカリ金属−アルコレート、アルカリ金属−ヒドリド、アルカリ金属−アセテート、アルカリ金属−ヒドロキシド、アルカリ金属−カーボネート、グリニャール化合物、アルキル金属化合物及び窒素含有塩基から選択される塩基が使用される。その際、上述の補助試薬は、単独で又は2つ以上の補助試薬の混合物の形で使用することができる。特に好ましくは、KHMDS、NaHMDS、LiHMDS、KOtBu、NaOtBu、LiOtBu、NaH、KOAc、NaOAc、LiOAc、NEt3、BuLi、RMgHal(式中、Rは、アルキル、アリール、アルケニルを意味する)、KOH、NaOH、LiOH、Cs2CO3、K2CO3、Na2CO3、Li2CO3、ピリジン及びDBUからなる群から選択される1つ以上の塩基が使用される。殊に好ましくは、KHMDS、NaHMDS及び/又はLiHMDSが塩基として使用される。
【0072】
経路Aによる反応時間は、一般に1〜100時間、好ましくは1〜48時間である。
【0073】
経路Aによる反応は、一段階もしくは多段階で行うことができる。
【0074】
一段階の反応は、一般に、一般式IIIの配位子前駆体、塩基、少なくとも1つの金属を有する金属錯体及び補助試薬を溶剤中で一緒にし、引き続き上述の反応温度に加熱することで行われる。上述の反応時間の後に、溶剤を一般に当業者に公知の方法により、通常は真空中で除去し、そして残りの残留物を、当業者に公知の方法に従って後処理及び/又は精製する。通常は、その後処理及び精製は、抽出、カラムクロマトグラフィー及び/又は再結晶化によって当業者に公知の方法に従って行われる。
【0075】
多段階の反応の場合に、当業者に公知の全ての添加順序が可能である。好ましい一実施態様においては、多段階の反応は、以下の工程:
(i)式IIIの配位子前駆体と、塩基とを反応させ、その際、反応混合物が得られる、
(ii)少なくとも1つの金属M1を有する金属錯体と、補助試薬とを反応させ、その際、反応混合物が得られる、
(iii)工程(i)で得られる反応混合物と、工程(ii)で得られる反応混合物とを反応させ、
その際、式Iのシクロメタル化された金属錯体が得られる
に従って行われる。
【0076】
該反応は、有利には上述の溶剤もしくは溶剤混合物中で行われる。好適な一般式IIIの配位子前駆体、塩基、少なくとも1つの金属M1を有する金属錯体及び補助試薬は、既に上述したものである。
【0077】
工程(iA)
工程(iA)中での反応は、有利には室温で、上述の溶剤もしくは溶剤混合物中で行われる。一般に、一般式IIIの配位子前駆体と、塩基とを混合し、そして得られた反応混合物を室温で撹拌する。
【0078】
工程(iiA)
工程(iiA)での反応は、一般に同様に室温で行われる。一般に、少なくとも1つの金属M1を有する金属錯体及び補助試薬は、上述の溶剤もしくは溶剤混合物と混合し、そして該混合物を室温で撹拌する。
【0079】
工程(iiiA)
工程(iiiA)においては、工程(iA)で得られた反応混合物を工程(iiA)で得られた反応混合物に添加することが行われる。基本的に、同様に、工程(iiA)で得られた反応混合物を、工程(iA)で得られた反応混合物に添加することも可能である。一般に、前記の添加は、室温で行われ、引き続き上述の反応温度に加熱される。
【0080】
上述の反応時間の後に、溶剤を、一般に当業者に公知の方法により、好ましくは真空中で除去する。引き続き、反応生成物を、一段階法に関して上述したのと同様に後処理及び/又は精製する。
【0081】
それぞれ工程(iA)もしくは(iiA)の後に得られた反応生成物は、直接的に(後処理せずに)使用できる又は後処理できる。一般に、後処理は行われず、それぞれ得られた反応生成物は、工程(iiiA)で直接的に使用される。
【0082】
本発明による塩基及び補助試薬の使用を含む経路Aによる方法によって、所望の一般式のシクロメタル化されたカルベン錯体が、良好な収率及び高い純度で得られる。
【0083】
更に、本発明は、Ag、Hg、Sb、Mg、B及びAlからなる群から選択される少なくとも1つの金属を有する塩から選択される補助試薬を、塩基と一緒に、シクロメタル化されたカルベン錯体の製造方法において用いる使用に関する。
【0084】
好ましい補助試薬及び塩基並びに好ましいシクロメタル化されたカルベン錯体の製造方法は、上述したものである。
【0085】
経路B
本発明による方法は、経路Bによれば、一般式IIIの配位子前駆体と、Ag、Hg、Sb、Mg、B及びAlからなる群から選択される少なくとも1つの金属を有する塩基性の補助試薬との反応を含み、その際、保護されたカルベンが得られ、引き続き当該保護されたカルベンと、少なくとも1つの金属M1を有する金属錯体との反応を含む。
【0086】
少なくとも1つの金属M1を有する金属錯体、式IIIの配位子前駆体、及び塩基性の補助試薬の好適な比率、好適な溶剤、好適な反応温度並びに好適な少なくとも1つの金属M1を有する金属錯体は、既に上述したものである。
【0087】
塩基性の補助試薬は、上述の金属(Ag、Hg、Sb、Mg、B及び/又はAl、好ましくはAg)を含有する。好適な塩基性の補助試薬は、前記の金属の酸化物、炭酸塩、酢酸塩及び/又は硫化物、Ag2O、Ag2CO3、AgOAc及び/又はAg2Sである。更なる好ましい一実施態様においては、上述の金属の酸化物、特に好ましくは酸化銀(I)、Ag2Oが使用される。
【0088】
経路Bによる反応時間は、一般に1〜100時間、好ましくは6〜56時間である。
【0089】
本発明による方法の経路Bによる反応は、多段階的に、以下の工程:
(iB)一般式IIIの配位子前駆体と、Ag、Hg、Sb、Mg、B及びAlからなる群から選択される少なくとも1つの金属を有する塩基性の補助試薬とを反応させ、その際、金属−カルベン錯体が得られる、
(iiB)引き続き、該金属−カルベン錯体と、少なくとも1つの金属M1を有する金属錯体とを反応させ、
その際、式Iのシクロメタル化された金属錯体が得られる、
に従って行われる。
【0090】
該反応は、有利には上述の溶剤もしくは溶剤混合物中で行われる。好適な一般式IIIの配位子前駆体、少なくとも1つの金属M1を有する金属錯体及び塩基性の補助試薬は、既に上述したものである。
【0091】
工程(iB)
工程(iB)中での反応は、有利には室温で、上述の溶剤もしくは溶剤混合物中で行われる。その際、金属−カルベン錯体が得られる。
【0092】
工程(iiB)
工程(iB)で得られる金属−カルベン錯体を、工程(iiB)において、少なくとも1つの金属M1を有する金属錯体と反応させる。好ましい実施態様においては、少なくとも1つの金属M1を有する金属錯体を、工程(iB)で得られた金属−カルベン錯体に添加する。該反応混合物を、上述の温度で撹拌する。
【0093】
上述の反応時間の後に、通常生成する沈殿物を、一般に濾別し、そして好ましくは使用される溶剤もしくは溶剤混合物で洗浄する。得られた濾液を、一般には当業者に公知の方法に従って、通常は真空中での溶剤の除去によって濃縮乾涸させる。得られた反応生成物を、一般に更に後処理及び/又は精製する。
【0094】
通常は、その後処理及び精製は、抽出、カラムクロマトグラフィー及び/又は再結晶化によって当業者に公知の方法に従って行われる。
【0095】
工程(iB)で得られる金属−カルベン錯体は、直接的に(後処理せずに)使用でき、又は後処理することができる。一般に、得られた金属−カルベン錯体は、更なる後処理及び/又は精製なくして、後続の工程(iiB)で使用される。
【0096】
本発明による塩基性の補助試薬の使用を含む経路Bによる二段階法によって、所望の一般式Iのシクロメタル化されたカルベン錯体が、良好な収率及び高い純度で得られる。
【0097】
本発明による工程AもしくはBによる方法を、式Iのシクロメタル化されたカルベン錯体を製造するために使用する場合には、それらはシス/トランス異性体もしくはfac−mer異性体(facial/meridional異性体)を形成しうるが、それは本発明による方法によれば、一般にシス/トランス異性体の混合物又はfac−mer異性体(facial/meridional異性体)の混合物が得られる。これらの異性体混合物は、当業者に公知の方法によって分離できるので、それぞれ純粋なシスもしくはトランス異性体あるいは、fac異性体もしくはmer異性体が得られる。
【0098】
次の実施例は本発明を更に説明する。
【0099】
実施例
錯体合成のための方法A:
(ベンゾ)イミダゾリウム塩(5当量)をジオキサン中に入れた懸濁液を、アルゴン下で、30分以内でカリウム−ビス(トリメチルシリル)アミド(トルエン中0.5M;5当量)と混合する。それを室温で1時間撹拌してから、該混合物を30分以内で、アルゴン下に、1,5−シクロオクタジエン−イリジウム(I)クロリド−二量体(0.5当量)及びAgBF4(1当量)をジオキサン中に入れた懸濁液に添加する。引き続き、該反応混合物を室温で1時間、70℃で2時間、そして還流下で22時間撹拌する。
【0100】
錯体合成のための方法B:
(ベンゾ)イミダゾリウム塩(5当量)及び酸化銀(I)(2.5当量)をジオキサン中に入れた懸濁液を、室温で16時間アルゴン下で撹拌する。該混合物を、1,5−シクロオクタジエン−イリジウム(I)クロリド−二量体(0.5当量)と混合し、そして還流下で16時間撹拌する。室温に冷却した後に、沈殿物を濾別し、そしてジオキサンで洗浄する。洗浄した濾液を、濃縮乾涸させ、そして粗生成物をカラムクロマトグラフィーによって塩基性酸化アルミニウムによって精製する。
【0101】
実施例1 Ir(cn−pmic)3の合成
1−(4−シアノフェニル)イミダゾールの合成
窒素に移行させつつ、1500mLの乾燥ジメチルホルムアミド(DMF)を1000mLの四ツ口フラスコに装入し、そして72.67g(0.6モル)の4−フルオロ−シアノベンゼン及び61.2g(0.9モル)のイミダゾール並びに最後に21.6g(0.9モル)の水素化ナトリウムを添加する。該反応混合物を、100℃に加熱し、この温度で4時間撹拌し、そして引き続き室温で一晩撹拌する。該反応混合物を、次いで水に注ぎ、そして得られた混合物をジクロロメタンで複数回抽出する。有機相を乾燥させ、回転蒸発器で濃縮し、最後に真空中で60℃で後乾燥させる。収量は94g(理論値の93%)である。
【0102】

【0103】
1−(4−シアノフェニル)−3−メチルイミダゾリウムヨージドの合成
56g(0.33モル)の1−(4−シアノフェニル)イミダゾールを、2000mLの冷却器を備えた一ツ口フラスコ中で560mLの無水テトラヒドロフラン中に溶解させ、234.2g(1.65モル)のヨウ化メチルと混合し、短時間撹拌し、更に撹拌することなく48時間放置する。固体のフラスコ内容物を、引き続きエタノールでスラリー化し、吸引分離し、そしてエタノールで、排出液が実質的に無色になるまで洗浄する。残留物を70℃で真空中で乾燥させる。収量は81.54g(理論値の80%)である。
【0104】

【0105】
mer−トリス[1−(4′−シアノフェニル)−3−メチルイミダゾール−2−イリデン−C2,C2']イリジウム(III)の合成
【化28】

【0106】
合成方法1:
生成物を方法Aにより製造する。溶剤を真空中で除去し、そして残りの残留物を塩化メチレンで抽出する。抽出物から、カラムクロマトグラフィーによる精製により、生成物が帯黄色の粉末(理論値の58%)として得られる。
【0107】
合成方法2:
生成物を、方法Bに従って製造し、そしてジクロロメタンで溶出させる。得られた異性体混合物を、酢酸エステル/シクロヘキサン9:1でのシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーによってもしくはアセトニトリルからの分別沈殿によって分離する。収率:75%のmer異性体及び4%のfac異性体。
【0108】
比較例1:
合成方法3(方法Bと同じであるがAg塩を用いない):
500mlの3つ口フラスコ中で、10g(32ミリモル)のイミダゾリウムヨージドを150mLのジオキサン中で装入し、そして室温で30分以内で、64.3mLのカリウム−ビス(トリメチルシリル)アミド(トルエン中0.5M、32ミリモル)を添加する。それを室温で1時間撹拌してから、該混合物を30分以内で、アルゴン下に、2.16g(3.2ミリモル)の1,5−シクロオクタジエン−イリジウム(I)クロリド−二量体を200mLのジオキサン中に入れた懸濁液に添加する。該反応混合物を室温で1時間、70℃で2時間、そして還流下で22時間撹拌する。該バッチを引き続き濃縮乾涸させ、そして残留物を塩化メチレンで抽出する。抽出物から、カラムクロマトグラフィーによる精製により、生成物が帯黄色の粉末(理論値の24%)として得られる。
【0109】
所望の生成物の収率は、比較例1においては、本発明による方法での実施例1(合成方法1及び2)におけるよりも明らかに低い。
【0110】

【0111】
実施例2 Ir(cn−pmbic)3の合成
1−(4−シアノフェニル)ベンゾイミダゾールの合成(K.Nishiura、Y.Urawa、S.Soda著のAdv.Synth.Catal.2004,346,1679)
水素化ナトリウム(鉱油中60%;24.0g、0.60モル)を、フラスコ中に装入し、そしてN,N−ジメチルホルムアミド(80ml)と混合する。この懸濁液に、1時間にわたってベンゾイミダゾール(73.3g、0.60モル)をN,N−ジメチルホルムアミド(250ml)中に溶かした溶液を滴加する。H2発生が終わった後に、4−クロロベンゾニトリル(55.6g、0.40モル)を添加し、そして引き続き10.5時間にわたり130℃に加熱する。室温に冷却した後に、反応混合物を水(4L)に添加し、そして形成された残留物を吸引分離し、水で洗浄し、そして真空中で乾燥させる。90.6gの1−(4−シアノフェニル)ベンゾイミダゾールが得られ、それはまだ鉱油の不純物を含有する。
【0112】

【0113】
1−(4−シアノフェニル)−3−メチルベンゾイミダゾリウムヨージドの合成
1−(4−シアノフェニル)ベンゾイミダゾール(90g、鉱油によって軽く汚染)を、THF(250ml)中に装入し、ヨウ化メチル(116g、0.82モル)と混合し、そして25.5時間にわたり40℃で放置する。形成された残留物を濾別し、エタノールで洗浄し、そして真空中で乾燥させる。123gの1−(4−シアノフェニル)−3−メチル−ベンゾイミダゾリウムヨージドが得られる。
【0114】

【0115】
mer−トリス[1−(4′−シアノフェニル)−3−メチルベンゾイミダゾール−2−イリデン−C2、C2']−イリジウム(III)
【化29】

【0116】
合成方法1:
生成物を方法Aにより製造する。溶剤を真空中で除去し、そして残りの残留物を塩化メチレンで抽出する。抽出物から、カラムクロマトグラフィーによる精製により、生成物が帯黄色の粉末(理論値の60%)として得られる。
【0117】
合成方法2:
生成物を、方法Bに従って製造し、そして酢酸エステル/メタノール2:1で溶出させる。収率:65%。
【0118】

【0119】
熱重量分析/示差熱分析(加熱速度:5K/分):約30℃以降で溶剤を損失;約410℃で分解開始。HPLC:>99.8FI%(カラム:Purospher Star Si 5μm、溶出剤:ヘプタン/イソプロパノール=65/35(容量%))。
【0120】
実施例3 Ir(pmic)3の合成
mer−トリス[1−フェニル−3−メチルイミダゾール−2−イリデン−C2,C2']イリジウム(III)の合成
【化30】

【0121】
配位子合成は、WO2005/113704号を参照のこと。
【0122】
合成方法1(二段階方法、経路B)
生成物を、方法Bに従って製造し、そして酢酸エステル/シクロヘキサン1:1で溶出させる。収率:64%。
【0123】

【0124】
比較例3:
合成方法2(ワンポット法でAg2Oを用いる)
(T.Sajoto他著のInorg.Chem.2005,44,7992−8003)
50mlの丸底フラスコを、酸化銀(I)(0.076g、0.328モル)、1−フェニル−3−メチルイミダゾリウムヨージド(0.109g、0.381ミリモル)、三塩化イリジウム水和物(0.029g、0.097ミリモル)及び20mLの2−エトキシエタノールで充填する。該反応混合物を、撹拌し、油浴によって120℃に15時間窒素下で加熱し、その際、該反応混合物は、アルミニウム箔で光から保護する。反応混合物を、室温に冷却し、そして減圧下で濃縮する。銀(I)塩を除去するために、ジクロロエタンを溶出物として用いてセライトを介して濾過する。溶剤を真空中で除去した後に、白色の固体が得られ、それをメタノールで洗浄する。0.016g(24%の収率)のmeridionalのトリス−イリジウム錯体が白色の固体の形で得られる。
【0125】
所望の生成物の収率は、比較例3においては、本発明による方法での実施例3におけるよりも明らかに低い。
【0126】
実施例4 Ir(cl−pmic)3の合成
1−(4−クロロフェニル)イミダゾールの合成
(S.U.Son、I.K.Park、J.Park、T.Hyeon著のChem.Commun.2004,778)
1−クロロ−4−フルオロベンゼン(16.3g、124ミリモル)及びイミダゾール(5.0g、73.4ミリモル)を、N,N−ジメチルホルムアミド(30mL)中に溶解させ、そして撹拌しつつ水素化ナトリウム(鉱油中60%;3.82g、95.4ミリモル)と混合し、そして130℃に5時間加熱する。冷却した後に、反応混合物をゆっくりと水に添加する。形成された沈殿物を、引き続き濾別し、石油エーテルで洗浄し、引き続き真空中で乾燥させる。10.3gの1−(4−クロロフェニル)イミダゾールが得られる。
【0127】

【0128】
1−(4−クロロフェニル)−3−メチルイミダゾリウムヨージドの合成
1−(4−クロロフェニル)イミダゾール(0.37g、2.07ミリモル)を、THF(5mL)中に溶解させ、そして引き続きヨウ化メチル(1.47g、10.4ミリモル)と混合し、そして20時間にわたり放置する。形成された沈殿物を、引き続き濾別し、エタノール並びに石油エーテルで洗浄し、引き続き真空中で乾燥させる。0.46gの1−(4−クロロフェニル)−3−メチル−イミダゾリウムヨージドが得られる。
【0129】

【0130】
mer−トリス[1−(4′−クロロフェニル)−3−メチルイミダゾール−2−イリデン−C2,C2']イリジウム(III)の合成
【化31】

【0131】
生成物を方法Aにより製造する。冷却した後に、沈殿物を濾別し、そして濾液をカラムクロマトグラフィーによる精製に供する。生成物が白色の粉末(理論値の79%)として得られる。
【0132】

【0133】
実施例5 Ir(pymic)3の合成
1−(4′−ピリジル)−3−メチルイミダゾリウム−クロリドの合成
4−クロロピリジン−塩酸塩(91.6g、0.61モル)を飽和炭酸水素ナトリウム溶液と混合し、そしてジクロロメタンで4回抽出する。精製した有機相を、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、そして濃縮乾涸させる。得られた油状物(52.7g、0.46モル)を、メチルイミダゾール(38.1g、0.46モル)と混合し、そして130℃で6時間撹拌する。室温に冷却した後に、該混合物をエタノール中に溶解させ、そして生成物をn−ヘキサンの添加によって沈殿させる。収量:56.7g(0.29モル、63%)。
【0134】

【0135】
mer−トリス[1−(4′−ピリジル)−3−メチルイミダゾール−2−イリデン−C2,C2']−イリジウム(III)の合成
【化32】

【0136】
生成物を方法Bに従って溶剤としてピリジン中で製造し、そしてイソブタノールで溶出させる。収率:46%。
【0137】

【0138】
実施例6 Ir(pombic)3の合成
2−[(2,6−ジニトロフェニル)アミノ]フェノールの合成
【化33】

【0139】
その製造は、F.Ullman,G.Engi,N.Wosnessenky,E.Kuehn及びE.Herre著のLiebigs Ann.365(1909)79,110に従って実施する。
【0140】
25.0g(121ミリモル)の98%2,6−ジニトロクロロベンゼンを185mlの無水エタノール中に溶かした溶液に、撹拌しつつ窒素下で17.30g(157ミリモル)の99%の2−アミノフェノール及び17.15g(209ミリモル)の無水酢酸ナトリウムを添加する。該反応溶液を2時間にわたり、撹拌しつつ加熱沸騰させ、そして引き続き室温に冷却する。赤紫色の針状結晶が、黒帯フィルタ(Schwarzbandfilter)を介して分離され、それを水で排出液が無色になるまで洗浄し、そして50℃で真空中で乾燥させる。27.90g(理論値の84%)の黒色に光沢のある針状物が得られ、それは189〜192℃(文献では191℃)で溶融する。
【0141】
4−ニトロフェノキサジンの合成
【化34】

【0142】
その製造は、F.Ullman,G.Engi,N.Wosnessenky,E.Kuehn及びE.Herre著のLiebigs Ann.365(1909)79,110に従って実施する。27.70g(101ミリモル)の2−[(2,6−ジニトロフェニル)アミノ]−フェノールを、666mlの1%のNaOH中に30分にわたって還流下で撹拌しつつ加熱する。室温に冷却した後に、固体を吸引分離し、熱水で中性になるまで洗浄し、そして80℃で真空中で乾燥させる。21.2g(理論値の92%)の黒色に光沢のある結晶が得られ、それは168〜171(文献では166℃)で溶融する。
【0143】
1−アンモニウムフェノキサジンクロリドの合成
【化35】

【0144】
その製造は、F.Kehrmann及びL.Loewy著のBer,dtsch.ehem.Ges.44(1911)3006−3011の方法に従って行う。
【0145】
21.20g(92.9ミリモル)の1−ニトロフェノキサジンを、177mlの無水エタノール中に懸濁させ、そして83.84g(372ミリモル)の塩化スズ(II)×2H2Oを101mlの濃HCl中に溶かした溶液と混合する。該反応混合物を1時間にわたって還流下に沸点にまで加熱する。該反応混合物を室温に冷却した後に、沈殿物を吸引分離し、全体で430mlの10%HClで4回、次いで冷水で洗浄し、そして70℃で真空中で乾燥させる。18.45gの灰色の針状物が得られる。
【0146】
2,10b−ジアザ−6−オキサ−アセアントリレン(イミダゾ[4,5,1−k,l]フェノキサジン)の合成
【化36】

【0147】
その製造は、H.Shirai及びT.Hayazaki著のYakugaku Zasshi 90(1070)588−593及びA.N.Gritsenko,Z.I.Ermakova,V.S.Troitskaya及びS.V.Zhuraviev著のHeterocycl.Compd.1971,715−717の方法に従って行う。
【0148】
18.45(78.6ミリモル)の1−アンモニウムフェノキサジンクロリドを、85mlの85%ギ酸中に懸濁する。5.38g(78.6ミリモル)のギ酸ナトリウムを添加した後に、反応混合物を、3.5時間にわたって還流下で沸騰加熱する。室温に冷却した後に、反応混合物を、700gの10%NaOH中で沈殿させ、さらに30分間撹拌する。固体を、黒帯フィルタ上で吸引分離し、水で洗浄し、そして70℃で真空中で乾燥させる。粗生成物(16.35g)を、160mlのメタノール中に2時間にわたって撹拌し、引き続き吸引分離し、メタノールで洗浄し、そして70℃で乾燥させる。13.09g(理論値の80%)の灰色の針状物が得られ、それは177〜181℃(文献では177〜178℃)で溶融する。
【0149】
10b−アザ−2−アゾニア−2−メチル−6−オキサ−アセアントリレン−ヨージド(2−メチル−イミダゾ[4,5,1−k,l]フェノキサゾニウムヨージド)の合成
【化37】

【0150】
その製造は、H.Shirai及びT.Hayazaki著のYakugaku Zasshi 90(1970)588−593の方法に従って行う。
【0151】
5.48g(26.3ミリモル)の2,10b−ジアザ−6−オキサ−アセアントリレン及び18.42g(130ミリモル)のヨウ化メチルを75mlの塩化メチレン中に溶かした溶液を、26時間にわたって撹拌下で加熱沸騰させる。該反応混合物を室温に冷却した後に、固体を吸引分離し、塩化メチレンで洗浄し、そして75℃で真空中で乾燥させる。8.35g(理論値の91%)の分析的純度の灰色の微結晶が得られ、それは284〜291℃(文献では295〜297℃)で溶融する。
【0152】
10b−アザ−2−アゾニア−2−メチル−6−オキサ−アセアントリレン−テトラフルオロボレート(2−メチル−イミダゾ[4,5,1−k,l]フェノキサゾニウムテトラフルオロボレート)の合成
【化38】

【0153】
10.41g(50.0ミリモル)の2,10b−ジアザ−6−オキサ−アセアントリレンを620mlの無水塩化メチレン中に溶かして氷浴中で0〜3℃に冷却された溶液に、7.55g(50.0ミリモル)の98%のトリメチルオキソニウムテトラフルオロボレートを添加する。該反応混合物を室温に加温し、そして一晩撹拌する。0.755g(5.0ミリモル)の98%トリメチルオキソニウムテトラフルオロボレートを添加する。室温で4時間撹拌した後に、沈殿物を吸引分離し、塩化メチレンで洗浄し、そして40℃で真空中で乾燥させる(粗収量:11.35g)。その固体を、1000mlのメタノールから窒素下で再結晶化させる。8.90gの分析的純度の暗灰色の微結晶が融点230〜238℃で得られる。その濾液を濃縮乾涸させる。その固体(3.39g)を132mlのメタノールから再結晶させる。さらに1.42gの暗灰色の微結晶が得られ、従って全体で10.32g(理論値の67%)となる。
【0154】

【0155】
mer−Ir(pombic)3の合成
【化39】

【0156】
該生成物を、方法Aに従って溶剤としてo−キシレン中で製造する。冷却した後に、沈殿物を濾別し、そして濾液をカラムクロマトグラフィーによる精製に供する。生成物が帯黄色の粉末(理論値の21%)として得られる。
【0157】

【0158】
実施例7 Pt(cn−pmic)(acac)の合成
1−(2−ブロモ−4−シアノフェニル)イミダゾールの合成
3−ブロモ−4−フルオロベンゾニトリル(10.0g、50ミリモル、1当量)及びイミダゾール(5.1g、75ミリモル、1.5当量)を、ジメチルホルムアミド(100mL)中に溶解させ、窒素下で室温において慎重に水素化ナトリウム(鉱油中60%、3.0g、75ミリモル、1.5当量)と混合する。該混合物を、100℃で4時間撹拌する。室温に冷却した後に、水(10mL)を添加し、そして濃縮乾涸させる。残留物を水及び石油エーテルで洗浄し、そしてカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、メチル−t−ブチルエーテル−酢酸−グラジエント)で精製する。収量:5.4g(22ミリモル、44%)。
【0159】

【0160】
1−(2−ブロモ−4−シアノフェニル)−3−メチルイミダゾリウム−ヨージドの合成
1−(2−ブロモ−4−シアノフェニル)−イミダゾール(5.4g、22ミリモル、1当量)及びヨウ化メチル(15.4g、109.0ミリモル、5当量)を、テトラヒドロフラン(50ml)中に溶解させ、そして室温で16時間撹拌する。形成された沈殿物を濾別し、そしてエタノールで洗浄した。
【0161】
収量:6.7g(17ミリモル、78%)。
【0162】

【0163】
[1−(4′−シアノフェニル)−3−メチルイミダゾール−2−イリデン−C2,C2']−白金(II)−アセチルアセトネートの合成
【化40】

【0164】
1−(2−ブロモ−4−シアノフェニル)−3−メチルイミダゾリウム−ヨージド(0.62g、1.6ミリモル、1当量)及び酸化銀(I)(0.19g、0.8ミリモル、0.5当量)をジオキサン(80mL)中に入れた懸濁液を、室温でアルゴン下で16時間撹拌する。該混合物を、ブタノン(40mL)及び1,5−シクロオクタジエン−白金(II)ジクロリド(0.60g、1.6ミリモル、1当量)と混合し、そして還流下で16時間撹拌する。室温で冷却した後に、該混合物を濃縮乾涸させる。残留物をジメチルホルムアミド(80mL)中に取り、2,4−ペンタジオン(0.65g、6.4ミリモル、4当量)及びカリウム−t−ブチレート(0.73g、6.4ミリモル、4当量)と混合する。該混合物を室温で16時間、そして100℃で6時間撹拌する。室温に冷却した後に、濃縮乾涸させ、そして残留物を水で洗浄する。収量:0.53g(1.1ミリモル、70%)。
【0165】

【0166】
実施例8 Rh(cn−pmic)3の合成
mer−トリス[1−(4′−シアノフェニル)−3−メチルベンゾイミダゾール−2−イリデン−C2、C2']−ロジウム(III)の合成
【化41】

【0167】
該生成物を、方法Aに従って1,5−シクロオクタジエン−ロジウム(I)クロリド二量体を用いて製造する。溶剤を真空中で除去し、そして残りの残留物を塩化メチレンで抽出する。抽出物から、カラムクロマトグラフィーによる精製により、生成物が淡黄色の粉末(理論値の21%)として得られる。
【0168】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのカルベン配位子を有する一般式(I)
【化1】

[式中、記号は以下の意味を有する:
1は、Ir、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Fe、Ru、Os、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Cu及びAu、好ましくはIr、Os、Ru、Rh、Pd、Co及びPt、特に好ましくはIr、Pt、Rh及びOsからなる群から選択される金属原子であって、相応の金属原子にとってそれぞれ可能な酸化段階のものである;
carbenは、一般式(II)
【化2】

で示されるカルベン配位子である;
Lは、一座もしくは二座であってよい、モノアニオン性もしくはジアニオン性の配位子である;
Kは、中性の一座もしくは二座の配位子である;
nは、カルベン配位子の数であり、その際、nは、少なくとも1であり、好ましくは少なくとも2であり、かつnが1より大きい場合の式Iの錯体中のカルベン配位子は、同一もしくは異なってよい;
mは、配位子Lの数であり、その際、mは、0もしくは≧1であってよく、かつmが1より大きい場合の配位子Lは、同一もしくは異なってよい;
oは、配位子Kの数であり、その際、oは、0もしくは≧1であってよく、かつoが1より大きい場合の配位子Kは、同一もしくは異なってよい;
その際、合計n+m+oは、使用される金属原子の酸化段階及び配位数と、配位子のcarben、L及びKの配座数並びに配位子のcarben及びLの電荷に依存するが、nが少なくとも1であることを条件とする;
その際、一般式IIのカルベン配位子中の記号は、以下の意味を有する:
Do1は、C、P、N、O、S及びSi、好ましくはP、N、O及びSからなる群から選択されるドナー原子である;
Do2は、C、N、P、O及びSからなる群から選択されるドナー原子である;
rは、Do1がCもしくはSiである場合に、2であり、Do1がNもしくはPである場合に、1であり、かつDo1がOもしくはSである場合に、0である;
sは、Do2がCである場合に、2であり、Do2がNもしくはPである場合に、1であり、かつDo2がOもしくはSである場合に、0である;
Xは、シリレン、アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR13、PR14、BR15、O、S、SO、SO2、CO、CO−O、O−CO及び(CR1617wからなる群から選択されるスペーサーであり、その際、1つ以上の隣接していない基(CR1617)は、NR13、PR14、BR15、O、S、SO、SO2、CO、CO−O、O−COによって交換されていてよい;
wは、2〜10である;
13、R14、R15、R16、R17は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルである;
pは、0もしくは1である;
qは、0もしくは1である;
1、Y2は、それぞれ互いに無関係に、水素又はアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基及びアルケニル基からなる群から選択される炭素含有基であるか、又は
1及びY2は、一緒になってドナー原子Do1と窒素原子Nとの間に架橋を形成し、前記架橋は、少なくとも2個の原子を有し、そのうち少なくとも1つが炭素原子である;
3は、水素、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基もしくはアルケニル基である;又は
【化3】

であり、その際、Do2'、q′、s′、R3'、R1'、R2'、X′及びp′は、無関係に、Do2、q、s、R3、R1、R2、X及びpと同じ意味を有する;
更に、Y3及びY2は1つの架橋を介して互いに結合されていてよく、その際、該架橋は以下の意味:
アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR25、PR26、BR27、O、S、SO、SO2、SiR3233、CO、CO−O、O−CO及び(CR2829yを有してよく、その際、1つ以上の隣接していない基(CR2829)は、NR25、PR26、BR27、O、S、SO、SO2、SiR3233、CO、CO−O、O−COによって交換されていてよく、その際、yは、2〜10であり、かつR25、R26、R27、R28、R29、R32、R33は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを意味する;
1、R2は、互いに無関係に、水素、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基もしくはアルケニル基であるか、又は
1及びR2は、一緒になって、全体で3〜5個の原子を有する架橋を形成し、そのうち1もしくは2個の原子はヘテロ原子であってよく、かつ残りの原子は炭素原子であるので、基
【化4】

は、5員ないし6員の環を形成し、前記環は、場合により既に存在する二重結合の他に、1つの更なる二重結合を有するか、又は6員もしくは7員の環の場合には、2つの更なる二重結合を有してよく、かつ場合によりアルキル基もしくはアリール基で及び/又はドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基で置換されていてよく、かつ場合により少なくとも1つのヘテロ原子を有してよい;
更に、Y1及びR1は、1つの架橋を介して互いに結合されていてよく、その際、該架橋は、以下の意味:
アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−CO及び(CR2122xを有してよく、その際、1つ以上の隣接していない基(CR2122)は、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−COによって交換されていてよく、その際、xは、2〜10であり、かつR18、R19、R20、R21、R22、R30、R31は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを意味する;
3は、水素、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基もしくはアルケニル基である]のシクロメタル化されたカルベン錯体の製造方法において、一般式(III)
【化5】

[式中、
-は、モノアニオン性の対イオン、好ましくはハロゲン化物イオン、擬ハロゲン化物イオン、BF4-、BPh4-、PF6-、AsF6-もしくはSbF6-である;
Gは、Do2がCである場合に、Hを意味し、かつDo2がN、S、OもしくはPである場合に、Hもしくは自由電子対を意味し、式IIIの配位子前駆体中の他の記号は、式IIの配位子に関して挙げられた意味を有する]で示される配位子前駆体の反応を含み、その際、該反応が、塩基及びAg、Hg、Sb、Mg、B及びAlの塩から選択される補助試薬の使用(経路A)又はAg、Hg、Sb、Mg、B及びAlからなる群から選択される少なくとも1つの金属を含有する塩基性の補助試薬の使用(経路B)を含み、その際、一般式IIIの前記の配位子前駆体を、
(A)塩基、少なくとも1つの金属M1を含有する金属錯体及び補助試薬と反応させ(経路A)、又は
(B)塩基性の補助試薬と反応させ、その際、保護されたカルベンを得て、引き続きその保護されたカルベンを少なくとも1つの金属M1を含有する金属錯体と反応させ(経路B)、
その際、シクロメタル化された式Iのカルベン錯体が得られる方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、基
【化6】

は、
【化7】

[式中、記号は以下の意味を有する:
4、R5、R6、R7、R8、R9、R11及びR11'は、水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキニルもしくはアルケニル又はドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基である;
10は、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキニルもしくはアルケニルであるか、又はそれぞれ2つの基R10は、一緒になって、場合により少なくとも1つのヘテロ原子を有してよい縮合環を形成し、又はR10は、ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基を意味する;
更に基a中のR4もしくはR5、基b中のR8、基c中の基R10及び基d中のR11は、R1と架橋を介して結合されていてよく、その際、該架橋は、以下の意味を有してよい:
アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−CO及び(CR2122xであり、その際、1つ以上の隣接していない基(CR2122)は、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−COによって置き換えられていてよく、その際、xは、2〜10であり、かつR18、R19、R20、R21、R22、R30、R31は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを意味する;
vは、0〜4であり、その際、vが0である場合に、式c中のアリール基の4個の炭素原子は、場合によりR10で置換されているが、それは水素原子を有する;
3は、水素、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基もしくはアルケニル基又は
【化8】

を意味し、式中、Do2'、q′、s′、R3'、R1'、R2'、X′及びp′は、無関係に、Do2、q、s、R3、R1、R2、X及びpと同じ意味を有する]からなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、基
【化9】

は、構造
【化10】

[式中、記号は以下の意味を有する:
Zは、CHもしくはNであり、その際、0〜3個の記号Zは、Nを意味してよい;
12は、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基、アルケニル基であり、又はそれぞれ2つの基R12は、一緒になって、場合により少なくとも1つのヘテロ原子を有してよい縮合環を形成し、又はR12は、ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基を意味する;
更に、構造
【化11】

の基は、芳香族の基本体を介してもしくは基R12の1つを介してY1と1つの架橋を介して結合されていてよく、その際、該架橋は以下の意味を有する:
アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−CO及び(CR2122xであり、その際、1つ以上の隣接していない基(CR2122)は、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−COによって置き換えられていてよく、その際、xは2〜10であり、かつR18、R19、R20、R21、R22、R30、R31は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを意味する;
tは、0〜4であり、その際、tが1より大きい場合に、基R12は同一もしくは異なってよい]を意味することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法において、少なくとも1つのカルベン配位子が、
【化12】

[式中、記号は以下の意味を有する:
Z、Z′、Z′′は、同一もしくは異なってCHもしくはNであり、
12、R12'は同一もしくは異なって、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基もしくはアルケニル基であり、又はそれぞれの2つの基R12もしくはR12'は、一緒になって、場合により少なくとも1つのヘテロ原子を有してよい縮合環を形成し、又はR12もしくはR12'は、ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基を意味する;
t及びt′は、同一もしくは異なっており、0〜4であり、その際、tもしくはt′が1より大きい場合に、基R12もしくはR12'は、同一もしくは異なってよい;
4、R5、R6、R7、R8、R9、及びR11は、水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキニルもしくはアルケニル又はドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基である;
10は、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキニルもしくはアルケニルであるか、又はそれぞれ2つの基R10は、一緒になって、場合により少なくとも1つのヘテロ原子を有してよい縮合環を形成し、又はR10は、ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基を意味する;
更に、構造
【化13】

の基は、芳香族の基本体を介して又は基R12の1つを介して、基a及びfにおいては、R4もしくはR5又はR4とR5が結合されている炭素原子と、基b及びgにおいては、R8又はR8が結合されている炭素原子と、基c及びhにおいては、基R10の1つ又はR10が結合されている炭素原子の1つと、そして基d及びiにおいては、R11又はR11が結合されている炭素原子と、1つの架橋を介して結合されていてよく、その際、該架橋は、以下の意味を有してよい:
アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−CO及び(CR2122xであり、その際、1つ以上の隣接していない(CR2122)は、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−COによって置き換えられていてよく、その際、xは、2〜10であり、かつR18、R19、R20、R21、R22、R30、R31は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを意味し、その際、構造
【化14】

の基が、架橋を介して、R4及びR5が結合されている炭素原子(基a及びf)と、R8が結合されている炭素原子(基b及びg)と、R10が結合されている炭素原子(基c及びh)と、又はR11が結合されている炭素原子(基d及びi)と結合されている場合に、それぞれの基R4もしくはR5、R8、基R10もしくはR11の1つは、1つの結合によって置き換えられて架橋となる;
vは、0〜4であり、その際、vが0である場合に、式c及びh中のアリール基の4つ炭素原子は、場合によりR10によって置換されていてよいが、水素原子を有する;
3は、水素、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基もしくはアルケニル基である]からなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法において、
(A)少なくとも1つの金属M1を有する金属錯体、式IIIの配位子前駆体、塩基及び補助試薬の比率が、金属原子M1とカルベン配位子の数nにあたり、1:1〜10:1〜10:0.5〜15、有利には1:1〜5:1〜5:1〜7、殊に好ましくは1:1〜2:1〜2:1〜1.5である(経路A);又は
(B)少なくとも1つの金属M1を有する金属錯体、式IIIの配位子前駆体及び塩基性の補助試薬の比率が、金属原子M1とカルベン配位子の数nにあたり、1:1〜10:0.5〜5、有利には1:1〜5:0.5〜2.5、特に有利には1:1〜3:0.5〜1.5である(経路B)
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法において、該方法は溶剤中で実施され、その際、溶剤としては、好ましくは非プロトン性溶剤が使用され、特に好ましくは、ジオキサン、ブタノン、THF、トルエン、キシレン、DMF、アセトニトリル、DMSO、NMP及びピリジンからなる群から選択される少なくとも1つの溶剤から選択されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法において、該方法を60〜200℃で、好ましくは70〜150℃の温度で実施することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法において、金属M1として、Ir、有利にはIr(I)もしくはIr(III)、特に好ましくはIr(I)が使用されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法において、経路Aにおける補助試薬と経路Bにおける塩基性の補助試薬がAgを含有することを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法において、経路Aにおいて、塩基として、KHMDS、NaHMDS、LiHMDS、KOtBu、NaOtBu、LiOtBu、NaH、KOAc、NaOAc、LiOAc、NEt3、BuLi、RMgHal(式中、Rは、アルキル、アリールもしくはアルケニルを意味する)、KOH、NaOH、LiOH、Cs2CO3、K2CO3、Na2CO3、Li2CO3、ピリジン及び/又はDBUが使用されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法において、経路Aにおいて、補助試薬として、AgBF4、AgNO3、AgPF6、AgAsF6、AgSbF6、AgSCN、Ag2SO4、AgOCN、AgCOOCF3、AgClO4及び/又はAgOTfが使用されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法において、経路Bにおいて、塩基性の補助試薬として、Ag2O、Ag2CO3、AgOAc及び/又はAg2S、好ましくはAg2Oが使用されることを特徴とする方法。
【請求項13】
Ag、Hg、Sb、Mg、B及びAlからなる群から選択される少なくとも1つの金属を有する塩から選択される補助試薬を、塩基と一緒に、シクロメタル化されたカルベン錯体の製造方法において用いる使用。

【公表番号】特表2009−525299(P2009−525299A)
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552765(P2008−552765)
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【国際出願番号】PCT/EP2007/050193
【国際公開番号】WO2007/088093
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】