説明

遺伝子ノックアウト中温性および好熱性生物、ならびにその使用方法

本発明の1つの態様は、遺伝子改変好熱性または中温性の微生物に関し、ここで第1の天然遺伝子が、部分的、実質的、もしくは完全に欠失、サイレンシング、不活化、またはダウンレギュレートされ、この第1の天然遺伝子は、有機酸またはその塩の代謝産生に関与する第1の天然酵素をコードし、それによって、発酵生成物としてエタノールを産生する前記好熱性または中温性の微生物の天然の能力を増大させる。特定の実施の形態では、上記微生物は、第1の非天然遺伝子をさらに含み、ここで、この第1の非天然遺伝子は、エタノールの代謝産生に関与する第1の非天然酵素をコードする。本発明の別の態様は、リグノセルロース系バイオマスと、遺伝子改変した好熱性または中温性の微生物とを接触させることを含む、リグノセルロース系バイオマスをエタノールに変換する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、参照することにより本明細書に援用される、2007年5月9日に出願された米国仮特許出願第60/916,978号の優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、第1の天然遺伝子が、部分的、実質的、もしくは完全に欠失、サイレンシング、不活化、またはダウンレギュレートされた、遺伝子改変された好熱性または中温性の微生物に関する。本発明はまた、遺伝子改変された好熱性または中温性の微生物を利用した、バイオマスをエタノールに変換する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
エネルギーの変換、利用およびアクセスは、持続可能性、環境品質、安全、および貧困に関連するものを含む現在の多くの大きな課題の底流をなす。これらの課題に答えるための新技術の新たな応用が、求められている。バイオテクノロジー(新技術の最も強力なものの1つ)は、重要なエネルギー変換プロセスを生じ得る。植物バイオマスおよびそれらの誘導体は、エネルギーの人類に有用な形態への生物学的変換のための資源である。
【0004】
その大規模利用可能性、低コスト、および環境的に良性の産生のため、植物バイオマスの形態のうち、リグノセルロース系バイオマス(「バイオマス」)は、エネルギー応用に特に良く適している。特に、セルロース系バイオマスに基づく多くのエネルギー産生および利用サイクルは、ライフサイクルに基づく温室効果ガスをほとんど排出しない。バイオマス原料由来のエネルギーのより広範な産生を妨げる主な障害は、これらの材料を有用な燃料に変換し難いという問題を克服するための低コストの技術が一般にないことである。リグノセルロース系バイオマスは、エタノールに変換することができる炭水化物画分(例えば、セルロースおよびヘミセルロース)を含有する。これらの画分を変換するためには、セルロースおよびヘミセルロースは、究極的に単糖類に変換または加水分解されなければならないが;歴史的に問題が多いことが証明されているのは、加水分解である。
【0005】
生物が媒介するプロセスは、エネルギー変換、特に、リグノセルロース系バイオマスの燃料への変換に有望である。酵素または微生物的加水分解に関与するバイオマス処理スキームは、一般に、次の4つの生物が媒介する変換が関与する:(1)糖類分解酵素(セルラーゼおよびヘミセルラーゼ)の産生;(2)前処理されたバイオマスに存在する炭水化物成分の糖への加水分解;(3)ヘキソース糖(例えば、グルコース、マンノース、およびガラクトース)の発酵;ならびに(4)ペントース糖(例えば、キシロースおよびアラビノース)の発酵。これらの4つの変換は、セルラーゼおよび/またはヘミセルラーゼ産生のための専用のプロセス工程が関与しない、それほど高度に統合されていない構成とは異なる、連結バイオプロセス(CBP)と呼ばれるプロセス構成における単一工程において生じる。
【0006】
CBPは、専用のセルラーゼ産生を特徴とするプロセスより低コストであり、高い効率の可能性を提供する。この利益は、資本コスト、基質および他の原材料の回避、ならびにセルラーゼ産生に関連する有用性から部分的には生じる。加えて、いくらかの要因は、より高い速度の加水分解の実現、従って、酵素−微生物相乗作用ならびに好熱性生物および/または複雑なセルラーゼ系の使用を含むCBPを使用するリアクタ容積および設備投資の削減を支援する。さらに、セルロース粘着性セルロース分解微生物は、セルロース加水分解の産物について、粘着しない微生物、例えば、混入体と首尾よく競合するようであり、これは、微生物セルロース利用に基づく産業的プロセスの安定性を増大し得る。CBPを可能にする微生物の開発における進展は、次の2つのストラテジーを介して行われている:天然に存在するセルロース分解微生物を操作して、収量および力価のような産物関連特性を改善すること;ならびに高い産物収量および力価を示すセルロース非分解生物を操作して、セルロースおよびヘミセルロース利用を可能にする異種のセルラーゼおよびヘミセルラーゼ系を発現させること。
【0007】
多くの細菌は、解糖のプロセスを経て、単純なヘキソース糖を酸性およびpH中性の産物の混合物に発酵する能力を有する。解糖経路は、豊富であり、一連の酵素工程を含み、それによって、6炭素グルコース分子は、多数の中間体を経て、2分子の3炭素化合物ピルビン酸塩に分解される。このプロセスは、ATP(生物学的エネルギー供給)の正味の産生および補因子NADHの減少を生じる。
【0008】
ピルビン酸塩は、代謝の重要な中間化合物である。例えば、好気条件下では、ピルビン酸塩は、アセチル補酵素A(アセチルCoA)に酸化され得、次いで、トリカルボン酸回路(TCA)に入り、次に、合成前駆体、COおよび還元型補因子を生じる。次いで、補因子は、一連の酵素工程を経て水素等価物を酸素に供与することによって酸化され、水およびATPの形成を生じる。エネルギー形成のこのプロセスは、酸化的リン酸化として公知である。
【0009】
嫌気条件(酸素が利用可能でない)下では、発酵が生じ、ここで、有機化合物の分解産物は、水素供与体および受容体としての役割を果たす。解糖由来の過剰のNADHは、有機基質の乳酸塩およびエタノールのような産物への還元が関与する反応において、酸化される。加えて、ATPは、基質準位リン酸化として公知であるプロセスにおいて酢酸塩のような有機酸の産生から再生される。従って、解糖およびピルビン酸代謝の発酵生成物は、多様な有機酸、アルコールおよびCOを含む。
【0010】
通性嫌気性菌の大部分は、好気または嫌気条件のいずれにおいても高収率のエタノールを産生しない。ほとんどの通性嫌気性菌は、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PDH)およびトリカルボン酸サイクル(TCA)を経て、ピルビン酸塩を好気的に代謝する。嫌気的条件下では、ピルビン酸塩の代謝のための主なエネルギー経路は、ピルビン酸−ギ酸−リアーゼ(PFL)経路を経て、ギ酸塩およびアセチル−CoAを生じる。次いで、アセチル−CoAは、ATPの同時産生を伴い、ホスホトランスアセチラーゼ(PTA)および酢酸キナーゼ(ACK)を経て、酢酸塩に変換されるか、またはアセチルアルデヒドデヒドロゲナーゼ(AcDH)およびアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)を経て、エタノールに還元される。還元性等価物の均衡を維持するために、解糖から産生される過剰のNADHは、ピルビン酸塩から乳酸塩への還元中に、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)によってNADに再酸化される。NADHはまた、アセチル−CoAからエタノールへの還元中に、AcDHおよびADHによって再酸化され得るが、これは、機能性LDHを伴う細胞では重要でない反応である。従って、ほとんどのアセチルCoAが酢酸塩に変換されてATPを再生し、解糖中に産生される過剰のNADHはLDHにより酸化されるため、エタノールの理論的収率は達成されない。
【0011】
微生物の代謝工学はまた、乳酸デヒドロゲナーゼのような酵素の産生をコードする、標的とするノックアウト遺伝子の作出ももたらし得る。この場合、遺伝子の「ノックアウト」は、部分的、実質的、もしくは完全な欠失、サイレンシング、不活化、またはダウンレギュレーションを意味する。LDHの作用によるピルビン酸塩の乳酸塩(乳酸の塩形態)への変換が解糖経路の早期段階において利用可能でない場合、ピルビン酸塩は、ピルビン酸デヒドロゲナーゼまたはピルビン酸−フェレドキシンオキシドレダクターゼの作用によって、より効率的にアセチルCoAに変換され得る。ホスホトランスアセチラーゼおよび酢酸キナーゼによるアセチルCoAの酢酸塩(酢酸の塩形態)へのさらなる変換もまた利用可能でない場合、即ち、PTAおよびACKの産生をコードする遺伝子がノックアウトされる場合、アセチルCoAは、AcDHおよびADHによって、より効率的にエタノールに変換され得る。従って、有機酸の産生を排除するそのような標的化された遺伝子ノックアウトを伴う微生物の遺伝子改変株は、発酵生成物としてエタノールを産生する能力が増大する。
【0012】
ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)、ザイモバクター・パルマエ(Zymobacter palmae)、アセトバクター・パスツリアヌス(Acetobacter pasteurianus)、またはサルシナ・ベントリクリ(Sarcina ventriculi)およびいくつかの酵母(例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))のようなエタノール生産性の生物は、一般にアルコール発酵と称される、ピルビン酸がピルビン酸デカルボキシラーゼ(PDC)によってアセトアルデヒドおよびCOに代謝される第2のタイプの嫌気発酵の能力を有する。次いで、アセトアルデヒドは、ADHによってエタノールに還元され、NADが再生される。アルコール発酵は、1分子のグルコースから2分子のエタノールおよび2分子のCOへの代謝を生じる。上記で詳述したようなピルビン酸の所望されない有機酸への変換が回避され得る場合、そのような遺伝子改変された微生物は、発酵生成物としてエタノールを産生する能力が増大する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の1つの態様は、配列番号1〜5、30〜31、および47〜61のいずれか1つのヌクレオチド配列、またはその相補体を含む、単離された核酸分子に関する。本発明の別の態様は、配列番号1〜5、30〜31、および47〜61のいずれか1つのヌクレオチド配列、またはその相補体と少なくとも80%の同一性を共有するヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子に関する。特定の実施の形態では、本発明は、配列番号1〜5、30〜31、および47〜61のいずれか1つのヌクレオチド配列、またはその相補体と少なくとも約95%の配列同一性を共有する上記の核酸分子に関する。
【0014】
本発明の別の態様は、好熱性または中温性の細菌において発現可能なプロモーターに機能的に連結された配列番号1〜5、30〜31、および47〜61のいずれか1つを含む、遺伝子構築物に関する。本発明はまた、上記の遺伝子構築物を含む組み換え好熱性または中温性の細菌に関する。
【0015】
本発明はまた、上記の核酸分子のいずれか1つを含むベクターを包含する。本発明はまた、上記の核酸分子のいずれか1つを含む宿主細胞を包含する。特定の実施の形態では、本発明は、上記の宿主細胞に関し、ここで、前記宿主細胞は、好熱性または中温性の細菌細胞である。
【0016】
本発明の別の態様は、第1の天然遺伝子が、部分的、実質的、もしくは完全に欠失、サイレンシング、不活化、またはダウンレギュレートされ、前記第1の天然遺伝子は、有機酸またはその塩の代謝産生に関与する第1の天然酵素をコードし、それによって、発酵生成物としてエタノールを産生する前記好熱性または中温性の微生物の天然の能力を増大させる、遺伝子改変された好熱性または中温性の微生物に関する。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変された微生物に関し、ここで、前記微生物はグラム陰性菌またはグラム陽性菌である。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変された微生物に関し、ここで、前記微生物は、サーモアナエロバクテリウム(Thermoanaerobacterium)、サーモアナエロバクター(Thermoanaerobacter)、クロストリジウム(Clostridium)、ゲオバチルス(Geobacillus)、サッカロコッカス(Saccharococcus)、パエニバチルス(Paenibacillus)、バチルス(Bacillus)、カルディセルロシルプター(Caldicellulosiruptor)、アネロセルム(Anaerocellum)またはアノキシバチルス(Anoxybacillus)属の種である。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変された微生物に関し、ここで、前記微生物は、次のものからなる群より選択される細菌である:サーモアナエロバクテリウム・サーモスルフリゲネス(Thermoanaerobacterium thermosulfurigenes)、サーモアナエロバクテリウム・アオテアロエンス(Thermoanaerobacterium aotearoense)、サーモアナエロバクテリウム・ポリサッカロリティカム(Thermoanaerobacterium polysaccharolyticum)、サーモアナエロバクテリウム・ジアエ(Thermoanaerobacterium zeae)、サーモアナエロバクテリウム・キシラノリティカム(Thermoanaerobacterium xylanolyticum)、サーモアナエロバクテリウム・サッカロリティカム(Thermoanaerobacterium saccharolyticum)、サーモアナエロビウム・ブロッキイ(Thermoanaerobium brockii)、サーモアナエロバクテリウム・サーモサッカロリティカム(Thermoanaerobacterium thermosaccharolyticum)、サーモアナエロバクター・サーモヒドロスルフリカス(Thermoanaerobacter thermohydrosulfuricus)、サーモアナエロバクター・エタノリカス(Thermoanaerobacter ethanolicus)、サーモアナエロバクター・ブロッキイ(Thermoanaerobacter brocki)、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)、クロストリジウム・セルロリティカム(Clostridium cellulolyticum)、クロストリジウム・ファイトファーメンタンス(Clostridium phytofermentans)、クロストリジウム・ストラミノソルベンス(Clostridium straminosolvens)、ゲオバチルス・サーモグルコシダシウス(Geobacillus thermoglucosidasius)、ゲオバチルス・ステアロサーモフィラス(Geobacillus stearothermophilus)、サッカロコッカス・カルドキシロシリティクス(Saccharococcus caldoxylosilyticus)、サッカロッカス・サーモフィラス(Saccharoccus thermophilus)、パエニバチルス・キャンピナセンシス(Paenibacillus campinasensis)、バチルス・フラボテルムス(Bacillus flavothermus)、アノキシバチルス・カムチャッカエンシス(Anoxybacillus kamchatkensis)、アノキシバチルス・ゴネンシス(Anoxybacillus gonensis)、カルディセルロシルプター・アセチゲネス(Caldicellulosiruptor acetigenus)、カルディセルロシルプター・サッカロリティカス(Caldicellulosiruptor saccharolyticus)、カルディセルロシルプター・クリストヤンソニー(Caldicellulosiruptor kristjanssonii)、カルディセルロシルプター・オーウェンセンシス(Caldicellulosiruptor owensensis)、カルディセルロシルプター・ラクトアセティカス(Caldicellulosiruptor lactoaceticus)、およびアネロセルム・テルモフィルム(Anaerocellum thermophilum)。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記微生物はサーモアナエロバクテリウム・サッカロリティカム(Thermoanaerobacterium saccharolyticum)である。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記微生物は:(a)ヘキソース糖を代謝する天然の能力を有する好熱性または中温性の微生物;(b)ペントース糖を代謝する天然の能力を有する好熱性または中温性の微生物;ならびに(c)ヘキソース糖およびペントース糖を代謝する天然の能力を有する好熱性または中温性の微生物からなる群より選択される。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記微生物は、ヘキソース糖を代謝する天然の能力を有する。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記微生物は、クロストリジウム・ストラミニソルベンス(Clostridium straminisolvens)またはクロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)である。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記微生物は、ヘキソース糖およびペントース糖を代謝する天然の能力を有する。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記微生物は、クロストリジウム・セルロリティカム(Clostridium cellulolyticum)、クロストリジウム・クリストヤンソニー(Clostridium kristjanssonii)、またはクロストリジウム・ステルコラリウムsubsp.レプトサプラルツム(Clostridium stercorarium subsp.leptosaprartum)である。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、第1の非天然遺伝子が挿入され、ここで、第1の非天然遺伝子は、ペントース糖を代謝する能力を付与する第1の非天然酵素をコードし、それによって、前記好熱性または中温性の微生物に、ペントース糖から発酵生成物としてエタノールを産生させる。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記微生物は、ペントース糖を代謝する天然の能力を有する。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記微生物は、サーモアナエロバクテリウム・サッカロリティカム(Thermoanaerobacterium saccharolyticum)、サーモアナエロバクテリウム・キシラノリティカム(Thermoanaerobacterium xylanolyticum)、サーモアナエロバクテリウム・ポリサッカロリティカム(Thermoanaerobacterium polysaccharolyticum)、およびサーモアナエロバクテリウム・サーモサッカロリティカム(Thermoanaerobacterium thermosaccharolyticum)からなる群より選択される。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、第1の非天然遺伝子が挿入され、ここで、第1の非天然遺伝子は、ヘキソース糖を代謝する能力を付与する第1の非天然酵素をコードし、それによって、前記好熱性または中温性の微生物に、ヘキソース糖から発酵生成物としてエタノールを産生させる。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記有機酸は、乳酸および酢酸からなる群より選択される。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記有機酸は乳酸である。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記有機酸は酢酸である。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記第1の天然酵素は、乳酸デヒドロゲナーゼ、酢酸キナーゼ、およびホスホトランスアセチラーゼからなる群より選択される。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記第1の天然酵素は乳酸デヒドロゲナーゼである。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記第1の天然酵素は酢酸キナーゼである。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記第1の天然酵素はホスホトランスアセチラーゼである。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、第2の天然遺伝子は、部分的、実質的、もしくは完全に欠失、サイレンシング、不活化、またはダウンレギュレートされ、前記第2の天然遺伝子は、有機酸またはその塩の代謝産生に関与する第2の天然酵素をコードする。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記第2の天然酵素は酢酸キナーゼまたはホスホトランスアセチラーゼである。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記第2の天然酵素は乳酸デヒドロゲナーゼである。
【0017】
本発明のなお別の態様は、遺伝子改変好熱性または中温性の微生物に関し、ここで、(a)第1の天然遺伝子は、部分的、実質的、もしくは完全に欠失、サイレンシング、不活化、またはダウンレギュレートされ、ここで、前記第1の天然遺伝子は、有機酸またはその塩の代謝産生に関与する第1の天然酵素をコードし、および(b)第1の非天然遺伝子が挿入され、ここで、第1の非天然遺伝子は、エタノールの代謝産生に関与する第1の非天然酵素をコードし、それによって、前記好熱性または中温性の微生物に、発酵生成物としてエタノールを産生させる。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記第1の非天然遺伝子は、ヘキソース糖を代謝する能力を付与する第1の非天然酵素をコードし、それによって、前記好熱性または中温性の微生物に、ヘキソース糖を代謝させる。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記第1の非天然遺伝子は、ペントース糖を代謝する能力を付与する第1の非天然酵素をコードし、それによって、前記好熱性または中温性の微生物に、ペントース糖を代謝させる。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記第1の非天然遺伝子は、ヘキソース糖を代謝する能力を付与する第1の非天然酵素をコードし;第2の非天然遺伝子が挿入され、ここで、前記第2の非天然遺伝子は、ペントース糖を代謝する能力を付与する第2の非天然酵素をコードし、それによって、前記好熱性または中温性の微生物に、ヘキソース糖およびペントース糖を代謝させることを特徴とする。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記有機酸は乳酸である。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記有機酸は酢酸である。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記第1の非天然酵素は、ピルビン酸デカルボキシラーゼ(PDC)またはアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)である。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記第2の非天然酵素はキシロースイソメラーゼである。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記第1の非天然遺伝子は、配列番号6、10、または14に対応する。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記非天然酵素はキシルロキナーゼである。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記非天然遺伝子は、配列番号7、11、または15に対応する。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記非天然酵素はL−アラビノースイソメラーゼである。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記非天然遺伝子は、配列番号8または12に対応する。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記非天然酵素はL−リブロース−5−リン酸4−エピメラーゼである。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記非天然遺伝子は、配列番号9または13に対応する。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記微生物は、代謝されたバイオマス由来の少なくとも60%の炭素をエタノールに変換することが可能である。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記微生物は:(a)セルロースを加水分解する天然の能力を有する好熱性または中温性の微生物;(b)キシランを加水分解する天然の能力を有する好熱性または中温性の微生物;ならびに(c)セルロースおよびキシランを加水分解する天然の能力を有する好熱性または中温性の微生物からなる群より選択される。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記微生物は、セルロースを加水分解する天然の能力を有する。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記微生物は、セルロースおよびキシランを加水分解する天然の能力を有する。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、第1の非天然遺伝子が挿入され、ここで、前記第1の非天然遺伝子は、キシランを加水分解する能力を付与する第1の非天然酵素をコードする。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記微生物は、キシランを加水分解する天然の能力を有する。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、第1の非天然遺伝子が挿入され、ここで、前記第1の非天然遺伝子は、セルロースを加水分解する能力を付与する第1の非天然酵素をコードする。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記有機酸は、乳酸および酢酸からなる群より選択される。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記有機酸は乳酸である。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記有機酸は酢酸である。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記第1の天然酵素は、乳酸デヒドロゲナーゼ、酢酸キナーゼ、およびホスホトランスアセチラーゼからなる群より選択される。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記第1の天然酵素は乳酸デヒドロゲナーゼである。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記第1の天然酵素は酢酸キナーゼである。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記第1の天然酵素はホスホトランスアセチラーゼである。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、第2の天然遺伝子は、部分的、実質的、もしくは完全に欠失、サイレンシング、不活化、またはダウンレギュレートされ、前記第2の天然遺伝子は、有機酸またはその塩の代謝産生に関与する第2の天然酵素をコードする。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記第2の天然酵素は酢酸キナーゼまたはホスホトランスアセチラーゼである。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記第2の天然酵素は乳酸デヒドロゲナーゼである。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、(a)第1の天然遺伝子は、部分的、実質的、もしくは完全に欠失、サイレンシング、不活化、またはダウンレギュレートされ、ここで、前記第1の天然遺伝子は、有機酸またはその塩の代謝産生に関与する第1の天然酵素をコードし、および(b)第1の非天然遺伝子が挿入され、ここで、第1の非天然遺伝子は、多糖の加水分解に関与する第1の非天然酵素をコードし、それによって、前記好熱性または中温性の微生物に、発酵生成物としてエタノールを産生させる。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記第1の非天然遺伝子は、セルロースを加水分解する能力を付与する第1の非天然酵素をコードし、それによって、前記好熱性または中温性の微生物に、セルロースを加水分解させる。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記第1の非天然遺伝子は、キシランを加水分解する能力を付与する第1の非天然酵素をコードし、それによって、前記好熱性または中温性の微生物に、キシランを加水分解させる。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記第1の非天然遺伝子は、セルロースを加水分解する能力を付与する第1の非天然酵素をコードし;第2の非天然遺伝子が挿入され、ここで、前記第2の非天然遺伝子は、キシランを加水分解する能力を付与する第2の非天然酵素をコードし、それによって、前記好熱性または中温性の微生物に、セルロースおよびキシランを加水分解させる。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記有機酸は乳酸である。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記有機酸は酢酸である。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記第1の非天然酵素は、ピルビン酸デカルボキシラーゼ(PDC)またはアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)である。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物に関し、ここで、前記微生物は、代謝されたバイオマス由来の少なくとも60%の炭素をエタノールに変換することが可能である。
【0018】
特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物のいずれかに関し、ここで、前記微生物は中温性である。特定の実施の形態では、本発明は、上記の遺伝子改変微生物のいずれかに関し、ここで、前記微生物は好熱性である。
【0019】
本発明の別の態様は、リグノセルロース系バイオマスと、上記の遺伝子改変好熱性または中温性の微生物のいずれか1つとを接触させることを含む、リグノセルロース系バイオマスをエタノールに変換するための方法に関する。特定の実施の形態では、本発明は、上記の方法に関し、ここで、前記リグノセルロース系バイオマスは、草、スイッチグラス、コードグラス、ライグラス、リードカナリーグラス、プレーリーグラス混合種、ススキ、製糖残留物、サトウキビバガス、サトウキビワラ、農業廃棄物、イナワラ、籾殻、オオムギワラ、トウモロコシ穂軸、穀物ワラ、コムギワラ、カノーラワラ、エンバクワラ、エンバク種皮、トウモロコシ繊維、茎葉、ダイズ茎葉、トウモロコシ茎葉、森林廃棄物、再生木材パルプ繊維、ペーパースラッジ、大鋸屑、硬木、軟木、およびそれらの組合せからなる群より選択される。特定の実施の形態では、本発明は、上記のプロセスに関し、ここで、前記リグノセルロース系バイオマスは、トウモロコシ茎葉、サトウキビバガス、スイッチグラス、およびポプラ材からなる群より選択される。特定の実施の形態では、本発明は、上記の方法に関し、ここで、前記リグノセルロース系バイオマスはトウモロコシ茎葉である。特定の実施の形態では、本発明は、上記の方法に関し、ここで、前記リグノセルロース系バイオマスはサトウキビバガスである。特定の実施の形態では、本発明は、上記の方法に関し、ここで、前記リグノセルロース系バイオマスはスイッチグラスである。特定の実施の形態では、本発明は、上記の方法に関し、ここで、前記リグノセルロース系バイオマスはポプラ材である。特定の実施の形態では、本発明は、上記の方法に関し、ここで、前記リグノセルロース系バイオマスはヤナギである。特定の実施の形態では、本発明は、上記の方法に関し、ここで、前記リグノセルロース系バイオマスはペーパースラッジである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】解糖経路を図示する。
【図2】ペントースとグルクロン酸塩との相互変換を図示し、D−キシロースからエタノールへの経路における酵素、キシロースイソメラーゼ(XIまたは5.3.1.5)およびキシルロキナーゼ(XKまたは2.7.1.17)を強調している。
【図3】ペントースとグルクロン酸塩との相互変換を図示し、L−アラビノース資化経路における酵素、L−アラビノースイソメラーゼ(5.3.1.4)およびL−リブロース−5−リン酸4−エピメラーゼ(5.1.3.4)を強調している。
【図4】ペントースとグルクロン酸塩との相互変換を図示し、C.セルロリティカム(C.cellulolyticum)においてキシロースイソメラーゼ、キシルロキナーゼ、L−アラビノースイソメラーゼ、およびL−リブロース−5−リン酸4−エピメラーゼの遺伝子が存在することを示す。
【図5】ペントースとグルクロン酸塩との相互変換を図示し、C.ファイトファーメンタンス(C.phytofermentans)においてキシロースイソメラーゼおよびキシルロキナーゼが存在する一方、L−アラビノースイソメラーゼおよびL−リブロース−5−リン酸4−エピメラーゼが存在しないことを示す。
【図6】16S rDNA遺伝子のレベルにおいて約73〜89%の相同性を示すクロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)(配列番号77)、クロストリジウム・セルロリティカム(Clostridium cellulolyticum)(配列番号78)、サーモアナエロバクテリウム・サッカロリティカム(Thermoanaerobacterium saccharolyticum)(配列番号79)、C.ステルコラリウム(C.stercorarium)(配列番号80)、C.ステルコラリウム(C.stercorarium)II(配列番号81)、カルディスセルロシルプター・クリストヤンソニー(Caldiscellulosiruptor kristjanssonii)(配列番号82)、C.ファイトファーメンタンス(C.phytofermentans)(配列番号83)のアラインメントを示す。
【図7】プラスミドpIKM1に基づくクロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)におけるack遺伝子の不活化のための二重交差ノックアウトベクターの構築を示す。
【図8】複製プラスミドpNW33Nに基づくクロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)におけるack遺伝子の不活化のための二重交差ノックアウトベクターの構築を示す。
【図9】プラスミドpIKM1に基づくクロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)におけるldh遺伝子の不活化のための二重交差ノックアウトベクターの構築を示す。
【図10】複製プラスミドベクターpNW33Nに基づくクロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)におけるldh遺伝子の不活化のための二重交差ノックアウトベクターの構築を示す。
【図11】プラスミドpUC19に基づくクロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)におけるldh遺伝子の不活化のための二重交差自殺ベクターの構築を示す。
【図12A】セロビオース上で増殖させたC.ストラミニソルベンス(C.straminisolvens)の産物形成およびOD600を示す。
【図12B】Avicel(登録商標)上で増殖させたC.ストラミニソルベンス(C.straminisolvens)の産物形成およびOD600を示す。
【図13A】セロビオース上で増殖させたC.サーモセラム(C.thermocellum)の産物形成およびOD600を示す。
【図13B】Avicel(登録商標)上で増殖させたC.サーモセラム(C.thermocellum)の産物形成およびOD600を示す。
【図14A】セロビオース上で増殖させたC.セルロリティカム(C.cellulolyticum)の産物形成およびOD600を示す。
【図14B】Avicel(登録商標)上で増殖させたC.セルロリティカム(C.cellulolyticum)の産物形成およびOD600を示す。
【図15A】セロビオース上で増殖させたC.ステルコラリウム・subs.レプトスパルツム(C.stercorarium subs.leptospartum)の産物形成およびOD600を示す。
【図15B】Avicel(登録商標)上で増殖させたC.ステルコラリウム subs.レプトスパルツム(C.stercorarium subs.leptospartum)の産物形成およびOD600を示す。
【図16A】セロビオース上で増殖させたカルディセルロシルプター・クリストヤンソニー(Caldicellulosiruptor kristjanssonii)の産物形成およびOD600を示す。
【図16B】Avicel(登録商標)上で増殖させたカルディセルロシルプター・クリストヤンソニー(Caldicellulosiruptor kristjanssonii)の産物形成およびOD600を示す。
【図17A】セロビオース上で増殖させたクロストリジウム・ファイトファーメンタンス(Clostridium phytofermentans)の産物形成およびOD600を示す。
【図17B】Avicel(登録商標)上で増殖させたクロストリジウム・ファイトファーメンタンス(Clostridium phytofermentans)の産物形成およびOD600を示す。
【図18】2.5g/Lキシランおよび2.5g/Lセロビオースの48時間の発酵後の全代謝副産物を示す。
【図19】ack遺伝子の地図および遺伝子破壊のためにPCRによって増幅された領域を示す。
【図20】ldh2262遺伝子の地図および遺伝子破壊のためにPCRによって増幅された領域を示す。
【図21】C.セルロリティカム(C.cellulolyticum)(C.cell.)ldh(2262)二重交差ノックアウトフラグメントの一例を示す。
【図22】クロストリジウム・ファイトファーメンタンス(Clostridium phytofermentans)のack遺伝子の地図および遺伝子破壊のためにPCRによって増幅された領域を示す。
【図23】クロストリジウム・ファイトファーメンタンス(Clostridium phytofermentans)における選択マーカーとしてmLs遺伝子を伴う推定二重交差ノックアウト構築物の一例を示す。
【図24】ldh1389遺伝子の地図および遺伝子破壊のためにPCRによって増幅された領域を示す。
【図25】選択マーカーとしてmLs遺伝子を伴う推定二重交差ノックアウト構築物の一例を示す。
【図26】pMOD(商標)−2<MCS>のbp250〜550(配列番号84)を表す図である。
【図27】C.ストラミニソルベンス(C.straminisolvens)を使用した1%Avicel(登録商標)の産物濃度プロファイルを示す。エタノール対酢酸比をE/Aとして示し、エタノール対全生成物の比をE/Tとして示す。
【図28】Ll.LtrBイントロンを、C.cell.ACK遺伝子における挿入物(配列番号21)に再標的化するためのベクターの一例を示す。
【図29】Ll.LtrBイントロンを、C.cell.LDH2744遺伝子における挿入物(配列番号23)に再標的化するためのベクターの一例を示す。
【図30】16S rDNA遺伝子のレベルにおけるT.シュードエタノリカス(T.pseudoethanolicus)39E(配列番号85)、T.sp株59(配列番号86)、T.サッカロリティカム(T.saccharolyticum)B6A−RI(配列番号87)、T.サッカロリティカム(T.saccharolyticum)YS485(配列番号88)およびコンセンサス(配列番号89)のアラインメントを示す。
【図31】pta遺伝子のレベルにおけるT.sp.株59(配列番号36)、T.シュードエタノリカス(T.pseudoethanolicus)(配列番号35)、T.サッカロリティカム(T.saccharolyticum)B6A−RI(配列番号38)、T.サッカロリティカム(T.saccharolyticum)YS485(配列番号32)およびコンセンサス(配列番号90)のアラインメントを示す。
【図32】ack遺伝子のレベルにおけるT.sp.株59(配列番号37)、T.シュードエタノリカス(T.pseudoethanolicus)(配列番号34)、T.サッカロリティカム(T.saccharolyticum)B6A−RI(配列番号39)、T.サッカロリティカム(T.saccharolyticum)YS485(配列番号33)およびコンセンサス(配列番号91)のアラインメントを示す。
【図33】ldh遺伝子のレベルにおけるT.sp.株59(配列番号41)、T.シュードエタノリカス(T.pseudoethanolicus)39E(配列番号42)、T.サッカロリティカム(T.saccharolyticum)B6A−RI(配列番号43)、T.サッカロリティカム(T.saccharolyticum)YS485(配列番号40)およびコンセンサス(配列番号92)のアラインメントを示す。
【図34】解糖/発酵経路の略図を示す。
【図35】pMU340プラスミドの一例を示す。
【図36】pMU102 Z.モビリス(Z.mobilis)PDC−ADHプラスミドの一例を示す。
【図37】pMU102 Z.パルマエ(Z.palmae)PDC、Z.モビリス(Z.mobilis)ADHプラスミドの一例を示す。
【図38】pMU360のプラスミド地図を示す。pMU360のDNA配列は、配列番号61に記載されている。
【図39】チアンフェニコール耐性形質転換体の9つのコロニーの乳酸レベルを示す。
【図40】T.sacch.pfl KO単一交差プラスミドの一例(配列番号47)を示す。
【図41】T.sacch.pfl KO二重交差プラスミドの一例(配列番号48)を示す。
【図42】C.therm.pfl KO単一交差プラスミドの一例(配列番号49)を示す。
【図43】C.therm.pfl KO二重交差プラスミドの一例(配列番号50)を示す。
【図44】C.phyto.pfl KO単一交差プラスミドの一例(配列番号51)を示す。
【図45】C.phyto.pfl KO二重交差プラスミドの一例(配列番号52)を示す。
【図46】T.sacch.#59 L−ldh KO単一交差プラスミドの一例(配列番号53)を示す。
【図47】T.sacch.#59 L−ldh KO二重交差プラスミドの一例(配列番号54)を示す。
【図48】T.sacch.#59 pta/ack KO単一交差プラスミドの一例(配列番号55)を示す。
【図49】T.sacch.#59 pta/ack KO二重交差プラスミドの一例(配列番号56)を示す。
【図50】T.pseudo.L−ldh KO単一交差プラスミドの一例(配列番号57)を示す。
【図51】T.pseudo.L−ldh KO二重交差プラスミドの一例(配列番号58)を示す。
【図52】T.pseudo.ack KO単一交差プラスミドの一例(配列番号59)を示す。
【図53】T.pseudo.pta/ack KO二重交差プラスミドの一例(配列番号60)を示す。
【表の簡単な説明】
【0021】
表1は、代表的な高度セルロース分解生物についてまとめている。
【0022】
表2は、代表的な天然のセルロース分解生物およびキシラン分解生物についてまとめている。
【0023】
表3は、基質資化に基づく細菌株の分類を示す。
【0024】
表4は、イントロンをC.セルロリティカム(C.cellulolyticum)酢酸キナーゼに再標的化させるための挿入位置およびプライマーを示す。
【0025】
表5は、イントロンをC.セルロリティカム(C.cellulolyticum)乳酸デヒドロゲナーゼに再標的化させるための挿入位置およびプライマーを示す。
【0026】
表6は、操作されたサーモアナエロバクター(Thermoanaerobacter)株およびサーモアナエロバクテリウム(Thermoanaerobacterium)株の発酵性能を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の態様は、リグノセルロース系バイオマスからのエタノールの産生に使用するための好熱性または中温性の微生物の操作に関する。エタノール産生のための好熱性細菌の使用は、中温性エタノール産生体に基づく従来の方法を超える多くの利点を提供する。例えば、好熱性生物の使用は、より低いエタノール分離コスト、外部からの酵素添加の必要性の低減、および処理時間の低減のため、従来の処理方法を超える大幅な経済的節約を提供する。
【0028】
本発明の態様は、新規の処理構成を使用することによって、セルロース系バイオマス含有材料のエタノール産生のコストを削減することができる方法に関する。特に、本発明は、遺伝子改変微生物においてエタノール産生を増大させるための多数の方法を提供する。
【0029】
他の特定の実施の形態では、本発明は、遺伝子改変された好熱性または中温性の微生物に関し、ここで、遺伝子または特定のポリヌクレオチド配列は、部分的、実質的、もしくは完全に欠失、サイレンシング、不活化、またはダウンレギュレートされ、ここで、前記遺伝子またはポリヌクレオチド配列は、発酵生成物として有機酸を産生する能力を微生物に付与する酵素をコードし、それによって、主要な発酵生成物としてエタノールを産生する微生物の能力を増大させる。さらに、連結バイオプロセスとして一般に公知である処理工程の新規の組み込みによって、本発明の態様は、セルロース系バイオマス含有原材料からのエタノールのより効率的な産生を提供する。前記材料の処理への遺伝子改変好熱性または中温性の微生物の組み入れは、発酵工程をより高い温度で行うことを可能にし、処理経済性を改善する。例えば、反応動態は、典型的に、温度に比例し、そのため、温度が高いほど、一般的に、全体的な産生速度の増大に関連する。さらに、温度が高いほど、ブロスからの揮発産生物の取り出しが容易であり、前処置後の冷却の必要性が減少する。
【0030】
特定の実施の形態では、本発明は、発酵生成物としてエタノールを産生する能力を付与する酵素を産生する能力の増大を伴う遺伝子改変または組み換え好熱性または中温性の微生物に関し、ここで、前記酵素の存在は、リグノセルロース系バイオマス材料を代謝して、主要な発酵生成物としてエタノールを産生するプロセスを改変する。本発明の1つの態様では、1つもしくはそれ以上の非天然遺伝子が遺伝子改変された好熱性または中温性の微生物に挿入され、ここで、前記非天然遺伝子は、エタノールの代謝産生に関与する酵素をコードし、例えば、そのような酵素は、ペントース糖および/またはヘキソース糖を代謝する能力を付与し得る。例えば、1つの実施の形態では、酵素は、D−キシロースまたはL−アラビノース経路に関与し得、それによって、微生物に、ペントース糖、即ち、D−キシロースまたはL−アラビノースを代謝させる。D−キシロースまたはL−アラビノースの代謝または資化に関与する酵素をコードする非天然遺伝子を挿入(例えば、導入もしくは付加)することによって、微生物は、天然の生物と比較して、増大したエタノール産生能力を有する。
【0031】
本発明はまた、本発明の微生物に組み込まれ得る新規の組成物を提供する。1つの実施の形態では、本発明の単離された核酸分子は、配列番号1〜76のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列の相補体である核酸分子を含む。別の実施の形態では、本発明の単離された核酸分子は、配列番号1〜76のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列、またはこれらのヌクレオチド配列のいずれかの一部の相補体である核酸分子を含む。配列番号1〜76のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列、またはそのコーディング領域に相補的である核酸分子は、それが、配列番号1〜76のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列、またはそのコーディング領域にハイブリダイズすることができ、それによって安定な二重鎖を形成するように、配列番号1〜76のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列、またはそのコーディング領域に十分に相補的である核酸分子である。
【0032】
なお別の好適な実施の形態では、本発明の単離された核酸分子は、配列番号1〜76のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列(例えば、ヌクレオチド配列の全長)、またはこれらのヌクレオチド配列のいずれかの一部分に、少なくとも約50%、54%、55%、60%、62%、65%、70%、75%、78%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上相同であるヌクレオチド配列を含む。
【0033】
さらに、本発明の核酸分子は、配列番号1〜76のいずれか1つの核酸配列、またはそのコーディング領域の一部のみを含んでもよく;例えば、核酸分子は、プローブもしくはプライマーとして使用することができるフラグメントであってもよく、またはタンパク質の生物活性のある部分をコードするフラグメントであってもよい。別の実施の形態では、核酸分子は、配列番号1〜76のいずれか1つの少なくとも約12もしくは15、好ましくは、約20もしくは25、より好ましくは、約30、35、40、45、50、55、60、65、もしくは75連続ヌクレオチドを含み得る。
【0034】
定義
用語「異種ポリヌクレオチドセグメント」は、1つもしくはそれ以上ポリペプチド、またはポリペプチドの部分もしくはフラグメントをコードするポリヌクレオチドセグメントを含むことが意図される。異種ポリヌクレオチドセグメントは、任意の供給源、例えば、真核生物、原核細胞、ウイルスから誘導してもよく、または合成ポリヌクレオチドフラグメントであってもよい。
【0035】
用語「プロモーター」または「サロゲートプロモーター」は、それが自然では転写制御しない目的の遺伝子を転写制御することができるポリヌクレオチドセグメントを含むことが意図される。特定の実施の形態では、サロゲートプロモーターの転写制御は、目的の遺伝子の発現の増大を生じる。特定の実施の形態では、サロゲートプロモーターは、目的の遺伝子の5’側に配置される。サロゲートプロモーターは、天然のプロモーターと入れ換えて使用してもよく、または天然のプロモーターに追加して使用してもよい。サロゲートプロモーターは、それが使用される宿主細胞に関して内因性であってもよく、またはそれは、宿主細胞に導入される異種ポリヌクレオチド配列、例えば、それが使用される宿主細胞に関して外因性であってもよい。
【0036】
用語「遺伝子」または「ポリヌクレオチドセグメント」または「ポリヌクレオチド配列」は、核酸分子、例えば、ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むポリヌクレオチドを含むことが意図され、非コーディング調節配列、およびイントロンをさらに含むことができる。加えて、この用語は、機能的遺伝子座に位置する1つもしくはそれ以上の遺伝子を含むことが意図される。加えて、この用語は、選択された目的に特異的な遺伝子を含むことが意図される。遺伝子は、宿主細胞に対して内因性であってもよく、または例えば、エピソーム的に維持されるプラスミドもしくはゲノムに安定に組み込まれるプラスミド(またはそのフラグメント)として宿主細胞に組み換え導入してもよい。プラスミド形態に加えて、遺伝子は、例えば、線状DNAの形態であってもよい。特定の実施の形態では、ポリヌクレオチドセグメントの遺伝子は、炭水化物からエタノールへの生体変換における少なくとも1つの工程に関与する。従って、この用語は、酵素の酢酸キナーゼ(ACK)、ホスホトランスアセチラーゼ(PTA)、および/または乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、キシロースイソメラーゼおよびキシルロキナーゼのようなD−キシロース経路における酵素、L−アラビノースイソメラーゼおよびL−リブロース−5−リン酸4−エピメラーゼのようなL−アラビノース経路における酵素のようなポリペプチドをコードする任意の遺伝子を含むことが意図される。遺伝子という用語はまた、特定の遺伝子のすべてのコピー、例えば、特定の遺伝子産物をコードする細胞中のすべてのDNA配列に及ぶことが意図される。
【0037】
用語「転写制御」は、転写のレベルにおいて遺伝子発現を調節する能力を含むことが意図される。特定の実施の形態では、転写、およびそれ故、遺伝子発現は、目的の遺伝子のコーディング領域の5’末端付近のサロゲートプロモーターを置き換えるか、または付加し、それによって、変更された遺伝子発現を生じさせることによって、調節される。特定の実施の形態では、1つもしくはそれ以上の遺伝子の転写制御が操作されて、例えば、所望される割合のそのような遺伝子の最適な発現を生じる。この用語はまた、当該分野において認識される誘導性転写制御を含む。
【0038】
用語「発現」は、少なくともmRNA産生のレベルにおける遺伝子の発現を含むことが意図される。
【0039】
用語「発現産物」は、発現される遺伝子の得られた産物、例えば、ポリペプチドを含むことが意図される。
【0040】
用語「増大した発現」は、少なくとも増大したmRNA産生のレベル、および好ましくは、ポリペプチド発現のレベルにおける遺伝子発現の変更を含むことが意図される。用語「増大した産生」は、ポリペプチド、またはそれらの組合せの酵素活性のレベルにおける発現されたポリペプチドの量における増大を含むことが意図される。
【0041】
用語「活性」、「活性(複数)」、「酵素活性」、および「酵素活性(複数)」は同義的に使用され、好適な条件下で産生される場合、通常、選択されたポリペプチドに起因する任意の機能的活性を含むことが意図される。典型的に、選択されたポリペプチドの活性は、産生されるポリペプチドに関連する全酵素活性を包含する。宿主細胞によって産生され、酵素活性を有するポリペプチドは、細胞の細胞内空間に局在するか、細胞結合性であるか、細胞外環境に分泌されるか、またはそれらの組合せであり得る。選択された活性と比較して全活性を決定するための技術は、本明細書に記載されており、当該分野において公知である。
【0042】
用語「キシラン分解活性」は、オリゴペントースおよびポリペントースにおけるグリコシド結合を加水分解する能力を含むことが意図される。
【0043】
用語「セルロース分解活性」は、オリゴヘキソースおよびポリヘキソースにおけるグリコシド結合を加水分解する能力を含むことが意図される。セルロース分解活性はまた、セルロースおよびヘミセルロースを脱重合または脱分枝する能力を含み得る。
【0044】
本明細書において使用する用語「乳酸デヒドロゲナーゼ」すなわち「LDH」は、ピルビン酸塩を乳酸塩に変換することが可能な酵素を含むことが意図される。LDHはまた、ヒドロキシ酪酸塩の酸化も触媒することができることが理解される。
【0045】
本明細書において使用する用語「アルコールデヒドロゲナーゼ」すなわち「ADH」は、アセトアルデヒドをアルコール、有利なことに、エタノールに変換することが可能な酵素を含むことが意図される。
【0046】
用語「ピルビン酸デカルボキシラーゼ活性」は、ピルビン酸塩をアセトアルデヒドに酵素的に変換するポリペプチド(例えば、「ピルビン酸デカルボキシラーゼ」すなわち「PDC」)の能力を含むことが意図される。典型的に、選択されたポリペプチドの活性は、例えば、酵素のより優れた基質親和性、耐熱性、異なるpHにおける安定性、またはこれらの特性の組合せを含む産生されるポリペプチドに関連する全酵素活性を包含する。
【0047】
用語「エタノール生産性」は、発酵生成物として炭水化物からエタノールを産生する微生物の能力を含むことが意図される。この用語は、限定されえないが、天然に存在するエタノール生産生物、天然に存在するまたは誘導された変異を伴うエタノール生産生物、および遺伝子改変されているエタノール生産生物を含むことが意図される。
【0048】
用語「発酵する」および「発酵」は、特に、発酵の産物として、炭水化物からエタノールが産生される酵素プロセス(例えば、細胞性または無細胞性、例えば、溶解物もしくは精製されたポリペプチド混合物)を含むことが意図される。
【0049】
用語「分泌される」は、ポリペプチドのペリプラズム空間または細胞外環境への移動を含むことが意図される。用語「増大した分泌」は、所与のポリペプチドが増大したレベル(即ち、天然に存在する量の分泌より多く)分泌される状態を含むことが意図される。特定の実施の形態では、用語「増大して分泌される」は、天然に存在するレベルの分泌と比較して、少なくとも約10%または少なくとも約100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%、もしくはそれ以上である所与のポリペプチドの分泌の増大を指す。
【0050】
用語「分泌ポリペプチド」は、細胞の細胞内空間から細胞外環境への別のポリペプチドの輸送を容易にする単独または他のポリペプチドと組み合わせられた任意のポリペプチドを含むことが意図される。特定の実施の形態では、分泌ポリペプチドは、グラム陰性またはグラム陽性宿主細胞に分泌活性を与えるのに十分なすべての必要な分泌ポリペプチドを包含する。典型的に、分泌タンパク質は、遺伝子操作を使用して、1つの宿主細胞から単離し、別の宿主細胞に移し得る単一の領域または遺伝子座においてコードされる。特定の実施の形態では、分泌ポリペプチドは、分泌活性を有する任意の細菌細胞から誘導される。特定の実施の形態では、分泌ポリペプチドは、II型分泌活性を有する宿主細胞から誘導される。特定の実施の形態では、宿主細胞は、好熱性細菌細胞である。
【0051】
用語「から誘導される」は、示された供給源からのポリヌクレオチドセグメントの(全体的もしくは部分的)単離、または示された供給源からのポリペプチドの精製を含むことが意図される。この用語は、例えば、直接クローニング、PCR増幅、または示されたポリヌクレオチド供給源に関連した配列からもしくはそれに基づく人工合成を含むことが意図される。
【0052】
「好熱性」とは、約45℃もしくはそれ以上の温度で生育する生物を意味する。
【0053】
「中温性」とは、約20〜45℃もしくはそれ以上の温度で生育する生物を意味する。
【0054】
用語「有機酸」は、当該分野において認識されている。用語「乳酸」は、遊離酸または塩形態のいずれかにおける有機酸2−ヒドロキシプロピオン酸を指す。乳酸の塩形態は、中和剤、即ち、炭酸カルシウムまたは水酸化アンモニウムにかかわらず、「乳酸塩」を指す。用語「酢酸」は、遊離酸または塩形態のいずれかにおけるエタン酸としても公知の有機酸メタンカルボン酸を指す。酢酸の塩形態は「酢酸塩」と称される。
【0055】
本発明の特定の実施の形態は、好熱性または中温性の微生物内の所定の遺伝子または特定のポリヌクレオチド配列の「挿入」(例えば、付加、組み込み、組み入れ、もしくは導入)を提供し、ここで、遺伝子または特定のポリヌクレオチド配列の前記挿入は、前記好熱性または中温性の微生物の得られる株が「遺伝子改変」もしくは「形質転換」されていると理解され得るような「遺伝子改変」または「形質転換」を包含することが理解され得る。特定の実施の形態では、株は、細菌、真菌、または酵母由来であってもよい。
【0056】
本発明の特定の実施の形態は、好熱性または中温性の微生物内の所定の遺伝子もしくは特定のポリヌクレオチド配列の「不活化」または「欠失」を提供し、ここで、遺伝子もしくは特定のポリヌクレオチド配列の「不活化」または「欠失」は、前記好熱性または中温性の微生物の得られる株が「遺伝子改変」もしくは「形質転換」されていると理解され得るような「遺伝子改変」または「形質転換」を包含することが理解され得る。特定の実施の形態では、株は、細菌、真菌、または酵母由来であってもよい。
【0057】
用語「CBP生物」は、本発明の微生物、例えば、CBPに適切な特性を有する微生物を含むことが意図される。
【0058】
本発明の1つの態様では、酵素の発現のようなそれらがコードする活性を活性化させるために、遺伝子または特定のポリヌクレオチド配列が挿入される。特定の実施の形態では、エタノールの代謝産生における酵素、例えば、ペントース糖および/またはヘキソース糖を代謝する酵素をコードする遺伝子を、中温性または好熱性生物に付加してもよい。本発明の特定の実施の形態では、酵素は、ペントース糖を代謝する能力を付与し、例えば、D−キシロース経路および/またはL−アラビノース経路に関与し得る。
【0059】
本発明の1つの態様では、酵素の発現のようなそれらがコードする活性を活性化させるために、遺伝子または特定のポリヌクレオチド配列は、部分的、実質的、もしくは完全に欠失、サイレンシング、不活化、またはダウンレギュレートされる。欠失は、機能を回復するための復帰変異の機会がないため、最大の安定性を提供する。あるいは、遺伝子の機能および/または発現を破壊する核酸配列の挿入(例えば、P1形質導入もしくは当該分野において公知の他の方法)により、遺伝子を部分的、実質的、もしくは完全に欠失、サイレンシング、不活化、またはダウンレギュレートすることができる。用語「排除する」「排除」、および「ノックアウト」は、用語「欠失」と同義的に使用される。特定の実施の形態では、目的の好熱性または中温性の微生物の株は、有機酸の産生をノックアウトするための部位特異的相同組み換えによって操作してもよい。なお別の実施の形態では、RNAiまたはアンチセンスDNA(asDNA)を使用して、特定の目的の遺伝子を部分的、実質的、もしくは完全にサイレンシング、不活化、またはダウンレギュレートしてもよい。
【0060】
特定の実施の形態では、本明細書に記載の欠失または不活化のために標的化された遺伝子は、微生物の天然の株に対して内因性であり得、それ故、「天然遺伝子」または「内因性遺伝子」と称されることが理解され得る。生物が遺伝子操作されておらず、またはそうでなければ生物の遺伝子および/または表現型構成を意図的に変更する様式で人為的に操作されてもいない場合、生物は「天然の状態」である。例えば、野生型の生物は、天然の状態であるとみなすことができる。他の実施の形態では、欠失または不活化のために標的化された遺伝子は、生物に対して非天然であり得る。
【0061】
バイオマス
用語「リグノセルロース材料」、「リグノセルロース基質」、および「セルロース系バイオマス」は、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、またはそれらの組合せを含む任意のタイプのバイオマス、例えば、限定されないが、木質バイオマス、イネ科牧草、草木系のエネルギー作物、非木質植物バイオマス、農業廃棄物および/または農業残渣、森林残渣および/または森林廃棄物、製紙スラッジおよび/または古紙スラッジ、廃水処理スラッジ、一般廃棄物、ウェットおよびドライミル方式のトウモロコシエタノール工場由来のトウモロコシ繊維、ならびに製糖残留物を意味する。
【0062】
非制限的例では、リグノセルロース材料として、再生木材パルプ繊維、大鋸屑、硬木、軟木、およびそれらの組合せのような木質バイオマス;スイッチグラス、コードグラス、ライグラス、リードカナリーグラス、ススキ、またはそれらの組合せのような草類;限定されないが、サトウキビバガスのような製糖残留物;限定されないが、イナワラ、籾殻、オオムギワラ、トウモロコシ穂軸、穀物ワラ、コムギワラ、カノーラワラ、エンバクワラ、エンバク種皮、およびトウモロコシ繊維のような農業廃棄物;限定されないが、ダイズ茎葉、トウモロコシ茎葉のような茎葉;ならびに限定されないが再生木材パルプ繊維、大鋸屑、硬木(例えば、ポプラ、オーク、カエデ、カバ、ヤナギ)、軟木、またはそれらの任意の組合せのような森林廃棄物を挙げることができるが、これらに限定されない。リグノセルロース材料は繊維の一種を含み得るか;あるいは、リグノセルロース材料は、異なるリグノセルロース材料を起源とする繊維の混合物を含み得る。特に有利なリグノセルロース材料は、コムギワラ、オオムギワラ、カノーラワラおよびエンバクワラを含む穀物ワラ;トウモロコシ繊維;トウモロコシ茎葉およびダイズ茎葉のような茎葉;スイッチグラス、リードカナリーグラス、コードグラス、およびススキのような草類;またはそれらの組合せのような農業廃棄物である。
【0063】
ペーパースラッジもまた、エタノール産生のための実行可能な原料である。ペーパースラッジは、パルプ化および製紙から生じる固体残渣であり、最初のクラリファイヤにおける処理廃水から典型的に取り出される。30ドル/湿重量トンの処分費において、スラッジ処理のコストは、販売のために産生される紙の5ドル/トンに等しい。湿性スラッジの廃棄コストは、エタノールへの変換のような他の用途のために材料を変換するための重要な動機付けになる。本発明によって提供される方法は、広範に適用可能である。さらに、糖化および/または発酵生成物を使用して、エタノールまたは有機酸、芳香族化合物、エステル、アセトンおよびポリマー中間体のようなさらに付加価値の高い化学物質を産生させてもよい。
【0064】
ピルビン酸ギ酸リアーゼ(PFL)
ピルビン酸ギ酸リアーゼ(PFL)は、嫌気的グルコース代謝を調節するのに役立つ重要な酵素(大腸菌(Escherichia coli)および他の生物において見出される)である。ラジカル化学を使用して、それは、ピルビン酸塩および補酵素Aのギ酸塩およびアセチル−CoA、エタノールの前駆体への可逆的変換を触媒する。ピルビン酸ギ酸リアーゼは、85kDa、759残基のサブユニットから構成されるホモダイマーである。それは、主な触媒残基を含有するβフィンガーに挿入される10の標準的なβ/αバレルモチーフを有する。X線結晶学によって解明された酵素の活性部位は、触媒を実施する3個の必須アミノ酸(Gly734、Cys418、およびCys419)、基質ピルビン酸塩を近くに保持する3個の主要な残基(Arg435、Arg176、およびAla272)、ならびに2個のフランキング疎水性残基(Trp333およびPhe432)を保持する。
【0065】
研究により、ピルビン酸ギ酸リアーゼの活性部位とクラスIおよびクラスIIIリボヌクレオチドレダクターゼ(RNR)酵素の活性部位との間に構造的類似性が見出された。3つの触媒残基の役割は次のとおりである:Gly734(グリシルラジカル)−Cys419を経てラジカルを断続的にCys418に移動する;Cys418(チイルラジカル)−ピルビン酸カルボニルの炭素原子に対してアシル化化学を実施する;Cys419(チイルラジカル)−水素原子移動を実施する。
【0066】
ピルビン酸ギ酸リアーゼについて提唱された機構は、Cys419を介するGly734からCys418へのラジカル移動から開始する。Cys418チイルラジカルは、ピルビン酸塩のC2(2番目の炭素原子)に共有結合で付加し、アセチル−酵素中間体(ここでラジカルを含有する)を生じる。アセチル−酵素中間体は、Cys419によって水素原子移動を受けるホルミルラジカルを放出する。これにより、ギ酸塩およびCys419ラジカルが生じる。補酵素Aは、Cys419ラジカルによって水素原子移動を受け、補酵素Aラジカルを生じる。次いで、補酵素Aラジカルは、Cys418からアセチル基を取り込み、アセチル−CoAを生じ、Cys418ラジカルを後に残す。次いで、ピルビン酸ギ酸リアーゼは、ラジカル移動を受け、ラジカルをGly734に戻すことができる。上記の工程のそれぞれはまた、可逆的である。
【0067】
さらなる2つの酵素が、ピルビン酸ギ酸リアーゼの「オン」および「オフ」の状態を調節して、嫌気的グルコース代謝を調節する:PFLアクティベース(AE)およびPFLディアクティベース(DA)。活性型ピルビン酸ギ酸リアーゼは、アセチル−CoA(ピルビン酸塩が利用可能である場合、エネルギーの生成に重要な小分子)の形成を可能にする。非活性型ピルビン酸ギ酸リアーゼは、基質が存在しても、反応を触媒しない。PFLアクティベースは、ラジカルSAM(S−アデノシルメチオニン)スーパーファミリーの一部である。
【0068】
酵素は、5’−デオキシアデノシルラジカル(ラジカルSAM)を経てGly734(G−H)をGly734ラジカル(G)に変換することによって、ピルビン酸ギ酸リアーゼを「オン」に切り換える。PFLディアクティベース(DA)は、Gly734ラジカルをクエンチすることによって、ピルビン酸ギ酸リアーゼを「オフ」に切り換える。さらに加えて、ピルビン酸ギ酸リアーゼは、分子状の酸素(O)に感受性であり、その存在は、酵素を締め出す。
【0069】
キシロース代謝
キシロースは、多様な生物によって有用な産物に代謝され得る5炭素単糖である。キシロース代謝には主に2つの経路が存在し、それぞれ、それらが利用する特徴的な酵素が独特である。1つの経路は、「キシロースレダクターゼ−キシリトールデヒドロゲナーゼ」すなわちXR−XDH経路と呼ばれる。キシロースレダクターゼ(XR)およびキシリトールデヒドロゲナーゼ(XDH)は、キシロース分解のこの方法において使用される2つの主要酵素である。XYL1遺伝子によってコードされるXRは、キシロースからキシリトールへの還元を担い、補因子NADHまたはNADPHによって援助される。次いで、キシリトールは、XYL2遺伝子を介して発現され、補因子NADによってのみ達成されるXDHによって、キシルロースに酸化される。この経路に必要な多様な補因子およびそれらが使用に利用可能である程度のため、不均衡は、キシリトール副産物の過剰産生および所望のエタノールの非効率的産生を生じ得る。XRおよびXDH酵素レベルの多様な発現が、キシロース代謝経路の効率を最適化するための試みとして研究室で試験されている。
【0070】
キシロース代謝の他の経路は、「キシロースイソメラーゼ」(XI)経路と呼ばれる。酵素XIは、キシロースのキシルロースへの直接変換を担い、キシリトール中間体を介して進行しない。両方の経路ともキシルロースを作製するが、利用される酵素は異なる。キシルロースの産生後、XR−XDHおよびXI経路の両方とも、遺伝子XKS1上でコードされる酵素キシルロキナーゼ(XK)を経て進行して、キシルロースをさらにキシルロース−5−Pに改変し、ここで、次いで、それは、さらなる異化のためにペントースリン酸経路に進入する。
【0071】
キシロース代謝中のペントースリン酸経路を介するフラックスに関する研究により、この工程の速度を制限することは、エタノールへの発酵の効率に有益であり得ることが示された。エタノール産生を改善し得るこのフラックスに対する改変として、a)ホスホグルコースイソメラーゼ活性を低下させること、b)GND1遺伝子を欠失すること、およびc)ZWF1遺伝子を欠失することが挙げられる(Jeppsson et al.,2002)。ペントースリン酸経路は、代謝中にさらなるNADPHを生成するため、この工程を制限することは、NAD(P)HとNAD補因子との間の既に明白な不均衡を補正し、キシリトール副産物を減少するのに役立つ。2つのキシロース代謝経路を比較する別の実験は、XI経路が最もキシロースを代謝して、最大のエタノール収量を生じることが可能であった一方、XR−XDH経路は、より速い速度のエタノール産生に到達したことを示した(Karhumaa et al.,2007)。
【0072】
微生物
本発明は、CBPに必要な基質資化および産物形成特性の組合せを伴う微生物の開発のための多数のストラテジーを含む。「天然のセルロース分解ストラテジー」は、天然に存在するセルロース分解微生物を操作して、収量および力価のような産物関連特性を改善することをに関与する。「組み換えセルロース分解ストラテジー」は、高い産物収量および力価を示す天然の非セルロース分解生物を操作して、セルロース資化もしくはヘミセルロース資化または両方を可能にする異種セルラーゼ系を発現させることに関与する。
【0073】
セルロース分解微生物
セルロース分解性であるか、またはセルロース分解活性を有することが文献において報告されたいくらかの微生物が、結晶セルロースならびに他の多様な糖において増殖するそれらの能力を含む多様な手段によって、特徴付けされている。さらに、生物は、セルロースおよびヘミセルロースを脱重合および脱分枝するそれらの能力を含むがそれらに限定されない他の手段によって特徴付けしてもよい。クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)(株DSMZ 1237)を使用して、目的の生物の性能を比較評価した。本明細書において使用するC.サーモセラム(C.thermocellum)は、DSMZ1237、DSMZ1313、DSMZ2360、DSMZ4150、DSMZ7072、およびATCC31924を含むがこれらに限定されない様々な株を含み得る。本発明の特定の実施の形態では、C.サーモセラム(C.thermocellum)の株は、DSMZ1313またはDSMZ1237を含み得るが、これらに限定されない。別の実施の形態では、本発明に使用するために特に適切な目的の生物は、C.サーモセラム(C.thermocellum)に対して70%を超える16S rDNA相同性を伴うセルロース分解微生物を含む。クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)、クロストリジウム・セルロリティカム(Clostridium cellulolyticum)、サーモアナエロバクテリウム・サッカロリティカム(Thermoanaerobacterium saccharolyticum)、C.ステルコラリウム(C.stercorarium)、C.ステルコラリウム(C.stercorarium)II、カルディスセルロシルプター・クリストヤンソニー(Caldiscellulosiruptor kristjanssonii)、C.ファイトファーメンタンス(C.phytofermentans)のアラインメントは、16S rDNA遺伝子のレベルにおいて73〜85%の相同性を示す(図6)。
【0074】
クロストリジウム・ストラミニソルベンス(Clostridium straminisolvens)は、Avicel(登録商標)上でC.サーモセラム(C.thermocellum)とほぼ同様に良好に増殖することが決定された。表1は、所定の高度セルロース分解生物についてまとめている。
【表1】

【0075】
生物を、20g/Lセロビオースまたは20g/LのAvicel(登録商標)上で増殖させた。C.サーモセラム(C.thermocellum)を60℃で増殖させ、C.ストラミニソルベンス(C.straminisolvens)を55℃で増殖させた。両方とも、50mMのMOPSを伴うM122上で、−80℃冷凍ストック(起源DSMZ)からプレ培養した。中期〜後期対数増殖期の間、プレ培養物を使用して、100mL血清瓶中のバッチ培養物を50mLの作業容積に播種した。代謝副産物および糖消費のHPLC分析のために、定期的に液体サンプルを取り出した。これらの各時点で、OD600を測定した。図12Aおよび12Bは、それぞれセロビオースおよびAvicel(登録商標)に対するC.ストラミニソルベンス(C.straminisolvens)の産物形成およびOD600を示す。ODが低下し、産物形成が水平レベルになる48時間前に、実質的セロビオース(37%)が消費された。図13Aおよび13Bは、それぞれセロビオースおよびAvicel(登録商標)に対するC.サーモセラム(C.thermocellum)の産物形成およびOD600を示す。C.サーモセラム(C.thermocellum)は、産物形成が水平レベルになった時点の48時間内に、セロビオースの約60%を消費した。有機酸の形成による阻害は、基質の不完全な資化を生じた。
【0076】
例えば、C.サーモセラム(C.thermocellum)およびC.ストラミニソルベンス(C.straminisolvens)を含む所定の微生物は、D−キシロースまたはL−アラビノースのようなペントース糖を代謝することができないが、ヘキソース糖を代謝することは可能である。D−キシロースおよびL−アラビノースは両方とも、バイオマスにおいて豊富な糖であり、D−キシロースは、軟木および硬木において約16〜20%を占め、L−アラビノースは、トウモロコシ繊維において約25%を占める。従って、本発明の1つの目的は、D−キシロースおよびL−アラビノースのようなペントース糖を代謝し、それによって、バイオマス〜エタノール産業における発酵のための生体触媒としてのそれらの使用を増強する能力を有する遺伝子改変セルロース分解微生物を提供する。
【0077】
セルロース分解およびキシラン分解微生物
セルロース分解性およびキシラン分解性の両方であることが文献から決定されたいくらかの微生物が、結晶セルロースおよびカバキシランならびに他の多様な糖に対して増殖するそれらの能力によって、特徴付けされている。クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)を使用して、目的の生物の性能を比較評価した。特徴付けのために選択した株のうち、クロストリジウム・セルロリティカム(Clostridium cellulolyticum)、クロストリジウム・ステルコラリウムsubs.レプトスパルツム(Clostridium stercorarium subs.leptospartum)、カルディセルロシルプター・クリストヤンソニー(Caldicellulosiruptor kristjanssonii)およびクロストリジウム・ファイトファーメンタンス(Clostridium phytofermentans)が、Avicel(登録商標)上では低度に、カバキシラン上では良好に増殖した。表2は、天然のセルロース分解およびキシラン分解生物のいくつかについてまとめている。
【表2−1】

【表2−2】

【0078】
生物を、20g/Lセロビオース、20g/LのAvicel(登録商標)または5g/Lカバキシラン上で増殖させた。C.セルロリティカム(C.cellulolyticum)を37℃で増殖させ、C.ステルコラリウム・subs.レプトスパルツム(C.stercorarium subs.leptospartum)を60℃で増殖させ、カルディセルロシルプター・クリストヤンソニー(Caldicellulosiruptor kristjanssonii)を75℃で増殖させ、クロストリジウム・ファイトファーメンタンス(Clostridium phytofermentans)を37℃で増殖させた。すべてを、50mMのMOPSを補充したM122cにおいて、−80℃冷凍ストックからプレ培養した。中期〜後期対数増殖期の間、プレ培養物を使用して、100mL血清瓶中のバッチ培養物を50mLの作業容積に播種した。代謝副産物および糖消費のHPLC分析のために、定期的に液体サンプルを取り出した。これらの各時点で、OD600を測定した。図14A〜17Bは、セロビオースおよびAvicel(登録商標)上での増殖の産物形成およびOD600を示す。
【0079】
個別の実験で、セロビオース、グルコース、キシロース、ガラクトース、アラビノース、マンノースおよびラクトースを含む2.5g/Lの単糖ならびに5g/LのAvicel(登録商標)およびカバキシラン上で、生物を増殖させた。図18では、産物形成を、2日後のセロビオースおよびカバキシランにおいて比較している。表3は、細菌株が、それらの基質資化に基づいてどのように分類され得るかについてまとめている。
【表3】

【0080】
微生物のトランスジェニック変換
本発明は、所定の微生物のトランスジェニック変換のための組成物および方法を提供する。例えば、D−キシロースおよび/またはL−アラビノースを含むエタノールの代謝経路に関与する酵素をコードする遺伝子が、これらの遺伝子の1つもしくはそれ以上を欠如する細菌株、例えば、C.サーモセラム(C.thermocellum)またはC.ストラミニソルベンス(C.straminisolvens)に導入される場合、D−キシロース上での増殖またはL−アラビノース上での増殖について、形質転換株を選択し得る。他のクロストリジウム種由来の遺伝子もC.サーモセラム(C.thermocellum)およびC.ストラミニソルベンス(C.straminisolvens)において発現されるはずであることが予想される。標的遺伝子供与体として、ヘキソース糖およびペントース糖を代謝する能力を付与する微生物、例えば、C.セルロリティカム(C.cellulolyticum)、カルディセルロシルプター・クリストヤンソニー(Caldicellulosiruptor kristjanssonii)、C.ファイトファーメンタンス(C.phytofermentans)、C.ステルコラリウム(C.stercorarium)、およびサーモアナエロバクテリウム・サッカロリティカム(Thermoanaerobacterium saccharolyticum)を挙げることができる。
【0081】
T.サッカロリティカム(T.saccharolyticum)、C.セルロリティカム(C.cellulolyticum)、およびC.ファイトファーメンタンス(C.phytofermentans)のゲノムが利用可能である。従って、本発明は、上記の3種の宿主のそれぞれにおけるキシロースイソメラーゼおよびキシルロキナーゼに対応する配列を提供する。特に、T.サッカロリティカム(T.saccharolyticum)由来のキシロースイソメラーゼ(配列番号6)、キシルロキナーゼ(配列番号7)、L−アラビノースイソメラーゼ(配列番号8)、およびL−リブロース−5−リン酸4−エピメラーゼ(配列番号9)に対応する配列を本明細書に記載する。同様に、C.セルロリティカム(C.cellulolyticum)由来のキシロースイソメラーゼ(配列番号10)、キシルロキナーゼ(配列番号11)、L−アラビノースイソメラーゼ(配列番号12)、およびL−リブロース−5−リン酸4−エピメラーゼ(配列番号13)に対応する配列を本明細書に記載する。C.ファイトファーメンタンス(C.phytofermentans)は、D−キシロース経路を利用し、L−アラビノースを資化しない。従って、C.ファイトファーメンタンス(C.phytofermentans)由来のキシロースイソメラーゼ(配列番号14)およびキシルロキナーゼ(配列番号15)に対応する配列を本明細書に記載する。
【0082】
C.クリストヤンソニー(C.kristjanssonii)は、キシロースを代謝する。この目的のために、C.クリストヤンソニー(C.kristjanssonii)のキシロースイソメラーゼ(配列番号71)およびキシルロキナーゼ(配列番号70)遺伝子を配列決定し、本明細書に提供する。C.ストラミニソルベンス(C.straminisolvens)は、キシロース上では増殖しないことが示されているが、しかし、それは、炭素源としてキシロース上での適応後に機能的であり得るキシロースイソメラーゼ(配列番号73)およびキシルロキナーゼ(配列番号72)遺伝子を含有する。
【0083】
C.サーモセラム(C.thermocellum)およびC.ストラミニソルベンス(C.straminisolvens)は、D−キシロースからエタノールへの経路および/またはL−アラビノース資化経路において1つもしくはそれ以上の既知の遺伝子または酵素を欠如し得る。図2および3は、C.サーモセラム(C.thermocellum)におけるこれらの経路のそれぞれにおいて欠落している2つの重要な酵素を示す。C.ストラミニソルベンス(C.straminisolvens)は、キシロースイソメラーゼおよびキシルロキナーゼを有するが、これらの酵素の機能性については知られていない。ゲノムの配列決定では、C.ストラミノソルベンス(C.straminosolvens)のL−アラビノースイソメラーゼまたはL−リブロース−5−リン酸4−エピメラーゼのいずれのコピーも示されていない。
【0084】
C.サーモセラム(C.thermocellum)およびC.ストラミニソルベンス(C.straminisolvens)は、キシルロースを代謝することができないが、これは、D−キシロースをD−キシルロースに変換するキシロースイソメラーゼ(図2では、「XI」または5.3.1.5と称する)、およびD−キシルロースをD−キシルロース−5−リン酸に変換するキシルロキナーゼ(図2では、「XK」または2.7.1.1とも称する)の遺伝子の不在(C.サーモセラム(C.thermocellum))、あるいは活性および/または発現の欠如(C.ストラミンソルベンス(C.straminsolvens))を反映し得る。さらに加えて、キシロースの輸送は、C.ストラミンソルベンス(C.straminsolvens)では制限的であり得る。この潜在的制限は、T.サッカロリティカム(T.saccharolyticum)およびC.クリストヤンソニー(C.kristjanssonii)のようなキシロース資化生物由来の糖輸送遺伝子の発現によって克服され得る。
【0085】
C.サーモセラム(C.thermocellum)およびC.ストラミニソルベンス(C.straminisolvens)はまた、L−アラビノースを代謝することができないが、これは、L−アラビノースイソメラーゼ(図3では、5.3.1.4とも称する)およびL−リブロース−5−リン酸4−エピメラーゼ(図3では、5.1.3.4とも称する)の遺伝子の不在を反映し得る。
【0086】
上記の4つの遺伝子、例えば、キシロースイソメラーゼ、キシルロキナーゼ、L−アラビノースイソメラーゼおよびL−リブロース−5−リン酸4−エピメラーゼは、クロストリジウム・セルロリティカム(Clostridium cellulolyticum)(図4を参照のこと)、サーモアナエロバクテリウム・サッカロリティカム(Thermoanaerobacterium saccharolyticum)、C.ステルコラリウム(C.stercorarium)、カルディスセルロシルプター・クリストヤンソニー(Caldiscellulosiruptor kristjanssonii)、およびC.ファイトファーメンタンス(C.phytofermentans)を含むが、これらに限定されないいくらかのクロストリジウム種およびサーモアナエロバクテリウム・サッカロリティカム(Thermoanaerobacterium saccharolyticum)種に存在し;これらの株は、これらの糖の良好な資化体である。上記の細菌株は、本明細書に記載の遺伝子の供与体として使用され得ることが理解されよう。
【0087】
C.ファイトファーメンタンス(C.phytofermentans)は、上記の2つのキシロース経路遺伝子(キシロースイソメラーゼおよびキシルロキナーゼ)を発現するが、上記のアラビノース経路遺伝子(L−アラビノースイソメラーゼおよびL−リブロース−5−リン酸4−エピメラーゼ)を欠如するかまたは発現しない(図5を参照のこと)。
【0088】
従って、本発明の目的は、例えば、バイオマス由来のペントース、例えば、D−キシロースまたはL−アラビノース代謝からのエタノールの産生に必要な1つもしくはそれ以上の酵素の遺伝子を誘導することによって、糖資化能を最適化するように、上記の細菌株のいくつかを改変することである。トリオースリン酸イソメラーゼ(TPI)、GAPDH、およびLDHのようなC.サーモセラム(C.thermocellum)またはC.ストラミニソルベンス(C.straminisolvens)の天然プロモーターを含むプロモーターを使用して、これらの遺伝子を発現させてもよい。C.サーモセラム(C.thermocellum)の天然プロモーターに対応する配列として、(TPI)(配列番号16)、GAPDH(配列番号17)、およびLDH(配列番号18)が挙げられる。一旦、遺伝子がクローニングされたら、発現の前に、コドン最適化を実施してもよい。次いで、例えば、天然プロモーター、キシラン分解性遺伝子またはアラビノース分解性(arabinolytic)遺伝子、および選択マーカーを含有するカセットを使用して、C.サーモセラム(C.thermocellum)またはC.ストラミニソルベンス(C.straminisolvens)を形質転換し、炭水化物供給源としてD−キシロースまたはL−アラビノースを含有する培地上でのD−キシロースおよびL−アラビノース増殖について選択してもよい。
【0089】
トランスポゾン
宿主に進入した外来DNAを選択するために、DNAが目的の生物において安定に維持されることが好適である。プラスミドに関して、これが生じ得る2つのプロセスが存在する。1つは、複製プラスミドの使用を介する。これらのプラスミドは、宿主に認識され、娘細胞への細胞分裂中に分配される安定的、自律的な染色体外エレメントとしてプラスミドを複製させる複製開始点を有する。第2のプロセスは、プラスミドの染色体への組み込みを介して生じる。これは、主に相同組み換えによって生じ、プラスミド全体またはプラスミドの部分の宿主染色体への挿入を生じる。それ故、プラスミドおよび選択マーカーは、染色体の組み込み片として複製され、娘細胞に分離される。従って、選択マーカーの使用を介して、プラスミドDNAが形質転換事象中に細胞に進入しているかどうかを確かめるには、複製プラスミドの使用またはプラスミドを染色体に組み換える能力が必要である。特に、一式の遺伝子ツールを有さない生物を取り扱う場合、これらのような要件を満たしたものに常に遭遇し得る訳ではない。
【0090】
プラスミド関連マーカーに関する問題を回避するための1つの方法は、トランスポゾンの使用である。トランスポゾンは、トランスポゼースと称する酵素機構によって認識されるモザイクDNA配列によって規定される可動性DNAエレメントである。トランスポゼースの機能は、トランスポゾンDNAを宿主または標的DNAに無作為に挿入することである。標準的な遺伝子操作によって、選択マーカーをトランスポゾンにクローニングすることができる。得られるDNAフラグメントは、インビトロ反応でトランスポゼース機構に結合させることができ、複合体をエレクトロポレーションによって標的細胞に導入することができる。染色体へのマーカーの安定な挿入は、トランスポゼース機構の機能のみを必要とし、相同組み換えまたは複製プラスミドの必要性を軽減する。
【0091】
トランスポゾンの組み込みに関連する無作為性には、変異誘発の形態として作用するという利点が加えられる。トランスポゾン変異の混交を含むラブラリーを作製することができる。これらのライブラリーは、所望される表現型を伴う変異を生成するためのスクリーニングまたは選択に使用することができる。例えば、CBP生物のトランスポゾンライブラリーを、より多くのエタノール、あるいはより少ない乳酸および/またはより少ない酢酸塩を産生する能力についてスクリーニングし得る。
【0092】
天然のセルロース分解ストラテジー
天然に存在するセルロース分解微生物は、天然のストラテジーを介するCBP生物開発のための開始点である。嫌気性菌および通性嫌気性菌は特に興味深い。主な目的は、産業プロセスの要件を満たす産物収量およびエタノール力価を操作することである。これらの目的に関係する混合酸発酵の代謝工学は、中温性の、非セルロース分解腸内細菌の場合では成功している。適切な遺伝子導入技術における最近の開発は、このタイプの研究をセルロース分解細菌によって行うことを可能にしている。
【0093】
組み換えセルロース分解ストラテジー
所望される産物形成特性(例えば、高いエタノール収量および力価)を伴う非セルロース分解微生物は、組み換えセルロース分解ストラテジーによるCBP生物開発のための開始点である。そのような開発の主な目的は、前処置されたリグノセルロースに対する増殖および発酵を可能にする異種セルラーゼ系を操作することである。セルラーゼの異種産生は、主に高収量でエタノールを産生する細菌宿主(大腸菌(E.coli)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、およびザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)の操作された株)ならびに酵母サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)によって実行されている。K.オキシトカ(K.oxytoca)の株におけるセルラーゼ発現は、結晶セルロースでの増大した加水分解収量(但し、セルラーゼの添加を伴わなければ増殖は認められない)、および非結晶セルロースにおける嫌気的増殖を生じた。多数の糖分解酵素がS.セレビシエ(S.cerevisiae)において機能的に発現されているが、そのような発現の結果としてのセルロース上での嫌気的増殖は、最終的に実証されていない。
【0094】
本発明の態様は、天然のセルロース分解ストラテジーを介する改変のための宿主としての好熱性または中温性の微生物の使用に関する。バイオテクノロジーのプロセス用途におけるそれらの可能性は、付随する高い代謝速度、物理的および化学的に安定な酵素の産生、ならびに最終産物の収量の上昇を伴って比較的高い温度で増殖するそれらの能力に起因する。好熱性細菌の主なグループとして、真正細菌および古細菌が挙げられる。好熱性真正細菌として、次のものが挙げられる:光合成細菌、例えば、シアノバクテリア、紅色細菌、および緑色細菌;グラム陽性細菌、例えば、バチルス(Bacillus)、クロストリジウム(Clostridium)、乳酸菌、およびアクチノマイセス;ならびに他の真正細菌、例えば、チオバチルス(Thiobacillus)、スピロヘータ、デスルホトマクルム(Desulfotomaculum)、グラム陰性好気菌、グラム陰性嫌気菌、およびサーモトガ(Thermotoga)。古細菌のうち、メタン生成菌、高度高熱菌(当該分野において認識されている用語)、およびサーモプラズマ(Thermoplasma)が考慮される。特定の実施の形態では、本発明は、サーマス(Thermus)属のグラム陰性有機栄養好熱菌、グラム陽性真正細菌、例えば、クロストリジウム(Clostridium)属に関し、それらはまた、桿菌および球菌の両方、真正細菌の群における属、例えば、サーモシフォ(Thermosipho)およびサーモトガ(Thermotoga)、古細菌の属、例えば、サーモコッカス(Thermococcus)、サーモプロテウス(Thermoproteus)(桿状)、サーモフィラム(Thermofilum)(桿状)、パイロディクティウム(Pyrodictium)、アシディアヌス(Acidianus)、スルホロブス(Sulfolobus)、パイロバキュラム(Pyrobaculum)、パイロコッカス(Pyrococcus)、サーモディスカス(Thermodiscus)、スタフィロサーマス(Staphylothermus)、デスルフロコッカス(Desulfurococcus)、アーキオグロバス(Archaeoglobus)、ならびにメタノピルス(Methanopyrus)を含む。本発明に適切であり得る好熱性または中温性(細菌、原核微生物、および真菌を含む)のいくつかの例として、次のものが挙げられるが、これらに限定されない:クロストリジウム・サーモスルフロゲネス(Clostridium thermosulfurogenes)、クロストリジウム・セルロリティカム(Clostridium cellulolyticum)、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)、クロストリジウム・サーモヒドロスルフリカム(Clostridium thermohydrosulfuricum)、クロストリジウム・サーモアセチカム(Clostridium thermoaceticum)、クロストリジウム・サーモサッカロリティカム(Clostridium thermosaccharolyticum)、クロストリジウム・タルタリボルム(Clostridium tartarivorum)、クロストリジウム・サーモセルラセウム(Clostridium thermocellulaseum)、クロストリジウム・ファイトファーメンタンス(Clostridium phytofermentans)、クロストリジウム・ストラミノソルベンス(Clostridium straminosolvens)、サーモアナエロバクテリウム・サーモサッカロリチクム(Thermoanaerobacterium thermosaccarolyticum)、サーモアナエロバクテリウム・サッカロリティカム(Thermoanaerobacterium saccharolyticum)、サーモバクテロイデス・アセトエチリカス(Thermobacteroides acetoethylicus)、サーモアナエロビウム・ブロッキイ(Thermoanaerobium brockii)、メタノバクテリウム・サーモオートトロフィカム(Methanobacterium thermoautotrophicum)、アネロセルム・サーモフィリウム(Anaerocellum thermophilium)、パイロディクティウム・オカルタム(Pyrodictium occultum)、サーモプロテウス・ニュートロフィラス(Thermoproteus neutrophilus)、サーモフィラム・リブルム(Thermofilum librum)、サーモスリクス・チオパルス(Thermothrix thioparus)、デスルホビブリオ・サーモフィラス(Desulfovibrio thermophilus)、サーモプラズマ・アシドフィラム(Thermoplasma acidophilum)、ヒドロゲノモナス・サーモフィラス(Hydrogenomonas thermophilus)、サーモミクロビウム・ロゼウム(Thermomicrobium roseum)、サーマス・フラバス(Thermus flavas)、サーマス・ルベル(Thermus ruber)、パイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)、サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)、クロロフレクサス・アウランチアクス(Chloroflexus aurantiacus)、サーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)、パイロディクティウム・アビシ(Pyrodictium abyssi)、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)、シアニジウム・カルダリウム(Cyanidium caldarium)、マスティゴクラダス・ラミノサス(Mastigocladus laminosus)、クラミドスリクス・カリジスシマ(Chlamydothrix calidissima)、クラミドスリクス・ペニシラタ(Chlamydothrix penicillata)、チオトリクス・カーネア(Thiothrix carnea)、フォルミディウム・テヌイスシムム(Phormidium tenuissimum)、フォルミディウム・ジェイセリコーラ(Phormidium geysericola)、フォルミディウム・サブテルラネウム(Phormidium subterraneum)、フォルミディウム・ビジャヘンシ(Phormidium bijahensi)、オシラトリア・フィリフォルミス(Oscillatoria filiformis)、シネココッカス・リビダス(Synechococcus lividus)、クロロフレクサス・アウランチアクス(Chloroflexus aurantiacus)、パイロディクティウム・ブロッキイ(Pyrodictium brockii)、硫黄酸化細菌(Thiobacillus thiooxidans)、スルホロブス・アシドカルダリウス(Sulfolobus acidocaldarius)、チオバチルス・タソフィリカ(Thiobacillus thermophilica)、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)、セルコスルサイファー・ハマテンシス(Cercosulcifer hamathensis)、バルカンフィア・レイチ(Vahlkampfia reichi)、サイクリディウム・キトルルス(Cyclidium citrullus)、ダクチィラリア・ガルロパバ(Dactylaria gallopava)、シネココッカス・リビダス(Synechococcus lividus)、シネココッカス・エロンガータス(Synechococcus elongatus)、シネココッカス・ミネルヴァ(Synechococcus minervae)、シネコシスティス・アクアチルス(Synechocystis aquatilus)、アファノカプサ・サーマリス(Aphanocapsa thermalis)、オシラトリア・テレブリホルミス(Oscillatoria terebriformis)、オシラトリア・アンフィビア(Oscillatoria amphibia)、オシラトリア・ゲルミナタ(Oscillatoria germinata)、オシラトリア・オケニイ(Oscillatoria okenii)、フォルミディウム・ラミノスム(Phormidium laminosum)、フォルミディウム・パルパラシエンス(Phormidium parparasiens)、シンプロカ・サーマリス(Symploca thermalis)、バチルス・アシドカルダリアス(Bacillus acidocaldarias)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・サーモカテナラタス(Bacillus thermocatenalatus)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・パミラス(Bacillus pamilas)、バチルス・マセランス(Bacillus macerans)、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バチルス・ラテロスポラス(Bacillus laterosporus)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、枯草菌(Bacillus subtilis)、バチルス・スファエリカス(Bacillus sphaericus)、デスルホトマクルム・ニグリフィカンス(Desulfotomaculum nigrificans)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、ラクトバチルス・サーモフィルス(Lactobacillus thermophilus)、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)、ビフィドバクテリウム・サーモフィルム(Bifidobacterium thermophilum)、ストレプトマイセス・フラグメントスポラス(Streptomyces fragmentosporus)、ストレプトマイセス・サーモニトリフィカンス(Streptomyces thermonitrificans)、ストレプトマイセス・サーモブルガリス(Streptomyces thermovulgaris)、シュードノカルジア・サーモフィラ(Pseudonocardia thermophila)、好熱性放線菌(Thermoactinomyces vulgaris)、サーモアクチノマイセス・サッカリ(Thermoactinomyces sacchari)、サーモアクチノマイセス・カンジダス(Thermoactinomyces candidas)、サーモモノスポラ・カーバタ(Thermomonospora curvata)、サーモモノスポラ・ビリディス(Thermomonospora viridis)、サーモモノスポラ・シトリナ(Thermomonospora citrina)、ミクロビスポラ・サーモディアスタティカ(Microbispora thermodiastatica)、ミクロビスポラ・アエラータ(Microbispora aerata)、ミクロビスポラ・ビスポラ(Microbispora bispora)、アクチノビフィダ・ジコトミカ(Actinobifida dichotomica)、アクチノビフィダ・クロモゲナ(Actinobifida chromogena)、ミクロポリスポーラ・ケシア(Micropolyspora caesia)、ミクロポリスポーラ・フェニィ(Micropolyspora faeni)、ミクロポリスポーラ・セ
チブギダ(Micropolyspora cectivugida)、ミクロポリスポーラ・カブロブルネア(Micropolyspora cabrobrunea)、ミクロポリスポーラ・サーモビリダ(Micropolyspora thermovirida)、ミクロポリスポーラ・ビリジニグラ(Micropolyspora viridinigra)、メタノバクテリウム・サーモオートスロピクム(Methanobacterium thermoautothropicum)、カルディセルロシルプター・アセチゲネス(Caldicellulosiruptor acetigenus)、カルディセルロシルプター・サッカロリティカス(Caldicellulosiruptor saccharolyticus)、カルディセルロシルプター・クリストヤンソニー(Caldicellulosiruptor kristjanssonii)、カルディセルロシルプター・オーウェンセンシス(Caldicellulosiruptor owensensis)、カルディセルロシルプター・ラクトアセティカス(Caldicellulosiruptor lactoaceticus)、それらの変異体、および/またはそれらの子孫。
【0095】
特定の実施の形態では、本発明は、フェルビドバクテリウム・ゴンデワネンス(Fervidobacterium gondwanense)、クロストリジウム・スラルコラリウム(Clostridium thermolacticum)、ムーレラ(Moorella)sp.、およびロドサーマス・マリナス(Rhodothermus marinus)からなる群より選択される好熱性細菌に関する。
【0096】
特定の実施の形態では、本発明は、サーモアナエロバクテリウム(Thermoanaerobacterium)属またはサーモアナエロバクター(Thermoanaerobacter)属の好熱性細菌に関し、次からなる群より選択される種を含むが、これらに限定されない:サーモアナエロバクテリウム・サーモスルフリゲネス(Thermoanaerobacterium thermosulfurigenes)、サーモアナエロバクテリウム・アオテアロエンス(Thermoanaerobacterium aotearoense)、サーモアナエロバクテリウム・ポリサッカロリティカム(Thermoanaerobacterium polysaccharolyticum)、サーモアナエロバクテリウム・ジアエ(Thermoanaerobacterium zeae)、サーモアナエロバクテリウム・キシラノリティカム(Thermoanaerobacterium xylanolyticum)、サーモアナエロバクテリウム・サッカロリティカム(Thermoanaerobacterium saccharolyticum)、サーモアナエロビウム・ブロッキイ(Thermoanaerobium brockii)、サーモアナエロバクテリウム・サーモサッカロリティカム(Thermoanaerobacterium thermosaccharolyticum)、サーモアナエロバクター・サーモヒドロスルフリカス(Thermoanaerobacter thermohydrosulfuricus)、サーモアナエロバクター・エタノリカス(Thermoanaerobacter ethanolicus)、サーモアナエロバクター・ブロッキイ(Thermoanaerobacter brockii)、それらの変異体、およびそれらの子孫。
【0097】
特定の実施の形態では、本発明は、ゲオバチルス(Geobacillus)属、サッカロコッカス(Saccharococcus)属、パエニバチルス(Paenibacillus)属、バチルス(Bacillus)属、およびアノキシバチルス(Anoxybacillus)属の微生物に関し、次からなる群より選択される種を含むが、これらに限定されない:ゲオバチルス・サーモグルコシダシウス(Geobacillus thermoglucosidasius)、ゲオバチルス・ステアロサーモフィラス(Geobacillus stearothermophilus)、サッカロコッカス・カルドキシロシリティクス(Saccharococcus caldoxylosilyticus)、サッカロッカス・サーモフィラス(Saccharoccus thermophilus)、パエニバチルス・キャンピナセンシス(Paenibacillus campinasensis)、バチルス・フラボテルムス(Bacillus flavothermus)、アノキシバチルス・カムチャッカエンシス(Anoxybacillus kamchatkensis)、アノキシバチルス・ゴネンシス(Anoxybacillus gonensis)、それらの変異体、およびそれらの子孫。
【0098】
特定の実施の形態では、本発明は、サッカロファガス・デグラダンス(Saccharophagus degradans);フラボバクテリウム・ジョンソンニエ(Flavobacterium johnsoniae);フィブロバクター・サクシノゲネス(Fibrobacter succinogenes);クロストリジウム・ヒュンゲイテイ(Clostridium hungatei);クロストリジウム・ファイトファーメンタンス(Clostridium phytofermentans);クロストリジウム・セルロリティカム(Clostridium cellulolyticum);クロストリジウム・アルドリチイ(Clostridium aldrichii);クロストリジウム・テルミチディディス(Clostridium termitididis);アセチビブリオ・セルロライチカス(Acetivibrio cellulolyticus);アセチビブリオ・エタノルギグネンス(Acetivibrio ethanolgignens);アセチビブリオ・マルティボランス(Acetivibrio multivorans);バクテロイデス・セルロソルベンス(Bacteroides cellulosolvens);およびアルカリバクター・サッカロホメタンス(Alkalibacter saccharofomentans)、それらの変異体およびそれらの子孫からなる群より選択される中温性の細菌に関する。
【0099】
本発明の方法
解糖中、細胞は、ATPおよびNADHの純産生を伴って、グルコースのような単糖をピルビン酸に変換する。酸化的リン酸化のために機能している電子伝達系がなければ、ピルビン酸の少なくとも95%が、NAD(継続した解糖およびATP生成に必須の要件)を再生する短い経路で消費される。これらのNAD再生系の廃棄生成物を、一般に、発酵生成物と称する。
【0100】
微生物は、乳酸塩(乳酸の塩形態)、酢酸塩(酢酸の塩形態)、コハク酸塩、酪酸塩のような有機酸、ならびにエタノール、ブタノール、アセトン、およびブタンジオールのような中性産物を含む多様な発酵生成物を産生する。発酵の最終産物は、多様な程度で、次を含むいくらかの基本的特徴を共有する:それらは、それらが最初に生成されるときの条件下では比較的非毒性であるが、蓄積により毒性になること;およびそれらの中間前駆体が、解糖中に末端電子受容体としての役割を果たしたため、それらは、ピルビン酸よりも還元されること。本発明の態様は、リグノセルロース系バイオマス基質からのエタノールの産生において有用な新規の微生物を提供するための遺伝子ノックアウト技術の使用に関する。本明細書に記載の有機酸への非制限的経路のような競合経路をコードする1つもしくはそれ以上の遺伝子を欠失または不活化すること、場合により、それに続く、発酵生成物としてエタノールを産生する改善された性能を伴う変異体の増殖に基づく選択によって、形質転換生物が調製される。
【0101】
特定の実施の形態では、微生物に、発酵生成物として乳酸を産生する能力を付与する少なくとも1つの遺伝子を天然状態で含有する好熱性または中温性の微生物を、形質転換して、前記少なくとも1つの遺伝子の発現を減少または排除する。前記微生物に、発酵生成物として乳酸を産生する能力を付与する遺伝子は、乳酸デヒドロゲナーゼの発現をコードし得る。LDHの発現をコードする遺伝子または特定のポリヌクレオチド配列の欠失もしくは抑制は、全体的解糖経路における反応スキームを低減または排除し、それによって、ピルビン酸塩は乳酸に変換され;解糖のこれらの第1段階からのピルビン酸塩の得られる相対量は、エタノールの増産を可能にするものであろう。
【0102】
特定の実施の形態では、微生物に発酵生成物として酢酸を産生する能力を付与する少なくとも1つの遺伝子を天然状態で含有する好熱性または中温性の微生物を、形質転換して、前記少なくとも1つの遺伝子の発現を減少または排除する。微生物に、発酵生成物として酢酸を産生する能力を付与する遺伝子は、酢酸キナーゼおよび/またはホスホトランスアセチラーゼの発現をコードし得る。ACKおよび/またはPTAの発現をコードする遺伝子または特定のポリヌクレオチド配列の欠失もしくは抑制は、全体的解糖経路における反応スキームを低減または排除し、それによって、アセチルCoAは酢酸に変換され(図1);解糖のこれらの後者の段階からのアセチルCoAの得られる相対量は、エタノールの増産を可能にするものであろう。
【0103】
特定の実施の形態では、上記で詳述した遺伝子ノックアウトスキームは、個々にまたは協力して、適用することができる。乳酸塩の産生の機構を排除すること(即ち、LDHの発現をコードする遺伝子または特定のポリヌクレオチド配列をノックアウトすること)により、さらに多くのアセチルCoAが生じ;酢酸塩の産生の機構もまた排除される(即ち、ACKおよび/またはPTAの発現をコードする遺伝子または特にポリヌクレオチド配列をノックアウトすること)場合、アセチルCoAの存在量はさらに増強され、エタノールの増産を生じるはずであるということになる。
【0104】
特定の実施の形態では、好熱性または中温性の微生物が、天然もしくは内因性のPDCまたはADHを有することは必要ではない。特定の実施の形態では、PDCおよび/またはADHをコードする遺伝子は、本発明の遺伝子改変微生物において、組み換え的に発現させることができる。特定の実施の形態では、本発明の遺伝子ノックアウト技術は、PDCおよび/またはADHをコードする異種遺伝子を含み得る組み換え微生物に適用することができ、ここで、前記異種遺伝子は、発酵生成物としてエタノールを産生する前記組み換え微生物(好熱性であり得る)の能力を増大させるか、または前記組み換え微生物(好熱性であり得る)に、発酵生成物としてエタノールを産生する能力を付与するのに十分なレベルで、発現される。
【0105】
特定の実施の形態では、本発明の態様は、セルロース含有量もしくはヘミセルロース含有量または両方に基づく理論的収量の少なくとも70%である濃度でエタノールを産生するためのリグノセルロース基質の発酵に関する。
【0106】
特定の実施の形態では、本発明の態様は、セルロース含有量もしくはヘミセルロース含有量または両方に基づく理論的収量の少なくとも80%である濃度でエタノールを産生するためのリグノセルロース基質の発酵に関する。
【0107】
特定の実施の形態では、本発明の態様は、セルロース含有量もしくはヘミセルロース含有量または両方に基づく理論的収量の少なくとも90%である濃度でエタノールを産生するためのリグノセルロース基質の発酵に関する。
【0108】
特定の実施の形態では、自然状態の微生物からの有機酸産生の実質的または完全な排除は、1つもしくはそれ以上の部位特異的DNA相同組み換え事象を使用して、達成され得る。
【0109】
好熱性の温度において、同時糖化および同時発酵(SSCF)またはCBPプロセスのいずれかを操作することは、30〜37℃の従来の中温性の発酵温度を超えるいくらかの重要な有益性を提供する。特に、セルラーゼ産生に専用のプロセス工程のコストは、好熱性のSSCFでは実質的に減少し(例えば、2倍もしくはそれ以上)、CBPでは排除される。発酵槽の冷却、ならびにまた発酵の前および後の熱交換に関与するコストもまた、好熱性のSSCFおよびCBPの両方で減少することが予想される。最終的に、好熱性の生体触媒を特徴とするプロセスは、従来の中温性の生体触媒を特徴とするプロセスと比較して、微生物の混入を受け難くあり得る。
【0110】
炭素フローへの改変によって電子フローを再指向する能力は、広範な影響を有する。例えば、このアプローチは、T.サッカロリティカム(T.saccharolyticum)以外の株において高いエタノール収量を生じるため、および/またはエタノール以外の溶媒、例えば、高級アルコール(即ち、ブタノール)を産生するために、使用し得る。
【0111】
アンチセンスオリゴヌクレオチド(asRNA)ストラテジーを介する代謝工学
酵母および嫌気性菌のような発酵微生物は、糖を発酵してエタノールおよび他の還元された有機最終産物を生じる。理論的に、乳酸塩および酢酸塩のような競合する最終産物の発酵を抑制することができる場合、炭素フローを、エタノール産生に指向することができる。本発明は、本発明のCBP生物におけるそのような競合経路を取り除くように設計されたいくらかの遺伝子操作アプローチを提供する。これらのアプローチの大部分は、(単一交差組み換えのための)ノックアウト構築物または(二重交差組み換えのための)対立遺伝子交換構築物を利用し、ackおよびldhの遺伝子座を標的にする。これらのツールは、「立証済みの」株開発技術を用いるが、なお展開し得る次のいくらかの潜在的問題が存在する:(i)それらは、すべての場合において、CBP生物について未知である宿主組み換え効率に依存すること;(ii)それらを使用して、一度にただ1つの経路しかノックアウトすることができず、そのため、いくらかの選択マーカーまたはリサイクル可能マーカーを有するときに、連続的な遺伝子の変更が義務となること;(iii)標的遺伝子の欠失は、毒性であるか、または下流の遺伝子発現に対して極性効果を及ぼし得ること。
【0112】
本発明は、宿主の組み換え効率によらない遺伝子操作に対するさらなるアプローチを提供する。これらの代替的ツールの1つは、アンチセンスRNA(asRNA)と呼ばれる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、インビトロおよびインビボの両方において遺伝子発現レベルを抑制するために25年を超えて使用されているが、mRNA構造予測における最近の進歩は、asRNA分子の高性能の設計を容易にしている。これらの進歩は、多くのグループが、細菌の代謝工学におけるasRNAの有用性を実証することを促進した。
【0113】
ノックアウトおよび対立遺伝子交換技術に代わりasRNAを使用する有益性は多数ある:(i)単一のasRNA構築物によって多数の経路を標的にすることができるため、多数の選択マーカーの必要性が軽減されること;(ii)asRNA間の会合比を増加または減少することによって、標的mRNAの減衰レベルを調整することができること;(iii)条件プロモーターによってasRNA転写物を駆動する場合、経路不活化は条件付であり得ること。最近、この技術は、グラム陽性中温細菌、クロストリジウム・アセトブチリクム(Clostridium acetobutylicum)におけるソルベント生成能を増大するために使用されている(Tummala et al.(2003))。asRNAがどのようにして遺伝子発現を減衰するかという正確な分子機構は不明であるが、asRNAの標的mRNAへのハイブリダイゼーション時に、同様の機構が誘発される。機構は、次の1つもしくはそれ以上を含むことができる:(i)リボゾーム結合部位がリボソームと適切に相互作用することを阻止することによる、mRNAのタンパク質への翻訳の阻害、(ii)二本鎖RNAを迅速に分解するRNaseHのようなdsRNA依存性RNaseを介してmRNAの半減期を減少すること、および(iii)mRNAの早期転写終結による転写の阻害。
【0114】
アンチセンス配列の設計
asRNAは、典型的に、18〜25ヌクレオチド長である。asRNA配列を選択するために使用し得るRNA標的化核酸の合理的な設計に利用可能ないくらかの計算ツール(Sfold,Integrated DNA Technologies,STZ Nucleic Acid Design)が存在する。例えば、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)ack(酢酸キナーゼ)の遺伝子配列を、合理的な設計サーバーに供することができ、いくらかのasRNA配列を選別することができる。簡単に説明すると、設計パラメータは、推測される二次構造を含有しないmRNA標的配列を選択する。
【0115】
送達ベクターの設計
複製プラスミドは、asRNAコーディング配列を標的生物に送達するために使用される。限定されないが、pNW33N、pJIR418、pJIR751、およびpCTC1のようなベクターは、宿主細胞の内部へのasRNAコーディング配列の送達のためのasRNA構築物の骨格を形成する。染色体外(プラスミドに基づく)発現に加えて、異種遺伝子座において、asRNAを微生物のゲノムに安定的に挿入して、asRNAの安定な発現を得てもよい。特定の実施の形態では、目的の好熱性または中温性の微生物の株を、部位特異的相同組み換えによって操作して、有機酸の産生をノックアウトし、asRNAによって、目的の他の遺伝子を、部分的、実質的、もしくは完全に欠失、サイレンシング、不活化、またはダウンレギュレートしてもよい。
【0116】
プロモーターの選択
asRNA転写物の発現を確実にするため、所与の宿主について比較可能なプロモーターは、asRNAコーディング配列に融合される。プロモーター−asRNAカセットは、単一のPCR工程で構築される。プロモーター領域を増幅するために設計されたセンスおよびアンチセンスプライマーは、asRNA配列(合理的な設計アプローチから選別された)がアンチセンスプライマーの5’末端に付着されるように、改変される。さらに、EcoRIまたはBamHIのような制限部位は、最終PCR増幅が制限酵素によって直接消化され、従来のクローニング技術によってベクター骨格に挿入され得るように、各プライマーの末端部に付加される。
【0117】
本明細書に記載のように、ペントース糖を代謝する能力を有さないが、ヘキソース糖を代謝することが可能な微生物に関して、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)およびクロストリジウム・ストラミニソルベンス(Clostridium straminisolvens)のackおよびldh遺伝子は、例えば、本明細書に記載の方法に従い、アンチセンスRNAを使用して、不活化のために標的化され得ることが理解されよう。
【0118】
本明細書に記載のように、ペントース糖およびヘキソース糖を代謝する能力を付与する微生物に関して、クロストリジウム・セルロリティカム(Clostridium cellulolyticum)、クロストリジウム・ファイトファーメンタンス(Clostridium phytofermentans)およびカルディセルロシルプター・クリストヤンソニー(Caldicellulosiruptor kristjanssonii)のackおよびldh遺伝子は、例えば、本明細書に記載の方法に従い、アンチセンスを使用して、不活化のために標的化され得ることが理解されよう。
【0119】
asRNA送達ベクターを発現する株の抗生物質選択に加えて、そのような株を、フルオロ酢酸ナトリウム(SFA)、ブロモ酢酸(BAA)、クロロ酢酸(CAA)、5−フルオロオロチン酸(5−FOA)およびクロロ乳酸のようないくらかの毒性の代謝物類似体のいずれかを含有する条件培地上で選択してもよい。エタンスルホン酸メチル(EMS)を含むが、これに限らない化学変異剤の使用は、1つもしくはそれ以上の遺伝子が部分的、実質的、もしくは完全に欠失、サイレンシング、不活化、またはダウンレギュレートされた株を作製するために、アンチセンスオリゴヌクレオチド(asRNA)の発現との組合せで使用され得る。
【実施例】
【0120】
本発明についての概要を述べてきたが、単に、本発明の特定の態様および実施の形態の単なる例証の目的で含まれ、本発明を制限することを意図されていない、以下の実施例を参照することによって、さらに容易に理解されるであろう。
【0121】
実施例1
中温性および好熱性セルロース分解、キシラン分解生物のカスタムトランスポゾンの作製
本発明は、セルロース分解および/またはキシラン分解および/または好熱性の生物のカスタムトランスポゾン(custom transposon)を作製するための方法を提供する。これを行うために、宿主生物由来の天然プロモーターは、この生物において機能することが判明している選択マーカーに融合される。このフラグメントは、ベクターpMOD(商標)−2<MCS>(Epicenter(登録商標)Biotechnologies社製)上に担持されるEZ−Tn5(商標)トランスポゾンにクローニングされる。例えば、C.サーモセラム(C.thermocellum)gapDHプロモーターが、mLs薬物マーカー、ならびにcat遺伝子に融合され、次いで、ベクターpMOD(商標)−2<MCS>にサブクローニングされる。
【0122】
市販のトランスポゾンは、耐熱性薬物マーカー、ならびにセルロース分解および/またはキシラン分解および/または好熱性生物の天然プロモーターを欠いている。mLsおよびcatマーカーは、好熱性細菌において機能化されており、gapDHプロモーターは重要な解糖系酵素を調節し、一定に発現されるはずである。上記の薬物マーカーおよびgapDHプロモーターの組合せは、機能的トランスポゾンを作製する確率をかなり増大させる。このアプローチは、他のセルロース分解および/またはキシラン分解および/または好熱性生物に適用することができる。
【0123】
実験デザイン
図26は、Epicenter(登録商標)Biotechnologies社のユーザマニュアル(参照により本明細書に援用される)から転用した図であり、pMOD(商標)−2<MCS>のbp250〜550を表す。上部において、MEと表示された黒色矢じりは、トランスポゾンを規定している19bpのモザイク端部を示す。EcoRIおよびHindIII部位は、MCSと表示された黒色ボックスによって表されるマルチクローニング部位を規定している。下部には、MCSに関連するDNA配列および制限酵素を示す。
【0124】
次のプライマーは、pMQ87−gapDH−catおよびpMQ87−gapDH−mlsからプロモーター融合フラグメントを増幅するために使用される:GGCGgaattc CTT GGT CTG ACA ATC GAT GC(配列番号19);GGCGgaattc TATCAGTTATTACCCACTTTTCG(配列番号20)。小文字は、操作されたEcoRI制限部位を示す。作製されたアンプリコンのサイズは、約1.9kbである。標準的な分子手順により、アンプリコンがEcoRIによって消化され、pMOD(商標)−2<MCS>の独特なEcoRI部位にクローニングされる。製造者によって記載のように、トランスポゾンおよび以後のトランスポソソームが作製され、宿主生物に導入される。
【0125】
実施例2
セルロース分解株およびキシラン分解株を操作するための構築物
本発明は、炭素フローをエタノールから他へ転換する代謝経路の重要な酵素をコードする遺伝子を変異させることによって、目的の生物を遺伝子操作してCBPにするための組成物および方法を提供する。単一交差ノックアウト構築物は、外来DNAの大きなフラグメントを目的の遺伝子に挿入して、それを、部分的、実質的、もしくは完全に欠失、サイレンシング、不活化、またはダウンレギュレートするように、設計される。二重交差ノックアウト構築物は、染色体由来の目的の遺伝子を部分的、実質的、もしくは完全に欠失、サイレンシング、不活化、またはダウンレギュレートするか、あるいは染色体上の目的の遺伝子を、抗生物質耐性カセットによって妨害された遺伝子の形態のような遺伝子の変異されたコピーと置き換えるように、設計される。
【0126】
単一交差ノックアウトベクターの設計は、目的の遺伝子の内部フラグメントのプラスミドに基づく系へのクローニングを必要とする。理想的には、このベクターは、宿主株において発現されるが、宿主株において複製しない選択マーカーを担持する。それ故、宿主株への導入時に、プラスミドは複製されない。プラスミド上に担持されたマーカーについて選択する条件培地に細胞が置かれる場合、プラスミドを維持する方法を見出したそれらの細胞のみが増殖する。プラスミドは、自律的DNAエレメントとして複製することができないため、プラスミドが維持される最も可能性のある方法は、宿主染色体への組み換えを介する。最も組み換えが生じる可能性のある場所は、プラスミドと宿主染色体との間の相同性の領域である。
【0127】
あるいは、複製型プラスミドを使用して、単一交差妨害(single crossover interruptions)を作製することができる。ノックアウトベクターを取り込んだ細胞を条件培地上で選択し、次いで、選択の非存在下で継代培養することができる。条件培地によって提供されるポジティブ選択がない場合、多くの生物がプラスミドを消失する。プラスミドが宿主染色体に挿入される場合、それは、選択の非存在下では消失しない。次いで、細胞を条件培地に戻すことができ、染色体組込みを介してマーカーを保持した細胞のみが増殖する。PCRに基づく方法は、染色体に局在するマーカーを含有する生物についてスクリーニングするように工夫される。
【0128】
二重交差ノックアウトベクターの設計は、少なくとも、目的の遺伝子にフランキングするDNA(約1kb)をプラスミドにクローニングすることを必要とし、場合によって、目的の遺伝子をクローニングすることを含んでもよい。選択マーカーはフランキングDNAの間に置いてもよく、または目的の遺伝子がクローニングされる場合、マーカーは、遺伝子に関して、内部に置かれる。理想的には、使用したプラスミドは、宿主株において複製することができない。プラスミドの宿主への導入およびマーカーに対して条件付けられた培地上での選択時、相同DNAを染色体上に組み換えた細胞のみが増殖する。2つの組み換え事象は、目的の遺伝子を選択マーカーと置き換えるのに必要である。
【0129】
あるいは、複製性プラスミドを使用して、二重交差遺伝子置換を作製することができる。ノックアウトベクターを取り込んだ細胞を条件培地上で選択し、次いで、選択の非存在下で継代培養することができる。条件培地によって提供されるポジティブ選択がない場合、多くの生物がプラスミドを消失する。薬物マーカーが宿主染色体に挿入される場合、それは、選択の非存在下では消失しない。次いで、細胞を条件培地に戻すことができ、染色体組み込みを介してマーカーを保持した細胞のみが増殖する。PCRに基づく方法は、染色体に局在するマーカーを含有する生物についてスクリーニングするように工夫され得る。
【0130】
抗生物質選択スキームに加えて、フルオロ酢酸ナトリウム(SFA)、ブロモ酢酸(BAA)、クロロ酢酸(CAA)、5−フルオロオロチン酸(5−FOA)およびクロロ乳酸のようないくらかの毒性の代謝物類似体を使用して、相同組み換え、またはトランスポゾンに基づくストラテジーのいずれかから生じる変異体を選択してもよい。エタンスルホン酸メチル(EMS)を含むが、これに限らない化学変異剤の使用は、相同組み換えを用いる特異的変異誘発スキーム、またはトランスポゾンに基づくストラテジーと組み合わせて、使用してもよい。
【0131】
C.セルロリティカム(C.cellulolyticum)ノックアウト構築物
酢酸キナーゼ(ゲノムが公開されたC.セルロリティカム(C.cellulolyticum)由来の遺伝子131):
単一交差
C.セルロリティカム(C.cellulolyticum)の酢酸キナーゼ遺伝子は、1,110bp長である。ヌクレオチド91〜752にわたる662bp内部フラグメント(配列番号21)を、PCRによって増幅し、自殺ベクター、および異なる選択マーカーを有する複製型ベクターにクローニングした。選択マーカーは、エリスロマイシンおよびクロラムフェニコール耐性を提供するものを含んでもよい。これらのプラスミドは、ack遺伝子を破壊するために使用される。ack遺伝子の地図および遺伝子破壊のためにPCRによって増幅された領域を、図19に示す。下記の配列番号21の下線を付した部分は、ノックアウトフラグメントにフランキングするEcoRI部位である部位に対応する。
【0132】

これらの部位は、「ack KOプライマー」の設計中に操作したが、これは、フラグメントの多数のベクターへの以後のクローニングを可能にする。
【0133】
二重交差
C.セルロリティカム(C.cellulolyticum)のack遺伝子の二重交差ベクターを構築するために、ack遺伝子の各側にフランキングする約1kbのDNAがクローニングされる。選択マーカーは、フランキングDNA間に挿入される。選択マーカーは、エリスロマイシンおよびクロラムフェニコール耐性を提供するものを含んでもよい。ack遺伝子の3’フランキング領域は、利用可能なドラフトゲノムにおいて利用可能ではない。このDNAを獲得するために、Clontech製のGenomeWalkerのようなキットが使用される。
【0134】
乳酸デヒドロゲナーゼ(ゲノムが公開されたC.セルロリティカム(C.cellulolyticum)の遺伝子2262および2744):
単一交差
C.セルロリティカム(C.cellulolyticum)のldh遺伝子は、(遺伝子2262では)951bp(配列番号22)および(遺伝子2744では)932bp(配列番号23)長である。各遺伝子の5’末端付近の約500bp内部フラグメントは、PCRによって増幅され、自殺ベクター、および異なる選択マーカーを有する複製型ベクターにクローニングされる。選択マーカーは、エリスロマイシンおよびクロラムフェニコールのような薬剤耐性を提供するものを含んでもよい。これらのプラスミドは、ldh2262およびldh2744遺伝子を破壊するために使用される。例として、ldh2262遺伝子の地図および遺伝子破壊のためにPCRによって増幅された領域を、図20に示す。
【0135】
二重交差
C.セルロリティカム(C.cellulolyticum)のldh遺伝子の二重交差ノックアウトベクターを構築するために、ldh遺伝子の各側にフランキングする約1kbのDNAがクローニングされる。選択マーカーは、フランキングDNA間に挿入される。選択マーカーは、エリスロマイシンおよびクロラムフェニコールのような薬剤耐性を提供するものを含んでもよい。図21は、C.セルロリティカム(C.cellulolyticum)ldh(2262)二重交差ノックアウトフラグメントの一例を提供する。
【0136】
下記の配列(配列番号24)では、mLs遺伝子(選択マーカー)に下線を付しており、フランキングDNAは、残りの配列である。プライマーの設計中、制限部位が操作され、上記のフラグメントの5’および3’末端は、それが多くの複製および非複製ベクターにクローニングすることができるようにされる。同じストラテジーが、ベクターを作製して、ldh2744を欠失するために使用される。
【0137】

【0138】
C.ファイトファーメンタンス(C.phytofermentans)ノックアウト構築物
酢酸キナーゼ(ゲノムが公開されたC.ファイトファーメンタンス(C.phytofermentans)由来の遺伝子327)について:
単一交差
C.ファイトファーメンタンス(C.phytofermentans)の酢酸キナーゼ遺伝子は、1,244bp長である。ヌクレオチド55〜626にわたる572bp内部フラグメントを、PCRによって増幅し、自殺ベクター、および異なる選択マーカーを有する複製型ベクターにクローニングする。使用するための選択マーカーは、薬剤耐性をC.ファイトファーメンタンス(C.phytofermentans)に提供するものを含む。これらのプラスミドは、ack遺伝子を破壊するために使用される。ack遺伝子の地図および遺伝子破壊のためにPCRによって増幅された領域を、図22に示す。制限部位は、「ack KOプライマー」の設計中に操作され、フラグメントの多数のベクターへの以後のクローニングを可能にする。上記のノックアウトフラグメントの配列は、配列番号25に記載されている。
【0139】
二重交差
C.ファイトファーメンタンス(C.phytofermentans)のack遺伝子の二重交差ノックアウトベクターを構築するために、ack遺伝子の各側にフランキングする約1kbのDNAがクローニングされる。選択マーカーは、フランキングDNA間に挿入される。使用するための選択マーカーは、薬剤耐性をこの株に提供するものを含む。推定選択マーカーとしてmLs遺伝子を伴う推定二重交差ノックアウト構築物の一例を、図23に示す。
【0140】
図23に示すフラグメントに対応する配列(配列番号26)を、下記に示す。mLs遺伝子(推定選択マーカー)に下線を付し、配列の残りの部分はフランキングDNAに対応する。プライマーの設計中、制限部位が操作され、上記のフラグメントの5’および3’末端は、それが多くの複製および非複製ベクターにクローニングすることができるようにされる。
【0141】

【0142】
乳酸デヒドロゲナーゼ(ゲノムが公開されたC.ファイトファーメンタンス(C.phytofermentans)の遺伝子1389および2971)について:
単一交差
C.ファイトファーメンタンス(C.phytofermentans)のldh遺伝子は、(遺伝子1389では)978bp(配列番号27)および(遺伝子2971では)960bp(配列番号28)長である。各遺伝子の5’末端付近の約500bp内部フラグメントは、PCRによって増幅され、自殺ベクター、および異なる選択マーカーを有する複製型ベクターにクローニングされる。使用する選択マーカーは、薬剤耐性を提供するものを含む。これらのプラスミドは、ldh1389およびldh2971遺伝子を破壊するために使用される。例として、ldh1389遺伝子の地図および遺伝子破壊のためにPCRによって増幅された領域を、図24に示す。
【0143】
二重交差
C.ファイトファーメンタンス(C.phytofermentans)のldh遺伝子の二重交差ノックアウトベクターを構築するために、ldh遺伝子の各側にフランキングする約1kbのDNAがクローニングされる。選択マーカーは、フランキングDNA間に挿入される。使用する選択マーカーは、薬剤耐性をこの株に提供するものを含む。推定選択マーカーとしてmLs遺伝子を伴う推定二重交差ノックアウト構築物の一例を、図25に示す。
【0144】
図25に示すフラグメントに対応する配列を、配列番号29として下記に示す。mLs遺伝子(推定選択マーカー)に下線を付し、配列の残りの部分はフランキングDNAに対応する。プライマーの設計中、制限部位が操作され、上記のフラグメントの5’および3’末端は、それが多くの複製および非複製ベクターにクローニングすることができるようにされる。同じストラテジーが、ベクターを作製して、ldh2971を欠失するために使用される。
【0145】

【0146】
Cald.クリストヤンソニー(Cald.kristjanssonii)およびC.ステルコラリウムsubsレプトスパルツム(C.stercorarium subs.leptospartum)
本発明者らの知る限り、上記の生物のゲノム配列決定は行われておらず、それが行われている場合、それは、公的に利用可能にされていない。本発明者らの実験結果に基づいて、生物は、セルロース分解性およびキシラン分解性である。これらの生物由来の重要な代謝酵素をコードする遺伝子のDNA配列は、それらを遺伝子操作し、炭素フローをエタノールへ転換するために、必要である。これらは、酢酸キナーゼおよび乳酸デヒドロゲナーゼのような酵素を含む。これらの遺伝子の配列を得るために、これらの生物のゲノムが配列決定される。
【0147】
ゲノム配列へのアクセスにより、上記の酵素の保存された性質を使用して、コードする遺伝子およびフランキングDNAを見出すことができる。これらの配列は、単一および二重交差ストラテジーを用いて、標的化された変異誘発のための構築物を設計するために、使用される。これらのストラテジーは、上記のストラテジーと同一である。本発明者らはまた、これらの生物において選択マーカーとしてどの抗生物質を使用することができるか、および形質転換のためのプロトコルはどれが最も良好に作動するかについて決定する。
【0148】
実施例3
C.セルロリティカム(C.cellulolyticum)の形質転換
細胞を、4g/lセロビオースを伴う50mLのGS培地において、0.8のODまで、嫌気的条件で、増殖させ、34℃でインキュベートした。回収後、それらを、500mMスクロースおよび5mMのMOPSを含有する、7に調整されたpHを伴う等容積の洗浄緩衝液で3回、洗浄した。最後の洗浄後、細胞ペレットを、等容積の洗浄緩衝液に再懸濁した。細胞懸濁液の10μlのアリコートを、1mmの電極間距離を伴う標準的なエレクトロポレーションキュベットに置いた。1μlのプラスミドDNAを添加した。プラスミドDNAの濃度を調整して、プラスミド対細胞の1:1〜10:1モル比の間を確実にした。5msパルスを、サンプルを横切る7kV/cmの電界強度(測定値)を伴って、適用した。カスタムパルスジェネレータを使用した。サンプルを、最初の培養において使用した同じ培地で、直ちに1000:1に希釈し、増殖が回復するまで回収を許容し、ODの増加を介して決定した(24〜48時間)。回収したサンプルを、50:1に希釈し、15μg/mLエリスロマイシンまたは15μg/mLクロラムフェニコールのいずれかを伴う選択培地に置き、5〜6日間、増殖させた。選択培地において増殖を示すサンプルを試験して、それらが事実上C.セルロリティカム(C.cellulolyticum)であったこと、およびそれらがプラスミドを有したことを確認した。
【0149】
実施例4
セルロース分解株を操作するための構築物
セルロースは、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)を伴う発酵による燃料エタノールの作製のための基質として潜在的に使用することができるバイオマスの主な成分の1つである。しかし、このプロセスでは、かなりのエネルギーおよび炭素源が、副産物の酢酸塩および乳酸塩を形成するために使用される。セルロース資化クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)の代謝経路の操作は、乳酸塩および酢酸塩産生を最小限にし、エネルギーおよび炭素フローを、エタノール形成に好適にするのに必要である。
【0150】
酢酸キナーゼは、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)において酢酸塩を形成するためにセルロース資化の代謝経路において重要な酵素であり、これは、ack遺伝子によってコードされる。ack遺伝子の不活化は、酢酸キナーゼを妨害し得、酢酸塩の減少または排除をもたらす。
【0151】
乳酸デヒドロゲナーゼは、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)において乳酸塩を形成するためにセルロース資化の代謝経路において重要な酵素であり、これは、ldh遺伝子によってコードされる。ldh遺伝子の不活化は、乳酸デヒドロゲナーゼを妨害し得、乳酸塩作製の減少または排除をもたらす。
【0152】
プラスミドpIKM1に基づくC.サーモセラム(C.thermocellum)におけるack遺伝子の不活化
ack遺伝子をノックアウトするために、プラスミドpIKM1のマルチクローニング部位(MCS)に対してベクターを構築し、ここで、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼをコードするcat遺伝子が、ack遺伝子およびpta遺伝子(ホスホトランスアセチラーゼをコードする)に関与する3055bpのDNAフラグメントに挿入され、476bpのack遺伝子および399bpのpta遺伝子のノックアウトをもたらし、mLs遺伝子の両側において、それぞれ1025bpおよび1048bpのフランキング領域を形成する(図7)。pNW33Nは、pBC1レプリコンを含有し、これは、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)から単離され、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)を含む細菌のグラム陽性株において安定に複製されることが予想される。プラスミドpIKM1上において構築されたackノックアウトベクターの配列を、配列番号1に記載する。
【0153】
反復プラスミドpNW33Nに基づくC.サーモセラム(C.thermocellum)におけるack遺伝子の不活化
ack遺伝子をノックアウトするために、複製プラスミドpNW33Nのマルチクローニング部位(MCS)に対してベクターを構築し、ここで、マクロライド、リンコサミド、およびストレプトグラミンB(MLS)耐性遺伝子mLsが、ack遺伝子、pta遺伝子(ホスホトランスアセチラーゼをコードする)および不明な上流遺伝子を含む3345bpのDNAフラグメントに挿入され、855bpのack遺伝子のノックアウト、ならびにmLs遺伝子の両方の側における1195bpおよび1301bpのフランキング領域の形成をもたらす(図8)。pNW33Nは、pBC1レプリコンを含有し、これは、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)から単離され、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)を含む細菌のグラム陽性株において安定に複製されることが予想される。プラスミドpNW33N上において構築されたackノックアウトベクターの配列を、配列番号2に記載する。
【0154】
プラスミドpIKM1に基づくC.サーモセラム(C.thermocellum)におけるldh遺伝子の不活化
ldh遺伝子をノックアウトするために、プラスミドpIKM1のマルチクローニング部位(MCS)に対してベクターを構築し、ここで、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼをコードするcat遺伝子が、ldhおよびmdh遺伝子(リンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする)に関与する3188bpのDNAフラグメントに挿入され、1171bpのDNAフラグメントのノックアウトをもたらし、mLs遺伝子の両側において、それぞれ894bpおよび1123bpのフランキング領域を形成する(図9)。プラスミドpIKM1上において構築されたldhノックアウトベクターの配列を、配列番号3に記載する。
【0155】
プラスミドpNW33Nに基づくC.サーモセラム(C.thermocellum)におけるldh遺伝子の不活化
ldh遺伝子をノックアウトするために、複製プラスミドpNW33Nのマルチクローニング部位(MCS)に対してベクターを構築し、ここで、マクロライド、リンコサミド、およびストレプトグラミンB(MLS)耐性遺伝子mLsが、ldh遺伝子およびmdh遺伝子(リンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする)を含む2523bpのDNAフラグメントに挿入され、ldh遺伝子の489bpのフラグメントのノックアウト、ならびにmLs遺伝子の両方の側における1034bpおよび1000bpのフランキング領域の形成をもたらす(図10)。pNW33Nは、pBC1レプリコンを含有し、これは、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)から単離され、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)を含む細菌の他のグラム陽性株において安定に複製されることが予想される。プラスミドpNW33N上において構築されたldhノックアウトベクターの配列を、配列番号4に記載する。
【0156】
プラスミドpUC19に基づくクロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)におけるldh遺伝子の不活化
ldh遺伝子をノックアウトするために、pUC19プラスミドのマルチクローニング部位(MCS)に対してベクターを構築し、ここで、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(cat遺伝子)をクローニングする遺伝子が、717bpのldh遺伝子フラグメントに挿入され、cat遺伝子の両方の側に245bpおよび255bpのフランキング領域をもたらす(図11)。pUC19は、pMB1起点を含有する大腸菌(E.coli)プラスミドベクターであり、これは、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)を含む細菌のグラム陽性株において、増幅させることができない。mLs遺伝子が、ldh遺伝子フラグメントによってフランキングされている類似のベクターを構築してもよい。プラスミドpUC19上において構築されたldhノックアウトベクターの配列を、配列番号5に記載する。
【0157】
C.サーモセラム(C.thermocellum)ならびにC.ストラミニソルベンス(C.straminisolvens)におけるキシロースイソメラーゼおよびキシルロースキナーゼの発現(予測的実施例)
C.サーモセラム(C.thermocellum)におけるキシロースイソメラーゼおよびキシルロースキナーゼの発現のために、キシロースイソメラーゼおよびキシルロースキナーゼ遺伝子を、T.サッカロリティカム(T.saccharolyticum)からクローニングし、C.サーモセラム(C.thermocellum)gapDHプロモーターの制御下に置いた。このカセットは、pNW33N骨格に基づくC.サーモセラム(C.thermocellum)複製プラスミドに含まれ、pMU340(図35)配列番号74を生じる。C.サーモセラム(C.thermocellum)への導入時、得られる形質転換を、キシロース上で増殖する能力についてアッセイすることができる。C.クリスタヤンソニー(C.kristajanssonii)キシロースイソメラーゼおよびキシルロースキナーゼ遺伝子を使用して、類似構築物を作製することができる。これらの構築物は、C.ストラミンソルベンス(C.straminsolvens)の機能性についても試験することができる。
【0158】
C.サーモセラム(C.thermocellum)ならびにC.ストラミニソルベンス(C.straminisolvens)におけるピルビン酸デカルボキシラーゼおよびアルコールデヒドロゲナーゼの発現(予測的実施例)
C.サーモセラム(C.thermocellum)におけるピルビン酸デカルボキシラーゼおよびアルコールデヒドロゲナーゼの発現のために、ピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子を、供給源Z.モビリス(Z.mobilis)およびZ.パルマエ(Z.palmae)からクローニングし、アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子を、供給源Z.モビリス(Z.mobilis)からクローニングする。これらの遺伝子(pdcおよびadh)は、C.サーモセラム(C.thermocellum)pta−ackプロモーター由来のオペロンとして発現される。このカセットは、pNW33N骨格に基づくC.サーモセラム(C.thermocellum)複製プラスミドに含まれる(図36および37)、配列番号75および76。C.サーモセラム(C.thermocellum)への導入時、得られる形質転換を、増強されたエタノール産生および/またはアルデヒド産生についてスクリーニングして、発現された酵素の機能性を測定することができる。これらの構築物は、C.ストラミンソルベンス(C.straminsolvens)の機能性についても試験される。
【0159】
実施例5
C.ストラミニソルベンス(C.straminisolvens)を使用するAvicel(登録商標)の発酵
C.ストラミニソルベンス(C.straminisolvens)を使用して、CTFUD培地を含有する血清瓶中の1%Avicel(登録商標)を発酵させた。産物濃度プロファイルおよび比を、図27に示す。約2g/Lの全生成物が3日目に作製され、エタノールは全生成物の約50%を構成した。図27は、C.ストラミニソルベンス(C.straminisolvens)を使用した1%Avicel(登録商標)の産物濃度プロファイルを示す。エタノール対酢酸比をE/Aとして示し、エタノール対全生成物の比をE/Tとして示す。
【0160】
実施例6
中温性および好熱性セルロース分解、キシラン分解生物について操作されたグループIIイントロン
多くの細菌ゲノムにおいて見出される可動性グループIIイントロンは、触媒RNAおよびレトロ転移因子の両方である。それらは、切り出されたイントロンRNAが、DNA標的部位に直接逆スプライシングし、次いで、イントロンによりコードされたタンパク質によって、逆転写されるレトロ転移として公知である移動機構を使用する。可動性ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)Ll.LtrBグループIIイントロンは、Sigma Aldritchから市販されているTargetron(商標)ベクター(カタログ番号TA0100)として公知の遺伝子ツールに開発されている。この産物およびその使用は、米国特許第5,698,421号明細書、同第5,804,418号明細書、同第5,869,634号明細書、同第6,027,895号明細書、同第6,001,608号明細書、および同第6,306,596号明細書および/またはInGex,LLCによって管理された他の係属中の米国および他国における特許出願の1つもしくはそれ以上の主題である。
【0161】
レトロ転移に必要なすべての配列を含有するTargetronカセット(図28および29)を、中温性または好熱性セルロース分解生物における複製が可能なベクターにサブクローニングしてもよい。Targetronカセットは、lacプロモーターを任意の宿主または種特異的構成性もしくは誘導性プロモーターで置き換えることによって、改変してもよい。カセットは、グループIIイントロンが再標的化されて、目的の遺伝子に挿入され、遺伝子ノックアウトを作製するように、天然の認識配列の部位特異的変異誘発を介して、さらに改変してもよい。例えば、グループIIイントロンは、任意の中温性または好熱性セルロース分解生物において乳酸デヒドロゲナーゼまたは酢酸キナーゼをノックアウトするために、再設計され得る。表4は、イントロンをC.セルロリティカム(C.cellulolyticum)酢酸キナーゼを再標的化するための挿入位置およびプライマーの一例を示す(配列番号21)。表5は、イントロンをC.セルロリティカム(C.cellulolyticum)乳酸デヒドロゲナーゼを再標的化するための挿入位置およびプライマーの一例を示す(配列番号21)。
【0162】
Ll.LtrBイントロンを、C.cell.ACK遺伝子における挿入物(配列番号21)に再標的化するためのベクターの一例を図28に示す。pMU367のベクター配列(C.cell.酢酸キナーゼKOベクター)は配列番号30である。
【0163】
Ll.LtrBイントロンを、C.cell.LDH2744遺伝子における挿入物(配列番号23)に再標的化するためのベクターの一例を図29に示す。pMU367のベクター配列(C.cell.乳酸デヒドロゲナーゼKOベクター)を、配列番号31として記載する。
【表4】

【表5】

【0164】
実施例7
サーモアナエロバクター(Thermoanaerobacter)株およびサーモアナエロバクテリウム(Thermoanaerobacterium)株の形質転換(予測的実施例)
サーモアナエロバクター・シュードエタノリカス(Thermoanaerobacter pseudoethanolicus)39E、サーモアナエロバクテリウム・サッカロリティカム(Thermoanaerobacterium saccharolyticum)JW/SL−YS485、サーモアナエロバクテリウム・サッカロリティカム(Thermoanaerobacterium saccharolyticum)B6A−RI、およびサーモアナエロバクター(Thermoanaerobacter)sp.株59は、次のプロトコルによって形質転換される。細胞を、55℃、40mLのDSMZ M122培地(http://www.dsmz.de/microorganisms/media_list.php)において、次の改変を伴って増殖させる:セルロースの代わりに、5g/Lセロビオース、1.8g/LのKHPO、グルタチオンなし、および0.5g/LのL−システイン−HCl、0.6〜0.8の光学密度まで。次いで、細胞を回収し、40mLの0.2Mセロビオースによって、室温で2回、洗浄する。細胞を、0.2Mセロビオースにおいて、100μLのアリコートで再懸濁し、0.1〜1μgプラスミドDNAを、1mm間隙幅のエレクトロポレーション(electroportation)キュベット中のサンプルに添加する。1.8kV、25μF、200Ω、約3〜6msの指数形パルス(Bio−Rad Instruments)をキュベットに適用し、細胞を、新鮮M122において100〜200倍希釈し、12〜16時間、55℃でインキュベートする。次いで、回収された細胞を、ペトリプレートにおいて、200μg/mLカナマイシンのような選択薬剤を含有する新鮮寒天含有培地で25〜100倍希釈する。一旦、培地を固化したら、プレートを、コロニー形成のために55℃で、24〜72時間、インキュベートする。コロニーは、部位特異的組み換えの証明のために、PCRにより試験することができる。
【0165】
実施例8
操作されたサーモアナエロバクター(Thermoanaerobacter)株およびサーモアナエロバクテリウム(Thermoanaerobacterium)株の発酵性能
表6は、操作されたサーモアナエロバクター(Thermoanaerobacter)株およびサーモアナエロバクテリウム(Thermoanaerobacterium)株の発酵性能を示す。培養物を、24時間、M122において55℃で振盪を伴わずに増殖させた。次の略称を表6において使用する:セロビオース(CB)、グルコース(G)、乳酸(LA)、酢酸(AA)、およびエタノール(Etoh)。容積は、1リットルあたりのグラム数である。YS485−サーモアナエロバクテリウム・サッカロリティカム(Thermoanaerobacterium saccharolyticum)JW/SL−YS485、B6A−RI−サーモアナエロバクテリウム・サッカロリティカム(Thermoanaerobacterium saccharolyticum)B6A−RI、39E−サーモアナエロバクター・シュードエタノリカス(Thermoanaerobacter pseudoethanolicus)39E。
【表6】

【0166】
実施例9
セルロース分解株およびキシラン分解株を操作するための構築物−アンチセンスRNA技術の例
乳酸デヒドロゲナーゼ(Cthe_1053)をコードするC.サーモセラム(C.thermocellum)遺伝子を標的にするアンチセンスRNAカセットを担持する複製プラスミド(図38)を、エレクトロポレーションおよびチアンフェニコール選択によって、C.サーモセラム(C.thermocellum)1313に導入した。このプラスミドについて観察された形質転換効率は、親ベクター、pMU102のものに等しかった。プラスミドの配列を配列番号61に示す。asRNAカセットを図38に示し、次のように組織化される:(i)1827bpのカセット全体を図38に示す配向でpMU102のマルチクローニング部位にクローニングする、(ii)天然プロモーター領域は、カセットの最初の600bp内に含有される、(iii)ldhオープンリーディングフレームの最初の877bpを、アンチセンス配向で天然プロモーターに融合する、(iv)約300のさらなるbpが、asRNA ldh領域の下流に含まれる。
【0167】
図39に示されるように、6μg/mLチアンフェニコール(プラスミドを維持するため)の存在下で、M122C培地上で培養物を静置増殖させることによって、変更された最終産物について、得られるチアンフェニコール耐性コロニーをスクリーニングした。9個の無作為に選択したチアンフェニコール耐性形質転換体の予備スクリーニングは、4つの培養物が、野生型と比べて、低いレベルの乳酸塩産生を示すことを示した。さらに、両方のldh遺伝子に対して指向されたアンチセンスRNA担持する構築物は、部分的、実質的、もしくは完全に、両方の遺伝子を同時に欠失、サイレンシング、不活化、またはダウンレギュレートするために、構築するべきである。
【0168】
実施例10
配列番号44、45、および46は、サーモアナエロバクテリウム・サッカロリティカム(Thermoanaerobacterium saccharolyticum)YS485、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)ATCC 27405、およびクロストリジウム・ファイトファーメンタンス(Clostridium phytofermentans)由来のピルビン酸−ギ酸−リアーゼ(akaギ酸アセチルトランスフェラーゼ、EC.2.3.1.54、pfl)遺伝子である。pflは、ピルビン酸のアセチル−CoAおよびギ酸塩への変換を触媒する(図34)。pflの欠失は、ギ酸塩産生の排除を生じ、いくつかの好熱性株において酢酸収量の減少を生じ得、結果的にエタノール収量の増大を伴う。
【0169】
図40〜45に示される配列番号47〜52は、pflノックアウトプラスミドを、上記で列挙した3つの生物について、それぞれ2つずつ示す。各生物は、部分的、実質的、もしくは完全に、pfl酵素を欠失、サイレンシング、不活化、またはダウンレギュレートするように設計された単一交差および二重交差プラスミドを有する。単一交差プラスミドは、pfl遺伝子の内部セクションに相同な単一のDNA配列(400bp〜1000bp)で設計され、二重交差プラスミドは、pfl遺伝子の上流(5’)および下流(3’)の領域に相同な2つのDNA配列(400〜1000bp)で設計される。すべてのプラスミドは、所与の生物における選択のために最も良好に利用可能な抗生物質マーカーを使用するために設計される。プラスミドは、大腸菌(E.coli)において維持し、Codon DevicesまたはDNA2.0のようなDNA合成請負会社を介して、構築することができる。
【0170】
援用
本明細書において引用したすべての米国特許第および米国公開特許出願は、参照により本明細書に援用される。
【0171】
均等物
当業者であれば、本明細書に記載の本発明の特定の実施の形態に対する多くの均等物を認識し、日常的域を超えない程度の実験を使用して、これを確かめることが可能である。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1〜5、30〜31、および47〜61のいずれか1つのヌクレオチド配列、またはその相補体を含む、単離された核酸分子。
【請求項2】
配列番号1〜5、30〜31、および47〜61のいずれか1つのヌクレオチド配列、またはその相補体と少なくとも80%の同一性を共有するヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項3】
配列番号1〜5、30〜31、および47〜61のいずれか1つのヌクレオチド配列、またはその相補体と少なくとも約95%の配列同一性を有することを特徴とする、請求項2に記載の核酸分子。
【請求項4】
好熱性または中温性の細菌において発現可能なプロモーターに機能的に連結された配列番号1〜5、30〜31、および47〜61のいずれか1つを含む、遺伝子構築物。
【請求項5】
請求項4に記載の遺伝子構築物を含む、組み換え好熱性または中温性の細菌。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項記載の核酸分子を含む、宿主細胞。
【請求項8】
前記宿主細胞が好熱性または中温性の細菌細胞である、請求項7に記載の宿主細胞。
【請求項9】
第1の天然遺伝子が、部分的、実質的、もしくは完全に欠失、サイレンシング、不活化、またはダウンレギュレートされた、遺伝子改変された好熱性または中温性の微生物であって、
前記第1の天然遺伝子が、有機酸またはその塩の代謝産生に関与する第1の天然酵素をコードし、それによって、発酵生成物としてエタノールを産生する前記好熱性または中温性の微生物の天然の能力を増大させる、
微生物。
【請求項10】
前記微生物が、グラム陰性菌またはグラム陽性菌であることを特徴とする、請求項9に記載の遺伝子改変微生物。
【請求項11】
前記微生物が、サーモアナエロバクテリウム(Thermoanaerobacterium)、サーモアナエロバクター(Thermoanaerobacter)、クロストリジウム(Clostridium)、ゲオバチルス(Geobacillus)、サッカロコッカス(Saccharococcus)、パエニバチルス(Paenibacillus)、バチルス(Bacillus)、カルディセルロシルプター(Caldicellulosiruptor)、アネロセルム(Anaerocellum)またはアノキシバチルス(Anoxybacillus)属の種であることを特徴とする、請求項9に記載の遺伝子改変微生物。
【請求項12】
前記微生物が、下記:サーモアナエロバクテリウム・サーモスルフリゲネス(Thermoanaerobacterium thermosulfurigenes)、サーモアナエロバクテリウム・アオテアロエンス(Thermoanaerobacterium aotearoense)、サーモアナエロバクテリウム・ポリサッカロリティカム(Thermoanaerobacterium polysaccharolyticum)、サーモアナエロバクテリウム・ジアエ(Thermoanaerobacterium zeae)、サーモアナエロバクテリウム・キシラノリティカム(Thermoanaerobacterium xylanolyticum)、サーモアナエロバクテリウム・サッカロリティカム(Thermoanaerobacterium saccharolyticum)、サーモアナエロビウム・ブロッキイ(Thermoanaerobium brockii)、サーモアナエロバクテリウム・サーモサッカロリティカム(Thermoanaerobacterium thermosaccharolyticum)、サーモアナエロバクター・サーモヒドロスルフリカス(Thermoanaerobacter thermohydrosulfuricus)、サーモアナエロバクター・エタノリカス(Thermoanaerobacter ethanolicus)、サーモアナエロバクター・ブロッキイ(Thermoanaerobacter brocki)、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)、クロストリジウム・セルロリティカム(Clostridium cellulolyticum)、クロストリジウム・ファイトファーメンタンス(Clostridium phytofermentans)、クロストリジウム・ストラミノソルベンス(Clostridium straminosolvens)、ゲオバチルス・サーモグルコシダシウス(Geobacillus thermoglucosidasius)、ゲオバチルス・ステアロサーモフィラス(Geobacillus stearothermophilus)、サッカロコッカス・カルドキシロシリティクス(Saccharococcus caldoxylosilyticus)、サッカロッカス・サーモフィラス(Saccharoccus thermophilus)、パエニバチルス・キャンピナセンシス(Paenibacillus campinasensis)、バチルス・フラボテルムス(Bacillus flavothermus)、アノキシバチルス・カムチャッカエンシス(Anoxybacillus kamchatkensis)、アノキシバチルス・ゴネンシス(Anoxybacillus gonensis)、カルディセルロシルプター・アセチゲネス(Caldicellulosiruptor acetigenus)、カルディセルロシルプター・サッカロリティカス(Caldicellulosiruptor saccharolyticus)、カルディセルロシルプター・クリストヤンソニー(Caldicellulosiruptor kristjanssonii)、カルディセルロシルプター・オーウェンセンシス(Caldicellulosiruptor owensensis)、カルディセルロシルプター・ラクトアセティカス(Caldicellulosiruptor lactoaceticus)、およびアネロセルム・テルモフィルム(Anaerocellum thermophilum)からなる群より選択される細菌であることを特徴とする、請求項9に記載の遺伝子改変微生物。
【請求項13】
前記微生物が、サーモアナエロバクテリウム・サッカロリティカム(Thermoanaerobacterium saccharolyticum)であることを特徴とする、請求項9に記載の遺伝子改変微生物。
【請求項14】
前記微生物が、下記:
(a)ヘキソース糖を代謝する天然の能力を有する好熱性または中温性の微生物;
(b)ペントース糖を代謝する天然の能力を有する好熱性または中温性の微生物;ならびに
(c)ヘキソース糖およびペントース糖を代謝する天然の能力を有する好熱性または中温性の微生物
からなる群より選択されることを特徴とする、請求項9に記載の遺伝子改変微生物。
【請求項15】
前記微生物が、ヘキソース糖を代謝する天然の能力を有することを特徴とする、請求項9に記載の遺伝子改変微生物。
【請求項16】
前記微生物が、クロストリジウム・ストラミニソルベンス(Clostridium straminisolvens)またはクロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)であることを特徴とする、請求項15に記載の遺伝子改変微生物。
【請求項17】
前記微生物が、ヘキソース糖およびペントース糖を代謝する天然の能力を有することを特徴とする、請求項9に記載の遺伝子改変微生物。
【請求項18】
前記微生物が、クロストリジウム・セルロリティカム(Clostridium cellulolyticum)、クロストリジウム・クリストヤンソニー(Clostridium kristjanssonii)またはクロストリジウム・ステルコラリウムsubsp.レプトサプラルツム(Clostridium stercorarium subsp.leptosaprartum)であることを特徴とする、請求項17に記載の遺伝子改変微生物。
【請求項19】
第1の非天然遺伝子が挿入された、請求項15に記載の遺伝子改変微生物であって、
前記第1の非天然遺伝子が、ペントース糖を代謝する能力を付与する第1の非天然酵素をコードし、それによって、前記好熱性または中温性の微生物に、ペントース糖から発酵生成物としてエタノールを産生させることを特徴とする、遺伝子改変微生物。
【請求項20】
前記微生物が、ペントース糖を代謝する天然の能力を有することを特徴とする、請求項9に記載の遺伝子改変微生物。
【請求項21】
前記微生物が、サーモアナエロバクテリウム・サッカロリティカム(Thermoanaerobacterium saccharolyticum)、サーモアナエロバクテリウム・キシラノリティカム(Thermoanaerobacterium xylanolyticum)、サーモアナエロバクテリウム・ポリサッカロリティカム(Thermoanaerobacterium polysaccharolyticum)、およびサーモアナエロバクテリウム・サーモサッカロリティカム(Thermoanaerobacterium thermosaccharolyticum)からなる群より選択されることを特徴とする、請求項20に記載の遺伝子改変微生物。
【請求項22】
第1の非天然遺伝子が挿入された、請求項20に記載の遺伝子改変微生物であって、
前記第1の非天然遺伝子が、ヘキソース糖を代謝する能力を付与する第1の非天然酵素をコードし、それによって、前記好熱性または中温性の微生物に、ヘキソース糖から発酵生成物としてエタノールを産生させることを特徴とする、遺伝子改変微生物。
【請求項23】
前記有機酸が、乳酸および酢酸からなる群より選択されることを特徴とする、請求項9〜22のいずれか1項記載の遺伝子改変微生物。
【請求項24】
前記有機酸が乳酸であることを特徴とする、請求項9〜22のいずれか1項記載の遺伝子改変微生物。
【請求項25】
前記有機酸が酢酸であることを特徴とする、請求項9〜22のいずれか1項記載の遺伝子改変微生物。
【請求項26】
前記第1の天然酵素が、乳酸デヒドロゲナーゼ、酢酸キナーゼ、およびホスホトランスアセチラーゼからなる群より選択されることを特徴とする、請求項9〜22のいずれか1項記載の遺伝子改変微生物。
【請求項27】
前記第1の天然酵素が乳酸デヒドロゲナーゼであることを特徴とする、請求項9〜22のいずれか1項記載の遺伝子改変微生物。
【請求項28】
前記第1の天然酵素が酢酸キナーゼであることを特徴とする、請求項9〜22のいずれか1項記載の遺伝子改変微生物。
【請求項29】
前記第1の天然酵素がホスホトランスアセチラーゼであることを特徴とする、請求項9〜22のいずれか1項記載の遺伝子改変微生物。
【請求項30】
第2の天然遺伝子が、部分的、実質的、もしくは完全に欠失、サイレンシング、不活化、またはダウンレギュレートされ、ここで、前記第2の天然遺伝子が、有機酸またはその塩の代謝産生に関与する第2の天然酵素をコードすることを特徴とする、請求項9〜29のいずれか1項記載の遺伝子改変微生物。
【請求項31】
前記第2の天然酵素が、酢酸キナーゼまたはホスホトランスアセチラーゼであることを特徴とする、請求項30に記載の遺伝子改変微生物。
【請求項32】
前記第2の天然酵素が、乳酸デヒドロゲナーゼであることを特徴とする、請求項30に記載の遺伝子改変微生物。
【請求項33】
遺伝子改変された好熱性または中温性の微生物であって、
(a)第1の天然遺伝子が、部分的、実質的、もしくは完全に欠失、サイレンシング、不活化、またはダウンレギュレートされ、ここで、前記第1の天然遺伝子が、有機酸またはその塩の代謝産生に関与する第1の天然酵素をコードし、
(b)第1の非天然遺伝子が挿入され、ここで、前記第1の非天然遺伝子が、エタノールの代謝産生に関与する第1の非天然酵素をコードし、それによって、前記好熱性または中温性の微生物に、発酵生成物としてエタノールを産生させる
ことを特徴とする、微生物。
【請求項34】
前記第1の非天然遺伝子が、ヘキソース糖を代謝する能力を付与する第1の非天然酵素をコードし、それによって、前記好熱性または中温性の微生物にヘキソース糖を代謝させることを特徴とする、請求項33に記載の遺伝子改変微生物。
【請求項35】
前記第1の非天然遺伝子が、ペントース糖を代謝する能力を付与する第1の非天然酵素をコードし、それによって、前記好熱性または中温性の微生物にペントース糖を代謝させることを特徴とする、請求項33に記載の遺伝子改変微生物。
【請求項36】
前記第1の非天然遺伝子が、ヘキソース糖を代謝する能力を付与する第1の非天然酵素をコードし;
第2の非天然遺伝子が挿入され、ここで、前記第2の非天然遺伝子が、ペントース糖を代謝する能力を付与する第2の非天然酵素をコードし、
それによって、前記好熱性または中温性の微生物に、ヘキソース糖およびペントース糖を代謝させる
ことを特徴とする、請求項33に記載の遺伝子改変微生物。
【請求項37】
前記有機酸が乳酸であることを特徴とする、請求項33〜36のいずれか1項記載の遺伝子改変微生物。
【請求項38】
前記有機酸が酢酸であることを特徴とする、請求項33〜36のいずれか1項記載の遺伝子改変微生物。
【請求項39】
前記第1の非天然酵素が、ピルビン酸デカルボキシラーゼ(PDC)またはアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)であることを特徴とする、請求項33、34または36のいずれか1項記載の遺伝子改変微生物。
【請求項40】
前記第2の非天然酵素が、キシロースイソメラーゼであることを特徴とする、請求項33または35に記載の遺伝子改変微生物。
【請求項41】
前記第1の非天然遺伝子が配列番号6、10、または14に対応することを特徴とする、請求項40に記載の遺伝子改変微生物。
【請求項42】
前記非天然酵素が、キシルロキナーゼであることを特徴とする、請求項33、35または36のいずれか1項記載の遺伝子改変微生物。
【請求項43】
前記非天然遺伝子が配列番号7、11、または15に対応することを特徴とする、請求項42に記載の遺伝子改変微生物。
【請求項44】
前記非天然酵素が、L−アラビノースイソメラーゼであることを特徴とする、請求項33、35、または36のいずれか1項記載の遺伝子改変微生物。
【請求項45】
前記非天然遺伝子が配列番号8または12に対応することを特徴とする、請求項44に記載の遺伝子改変微生物。
【請求項46】
前記非天然酵素が、L−リブロース−5−リン酸4−エピメラーゼであることを特徴とする、請求項33、35または36のいずれか1項記載の遺伝子改変微生物。
【請求項47】
前記非天然遺伝子が配列番号9または13に対応することを特徴とする、請求項46に記載の遺伝子改変微生物。
【請求項48】
前記微生物が、代謝されたバイオマス由来の炭素の少なくとも60%をエタノールに変換することが可能であることを特徴とする、請求項9〜47のいずれか1項記載の遺伝子改変微生物。
【請求項49】
前記微生物が、下記:
(a)セルロースを加水分解する天然の能力を有する好熱性または中温性の微生物;
(b)キシランを加水分解する天然の能力を有する好熱性または中温性の微生物;ならびに
(c)セルロースおよびキシランを加水分解する天然の能力を有する好熱性または中温性の微生物
からなる群より選択されることを特徴とする、請求項9に記載の遺伝子改変微生物。
【請求項50】
前記微生物が、セルロースを加水分解する天然の能力を有することを特徴とする、請求項9または33に記載の遺伝子改変微生物。
【請求項51】
前記微生物が、セルロースおよびキシランを加水分解する天然の能力を有することを特徴とする、請求項9または33に記載の遺伝子改変微生物。
【請求項52】
第1の非天然遺伝子が挿入された、請求項50に記載の遺伝子改変微生物であって、
ここで、前記第1の非天然遺伝子が、キシランを加水分解する能力を付与する第1の非天然酵素をコードすることを特徴とする、遺伝子改変微生物。
【請求項53】
前記微生物が、キシランを加水分解する天然の能力を有することを特徴とする、請求項9または33に記載の遺伝子改変微生物。
【請求項54】
第1の非天然遺伝子が挿入された請求項53に記載の遺伝子改変微生物であって、
前記第1の非天然遺伝子が、セルロースを加水分解する能力を付与する第1の非天然酵素をコードすることを特徴とする、遺伝子改変微生物。
【請求項55】
前記有機酸が、乳酸および酢酸からなる群より選択されることを特徴とする、請求項49〜54のいずれか1項記載の遺伝子改変微生物。
【請求項56】
前記有機酸が乳酸であることを特徴とする、請求項49〜54のいずれか1項記載の遺伝子改変微生物。
【請求項57】
前記有機酸が酢酸であることを特徴とする、請求項49〜54のいずれか1項記載の遺伝子改変微生物。
【請求項58】
前記第1の天然酵素が、乳酸デヒドロゲナーゼ、酢酸キナーゼ、およびホスホトランスアセチラーゼからなる群より選択されることを特徴とする、請求項49〜54のいずれか1項記載の遺伝子改変微生物。
【請求項59】
前記第1の天然酵素が乳酸デヒドロゲナーゼであることを特徴とする、請求項49〜54のいずれか1項記載の遺伝子改変微生物。
【請求項60】
前記第1の天然酵素が酢酸キナーゼであることを特徴とする、請求項49〜54のいずれか1項記載の遺伝子改変微生物。
【請求項61】
前記第1の天然酵素がホスホトランスアセチラーゼであることを特徴とする、請求項49〜54のいずれか1項記載の遺伝子改変微生物。
【請求項62】
第2の天然遺伝子が、部分的、実質的、もしくは完全に欠失、サイレンシング、不活化、またはダウンレギュレートされた、請求項50〜61のいずれか1項記載の遺伝子改変微生物であって、
前記第2の天然遺伝子が、有機酸またはその塩の代謝産生に関与する第2の天然酵素をコードすることを特徴とする、遺伝子改変微生物。
【請求項63】
前記第2の天然酵素が、酢酸キナーゼまたはホスホトランスアセチラーゼであることを特徴とする、請求項62に記載の遺伝子改変微生物。
【請求項64】
前記第2の天然酵素が、乳酸デヒドロゲナーゼであることを特徴とする、請求項62に記載の遺伝子改変微生物。
【請求項65】
遺伝子改変された好熱性または中温性の微生物であって、
(a)第1の天然遺伝子が、部分的、実質的、もしくは完全に欠失、サイレンシング、不活化、またはダウンレギュレートされ、ここで、前記第1の天然遺伝子が、有機酸またはその塩の代謝産生に関与する第1の天然酵素をコードし、
(b)第1の非天然遺伝子が挿入され、ここで、前記第1の非天然遺伝子が、多糖の加水分解に関与する第1の非天然酵素をコードし、
それによって、前記好熱性または中温性の微生物に、発酵生成物としてエタノールを産生させることを特徴とする、微生物。
【請求項66】
前記第1の非天然遺伝子が、セルロースを加水分解する能力を付与する第1の非天然酵素をコードし、それによって、前記好熱性または中温性の微生物に、セルロースを加水分解させることを特徴とする、請求項65に記載の遺伝子改変微生物。
【請求項67】
前記第1の非天然遺伝子が、キシランを加水分解する能力を付与する第1の非天然酵素をコードし、それによって、前記好熱性または中温性の微生物に、キシランを加水分解させることを特徴とする、請求項65に記載の遺伝子改変微生物。
【請求項68】
前記第1の非天然遺伝子が、セルロースを加水分解する能力を付与する第1の非天然酵素をコードし;
第2の非天然遺伝子が挿入され、ここで、前記第2の非天然遺伝子が、キシランを加水分解する能力を付与する第2の非天然酵素をコードし、
それによって、前記好熱性または中温性の微生物に、セルロースおよびキシランを加水分解させることを特徴とする、請求項65に記載の遺伝子改変微生物。
【請求項69】
前記有機酸が乳酸であることを特徴とする、請求項65〜68のいずれか1項記載の遺伝子改変微生物。
【請求項70】
前記有機酸が酢酸であることを特徴とする、請求項65〜68のいずれか1項記載の遺伝子改変微生物。
【請求項71】
前記第1の非天然酵素が、ピルビン酸デカルボキシラーゼ(PDC)またはアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)であることを特徴とする、請求項65、66、または68のいずれか1項記載の遺伝子改変微生物。
【請求項72】
前記微生物が、代謝されたバイオマス由来の炭素の少なくとも60%をエタノールに変換することが可能であることを特徴とする、請求項49〜71のいずれか1項記載の遺伝子改変微生物。
【請求項73】
前記微生物が中温性であることを特徴とする、請求項9、11、12、14、16、18、19、22、33、34、35、36、49、65、66、67、および68のいずれか1項記載の遺伝子改変微生物。
【請求項74】
前記微生物が好熱性であることを特徴とする、請求項9、11、12、13、14、19、21、22、33、34、35、36、49、65、66、67、および68のいずれか1項記載の遺伝子改変微生物。
【請求項75】
リグノセルロース系バイオマスと、請求項9〜48のいずれか1項記載の遺伝子改変された好熱性または中温性の微生物とを接触させる工程を有してなる、リグノセルロース系バイオマスをエタノールに変換する方法。
【請求項76】
前記リグノセルロース系バイオマスが、草、スイッチグラス、コードグラス、ライグラス、リードカナリーグラス、プレーリーグラス混合種、ススキ、製糖残留物、サトウキビバガス、サトウキビワラ、農業廃棄物、イナワラ、籾殻、オオムギワラ、トウモロコシ穂軸、穀物ワラ、コムギワラ、カノーラワラ、エンバクワラ、エンバク種皮、トウモロコシ繊維、茎葉、ダイズ茎葉、トウモロコシ茎葉、森林廃棄物、再生木材パルプ繊維、ペーパースラッジ、大鋸屑、硬木、軟木、およびそれらの組合せからなる群より選択されることを特徴とする、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記リグノセルロース系バイオマスが、トウモロコシ茎葉、サトウキビバガス、スイッチグラス、およびポプラ材からなる群より選択されることを特徴とする、請求項75に記載の方法。
【請求項78】
前記リグノセルロース系バイオマスがトウモロコシ茎葉であることを特徴とする、請求項75に記載の方法。
【請求項79】
前記リグノセルロース系バイオマスがサトウキビバガスであることを特徴とする、請求項75に記載の方法。
【請求項80】
前記リグノセルロース系バイオマスがスイッチグラスであることを特徴とする、請求項75に記載の方法。
【請求項81】
前記リグノセルロース系バイオマスがポプラ材であることを特徴とする、請求項75に記載の方法。
【請求項82】
前記リグノセルロース系バイオマスはヤナギであることを特徴とする、請求項75に記載の方法。
【請求項83】
前記リグノセルロース系バイオマスがペーパースラッジであることを特徴とする、請求項75に記載の方法。
【請求項84】
リグノセルロース系バイオマスと、請求項49〜74のいずれか1項記載の遺伝子改変された好熱性または中温性の微生物とを接触させる工程を有してなる、リグノセルロース系バイオマスをエタノールに変換する方法。
【請求項85】
前記リグノセルロース系バイオマスが、草、スイッチグラス、コードグラス、ライグラス、リードカナリーグラス、プレーリーグラス混合種、ススキ、製糖残留物、サトウキビバガス、サトウキビワラ、農業廃棄物、イナワラ、籾殻、オオムギワラ、トウモロコシ穂軸、穀物ワラ、コムギワラ、カノーラワラ、エンバクワラ、エンバク種皮、トウモロコシ繊維、茎葉、ダイズ茎葉、トウモロコシ茎葉、森林廃棄物、再生木材パルプ繊維、ペーパースラッジ、大鋸屑、硬木、軟木、およびそれらの組合せからなる群より選択されることを特徴とする、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記リグノセルロース系バイオマスが、トウモロコシ茎葉、サトウキビバガス、スイッチグラス、およびポプラ材からなる群より選択されることを特徴とする、請求項84に記載の方法。
【請求項87】
前記リグノセルロース系バイオマスがトウモロコシ茎葉であることを特徴とする、請求項84に記載の方法。
【請求項88】
前記リグノセルロース系バイオマスがサトウキビバガスであることを特徴とする、請求項84に記載の方法。
【請求項89】
前記リグノセルロース系バイオマスがスイッチグラスであることを特徴とする、請求項84に記載の方法。
【請求項90】
前記リグノセルロース系バイオマスがポプラ材であることを特徴とする、請求項84に記載の方法。
【請求項91】
前記リグノセルロース系バイオマスがヤナギであることを特徴とする、請求項84に記載の方法。
【請求項92】
前記リグノセルロース系バイオマスがペーパースラッジであることを特徴とする、請求項84に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図6−4】
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【図6−5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図30−1】
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【図30−2】
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【図31】
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【図31−1】
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【図31−2】
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【図32】
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【図32−1】
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【図32−2】
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【図33】
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【図33−1】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【公表番号】特表2010−526536(P2010−526536A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507693(P2010−507693)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【国際出願番号】PCT/US2008/063237
【国際公開番号】WO2008/141174
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(509287315)マスコマ コーポレイション (2)
【氏名又は名称原語表記】MASCOMA CORPORATION
【Fターム(参考)】