説明

選択的透過性保護構造体及びその使用方法

物品および選択的透過性保護構造体を含むパッケージと、物品を選択的透過性保護構造体内にラップまたは被覆することを含む、腐食またはカビの増殖による物品への損傷を制限するための方法とである。選択的透過性構造体は、少なくとも800g−mil/m2/24hの水蒸気透過値および液体水に対するバリアを有する膜と、および場合により支持基板とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送および貯蔵中に物体を被覆するための選択的透過性構造体と、物品およびこの構造体を含む、水分の低減されたパッケージとに関する。
【背景技術】
【0002】
器材は、輸送および貯蔵中の表面損傷を防止するために、多くの場合、フィルムもしくは布製防水シート、フードまたは他のカバーによりラップまたは梱包される。これらのカバーは、ハイバリア(非常に水分不透過性)フィルムおよび布地から作製することができる(例えば、http://www.heritagepackaging.com/productservices/barrierpackaging/bpbasics/bpbasics.htmを参照)。
【0003】
多くの比較的小さい品目は、パレット、すなわちフォークリフトまたは小型クレーンにより容易に移動されるプラットフォーム上で出荷される。パレットは、出荷用コンテナから商品を荷積みおよび荷降ろしする際、そしてより少量の商品をより短い距離(倉庫内など)移動させる、または小売量を配達する際に、利便性を提供する。小さい品目がパレット上に置かれる場合、これらは、例えばバッグまたは箱の中に、梱包されなくても梱包されてもよい。
【0004】
荷を積んだパレットは、出荷中に商品が損傷または紛失されないように、完全性および安定性を有さなければならない。必要な完全性および安定性を提供するために、通常、パレットおよびその積荷は、機械または手で適用され得るフィルム、例えばポリエチレンストレッチラップのオーバーラップ層内に一緒にラップされている。例えば、米国再発行特許第38429号明細書を参照されたい。荷を積んだパレットに完全性および安定性を提供するその他の一般に実施される方法としては、パレットおよびその積荷を熱収縮性フィルム内にラップする方法、荷を積んだパレットを熱収縮性であっても伸縮性であってもよい鞘または「フード」内に入れる方法、そして商品を単一のカートンボックス内に収容する方法が挙げられる。これらの方法は、個別あるいは集合的に「パレットの一体化」と呼ばれることもある。
【0005】
一般に、小さい物体または物品を密封バッグ内にラップするためにバリアフィルムを用いると、物体をバッグ内に密封する前に乾燥させることができ、そして/あるいは乾燥剤を密封バッグの内部に収容することができるので適切である。カバーは通常物体の周りに密封されず、物体の完全な乾燥は実現できないので、このアプローチは、車両、ボート、モーター、機械類、工業製品、より小さい物品を保持するパレットまたはコンテナ、および他のかさばる器材などの大きい物体のためにはあまり適切でない。大きい物体は、長期間にわたって悪天候条件にさらされ得るので、これは、貯蔵中または船もしくは鉄道による出荷の際に特に問題であり得る。大気中水分および/または雨はカバーの下の空間に入って閉じ込められ、そして凝縮し得る。ハイバリアカバーを用いると、水が浸透してカバーの外側に戻ることは絶対になく、カバーの内部に水分の蓄積を起こし、腐食の可能性をもたらす。
【0006】
例えば、鉄、鋼、および他の金属の腐食のために、毎年大量の貨幣が失われている。水分、酸素、および塩の存在を含む、腐食速度に影響を与える多くの因子が存在する。一般的な腐食は、高湿度条件における電気化学反応のために起こる。例えば、鉄は、湿った空気にさらされると、酸素と反応してさび(酸化鉄)を形成する。腐食の結果は、容易に剥がれ落ちる金属酸化物の形成であり、広範囲に及ぶ孔食を生じ、それにより、構造的な脆弱性および金属の分解を起こし得る。腐食は金属部品のその他の特性にも影響を及ぼすことができ、例えば、伝導率の低下または表面粗度の増大であり、移動部品が自由に動くことができなくなる。
【0007】
金属の腐食に加えて、器材表面の凝縮した水分中でカビの増殖が起こり得る。
【0008】
高い水蒸気透過速度を有するフィルムまたはカバーを用いると、閉じ込められた水分の平衡が周囲大気へ戻るのを可能にすることによって、カバー内部の水の凝縮を防止することができる。このようなフィルムを用いると、さびの形成および腐食が防止または低減され、カビの増殖の機会が少なくなる。
【0009】
広範な機械および輸送特性を有する種々の透過性材料が知られている。しかしながら、透過性材料が使用される特定の用途に応じて、特定の組み合わせが必要とされる。保護カバー用途のためには、材料は水蒸気を輸送するが、液体水または他の流体の輸送は遮断し、そして軽量であり、広い温度範囲にわたって可撓性であることが望ましい。水蒸気の輸送(例えば、カバー内部の器材から大気へ)を容易にし、そして水、油または腐食性流体などの液体の侵入を遮断する膜特性を有する可撓性固体材料であり得る材料が必要とされている。
【0010】
種々の参考文献に、保護カバーに有用であり得る様々なポリマーから製造された半透過性材料が記載されている。例えば、米国特許第6579948号明細書を参照されたい。
【0011】
これまでの多くの透過性膜は、微多孔質(すなわち、蒸気が通過することができる微視的な細孔の存在により透過性)である。不織布上または不織布間に積層され得る微多孔質膜は増大した透過性を有するが、その非選択的な透過性のために液体に対する適切なバリアを提供することができない。圧力下にある液体は、細孔に浸透することができるであろう。ほとんどの微多孔質フィルムは二軸延伸されているので、ほんの少量の収縮しか可能でなく、その多孔率を損失せずに収縮することはできない。これらは低い引裂き強度も有し、その表面は容易に汚され、それにより透過性が損失され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
技術的要件の全てを満たし、そして費用効果的な代替案を提示する単一の材料は出現していないので、腐食および/またはカビの増殖を制限する物体の保護カバーとしての使用に適切にするような機械特性、低温可撓性、選択的輸送、加工の容易性、および費用効果の組み合わせを示す、選択的透過性の膜または構造体または層を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
パッケージは、少なくとも1つの物品、選択的透過性保護構造体、および場合により支持基板を含み、この構造体は選択的透過性膜を含むか、選択的透過性膜から本質的になるか、あるいは選択的透過性膜から製造され、この膜は組成物を含むか、組成物から本質的になるか、あるいは組成物から製造され、この膜は、少なくとも800g−mil/m2/24hの水蒸気透過値(MVPV)および高い水の浸入圧(water−entry pressure)を有し、そして選択的透過性構造体は、少なくとも500g/m2/24hの水蒸気透過速度(MVTR)を有する。MVPVは、ASTM F−1249に従って37.8℃および100%相対湿度で測定される。
【0014】
物品を選択的透過性保護構造体内にラップまたは被覆することを含む、腐食またはカビの増殖による物品への損傷を制限するための方法であって、この構造体は上記で開示されたものと同一であり得る。
【発明を実施するための形態】
【0015】
全ての参考文献の開示全体は参照によって本明細書に援用され、商品名または商標は大文字で示される。
【0016】
「(メタ)アクリル酸」はメタクリル酸および/またはアクリル酸を含み、そして「(メタ)アクリレート」はメタクリレートおよび/またはアクリレートを含む。
【0017】
「選択的透過性」は、透過が、蒸気や気体などの特定の状態にある特定の分子にのみ許され、他の分子または液体や固体などの異なる状態では許されないことを意味する。このような分子は、本明細書に開示される組成物のフィルムまたはシートなどの特定の材料のマトリックス中に溶解または分散され、その後材料を通って拡散または移動され得る。
【0018】
選択的透過性膜は、少なくとも800、少なくとも900、少なくとも1200、少なくとも2000、または少なくとも4,000g−mil/m2/24hのMVTR、あるいはさらに5000、10000、または15000g−mil/m2/24hまで、あるいはさらに高いMVPVを有し得る。MVPVは、膜(1ミル厚さに基準化されたフィルムまたはシートでよい)の水分透過を測定する。
【0019】
選択的透過性保護カバーは、少なくとも500、少なくとも600、少なくとも1000、または少なくとも2000g/m2/24hのMVTR、あるいはさらに高いMVTRを有し得る。これらは、約3,000、約5000または約10000g/m2/24hまでのMVTR、あるいはさらに高いMVTRを有し得る。MVTRは、構造体の厚さに関係なく単位時間の間にフィルム内を透過する全水蒸気を測定する。
【0020】
選択的透過性保護構造体は、機械特性、低温可撓性、選択的輸送、加工の容易性、および費用効果の組み合わせを提供する。
【0021】
組成物は、選択的透過性バリアとして機能する一体または連続膜に形成することができる。一体連続膜は、微多孔質膜とは対照的に、高い水の浸入圧を有し、防水性および防液性である。DIN EN20811:92に記載されるように、高い水の浸入圧は、>150cm(または>150cmまたは>150cm)H2Oの静水頭を指す。
【0022】
従って、一体膜は水などの液体に対するバリアを提供するが、適切な条件下での水蒸気の透過性は可能なままである。一体バリアは、水、溶媒、油、腐食性流体などの液体、または微粒子もしくは個体(ほこり、刺激物、カビ胞子、アレルゲン、花粉、動物の鱗屑、毛髪などを含む)への暴露を防止するのにも有効である。
【0023】
選択的透過性膜は、透過物の大きさおよび極性に応じて、液体透過物に対して選択的であり得る、すなわち、メタノールよりも高い分子量を有する事実上全ての有機液体よりも高速での水の拡散を可能にできるように選択性を有する。
【0024】
選択的透過性組成物は有機酸で変性されたアイオノマー組成物でよく、1つまたは複数のエチレン酸コポリマーまたはE/X/Yコポリマーまたは酸コポリマーのアイオノマーと、4〜36個の炭素原子を有する1つまたは複数のカルボン酸またはその塩と、場合により組成物に基づいて0.1〜25重量%の、エチレン含有ポリマー、プロピレン含有ポリマー、またはこれらの組み合わせを含む1つまたは複数の任意的なポリマーとを含むか、これらから本質的になるか、あるいはこれらから製造される。ここで、
Eは共重合されたエチレン単位を表し、Xはコポリマーの約2〜約35重量%存在し、共重合された少なくとも1つのC3〜C8α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単位を表し、そしてYはコポリマーの0〜約35重量%存在し、共重合された軟化コモノマー単位(軟化は、ポリマーの結晶性が低くされることを意味する)を表し、
カルボン酸またはその塩は組成物中に約1〜約50重量%存在し、カルボン酸は、場合により、C1〜C8アルキル基、OH基、およびOR1基からなる群から独立して選択される1〜3個の置換基で置換され、
各R1は、独立して、C1〜C8アルキル基、C1〜C6アルコキシアルキル基、またはCOR2基であり、
各R2は、独立して、C1〜C8アルキル基であり、
E/X/Yコポリマーおよび/または有機酸中の合わせた酸性基の少なくとも50%は、金属イオン(金属イオンの少なくとも50%はアルカリ金属イオンである)によって対応する塩へ名目上中和され得る。
【0025】
組成物を製造するために使用される酸コポリマーは、好ましくは、「直接」酸コポリマーである。「直接」コポリマーは、現存のポリマー上に別のモノマーがグラフトされる(多くの場合、その後のフリーラジカル反応による)グラフトコポリマーとは違って、全てのモノマーを同時に添加することによって重合されたポリマーである。
【0026】
注目すべきは、Yがポリマーの0重量%であるE/X/Yコポリマー(すなわち、E/Xダイポリマー)である。存在する場合、Yは、E/X/Yコポリマーの少なくとも0.1重量%、または約2〜約35重量%で存在する。
【0027】
Xの例としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和酸、フマル酸またはマレイン酸(マレイン酸ハーフエステル)のモノエステル(メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルおよびn−ブチルアルコールなどのC1〜C4アルコールのエステルを含む)が挙げられる。
【0028】
軟化コモノマーの例としては、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、またはこれらの組み合わせが挙げられ、ここでアルキル基は、1〜8個、または1〜4個の炭素原子を有する。
【0029】
エチレン酸コポリマーは、米国特許第5028674号明細書に開示される、あるいはより低い酸レベルを有するコポリマーが調製される圧力よりもいくらか高い圧力を用いることによる「共溶媒技術」の使用などの当業者に知られている任意の方法によって製造され得る。
【0030】
特定の酸コポリマーとしては、エチレン/アクリル酸ダイポリマー、エチレン/メタクリル酸ダイポリマー、ならびにエチレン/アクリル酸/n−ブチルアクリレート、エチレン/メタクリル酸/n−ブチルメタクリレート、エチレン/アクリル酸/イソ−ブチルアクリレート、エチレン/メタクリル酸/イソ−ブチルメタクリレート、エチレン/アクリル酸/メチルアクリレート、エチレン/メタクリル酸/メチルメタクリレート、エチレン/アクリル酸/エチルアクリレートターポリマー、およびエチレン/メタクリル酸/エチルメタクリレートターポリマー、またはこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。その他の酸コポリマーとしては、エチレン/マレイン酸およびエチレン/マレイン酸モノエステルダイポリマー、ならびにエチレン/マレイン酸モノエステル/n−ブチル(メタ)アクリレート、エチレン/マレイン酸モノエステル/メチル(メタ)アクリレート、エチレン/マレイン酸モノエステル/エチル(メタ)アクリレートターポリマー、またはこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0031】
アイオノマーは、酸コポリマーの中和によって得られる。酸コポリマー中の酸性基の少なくともいくらかの部分を中和するために、ナトリウムまたはカリウムイオンなどの金属カチオンを含む中和剤が使用される。未変性アイオノマーは、米国特許第3262272号明細書に開示されるものなどの酸コポリマーから調製される。「未変性」とは、ブレンドされていないアイオノマーの特性に影響を有するどの材料ともブレンドされていないアイオノマーを指す。金属化合物による処理によって未変性の溶融加工可能なアイオノマーを調製するために、酸コポリマーが使用され得る。未変性アイオノマーは、酸部分の約15〜約90%または約40〜約75%などの任意のレベルまで名目上中和され得る。
【0032】
有機酸は、36個よりも少ない炭素原子を有する一塩基性またはその塩でよく、アイオノマーまたは組成物中に約1〜約50重量%で存在し得る。酸は、場合により、C1〜C8アルキル、OH、およびOR1からなる群から独立して選択される1〜3個の置換基によって置換され、ここで、各R1は、独立してC1〜C8アルキル、C1〜C6アルコキシアルキルまたはCOR2であり、各R2はC1〜C8アルキルである。
【0033】
有機酸の例としては、C4〜C36(C34、C4~26、C6~22、またはC12~22など)酸がある。100%の名目上の中和(すなわち、コポリマーおよび有機酸中の全ての酸部分が名目上中和されるように、十分な金属化合物が添加される)では、揮発度は問題ではなく、より低い炭素含量を有する有機酸が使用されてもよいが、有機酸(または塩)は不揮発性であり(薬剤と酸コポリマーとの溶融ブレンドの温度で揮発しない)、移動性でない(通常の貯蔵条件下(周囲温度)でポリマーの表面にブルームしない)ことが好ましい。有機酸の例としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘン酸、エルカ酸、オレイン酸、およびリノール酸が挙げられるが、これらに限定されない。有機(脂肪)酸としては、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エルカ酸、ベヘン酸、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、またはこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。ステアリン酸およびベヘン酸などの飽和有機酸が好ましいこともある。
【0034】
有機酸は、指定された有機酸と、より少ない様々な量の多数の構造的に異なる有機酸との混合物として市販され得る。組成物が指名された酸を含む場合、その他の指定されない酸は、指定された酸の市販品中に存在することが従来知られているレベルで存在し得る。
【0035】
これらの有機酸のいずれかの塩は、最終組成物中に存在する金属イオンが少なくとも50%のアルカリ金属イオン(ナトリウム、カリウム塩および/またはセシウム塩を含む)を含むように、アルカリ金属塩を含むことができる。
【0036】
酸性基を中和することができる塩基性金属化合物の量は、ブレンド中の酸コポリマーおよび有機酸の酸部分の目標量を中和するために計算される化学量論的な量の塩基性化合物を添加することによって提供され得る(以下、「%名目上の中和」または「名目上中和された」と呼ばれる)。従って、十分な塩基性化合物がブレンド中で利用可能にされるので、全体としては、指示される名目上の中和のレベルが達成さ得る。E/X/Yコポリマーおよび有機酸中の全酸性基の50%、60%、70%、80%または90%よりも多く(あるいはさらに100%)を金属イオンによって名目上中和することができ、金属イオンは、少なくとも50モル%のアルカリ金属イオンを含む。少量のアルカリ土類金属および/または遷移金属イオンの塩が、アルカリ金属に加えて存在してもよい。
【0037】
金属化合物は、リチウム、ナトリウム、カリウム、もしくはセシウム、またはこのようなカチオンの組み合わせなどのアルカリ金属の化合物を含むことができる。例としては、ナトリウム、カリウム、セシウムまたはナトリウム、カリウム、および/またはセシウムの任意の組み合わせが挙げられ、場合により、他のアルカリ金属イオン、遷移金属イオンまたはアルカリ土類イオンなどの少量の他のカチオンを含む。注目の金属化合物には、アルカリ金属(特に、ナトリウムおよびカリウム)のイオンのギ酸塩、酢酸塩、硝酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、酸化物、水酸化物またはアルコキシド、ならびにアルカリ土類金属および遷移金属のイオンのギ酸塩、酢酸塩、硝酸塩、酸化物、水酸化物またはアルコキシドが含まれる。注目すべきは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムである。
【0038】
未変性アイオノマーは、組成物を調製するために、当業者に知られている任意の手段によって有機酸またはその塩、金属化合物、および場合によりエチレンまたはプロピレン含有ポリマーと混合され得る。
【0039】
変性アイオノマー組成物は、場合により、変性アイオノマー組成物の全量を基準として約0.1重量%から、約65重量%まで、約55重量%まで、約45重量%まで、約35重量%まで、約25重量%まで、約15重量%まで、または約10重量%までの1つまたは複数のエチレン含有ポリマーまたはプロピレン含有ポリマーを含んでもよい。例えば、組成物が2または5重量%〜25重量%の有機酸を含む場合、任意的なポリマーは、組成物中に約10〜約25重量%で存在し得る。このようなポリマーとのブレンドは、より良い加工性、改善された靭性、強度、可撓性、および/または以下に記載される基板へ接着する際のブレンドの適合性を提供することができる。
【0040】
任意的なポリマーとしては、ポリエチレン(PE)ホモポリマーおよびコポリマー、ポリプロピレン(PP)ホモポリマーおよびコポリマー、またはこれらの2つ以上の組み合わせを挙げることができる。
【0041】
PEホモポリマーおよびコポリマーは、様々な方法、例えば、周知のチーグラー−ナッタ触媒重合(例えば、米国特許第4076698号明細書および米国特許第3645992号明細書)、メタロセン触媒重合、VERSIPOL触媒重合、およびフリーラジカル重合によって調製され得る。重合は、溶液相プロセス、気相プロセスなどとして行うことができる。PEポリマーの例としては、高密度PE(HDPE)、線状低密度PE(LLDPE)、低密度PE(LDPE)、極低密度または超低密度PE(VLDPEまたはULDPE)、メタロセンにより製造された高可撓性および低結晶化度を有するより低密度のPE(mPE)を挙げることができる。メタロセン技術は、例えば、米国特許第5272236号明細書、米国特許第5278272号明細書、米国特許第5507475号明細書、米国特許第5264405号明細書、および米国特許第5240894号明細書に記載されている。
【0042】
PEの密度は、約0.865g/cc〜約0.970g/ccの範囲であり得る。線状PEは、そのように記載された密度の範囲内に密度を低下させるために、ブテン、ヘキセンまたはオクテンなどのα−オレフィンコモノマーを取り込むことができる。例えば、使用されるコポリマーは、コポリマーの約20重量%までの約3〜20個の炭素原子を有する別のα−オレフィンと共重合された主要部分(重量による)のエチレンを含み得る。その他のα−オレフィンは、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−テトラデセン、1−オクタデセン、または2つ以上の組み合わせである。
【0043】
PEコポリマーは、二重結合を有する少量の不飽和化合物を含有するエチレンプロピレンエラストマーであってもよい。本明細書において使用される場合の「PE」という用語は、一般的に、上記のエチレンを含むポリマーのいずれかまたは全てを指すために使用される。
【0044】
ブタジエン、ノルボルナジエン、ヘキサジエンおよびイソプレンなどの少量のジオレフィン成分を有するエチレンコポリマーも一般に適切である。エチレン/プロピレン/ジエンモノマー(EPDM)などのターポリマーも適している。
【0045】
PPポリマーには、プロピレンのホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーおよびターポリマーが含まれる。プロピレンのコポリマーには、プロピレンと、エチレン、1−ブテン、2−ブテンおよび種々のペンテン異性体などの他のオレフィンとのコポリマー、そして好ましくはプロピレンとエチレンとのコポリマーが含まれる。プロピレンのターポリマーには、プロピレンと、エチレンおよび1つの他のオレフィンとのコポリマーが含まれる。
【0046】
PPホモポリマーまたはランダムコポリマーは、任意の既知のプロセス(例えば、有機金属化合物、あるいは三塩化チタンを含有する固体に基づいて、チーグラー−ナッタ触媒を用いる)によって製造することができる。第1段階では一般にプロピレンがまずそれだけで重合され、そして次に第2段階では、第1段階で得られたポリマーの存在下でプロピレンおよびエチレンなどの付加的なコモノマーが重合されることを除いて、ブロックコポリマーも同様に製造することができる。これらの方法は当業者によく知られているので、その説明は簡略化のために本明細書では省略される。
【0047】
エチレン含有ポリマーは、エチレン/酢酸ビニルコポリマー(EVA)、エチレン/アクリル酸エステルコポリマー、エチレン/メタクリル酸エステルコポリマー、エチレン/酢酸ビニル/COコポリマー、エチレン/アクリル酸エステル/COコポリマー、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、および/またはこれらのいずれかの混合物などの、エチレンと少なくとも1つの極性モノマーとの共重合から得られるエチレンコポリマーを含むことができる。
【0048】
EVAは、エチレンおよび酢酸ビニルの共重合、またはエチレン、酢酸ビニル、および付加的なコモノマーの共重合から誘導されるコポリマーを含む。酢酸ビニルコモノマーは、2〜45または6〜30重量%が酢酸ビニルから誘導され得る。EVAは、ASTM D−1238に従って測定される、0.1〜60g/10分または0.3〜30g/10分の溶融流速を有することができる。2つ以上の異なるEVAの混合物が使用されてもよい。
【0049】
任意的なポリマーは、場合により、当該技術分野において周知の方法によって変性されてもよく、無水マレイン酸またはマレイン酸などの不飽和カルボン酸またはその誘導体による変性が含まれる。
【0050】
エチレン/アルキル(メタ)アクリレートコポリマーは、エチレンおよび1つまたは複数のC1~8アルキル(メタ)アクリレートのコポリマーを含む。アルキル(メタ)アクリレートの例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレートおよびブチルアクリレートが挙げられる。コポリマーの例としては、エチレン/メチルアクリレートコポリマー、エチレン/エチルアクリレートコポリマー、エチレン/ブチルアクリレートコポリマー、またはこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートは、エチレン/アルキル(メタ)アクリレートコポリマー内に2〜45、5〜45、10〜35、または10〜28重量%取り込まれ得る。
【0051】
エチレン/アルキル(メタ)アクリレートコポリマーは、オートクレーブまたは管状反応器のいずれかを用いて、当業者によく知られているプロセスによって調製することができる。例えば、米国特許第2897183号明細書、米国特許第3404134号明細書、米国特許第5028674号明細書、米国特許第6500888号明細書、および米国特許第6518365号明細書を参照されたい。エチレン/アルキル(メタ)アクリレートコポリマーの製造方法は周知であるため、その説明は簡略化のために本明細書では省略される。管状反応器で製造されるエチレン/アルキル(メタ)アクリレートコポリマーは、E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington、Delaware)(DuPont)からELVALOY ACなどで市販されている。エチレン/アルキル(メタ)アクリレートコポリマーは分子量が大きく異なり、ポリマーのメルトインデックス(MI)グレードの選択は、特定の可変透過性構造体に必要とされる透過性および構造特性の所望される混合を提供するために、エチレン/アルキル(メタ)アクリレートコポリマーの特性と、中和された有機酸およびエチレン酸コポリマーの特性とのバランスをとることによって可能である。2つ以上の異なるエチレン/アルキル(メタ)アクリレートコポリマーの混合物が使用されてもよい。注目すべきは、少なくとも1つのエチレン/アルキル(メタ)アクリレートコポリマーが最大15重量%で存在する組成物である。
【0052】
無水物変性ポリマーが任意的なポリマーとして使用されてもよく、不飽和ジカルボン酸無水物の繰返し単位(無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、無水テトラヒドロフタル酸、またはこれらの2つ以上の組み合わせを含む)を有するコポリマーが含まれる。変性コポリマーは、上記のようなPEホモポリマーまたはコポリマー、PPホモポリマーまたはコポリマー、EVAまたはエチレン/アルキル(メタ)アクリレートコポリマーから選択されるポリマーが不飽和ジカルボン酸無水物またはその機能的等価物およびラジカル発生剤と共に有機溶媒中に溶解された後、攪拌しながら加熱されるグラフト化プロセス、そして成分が全て押出機に供給されて、無水マレイン酸がグラフトされたエチレンコポリマーが提供されるプロセスなどの既知の技術によって得ることができる。グラフト化プロセスは、0.1〜3重量%の無水物単位を有するコポリマーを提供する。これらのグラフトコポリマーは、DuPontからFUSABONDまたはBYNELの商標名で市販されている。
【0053】
また、無水マレイン酸などの反応性官能基を含むエチレンコポリマーは、オレフィンコモノマーおよび官能性コモノマーが直接共重合される高圧フリーラジカルプロセスによって容易に得ることもできる。適切な高圧プロセスは、例えば、米国特許第4351931号明細書に記載されている。このプロセスは、3重量%よりも多い、例えば約4または5重量%〜約15重量%の無水物単位を有するコポリマーの調製も可能にする。これらのコポリマーは、エチレン/無水マレイン酸などのオレフィン/マレイン酸コポリマーを含む。
【0054】
上記で開示された組成物は、当業者に知られている任意の手段によって製造することができる。組成物は実質的に溶融加工可能であり、1つまたは複数のエチレン酸コポリマー、1つまたは複数の一塩基性カルボン酸またはその塩、塩基性化合物、および場合により、1つまたは複数の任意的なポリマーを混ぜ合わせて混合物を形成し、組成物を生じるのに十分な条件下で混合物を加熱することによって製造することができる。加熱は、約80〜約350、約100〜約320、または120〜300℃の範囲の温度下、この温度に適応する圧力下で、約30秒間〜約2または3時間の間実行され得る。例えば、組成物は、酸コポリマーおよび/またはそのアイオノマーを1つまたは複数の有機酸またはその塩と溶融ブレンドし、同時に、またはその後で、50、60、70、80、90%よりも高い、100%に近い、または100%の名目上の中和レベルにまで酸部分を中和することができる十分な量の塩基性金属化合物を混ぜ合わせ、そして場合により、上記で開示された任意的なポリマーを混ぜ合わせることによって製造され得る。成分の塩コショウ状ブレンド(salt−and−pepper blend)が製造されてもよいし、あるいは成分は押出機内で溶融ブレンドされてもよい。例えば、ツインスクリュー押出機を使用して、同時に、酸コポリマーおよび有機酸(または塩)を金属化合物と混合し、処理することができる。混合は、成分が十分に混合され、塩基性金属化合物が酸性部分を中和できるように行われることが望ましい。
【0055】
このようにして(同時に、あるいは続いて)酸コポリマーおよび有機酸を金属化合物により処理する(例えば、不活性希釈剤を使用せずに)と、アイオノマー単独の場合に溶融加工性および特性の損失をもたらし得るよりも高いレベルまで加工性または靭性および伸びなどの特性を損失することなく組成物を製造することができる。
【0056】
選択的透過性組成物において使用するのに適したその他の高分子材料には、コポリエーテルエステル、コポリエーテルアミド、および熱可塑性ポリウレタンが含まれ、これらの種類のポリマーは、当該技術分野においてよく知られている。
【0057】
コポリエーテルエステルは、米国特許第3651014号明細書、米国特許第3766146号明細書、米国特許第3763109号明細書および米国特許第4725481号明細書などの特許において詳細に議論されている。これらは、エステル結合により頭尾結合された多様な反復性の長鎖単位および短鎖単位を含み、長鎖単位は式−OGO−C(O)RC(O)−によって表され、短鎖単位は式−ODO−C(O)RC(O)−によって表される。式中、Gは、約400〜6,000の分子量および約2.0〜4.3の炭素対酸素比を有するポリ(アルキレンオキシド)グリコールから末端ヒドロキシル基を除去した後に残る二価のラジカルであり、Rは、約300未満の分子量を有するジカルボン酸からカルボキシル基を除去した後に残る二価のラジカルであり、そしてDは、約250未満の分子量を有するジオールからヒドロキシル基を除去した後に残る二価のラジカルであるが、ただし、短鎖エステル単位は、コポリエーテルエステルの約15〜95重量パーセントであるものとする。コポリエーテルエステルポリマーは、テトラヒドロフランの重合によってポリエーテルセグメントが得られるもの、およびテトラメチレングリコールおよびフタル酸の重合によってポリエステルセグメントが得られるものを含む。エーテル:エステルのモル比は、90:10〜10:90、好ましくは80:20〜60:40で変わり得る。コポリエーテルエステルは、DuPontから商品名HYTRELで市販されている。
【0058】
例えば米国特許第4331786号明細書に記載されるように、コポリエーテルアミドも当該技術分野においてよく知られている。これらは、一般式HO[C(O)−PA−C(O)−O−PE−O]Hで表されるように、剛性ポリアミドセグメントおよび可撓性ポリエーテルセグメントの線状および規則的な鎖を含む。上記式中、PAは、4〜14個の炭素原子を含有する炭化水素鎖を有するラクタムまたはアミノ酸から、あるいは脂肪族C6〜C9ジアミンから、4〜20個の炭素原子を有する連鎖制限脂肪族カルボン二酸の存在下で形成される線状の飽和脂肪族ポリアミドシーケンスであり、ポリアミドは300〜15,000の間の平均分子量を有し、そして、PEは、線状または分枝状脂肪族ポリオキシアルキレングリコール、その組み合わせまたはそれから誘導されるコポリエーテル(前記ポリオキシアルキレングリコールは6,000以下の分子量を有する)から形成されるポリオキシアルキレンシーケンスであり、nは、前記ポリエーテルアミドコポリマーが約0.8〜約2.05の固有粘度を有するように十分な数の繰り返し単位を示す。これらのポリエーテルアミドの調製は、一般式Ti(OR)4(式中、Rは、1〜24個の炭素原子を有する線状の分枝状脂肪族炭化水素ラジカルである)を有するオルトチタン酸テトラアルキルなどの触媒の存在下、COOH基が鎖末端に位置するジカルボン酸ポリアミドを、鎖末端でヒドロキシル化されたポリオキシアルキレングリコールと反応させるステップを含む。エーテル:アミド比は、90:10〜10:90、好ましくは80:20〜60:40で変わり得る。コポリエーテルアミドは、AtoChemから商品名PEBAXで市販されている。
【0059】
組成物は、さらに、組成物の重量を基準として0.01〜15、0.01〜10、または0.01〜5重量%の添加剤を含んでもよく、添加剤としては、可塑剤、安定剤(粘度安定剤および加水分解安定剤を含む)、一次および二次酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、染料、顔料もしくは他の着色剤、無機充填剤、難燃剤、潤滑剤、補強剤(ガラス繊維およびフレーク、合成(例えば、アラミド)繊維またはパルプなど)、起泡または発泡剤、加工助剤、スリップ添加剤、ブロッキング防止剤(シリカまたはタルクなど)、離型剤、粘着樹脂、またはこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。これらの添加剤は、Kirk OthmerのEncyclopedia of Chemical Technologyに記載されている。
【0060】
添加剤は、乾式ブレンド、種々の成分の混合物の押出、従来のマスターバッチ技術などの任意の既知のプロセスによって組成物中に取り込むことができる。
【0061】
組成物は、さらに、リン化合物、酸化アンチモン、およびハロゲン化合物、特に臭素化合物、ならびに当該技術分野において周知の他の化合物を含むがこれらに限定されない化学添加剤などの難燃剤を含むことができる。このような添加剤の添加は、(最終の風乾組成物または風乾フィルム重量の)20%〜30%の間、または約25%であり得る。
【0062】
また組成物は、組成物の30〜40重量%まででよい添加量の充填剤、繊維、またはパルプを含んでもよい。これらの材料は、組成物の選択的透過性に悪影響を与えることなく、補強を提供するか、あるいは組成物の機械特性を変更することができる。充填剤には、例えば、カーボンブラック、TiO2、炭酸カルシウム(CaCO3)などの無機材料が含まれる。繊維(短繊維を含む)には、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維などが含まれる。パルプには、例えばアラミドマイクロパルプ(マイクロパルプは、約0.01〜約100マイクロメートルの体積平均長さを有する)が含まれる。
【0063】
ポリマー組成物は、フィルムまたはシートに形成するか、あるいはフィルムまたはシート内に取り込むことができる。ポリマー組成物を平面上またはフィルムへキャスティングする、溶融ポリマー組成物を押出機から押出してキャストフィルムを形成する、またはポリマー組成物フィルムを押出およびブローイングして押出ブローンフィルムを形成するなどの既知の技術によってフィルムを製造することができる。
【0064】
フィルムは1〜2500μmの厚さを有することができ、多くの保護カバー用途のために好ましい厚さは、約5〜10ミル厚、または約120〜250μm厚である。
【0065】
保護構造体は、例えば防水シート、カバーなどの形態であり得る。組成物からの膜は、保護構造体に付加された材料の層として、あるいは保護構造体内に組み込まれた布の1つの成分として存在することができる。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物を基板内に含浸(分散を含む)させるか、あるいは基板をポリマー内に含浸させることができるが、他の実施形態では、ポリマー組成物は、当該技術分野で周知の布含浸およびコーティング技術を用いて基板上に直接コーティングすることができる。
【0066】
構造体は、補強として、非常に透過性で機械的に強力および強靭な層であり得るキャリア材料を含む基板に適用されてもよい。例えば、構造体は、コーティングまたは積層体としてキャリアに適用され得る。あるいは、構造体を含むフィルムが基板に積層されてもよい。基板は、構造体の機能性および取扱い性(handability)を高めるために、支持、形状、美的効果、保護、表面組織、かさ容積、重量、またはこれらの2つ以上の組み合わせを提供する任意の材料でよい。
【0067】
基板と共に使用される場合、選択的透過性組成物は、自己支持フィルムとして使用される場合よりも少ない厚さを有することができる。例えば、コーティングは、約10〜約250μmの厚さを有し得る。
【0068】
基板は、選択的透過性組成物の取り込みに役立つか、あるいは透過性が妨害されないように膜に機械的な支持を提供するための手段でよく、好ましくは、基板は選択的透過性膜の水蒸気拡散よりも大きい水蒸気拡散を有するので、構造体の水蒸気拡散特性は選択的透過性組成物によって本質的に提供される。すなわち、基板は水蒸気の層状構造体内の通過に実質的に影響を与えず、例えば、少なくとも1.8、4、5、またはさらに10Kg/m2/24時間の測定MVTRを有し得る。
【0069】
これらの所望の特性を満たす支持体または基板はどれも、重なり合うように配列された選択的透過性構造体の層と共に使用することができる。例としては、織物または多孔質シート材料が挙げられる。例えば、フィルムまたはシート形態の膜は、織物に隣接して重なり合うように機械的に保持または固定され得る。あるいは組成物の層は、例えばヒートシーリング、高周波溶接または接着剤によって、不連続なパターンで重なり合うように、織物支持体に接着されてもよい。不織布などの合成繊維紡績布から製造されたシートも織物基板として使用され得る。織ったり編んだりした生地も織物基板として適している。
【0070】
例えば、布地は、Bradford Dyeing Association,Inc.(Bradford、RI)によるものなどの50%ナイロン−50%綿ブレンド織布(NYCOとしても知られている)を含むことができる。
【0071】
布地は、上記で開示された難燃剤、充填剤、または添加剤を含んでもよい。
【0072】
基板は多孔質シート材料もよく、あるいはフルオロポリマーを含む。基板は、延伸(expanded)ポリテトラフルオロエチレンにより製造されたシート材料でもよく、これは、W.L.Gore & Associates(Wilmington、DE)を含む多くの会社から入手可能である。その他の多孔質基板には、多孔質または微多孔質ポリウレタンフィルム、特定のフラッシュ紡糸不織布(フラッシュ紡糸ポリプロピレンなど)、および他のスパンボンドポリマー布、フィルター材料(Milliporeなどの会社から)、ナノまたはマイクロ繊維構造、天然または合成繊維、寸法安定性を付加する他の関連支持体、またはこれらの2つ以上の組み合わせが含まれる。
【0073】
一実施形態では基板は織物として説明されているが、基板は、1つまたは複数の選択的透過性膜層をその上に収容することができる、あるいは選択的透過性組成物の分散をその中に収容することができる任意の他の材料であり得る。
【0074】
構造体は、組成物が間接的にあるいは少なくとも1つの介在層によって支持体の織物または多孔質シート材料を含む基板に連続的に接着された積層体の形態であってもよい。組成物はゆるく織られた布地などの基板中に分散させることもでき、この場合、組成物は基板内の間隙を満たし、ただ基板表面に接着するだけではない。基板は、積層または共押出プロセスによって選択的透過性膜の内部に含浸させて、透過性組成物を基板の両面に有することもできる。
【0075】
紙ウェブ(例えば、クラフト紙またはわら紙)などのセルロース系材料、合成繊維紡績布から製造される材料、不織布、微多孔質フィルム、またはさらに大きい割合の開放領域を有する穿孔PEフィルムなどの穿孔フィルムは、例えば、キャリアまたは基板のための材料として使用することができる。これらの材料は、繊維により補強され得る。注目の微多孔質フィルムは、ポリプロピレン、ポリエチレンまたはこれらの組み合わせから調製され得る。これらは、単層フィルムでも、多層フィルム(例えば、2つのポリエチレンの外側層の間にポリプロピレンの内側層を含む3層フィルム)でもよい。微多孔質フィルムは、Celgard,LLC(charlotte NC)からCELGARDの商品名で入手可能である。
【0076】
微多孔質フィルムのために適切なポリマーは、(1)少なくとも18、好ましくは18〜39デシリットル/グラムの固有粘度を有する線状超高分子量ポリエチレン、(2)少なくとも6デシリットル/グラムの固有粘度を有する線状超高分子量ポリプロピレン、ならびに(3)(1)および(2)の混合物である。
【0077】
微多孔質フィルムは微粉化した微粒子の実質的に水に不溶性の無機充填剤、例えばケイ質充填剤を含むことができ、無機充填剤はマトリックス全体に分配され、フィルムの50〜90重量%、特に50〜85重量%の量で存在する。充填剤は、シリカ、沈殿シリカ、または0.1μm未満の平均最終粒径を有するシリカであってもよく、微多孔質フィルムの全容積の35〜80%を占めることができる。これらは比較的狭い範囲の細孔サイズを有するので、フィルムは、無機充填剤および加工油、例えばパラフィン系油、ナフテン系油または芳香族油がその中に均一に分配された高分子組成物を押出し、その後、例えばトリクロロエチレンにより加工油を抽出することによって製造することができる。例えば、米国特許第4937115号明細書および米国特許第3351495号明細書にいくつかのフィルムが開示されており、フィルムは、PPG Industriesによって商品名TESLINで販売されている。
【0078】
多孔質または穿孔フィルムの特定の例としては、商品名CELGARD K878でHoechst Celanese Corpから入手可能な約55%の多孔率および約0.25ミクロンの細孔サイズを有する多孔質PEフィルム、商品名MSX 1137Pで3M Co.から入手可能な多孔質PEフィルム、ならびにVan Leer 10Xという名称でVan Leer Corpから入手可能な充填多孔質PEフィルムが挙げられる。TESLIN SP7は、約60%のシリカを含有する充填多孔質PEフィルムであり、約0.18mm(0.007インチ)の厚さ、上記のように測定される約90gの引裂き強度、約65%の多孔率、約0.1ミクロンの平均細孔サイズ、および4〜10ミクロン最大細孔サイズを有する。TESLIN X457は、TESLIN SP7に類似しているが、より多孔質である。TESLIN SP10はTeslin SP7に類似しているが、約0.25mm(0.010インチ)の厚さを有する。3つのTESLINフィルムは全て、PPG Industriesから入手可能である。約36%の開放領域を有する0.11mm(4.5ミル)厚さの穿孔高密度ポリエチレンフィルムは、商品名DELNETでApplied Extrusion Technologiesから入手可能である。
【0079】
選択的透過性膜または組成物自体は、フィルムもしくは膜、積層された層として、またはコーティングとして(押出コーティング、スプレーイング、ペインティング、または他の適切な適用方法によって)これらの基板のいずれかに適用されてもよい。膜または組成物は、基板の片面または両面に適用することができる。織物基板が片面にコーティングまたは積層される場合、膜組成物は生物学的および/または化学的な薬剤に直接さらされる面に適用されて、不透過性の外側表面を提供することができる。あるいは、機械的摩耗または摩滅が起こり得る用途では、膜または組成物は、機械的摩耗にさらされる面とは反対の織物基板の面に適用されて、高分子組成物の保護を提供することができる。
【0080】
膜または組成物は、2つの織物層の間にサンドイッチのような形で提供することもできる。
【0081】
いくつかの層アセンブリを上下に組み立てることもできる。例えば、保護構造体の所望の用途に応じて、配置は、選択的透過性膜層、基板層、別の選択的透過性膜層、別の基板層などを含むことができる。その他の配置は、複数の選択的透過性膜層、複数の基板層など(これらの混合物を含む)を含む上記のサンドイッチ配置の変化形を含むことができる。
【0082】
一般に、基板および選択的透過性の層は、重なり合うまたはオーバーラップするように配列されて、保護構造体を提供することができる。組成物はフィルムまたはシートの形態でよく、フィルムは、織物に隣接して重なり合うように機械的に保持または固定される。機械的な固定は、スナップ、ジッパー、フックアンドループファスナーなどのファスナーの使用を含む。機械的な固定は、糸または繊維を用いる縫合またはキルティングも含む。
【0083】
選択的透過性膜は、膜層と基板との間に配置される適合性接着剤の使用によって、基板に付着または接着されてもよい。構造体の水蒸気透過性を保持するために、いくつかの実施形態では、接着剤は膜層と基板との間の不連続層として存在し、多くの場合、例えば、基板表面の約10〜約40パーセントを覆う一連の接着剤ドットとして適用され得る。接着剤は、膜および基板のエッジ付近に選択的に適用されてもよい。
【0084】
選択的透過性膜は、ヒートシーリングまたは高周波(HF)溶接によって基板に付着されてもよい。加熱プレスおよびカレンダーなどを含む任意の既知の方法を用いて、あるいは層に熱を加え、次にさらに熱を加えることなくこれらを一緒にプレスすることによって、積層体をヒートシール(熱的に結合)させることができる。いずれの場合にも、軟化した層または成分は、次に、フィルム構造体を基板に結合させる。ヒートシーリングまたはHF溶接のいずれの場合も、フィルムの基板への結合はフィルムおよび基板の全領域にわたって連続的でもよいし、不連続であってもよい。不連続な結合は、フィルムが基板に重なり合う領域の選択された部分への熱またはHF放射の適用によって達成することができる。
【0085】
防水シートまたは他のカバーとしてこれまで使用されているコーティングされた布地は、少なくとも1つの耐摩耗性外側層を有することができ、この層は通常、高可撓性、摩耗、摩滅、スカッフィング(scuffing)、およびスクラッチングからのマーリング(marring)に対する高耐性、高機械強度、ならびに靭性を必要とする。コーティング組成物は、好ましくは、布地、ならびにプラスチックフィルムおよびセルロース系材料(紙または板紙など)などの他の基板に対する良好な接着を示す。またこれらは、良好な溶融加工性、良好な着色性、良好な印刷適性、ならびに高透明度および/または光沢も示すのが望ましい。これらの用途のためのこれまでのコーティング組成物は、可塑化または可撓性ポリ塩化ビニルを含む。
【0086】
有機酸変性アイオノマーは、組成物をコーティングするために望ましい特性である良好なHFまたは無線周波(RF)溶接性を有する。HF溶接は、フィルムをフィルム自体、別のフィルム、または織布などの基板に接着するための熱結合方法の代替法である。HF溶接は、多層フィルムなどの構造体のHF活性成分またはHF活性層のみを、その成分を軟化するために十分に加熱することを含む。選択的加熱は、高周波放射による処理によって達成される。HF溶接は、フィルムをフィルム自体、別のフィルム、または織布などの基板に接着するための熱結合方法の代替法である。HF溶接は、熱結合方法に必要とされる時間のごく一部の時間でフィルムを結合することができる。
【0087】
選択的透過性膜は、組成物を基板内に直接プレスするか、あるいは組成物の溶融混合物を基板に適用し、次に組成物を基板の細孔と接触させたまま冷却するかのいずれかにより、膜組成物により基板を含浸させることによって少なくとも部分的に基板に形成されてもよい。
【0088】
選択的透過性保護構造体は、選択的透過性膜が直接または少なくとも1つの介在層によって基板に連続的に接着された積層体の形態でもよい。例えば、選択的透過性膜は、基板上に直接適用されたコーティングである。このようなコーティングは、ゴム製ドクターブレードまたはスリット押出機などの当該技術分野において既知のスプレッド法を用いて適用することができる。
【0089】
注目すべきは、膜組成物が、例えば押出コーティング(これに限定されない)によって基板に適用される、あるいは溶融形態で適用された内側層によって基板に積層されてフィルムを基板に接着する場合である。いずれも当業者によく知られている。
【0090】
膜組成物は、様々な技術およびプロセスによって基板に加工および適用することができる。例えば、本明細書で記載される選択的透過性組成物は、600μmまで、あるいは400μmまで、あるいは200μmまでの大きさの顆粒サイズを有する粉末として調製することができる。粉末組成物は、約100から約600μmまで様々な大きさの顆粒を含むことができる。粉末組成物の平均粒径は、約150μm〜約200μmであり得る。組成物は製粉、粉砕、あるいは当該技術分野において既知の方法によって加工されて、基板への用途に適切な所望の粒径を提供することができる。
【0091】
粉末は、粉末が基板の作業幅にわたって均一に分配された後、溶融され、平滑化され、そして冷却されて、基板上に組成物の均一のコーティングを提供する粉末散乱などの技術によって基板に適用することができる。
【0092】
積層体は、さらに、選択的透過性層に隣接して位置する、選択的透過性の接着促進または汚染物遮断物質の層(耐摩耗性ポリマーを有し得る)を含むことができる。例えば、この物質はウレタン機能性を含有し、約2.5〜12μmの厚さであり得る。この層で使用することができるその他のポリマーには、様々なエラストマー、反応性材料、および接着剤が含まれる。好ましくは、接着促進ポリマー層はフィルムとして存在するが、この層はコーティングまたは基板の含浸であってもよい。この付加的な接着促進ポリマー層は、サーマルプレス、ボンディング、カレンダリングなどにより積層体の各層を組み合わせることによって積層体が製造される場合に特に有用である。この場合、耐摩耗性ポリマー層は、品目がサーマルプレスされる際にこれらが一緒に接着されるように、選択的透過性層と適合性でなければならない。
【0093】
保護構造体は、さらに、接着層、断熱層、緩衝層、吸収層、反応性層などの他の層を含んでもよい。
【0094】
断熱層および緩衝層は有機熱可塑性繊維ベースの材料を含むことができ、例えば、ポリエステル、ポリエチレンまたはポリプロピレンが含まれる。例えば、断熱または緩衝層は、ポリエステルを含むファイバーフィルバット(fiberfill batt)である。DuPontによりTHERMOLITE ACTIVE ORIGINALで販売されているファイバーフィルバットが適切である。あるいは、断熱層は、3MによりTHINSULATEで販売されているメルトブローンポリオレフィンなどのメルトブローン繊維を含んでもよい。これらは、ファイバーグラスバットなどの他の材料を含んでもよい。
【0095】
選択的透過性組成物の機械特性および加工容易性、ならびに水蒸気を輸送して液体を遮断するその能力によって(場合により支持基板と組み合わせられる)、その保護構造体は輸送および貯蔵中に物品を被覆または封入するために適用可能になる。
【0096】
パッケージを製造するために様々な構造体配置が使用され得る。例えば、可変透過性多層構造体は、材料の可撓性シートの形態であり得る。シート材料は、従来のプラスチックフィルムが使用される場合と同じようにして、腐食から保護すべき物品の周りにラップされ得る。いくつかの可能性のある構造体配置は次の通りである。
【0097】
(1)梱包中の物体にラップするまたは掛けることができる、選択的透過性構造体を含む材料のフィルムまたはシート。
【0098】
例えば、器材の一部分またはパレットおよびその積荷であり得る物体は、機械または手で適用され得るフィルムのオーバーラップ層内にラップすることができる。これらのフィルムは比較的長くて狭く、ロールから分配され得る。フィルムは伸縮性または熱収縮性でよい。線状ストレッチラップフィルムを用いる機械による物体のラッピングは、例えば、物体をターンテーブル上に置き、フィルムを水平方向に供給し、その位置を鉛直方向に変えながらターンテーブルを回転させ、物体をオーバーラップ層内にラップすることによって行うことができる。フィルムは、十分な量のフィルムが適用されるまで荷を積んだパレットの周りを歩く携帯用フィルム分配器を持ったオペレータなどにより、手で適用されてもよい。
【0099】
熱収縮性フィルムを物体の周りにラップして、収縮させて物体の周りに密接に適合するように熱を加えることができる。
【0100】
その他の例には、防水シートなどの同様の長さおよび幅を有する実質的に平坦な矩形シートが含まれ、このシートは、物体に掛けて、場合により、適所に機械的に固定する(例えば、ストラップ、ロープ、ゴムバンドなどを用いて)ことができる。
【0101】
これらのパッケージ形態は、異なるサイズおよび形状の多種多様な物体が所与の時間または場所で梱包される場合に好ましいであろう。
【0102】
(2)本明細書に記載される選択的透過性構造体で完全に構成されるか、あるいは他の高分子材料、織布または不織布などの他の材料を含み、選択的透過性構造体を含むウィンドウ、パッチまたは領域を上に有するバッグ、ポーチ、フードまたは鞘。
【0103】
これらの梱包形態は、梱包すべき物体を収容することができる凹形状に形成されたシートまたはフィルムから作製される。
【0104】
これらは、熱収縮性フードおよびパレット伸縮フードを含む。パレット伸縮フードは、パレットおよびその積荷上にぴったり合うように伸長される弾性の鞘である。パレット伸縮フードは次にその弾性特性のために収縮し、収縮力は荷を積んだパレットに完全性および安定性を提供する。
【0105】
これらのパッケージ形態は、同様の大きさおよび形状の多数の物体が所与の時間または場所で梱包される場合に好ましいであろう。
【0106】
(3)選択的透過性構造体で完全に構成されるか、あるいは可変透過性多層構造体の1つまたは複数のウィンドウを上に有する他の材料を一部含む、桶、箱、ビンなどの剛性または半剛性または可撓性構造体。
【0107】
(4)選択的透過性構造体で完全に構成されるか、あるいは選択的透過性構造体の1つまたは複数のウィンドウを上に有する他の材料を一部含むフタ材料。フタ材料はタブ、箱、ビンなどの剛性または半剛性または可撓性構造体と組み合わせて使用されて、選択的透過性構造体を含むパッケージを作製することができる。
【0108】
(5)所望の透過性を提供するために設計されたパッケージの開口部上の選択的透過性構造体のパッチ。
【0109】
(6)ユーザーが選択的透過性構造体を環境に適切な時間さらすことができるようにする取外し可能な保護カバーによって選択的透過性構造体が被覆されたパッケージ。例えば、保護カバーは、選択的透過性構造体に対して低接着性を有する材料(所望される場合に選択的透過性構造体の表面から剥がすことができる)を含むことができる。あるいは、カバーは、パッケージ内で選択的透過性構造体と重なり合うがそれに接着されない取外し可能な材料であってもよい。例えば、保護カバーは、所望される場合に除去することができる保護(バリアなど)材料のフタ、フラップまたはパッチであり得る。また保護カバーは、パッケージ内で選択的透過性構造体のパッチまたはウィンドウ上に配置されてもよい。
【0110】
保護カバーのこの形態は雨または他の悪天候の間に器材の追加的な保護を提供することができ、その後バリアフラップは除去されて、水分の選択的透過性膜からの発散を可能にする。
【0111】
これらの構造体の多数の変化形も可能であり、このような構造体は本開示を読めば当業者には明らかになるであろう。
【0112】
腐食またはカビの増殖による物品への損傷を制限するための方法において、物品は、上記で開示される選択的透過性保護構造体内にラップまたは被覆することができ、ラッピングまたは被覆は、密封性であってもそうでなくてもよい。
【0113】
以下の実施例は本発明を実証および説明するために提供されるが、本発明の範囲を不当に限定することは意図されない。
【実施例】
【0114】
MI、制御された温度および圧力条件下で特定の毛細管を通るポリマーの質量流速は、2160g重量を用いて190℃で、ASTM 1238に従ってg/10分で決定した。
【0115】
高い水透過性(>100g/m2−24h)を有するサンプルについては、Mocon PERMATRAN−W 101Kにおいて、37.8℃、100%相対湿度で、ASTM D6701−01に従って水蒸気透過試験を行った。他のサンプルについては、Mocon PERMATRAN−W 700において、ASTM F1249−01に従って透過試験を行った。フィルムサンプルにおける水蒸気透過値(MVPV)はg−mil/m2−24hで報告されるが、MVTRはg/m2−24hで報告される。組成物は、少なくとも800(または少なくとも1200)g−mil/m2/24hのMVPVを有した。
【0116】
材料の「通気性」または蒸発耐性を決定するための別の方法は、ASTM F1868、ISO 11092に従ってGuarded Sweating Hotplate Testを用いる。
【0117】
本明細書に記載される選択的透過性組成物を含むフィルム層に関連する水分透過を説明するために、以下に記載される材料から押出キャストフィルムを調製した。
【0118】
使用した材料
I−1: 水酸化ナトリウムを用いてナトリウムにより52%(名目上)に中和され、1のMIを有する、エチレン、n−ブチルアクリレート(23.5重量%)およびメタクリル酸(9重量%)のターポリマー。
I−2: 水酸化ナトリウムを用いてナトリウムにより37%(名目上)に中和され、2.6のMIを有する、エチレンおよびメタクリル酸(19重量%)のコポリマー。
I−3: 水酸化ナトリウムを用いてナトリウムにより55%(名目上)に中和され、1.3のMIを有する、エチレンおよびメタクリル酸(10重量%)のコポリマー。
I−4: 水酸化ナトリウムを用いてナトリウムにより59%(名目上)に中和され、0.93のMIを有する、エチレンおよびメタクリル酸(15重量%)のコポリマー。
EAC−1: 25のMIを有する、エチレン、n−ブチルアクリレート(23.5重量%)およびメタクリル酸(9重量パーセント)のターポリマー。これは、中和する前のアイオノマー1のためのベース樹脂であった。
EAC−2: 300のMIを有する、エチレン、およびメタクリル酸(19重量%)のダイポリマー。
EAC−3: 200のMIを有する、エチレン、n−ブチルアクリレート(23.5重量%)およびメタクリル酸(9重量%)のターポリマー。
EAC−4: 200のMIを有する、エチレン、n−ブチルアクリレート(28重量%)およびアクリル酸(6.2重量%)のターポリマー。
EAC−5: 60のMIを有する、エチレン、n−ブチルアクリレート(15.5重量%)およびアクリル酸(8.5重量%)のターポリマー。
EAC−6: 60のMIを有する、エチレン、n−ブチルアクリレート(15.5重量%)およびアクリル酸(10.5重量%)のターポリマー。
HSA: ACME−Hardesty Co.により市販されている12−ヒドロキシステアリン酸。
ISA: Arizona Chemicalにより市販されているイソ−ステアリン酸。
BEH: Uniqemaにより市販されているベヘン酸。
EMA−1: 3g/10分のMIを有する、30重量%のメチルアクリレートを含有するエチレンコポリマー。
EMA−2: 20g/10分のMIを有する、エチレン/メチルアクリレート(24重量%)ダイポリマー。
PE−1: DuPont Performance ElastomersからDPE1640の名称で入手可能な低密度ポリエチレン。
ベースMB−1: 450g/10分のMIを有する、エチレン/メチルアクリル酸(10重量%)コポリマー中59.5重量%のNa2CO3のブレンド。
ベースMB−2: EMA−2中50%のK2CO3のブレンド。
ベースMB−3: 50%のK2CO3水溶液。
【0119】
実施例1〜4
Werner & Pfleidererのツインスクリュー押出機を用いて、I−1を、40重量%のステアリン酸カリウムおよび付加的な水酸化カリウムと共に溶融ブレンドし、組成物を100%に名目上中和させ、実施例2を提供した。指示される脂肪酸変性剤とブレンドされた指示されるアイオノマーまたはエチレン酸コポリマーを用いて、表1のその他の例を同様に調製し、水酸化カリウムにより100%に名目上中和させた。
【0120】
表1

【0121】
実施例5〜9
付加的なフィルムの実施例は、押出キャスティングにより調製した。表2に示される単位は、g−mil/m2−24hであるWVPVを除いて、重量%である。
【0122】
表2

【0123】
実施例10〜17
ツインスクリュー押出機内で、20lb/h(約9kg/h)の処理速度において、指示される材料を溶融ブレンドして、以下の表3に要約される組成物を提供した。他に言及されない限りは、組成物は、28mmのW&Pツインスクリュー押出機によって、2〜2.5ミルの厚さのフィルムにキャスティングした(実施例14〜16が4ミルであることを除く)。
【0124】
表3

【0125】
多層構造体の水蒸気透過速度(MVTR)
これは、MVTR測定のInverted Cup法から誘導される方法によって測定した[ASTM E 96 Procedure BW、布地の水蒸気透過のための標準試験法(ASTM 1999)]。頂部に開口部を有する容器に水を入れ、まず延伸PTFEフィルム(「ePTFE」)の水蒸気透過性(液体不透過性)層で、次にMVTRを測定するサンプルで、そして最後に織布オーバーレイヤー(overlayer)[NYCO50:50ナイロン/綿ブレンド、6.7oz/yd2(0.23kg/m2)、耐久性の撥水仕上げにより処理]によって開口部を被覆した。3つの層を適所に密封し、30分間逆さにして層を条件付けし、0.001gに最も近くなるように秤量し、次に、逆さにしたまま乾燥窒素流と接触させた。23℃で19時間後、サンプルを秤量し、以下の式:
MVTR=1/[(1/MVTRobs)−(1/MVTRmb)]
を用いてMVTRを計算した(kg/m2.24h)。ここで、MVTRobsは、実験の観察MVTRであり、MVTRmbは、ePTFE水分バリアのMVTRであった(別々に測定)。報告された値は、3つの再現サンプルからの結果の平均であった。
【0126】
表4

【0127】
実施例18〜40
Werner & Pfleidererのツインスクリュー押出機を用いて、I−1を、15重量%、30重量%および40重量%のステアリン酸カリウムと共に溶融ブレンドして、実施例18〜20を提供した。同様に、I−3を、15重量%、30重量%および40重量%のステアリン酸カリウムと共に溶融ブレンドして、実施例21〜23を提供した。実施例24〜27は、指示される脂肪酸塩変性剤とブレンドされた指示されるアイオノマーまたはエチレン酸コポリマーを用いて同様に調製した。Werner & Pfleidererのツインスクリュー押出機を用いて、I−2を、40重量%のステアリン酸カリウムおよび付加的な水酸化カリウムと共に溶融ブレンドし、組成物を100%に名目上中和させ、実施例28を提供した。その他の実施例は、指示される脂肪酸変性剤とブレンドされた指示されるアイオノマーまたはエチレン酸コポリマーを用いて同様に調製し、指示されるカチオンの水酸化物塩により100%に名目上中和させた。
【0128】
ブローンフィルムプロセスにより実施例を約3ミルの厚さの単層フィルムに加工した。水蒸気透過速度についてフィルムを測定した。透過特性は表5に記載される。
【0129】
表5

【0130】
コポリエーテルおよびコポリアミド組成物は表6に示される。
【0131】
表6

【0132】
透過特性は表7に要約される。
【0133】
表7

【0134】
透過調整層の層を含む共押出フィルムは、酸基の93%がNaイオンにより中和されたI−2および4重量%のベヘン酸を含む層(実施例46)ならびにEMA−1を含む層から製造した。層中のポリマーは、28mmのW&Pツインスクリュー押出機を用いて、表に示される厚さのフィルムに共押出によってキャスティングした。キャストフィルムの水蒸気透過速度(MVTR)を100%RHにおいて計算し、表8に示した。
【0135】
表8

【0136】
腐食試験
種々の透過値を有する組成物から調製したフィルムの腐食保護性能を評価するために、以下の試験を実施した。
【0137】
炭素鋼試験片(2インチ×4インチ)を支持するための下部オープンプラットフォームと、小さいアルミニウム皿を支持するための上部オープンプラットフォームとを有する小型木製ケージを設計した。上部プラットフォームの上には、ヘッドスペースを支持するためのフレームワークがあった。ケージは、ケージにより画定される内部容積全体を空気が自由に循環できるように設計した。3つのケージ(各試験フィルムに対して1つ)を作製した。
【0138】
ロールオーバーにより開口部が閉じられるように十分に余分な材料を有して、バッグの内部容積がケージの周りにゆったりと適合するように、エッジを一緒に折り曲げてヒートシールすることによって、表6の試験フィルムからバッグを作製した。各試験フィルムは2ミルの厚さであった。
【0139】
表9

【0140】
試験のために、600グリットの研磨紙で鋼試験片を研磨し、アセトンで洗浄した。試験片にラベルを付け、試験後に比較するために、試験の前に写真を撮った。試験片を各ケージの下部プラットフォームに置いた。各ケージのアルミニウム皿に小さいスポンジを入れ、各スポンジに30gの水を吸収させた。試験バッグをケージの周りに置き、開口部をロールオーバーしてテープを貼り、スプリングクランプで閉じたまま保持した。開口部は密封されていないが、バッグの内側と外側の空気の間の開口部を通る自由な空気交換は防止される。試験パッケージ(閉鎖バッグ内のケージ)を60℃に設定したオーブンに入れた。オーブン内で68時間後、試験パッケージをオーブンから取り出し、開く前に目視検査をして、パッケージ内部に存在する水分の量を定性的に評価した。パッケージを開けて、試験片を取り出し、上側表面および下側表面における表面腐食の量について評価した。ADOBE PHOTOSHOP 7.0を用いて、試験片のカラー写真を白黒画像に変換した(腐食領域が黒色に転換され、非腐食領域が白色に転換された)。ソフトウェアの標準手順に従って、試験片の全領域のうちのわずかな黒色領域(百分率として)を計算した。試験の結果は表10に要約される。
【0141】
表10

【0142】
この試験によって、より高い水透過フィルムは、低水透過フィルムと比較してより良好な腐食保護を提供することが示された。腐食の深刻度はフィルムの水分透過値に反比例した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品と、選択的透過性保護構造体と、支持基板とを含むパッケージであって、
前記構造体が選択的透過性膜を含むか、あるいは選択的透過性膜から製造され、
前記膜が、アイオノマー、有機酸またはその塩、および場合により任意的なポリマーを含む組成物を含むか、あるいは前記組成物から製造され、
前記膜が、少なくとも800g−mil/m2/24hの水蒸気透過値および少なくとも150cmH2Oの水の浸入圧を有し、
前記アイオノマーが、1つまたは複数のエチレン酸コポリマーから誘導され、
前記酸コポリマーが、エチレン、少なくとも1つのC3〜C8α,β−エチレン性不飽和カルボン酸、および軟化コモノマーから誘導され、
前記有機酸が、4〜36個の炭素原子を有する1つまたは複数のカルボン酸であり、
前記酸コポリマーおよび前記有機酸中の合わせた酸性基の少なくとも50%が金属イオンによって対応する塩へ名目上中和されており、前記金属イオンの少なくとも50%がアルカリ金属イオンであり、
前記構造体が、少なくとも500g/m2/24hの水蒸気透過速度を有し、
前記基板が織物または多孔質シート材料を含み、前記組成物が前記基板上にコーティングされるか、あるいは前記基板内に含浸されており、そして
前記基板および前記選択的透過性構造体が重なり合っているパッケージ。
【請求項2】
前記構造体が、アラミド、ガラス繊維、またはこれらの組み合わせの布地を含む層をさらに含む、請求項1に記載のパッケージ。
【請求項3】
前記基板が、1つまたは複数の多孔質フィルム、ポリウレタンフィルム、フラッシュ紡糸不織布、合成繊維、天然繊維の織布、スクリム、またはフィルター材料である、請求項1または2に記載のパッケージ。
【請求項4】
前記基板が、1つまたは複数のフラッシュ紡糸ポリプロピレンまたは合成繊維もしくは天然繊維の織布である、請求項2に記載のパッケージ。
【請求項5】
前記構造体が少なくとも500g/m2/24hの水蒸気透過速度を有し、前記金属イオンの少なくとも50%がナトリウムイオンまたはカリウムイオンであり、前記組成物が前記基板に含浸されるか、前記基板に組み込まれるか、あるいは前記基板に積層された、請求項1〜4のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項6】
前記構造体が少なくとも4Kg/m2/24時間、5Kg/m2/24時間、または10Kg/m2/24時間の水蒸気透過速度を有し、前記有機酸またはその塩が組成物中に1〜50重量%存在し、36個よりも少ない炭素原子を有する1つまたは複数の飽和または不飽和一塩基性を含む、請求項5に記載のパッケージ。
【請求項7】
前記酸コポリマーおよび有機酸中の酸部分の100%が前記アルカリ金属により中和されており、前記基板が1つまたは複数のフラッシュ紡糸ポリプロピレン、合成繊維、または天然繊維の織布であり、そして前記金属イオンが主にカリウムイオンである、請求項6に記載のパッケージ。
【請求項8】
少なくとも1つの断熱層、緩衝層、または織物層をさらに含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項9】
物品を選択的透過性保護構造体内にラップまたは被覆することを含み、腐食またはカビの増殖による前記物品への損傷を制限または低減する方法であって、
前記構造体が選択的透過性膜および場合により支持基板を含み、前記膜が少なくとも800g−mil/m2/24hの水蒸気透過速度および少なくとも150cmH2Oの水の浸入圧を有し、前記組成物が請求項1に記載の組成物であることを特徴とし、前記構造体が少なくとも500g/m2/24hの水蒸気透過速度を有する方法。
【請求項10】
物品をラップまたは梱包して、輸送および貯蔵の間の前記物品の表面損傷を防止するための、請求項1〜8のいずれか一項に記載のパッケージであることを特徴とするパッケージの使用。

【公表番号】特表2012−500161(P2012−500161A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523046(P2011−523046)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際出願番号】PCT/US2009/052916
【国際公開番号】WO2010/019429
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】