説明

選択的水素化触媒及びその製造

【課題】熱分解ガソリンに特に適した新しい選択的水素化触媒及びその製造方法を提供する。
【解決手段】アルミナを担体とし、金属パラジウムを、担体の表面にエッグシェル状に分布した活性成分とする、選択的水素化触媒であって、触媒の重量を100%とした場合に、0.2〜0.5重量%の活性成分Pd、2〜8重量%の助剤ランタン及び/又はセリウム、ならびに2〜8重量%のアルカリ土類金属を含むことを特徴とする。触媒の比表面積は70〜150m2/gであり、細孔容積は0.3〜0.6ml/gであり、担体の結晶形はθ型であるか、主としてθ型で構成されるθ、α混合型である。触媒は、中又は低留分油の選択的水素化、特に熱分解ガソリンの第1段階選択的水素化に適している。触媒は、良好な水素化性能を有し、特に供給原料が少量の水を含有し、コロイド、ヒ素及びジオレフィンの含有量が高いという条件下で、良好な水素化活性及び安定性を保てる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は選択的水素化触媒及びその製造に関する。触媒は、中(medium)又は低(low)留分油の選択的水素化、特に熱分解ガソリン留分の第1段階選択的水素化に適している。
【背景技術】
【0002】
熱分解ガソリンはエチレン製造時の副生成物C5−200℃であって、その収率はエチレン生産能力の50%超から80%であり、芳香族化合物の量が50%を超えることから、熱分解ガソリンは重要な芳香族化合物源になっている。熱分解ガソリンは、ジオレフィンやスチレンなどの高度不飽和炭化水素も含み、それらは選択的水素化によって対応するモノオレフィンに変換することができ、芳香族化合物を抽出するための出発物質として役立つ。最近、エチレン産業は大きな発展を果たし、エチレン生産能力が年々向上するのに伴って、エチレンの重要な副生成物である熱分解ガソリンの収量もかなり増加している。熱分解ガソリンの水素化触媒に焦点を合わせた水素化技法は、水素化領域における重要な一部門であり、スチームクラッキングによるエチレン製造の後処理において決定的な役割を果たす。
【0003】
現在、産業界において、熱分解ガソリンの第1段階選択的水素化用の触媒は、主として、白金触媒及びパラジウム触媒から構成され、大部分がパラジウム系触媒である。パラジウム系触媒は、有利には、低い開始温度、高い水素化活性、大きな処理容量、長い寿命などを有する。しかしながら、熱分解ガソリンの水素化装置用の供給原料の一部では、水及びヒ素の量が過剰であり、留分が重質すぎ、水素化負荷(hydrogenation load)が大きすぎることが、工業プロセスにおける現在の触媒の低い安定性及び短い寿命の原因になっている。
【0004】
特許文献1ではパラジウム−アルミナ触媒及びその製造が報告されている。この出願は、高温でか焼され適量のアルカリ土類金属酸化物でプレコートされたAl23を担体として使用し、担体に0.15%〜0.24%のパラジウムを含浸させて触媒を生産することに関する。特許文献2には、アントラキノン経路による過酸化水素生産用の担持パラジウム−アルミナ触媒及びその製造が報告されている。この特許文献2は、900〜1000℃でか焼され適量の希土類酸化物でプレコートされたAl23を担体として使用し、担体に0.15%〜0.25%のパラジウムを含浸させて触媒を生産することに関する。特許文献3には、熱分解ガソリンの留分であるジオレフィンの選択的水素化用の繊維担体触媒であって、20〜150m2/gの比表面積と0.1〜0.3ml/gの細孔容積を有するη−Al23多孔質繊維性担体の使用を特徴とするものが開示されている。触媒は高い初期活性を有するが、細孔容積が小さすぎる。熱分解ガソリン水素化装置用の供給原料におけるコロイド、水及びヒ素の含有量が過剰な場合、触媒上の細孔は、容易にコーキングされブロックされて、それが触媒の水素化安定性に影響を及ぼす。
【0005】
優れた選択的水素化触媒は高い水素化活性と良好な選択性を有するべきであり、より重要なことには、良好な安定性を有するべきである。すなわち触媒は、触媒の寿命が長くなるように、耐水性及び耐コロイド性を有するべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】中国特許第200410061031号明細書
【特許文献2】中国特許出願公告第1175931号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第85100761号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、熱分解ガソリンに特に適した新しい選択的水素化触媒及びその製造方法を提供することである。本発明に係る触媒は、良好な耐水特性及び耐コロイド特性を有すると共に、高負荷及び油変化に対抗する能力、ならびに、より高い水素化安定性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
アルミナを担体とし、金属パラジウムを、担体の表面にエッグシェル状に担持された活性成分とする、本発明の選択的水素化触媒は、触媒の総重量に基づいて、
活性成分として0.2〜0.5重量%のPd、
助剤として2〜8重量%のランタン及び/又はセリウム、ならびに
2〜8重量%のアルカリ土類金属を含むことを特徴とし、前記触媒は0.07〜0.15mmのシェル厚、70〜150m2/gの比表面積及び0.3〜0.6ml/gの細孔容積を有し、担体の結晶形はθ型であるか、主としてθ型で構成されるθ、α混合型であることができる。触媒は、中又は低留分油のジオレフィン選択的水素化に、特に熱分解ガソリン留分の第1段階選択的水素化プロセスに、有用である。
【0009】
本発明におけるアルミナ担体は従来の方法で製造することができる。例えば、担体を製造する際には、アルミナ粉末と水を混練して押出し、次に40〜120℃で乾燥し、300〜600℃で4〜6時間か焼する。
【0010】
本発明の触媒は最も一般的な含浸プロセスによって製造される。すなわち、活性成分の添加は含浸プロセスによって達成される。本発明は本触媒にとって最善の製造プロセスも提供する。すなわち、アルカリ土類金属、ランタン及び/又はセリウムを、好ましくはパラジウムに先だって、特にθ型又はθ、α混合型のアルミナの形成に先だって添加することで、担体の酸性度、活性及び安定性のより良い改善につながる。
【0011】
本発明は本触媒用の具体的製造プロセスも提供する。すなわち、硝酸アルカリ土類金属、ランタン及び/又はセリウムの可溶性塩を水に溶解して溶液を形成させ、次に担体に前記溶液を含浸させ、40〜120℃で乾燥し、900〜1100℃で4〜6時間か焼することで、アルカリ土類金属元素、ランタン及び/又はセリウムを含むθ型又はθ、α混合型のアルミナ担体を得る。金属パラジウムの含浸負荷は、一般的なシェル触媒の含浸技法と同じである。すなわち、θ型又はθ、α混合型のアルミナ担体に、まず、貴金属パラジウムを含有する塩溶液と混和する液体を予備含浸させ、次に、θ型又はθ、α混合型の予備含浸済アルミナ担体に、貴金属パラジウムを含有する塩溶液を含浸させる。その後、得られた含浸済アルミナ担体を洗浄し、乾燥し、350〜500℃で2〜4時間か焼することで、触媒生成物を得る。
【0012】
θ型又はθ、α混合型のアルミナ担体の予備含浸に使用され、貴金属パラジウムを含有する塩溶液と混和する、最も一般的な液体は、脱イオン水である。
【0013】
本発明の触媒はもう1つのプロセスによって製造することもできる。すなわち、アルカリ土類金属、ランタン及び/又はセリウムの可溶性塩を水に加えて溶解し、次にその溶液にアルミナ粉末を加え、混練してから押出し、40〜120℃で乾燥し、900〜1100℃で4〜6時間か焼する。次に、担体にパラジウムを含浸させる。パラジウムの含浸は、上述のように、一般的な含浸法を使って行なわれる。
【0014】
本発明の触媒は本明細書に記載の製造プロセスによって得られるとは限らない。本発明の触媒生成物は、反応器における水素による還元後に使用することができる。
【0015】
触媒中の活性成分としてのPdは、0.2〜0.5重量%、好ましくは0.2〜0.4重量%の量である。Pdの量が少なすぎると、触媒の水素化活性が低くなりすぎる。逆に、Pdの量が多すぎると、触媒の初期活性が高くなりすぎる。
【0016】
本発明の触媒へのランタン及び/又はセリウムの添加は、高温でか焼する際のAl23結晶の成長を阻害し、Pdの分散度を増加させ、担体の表面塩基性を増加させ、触媒の水素化活性及び安定性を改善し得る。触媒中のランタン及び/又はセリウムの量は2〜8重量%、好ましくは2〜6重量%である。ランタン及び/又はセリウムの効果は、その含有量が低すぎると有意でなくなり、その含有量が高すぎると、触媒の活性が影響を受ける。希土類金属はランタン及びセリウムのうちの1つ又は2つであることができ、好ましくはセリウムである。
【0017】
ある態様では、アルカリ土類金属を本発明の触媒に加えた後、高温でのか焼によって触媒の表面酸性度を調節し、水素化中の触媒のコロイド耐性特性を改善することができる。もう1つの態様では、組み込まれたアルカリ土類金属が、ランタン及び/又はセリウムと共に、アルミナとの相乗効果を有し、アルミナ担体の比表面積の喪失を防ぎ、アルミナ担体の熱安定性及び化学安定性を改善し得る。触媒中のアルカリ土類金属の含有量は、2〜8重量%、好ましくは3〜6重量%である。アルカリ土類金属の効果は、その含有量が低すぎると有意でなくなり、その含有量が高すぎると、触媒の活性が影響を受ける。アルカリ土類金属は、Mg、Ba、Srなどの1つ以上であることができ、好ましくはMgである。
【0018】
本発明の触媒は、必須の成分に加えて、他の成分、例えばAg、Kなどの1つ以上を含むことができ、それら他の成分の含有量は一般に0〜0.2重量%、好ましくは0.4〜1.7重量%である。
【0019】
本発明の触媒の担体は、他の晶出形態のアルミナ担体よりも良好な、適切な比表面積及び細孔分布、良好な活性及び安定性を特徴とするθ型又はθ、α混合型のアルミナである。主としてθ型で構成されるθ、α混合型のアルミナを使用する場合は、15%未満のα型及び80〜120m2/gの比表面積を有することが好ましい。
【0020】
本発明の触媒で使用されるAl23粉末は、市販のアルミナ粉末、例えば硝酸法又は二酸化炭素法によって得られるものなどであることができる。アルミナ担体の形状は、本発明では特に限定されず、球状であってもよいし、押出ストリップ状であってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、良好な耐水特性及び耐コロイド特性を有すると共に、高負荷及び油変化に対抗する能力、ならびに、より高い水素化安定性を有する、熱分解ガソリンに適した選択的水素化触媒及びその製造方法を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
出発物質の供給源及び分析方法:
アルミナ粉末:Shandong Taiguang Company Limitedから入手可能。
アルミナ担体:押出ストリップ。
【実施例1】
【0023】
180mlの水を300gのアルミナ粉末に加え、次にそれを混練し、押出し、120℃の空気中で乾燥し、560℃で4時間か焼した。次に、76.5gの硝酸マグネシウム及び28.7gの硝酸ランタンを水に溶解し、担体に含浸させ、120℃の空気中で乾燥し、1020℃で4時間か焼することで、Al23担体を生産した。
【0024】
59%を下回らないパラジウム含有量を有する塩化パラジウム粉末5.25gを秤量し、200mlの水に加えてから、塩酸を加えた。溶解後に溶液を脱イオン水で1.2Lに希釈した。必要とするシェルの厚さに応じてpH値を調節した。1.0kgの担体生成物を秤量し、脱イオン水を加えて、担体に含浸させた。水を濾別した。調製した塩化パラジウム溶液を担体上に注ぎ、混合物を撹拌下で加熱沸騰させた。20分後に溶液を濾過し、空気中120℃で乾燥し、480℃で4時間か焼することにより、触媒を得た。
【0025】
比較例1
180mlの水を300gのアルミナ粉末に加え、次にそれを混練し、押出し、空気中120℃で乾燥し、540℃で4時間か焼した。次に、76.5gの硝酸マグネシウムを水に溶解し、担体に含浸させ、空気中120℃で乾燥し、1020℃で4時間か焼することで、Al23担体を生産した。
【0026】
この触媒の製造は実施例1の製造に似ている。
【0027】
比較例2
180mlの水を300gのアルミナ粉末に加え、次にそれを混練し、押出し、空気中120℃で乾燥し、540℃で4時間か焼した。次に28.7gの硝酸ランタンを水に溶解し、担体に含浸させ、空気中120℃で乾燥し、1020℃で4時間か焼することで、Al23担体を生産した。
【0028】
この触媒の製造は実施例1の製造に似ている。
【0029】
比較例3
180mlの水を300gのアルミナ粉末に加え、次にそれを混練し、押出し、空気中120℃で乾燥し、540℃で4時間か焼した。次に、45.2gの硝酸セリウムを水に溶解し、担体に含浸させ、空気中120℃で乾燥し、1020℃で4時間か焼することで、Al23担体を生産した。
【0030】
この触媒の製造は実施例1の製造に似ている。
【実施例2】
【0031】
180mlの水を300gのアルミナ粉末に加え、次にそれを混練し、押出し、空気中120℃で乾燥し、540℃で4時間か焼した。次に、100.7gの硝酸マグネシウム及び34.5gの硝酸セリウムを水に溶解し、担体に含浸させ、空気中120℃で乾燥し、1030℃で4時間か焼することで、θ型のAl23担体を生産した。
【0032】
59%を下回らないパラジウム含有量を有する塩化パラジウム粉末5.6gを秤量し、200mlの水に加えてから、塩酸を加えた。溶解後に溶液を脱イオン水で1.2Lに希釈した。必要とするシェルの厚さに応じてpH値を調節した。1.0kgの担体生成物を秤量し、脱イオン水を加えて、担体に含浸させた。水を濾別した。調製した塩化パラジウム溶液を担体上に注ぎ、混合物を撹拌下で加熱沸騰させた。20分後に溶液を濾過し、空気中120℃で乾燥し、450℃で4時間か焼することで、触媒を生産した。
【0033】
比較例4
180mlの水を300gのアルミナ粉末に加え、次にそれを混練し、押出し、空気中120℃で乾燥し、560℃で4時間か焼した。次に、69.7gの硝酸マグネシウム及び34.5gの硝酸セリウムを水に溶解し、担体に含浸させ、空気中120℃で乾燥し、850℃で4時間か焼することで、δ型のAl23担体を生産した。
【0034】
この触媒の製造は実施例2の製造に似ている。
【実施例3】
【0035】
102.5gの硝酸マグネシウム、20.1gの硝酸セリウム及び19.4gの硝酸ランタンを水に溶解し、300gのアルミナ粉末に加えた。混合物を混練し、押出し、空気中120℃で乾燥し、1050℃で4時間か焼することで、θ型のAl23担体を生産した。
【0036】
59%を下回らないパラジウム含有量を有する塩化パラジウム粉末5.07gを秤量し、200mlの水に加えてから、塩酸を加えた。溶解後に溶液を脱イオン水で1.1Lに希釈した。必要とするシェルの厚さに応じてpH値を調節した。1.0kgの担体生成物を秤量し、脱イオン水を加えて、担体に含浸させた。水を濾別した。調製した塩化パラジウム溶液を担体上に注ぎ、混合物を撹拌下で加熱沸騰させた。20分後に溶液を濾過し、空気中120℃で乾燥し、460℃で4時間か焼することで、触媒を生産した。
【実施例4】
【0037】
Shandong Taiguang Company Limitedが供給する中又は低留分用の選択的水素化触媒担体を使用し、500℃で4時間か焼する。次に、162.9gの硝酸マグネシウム、38.6gの硝酸セリウム及び1.8gの硝酸銀を水に溶解し、担体に含浸させ、空気中120℃で乾燥し、1050℃で4時間か焼することで、θ型のAl23担体を生産した。
【0038】
59%を下回らないパラジウム含有量を有する塩化パラジウム粉末5.95gを秤量し、200mlの水に加えてから、塩酸を加えた。溶解後に溶液を脱イオン水で1.2Lに希釈した。必要とするシェルの厚さに応じてpH値を調節した。1.0kgの担体生成物を秤量し、脱イオン水を加えて、担体に含浸させた。水を濾別した。調製した塩化パラジウム溶液を担体上に注ぎ、混合物を撹拌下で加熱沸騰させた。20分後に溶液を濾過し、空気中120℃で乾燥し、460℃で4時間か焼することで、触媒を生産した。
【実施例5】
【0039】
180mlの水を300gのアルミナ粉末に加え、次にそれを混練し、押出し、空気中120℃で乾燥し、560℃で4時間か焼した。次に、13.1gの硝酸バリウム、9.1gの硝酸ストロンチウム及び34.5gの硝酸セリウムを水に溶解し、担体に含浸させ、空気中120℃で乾燥し、1000℃で4時間か焼することで、θ型のAl23担体を生産した。
【0040】
59%を下回らないパラジウム含有量を有する塩化パラジウム粉末4.72gを秤量し、200mlの水に加えてから、塩酸を加えた。溶解後に溶液を脱イオン水で580mlに希釈した。必要とするシェルの厚さに応じてpH値を調節した。1.0kgの担体生成物を秤量し、脱イオン水を加えて、担体に含浸させた。水を濾別した。調製した塩化パラジウム溶液を担体上に注ぎ、混合物を撹拌下で加熱沸騰させた。20分後に溶液を濾過し、空気中120℃で乾燥し、470℃で4時間か焼することで、触媒を生産した。
【実施例6】
【0041】
180mlの水を300gのアルミナ粉末に加え、次にそれを混練し、押出し、空気中120℃で乾燥し、560℃で4時間か焼した。次に、30.5gの硝酸ストロンチウム及び45.52gの硝酸ランタンを水に溶解し、担体に含浸させ、空気中120℃で乾燥し、1050℃で4時間か焼することで、θ、α混合型のAl23担体を生産した。
【0042】
59%を下回らないパラジウム含有量を有する塩化パラジウム粉末5.78gを秤量し、200mlの水に加えてから、塩酸を加えた。溶解後に溶液を脱イオン水で590mlに希釈した。必要とするシェルの厚さに応じてpH値を調節した。1.0kgの担体生成物を秤量し、調製した塩化パラジウム溶液を含浸させ、空気中120℃で乾燥し、450℃で4時間か焼することで、触媒を生産した。
【0043】
比較例5
180mlの水を300gのアルミナ粉末に加え、次にそれを混練し、押出し、空気中120℃で乾燥し、560℃で4時間か焼した。次に、7.6gの硝酸カリウム及び2.1gの硝酸銀を水に溶解し、担体に含浸させ、空気中120℃で乾燥し、980℃で4時間か焼することで、θ型のAl23担体を生産した。
【0044】
この触媒の製造は実施例6の製造に似ている。
【産業上の利用可能性】
【0045】
評価用の油:Lanzhou Chemical Companyから入手可能。
【表1】

評価用の装置:100ml断熱層(adiabatic bed)水素化装置
分析方法
比表面積:BET法
細孔容積:BET法
ジオレフィン:油のジオレフィン価は無水リンゴ酸法によって決定し、gヨウ素/100g油として表す。
ヨウ素価:油のヨウ素価はヨウ素クロリド法で決定し、gヨウ素/100g油として表す。
【0046】
実施例及び比較例の触媒の物理的性質を表2に示す。
【表2】

【0047】
供給原料として、熱分解油のC5−C9留分を使用し、その性質を表1に示す。実施例1〜6及び比較例1〜5の触媒を評価した。評価は100ml断熱層水素化装置で行なった。まず最初に、触媒を水素下、110℃で10時間還元した。40℃まで冷却してから、供給原料油を供給した。反応条件:反応圧2.8MPa、入口温度40℃、新鮮供給原料油の速度3.5h-1、水素対油の体積比200:1(新鮮油ベース)。評価は200時間にわたって行なった。そして、生成物のヨウ素価及びジオレフィンを6時間ごとに分析した。200時間の評価中の各触媒に関する生成物のヨウ素価及びジオレフィンの平均データを表3に示す。
【表3】

【0048】
実施例2の触媒サンプルには1000時間の長期間評価を行なった。評価は100ml断熱層水素化装置で行なった。まず最初に、触媒を水素下、106℃で10時間還元した。45℃まで冷却してから、供給原料油を供給した。反応条件:反応圧2.8MPa、入口温度約45℃、新鮮供給原料油の速度3.5h-1、水素対油の体積比200:1(新鮮油ベース)。水素化供給原料油(C5−C9)の性質を表1に示す。生成物のヨウ素価及びジオレフィンを12時間ごとに評価した。200時間ごとにその間の平均分析データを得た。評価の結果を表4に示す。供給原料を供給する1000時間の稼働時間中、水素化生成物のヨウ素価及びジオレフィン価は低レベルのままであり、このことは、実施例2の触媒が、33.7gヨウ素/100g油のジオレフィン価、171gヨウ素/100g油のヨウ素価、650ppmの水量、36ppbのヒ素量及び13mg/100mlのコロイド量を有する比較的不良な水素化供給原料に適していることを示している。触媒は、例えばコロイド、水、ヒ素などの不純物に対抗する能力、及び良好な安定性、ならびに良好な水素化活性を有する。
【表4】

【0049】
本発明の水素化触媒は良好な水素化性能を有し、特に、水素化供給原料が少量の水及びコロイドを含有する条件下でも、触媒は依然として良好な水素化活性及び安定性を有する。触媒は、中又は低留分油の選択的水素化、特に、熱分解ガソリンの第1段階選択的水素化に適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体としてのアルミナと、担体の表面にエッグシェル状に分布した活性成分としてのパラジウムとを有する、選択的水素化触媒であって、触媒の総重量に基づいて、
活性成分として0.2〜0.5重量%のPdと;
助剤として2〜8重量%のランタン及び/又はセリウムと;
2〜8重量%のアルカリ土類金属と;
0〜2.0重量%のAg及び/又はKと;を含むことを特徴とし、
前記触媒が0.07〜0.15mmのシェル厚、70〜150m2/gの比表面積、0.3〜0.6ml/gの細孔容積を有し、前記担体の結晶形がθ型又は主としてθ型で構成されるθ、α混合型である、選択的水素化触媒。
【請求項2】
アルカリ土類金属がカルシウム、マグネシウム、ストロンチウム及びバリウムの1つ以上であることを特徴とする、請求項1記載の選択的水素化触媒。
【請求項3】
触媒中のアルカリ土類金属が3〜6重量%の量である、請求項1記載の選択的水素化触媒。
【請求項4】
触媒が80〜120m2/gの比表面積を有することを特徴とする、請求項1記載の選択的水素化触媒。
【請求項5】
触媒中のPdが0.2〜0.4重量%の量であることを特徴とする、請求項1記載の選択的水素化触媒。
【請求項6】
触媒中のランタン及び/又はセリウムが2〜6重量%の量であることを特徴とする、請求項1記載の選択的水素化触媒。
【請求項7】
アルミナ担体が主としてθ型で構成されるθ、α混合型である場合、α型は15%未満であることを特徴とする、請求項1記載の選択的水素化触媒。
【請求項8】
触媒中のAg及び/又はKの添加量が0.4〜1.7重量%であることを特徴とする、請求項1記載の選択的水素化触媒。
【請求項9】
活性成分が含浸によって添加され、パラジウムの添加に先だって、アルカリ土類金属、ランタン及び/又はセリウムが添加されることを特徴とする、請求項1に記載の選択的水素化触媒を製造するための方法。
【請求項10】
アルカリ土類金属、ランタン及び/又はセリウムが、θ型又はθ、α混合型のアルミナの形成に先だって添加されることを特徴とする、請求項1に記載の選択的水素化触媒を製造するための方法。
【請求項11】
アルカリ土類金属元素、ランタン及び/又はセリウムの可溶性塩を水に溶解して溶液を形成させることと;
担体に前記溶液を含浸させることと;
40〜120℃で乾燥することと;
900〜1100℃で4〜6時間か焼することによって、アルカリ土類金属元素、ランタン及び/又はセリウムを含有するθ型又はθ、α混合型のアルミナ担体を形成させることと;
θ型又はθ、α混合型の前記アルミナ担体に、貴金属パラジウムを含有する塩溶液と混和する液体を予備含浸させることと;
次に、θ型又はθ、α混合型の予備含浸済アルミナ担体に、貴金属パラジウムを含有する塩溶液を含浸させることと;
得られた含浸済アルミナ担体を洗浄し、乾燥することと;
350〜500℃で2〜4時間か焼することによって、触媒生成物を得ることとを含むこと;を特徴とする、請求項1に記載の選択的水素化触媒を製造するための方法。

【公表番号】特表2011−506068(P2011−506068A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537232(P2010−537232)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【国際出願番号】PCT/CN2008/001780
【国際公開番号】WO2009/079905
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(510123817)
【氏名又は名称原語表記】PETROCHINA COMPANY LIMITED
【住所又は居所原語表記】Zhouji Mansion,No.16 Andelu,Dongcheng District,Beijing,100011,China
【Fターム(参考)】