説明

選択的ポリ−N−置換グリシン抗生物質

細菌に対して効果的及び選択的に用いることができる抗菌ペプトイド化合物及び関連組成物を提供することを目的とする。
下記式のポリ−N−置換グリシン抗生物質化合物。



式中、Aは、H及び末端N−アルキル置換グリシン残基から選択され、前記アルキル置換基は約C〜約C20の直鎖、分岐鎖及び環式のアルキル基から選択され、nは、1〜3から選択される整数であり、Bは、NH、1及び2つのN−置換グリシン残基から選択され,前記N−置換基は独立してα−アミノ酸側鎖部分及びそれらの炭素同族体から選択され、X、YおよびZは、独立してN−置換グリシン残基から選択され、前記N−置換基は独立してα−アミノ酸側鎖部分及びそれらの炭素同族体から選択され,及びプロリン残基,前記X−Y−Z周期性は前記化合物に両親媒性を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2008年2月8日に出願された米国特許出願第61/065,189号の優先権を主張するものであり、その全内容を、参照により援用する。
本発明は、米国国立衛生研究所によって授与された助成金番号1R01HL67984及びAI007266の下及び米国エネルギー省によって授与された契約番号第DE−AC02−05CH11231の下に、政府の支援によってなされた。米国政府は、本発明に特定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
天然の抗菌性ペプチド(AMP)は感染菌から幅広く生体を防御し、これらへの耐性を獲得した細菌は少ないため、従来の抗生物質への補充又は代替物としての可能性を示す。多くのAMPは、細胞膜の透過化によって細菌を殺し、脱分極、漏出及び死を引き起こすが、一方で付加的な陰イオン性の細菌成分を標的とするAMPもある(例えば、DNA、RNA又は細胞壁成分)。細菌がAMPに対する耐性を有することはまれであるが、これは細菌がAMPを回避するよう設計された耐性メカニズムとともに進化したためであろう。さらには、多くのAMPの標的(例えば、細菌の原形質膜、陰イオン性の細胞内高分子)は十分に一般的であるため、耐性を失うが、全体的な官能性には無視できる程度の影響しかないようにそれらの配列を変化させることができる。
【0003】
AMPは何十年にもわたり大いに研究されてきたが、今後も広範な臨床用途を見出すものとされている。これは、ペプチドによる治療は、急激なインビボでの分解に弱いことが一因であり、そのような分解によってそれらの生物学的利用能は劇的に低下する。AMPの非天然模倣物は、AMPの有益な特徴を保ちつつ、ペプチドのタンパク分解性感受性を回避することができる。よく知られたマガイニンなどの、陽イオン性、直鎖、αヘリックス類に属する短くて(<アミノ酸40個)単純な構造のAMPは、特に模倣薬に適している。これらのAMPのβ−ペプチド模倣薬で、抗菌性及び非溶血性インビトロ活性を有する模倣薬の開発が成功している。ポリ−N−置換グリシン(ペプトイド)は、これらとは別の部類のペプチド模倣であり、ペプトイド側鎖がα炭素ではなく主鎖アミド窒素に結合しているという点でペプチドの異性体である。β−ペプチド、β−ペプトイド、オリゴ尿素及びオリゴ(フェニレンエチニレン)などを含め、他のどの研究中のペプチド模倣システムよりも、ペプトイドはAMP模倣に特に好適である。それはペプトイドが、比較的低コストで多様な配列にアクセスでき、(従来のペプチド合成装置を用いて)固体相において容易に合成されるためである。簡易なサブモノマー合成方法で、タンパク新生アミノ酸の類似体又は完全な非天然部分にかかわらず、一級アミンとして利用可能なあらゆる化学官能性を導入することができる。よって、ペプトイドは高度かつ精密に調整可能である。さらに、ペプトイドはプロテアーゼ耐性であり、熱変性及びカオトロピック変性に抵抗性のある両親媒性ヘリックスを形成するよう設計することができる。
【0004】
ペプトイドのポリ−N−置換グリシン構造は、主鎖のキラリティー及び鎖内の水素結合の双方を妨げるが、にもかかわらず、ペプトイドは、かさ高いα−キラル側鎖の周期的な導入によって安定したヘリックス二次構造を形成するよう変化させることができる。ペプトイドオリゴマーのX線、NMR及びCDによる研究によると、ホモキラル側鎖の導入により、1回転あたり〜3モノマー、6.0〜6.7Åのヘリカルピッチの周期性でポリプロリンI型様ヘリックスを増大させることができることが分かった。ペプトイドヘリックスの三倍周期(three-fold periodicity)は、多くのAMPが形成するのと同様の面状両親媒性構造の設計を容易にする。例えば、三量体の反復単位(X−Y−Z)は、各々X、Y及びZ残基からなる三面を有するペプトイドヘリックスを形成する。
【0005】
残基が疎水性の領域と陽イオン性の領域に分かれている両親媒性の二次構造は、ほとんどのAMPの特徴である。AMPは、殺そうとしている最終的な標的が何であるかにかかわらず、細菌細胞膜と相互作用しなければならず、両親媒性は、そのような相互作用に不可欠である。哺乳動物細胞膜は双性イオン性が高いため、陽イオン性領域は、陰イオン性の細菌膜への静電気的吸着を容易にし、選択性のいくつかの手段をもたらしている。疎水性領域は、AMPの脂質二分子膜内への導入のための追加的な駆動力を提供する。AMPと膜との相互作用の正確な性質はいまだ議論の余地があり、活発に論議されている;カーペットモデル、樽側板孔(barrel-stave pore)モデル、ドーナツ型孔モデル及び集合体モデルを含めて、多くのメカニズムが提案されている。
【0006】
発明の要約
上記に鑑み、本発明の課題は、新しいポリ−N−置換グリシン化合物及びそれらの抗生物質としての使用に関する方法及び/又は療法を提供し、それによって、従来技術を改良し様々な不足や欠点を克服することである。当業者は、本発明の1つまたは複数の態様が、一定の目的に適合しうるものであり、一方、1つ以上の他の態様が一定の他の目的に適合する事を理解するであろう。各目的は、その全ての点において、本発明の全ての態様に等しく当てはまらなくてもよい。従って、以下の目的は、本発明のいずれか1つの態様に関する別の方法において考察することができる。
【0007】
本発明の課題の一つは、グラム陽性菌とグラム陰性菌との双方に対する低マイクロモル範囲において最小発育阻止濃度を有し、従来技術の化合物と比較して、そのような濃度において哺乳動物細胞毒性がより低く、溶血が無視できる程度の化合物を提供することある。
本発明の別の課題は、疎水性及び/又は両親媒性に影響を与え及び/又は選択性を高めるために、残基配列及び/又はN−置換基によって変化させることができる化合物を提供することである。
本発明の別の課題は、単独で又は一つ以上の前述の課題と組み合わせて、既存のものより少ないモノマー数及び短いペプトイド長においてそのような可能性及び選択性をもたらす、新しい種類のN−アルキル化ペプトイドを提供することである。
【0008】
本発明の他の目的、特徴、有益性及び利点は、この概要及び特定の実施形態のその記載から明らかとなり、種々のペプチド模倣化合物及びそれらの合成の知識を有する当業者には容易に明らかとなるであろう。そのような目的、特徴、有益性及び利点は、添付の実施形態、データ、図及びそれらから単独でもしくは本明細書に援用した参照を考慮して導き出される全ての合理的な推論と併せれば、上記から明らかとなるであろう。
【0009】
一つには、本発明は、式

のポリ−N−置換グリシン抗生物質化合物に指向することができる。
そのような化合物において、Aは、H及び末端N−アルキル置換グリシン残基から選択することができ、ここでそのようなアルキル置換基は、約C〜約C20の直鎖、分岐鎖及び環式のアルキル基から選択することができ、nは1〜3から選択した整数とすることができ、BはNHならびに1及び2つのN−置換グリシン残基から選択することができ、そのようなN−置換基は、独立してα−アミノ酸側鎖部分及びそれらの構造的/機能的類似体から選択することができ、X、Y及びZは、N−置換グリシン残基から独立して選択することができ、そのようなN−置換基は、α−アミノ酸側鎖部分及びそれらの構造的/機能的類似体及びプロリン残基から独立して選択することができる。本明細書中の他所に記載するとおり、そのようなX−Y−Z周期性は、そのような化合物に特定の両親媒性をもたらすことができる。本発明を認識する当業者が理解するように、そのような構造的及び/又は機能的な類似性は、あらゆるα−アミノ酸側鎖、N−置換基及び/又はN−置換グリシン残基の配列との関連で考慮することができ、そのような構造及び/又は機能は、電荷、キラリティー、疎水性、両親媒性、ヘリックス構造並びに面状組織を含むが、これらに限定されない。そのような類似体は、そのような側鎖の炭素同族体(当該技術において理解されるような同族体)を含むが、それらに限定されず、±1または±2つのメチレン基及び/又はメチル基を含むが、それらに限定されない。
【0010】
一方、ある実施形態では、AはHとすることができ、またBは1または2つのN−置換グリシン残基から選択することができ、そのような選択によって、その化合物の疎水性を、三倍周期化合物と比較して低下させることができる。そのような特定の実施形態では、XはNLys残基とすることができ、nは2〜3とすることができ、Bは2つのN−置換グリシン残基とすることができる。そのような化合物は、限定はされないが、式

とすることができる。
【0011】
その他多くの実施形態においては、A、X及びBの同一性にかかわらず、YとZのうち少なくとも1つをプロリン残基とすることができる。そのような特定の実施形態では、X、Y及びZは、プロリン残基とすることができる。
【0012】
他の特定の実施形態では、Aは、末端N−アルキル置換グリシン残基とすることができ、そのようなアルキル置換基は、約C〜約C18の直鎖アルキル基から選択してもよい。にもかかわらず、BはNHとすることができ、nは1及び2から選択してもよい。そのような特定の実施形態では、Aは末端N−アルキル置換グリシン残基とすることができ、アルキル置換基は約C〜約C18の直鎖アルキル部分から選択される。あるいは、BはNLys残基とすることができ、nは1とすることができる。
【0013】
一つには、本発明は、式

のポリ−N−置換グリシン抗生物質化合物にも指向することができる。
式中、nは2及び3から選択することができ、Y、Z、Y’及びZ’は独立してN−置換グリシン残基から選択することができ、ここでそのような置換基は、独立してα−アミノ酸側鎖部分及びその炭素同族体から選択することができる。そのようなY’及びZ’残基は、三倍周期化合物と比較して、疎水性を低下させるような化合物を提供するよう選択することができる。そのような特定の実施形態では、X及びYのうちの少なくとも1つをプロリン残基とすることができる。また、nは2及び3から選択することができ、Y’はNLys残基とすることができる。そのような特定の実施形態では、X及びYのうちの一方もしくは両方をプロリン残基とすることができる。限定されないが、疎水性の低下したそのような化合物は、式

とすることができる。
【0014】
一つには、本発明は、式

のポリ−N−アルキル置換グリシン抗生物質化合物にも指向することができる。
式中、BはNH及びX’から選択することができ、X、Y、Z及びX’は独立してN−置換グリシン残基から選択することができ、ここでそのような置換基は、独立してα−アミノ酸側鎖部分及びその炭素同族体から選択することができ、nは1及び2から選択した整数とすることができ、Rはそのようなグリシン残基のN−アルキル置換基とすることができ、そのようなアルキル置換基は約C〜約C20の直鎖、分岐鎖及び環式のアルキル基から選択することができる。特定の実施形態では、nは2とすることができ、BはNHとすることができる。他の特定の実施形態では、nは1とすることができ、BはX’とすることができる。従って、X及びX’のうち一方もしくは両方をNLys残基とすることができる。それにかかわらず、アルキル置換基は約C〜約C18の直鎖、分岐鎖及び環式のアルキル基から選択することができ、X及びX’はNLys残基とすることができる。限定されないが、そのような化合物は、式

とすることができる。
【0015】
一つには、本発明は、H及びN−アルキル置換グリシン残基から選択されるN末端基を含む、ポリ−N−置換グリシン抗生物質化合物に指向することができ、そのようなアルキル置換基は約C〜約C20の直鎖、分岐鎖及び環式のアルキル基から選択することができ、C末端はNH、一つ及び二つのN−置換グリシン残基から選択され、そのようなN−置換基は、独立してα−アミノ酸側鎖部分及びそれらの構造的/機能的類似体及びN−末端とC末端間の2〜約15のモノマー残基から選択することができ、そのような残基は各々独立してプロリン残基及びN−置換グリシン残基から選択することができ、このN−置換基は独立してα−アミノ酸側鎖部分及びそれらの構造的/機能的類似体から選択される。本明細書中にて説明し、従来技術と区別するように、そのようなモノマーは、その化合物にモノマーの非周期的配列を提供するよう選択することができる。本発明を認識する当業者に理解されるように、そのような構造的及び/又は機能的類似性は、あらゆるα−アミノ酸側鎖、N−置換基及び/又はそのようなN−置換グリシン残基の配列との関係で考慮することができ、そのような構造及び/又は機能は電荷、キラリティー、疎水性、両親媒性、ヘリックス構造並びに面状組織を含むが、それらに限定されない。そのような類似体は、当業者に理解されるような側鎖の炭素同族体を含むが、それらに限定されず、±1または±2つのメチレン基及び/又はメチル基を含むが、それらに限定されない。
【0016】
特定の実施形態では、そのような化合物のN末端基はHとすることができ、C末端は前記1及び2つのN−置換グリシン残基から選択することができる。にもかかわらず、そのような化合物は、2〜約5つの(X−Y−Z)非周期的三量体を含むことができる。そのような特定の実施形態では、その三量体の各々におけるX、Y及びZのうち少なくとも1つは、三倍周期性を中断するよう選択することができる。限定されないが、少なくとも1つの前記三量体中の少なくとも1つのXを、NLys残基とすることができる。そのような特定の実施形態では、少なくとも1つのそのような三量体中のYとZのうち少なくとも1つを、プロリン残基とすることができる。他の実施形態では、そのモノマー残基は、それもしくは反復三量体の非連続体を少なくとも2つ含むことができ、その間の少なくとも1つのそのような残基は、周期性を中断するようにすることができる。そのような特定の実施形態では、少なくとも1つのそのような三量体中の少なくとも1つのXはNLys残基とすることができ、少なくとも1つの三量体中のYとZのうち少なくとも1つは、プロリン残基とすることができる。
【0017】
その他多くの限定されない実施形態では、そのような化合物のN末端基はN−アルキル置換グリシン残基とすることができ、アルキル置換基はC約〜約C18の直鎖アルキル基から選択される。にもかかわらず、そのような化合物は、2〜約5つの(X−Y−Z)非周期的三量体を含むことができる。そのような特定の実施形態では、該三量体の各々におけるX、Y及びZのうち少なくとも1つは、三倍周期性を中断するよう選択することができる。他の特定の実施形態では、該モノマー残基は、それもしくは反復三量体の非連続体を少なくとも2つ含むことができ、その間の少なくとも1つの残基を周期を中断するようなものとすることができる。そのような特定の実施形態では、少なくとも1つの三量体中の少なくとも1つのXは、NLys残基とすることができ、少なくとも1つの前記三量体中のYとZのうち少なくとも1つをプロリン残基とすることができる。
【0018】
一つには、本発明は、本発明のポリ−N−置換グリシン化合物を一つ以上含む抗菌のペプトイド組成に指向することができる。そのような化合物は、当該技術において現在知られているか、もしくは今後知られるようになる一つ以上の抗菌性ペプチド及び/又はペプチド模倣化合物を任意に含むことができる。従って、本発明は、従来技術の抗菌成分及び薬学的に許容される担体を任意に有する、1つ以上の当該ポリペプトイド/アンペトイド化合物を含む医薬品組成物の一範囲に指向することができる。そのような組成物は、本発明を認識する当業者に理解されるように調製及び/又は配合することができる。にもかかわらず、以下に説明するように、そのポリペプトイド/アンペトイド化合物及び/又は関連組成物のいずれも、単独もしくは組み合わせて、共に投与するか、順次投与するかして、一以上の細菌又は微生物治療法と併せて使用できる。限定されないが、そのような方法は、一以上のそのようなポリ−N−置換グリシン化合物及び/又は関連組成物の提供並びにそのような化合物/組成物及び/又はそれらに接触する細菌の投与を含むことができる。当業者に理解されるように、そのような投与は、本明細書中で記載する種類の技術又はそれらを明確に改変した技術を用い、インビトロ又はインビボで行うことができ、そのような改変は、当業者及び本発明を認識するものには既知であろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ペプトイドモノマー側鎖構造、それらの正式名称及び略称。
【図2】A549肺上皮細胞に対する選択ペプトイド及びコンパレータペプチドの細胞毒性データ。
【図3】図3A−B (A)1の変種及び(B)2の変種の10mMトリス緩衝液(pH7.4)でのCDスペクトル。
【図4】図4A−B 5mM POPC/コレステロール(1:1)SUVに懸濁した(A)1の変種及び(B)2の変種の10mMトリス緩衝液(pH7.4)でのCDスペクトル。
【図5】図5A−B 5mM POPE/POPG(7:3)SUV中に懸濁した(A)1の変種及び(B)2の変種の10mM水性トリス緩衝液(pH7.4)でのCDスペクトル。
【図6】ペプトイド1を単層の下方の副相に注入する前(円;イラスト上)及び後(正方形;イラスト下)のX線反射率データ及びDPPG単分子膜の対応する適合度。
【図7】マウス腹膜注入モデルにおけるアンペトイドのインビボ有効性。5匹又は6匹のマウスを、各実験の各研究群に含めた。マウス1匹あたり2枚のプレートを用い、各プレートからの細菌コロニー数を点グラフで示す。各群中の横線は、個体群の幾何平均を表わす。
【図8】ポリペプトイドのサブモノマー合成プロトコルの概略図。単にステップ2及び3を繰り返して各モノマー単位を加えた。完全なポリペプトイドが合成されたら、該樹脂をトリフルオロ酢酸で切断し、逆相HPLCによって精製する。
【図9】アンペトイド(ameptoid)変種及び側鎖構造の模式図。従来、N末端基は左側にあり、C末端は右側にある。ここに示す該模式図は視覚化のためだけのものであり、各分子の実際のフォールディング挙動を意味するものではないことに注意されたい。マーカーのない三角形のヘリックス上の点はNspeモノマーである。
【図10】図10A−C:アンペトイドレジスター(register)及び配列変種のCDスペクトル。アンペトイド濃度は60μMであった。(A)10mMトリス緩衝液(pH7.4)でのCD。(B)5mM赤血球模倣POPC:コレステロール(2:1)SUVを含む10mMトリス緩衝液でのCDスペクトル:(C)5mM細菌模倣POPE:PEPG(3:7)SUVを含む10mMトリス緩衝液でのCD。
【図11】図11A−C:(A)10mMトリス緩衝液、(B)5mM POPC/コレステロール(2:1)SUVを含む同緩衝液での実効電荷変種のCDスペクトル。アンペトイド濃度は60μMである。
【図12】図12A−C:(A)10mMトリス緩衝液、(B)5mM POPC/コレステロール(2:1)SUVを含む同緩衝液、(C)5mM POPE/POPG(3:7)SUVを加えた同緩衝液での長さ変種のCDスペクトル。アンペトイド濃度は60μMである。
【図13】図13A−C:(A)10mMトリス緩衝液、(B)5mM POPC/コレステロール(2:1)SUVを含む同緩衝液及び(C)5mM POPE/POPG(3:7)SUVを含む同緩衝液でのプロリン変種のCDスペクトル。アンペトイド濃度は60μMである。
【図14】図14A−C:(A)10mMトリス緩衝液、(B)5mM POPC/コレステロール(2:1)SUVを含む同緩衝液及び(C)5mM POPE/POPG(3:7)SUVを含む同緩衝液でのアキラルモノマー含有アンペトイドのCDスペクトル。アンペトイド濃度は60μMであった。
【図15】図15A−C:(A)10mMトリス緩衝液、(B)5mM POPC/コレステロール(2:1)SUVを含む同緩衝液及び(C)5mM POPE/POPG(3:7)SUVを含む同緩衝液での逆キラリティモノマー含有するアンペトイドのCDスペクトル。アンペトイド濃度は60μMであった。
【図16】図16A−C:(A)10mMトリス緩衝液、(B)5mM POPC/コレステロール(2:1)SUVを含む同緩衝液及び(C)5mM POPE/POPG(3:7)SUVを含む同緩衝液での脂肪族モノマー含有アンペトイドのCDスペクトル。アンペトイド濃度は60μMであった。
【図17A】選択されたアンペトイドの抗菌/溶血活性プロフィールの比較。最も有利なプロフィールを有するものは、各プロットの右下部分に現れる。
【図17B】選択されたアンペトイドの抗菌/溶血活性プロフィールの比較。最も有利なプロフィールを有するものは、各プロットの右下部分に現れる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
説明の通り、本発明は、有効かつ非常に選択的な抗菌活性を有する、ヘリックス状、陽イオン性、両親媒性の、配列特異的及び/又は長さ特異的なポリ−N−置換グリシン(ペプトイド)を提供する。これらの分子は、様々な病原体に対して広域スペクトラムの抗菌力を示し、インビボでの細菌感染を効果的に治療することができる。これらのペプトイドは、天然分子である抗菌性ペプチド(AMP)に構造的にも機能的にも相似していることが実証されている。また、配列及び側鎖の官能性を調整することによって、抗菌ペプトイドの活性及び選択性を調整することができる。いくつかの化合物は、低マイクロモル範囲においてグラム陽性菌及びグラム陰性菌に対する最小発育阻止濃度(MIC)を有し、それらのMICにおいて哺乳動物細胞毒性が低く、溶血は無視できる程度(<1%)である。これらの活性は、既に報告されている従来の抗菌性のペプトイドに対して実質的に向上したものであるが、それらのうち活性が最も高い部類のものは、ヒト赤血球に対して溶血性がはるかに高かった。また本発明は、長さが5モノマーと短い類似体における抗菌能力及び選択性を保持する新しい種類のアルキル化抗菌性のペプトイドを提供する。
【0021】
下記の実施例1〜9及び図1〜8を参照すると、当該技術において広く知られているように、Zuckermannらによって説明されたサブモノマー合成方法を用いてペプトイドを合成し、逆位相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)を用いて精製し、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)及び円二色性(CD)分光法で特徴を調べた(Zuckermann,R.N.,Kerr,J.M.,Kent,S.B.H.,&Moos,W.H.(1992)J.Am.Chem.Soc.,114,10646−10647を参照、参照することによりその全体をここに取り込む)。抗菌ペプトイドのCDスペクトルにより、それらは水性緩衝液及び脂質小胞の双方においてヘリックス構造をとり、そのため陽イオン性残基と疎水性残基との面状両親媒性の構成を有することが確認される。ブロス微量希釈の臨床検査標準協会(Clinical Laboratory Standards Institute:CLSI)プロトコルに従って抗菌活性を求め、同様の微量希釈方法を用いて溶血活性を求めた。ペプトイドの細胞代謝活性に対する効果を、比色分析テトラゾリウム塩系MTS[3−(4、5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム]アッセイを用いて求め、これには段階微量希釈も用いた。これらのデータは、臨床的に関連する病原体の変種に対する広域スペクトラム活性を示すが、最も選択性の高い抗菌ペプトイドは、それらの抗菌性の濃度の何倍もの濃度ではヒト赤血球又は哺乳動物の線維芽細胞に害を与えない。最後に、マウス腹膜注入モデルを用いて、2種類のペプトイドのインビボ感染治療能力を評価した。これらの結果は、24時間の曝露期間で、マウスが死に至ることなく、マウス腹膜腔中の細菌数を著しく減少させることができることを示す。
【0022】
抗菌ペプトイドの構造活性研究では、抗菌ペプトイドとAMPの細菌殺傷メカニズムとの間に密接な類似性が示唆されている。多数のAMP研究において、一般に、疎水性及び両親媒性が増大し、実効電荷が低下すると、ペプチドをより選択性の低い機構へ偏らせる(bias)可能性があることが判明している。陽イオン性電荷が増え、疎水性又は両親媒性が低下すると、ペプチドの選択性が高まる可能性があるという点において、逆も成り立つ。行われた構造活性研究によると、ペプトイドは物理化学的性質の変化に同様に反応することが分かる。即ち、選択的ペプトイドは、配列が変化して疎水性、両親媒性が高くなるかまたは陽イオン性が低くなると、選択性が低くなり、逆もまた然りである。よって、抗菌ペプトイドはAMPの機能的類似体である。
【0023】
鏡面X線反射率を用いて、抗菌ペプトイドと脂質との細胞レベルでの相互作用を調べた。選択的AMPが大部分の時間、膜の表面の平面と平行な方向を向いているのと同様に、抗菌ペプトイドは、陰イオン性DPPG単層内で表面法線とペプチドの長軸との間で56°に向いており、明らかに膜に対して垂直ではない。これは膜貫通型ポア形成ペプチドに予想されることであり、明らかにペプトイドと脂質頭部との間に相互作用が見られる。同様のAMPと抗菌ペプトイドとの脂質結合配向は、これら2種類の分子間の機構的な類似性をさらに示唆している。
【0024】
従って、本発明は、いくつかの望ましい性質の組合せをもたらす新規な種類の抗生物質を提供する。望ましい性質とは、以下を含むが、それらに限定されない。
1.腹腔内注射マウス・モデルを用いた24時間の曝露によって哺乳類系中の細菌数を減少させる有効性。
2.臨床的に関連する病原体の広域抗菌スペクトルに対する低マイクロモル抗菌活性。
3.分子配列特性によって調整可能な選択性、それにより化合物のMICにおいて哺乳動物細胞が害を受けることがない。
4.天然抗菌性ペプチドとの機能的類似性、これは、AMPのように、抗菌ペプトイドが容易に菌耐性の発生の影響を受けないことを意味する。
【0025】
疎水性の役割は、ポリミキシンB及びトリコギン等の抗菌リポペプチドの研究によって明らかにされている。これらのAMPは、N末端基に脂肪酸の尾部を有するペプチド鎖からなる。例えば、ポリミキシンBの脱アシル化されたものは、殺菌性が天然リポペプチドよりもずっと低い。また、異なる長さの脂質を有するトリコギン類似化合物は、尾部が長いものがより高い活性を示し、炭素原子4個より短い尾部を有する類似体は不活性であることが分かった。通常アシル化されないAMPへ脂肪の尾部を付着させる試みがなされ、いくつかの場合では、不活性な陽イオン性ペプチドのアルキル化は、得られたリポペプチドに抗菌活性又は抗真菌活性を賦与するのに十分であった。さらには、Shaiらによる研究では、アルキル尾部の長さを変えると、ペプチドが選択的でなくなる疎水性の閾値に達することが判明した。即ち、先端部において、尾部の長さを延ばしても溶血活性を増大させるのみであり、抗菌活性は増大しない。
【0026】
本明細書中にて説明の通り、AMPの単純なペプトイド模倣物のインビトロ活性は、AMP自体のインビトロ活性に非常に類似している(例えば、表1を参照)。特定の抗菌ペプトイド(「アンペトイド」)は、広域スペクトラムの抗菌力、低溶血性、哺乳動物細胞代謝に対する影響が最小限であること及びインビボ感染の治療における有効性を示す。さらに、脂肪尾部がペプトイドへ結合すると、長さが5モノマーと短く、細菌と真菌の両方に対して効力を有するAMPの選択的、非天然類似体となる可能性がある。合理的に設計されたアンペトイドのライブラリに見られる構造と活性の関係は、多くのAMPを説明する関係と全面的に相似している。シンクロトロン放射光を用いて、アンペトイドと脂質層との相互作用をプローブにて探究し、AMPとアンペトイドの類似性を見出し、細胞レベルでの相互作用に拡張した。
【0027】
【表1】

アンペトイド及びAMPの抗菌活性及び溶血活性
ペプトイドモノマーの略称を図2において説明する。「>x」と報告される最小発育阻止濃度(MIC)及び溶血用量(hemolytic dose:HD)については、x=200μg/mLである。これは試験を行った最高濃度である(最高500μg/mLで試験したペキシガナンを除く)。
【0028】
*水中のアセトニトリルのパーセント、HPLC溶出における0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸(TFA)。
†10mM酢酸アンモニウムを含有、TFAなし、pH7.0。
‡選択比、SR=(HD10)/(E.coli MIC)。
§「>x」と報告される濃度に関して、x=200μg/mLであり、これは試験を行った最高濃度である(最高500μg/mLで試験したペキシガナンを除く)。
【0029】
初期抗菌活性及び選択性検査
15種類のアンペトイド類似体の初期セットを合成し、AMP活性と一致した方法で、ペプトイドが構造の改変及び配列の改変によって影響を受けるかどうかを調べた。このライブラリにおけるアンペトイドの設計は、2つの抗菌選択性両親媒性十二量体、1及び2より得た。ペプトイド1[H−(Nlys−Nspe−Nspe)−NH]は、フェニルアラニンのペプトイド類似体、2/3Nspe及びリジンのペプトイド類似体、1/3Nlysからなる(代表的なペプトイドモノマー及び対応するN−置換基の構造については図1を参照)。ペプトイド2[H−(Nlys−Nssb−Nspe)−NH]は、Nspeの代わりに1/3イソロイシン様Nssbモノマーを含有する。変種配列は、キラリティー、長さ、疎水性、電荷及び両親媒性の変化に影響を与えるよう設計された。これらの化合物で、全て、代表的なBSL1グラム陰性菌種(E.coli JM109及びグラム陽性(B.subtilis BR151)菌種に対する抗菌活性について試験した。選択性の初期の大きさとして、ヒト赤血球に対するペプトイドの溶菌活性を求めた。表1は、合成された配列、分子疎水性の相対的大きさとしてのRP−HPLC溶出における溶媒の組成及び抗菌活性及び溶血活性の概要を示す。15種類のペプトイドのうち10種類が、E.coli及びB.subtilisの両方に対して低マイクロモルMICを示し、非天然ペプトイドオリゴマーがAMPと同等の活性を有する可能性があることを表している(マガイニン−2の選択的AMP類似体であるペキシガナンのMIC及びハチ毒AMPであるメリチンのMICを表1に示す)。
【0030】
各化合物に対する選択比(SR)を、10%溶血用量(HD10)をE.coliのMICで割った値と定義し、同じく表1に示した。よって、SRは、アンペトイドが哺乳動物細胞ではなく細菌を殺傷する傾向の評価である。アンペトイド1はSRが6.0であり、ペキシガナン(SR=5.8)と同等である。予想通り、メリチン(細胞毒性がよく知られている)のSRは0.16と低い。ほとんどのAMPは低マイクロモル範囲の抗菌活性を有し、ペプトイド1のMICはその範囲にあるため、アンペトイドのライブラリは、選択性の増大した変種を産生すると当初予測された。実際に、13種類の変種のうち6種類が、1及びペキシガナン(SR>6)より選択性が高い。
【0031】
選択されたオリゴマーのA549肺上皮細胞との生体適合性を、MTS[3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム]アッセイを用いて評価した。図2は、これらの選択されたペプトイドの10%代謝阻害用量(ID10)及び50%阻害量(ID50)が、ペキシガナン及びメリチンと非常に近いことを示す。アンペトイド1−Pro及び1−Nhis6,12はMICが<7μMであるが、ID10がペキシガナンの10倍及び20倍である。興味深いことに、比較的非選択的であるペプトイド115merは、ペキシガナンと同等の細胞毒性を示す。
【0032】
以下に、変化させた主要な物理化学パラメータに従ってアンペトイドのライブラリより導き出された構造活性相関について述べる。過去の研究にあるように、円二色性(CD)分光法を用いてスペクトルの極値の強度を特に190及び220nmにおいてモニターすることによってアンペトイドのヘリシティを比較した。10mM水性のトリス緩衝液(pH7.4)中で、単独及びモデル二成分脂質混合物からなる、下記の2種類の小さな一枚膜リポソーム(small unilamellar vesicles、SUV)の存在下でCDを行った。
(1)陰イオン性E.coli膜模倣SUV[POPE/POPG(7:3モル比)]、並びに
(2)双性イオン性赤血球膜模倣SUV[POPC/コレステロール(CH)(1:1モル比)]。
【0033】
キラリティーに関しては、対掌体の側鎖(Nspeの代わりにNrpe;図1)を用いて、1と比較したその鏡像CDスペクトルによって証明されるように(図3A)、1enantiomerと言われる、ペプトイド1の左巻きヘリックス類似体を作成した。1及び1enantiomerの活性及び選択性は一致する(表1)。
長さに関しては、6〜15モノマーに及ぶ、全て同じ三倍周期配列反復を有し、電荷と長さの比率が1:3の1の変種を作成した。1の短縮した変種、16mer及び19mer(それぞれ、長さ約12Å及び18Å)は、双方とも活性の高い抗菌物質であり、1より選択的である(表1)。一方、1の長さを伸ばした変種、1-15mer(長さ約30Å)は、実質的に1より溶血性が高く(SR=0.55)、細胞毒性が高く(図2)、抗菌性がわずかに低かった。緩衝液中でのこれらの化合物のヘリシティは一致する(データ表示せず)。
【0034】
1及び2の疎水性Ile様のNb及びPhe様のNspeモノマーを、各々、よりかさ高く疎水性の高いNsmb及びNsnaで置換することによって、長さとは独立して疎水性を調節した(図1)。2−Nsmb2,5,8,11及び2−Nsna6,12の分子疎水性を高くしたことで、抗菌活性及び溶血活性の双方が増大した(表1)。しかし1−Nsna6,12は、1に対しての抗菌活性が増大せず、溶血性が高い(SR=1.2)。
【0035】
また、疎水性を低下させた1の変種2種を作成した。1中の均等に離間した疎水性Nspe残基2個を、生理的pHでは極性があるが大部分において無電荷の、ヒスチジン(図1)のアキラル性ペプトイドモノマー類似体である、Nhisによって置換し、1−Nhis6,12を得た。このオリゴマーは、1と比較して、実質的に溶血が低下し(SR>31;表1)、細胞毒性(図2)が低下したが、B.subtilisに対する抗菌活性はわずかに低下しただけである。疎水性を低下させた第2の変種、1−Proを、6位にあるNspeをl−プロリンで置換することによって作成した。プロリンはペプチドのα−ヘリックスを不安定にすることがよく知られているが、l−プロリンは左巻きI型ポリプロリン様のペプトイドヘリックス内にうまく収容されているため、1−Pro及び1のヘリックスは緩衝液中で同様であった(図3A)。1−Pro(SR=8.9)は1より低い溶血及び細胞毒性を示し、抗菌活性は1と同等である(Tble1、図2)。
【0036】
電荷については、AMPの大部分は陽イオン性であり、それらの塩基性残基を無電荷部分又は陰イオン性部分と置換すると、一般的に抗菌活性が失われる。アンペトイドにおけるこの現象を調べるため、1中のNlysモノマーを、グルタミン酸塩様のNglu(図1)と置換し、1−Nglu4,10及び1−Nglu1,4,7,10を作成した。双性イオン性1−Nglu4,10は、1と比較して、B.subtilisに対して活性が著しく低下し、同様に陰イオン性細菌膜との有利な静電相互作用がないため、E.coliに対して不活性である(表1)。しかし、溶血性がかなり高い(SR<0.17)。完全に陰イオン性である変種、1−Nglu1,4,7,10は、抗菌活性及び溶血活性の双方を欠いている。
【0037】
両親媒性を調査するため、全体的な(global)両親媒性(2scrambled)を排除するよう設計された2の組み換え配列と同様(表1)、ブロック状構造(1block)であり、面状両親媒性ではなく末端が両親媒性の、1の異性体を作成した。該1block配列中の陽イオン性残基及び疎水性残基の末端を分離すると、ヘリックスに沿った残基の面状構成とは独立した強力な両親媒性の構造が確実に得られる。1blockは、1と同じモノマー組成であるが、1よりわずかに抗菌性が低く、溶血性が高い(SR=2.6)。緩衝液中及び脂質環境(図3B、4B、5B)での2scrambledのCDスペクトルは、2にほぼ一致し、2scrambledが、その組み換え配列によって、2に対して全体的な両親媒性が低い構造化ヘリックスを形成すること示唆している。ペプトイド2scrambledは抗菌活性を示すが、最高120μMまで溶血は示さない。
【0038】
【表2】

ペプトイド1のアルキル化変種の抗菌活性、抗真菌活性及び溶血活性
モノマー構造については図1を参照。
【0039】
*アスタリスクを付したものを除いて、アッセイは全て陽イオンを調整したブロス中で行われた。
†HPLC溶出は疎水性の大きさとして挙げ、HO中のアセトニトリルのパーセントと定義する(C18カラム、0.1%TFA、pH1の存在下で実施)。
【0040】
抗菌ペプトイドに対するアルキル化の効果を試験するため、1の一連のアルキル化変種を、アルキル尾部の長さとペプトイド鎖の長さの両方を系統的に変化させて合成した。一般に、ペプトイド鎖の長さは、元の1の配列から3モノマー(ヘリックス1回転)ずつ減らした。しかし、2価の正電荷を含む活性のある極めて短いAMPの報告に基づき、最短の長さにおいて付加的なNlysモノマーを保持した。N末端基ペプトイド残基の側鎖として、サブモノマーペプトイド合成プロトコル(置換ステップに適したアルキルアミンを用いて)によって、アルキル尾部を組み入れた。ペプトイドは全て、C末端においてアミノ化した。表2は、調査したアルキル化ペプトイドの短縮名及び配列とともに、これらのアルキル化変種の活性を列挙している。興味深いことに、分子量が1のおよそ半分である化合物、C13−14merは、1に匹敵する抗菌活性を示し、実際に赤血球に対してより選択性が高いことが分かったことは、注意に値する。
【0041】
また、可能性のある抗真菌活性の特徴を調べるため、アルキル化化合物のライブラリを、代表的な真菌株であるC.albicans(カンジダ・アルビカンス)に対して試験した。いくつかのケースでは、C10−16mer及びC13−14mer等の化合物は、有効かつ選択的な抗真菌活性を有すると分かった。
前出の分子世代は、特定の分子パラメーター(キラリティ、長さ、疎水性等)の構造機能相関を解明するよう設計した一方、別の世代の化合物は、選択性に関する結果を探究するよう明示的に設計した。これらの化合物の抗菌力を、陽イオンを調整したMHB中で上述の微量希釈プロトコルを用いて、菌種E.coli(ATTC35218)及びB.subtilis(ATTC6633)に対して試験した。NIH 3T3マウス線維芽細胞に対する配列、抗菌活性、溶血活性及び代謝阻害濃度の概要を表3に示し、それらの設計の理論的根拠を以下に記述する。
【0042】
【表3】

選択性の探究用に設計された第二世代ペプトイドの配列及び活性
【0043】
限定されないが、異例の選択性を有することが判明した表1中の2つの分子(1−Pro及び1−Nhis6,12)を用いて、いくつかの新しい配列を誘導そた。1−Proは1よりも抗菌性が高いが溶血性は低いことが判明したため、2種類の異性体的に関連性のある化合物(1−Pro3,1−Pro)を作成し、プロリン残基の位置が活性及び選択性に与える効果を探究した。また、3位および9位の双方にプロリンを有するある変種(1−Pro3,9)を、プロリン残基の数を増やすことが活性プロフィールに与える効果を評価するよう設計した。第2の分子対(1−Nhis及び1−Nhis3,6,9,12)を作成し、配列内でNhis残基の数を調整することで起こる効果を調べた。
【0044】
疎水性が活性及び選択性に与える効果を、表3に記述するさらなる分子セットを用いて調べた。いくつかの配列は、選択されたNspe残基をアキラル性Npm残基によって置換して設計した(図1を参照)。2種類の配列では、含まれる4つのNpm残基が一面に整列しているか(1−Npm2,5,8,11)又はペプトイドの二つの面に分布している(1−Npm2,3,8,9)。また、12位を除いて全てのNspeがNpmで置換されている分子(1achiral−Nspe12)を、疎水性が低くなるが、まだ多少ヘリカルとなるよう設計した。キラル残基をC末端に含有させることは、ヘリシティを促進することが示された。最後に、1の全アキラル性のものである1achiralは、Npmで置換されたNspe残基を全て含有する。
【0045】
Nsmbと異性体的に関連性がある(図1)疎水性側鎖Nsdpを、さらに脂肪族側鎖の使用を調査するためのあと二つの配列に組み入れた。1−Nsdpallは、Nsdpで置換されたNspeモノマーを全て有し、1−Nsdp2,5,8,11は、一つの面に4個のNsdpモノマーを示す。
最後の配列の系統は、配列レジスター、電荷配分及び長さが活性及び選択性に与える効果を評価するよう設計した。化合物1B及び1Cは、1の異性体であり、各々末端の電荷の存在を取り除くため(Nspe−Nlys−Nspe)、もしくはC末端の電荷(Nspe−Nspe−Nlys)を示すため、配列レジスターを変さらした。また、分子の多数の面に分布した電荷の価数を増やした(すなわち、疎水性を低下させた)数種類の化合物を作成した。化合物1−Nlys5,11は、5位及び11位の2個のNspeモノマーをNlysで置換し、結果的に電荷が2つ増えた1の配列を示す。その他の変種は、1Bレジスター配列において、同様に4位及び10位の両方をNlysで置換した、12mer(1B12mer−Nlys4,10)及び15mer(1B15mer−Nlys4,10)のものを含む。また同様に、3面上に分布するNlysモノマーを付加した分子(1B12mer−Nlys4,6,10および1B15mer−Nlys4,6,10)を作成した。
【0046】
脂質層中のアンペトイド配向のX線反射率研究
細胞膜の外葉を模したモデル脂質層(図6)におけるアンペトイド1の膜配向及び浸透深さを調べるため、シンクロトロン放射を用いて液体(水性緩衝液)表面鏡面X線反射率(XR)研究を行った。単分子膜から反射されたX線からは、界面に垂直の電子密度プロファイルが得られ、層の厚さ及び追加された分子の存在及び配向を決定することができる。実験データを、厚さ、電子密度及び界面粗さが均一なスラブの重なりとして表わす。
純粋なDPPG(陰イオン性)フィルムのXRデータ(図6、円)は、二重スラブモデルと良好に適合し、炭化水素尾部密度(ρ/ρ)0.99、炭化水素尾部のスラブ厚み(L)17.9Å、また頭部の電子密度(ρ/ρ)1.54及び頭部のスラブ厚み(L)5.7Åが得られた。これらのデータは、先出のDPPG単分子膜X線研究と良く一致している。XRプロフィールは、ペプトイド1を導入した後に劇的に変化し(図6、正方形)、四重スラブモデルに近似する。この近似によると、第一のスラブ(ρ/ρs=0.96、L1=12.1Å)は1のない脂質尾部と対応し、第二のスラブ(ρt+p/ρs=1.05、L2=2.8Å)は1を部分的に挿入した尾部部位と対応し、第三のスラブ(ρh+p/ρs=1.33、L2=7.0Å)は、1が完全に挿入された脂質頭部部位と対応し、第四のスラブ(ρ/ρs=1.16、L2=3.6Å)は、DPPG頭部を超えて突出している1のみに対応する。この電子密度プロファイルは、脂質頭部を貫通する1の挿入及び部分的に脂質尾部を通っている1の挿入と一致する。さらに、1がそのヘリックス構造をモデル脂質単分子層内で保持すると仮定すると、データは、1がペプトイドの界面法線とへリックス長軸との間で約56°の角度で挿入していることを示唆している。
【0047】
【表4】

ペキシガナン及び選択されたアンペトイドのBSL2及びBSL3病原性菌に対する広域スペクトラムの抗菌活性。
【0048】
種々の病原性菌に対する広域スペクトラムの活性は、AMPの特徴である。従って、選択されたペプトイド及び対照ペプチドペキシガナンを、16種類の臨床的に関連する生物学的安全性レベル−2(BSL2)病原性微生物、7種類のグラム陰性株及び9種類のグラム陽性株に対して試験した。表4に示すこれらの微生物のMICの概要は、製薬用途に最適化されたペキシガナンに匹敵する有望な活性を示す。
【0049】
ペプトイドがマウス腹膜注入モデル内で感染を治療する生体内有効性。
マウス腹膜注入マウス・モデル(murineperitoneal injection mouse model)を用いて、ペプトイドの感染治療能力をインビボで評価した。食塩水で処理した対照に対するペプトイド1の別個の研究3件及びペプトイド1−Nhis6,12の研究2件で得られた結果を、図7に示す。横線は、各個体群の幾何平均を表わす。
【0050】
先の研究では、AMPと同様の抗菌力を有する化合物を作成するためにペプトイドを使用できることが判明している。この研究では、アンペトイドとAMPとの機能的及び機構的類似性を示唆し、アンペトイドの臨床的に有益な抗生物質への発展の可能性を示すアンペトイド変種のライブラリ作成及び研究するため、ペプトイドのヘリックス形成の容易な合成及び高い性向を利用した。
1及び1enantiomerの同等な活性は、アンペトイド機構が、全体的な掌性(handedness)や、レセプタ又は酵素との立体特異的な相互作用、多くのAMPに観察されてきた属性に依存しないということを示す。アンペトイドが膜と相互作用し、膜内に挿入するという証拠は、X線反射率研究(図6)によって提供される。さらには、頭部を通り部分的に脂質尾部内部に至る、ペプトイド1の挿入の深さは、1が疎水性及び親水性の脂質部分と同時に相互作用することを示す。よって、AMPと同じく、1の両親媒性構造は、膜との相互作用に不可欠である。界面法線に対して〜56°の角度で1が配向していることで、1が樽側板メカニズム(barrel−stave mechanism)によって機能していないことが示唆される。これは、該メカニズムには、膜貫通配置が必要であるためである。1が天然のα−ヘリックス抗菌性ペプチドと同じ機構的挙動を示すと結論を下すことはできないが、これらのX線結果により、ペキシガナン及びLL−37等のAMPに見られるものと一致するアンペトイドと脂質の相互作用が示される。
【0051】
最終的に、アンペトイド活性は構造及び機能に関する傾向にも従っているかどうかをAMPと類似の方法で調べ、選択的なアンペトイドの物理化学的性質は選択的AMPと一致していることが分かり、非選択的ペプトイドは、細胞毒性のペプチドと密接な類似性を示す。多種多様なAMPに関する多数の構造活性研究によって、選択的な抗菌活性又は非選択的細胞毒性を誘発する物理化学的特性が明らかにされてきた。構造の種類(すなわち、α−ヘリックス、β−シート、ループ、又は伸長)にかかわらず、非選択的AMPは典型的には、
(1)非常に疎水性であり、そのためそれらと膜との相互作用は主に疎水性効果に支配され、
(2)はっきりした(well-defined)両親媒性の構造を有する。
一方、選択的AMPの抗菌活性は、以下のものに依存している。
(1)高い実効陽イオン性電荷(但し、過剰な陽イオン性電荷は溶血活性につながる可能性もある)及び
(2)ちょうど中程度の疎水性。おそらく反直感的には、はっきりした両親媒性構造は、選択的な抗菌力に必要ではない。AMP二次構造の不安定化は選択性を向上させることが多い。
【0052】
アンペトイド1−Nglu4,10,15mer,1−Nsna6,12及び1blockは全て、ペプトイド1(SR<6.0)より選択性が低い(表1)。非選択的AMPの性質と一致して、これらの化合物は全て、1より疎水性が高く(RP−HPLC溶出時間によると)及び/又は電荷が少ない(1−Nglu4,10)。さらには、それらは全て、赤血球模倣POPC/CH SUV(図4)中で1と同等にヘリカル(もしくは1以上にヘリカル)であり、その脂質環境におけるそれらのはっきりした膜結合型両親媒性構造を表す。
【0053】
一方、19mer、1−Nhis6,12及び1−Proは全て、1と同等の抗菌活性を有するが、選択性が増強する(SR>6.0)。これらのペプトイドは全て1より親水性が高く、全て実効電荷が少なくとも+3である。よって、実効正電荷を有し、十分であるが過剰でない程度に疎水性であるならば、アンペトイドは選択的に活性であり、これは選択的AMPの観察と全面的に一致する現象である。また、短縮19merにおける抗菌活性の保持及び選択性の増強は、切断型AMPの研究において観察される挙動と類似している。
【0054】
一般に、長さがアンペトイドの効力及び選択性に与える効果は、長さに比例して増大する疎水性の差にかなり起因する可能性がある(RP−HPLC保持時間、表1)。12mer 1は、それより長い類似体や短い類似体より抗菌性が高いため、これらの結果は、抗菌活性が最大となる至適な疎水性の存在を示唆する。疎水性が高まると、溶血活性のみが増大する。この結論は、疎水性が中程度の2−Nsap2,5,8,11及び2−Nsna6,12は両方とも2より抗菌性が高く、溶血性が高いため、疎水性変種によっても裏付けられ、一方で強疎水性の1−Nsna6,12(表1)は、1に対して溶血性の増強を示すが、抗菌活性は増強しない。これらの結果は、AMP及びそれらの変種の観察と一致する。
【0055】
それらは2より溶血性が高いが、ペプトイド2−Nsna6,12及び2−Nsap2,5,8,11はそれでも1より選択的性が高く(SRはそれぞれ7.6、16)、それらの物理化学的性質は、この発見と一致する。それらは電荷が大きく(+4)、疎水性が中程度であり、低ヘリシティと一致したCDスペクトルを示す(図3B、4B、5B)。2−Nsna6,12のCDスペクトルは赤方偏移した極値を示し、不安定化した二次構造を示唆している。よって、これらの2の変種は全て、はっきりしない両親媒性構造を有する。
【0056】
実際に、AMPと一致して、結果は総じて、溶血活性には両親媒性の高い構造が必要であるが、抗菌活性には必要ではないことを示唆している。POPE/POPG SUVでのアンペトイドのCDスペクトル(図5)は、この細菌模倣系でのヘリシティの程度は、抗菌力と相関性が低いことを示す。例えば1−Nsna6,12は1よりヘリシティが低い(図5A)が、該2種類の化合物は同様の抗菌能を有する(表1)。一方、2−Nsap2,5,8,11は2と同様にヘリカルである(図5B)が、2−Nsmb2,5,8,11は抗菌性がはるかに高い(表1)。
【0057】
しかし、赤血球模倣POPC/CH SUV(図4)でのCDスペクトルは、溶血活性とヘリシティとの相関を明らかにしている。1−Nsna6,12及び1−Nglu4,10は、最も溶血性の高いアンペトイドであり(表1)、POPC/CH SUV(図4A)中で最もヘリカルである。115merもまた非常に溶血性が高く、POPC/CH中で1と同等にヘリカルである。逆に、1−Nhis6,12、2,2−Nsmb6,12及び2scrambledは、1より溶血性が低く(表1)、ヘリシティが低い(図4)。よって、これらの陽イオン性、面状両親媒性化合物に関しては、陽イオン基及び疎水基間のきれいな分離をもたらすはっきりしたヘリックス構造は、溶血活性に重要であると思われる。さらに、そのヘリシティとは独立したはっきりした末端両親媒性構造を有する1blockによって、洞察がもたらされる。1blockは溶血性である(SR=2.6)。共に、これらの結果は、ヘリシティが、オリゴマー化及び非選択的機構への偏りを容易にする両親媒性構造を組織化するための手段としてのみ重要であることを示唆する。この結論に基づくと、2scrambled等のヘリカルであるが両親媒性に乏しい化合物は、抗菌性であるが選択性があるはずである。実際に、2scrambledは細菌を殺傷するが、最高120μMまで溶血を示さない。
【0058】
結果はまた、疎水性が溶血活性にも関連していることを示し、1−Proと1との比較により、この関係がより具体的に確証される。これらのアンペトイドは、同じ実効電荷の同様の配列を有し、ほぼ一致するCDスペクトルを示す(図3A)。これは、それらのらせん含有、ひいてはそれらの結果として得られる両親媒性が同様であることを示唆する。しかし、Nspe→Proの置換はRP−HPLC溶出時間(表1)に従って疎水性の低下を起こす。この唯一の相違点は、1と比較して1−Proの溶血性及び細胞毒性活性の低下に反映され、他の全てのパラメータが一定である場合、選択性が疎水性に依存することを明らかにする。
【0059】
表3の結果は、分子構造の特徴がペプトイドの活性と選択性をいかに調整するかについてさらなる洞察を提供する。抗菌活性がプロリンの位置によって変化しない一方で、プロリンがC末端に近づくと、細胞毒性は低下する。プロリンは、その哺乳動物細胞への有害性を低下させるC末端における構造安定性を提供する一方、その殺細菌力に影響を及ぼさない可能性がある。Nhis残基の数を増やすことは、抗菌活性と細胞毒性の両方を低下させた。興味深いことに、1−Nhis6,12(この系統の基礎配列)がE.coli ATCC35218に対して当初試験された株(JM109)よりはるかに活性が低いと分かった。
【0060】
様々な量のアキラル残基を含んでいる化合物の系統は、アキラル残基の位置は抗菌活性に多大な影響を及ぼさず、選択性(表3、1−Npm2,5,8,111対1−Npm2,3,8,9)には影響を及ぼす可能性があることを示す。面白いことに、これらの化合物は両方とも化合物1と等しい抗菌活性を示すが、優れた選択性を示す。アキラル残基が増えると、抗菌活性が低下するようにも見えるが、これは疎水性の低下とヘリックスの組織的構成が減少したことを原因とする可能性がある効果である。全てのNsdp残基を含有する配列は比較的活性が低いが、4個のNsdp残基を1面に沿って含有する配列(1−Nsdp2,5,8,11)は抗菌力を示す。
【0061】
荷電数を増やし、それらを多数の面に分布させると活性にいかに影響を与えるかを調べるため、いくつかの化合物を作成した。電荷の増大の効果を打ち消すため、2個の分子の長さを伸ばし疎水性を高めた。興味深いことに、この系統のどの分子も、同じく疎水性の低下のため、E.coliに対して活性がないが、全ての分子がB.subtilisに対して非常に活性が高いことが示された。同時に、赤血球と哺乳動物細胞に対しては完全に無毒である。この系統は、荷電がこれほど大きくない分子の作用とは異なる作用メカニズムによって作用している可能性がある。
【0062】
広域スペクトル抗菌物質テストと生体内の有効性研究の結果は、抗菌物質ペプトイドの治療可能性を示す。試験したほとんど全てとも言える7種のペプトイドは、9種のグラム陽性株(バンコマイシン耐性4を含む)に対して、ペキシガナンより強力だった。グラム陰性株に対して、化合物1と1−Nsdp2,5,8,11は、ペキシガナンに相当する活性を示した。
【0063】
図2に示されるインビボの結果より、ペプトイド1(p<0.05)で処理すると、腹膜洗浄液からの細菌数がかなり減少したことが分かる。さらに、ペプトイド1で処理されたマウスで、早期死亡したものはなかった。他方、ペプトイド1−Nhis6,12で処理した11匹のマウスのうち、8匹は暴露期間の間に早期死亡した。全3件の実験を通して、食塩水で処理した15匹の対照のうち、4匹のみが早期死亡した。また平均細菌数は、食塩水で処理した対照と比較して減少しなかった。
【0064】
要約すると、結果はAMPや同じくアンペトイドのうちでの抗菌活性は、中程度の疎水性及び実効陽イオン性電荷に依存しており、一方、溶血活性は、らせん含有に関わらず、主に高疎水性及び強両親媒性構造と関連性があることを示唆する。MTS分析評価は、A549真核生物哺乳動物細胞に対する溶血活性と細胞毒性の間の類似した傾向を示す。アンペトイドの構造と機能の関係は、AMPにおけるそれらの関係と経験的に類似している。X線反射率研究は、アンペトイド1が膜活性型であり、安定した膜結合型配向を採用することを示し、AMPとアンペトイドとの細胞レベルでの類似性を実証する。
【0065】
アルキル化変種の結果によると、アルキル鎖を付着させることが、アルキル化ヘリックスが長いものと同等抗菌活性及び無毒性を有する、非常に短いペプトイドの作成に使用できるかもしれないことが分かる。特に、Ndec−16mer及びNtridec−14merの双方は、活性及び選択性が1に匹敵すると分かった。ほとんどのAMPの長さがアミノ酸〜12−100個の範囲であるとすると、そのような低分子量(<1kDa)ペプトイドが細菌と真菌に対してそのような効力と選択性を示すことは注目に値する。アルキル尾部のN末端基への付着は、効力の向上及びアンペトイドの分子量の低下に役に立つモチーフである可能性がある。さらに、アルキル化はペプトイド機能に対するはっきりした効果を示す、効果的で調整できる修飾である。
【0066】
ペプトイドには、向上した安定性、生物学的利用能及びその調整可能性の高い側鎖化学のため、医薬として、また生体適合物質中での使用に、ペプチドより大きな可能性がある。ペプチドが有し得る毒性は、それらの臨床用途を制限する大きな障害であるため、ここでAMPペキシガナンとの比較で観察されるアンペトイドの低細胞毒性は、それらの治療可能性をさらに強調するものである。ここに報告される結果は、アンペトイドと他の非天然オリゴマーの抗菌物質としての合理的な設計と最適化を促すであろう。
【0067】
上述の研究の継続として、特定の構造特性が選択性に影響を及ぼす方法及び範囲をより完全に探究することを目的として、他の多様なアンペトイドを作成した。(表5〜7、図9〜17及び実施例10〜15を参照。)さらなるアンペトイドを、以前に報告した十二量体、ペプトイド1より得た。ペプトイド1は、反復配列H−(Nlys−Nspe−Nspe)−NH中に配置した1/3リジン様の荷電モノマー(Nlys)及び2/3フェニルアラニン様の疎水性モノマー(Nspe)から成る(図9、表5)。上に述べた特定の化合物を参照すると、付加的な分子を、抗菌力及び細胞選択性に対する、(1)一次配列、(2)配列レジスター、(3)実効電荷及び(4)電荷/長さ比率(CTLR)の重要性を探究するよう設計した。異なる疎水性部分の影響は、一つ以上のNspeモノマーを他の疎水性部分と組織的に置換することによって評価された。(1)Lプロリンモノマー(2)アキラル性疎水性モノマー、(3)逆のキラリティーの疎水性モノマー(Nrpe)及び(4)脂肪族疎水性モノマー。また、上記のように、幅広く研究され、臨床的に重要なマガイニン−2のAMP類似物であるペキシガナンを、AMPへの比較の基準として、この研究に含めた。
【0068】
ペプトイド1(基本配列)と、アンペトイド変種(上述のものを含む)の三倍周期構造を示している概略的な構造を図9に示し、ここで述べる設計戦略およびアンペトイド変種間の関係を明らかにする。この研究全体にわたり言及する3種類の分子アンペトイド面を、図示の通り、左側、後側及び右側に整列したモノマーとして表す。各分子の完全な配列を、分子量、実効電荷、CTLR及び分子疎水性の大きさとして、溶出時の逆相HPLC(RP−HPLC)溶媒組成を含むその他の分子物性とともに表5に示す。一般に、上に示したように、アンペトイドの命名規則は、基本化合物(1、ほとんどの場合)を含み、基本化合物と比較して配列がどのように修飾されているかの説明が続く。例えば、化合物1B−Nlys4,10は、Nlysモノマーが4位と10位で置換された1Bの配列をベースとする変種を表している。
【0069】
細菌株と哺乳動物細胞に対する全化合物の活性を、表6にまとめる。代表的なグラム陰性(E.coli ATCC 35218)及びグラム陽性(B.subtilis ATCC 6633)生物学的安全性レベル1(BSL1)生体に対する全ての化合物の効力を調べた。哺乳動物細胞への毒性の従来基準である溶血活性に加えて、各アンペトイドがNIH 3T3マウス線維芽細胞に与える効果を、MTSテトラゾリウム塩比色測定法を用いて求めた。溶血は赤血球の溶解の程度を示し、MTS測定法は、細胞代謝活性が抑制される範囲を間接的に定量化する。
【0070】
これらの分子によって示される溶血活性の範囲が阻害活性の範囲よりかなり大きいので、溶血アッセイは、哺乳動物細胞に対する活性をより高感度に計測する。従って、赤血球と比較した様々な細菌株に対する各アンペトイドの選択性を、選択比(SR)として報告する。選択比は、10%溶血用量を細菌株ごとの最小阻止濃度(MIC)で割った値と定義される。
【0071】
このライブラリにおけるアンペトイドは、3.1μM〜>100μMに及ぶグラム陰性E.coliに対する抗菌能を示した。同様に、溶血活性はHD10=16μM〜HD10>200μMの範囲であり、代謝阻害活性はID50=4.9μM〜ID50>100μMの範囲であった。これらの化合物によって証明される活性及び選択性の幅は、このライブラリは、構造と活性の関係を解明するため、一連の反応に影響を与えるよう上手く設計されていることを示唆する。1(SRE.coli,=3.3)と比較して、26種類のアンペトイド変種のうち17種類は、E.coli(SRE.coli=6.8〜26)に対する選択性の向上を示す。4種類のアンペトイド(1−Npm2,5,8,11,111mer,1ach−Nspe,1ach−Nspe12)が、ペキシガナン(SRE.coli=11)と比較して、同等(6.3μM)及びより高い選択性(SRE.coli=14〜26)を示した。E.coliに対するそれらの活性と比較して、全てのオリゴマーが、MICが0.78〜1.6μMの範囲であり、B.subtilisに対してより効力が高かった。対応する選択比は>256と高かった。
【0072】
【表5】

アンペトイド及び対照ペプチドペキシガナンの配列及び分子物性。各配列に示すペプトイドモノマーの構造については図2.1を参照。HPLC溶出は、注入3回に対する化合物溶出時の溶剤混合物中のアセトニトリルの平均比率として報告する。アセトニトリル/水(0.1%トリフルオロ酢酸)を、45分間のアセトニトリル5%から95%までの直線勾配で、C18カラムに流した。§CTLRは、charge−to−length ratio(電荷対長さの比)の略であり、荷電モノマー合計数の、各配列中のモノマー合計数に対する比率と定義される。

【0073】
【表6】

アンペトイド及びペキシガナンの細菌及び哺乳動物細胞に対する活性。E.coli(ATCC35218)及びB.subtilis(ATCC6633)に対する最小発育阻止濃度(MIC)、NIH 3T3マウス線維芽細胞に対する10%及び50%溶血用量(HD)及び50%抑制量(ID)を示す。*選択比(SR)は、10%溶血用量の、対象菌株のMICに対する比率と定義する。
【0074】
アンペトイドの二次構造を、POPC/コレステロール(モル比2:1)かPOPE/POPG(モル比7:3)から成る10mMのトリス緩衝液(pH7.4)及び小さな一枚膜リポソーム(SUV)を含有する同緩衝液で、円二色性(CD)分光法を用いて評価した。POPC/コレステロール混合物は、赤血球膜を模した双性イオン性二成分モデルの脂質製剤であり、負に荷電したPOPE/POPG混合物は、E.coli外膜の組成を模したものである。芳香族右巻きポリ−プロリン−I型様のヘリックスから成るペプトイドは、極大値が192nm、2つの極小値が各々〜202nm及び〜220nmにあるスペクトルの特徴を示す。
【0075】
Nlys−Nspe−Nspeの周期的な三量体反復配列を有するペプトイド1は、図9に示すように、左側の分子面に沿って面状に整列した四つのNlysモノマー(1、4、7及び10位)からなり、荷電したN末端モノマーを有する。配列レジスターを修飾した2種類の異性体変種を作成した。この変化は、末端位置に対するモノマーの相対位置に最も明白に影響を与えるものである。ペプトイド1BはNspe−Nlys−Nspeの三量体の反復を有し、背面に沿って荷電モノマーを示し(2、5、8及び11位)、両末端に疎水性部分を有する。アンペトイド1Cは、Nspe−Nspe−Nlysの配列レジスターを示し、右側面に沿って(3、6、9及び12位)荷電モノマーを有し及びC末端位置に荷電モノマーを有する(図9を参照)。この系統の最後の変種は「組み換え」異性体、1scrであり、4個の荷電モノマーが3つの分子面全てにわたって分布する非周期的配列で作成した(図9)。
【0076】
全ての3種類の変種のE.coli(MIC=6.3μM)及びB.subtilis(MIC=1.6μM)に対する抗菌効力は、1と同じであり、それらのNIH 3T3細胞に対する毒性もまた、ID50値4.9〜5.6μMと同様であった。しかし、1scr(HD10=64μM)及び1B(HD10=55μM)に対する溶血活性は、1(HD10=21μM)及び1C(HD10=25μM)と比較して低下した。結果として、1scr(SRE.coli=10)及び1B(SRE.coli=8.7)に対する選択性は、1(SRE.coli=3.3)及び1C(SRE.coli=4.0)と比較してより有利であった。
【0077】
CD分光法により、これらの変種は全て、1と同様の10mMトリス緩衝液中でヘリシティを示し、1scrがわずかにヘリカルが高く、1Cがわずかにヘリシティが低い(図10A)ことが分かった。しかし、1Bは、POPC/コレステロール及びPOPE/POPG脂質の双方において、その他の変種と比較して220nmでのヘリカル強度が著しく増大した(図10B、C)。その組み換え配列の設計の性質により、1scrに対するヘリシティの範囲は、その両親媒性の度合いから切り離されている。3つの分子面全てに電荷を分布させると、三倍周期ヘリックス構造に関わらずその両親媒性が低下する。1scrのある分子面に沿った側鎖部分の分子内静電反発力が低下すると、その両親媒性が全体的に低下するにもかかわらず、よりヘリカルな二次構造を容易に収容するという可能性がある。以上の研究に基づくと、両親媒性の低下は抗菌力を損なうことなく選択性を向上させる可能性がある。実際に、1scrは、抗菌力が低下せず(両分子ともMICE.coli=6.3μM、1(SRE.coli=3.3)と比較して、選択性(SRE.coli=10)が向上する。
【0078】
アンペトイドの第2の系統を、電荷密度の増大が効力及び選択性に与える影響を評価するよう設計した(図9)。実効電荷の低下したアンペトイド変種より導き出された構造活性相関は、同じく負に荷電した細菌膜との静電相互作用が不利であるため、それらの細菌に対する選択性を著しく低下させると分かった。アンペトイドのこの系統の変種を、実効電荷及び電荷/長さ比(CTLR)の増大が細胞選択性に与える影響を探究するよう設計した。アンペトイド1及びこのライブラリの他の変種のほとんどは、実効電荷が+4、CTLRが0.33である。これらの化合物は、+6〜+8の範囲の実効電荷及び0.47〜0.58の範囲のCTLRを示す。また、これらの化合物の疎水性(HPLC溶出時のアセトニトリルが45.4%〜55.5%範囲)は、1(65.1%)と比較して全て著しく低下した(表9)。1−Nlys5,11は、ヘリックスの背面に沿って整列した5位及び11位で置換されたNlysモノマーを(1と比較して)2個多く有し、合計6価の正電荷を有する(図9)。1B−Nlys4,10は、1Bの配列レジスターを持つ1−Nlys5,11の異性体変種であり、1B−Nlys4,6,10は同様に、陽イオン性電荷が3分子面全てに存在し、実効電荷が+7である。これより長い15mer変種である、1B15mer−Nlys4,10及び1B15mer−Nlys4,6,10も、(Nspe−Nlys−Nspe)ターンをC末端に追加して作成し、実効電荷は各々+7及び+8となった(図9)。
【0079】
この系統の変種は全て、E.coli(MIC=50−>100μM)に対する活性が著しく低く、非溶血性(HD10>100μM)であり、1と比較して、これらの変種の疎水性の低下に大きく影響を受けた結果であった。変種のこの系統は広範囲の選択性を示さないため(SRE.coli>2〜>4)、物理化学的性質と選択性との有意義な関係を解明することは困難である。しかし、観察された全般的な傾向は、CTLRが〜0.50未満、疎水性がアセトニトリル〜50%超であり、1つの完全に疎水性である面(1−Nlys5,11,1B−Nlys4,10及び1B15mer−Nlys4,10)を有する変種は、弱い活性を示したということである(MICEcoli=50μM)。CTLRが〜0.50超、疎水性がアセトニトリル〜50%未満であり、3分子面全てに電荷が分布する変種(1B−Nlys4,6,10及び1B15mer−Nlys4,6,10)は、完全に不活性であった(MICEcoli>100μM)。これらの結果は、AMPとアンペトイドの双方について過去に確立された構造と活性の関係と釣り合うものである。(1)抗菌オリゴマーは、グラム陰性菌に対して有効であるためには疎水性が十分でなければならない及び(2)荷電が大きく両親媒性に乏しい構造は、一般的に選択性である。
【0080】
この分子系統が示したE.coliに対する活性の低下がB.subtilisに対する活性に持ち越されなかったことは、大いに注目に値する。1(NC=+4、疎水性=65.1%及びCTLR=0.33)と比較して、この分子系統が示した物理化学的性質の顕著な変化にも関わらず(+8の高NC、アセトニトリル45.4%の低疎水性、0.58の高CTLR)、B.subtilisに対するこれらの変種のMICは、0.78〜1.6μMの範囲であり、1と非常に近いものであった。このライブラリにおける分子のB.subtilisに対する得られた選択比は、試験した全化合物中、最高の部類に属するものであった(SRB.subtilis>256)。
【0081】
図11のCDスペクトルは、1B−Nlys4,6,10の例外を除き、10mMトリス緩衝液中で全ての化合物が1と同様のヘリシティを示したことを示す。しかし、POPC/コレステロール脂質中では、ヘリシティとCTLRとは逆の関係にあり、同時に、ヘリシティとアキラル性モノマー含有量も逆の関係であった。アキラル性モノマーの含有量の増大がペプトイドのCDスペクトルに与える影響は、脂質小胞の疎水性環境ではっきりと示されている。図11Bに示すように、アキラル性モノマーの含有量の増大は、特に220nmでの全体的なCD信号強度を低下させた。
【0082】
図9及び表5に示すように、長さが10〜13モノマーの範囲の十二量体ペプトイド1の変種を探究した。CTLRが一定(16mer,19mer,及び115mer)で長さを変えたアンペトイドの変種を探究した上述の研究から、長さを12モノマー以上(アンペトイド1)に伸ばすと、抗菌効力は向上せず、溶血活性のみが増大することが分かった。この研究における変種、110mer、111mer、1及び113merは、配列長さの差が小さいが、CTLRの範囲に著しく影響する(0.33〜0.40)。このCTLR範囲は、電荷密度変種が示す範囲と比較して著しく低い(0.47〜0.58)。図12に示すCDスペクトルは、水性緩衝液及び脂質環境の双方において、全ての変種が同様にヘリカルであり、従って同様の両親媒性を示すことを示唆している。
【0083】
先ず実効電荷が+4(110mer,111mer,1)の変種のみを考えると、疎水性とCTLRの両方とも、長さと単調に対応する。アンペトイド1(12mer)は最も疎水性が高く(アセトニトリル65.1%)、最も低いCTLRを示し(0.33)、110merは疎水性が最も低く(アセトニトリル60.9%)、CTLRが最も高いことが特徴である(0.40)。表5のデータは、細胞選択性がCTLRと直接関係し、疎水性とは逆の関係であることを示す。E.coliに対する110merの活性(12.5μM)のわずかな低下(その疎水性の低下の結果)は、その溶血活性のはるかに大きな向上を伴った(HD10>200μM);従って110merは、この群中で最も選択性が高い(SRE.coli>16)。111merは、1と等価な抗菌力(MICE.coli 6.3μM)を保持したが、選択性は110merより低かった(SRE.coli=16)。アンペトイド1は最も選択性が低いことが判明した(SRE.coli=3.3)。同じ傾向が、B.subtilisに対する選択性について観察された(表6)。
【0084】
上記の関係に基づき、113mer(CTLR=0.38)は111mer(CTLR=0.36)と比較して選択性が向上していると予想されたが、これに当てはまらなかったことは注目に値する。逆に、アンペトイド111mer(SRE.coli=16)は113mer(SRE.coli=6.8)より選択性が高い。このことは、110mer、111mer及び1の全てが実効電荷が+4であるのに対し、113merの実効電荷は+5に増大したという事実に起因しうる。上述のように、実効電荷は細胞選択性、特にグラム陰性菌に対する細胞選択性に影響を与える可能性がある。CTLRが0.36で実効電荷が+4の111merが、この分子群のうち有効な抗菌力及び細胞選択性の最適なバランスを表わす。しかし、110mer(SRE.coli>16)、111mer(SRE.coli=16)及び113mer(SRE.coli=6.8)の選択比は全て、1(SRE.coli=3.3)よりも優れている。
【0085】
自然発生のAMP中のプロリンモノマーは、α−ヘリックス二次構造を不安定化させ、ヘリックス−ベンド−ヘリックスモチーフの形成を誘発することが知られているが、ここでは、プロリンはポリプロリンI型様のペプトイドヘリックス構造内に上手く収容されている。プロリンのNspeと比較して低下した疎水性のため、アンペトイド1の配列において、L−プロリンを、中心に位置する疎水性残基で置換すること(この変種を1−Proと呼ぶ)によって、分子疎水性が低下し、選択性が向上することが判明した。いかに相対位置並びにプロリンモノマーの数が効力及び選択性に影響を与えるかを評価するため、CTLR及びヘリシティを一定に保ちつつ、分子系統を設計した。1−Proと同様、1−Pro及び1−Proは、アンペトイド1配列の各々3位並びに9位内に置換した単一のプロリンモノマーを有する。第四の変種、1−Pro3,9は、2個の置換プロリンモノマーを組み入れたものである(図9及び表5)。1−Pro、1−Pro及び1−Proの相対的な疎水性は、全て1と比較して同様である(62.4%−63%)か、低下した(65.1%);1−Pro3,9は、疎水性がはるかに低い(58.1%)ことが判明した。トリス緩衝液中でのCD分光法及び双性イオン性及び陰イオン性脂質の両方は、プロリン含有アンペトイドが1と同等のヘリシティを示すことを示す(図13)。
【0086】
E.coliに対するこれらの変種の活性は疎水性に対応する。1−Pro、1−Pro及び1−Proは、ペプトイド1(6.3μM)と比較してE.coliに対する効力が均一に低下した(12.5μM)。1−Pro3,9,9の効力は、E.coliに対してはさらに弱まった(50μM)。またこれらの変種は哺乳動物細胞に対しても活性の低下を示すため、1(SRE.coli=3.3)と比較して全てのモノ−置換変種(SRE.coli=5.9〜13)に対して選択性が向上した。
【0087】
モノ−置換プロリン含有変種に関する興味深い観察は、プロリンモノマーの配列内での相対位置が、細胞選択性に影響したことである。1−Pro、1−Pro、1−Proは、CTLR、実効電荷及び疎水性が一定に保たれる分子系統を含む。また、これらの変種のうち両親媒性の程度は、水性緩衝液及び脂質環境の双方におけるそれらのCDスペクトルの類似性に基づき、同等である(図13)。しかし、特にプロリンをN末端からC末端部位に移動することによって、赤血球及びNIH 3T3細胞の双方に対する選択性がさらに増大した(表6);1−ProはHD10=74μMかつID50=12μMであり、1−Proはそれぞれ165μM及び24μMであった。得られた選択性は、1−Pro(SRE.coli=5.9)から、1−Pro(SRE。coli=6.6)、1−Pro(SRE.coli=13)の順に単調に増大した。同様の傾向が、B.subtilisに対する選択比について観察された。このことは、アンペトイドが哺乳動物細胞と相互作用する際に好ましい配向がある可能性があることを示唆する。例えば、アンペトイドがC末端部位において哺乳動物細胞と優先的に相互作用する場合、分子のその部分に特異的に疎水性を低下させることは、哺乳動物細胞に対するその活性を損ない、選択性を増大させる可能性がある。
【0088】
選択性を向上させる別の戦略は、疎水性が低く、アンペトイド1において選択されたNspeモノマーの代わりにアキラル性Npm側鎖を有するアンペトイドの系統に関する(図9及び表5)。ペプトイドの分子キラリティーは、主鎖のキラリティーよりも側鎖のキラリティーから導き出されるため、キラルモノマーの数の変化が二次構造の安定性に影響を与えると予想される。従って、この分子系統を、1と比較して、CTLR及び実効電荷の定数のあらゆる変化とは独立して、低下した疎水性及びヘリシティ範囲に影響するようよう設計した。1achiralは、Npmで置換された8個のNspeモノマー全てを有する。2種類の変種、1ach−Nspeおよび1ach−Nspe12は、それぞれ2位と12位に1個のキラルNspeモノマーのみを有する。他の2種類のアンペトイドは、分子の背面に沿って整列している(1−Npm2,5,8,11)か、もしくは疎水性の分子面の両方にかけて分布している(1−Npm2,3,8,9)、各4個のアキラル性Npmを含有する(図9)。
【0089】
これらの化合物の疎水性は、1achiralの59.8%からペプトイド1の65.1%にわたり、一般的に、Nspeの含有量とともに増大する。また、図14に示すように、両親媒性と相関するヘリックス信号の強度は、Nspeの含有量とともに低下した。1achiralのCDスペクトルは平坦であり、このことは、安定した二次構造の欠如及び分子両親媒性の低下を示唆するが、1のCDスペクトルは、最も強いスペクトルの極値を示し、よって最も両親媒性の高い構造を示す。興味深いことに、1ach−Nspe12は、異性体的に関連する1ach−Nspeよりわずかに強いCDスペクトルを示し、C末端位置がペプトイドヘリックス構造の安定化に特に重要な役割を果たすという過去の発見57をさらに裏付ける観察である。
【0090】
アキラル性側鎖を有する変種は全て、E.coli(MIC=6.3〜12.5μM)及びB.subtilis(MIC=0.78〜1.6μM)に対するペプトイド1と同様の活性を示すが、哺乳動物細胞(SRE.coli=6.2〜26;SR B.subtilis=24〜235)に対してよりも、細菌に対して選択性が高い(表6)。一般に、選択性はNpm含有量とともに増大し、モノマーをNspeに置換することは両親媒性及び疎水性を同時に低下させる。
【0091】
変種のこの系統は、疎水性及びヘリシティがいかに効力及び選択性に影響を及ぼすかさらなる洞察を提供する。前出の研究により、疎水性が低くなるよう設計された変種は、(より極性の高いヒスチジン様の側鎖(例:1−Nhis6,12)もしくは疎水性がより低いL−プロリンモノマー(例:1−Pro)を導入することにより、選択性が向上するが、抗菌力の低下なしには成し得ないことが分かった。実際に、この観察は、ここで報告するプロリン含有変種にも成り立つ。しかし、この系統の4種類の分子の活性及び選択性プロフィールは、疎水性を低下させて、抗菌力を損なわずに選択性を向上させることができることを明らかに示す。変種1ach−Nspe、1ach−Nspe12、1−Npm2,5,8,11及び1−Npm2,3,8,9)は、抗菌力は1(MICE.coli=6.3μM)と同等だが、1(SRE.coli=3.3)と比較して著しく向上した選択性(SRE.coli=6.2〜26)を示す。疎水性を低下させるために、Nhis又はL−Proモノマーを用いることと、アキラル性Npmを用いることの最も明白な相違点は、そのヘリシティに与える影響である。1−Nhis6,12及び1−Proの両方が1と同等のヘリシティを示した一方、Npmモノマーの置換は、図14に示すように、ヘリックスの安定性のさらなる低下をもたらした。このことは、疎水性と同時に、両親媒性を低下させること(ヘリシティと相関する)は、抗菌力を損なわずに選択性の向上の手段を提供することを示唆する。
【0092】
このグループ内での異性体の対の比較は、アキラル性モノマーの相対位置は選択性に重要な影響を与えないことを示唆する。例えば、1ach−Nspe(SRE.coli=25、ID50=11μM)と1ach−Nspe12(SRE.coli=26、ID50=15μM)とを比較すると、赤血球及びNIH 3T3細胞の双方に対する選択性は、1個のキラルNspeモノマーの配列中での位置によって影響されなかったことが示唆される。同じ数のNpmとNspeモノマーを異なる位置(1−Npm2,5,8,11及び1−Npm2,3,8,9)に含有する異性体の変種を比較すると、1−Npm2,5,8,11(SRE.coli=14)は赤血球に対する選択性が、1−Npm2,3,8,9(SRE.coli=6.2)より高かったが、NIH 3T3細胞に対する選択性(それぞれID50=6.8μM及び15μM)において逆の傾向が明らかであった。総合すると、これらの結果は、選択性の程度とアンペトイド配列内でのアキラル性モノマーの相対位置との間には明白な相関がないことを示唆する。
【0093】
全てのNspe側鎖を対掌体のNrpeモノマーで置換したペプトイド1の変種である1enantiomerは、左巻きヘリシティを有することを先に示したが、抗菌活性及び細胞選択性はペプトイド1と一致する。ペプトイド二次構造はその側鎖のキラリティーに従うため、得られた二次構造(並びに関連活性/選択性プロフィール)が、両方の対掌体の側鎖を含むペプトイド中で何になるかは不明である。また、D−アミノ酸及びL−アミノ酸の双方を含有するジアステレオ異性のペプチドは、有効な、広域スペクトラムの抗菌力及び向上した選択性を示すと判明した。ここで、1の変種は、図9及び表5に示すように、同じ数のNspe及びNrpe側鎖を異なる配置で含有することができる。1−Nrpe3,6,9,12及び1−Nrpe2,5,8,11は、対掌体のNrpeモノマーで置換された4個の面状に整列したNspeモノマーを有する鏡像体である。1−Nrpe2,3,5,6は、分子のN末端基部分において2、3、5及び6位がNrpeで置換された、末端で分離された対掌体のモノマーを有する(図9)。
【0094】
これらの変種の抗菌能及び細胞選択性プロフィールは、二次構造が異なるにもかかわらず、ペプトイド1と非常に類似している。図15は、水性緩衝液中では、両方の脂質環境と同様、対掌体の分子、1−Nrpe3,6,9,12及び1−Nrpe2,5,8,11は、鏡像関係のCDスペクトルを生じることを示す。図15Aは、緩衝液中では、1−Nrpe3,6,9,12及び1−Nrpe2,5,8,11は、全体的な掌性がC末端モノマーと釣り合って、ヘリックス二次構造を採るように見えることを示す。1−Nrpe2,3,5,6もまた全体的な右巻きスペクトルを採るように見えるが、ヘリシティが強いようには見えない。しかし、双性イオン性及び陰イオン性脂質の双方において、面状に整列した1−Nrpe3,6,9,12及び1−Nrpe2,5,8,11のCDは顕著に変化し、脂質との強い相互作用及び二次構造の著しい変化を示唆している(図15B及び15C)。
【0095】
全Nrpe含有ペプトイドのCDスペクトルの強度は、1と比較して著しく低下し、これは以前は両親媒性の低下と相関していた観察である。しかし、細胞膜模倣脂質環境における変種に対応するCDスペクトルは、ペプトイドヘリックス二次構造の典型ではないため、いかに両親媒性がこれらの分子内で影響を受けるのかは不明である。
【0096】
側鎖化学が細胞選択性に与える影響を、アンペトイド1中の芳香族Nspeモノマーの一部、もしくは全部の代わりに、かさ高く、疎水性の脂肪族のNsdp側鎖の系統を用いて評価した(図9及び表5)。脂肪族のイソロイシン様のNssb側鎖を含有する先に報告したアンペトイドは選択性であるが、特にグラム陰性の菌種に対して活性の低下を示した。より大きくかさ高い脂肪族側鎖、1−メチルブチルグリシン(Nsmb)を組み入れることは、抗菌能の増大につながるが、選択性を低下させる。この分子系統に用いられるジプロピルグリシン(Nsdp)(図9)モノマーは、Nsmbの異性体であり、分岐鎖を有する脂肪族のモノマーの形状によって、有利な選択性を保ちながら効力を向上させることができる場合に評価を行うために選択された。このグループの全ての変種は、CTLR(0.33)及び実効電荷(+4)が1と同等であった。
【0097】
1−Nsdpallは、Nsdpが、ペプトイドの1配列中の8個の疎水性モノマー全てにおいて置換されている。1−Nsdp2,5,8,11及び1−Nsdp2,3,8,9は、ペプトイド1のNspeモノマーのうち半分が脂肪族Nsdpで置換されている異性体である。図2.1に示すように、1−Nsdp2,5,8,11は、分子背面に沿って整列している4個のNsdpモノマーを示し、1−Nsdp2,3,8,9に含まれる4個のNsdpは、両方の疎水面にわたって分布している。1−Nsdp2,5,8,11が分離された芳香族及び脂肪族面を含有する一方、1−Nsdp2,3,8,9は、両疎水面において芳香族及び脂肪族のモノマーの混合物を有する。
【0098】
キラル脂肪族側鎖を有する右巻きヘリックスペプトイドのCDスペクトルは、極大が210nmにあることが最も顕著な特徴である芳香族側鎖のスペクトルとは明確に異なることが示されている。実際に、1−Nsdpallのスペクトルは、水性環境と脂質環境の双方においてこの特徴を示す(図16)。1−Nsdp2,5,8,11及び1−Nsdp2,3,8,9は双方とも、脂肪族及び芳香族ペプトイドヘリックス信号の組合せと思われるスペクトル特性を有する。得られた「組み合わせ」CDスペクトルは、1と比較してヘリシティの強度が弱いように見えるが、脂肪族モノマー及び芳香族モノマーを含有させることでいかに分子両親媒性が影響を受けたのかは不明である。1−Nsdpall及び1は両方とも、不同性ではあるがヘリカルなCDスペクトルを示す。
【0099】
1−Nsdpall(SRE.coli>8)の選択性の増大は、1(SRE.coli=3.3;MICE.coli=6.3μM)と比較して、(25μM)というE.coliに対する活性の著しい低下を代償として実現した。1−Nsdpallは、B.subtilisに対する効力が高く(0.78μM)、256という選択比であった(表6)。
【0100】
等しい数の芳香族及び脂肪族モノマーを含有する配列、1−Nspd2,5,8,11及び1−Nsdp2,3,8,9、は、1と比較して(MICE.coli=6.25μM、SRE.coli=3.3)、抗菌力のわずかな低下(MICE.coli=12.5μM)及び選択性の向上(SRE.coli=9.7及び6.2、各自)を見せた。疎水性のわずかな低下は、選択性の向上の一因である可能性があるが、他の変種との比較によると、脂肪族側鎖化学もその活性プロフィールに重要な役割を果たしていることが示唆される。全ての芳香族疎水性モノマーを含有するいくつかの配列において観察されたこととは異なり、脂肪族側鎖の導入は選択性を向上させるように見えるが、その代償として抗菌力が損なわれる。例えば、変種1−Npm2,3,8,9(63.3%アセトニトリル)、1−Npm2,5,8,11(63.6%アセトニトリル)及び111mer(63.5%アセトニトリル)は全て、1−Nsdp2,5,8,11(63.8%アセトニトリル)に匹敵する疎水性を示す。しかし、1−Nsdp2,5,8,11の抗菌力と選択性プロフィールのバランスは、これらの芳香族側鎖のみを含有する配列と比べて最適ではない。これらの3種類の分子(MICE.coli=6.3μM、SRE.coli=6.2〜16)と比較して、1−Nsdp2,5,8,11の抗菌力は低下し(MICE.coli=12.5μM)、選択性(SRE.coli=9.7)は同等である。これらの3種類の分子全体的な疎水性(63.2%〜64.7%)は、1(65.1%)と比較してわずかに低下した。1−Nsdpall(63.2%)の疎水性の低下は、その活性の低下の一因である可能性があるが、芳香族側鎖の欠如も役割を果たしている可能性がある。脂肪族側鎖と芳香族側鎖の両方を含有する変種は、1と比較して(SRE.coli=6.2〜12)、低抗菌力(MICE.coli=12.5μM)と選択性の向上とのバランスをもたらすように思われる:1−Nsdp2,3,8,9(SRE.coli=6.2〜12)及び1−Nsdp2,5,8,11(SRE.coli>9.7)。
【0101】
選択されたアンペトイド及び対照ペプチドペキシガナンの抗菌力を、16種類の臨床的に関連するBSL2菌種に対して試験した。菌種のパネルには、7種類のグラム陰性種(Proteus vulgaris(尋常変形菌)、Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)、Proteus mirabilis(ミラビリス変形菌)、Klebsiella pneumonia(クレブシェラ肺炎杆菌)、Enterobacter aerogenes(エロゲネス菌)、E.coli及びSerratia marcescens(霊菌))及び3種類のグラム陽性種(Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)、Enterococcus faecalis(エンテロコッカス−フェカーリス)及びEnterococcus faecium(エンテロコッカス−フェシウム))からの9株を含めた。アンペトイド1、1−Pro、1−Pro、1achiral、1−Npm2,5,8,11及び1−Nsdp2,5,8,11を、これらの生体に対して試験した。MIC(μg/mLで表示)を表7Aに示し、対応する選択比(10%溶血用量をMICで割った値)を表7Bに示す。
【0102】
試験した6種類のペプトイドの活性は全て、P.vulgaris(MIC=32〜64μg/mL)、K.pneumoniae(MIC=8〜16μg/mL)及びE.coli(4−16μg/mL)に対するペキシガナンの活性と同様であった。P.mirabilis及びS.marcescensに対し、ペキシガナン及び全ての試験したペプトイドは不活性であった(MIC≧128)。しかし、BSL2グラム陽性菌に対する試験したアンペトイドの活性は、ペキシガナンの活性と比較して非常に良好であった。試験したS.aureus6株に対するペキシガナンのMICは、8〜64μg/mLの範囲であり、試験した全てのペプトイドのMICは、4〜16μg/mLの範囲であった。興味深いことに、他のアンペトイド(MIC=8〜64μg/mL)及びペキシガナン(MIC=32〜128μg/mL)と比較して、1は唯一E.faecalis(MIC=4〜8μg/mL)株の双方に対して活性を示した。全ての化合物は、E.faecium(MIC=4μg/mL)に対して等しく有効であった。
【0103】
表7A−B:選択したアンペトイド及びペキシガナンの広範囲のスペクトル活性及び選択性。(A)選択したアンペトイドのBSL2細菌種に対するMIC(μg/mL)。(B)選択比は、10%溶血用量を対象の生体のMICで割った値と定義した。選択比を計算するため、各化合物(表2−2)の溶血用量(μg/mL)にその分子量(表2−1)を掛けた。注記:*は、NCCLS推奨標準株を示す;§は、メチシリン耐性S.aureus(MRSA)株を示す;†は、バンコマイシン耐性株を示す;‡は、リネゾイド耐性株を示す。
【表7】

【0104】
表7Bに示した選択比は、最もグラム陰性の細菌種に対し、少なくとも1種のアンペトイドが、ペキシガナンと比較して高い選択性を有していたことを示す。各グラム陰性種に対して最も有利な選択比を、表7Bに太字体で示す。1achiral、1−Pro及び1−Nsdp2,5,8,11は、選択されたMDR菌種に対して最も選択性が高かった。グラム陽性菌に対して、アンペトイドは、ペキシガナン又はアンペトイド1と比較して選択性の向上をより一貫して示した。全てのS. aureus株に対して、例えば、ペキシガナンの選択比は、2.8〜23の範囲であり、アンペトイド1は4.8〜9.5の範囲であり、より選択的なアンペトイドのパネルは9.1〜39であった。
【0105】
以上に示したように、アンペトイドは、有効性及び広域スペクトラムの抗菌力を示し、それらの天然の対応物と同様のメカニズムを用いると見られている新しい種類のAMP模倣薬である。細胞選択性に影響する因子の理解を、対応する医薬品の文脈において用いることができる。従って、アンペトイドのライブラリを、種々の物理化学的性質及び構造モチーフがいかにそれらの細胞選択性に影響するか、またその影響の範囲を探究するよう設計した。
【0106】
いかにアンペトイドが種類の異なる哺乳動物細胞に影響しているかという理解を広げるため、NIH 3T3マウス線維芽細胞に対する溶血用量や代謝阻害量を求めた。溶血活性及び阻害活性は、多くのアンペトイドで同様の傾向を示した一方、溶血用量は一貫して同じ化合物の抑制用量より高かった。これは、ペキシガナンや他のAMP模倣薬について報告されてきた傾向である。溶血用量と抑制用量との間の不同性は、2種類の細胞間の膜構成の差異を一因とする可能性がある。赤血球膜のコレステロール含有量は、例えば約230μg/mg proteinである一方、NIH 3T3コレステロール含有量は、たった30.5μg/mg proteinであると報告されてきた。赤血球のコレステロール含有量の増大は、膜の硬直に影響し、またNIH 3T3細胞と比較して、膜活性抗菌物質に対する抵抗性を増大させる可能性がある。
【0107】
溶血とMTS分析との他の不一致は、それらが細胞毒性を定量化するために用いられた大きさの点で異なるということである。溶血は赤血球を溶解するのに必要なアンペトイドの用量を測定するのに対し、MTSアッセイは、細胞代謝を阻害するのに必要な用量を定量化するものであり、細胞集団によって生成されるNADHの量によって間接的に測定される。従って、細胞膜を溶解するのに必要な用量は、必ずしも細胞代謝を阻害するために必要な用量と同じではないと予測することは合理的である。溶解は膜破壊活性を意味するが、細胞代謝への干渉は細胞内標的を意味する。これらの分子に対する真の治療指数を決定するためには動物試験が必要であるが、溶血及びMTSアッセイ結果はともに、双方の細胞のタイプに対する多くのアンペトイドの相対的な結果が同様である可能性があるということを示唆している。
【0108】
アンペトイドのこのライブラリを、様々な構造モチーフを示し、値が広範囲にわたるような物理化学的性質を有するものを含むよう設計した。異なるアンペトイドが、種々のグラム陰性菌に対して有望な活性を示したが、K. pneumonia(肺炎桿菌、ATCC 33495)及びE.coli (ATCC 25922)に対して最も有効であった。全26種類のアンペトイド変種が、グラム陽性検査生体、B. subtilisに対して一貫して非常に有効であったことは、特に注目に値する。S. aureus、E. faecalis及びE. faeciumのMDR株に対する選択されたアンペトイドの広域スペクトラム試験結果は、アンペトイドがバンコマイシン耐性生体及びリネゾリド耐性生体(それぞれ4〜8μM及び4〜16μM)と同様、MRSA(4〜8μM)に対しても有効であることを示す。MDR S. aureus株に対する1achiral(19〜39)及び1−Pro(18〜36)の対応する選択比は、ペキシガナン(2.8〜23)又はアンペトイド1(4.8〜9.5)と比較して特に有利である。医療システムのMDRグラム陽性の感染の負担は甚大であり、増加する一方である。これらの結果は、アンペトイドが、この未対処の臨床的必要性に取り組むための従来の療法の代替として実行可能であり得ることを示唆する。
【0109】
構造活性研究によって、アンペトイドの抗菌活性及び選択性プロフィールは、物理化学的性質に支配されることが示されており、物理化学的性質は、同様にAMPの活性及び選択性を支配する。これらの研究から収集された構造活性相関は、アンペトイドにおけるこれらの発見を再確認するさらなる証拠を提供するのみならず、特定の構造的部分の数、配列位置、配置及び化学構造に関するより微妙な変化がいかに活性及び選択性に影響するかに影響を及ぼす原理へのさらなる洞察をも提供する。
【0110】
有効であるが非選択的なAMP及びアンペトイドは疎水性である傾向があり、はっきりした両親媒性構造を採用するが、一方では、より選択的なAMP及びアンペトイドは典型的には陽イオン性が高く、疎水性は中程度にとどまり、両親媒性は低いことが多い。上述のように、この研究の活性及び選択性の結果は、いくつかの新しいアンペトイド配列を含むが、以下のいくつかの方法でこれらの全般的な関係を再確認するものである:(1)1と、それよりも両親媒性が低く、選択性が高い1scrの比較;(2)1と、それよりも荷電が大きく、両親媒性が低い変種(1−Nlys5、11、1B−Nlys4、10及び1B15mer−Nlys4、10、1B−Nlys4、6、10及び1B15mer−Nlys4、6、10)との比較、(3)1と、それよりも疎水性が低いプロリンを含む変種(1−Pro、1−Pro、1−Pro、1−Pro3,9)との比較(4)アキラル性変種(1achiral、1ach−Nspe、1ach−Nspe12、1−Npm 2,3,8,9、1−Npm2,5,8,11)間での比較、これは、選択性と対応する疎水性及び両親媒性の範囲を示す。この研究に含まれるアンペトイドのより詳細な構造特性をさらに子細に見ると、わずかな分子変化が活性及び選択性に与える影響を解明することができる。
【0111】
モノ−置換プロリンモノマー間での比較は、分子の長さに沿ったモノマーの位置が選択性に影響する可能性があることを示唆する。モノ−置換プロリンモノマーは、それよりも疎水性が低いプロリンモノマーがN末端からC末端部位に移動すると、選択性のさらなる増大を示した。
【0112】
配列レジスターの異なる変種(1、1B及び1C)や長さの異なる変種113merの選択性プロフィールに観察される傾向は、末端に対するモノマー位置も選択性に影響することを示唆する。全ての変種が、E.coliに対して同様に有効である:1、1B及び1CのMICE.coliは6.3μMであり、113merのMICE.coliは1希釈(dilution、3.1μM)向上した。1及び1Cはそれぞれ1個の荷電NlysモノマーをN末端及びC末端に有し、1Bは疎水性のNspeモノマーを両末端に有する。逆に、113merは荷電Nlysモノマーを両端末位置に有する。これらの分子を2つのグループで考える:(1)両末端が荷電しているか、疎水性のもの(1B及び113mer)及び(2)1つの末端が荷電していて、1つの末端が疎水性であるもの(1及び1C)。興味深いことに、末端が異なる1(65.1%アセトニトリル)及び1C(64.8%アセトニトリル)の疎水性は、類似のモノマーを端末位置に有する変種1B(63.4%アセトニトリル)及び113mer(62.8%アセトニトリル)の疎水性よりも大きい。同様に、疎水性がより低い変種1B及び113mer(SRE. coli=6.8〜8.7、SRB. subtilis=27〜34)の選択性は、1及び1C(SRE. coli=3.3〜4.0、SRRB. subtilis=13〜16)と比較して向上する。このことは、同様に荷電した末端(両方とも疎水性であるか、両方とも正に荷電)を有すると、分子疎水性が低下し、その結果選択性が向上することを示唆する。これは、疎水性モノマーの配列中の相対位置が、得られる疎水性及び細胞選択性に影響する可能性があることを発見した、マガイニンの抗菌性ペプチド類似体に関して報告された同様の現象と関係している可能性がある。これらの結果は、抗菌力を保持しながら選択性を向上させる戦略が、同様に荷電した又は同様に疎水性の末端モノマーを用いて配列を設計することであることを示す。
【0113】
上述のように、変種のアキラル性の系統は、アキラル性のNpm疎水性モノマーをキラルNspeモノマーの代わりに導入することが、抗菌力を損なわずに選択性を向上させる別の手段であることを示唆する証拠を提供する。アンペトイド1において8個のNspeのうち7個もの変種の構造が、等価な活性及び著しく向上した選択性を示した。Npm含有量の増加と同時に起こる両親媒性の低下は、有利な選択性プロフィールにつながると思われる。アキラル性モノマーの含有量が増大したアンペトイドの剛性の弱い構造は、哺乳動物細胞の強固な細胞膜を透過する能力が弱い。
【0114】
化合物のこのライブラリを選択性に影響を与えるよう設計する第3の方法は、CTLRを増大させることである。CTLRが(アンペトイド1の0.33と比較して)0.47〜0.58の範囲の、電荷密度を高くした変種は、E.coli に対して最高でも中程度の活性しかなかった (MIC=50〜>100μM)。しかし、低い範囲(0.33〜0.40)でCTLRの変化に影響を与えるよう設計された、これらの長さ変種の長さが異なる変種、111merは、CTLR(0.36)の最適なバランスを示し、低最小発育阻止濃度(MICE. coli=6.3μM)において細菌膜を透過性にするために十分な疎水性があることが分かった(63.5%)。
【0115】
疎水性を低下させるその他の手段として、L−プロリン含有量又は脂肪族Nsdpモノマーを置換するという二つの手段があるが、これらはグラム陰性菌に対する抗菌力を犠牲にして選択性を向上させるため、あまり有利ではない。1個のプロリンモノマー(1−Pro、1−Pro及び1−Pro、MICE. coli=12.5μM)及び2個のプロリンモノマー(1−Pro3,9、MICE. coli=50μM)を追加することで、アンペトイド1(MICE. coli=6.3μM)と比較して活性がさらに低下した。4個の(1−Nsdp2,3,8,9及び1−Nsdp2,5,8,11、MICE. coli=12.5μM)脂肪族モノマー及び8個の(1−Nsdpll、MICE. coli=25μM)脂肪族モノマーを有する分子は、抗菌力の低下の同様の傾向を示した。
【0116】
achiral、1−Nrpe3,6,9,12及び1−Nrpe2,5,8,11の特徴化から、アンペトイドは、必ずしも安定したヘリックス二次構造を採らずに有効な抗菌力を示す可能性があることを示唆する、別の観察が明らかである。名前が示すとおり、1achiralはキラルモノマーが全くなく、従って光学的に活性である。水性緩衝液及び脂質環境での得られたCDスペクトルは平坦である(図13)。1achiralが過渡的にいずれかの掌性をヘリックス構造に採用することは考え得るが、その構造を安定化させる外的又は内因性の力は存在しないようである。一方1−Nrpe3,6,9,12及び1−Nrpe2,5,8,11は、等しい数のNspe及びNrpe疎水性芳香族側鎖を含有する対掌体の分子である。興味深いことに、これらのモノマーの全体的なキラリティーは、12位のモノマーのキラリティーに支配されると思われ、1ach−Nspe12は、1ach−Nspeより右巻きキラリティーの程度が高いという観察と釣り合った発見である。このことは、C末端モノマーは組織安定性に大きな影響を与えるというさらなる証拠を提供する。緩衝液中では、これらの変種の両方が、極値が通常202nmで、約195nmに青方偏移したペプトイドポリプロリンI型様の構造に類似したCDスペクトルを生成する(図15)。しかし中性のPOPC/コレステロール脂質中では、220nmの極値は大幅に減少し、POPE/POPG SUV中では、この特徴は完全に消失した。このCDスペクトルの顕著な変化は、1−Nrpe3,6,9,12及び1−Nrpe2,5,8,11がこれらの脂質混合物の双方と協力に相互作用するため、それらの全体的な構造が著しく変化することを示唆する。総合すると、安定した二次構造を欠くと思われる1achiralは、脂質中では、基準のペプトイドポリプロリンI型様のCDスペクトルとは異なるCDスペクトルを見せる1−Nrpe3,6,9,12及び1−Nrpe2,5,8,11と同様、全てアンペトイド1としてE.coli に対して等しく有効である (MIC=6.3μM)。A安定したヘリックス二次構造は、アンペトイド抗菌力に必要ではないと思われる。安定したヘリックス二次構造がアンペトイド抗菌力に必要ではないと思われるというこの発見は、過去の発見を超えるものであり、ヘリシティが両親媒性構造を組織化する手段としてのみ重要であることを示唆した。
【0117】
一対の分子を、面状分離脂肪族及び芳香族疎水性モノマーが選択性に影響を及ぼすかどうか評価するよう設計した。1−Nsdp2,5,8,11は、分子面に沿って整列した4個の置換脂肪族モノマーを有するが、1−Nsdp2,3,8,9は両面に脂肪族及び芳香族疎水性モノマーの混合物を有する(図9)。面状に整列した異性体1−Nsdp2,5,8,11(SRE. coli=9.7;SRB. subtilis=142)は、その面状分布対応物(1−Nsdp2,3,8,9−SRE. coli=6.2、SRB. subtilis=99)よりも選択性が高かった。これらの異性体は同様の実効電荷(双方+4)、CTLR(双方0.33)及び疎水性(アセトニトリル63.8%−64.7%)を示すが、これらの間の注目すべき相違点は、1−Nsdp2,5,8,11上の疎水性モノマーの配置が、一つの全面的に芳香族である面を維持した一方、1−Nsdp2,3,8,9は完全に芳香族である面を全く示さない。少なくとも一つの芳香族面を含めると、ヘリックス安定性が高まることを先に示した57。双性イオン性混合物及び陰イオン性脂質の双方において、1−Nsdp2,3,8,9より1−Nsdp2,5,8,11のヘリシティが高強度であることは、この観察を裏付ける(図16)。このことは、少なくとも一つのアンペトイド芳香族面の保存が、他の物理化学的パラメータの変化とは独立してその選択性を増大させる可能性があることを示唆する。
【0118】
最も有望な治療薬は、細菌に対して効力が高く、哺乳動物細胞には無毒であるものである。この関係を図17に図示し、選択されたペプトイドのE.coli(図17A)及びB. subtilis(図17B)最小発育阻止濃度と比較して溶血用量をプロットする。ペプトイド1及びペキシガナンを参照のため赤マーカーによって表す。右下の座標空間に示すペプトイドは、最も有望な治療可能性を有する。ここで報告する多くの化合物は、ペプトイド1及びペキシガナンより有利な活性プロフィールを示す。電荷密度を高くした変種は、完全に非溶血性であったが、グラム陽性B. subtilisに対して活性プロフィールの顕著な向上を示した。
【0119】
示したように、アンペトイドは、特に多くの多剤耐性グラム陽性菌に対して有効であり、広域スペクトラムの活性を示す有望な種類のAMP模倣薬である。ここに示す26種類の配列のうち、17種類は基本配列1と比較してE.coli に対する選択性向上を示す。化合物のこのライブラリより導き出された構造活性相関はAMPとアンペトイドのメカニズム類似性を再確認し、拡張する。選択的なアンペトイドは、疎水性及び両親媒性が中程度にしかならない傾向があったが、非選択的アンペトイドは疎水性が高く、より両親媒性の高い構造を示す。このライブラリにおけるアンペトイド変種間の関係もまた、配列、側鎖化学及びモノマー位置のより軽微な変化がいかに選択性に影響するかの効果を示唆する。選択性を損なわずにアンペトイドの選択性を向上させる3種類の戦略は、以下を含む。(1)同じ陽イオン性又は疎水性のモノマーを配列の端末位置に配置すること、(2)Nspeモノマーの代わりに疎水性アキラル性Npmモノマー含有させること、(3)細菌細胞膜を透過性にするのに十分な疎水性を保ちつつCTLRを最適化すること。特に疎水性を低下させるために設計された2つのアプローチは、選択性を向上させるという所望の結果に効果を与えたが、抗菌力の低下と引き替えであった。最適には至らないこの活性プロフィールは、
(1)疎水性がより低いL−プロリンモノマーの置換、
(2)脂肪族Nsdpモノマーの置換の結果であった。興味深いことに、いくつかのモノマーのヘリックスに沿った相対位置は、選択性にある役割を果たした(例:モノ−プロリン置換変種)が、常にそうである訳ではなかった(例:アキラル性の変種)。少なくとも一つの芳香族面の保存も、選択性の向上に役割を果たしている可能性がある。最後に、このような研究は、安定した二次構造のない(1achiral)、又は基準のペプトイドヘリックスとは異なる二次構造を採ると思われる(1−Nrpe2,5,8,11及び1−Nrpe3,6,9,12)アンペトイドにおいて抗菌力を保つことができるという証拠を提供する。ペプトイドは、多様な一級アミンからなることができる配列特異的生体高分子であるため、アンペトイドの効力及び選択性を特定の臨床的に関連する生体と戦うよう精密に調整することは可能であると考えられる。ここで証明する設計ヒューリスティックスは、有効でありかつ選択的である、アンペトイドの将来世代の設計を支援するかもしれない。
【実施例】
【0120】
以下の非限定的実施例及びデータは、種々のヘリックスペプトイド化合物の調製を含む、本発明の化合物及び/又は方法に関する種々の側面及び特徴を説明するものであり、ここで記載する合成方法によって利用可能である。従来技術に比べて、本件のペプトイド化合物は、驚くべき、予想外かつ従来技術に反した結果及びデータを提供する。数種類の化合物を用いて本発明の有用性を説明するが、本発明の範囲と見合うような他の多様な化合物、ペプトイドの長さ、残基配列及び/又はNペンダント側鎖を用いても、匹敵する結果を得ることができることは当業者に理解されるであろう。
【0121】
実施例1
合成及び精製
ABI 433Aペプチドシンセサイザを用いるか、リンクアミド樹脂(rink amide resin)に並行合成ロボットを用いて、サブモノマー方法に従ってペプトイドを合成した。(例えば、Zuckermann, R. N., Kerr, J. M., Kent, S. B. H., & Moos, W. H. (1992) J. Am. Chem. Soc., 114, 10646−10647を参照。)簡潔に説明すると、新生鎖上のアミドをブロモアセチル化し、続いて臭化物を一級アミンでS2置換して側鎖を形成する。標準Fmoc化学を用いてペプチドを合成した。合成した後、ペプトイド及びペプチドを切断し、トリフルオロ酢酸(TFA):トリイソプロピルシラン:水(体積比95:2.5:2.5)中で10分間脱保護した。C18カラムを用いたRP−HPLCによってアセトニトリル/水(0.1%TFA)の直線勾配で、化合物を>97%同質になるまで精製した。質量分析法を用いて、精製された生成物の分子量を確認した。
【0122】
サブモノマー方法を図8に図示する。成長するペプトイドポリマーの各モノマーを、2種類の容易に利用可能なサブモノマー単位を用いて2つの工程で組み合わせる。ジイソプロピルカルボジイミド活性化ブロモ酢酸を用いて、リンクアミド樹脂をブロモアセチル化する。次に、ブロモアセチル化樹脂において、臭化物を一級アミンでS2置換し、それにより所望の側鎖が導入される。数百種類の可能性のあるアミンサブモノマー及び対応する側鎖が、商業的もしくは合成によって利用可能である。結果として、(1)サブモノマー方法によってペプトイドを合成することにより、モノマーアプローチによって容易に得られるものより化学的多様性に富んだ配列へ容易なアクセスでき及び(2)本発明にもっと直接適用可能なのは、生物模倣型のペプトイドを、所望の抗菌活性をもたらすのに十分な配列オーダー、長さ及び/又はNペンダント側鎖構造によってのみ制限する。
【0123】
より具体的には、リンクアミド樹脂(4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル)−アミノメチル)−フェノキシ樹脂、0.25mmol;Novabiochem社)を始めに30分間CHCl中で膨潤させることできる。樹脂を膨潤させた後、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)保護基を、1−メチル−2−ピロリドン(NMP)中の20%ピペリジン溶液で処理することによって取り除く。その後、樹脂に結合した脱保護アミンを、N、N−ジメチルホルムアミド(DMF)中の1.2Mブロモ酢酸(50mmol)4.2ml及び純粋な(neat)N、N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)1.0ml(11mmol)と60分間室温で常に混合しながら反応させることによってブロモアセチル化する。次に、樹脂をDMF(3×10ml)ですすぎ、続いてNMPですすぐ(3×10ml)。NMPもしくはCHCl中の一級アミン「サブモノマー」(以下を参照)の1M溶液(6mmol)6mlを、樹脂に結合したブロモアセチル部分と反応させ、臭化物を置換した。保護サブモノマー(N−tert−ブトキシカルボニル−1、4−ブタンジアミン)を合成し、N−(4−アミノブチル)グリシン残基(Nlys)を作成する。次に樹脂を再びNMP(3×10ml)ですすぎ、続いてDMF(3×10ml)ですすぐ。これら2種類の反応の生成物はペプトイド「残基」を作成するが、その識別は用いられたサブモノマーアミンによって行った。このサブモノマー方法によって、所望の鎖長が得られるまでペプトイドを伸長する。
【0124】
合成に続いて、ペプトイドオリゴマーは、2、2、2−トリフルオロ酢酸(TFA)/トリイソプロピルシラン/HO(体積比95:2.5:2.5)10mlで30分間処理することによって樹脂から切断し、同時にtert−ブトキシカルボニル(Boc)保護基をNlys残基から取り除くことができる。次に切断混合物を、50%水性アセトニトリル25mlで希釈し、凍結し、凍結乾燥する。過剰TFAを取り除くため、希釈及び凍結乾燥をあと2回繰り返す。切断に引き続き、Waters社 Prep LC 4000システム、Waters社2487二波長UV検出器及びVydac社(米国カリフォルニア州ヘスペリア)214TP101550 C4ペプチド/蛋白質カラム(10〜15μM、300A、5×25cm)を用いて、分取スケール逆相HPLCによって、ペプトイドを各々>97%同質になるまで精製する。分取HPLCに続き、ペプトイドの純度及び粗産生量(crude yields)を分析スケールHPLCから求め、Waters2487二波長UV検出器を備えたWaters2695分離モジュール及び勾配溶離(溶媒A、水中0.1体積%TFA;溶媒B、アセトニトリル中0.1体積%TFA)Vydac C4214TP53ペプチド/蛋白質カラム(5μM、300Å、3.2×250mm)で行った。HPLCに用いた正確な勾配は、対象のオリゴマーの同一性及び疎水性によるものとした。勾配溶離におけるHPLC溶媒の組成は、この疎水性の表示であり、表1に示す。分析HPLCは全て、流量0.5ml/分及び58℃で行った。分取HPLCは、流量50ml/分及び室温で行った。
【0125】
そのような合成及び特徴の測定は、米国特許第6、887、845号にも記載されており、ここに参照することによりその全体を取り込む。該文献に説明されているように、また本発明を認識する当業者が理解するように、本N−置換グリシン残基及び得られるペプトイド化合物は、対応するアミン試薬の合成による入手可能性、もしくは商業的な入手可能性によってのみ限定される。
【0126】
実施例2
SUVの調製
POPE/POPG(7:3)又はPOPC/CH(1:1)のどちらかの脂質混合物をクロロホルムに溶解し、N下に乾燥し、一晩凍結乾燥した。得られた脂質膜を、40℃の10mMトリスHCl(pH7.4)で1時間水和した。得られた多層小胞の懸濁液をボーテックスし、その後40℃で、溶液が透明になりSUVが生じるまで超音波処理し、そのSUVを6時間以内に使用した。
【0127】
実施例3
CD分光法
Jasco 715分光偏光計で、円筒形石英セル(路長=0.02cm)を用いて、SUVを使用した場合はトリスHCl(pH7.4)10mM中のペプトイド50μM及び脂質5mMで、CD測定を行った。100nm/分、185−280nm間、データピッチ0.2nm、バンド幅1nm、レスポンス2秒、感度100mdeg及び蓄積(accumulation)40で、スキャンを行った。
【0128】
実施例4
抗菌性の分析
CLSI M7−A6プロトコルに従って96穴微量定量プレート内でMICを求めた。試験ウェルに、ミュラー−ヒントンブロス(MHB)中の細菌接種材料(5×10 CFU/ml)50μLを、MHB(1:2連続希釈法によって調製)中のペプトイド溶液50μLに加えた。正の対照は、接種材料50mL及びMHB50mLを含み、ペプトイドを含まなかった。MICは、35℃で16時間培養した後、細胞の成長を完全に阻害するペプトイドの最低濃度と定義した。報告したMIC値は3回の独立した反復実験の間に再現可能であり、各反復実験は2つの並行試験で構成した。Nova Biologicals, Inc.社(テキサス州コンロー)製造のBSL2病原体に対する広域スペクトラムの抗菌薬感受性試験を行った。
【0129】
実施例5
抗真菌性の分析
CLSI M27−A2プロトコルが示すブロス微量希釈分析を用いてMICを求めた。Candida albicans(鵞口瘡カンジダ、SC5314)を、サブローデキストロース寒天培地で24時間、30℃で培養した。細胞を0.145M食塩水に懸濁させ、細胞濃度を3x106個/mLに調節した。細胞濃度を調節した後、0.145Mの3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)で緩衝したRRPMI 1640(Lグルタミン含有、炭酸水素ナトリウムを含有しない、Invitrogen社)で懸濁液を1:1000に希釈した。ペプトイド、ペプチド及びアンホテリシンBCalbiochem社)の二倍連続希釈液をRPMI 1640で調製し、96穴プレート内で等容積の細胞懸濁液と混合した。ペプトイド及びペプチドの最終試験濃度は0.20〜100μMであり、アンホテリシンBの濃度は0.031〜16μMであった。増殖対照及び無菌対照も含めた。プレートを48時間35℃で培養し、C.albicansの増殖を目視で調べてMICを求めた。各化合物に対するMICを、可視の真菌増殖がない最低濃度と定義した。実験は別々の日に2回行った。
【0130】
実施例6
溶血分析
抽出したてのヘパリン処置したヒト血液から赤血球を分離し、PBS(pH7.4)中で20体積%に再懸濁した。96穴微量定量プレート内で、赤血球懸濁液100μLをペプトイドのPBS溶液(1:2連続希釈法によって調製)100μLに加えるか、もしくは負の対照の場合はL PBS100μに加えた。100%溶血ウェルには、2体積%TritonX−100を100μL加えた血球浮遊液100μLを含有させた。プレートを1時間37℃で培養し、次に各ウェルをPBS150μLで希釈した。その後プレートを1200gで15分間遠心分離し、各ウェルからの上澄み100μLを新しい微量定量プレートに転送し、A350を測定した。溶血のパーセントを、(A−A)/(Atotal−A)×100として求めたが、ここで、Aは試験ウェルの吸光度であり、Aは負の対照の吸光度であり、Atotalは、全ての350nmでの100%溶血ウェルの吸光度である。
【0131】
実施例7
MTS分析
A549癌腫由来肺上皮細胞(ATTC CCL−185)を、Ham社のF12K培養液(ATTC、バージニア州マナッサス)中で培養した。ペプトイド溶液の入ったプレート(100μL/ウェル)を培養液中の水性ペプトイドストックの連続希釈法によって調製した。ペプトイド溶液を、培養液(細胞〜5000個/ウェルを含有)を100μL/ウェルを含有する、1日齢の細胞単層の入った96穴プレートに移した。MTS試薬(Promega Corporation社、ウィスコンシン州マディソン)(40μL/ウェル)を各ウェルに加え、プレートを37℃で3時間培養し、その後490nmでの吸光度を求めた。抑制のパーセントを、[1−(A−Atest blank)/(Acontrol−Ablank)] x 100として求めたが、ここでAは試験ウェルの吸光度であり、Acontrolは培養液及びMTS(ペプトイドなし)に曝露した細胞の入ったウェルの平均吸光度である。Atest blank(培養液、MTS及びペプトイド)及びAblank(培養液及びMTS)は、細胞の不在化に測定されたバックグラウンド吸光度であった。反復試験6回の平均を報告し、エラーバーは、ある標準偏差を示す。
【0132】
実施例8
鏡面X線反射率
Advanced Photon Source, Argonne National Laboratory(イリノイ州アルゴンヌ)において、XR実験を9−IDビームラインで行った。注文制作のラングミュアートロフを、ヘリウムを充填した密封キャニスターに搭載し、可動の単一の障壁を備えた。ウィルヘルミープレートを用いて表面圧を測定した。室温でDulbecco PBS(D−PBS)副相において定圧挿入実験を行った。DPPG(Avanti Polar Lipids社、アラバマ州アラバスター)を、65/35(v/v)クロロホルム/メタノール中に既知の濃度に溶解し、その後ガラス注射器を用いて空気と緩衝液の界面に広げた。有機溶媒を10分間蒸発させた。単層を、細胞膜内で発生すると思われる表面圧30mN/nmに圧縮し、純粋な脂質層でXRを行った。次いで、D−PBS中に溶解したペプトイド1を、副相内へ総濃度6.26μM(MICより十分高い)まで注射し、約45分間挿入させ、その後XR測定を再び収集した。X線反射率(XR)プロフィールを、界面に垂直な電子密度の勾配のフーリエ変換によって求めた。q値:〜0−0.6Å−1に対応する角度の範囲にわたってXR測定を行った。ここで、q=(4π/λ)sin(α)であり、λは波長であり、αは角度である。
【0133】
実施例9
マウスの腹腔内感染モデル
画線したばかりのプレートから得た単一コロニーのStaphyloccus aureus (ATCC #25923)を含有するMHBを5mL播種することによって、細菌を調製し、一晩37度で増殖させた。翌朝、細菌をMHBで1/3に希釈することによって継代培養し、約1.5時間増殖させた。その後細菌を、ムチンのPBS5%溶液で10倍に希釈し、完全に混合した。マウスが受け取った細菌の量を後に決定するため、試料を保管した。
【0134】
マウスの体重を計測し、標識をつけ、S. aureus接種材料を200uL含むI.P.を注射した。感染から4時間後、マウスをペプトイド4mg/kg含むI.P.で処理した(〜100ug/匹)。一晩放置して感染させた。24時間後にCO窒息によってマウスを安楽死させ、腹膜腔を露出し、PBS5mLで洗浄した。洗浄液を混合し、プレーティングまで氷の上で保存した。洗浄液をPBSで10−5(1/10ずつ)に希釈し、全ての希釈液を複数のMH寒天培地上に蒔いた。洗浄液50uLを点滴板上に蒔き、放置して乾燥させ、一晩37℃で培養した。翌日コロニーを数え、各試料のCFU/mlを計算した。あまりに多くのコロニーがあり数えられないプレートには、任意数×1000コロニーを割り当てた。
【0135】
実施例10
化合物合成及び精製
ABI 433Aペプチドシンセサイザ(Applied Biosystems, Inc.)をリンクアミドMBHA樹脂(Novabiochem, Inc.)に用いて、サブモノマーアプローチ3によってペプトイドを合成した。簡単に説明すると、ジイソプロピルカルボジイミドによって活性化したブロモ酢酸を用いて、末端アミド基にブロモアセチル化中間体を形成した。その後臭化物をS2置換によって所望の一級アミンで置換し、ペプトイド鎖を構築した。ペプトイド合成に用いたアミンは、ベンジルアミン、オクタデシルアミン、(s)−(+)−2−アミノ−3−メチルブタン、(s)−α−メチルベンジルアミン、(r)−(α−メチルベンジルアミン(全てSigma−Aldrich社から購入)及び発表された手順83を用いて作成したN−tert−ブトキシカルボニル−1、4ジアミノブタン(Nlys)を含む。その後樹脂に結合したペプトイドをトリフルオロ酢酸(TFA)の混合物、トリイソプロピルシラン:水(95:2.5:2.5、v:v:v)に10分間曝露して、ペプトイドを固体相から切断した。逆相HPLC(RP−HPLC)(Waters Corporation)によってC18カラム及びアセトニトリル/水の直線勾配で、ペプトイドを精製した。分析RP−HPLC(Waters Corporation)によって測定された97%を超える最終純度が達成され、各分子の同一性をエレクトロスプレーイオン化質量分析を用いて確認した。試薬は全てシグマSigma Aldrichから購入した。
【0136】
実施例11
円偏光二色性分光法
Jasco 715分光偏光計を用いて、路長が0.02cmの円筒形石英セルにおいて全てのCD測定を行った。測定は、190nm〜280 nmの範囲にわたり、走査速度100nm/分で行った。そのほかのパラメータは、データピッチ0.2nm、バンド幅1nm、応答時間2秒及び感度100mdegを含む。化合物濃度は、10mMトリス緩衝液中で60μMであった(pH7.4)。SUV存在下での試料については、脂質濃度は5mMであった。各試料につき40蓄積を収集した。
【0137】
実施例12
抗菌アッセイのスクリーニング
CLSI M7−A6プロトコルに従って、96穴微量定量プレート内でMICを求めた。全体積で50μLのペプトイド溶液を、2:1連続希釈法を用いて調製した。陽イオンを調整したミュラー−ヒントンブロス(CAMHB)中で調製した細菌接種材料(1 x 10 CFU/mL)50μLを、試験ウェルに加えた。対照ウェルは、MHB(増殖なし)100μL、又はMHB50μLを含むペプトイドなしの接種材50μLを含んだ。MICを、完全に細胞増殖を阻害したペプトイドの最低濃度として、培養の16時間後に35℃で測定した。報告された値は、実験3回にわたって再現可能であり、各回では2つの並行試行を行った。
【0138】
実施例13
広域スペクトラムの抗菌性の分析
CLSI M7−A6プロトコルに従い、微量希釈方法によって、スクリーン抗菌性の分析について記載の方法と同様の方法で、ミュラー−ヒントンブロス(MHB)中で化合物のMICを求めた。播種した微量定量プレートを、結果を記録するまでに35℃で24時間培養した。基準として用いた4種類のATCC株は、CLSIの推奨する以下のものである:Pseudomonas aeruginosa ATCC27853、E.coli ATCC25922、Staphylococcus aureus ATCC29213及びEnterococcus faecalis ATCC29212。そのほかのATCCコレクションからの株は、Proteus vulgaris ATCC 49132, Proteus mirabilis ATCC 35659, Klebsiella pneumoniae ATCC 33495, Enterobacter aerogenes ATCC 35029 及び Serratia marcescens ATCC 13880を含む。S. aureus NRS100 (COL)は、かなり特徴的なメチシリン耐性S. aureus(MRSA)株である。ミシガン及びペンシルバニアで分離された、バンコマイシン耐性のMRSA株、S. aureus VAN1及びS. aureus VAN2は、臨床的に単離された最初のバンコマイシン耐性株であった。S. aureus NRS 119及びS. aureus NRS 120は、S. aureus(NARSA)コレクション中の抗菌耐性ネットワークからのリネゾリド耐性の単離物である。E. faecalis 99 及びE. faecium 106は、バンコマイシン耐性の腸球菌株である。
【0139】
実施例14
溶血分析
抽出したてのヘパリン処置したヒト血液から赤血球を分離し、PBS(pH7.4)中に再懸濁して20体積%の懸濁液を作成した。96穴微量定量プレート内で、連続希釈法(2:1)によってペプトイド溶液を調製した。試験ウェルにおいて、赤血球懸濁液100μLをペプトイドのPBS溶液100μLに加えた。ペプトイドを含まないPBSを負の対照として用い、0.2体積%Triton X−100を100%溶血を示す正の対照として用いた。37℃での培養の1時間後、各ウェルをPBS150μLで希釈した。次にプレートを1、200xgで15分間遠心分離し、細胞をペレットにした。各ウェルの上澄み30μLを、PBS70μLを含有する第2の96穴プレートの対応するウェルに移した。プレートリーダを用いて、350nmでの吸光度を測定し、溶血のパーセントを(A−A)/(Atotal−A)として定義した。ここでAは試験ウェルの吸光度であり、Aは負の対照の平均吸光度であり、Atotalは100%溶血ウェルの平均吸光度である。
【0140】
実施例15
MTS分析
NIH/3T3細胞(ATCC Corporation)を、37℃、5%COにおいて、1%ピルビン酸ナトリウム、1%ペニシリン−ストレプトマイシン、1.5g/L NaHCO及び10%胎児ウシ血清を添加した完全なダルベッコ変法イーグル培地(CDMEM)中で培養した。NIH/3T3細胞について5、000個/ウェルの密度で、96穴プレート中に細胞を播種した(合計体積100μl)。ペプトイド溶液プレート(1ウェル当たり合計体積100μL)を、水性ペプトイド保存溶液の連続希釈法によってハンクス液(HBSS)培養液中で調製した。1日齢の細胞単層をHBSSで洗浄し、培養液をHBSS100μLで置換した。ペプトイド溶液プレートの内容を、細胞単層プレートの対応するウェルに移し、MTS試薬(Promega,Inc.)40μLを各ウェルに加えた。3時間37℃で培養した後、490nmでの吸光度を求めた。抑制パーセンテージを[1−(A−Atestblank)/(Acontrol−Ablank)]×100として求めた。ここでAは試験ウェル吸光度であり、Acontrolは培養液及びMTS(ペプトイドなし)に曝露した細胞の入ったウェルの平均吸光度である。Atestblank(培養液、MTS及びペプトイド)及びAblank(培養液及びMTS)を、細胞なしのバックグラウンド吸光度として測定した。6件の反復実験の平均を報告する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式のポリ−N−置換グリシン抗生物質化合物。

式中、Aは、H及び末端N−アルキル置換グリシン残基から選択され、前記アルキル置換基は約C〜約C20の直鎖、分岐鎖及び環式のアルキル基から選択され、
nは、1〜3から選択される整数であり、
Bは、NH、1及び2つのN−置換グリシン残基から選択され、前記N−置換基は独立してα−アミノ酸側鎖部分及びそれらの炭素同族体から選択され、
X、YおよびZは、独立してN−置換グリシン残基から選択され、前記N−置換基は独立してα−アミノ酸側鎖部分及びそれらの炭素同族体から選択され、及びプロリン残基,前記X−Y−Z周期性は前記化合物に両親媒性を供給する。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物であって、
Aは、Hであり、
Bは、前記1及び2つのN−置換グリシン残基から選択され、前記選択は前記化合物の疎水性を低下させる化合物。
【請求項3】
請求項2に記載の化合物であって、
XがNLys残基であり、
nが3であり及び
Bは2個のN−置換グリシン残基である化合物。
【請求項4】
請求項2に記載の化合物であって、下記式の化合物。

【請求項5】
請求項1に記載の化合物であって、少なくともY及びZのうち一つがプロリン残基である化合物。
【請求項6】
請求項5に記載の化合物であって、Y及びZがプロリン残基である化合物。
【請求項7】
請求項1に記載の化合物であって、
Aは末端N−アルキル置換グリシン残基であり、前記アルキル置換基は約C〜約C18の直鎖アルキル部分から選択され、
BはNHであり、並びに
nは1及び2から選択される化合物。
【請求項8】
請求項1に記載の化合物であって、
Aは末端N−アルキル置換グリシン残基であり、前記アルキル置換基は約C〜約C18の直鎖アルキル部分から選択され、
BはNlys残基であり、並びに
nは1である化合物。
【請求項9】
下記式のポリ−N−置換グリシン抗生物質化合物。

式中、nは2及び3から選択され、並びに
Y、Z、Y’及びZ’は独立してN−置換グリシン残基から選択され、前記置換基は独立してα−アミノ酸側鎖部分及びそれらの炭素同族体及びプロリン残基から選択され、前記Y’及びZ’残基は、前記化合物に三倍周期性の化合物と比較して低下した疎水性を供給するよう選択される。
【請求項10】
請求項9に記載の化合物であって、X及びYのうち少なくとも1つがプロリン残基である化合物。
【請求項11】
請求項9に記載の化合物であって、nは2及び3から選択され、Y’はNlys残基である化合物。
【請求項12】
請求項11に記載の化合物であって、X及びYのうち少なくとも1つがプロリン残基である化合物。
【請求項13】
請求項9に記載の化合物であって、下記式の化合物。

【請求項14】
下記式のポリ−N−アルキル置換グリシン抗生物質化合物。

式中、BはNH及びX’から選択され、
X、Y、Z及びX’は独立してN−置換グリシン残基から選択され、前記置換基は独立してα−アミノ酸側鎖部分及びそれらの炭素同族体及びプロリン残基から選択され、
nは1及び2から選択される整数であり、並びに
Rは前記グリシン残基のN−アルキル置換基であり、前記置換基は約C4〜約C20の直鎖、分岐鎖及び環式のアルキル部分から選択される。
【請求項15】
請求項14に記載の化合物であって、nは2であり、BはNHである化合物。
【請求項16】
請求項14に記載の化合物であって、nは1であり、BはX’である化合物。
【請求項17】
請求項16に記載の化合物であって、X及びX’のうち少なくとも一つがNlys残基である化合物。
【請求項18】
請求項17に記載の化合物であって、前記アルキル置換基は約C〜約C18の直鎖、分岐鎖及び環式のアルキル部分から選択される化合物。
【請求項19】
請求項18に記載の化合物であって、X及びX’はNlys残基である化合物。
【請求項20】
請求項19に記載の化合物であって、下記式の化合物。

【請求項21】
ポリ−N−置換グリシン抗生物質化合物であって、H及びN−アルキル置換グリシン残基から選択されるN末端基を含み、前記アルキル置換基は約C〜約C20の直鎖、分岐鎖及び環式のアルキル部分から選択され、C末端はNH、一個及び二個のN−置換グリシン残基から選択され、前記N−置換基は独立してα−アミノ酸側鎖部分及びそれらの炭素同族体から選択され、並びに前記N−及びC末端間の2個〜約15個のモノマー残基、各前記残基は独立してプロリン残基及びN−置換グリシン残基から選択され、前記N−置換基は独立してα−アミノ酸側鎖部分及びそれらの炭素同族体から選択され、前記モノマーは前記化合物にモノマーの非周期的配列を供給するよう選択される化合物。
【請求項22】
請求項21に記載の化合物であって、前記N末端基はHであり、並びに前記C末端は前記1個及び2個のN−置換グリシン残基から選択される化合物。
【請求項23】
請求項22に記載の化合物であって、前記モノマー残基は2−5(X−Y−Z−)非周期的三量体を含む化合物。
【請求項24】
請求項23に記載の化合物であって、前記三量体の各々におけるX、Y及びZのうち少なくとも一つが三倍周期性を中断するよう選択される化合物。
【請求項25】
請求項23に記載の化合物であって、少なくとも1つの前記三量体中の少なくとも1つのXはNlys残基である化合物。
【請求項26】
請求項25に記載の化合物であって、少なくとも1つの前記三量体中のYとZのうち少なくとも1つがプロリン残基である化合物。
【請求項27】
請求項23に記載の化合物であって、前記モノマー残基は少なくとも2個の非連続反復三量体を含み、その間に少なくとも1個の前記残基を含む化合物。
【請求項28】
請求項23に記載の化合物であって、少なくとも1つの前記三量体中の少なくとも1つのXはNlys残基であり、並びに少なくとも1つの前記三量体中のYとZのうち少なくとも1つはプロリン残基である化合物。
【請求項29】
請求項21に記載の化合物であって、前記N末端基はN−アルキル置換グリシン残基であって、前記アルキル置換基は約C〜約C18の直鎖アルキル部分から選択される化合物。
【請求項30】
請求項29に記載の化合物であって、前記モノマー残基は2−5(X−Y−Z)非周期的三量体を含む化合物。
【請求項31】
請求項30に記載の化合物であって、前記三量体の各々のX、Y及びZのうち少なくとも一つは三倍周期性を中断するよう選択される化合物。
【請求項32】
請求項29に記載の化合物であって、前記モノマー残基は少なくとも2個の非連続反復三量体を含み、その間に少なくとも1個の残基を含む化合物。
【請求項33】
請求項32に記載の化合物であって、少なくとも1つの前記三量体中の少なくとも1つのXはNlys残基であり、並びに少なくとも1つの前記三量体中のYとZのうち少なくとも1つはプロリン残基である化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図17A】
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【図17B】
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【公表番号】特表2011−511077(P2011−511077A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545896(P2010−545896)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/000840
【国際公開番号】WO2009/105167
【国際公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(596057893)ノースウエスタン ユニバーシティ (35)
【Fターム(参考)】