説明

遺伝子多型検出方法及び遺伝子増幅方法

【課題】試料からの正確、簡便、且つ迅速な目的遺伝子多型の検出方法を提供する。
【解決手段】試料中の目的遺伝子の遺伝子多型検出方法は、目的遺伝子に特異的なプライマー対を用いてDNAを増幅する工程、増幅したDNAを目的遺伝子の一塩基多型を認識配列に含む制限酵素を用いて切断する工程、切断されたDNA断片を分離する工程、
分離されたDNA断片を検出する工程、を有し、前記増幅工程は、ポリメラーゼ連鎖反応を行う第1、第2の増幅段階を備え、前記第2の増幅段階は、前記第1の段階の増幅産物を含む反応溶液を試料として前記第1の増幅段階と同一のプライマー対を用いてポリメラーゼ連鎖反応を行う構成とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中の目的遺伝子の遺伝子多型検出方法に関するものであり、より詳細には、生体由来試料等からDNA抽出操作を行うことなく、同一プライマー対を用いて直接多段階でDNA増幅を行った後、目的遺伝子多型のゲノタイプを判定(ゲノタイピング)するのに有用な遺伝子多型検出方法、及びゲノタイピングのための遺伝子増幅方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遺伝子多型検出法としては一本鎖DNA高次構造多型(Single Strand Comformation Polymorphism:SSCP)法、制限酵素断片長多型(Restriction Fragment Length polymorphism:RFLP)法などがある。このうち、SSCP法は一本鎖DNAでの高次構造の違いにより多型の有無を検出する方法である。一方、RFLP法は、増幅されたDNAを多型部位を認識配列に含む制限酵素で切断し、切断の有無をDNA断片の長さの違いとして電気泳動で判定する方法である。前者は変異部位を同定するためには塩基配列決定作業が必要であるが、後者は多型部位が既知である場合に適用される簡便な方法とされる。いずれの場合においても、通常はヒト・染色体DNA(ゲノムDNA)を血液より抽出した後、多型部位の検出方法に供される。
【0003】
従来、目的遺伝子の多型を判別する実験的方法がいくつか報告されている。例えば、下記のものが挙げられる。非特許文献1には、アポリポタンパクE(以下「ApoE」という。)遺伝子のRFLP法によるタイピング法が記載されている。この方法の基本的な手法は、ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction:PCR)によって、ゲノタイピングを行う目的の遺伝子領域であるApoE特定の領域を増幅し、そのRFLPをポリアクリルアミドゲル電気泳動(Polyacrylamide Electrophoresis)による泳動パターンでゲノタイピングする方法である。
【0004】
この方法でも、先ず、ヒト・染色体DNA(ゲノムDNA)を血液より抽出した後、ApoE遺伝子に特異的なプライマー対を用いてPCRで増幅し、増幅したDNAを制限酵素HhaIによって断片化する。
【0005】
ヒト血液からの一般的なDNAの抽出操作は、血球分解、ゲノムDNA塊採取、DNA検体の均一化からなる。すなわち、末梢血液に対して赤血球分解させた後、白血球を遠心分離して採取し、更に白血球核を破壊してゲノムDNA液を採取し、有機溶媒中にてDNA塊として取り出した後に緩衝液中で静かに振とうさせて均質化させる工程からなり、通常は操作時間として3〜4時間、DNA液の均質化には更に数時間を要す。
【0006】
近年開発された市販のDNA簡易抽出キットにおいては、末梢血液へ血球分解液を加えた後、遊離DNAをマイクロチューブに設けられたメンブレンに吸着させ、数回の洗浄後に溶出させてゲノムDNAを抽出することができる。この目的に使用されるDNA抽出キットが、DNA Mini KitとしてQiagen社から市販されている。このキットでは標準的な方法での末梢血液必要量は200μLで、DNA抽出の操作には遠心分離機、恒温浸透槽等の設備を要し、操作時間も30分ほどかかる。
【0007】
このようにして得られた抽出DNAがRFLP法での遺伝子多型検出の検査対象となり、PCR増幅、制限酵素による切断、切断断片の分離検出が順次行われる。非特許文献2によれば、遺伝子の発現調節の解析やゲノム構造の解析には、対象とする生物のゲノムDNAの調製が必要不可欠であると記載されている。
【0008】
一般に全血検体をそのままPCR増幅を行った後、制限酵素で断片化した場合、増幅検体中に全血由来の蛋白が残存し、制限酵素による切断が不完全になることが報告されている。例えば非特許文献3に示すように、DNAに結合したタンパク質がDNAから離れていないため、制限酵素がDNAに結合できずに切断反応が正常に進まず、DNA抽出操作の必要性があると記載されている。
【0009】
既知の多段階PCR方法としてネステッドPCRがある。ネステッドPCRは非特異的な増幅を避けるために考案され、主に1種類のアミノ酸に対して複数のコドンが対応していて特異性の高いプライマーの設計が困難な場合に適用される多段階のPCRである。ネステッドPCRでは第1のプライマー対で増幅される標的配列の内側に第2のプライマー対を設計し、第1のプライマーで増幅されたDNA産物を希釈して新たな鋳型とした第2のPCRを行うもので、プライマーの類似配列によるミスプライミングを避け、標的配列のみを拾い出す方法である。この方法は2種のプライマー対を必要とし、多段階PCRにより標的配列を特異的に増幅する方法であって、制限酵素の反応阻害の抑制を期待した方法ではない。
【非特許文献1】James E. H. and Daniel T. V. Restriction of human apolipoprotein E by gene amplification and cleavage with HhaI. J. Lipid. Res .1990; 31: 545-548
【非特許文献2】「細胞工学別冊バイオ実験イラストレイテッド(2)遺伝子解析の基礎」、秀潤社、p.117
【非特許文献3】「バイオ実験トラブル解決超基本Q&A」p.96−97、羊土社
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、操作が煩雑であり、更に時間も要すDNA抽出操作を行うことなく、目的遺伝子を増幅し、遺伝子多型を検出することのできる遺伝子多型検出方法を提供することである。
【0011】
本発明のより詳細な目的の一つは、操作が煩雑であり、更に時間も要すDNA抽出操作を行うことなく、目的遺伝子を増幅し、制限酵素断片長多型(RFLP)法により遺伝子多型を検出することのできる遺伝子多型検出方法を提供することである。
【0012】
又、抽出DNAを試料とすることなく、目的遺伝子の遺伝子多型のゲノタイピングに供することのできる増幅DNAを提供し得るゲノタイピングのための遺伝子増幅方法を提供することも本発明の目的の一つである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的は本発明に係る遺伝子多型検出方法及び遺伝子増幅方法にて達成される。要約すれば、本発明は、試料中の目的遺伝子の遺伝子多型検出方法において、目的遺伝子に特異的なプライマー対を用いてDNAを増幅する工程、増幅されたDNAを目的遺伝子の一塩基多型を認識配列に含む制限酵素を用いて切断する工程、切断されたDNA断片を分離する工程、分離されたDNA断片を検出する工程、を有し、前記増幅工程は、ポリメラーゼ連鎖反応を行う第1、第2の増幅段階を備え、前記第2の増幅段階は、前記第1の段階の増幅産物を含む反応溶液を試料として、前記第1の増幅段階と同一のプライマー対を用いてポリメラーゼ連鎖反応を行うことを特徴とする遺伝子多型検出方法である。
【0014】
又、本発明は、DNAが抽出されていない試料中の目的遺伝子の遺伝子多型のゲノタイピングのための遺伝子増幅方法において、目的遺伝子に特異的なプライマー対を用いてDNAを増幅する工程を有し、前記増幅工程は、ポリメラーゼ連鎖反応を行う第1、第2の増幅段階を備え、前記第2の増幅段階は、前記第1の段階の増幅産物を含む反応溶液を試料として、前記第1の増幅段階と同一のプライマー対を用いてポリメラーゼ連鎖反応を行うことを特徴とする遺伝子増幅方法を包含する。その他、増幅工程における特徴は、本発明の遺伝子多型検出方法における増幅工程の特徴に準じる。
【0015】
尚、本明細書において、遺伝子配列における位置は、5’末端から3’末端方向に一本鎖でみていうものであり、その上流とは該一本鎖でみたときの5’末端側、下流とは3’末端側をいう。
【0016】
又、ApoE遺伝子について、いずれかの遺伝子多型において制限酵素による切断位置(或いは認識配列)がある場合、その位置に相当する他の遺伝子多型における配列上の位置については、切断されない(或いは認識されない)場合についても切断位置(或いは認識配列)の語を用いて説明する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、操作が煩雑であり、更に時間も要すDNA抽出操作を行うことなく、目的遺伝子を増幅し、遺伝子多型を検出する。より詳細には、本発明によれば、ゲノタイピング方法として制限酵素断片長多型(RFLP)法を用いる場合に、操作が煩雑であり、更に時間も要すDNA抽出操作を行うことなく、目的遺伝子を増幅し、遺伝子多型を検出することができる。更に、本発明によれば、抽出DNAを試料とすることなく、目的遺伝子の遺伝子多型のゲノタイピングに供することのできる増幅DNAを提供し得る、目的遺伝子のゲノタイピングのための、遺伝子増幅方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る遺伝子多型検出方法を図面に則して更に詳しく説明する。
【0019】
本発明の一態様では、目的遺伝子に特異的なプライマー対を用いてDNAを増幅する工程と、増幅したDNAを目的遺伝子の一塩基多型を認識配列に含む制限酵素を用いて切断する工程と、切断されたDNA断片を分離する工程と、分離されたDNA断片を検出する工程と、を有する。 増幅工程は、基本的には、一般的なポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いる。PCR法自体は斯界にて周知の方法に従えばよいが、その概略を説明すると、目的領域は、一般的にサーマルサイクラーと呼ばれるDNA増幅装置を用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によって増幅する。PCR法では、試料からのゲノムDNA2本鎖を加熱して変性し、1本鎖にする(変性:通常、92℃〜98℃で10秒〜2分)。次に、増幅したい特定部位のDNA鎖の両端に相補的な2種類のオリゴヌクレオチドプライマー(プライマー対)を反応系に過剰に加えた状態で温度を下げると、プライマーがDNA鎖の相補的な部位と2本鎖を形成する(プライマーアニーリング:通常、40℃〜65℃で10秒〜3分)。この状態でDNA合成基質のデオキシヌクレオシド3リン酸(dNTP)とDNAポリメラーゼを作用させると、ポリメラーゼはプライマー部位からDNA相補鎖を合成していく(伸長反応:通常、65℃〜80℃で15秒〜3分)。通常、この変性、プライマーアニーリング、伸長反応から成るサイクルを、この順番で20〜40回繰り返して二種のプライマーDNAに挟まれたDNA配列を増幅する。尚、プライマーのアニーリングをより確実にするため、このサイクルを開始する直前に、92℃〜98℃で30秒〜10分処理することにより、試料中のDNAを十分変性しておくこともできる。又、ポリメラーゼ連鎖反応により増幅されたDNAが確実に2本鎖になるよう、反応終了後、65℃〜80℃で1分〜10分保温することもできる(最終伸長反応)。
【0020】
PCR反応溶液は、緩衝液(例えば、最終濃度で20〜50mMの塩化カリウムを含む5〜50mMトリス−塩酸緩衝液pH8.0〜9.0)に、それぞれ最終濃度で20〜400μMのdNTP、0.5〜5mMの塩化マグネシウム、0.1〜1.0μMの二種のプライマー、0.5〜5U/100μlの耐熱性DNAポリメラーゼ、及び試料を加えて成る。反応液の総量は10〜100μlが好ましい。反応中の蒸発を防ぐため、ミネラルオイル等を重層することもできる。この他、PCR反応溶液には、DMSO、ホルムアミド、ベタイン、ゼラチンなどの添加成分が含まれてよい。耐熱性DNAポリメラーゼとしては、Taqポリメラーゼ、KODポリメラーゼ、Ventポリメラーゼ等の耐熱性ポリメラーゼが挙げられる。
【0021】
そして、本発明によれば、増幅工程は、ポリメラーゼ連鎖反応を行う第1、第2の増幅段階を備え、第2の増幅段階は、第1の段階の増幅産物を含む反応溶液を試料として、第1の増幅段階と同一のプライマー対を用いてポリメラーゼ連鎖反応を行う。つまり、本発明によれば、増幅段階は、同一のプライマー対を用いて少なくとも2回以上行う。
【0022】
これにより、例えば、ヒトより採取された血液等からDNA抽出操作を行うことなく、目的とする遺伝子に特異的なプライマー対で少サイクルでの予備的PCRを実施し、その増幅産物の一部を同一のプライマー対で更に本PCRを実施して、血液等に由来する夾雑タンパクを失活または分離された充分量のDNA増幅した後、RFLP法により目的遺伝子の遺伝子多型を検出することができる。
【0023】
以下、本発明を全血からの目的遺伝子の遺伝子多型検出に適用した場合を例にして更に詳述する。
【0024】
図1はヒトより採取した全血から目的遺伝子の遺伝子多型を検出するまでのフロー図である。
【0025】
この場合、遺伝子多型検出方法は、図1に示すように、ヒト血液1〜数μLを採取する段階、採取された全血をPCRにより予備的な増幅を行う段階、次いで予備的増幅の産物の一部をPCRにより制限酵素切断に用いるPCR増幅産物を得る段階、引き続き制限酵素にてPCR産物を切断して、遺伝子型判定に使用する制限酵素断片を得る段階、最後に制限酵素断片を分離して各遺伝子型特有の断片長を検出・判定する段階を含む。
【0026】
ヒト血液の採取に際しては、注射針、採血管、キャピラリ管などにより、必要の全血を採取する。この時、抗凝固剤を含む容器または管へ採取することが望ましい。抗凝固剤としては、全血をPCRの試料に用いることから、特に、ポリメラーゼの活性に影響しないヘパリンが好ましい。
【0027】
1回目のDNA増幅は、全血に含まれる制限酵素を阻害するタンパクを変性除去するとともに、検体中に含まれるDNAをテンプレート(鋳型)として目的遺伝子を含むDNAの予備的増幅を行うことができる。この1回目のDNA増幅は、一般的なPCRの20〜40サイクルは行わず、10サイクル程度に留めることにより短時間化をはかることができる。好ましくは、1回目の増幅におけるPCRのサイクル数は、15サイクル以下とすることにより、短時間化効果は顕著となる。又、制限酵素を阻害するタンパクを効果的に変性除去し、又DNAの予備的増幅効果が良好であるように、好ましくは5サイクル以上とする。より好ましくは10サイクルである。
【0028】
2回目のDNA増幅は、前記1回目のDNA増幅で得られた産物を、同一プライマー対を使用して、制限酵素切断での断片検出が可能な量まで増幅するものである。2回目のDNA増幅におけるPCRのサイクル数は、適宜選択すればよいが、通常、20〜40サイクル、好ましくは20〜30サイクルである。
【0029】
好ましくは、1回目のDNA増幅の増幅産物を含む反応溶液の一部を2回目のDNA増幅の試料として、新たに1回目のDNA増幅と同一のプライマー対、ポリメラーゼ、緩衝液等の試薬を加え、上述の如きPCR反応溶液を調整し、2回目のDNA増幅を行う。つまり、2回目のPCRでは、1回目のPCRにおいて、1回目のDNA増幅の試料、即ち、検体(ここではヒト全血)に含まれるDNAが予備的に増幅された増幅産物であるDNAをテンプレートとして、目的遺伝子を含むDNAを増幅する。ここで、1回目のDNA増幅における反応容器(マイクロチューブ)の底に変性タンパク質が沈殿することがあるが、この場合、上清を2回目のDNA増幅の試料として分取することが好ましいがこれに限定されるものではなく、均質状態の反応溶液を分取してもよい。所望により、1回目のDNA増幅の反応溶液の全部を2回目のDNA増幅の試料として、新たに1回目のDNA増幅と同一のプライマー対、ポリメラーゼ、緩衝液等の試薬を加え、上述の如きPCR反応溶液を調整し、2回目のDNA増幅を行ってもよい。
【0030】
こうして1回目のDNA増幅の増幅産物を含む反応溶液を2回目のDNA増幅の試料として新たにPCR反応溶液を調整することで、1回目のDNA増幅により予備的に増幅されたDNAは2回目のDNA増幅の反応溶液では希釈されることなる。2回目のDNA増幅の試料としての1回目の増幅の反応溶液は、2回目のDNA増幅の反応溶液の総量の1/5以下であることが好ましい。1/5を超えると上記希釈効果が十分に得られず、後述するようなRFLP法における制限酵素による切断を妨害するおそれがある。又、2回目のDNA増幅により、目的遺伝子を含むDNAを良好に増幅するためには、2回目のDNA増幅の試料としての1回目の増幅の反応溶液は、2回目のDNA増幅の反応溶液の総量の1/100以上であることが好ましい。1/100未満であると、2回目のDNA増幅により良好なDNA増幅が得られなくなる傾向がある。より好ましくは、1/20〜1/10である。
【0031】
図1に示す例では、増幅工程は、2段階のPCR増幅段階を有するが、より多段階のPCR増幅段階を有していてもよい。この場合、上記同様、後の増幅段階(第2の増幅段階)は、前の増幅段階(第1の増幅段階)の増幅産物を含む反応溶液の一部又は全部を試料として、前の増幅段階と同一のプライマー対を用いてPCRを行う。この場合も、前の増幅段階の反応溶液の、後の増幅段階の反応溶液の総量に対する割合は上記と同様にすることができる。
【0032】
上述のようにして増幅されたDNAは、RFLP法のために制限酵素により切断する。
【0033】
ここで、PCRに使用する目的遺伝子に特異的なプライマー対は、ゲノムDNAをテンプレートとして、目的遺伝子の変異場所を含むオリゴヌクレオチド対(プライマー対)である。プライマーの設計に際しては後述の制限酵素による切断で、典型的にはアガロースゲル電気泳動によって充分な解像度にて分離可能な充分な長さのDNA制限断片が得られるように設計される。好ましい一実施態様では、プライマー対を用いて増幅されたDNAに関し、制限酵素による切断によって、いずれかの目的遺伝子多型に帰属させ得る100bp以上のDNA断片が生成する制限酵素を用いる。
【0034】
増幅したDNA産物を切断する制限酵素は、目的とする遺伝子多型間の遺伝子変異で、認識部位が出現又は消失するもの、即ち、いずれかの目的遺伝子多型の一塩基多型部位が認識配列内に存在するものであって、切断後のDNA制限断片が典型的にはアガロースゲル電気泳動によって充分な解像度にて分離可能な充分な長さのDNA制限断片が得られるように設計される。好ましい一実施態様では、上記プライマー対を用いて増幅されたDNAに関し、制限酵素による切断によって、いずれかの目的遺伝子多型に帰属させ得る100bp以上のDNA断片が生成する制限酵素を用いる。
【0035】
得られたDNA制限断片は、好ましい一実施態様では、電気泳動で分離する。そして、分離されたDNA制限断片は、使用する電気泳動法に応じた方法により検出する。
【0036】
DNA分離方法としては、典型的には斯界にて通常用いられ、且つ、安価なDNA分離方法であるアガロース電気泳動を用いることができる。アガロース電気泳動では、種々の染色法のうち例えば、染色剤としてエチジウムブロマイドで染色し、紫外線を照射することにより、分離されたDNA制限断片を検出することができる。又、日立マイクロチップ電気泳動解析システムSV1210 コスモアイ(以下「日立SV1210」という。)等のDNA分離方法を用い、高解像度にてDNA制限断片を分離、検出することができる。
【0037】
日立SV1210は、樹脂チップ上にサンプル等の装填用穴と微細な溝とが設けられたマイクロチップ[i−チップ]及び所定の試薬キット(ゲル、染色試薬、内部標準等)と共に用い、所定の手順に従って所定の試薬及びサンプルをマイクロチップに装填して装置本体にセットすることで、マイクロチップ上の分離部へのゲルの充填、複数のサンプルの電気泳動、バンドの検出、データ出力を自動で行うことができる。分離されたDNA制限断片は、染色剤の蛍光により検出され、約5分で分析できる。
【0038】
特に、制限酵素による切断でいずれかの目的遺伝子多型に帰属させ得る100bp以上のDNA断片が生成する場合、アガロース電気絵移動においても、高解像度にてDNA制限断片を分離し、ゲノタイピングを良好に行うことができる。
【0039】
検出されたDNA制限断片の分離パターンから目的遺伝子多型のタイピングを行う。DNA制限断片の分離パターンから目的遺伝子のゲノタイピングを行う段階をコンピュータ処理により自動化してもよい。この場合、目的遺伝子多型の各ゲノタイプについて既知のDNA制限断片の分離パターンと、サンプルについて得られたDNA制限断片の分離パターンとを比較し、サンプルをいずれかの目的遺伝子多型のゲノタイプに関係付ける出力を行うようにすればよいことは当業者にとって自明である。
【0040】
本発明の一実施態様によれば、本発明の遺伝子多型検出方法は、ApoE遺伝子多型のゲノタイプ判定のためにヒト全血からApoE遺伝子多型を検出する場合に適用される。
【0041】
ApoEは、血中コレステロールの運搬に重要な役割を果たす血漿タンパクであり、主要なアイソフォームとして、ApoE2、ApoE3、ApoE4がある。これらApoE遺伝子多型は臨床検査にも応用されており、アルツハイマー型痴呆或いは心血管疾患の危険因子として、個々の患者の診断、治療を行う上で重要な臨床的情報となっている。
【0042】
ApoE遺伝子多型は、それぞれ1つのアミノ酸の置換により生じる。即ち、112番目、158番目のアミノ酸が、それぞれE2ではシステイン、システイン、E3ではシステイン、アルギニン、E4ではアルギニン、アルギニンである。RFLP法において、それぞれのApoE遺伝子多型に特異的な長さのDNA制限酵素切断断片(DNA制限断片)が得られることからで、各ApoE遺伝子多型の判別が可能となる。ヒトはアリルを2つ持つため、いずれかのApoE遺伝子多型の2つの組合せを持つことになる。即ち、ApoE遺伝子多型のアリルの組合せのパターン(遺伝子型:ゲノタイプ)には、E2/E2、E3/E3、E4/E4、E2/E3、E2/E4、E3/E4がある。
【0043】
ApoE遺伝子多型検出方法は、ApoE遺伝子に特異的なプライマー対を用いてPCRにより目的のDNA領域を増幅し、増幅されたDNAを所定の制限酵素を用いて切断し、切断したDNA制限断片を分離し、分離されたDNA断片を検出する各段階を含む。特に、本発明に従い、増幅工程は少なくとも2段階のPCR増幅段階とする。
【0044】
ApoE遺伝子に特異的なプライマー対は、試料からのゲノムDNAをテンプレート(鋳型)として、ApoE遺伝子の2箇所の一塩基多型部位、即ち、ApoEの112番目のアミノ酸をコードするApoE遺伝子領域(以下「コドン112」という。)、ApoEの158番目のアミノ酸をコードするApoE遺伝子領域(以下「コドン158」という。)を挟んだ所定領域(以下「多型領域」という。)のDNAをPCR法によって増幅するように設計されたオリゴヌクレオチド対(プライマー対)である。プライマー対の一方は、5’末端から3’末端方向に一本鎖でみて、上記ApoE遺伝子の多型領域の上流側にハイブリダイズ可能な適当な長さのオリゴヌクレオチドで、他方は同多型領域の下流側の相補鎖にハイブリダイズ可能な適当な長さのオリゴヌクレオチドである。これらプライマーは、通常通り、当業者には周知のプライマーとしての好適条件、例えば、標的遺伝子に対する特異性が良好であること、2つのプライマーのTmが同程度となること、又増幅効率が良好であることなどを考慮して設計される。
【0045】
増幅したDNA産物を切断する所定の制限酵素は、ApoE遺伝子多型間の遺伝子変異で認識部位が出現又は消失するもの、即ち、いずれかのApoE遺伝子多型の一塩基多型部位が認識配列内に存在するものである。特に、この制限酵素は、切断後のDNA制限断片が典型的にはアガロースゲル電気泳動法によって十分な解像度にて分離可能な長さを有し得るものである。ApoE遺伝子のコドン112の一塩基多型部位を認識配列に含む第1の酵素と、これと同種又は異種のApoE遺伝子のコドン158の一塩基多型部位を認識配列に含む第2の制限酵素とを用いる。
【0046】
本発明の好ましい一実施態様では、増幅したDNA産物を切断する第1、第2の制限酵素としての2種類の制限酵素として、AflIIIとHaeIIとの組み合わせを用いる。これら制限酵素の組み合わせを用いることにより、増幅されたDNAに関し、2種類の制限酵素のいずれか一方の制限酵素のみによる切断、及び両方の制限酵素による切断によって、いずれかのアポリポタンパクE遺伝子多型に帰属させ得る100bp以上のDNA断片が生成する。
【0047】
図10に示すように、制限酵素AflIIIは、塩基配列ACRYGT(RはA又はG,YはC又はT)を認識する。又、制限酵素HaeIIは、塩基配列RGCGCY(RはA又はG,YはC又はT)を認識する。即ち、制限酵素AflIIIは、112番目のシステイン(E2、E3)をコードするコドンの領域にわたるACGTGTを認識して切断するが、112番目のアルギニン(E4)をコードするコドンの領域にわたるACGTGCは切断しない。又、制限酵素HaeIIは、158番目のアルギニン(E3、E4)をコードするコドンの領域にわたるAGCGCCを認識して切断するが、158番目のシステイン(E2)をコードするコドンの領域にわたるAGTGCCは認識せず、切断しない(図中、四角で囲んだT又はCはそれぞれのコドンのはじめの塩基を示す。)。つまり、E2では、コドン158の一塩基多型部位を含むHaeIIの認識配列が消失し、E4では、コドン112の一塩基多型部位を含むAflIIIの認識配列が消失する。
【0048】
これにより、これらの制限酵素AflIII、HaeIIを用いて増幅されたDNAを断片化すると、E3では、コドン112の一塩基多型部位を含む切断位置(以下「第1切断位置」という。)とコドン158の一塩基多型部位を含む切断位置(以下「第2切断位置」という。)との間の配列(図中B)のみを含む特異的なDNA断片B(=145bp)が生成する。E2では、第1切断位置から第2切断位置より下流に位置する端部までの配列(図中D)を含む特異的なDNA断片Dが生成する。又、E4では、第2の切断位置から第1の切断位置より上流に位置する端部までの配列(図中C)を含む特異的なDNA断片Cを生成する。適切なプライマーを設計することにより、DNA断片B、C、Dは、いずれかの目的遺伝子多型に帰属させ得る100bp以上のDNA断片となる。従って、図10中に示すように、E2/E2、E3/E3、E4/E4、E2/E3、E2/E4、E3/E4の6種類のゲノタイプを明瞭に判定することができる。
【0049】
ここで、第1の制限酵素としてAflIII、第2の制限酵素としてHaeIIを用いる場合に即して好適なプライマーの設定について説明する。
【0050】
1.上流側プライマー
上流側プライマーの5’末端の位置は、DNA断片AとDNA断片B(=145bp)との良好な分離が可能なように設定する(9bp以上、好ましくは20bp以上、更に好ましくは30bp以上の鎖長差を有する)。このことから、上流側プライマーの5’末端位置は、第1切断位置より136bp以下の上流の位置に設定するのが好ましい。この観点からは、より良好な分離が可能であるように、上流側プライマーの5’末端の位置は、第1切断位置よりも、より好ましくは130bp以下、更に好ましくは120bp以下の上流の位置とすることがより好ましい。
【0051】
又、上流側プライマーの5’末端の位置は、DNA断片C(即ち、配列A及び配列Bを含むDNA断片C)が、DNA断片B(=145bp)と良好に分離可能であると共に、上記DNA断片Dとも良好に分離可能であるように設定する。このことから、上流側プライマーの5’末端の位置は、好ましくは第1切断位置よりも60bp以上の上流の位置に設定する。この観点からは、より良好に分離可能となるように、第1切断位置よりも70bp以上、80bp以上、90bp以上、100bp以上の上流の位置と、より上流とされるのが好ましい。
【0052】
尚、下流側プライマーの選択範囲によって生成されるDNA制限断片長が異なるが、第2切断位置より下流の配列(図中R)のみを含むDNA断片Rと、上記DNA断片Aとが良好に分離可能である場合、DNA断片Aの長さは他のDNA断片の長さと重なることがなく、このDNA断片AはApoE遺伝子多型判別の根拠の一つとして利用することができる。
【0053】
2.下流側プライマー
DNA断片BとDNA断片Dとを良好に分離することができるように、好ましくは、下流側プライマーの5’末端の位置は、第2の切断位置より30bp以上の下流の位置に設定する。又、下流側プライマーの5’末端の位置の選択範囲によって、E2、E3、E4の全ての多型について生成する、第2の切断位置より下流の配列(図中R)のみを含むDNA断片Rを、例えば制限酵素による切断反応(消化反応)の存否の確認等のために用いることができる。
【0054】
更に説明すると、図10に示すように、E2、E3、E4の全ての多型について、第2切断位置よりも35bp、53bp(35bp+18bp)、66bp(35bp+18bp+13bp)下流に、それぞれ第2の制限酵素(HaeII)の切断位置がある。下流側プライマーの5’末端の位置の設定により、第2の制限酵素(HaeII)による切断で生成される、E2、E3、E4の全てについて生成する第2の切断位置より下流の配列(図中R)のみを含むDNA断片Rが異なってくる。
【0055】
下流側プライマーの5’末端を第2切断位置より35bp以上、53bp以下の下流の位置に設定(即ち、図中配列R3内に設定)することで、E2、E3、E4の全ての多型について、DNA断片R3(最長でも18bp)が生成する。E3、E4では、DNA断片R4(=35bp)も生成する。
【0056】
又、下流側プライマーの5’末端位置を第2切断位置より53bp以上、66bp以下の下流の位置に設定(即ち、図中配列R2内に設定)することで、E2、E3、E4の全ての多型について、DNA断片R3(=18bp)、DNA断片R2(最長でも13bp)が生成する。E3、E4ではDNA断片R4(=35bp)も生成する。
【0057】
更に、下流側プライマーの5’末端の位置を少なくとも第2切断位置より66bp以上の下流の位置、好ましくは70bp以上の下流の位置と、より第2切断位置より下流の位置に設定(即ち、図中配列R1内に設定)することにより、E2、E3、E4の全ての多型について、所望の鎖長のDNA断片R1が生成する。又、このとき、E2、E3、E4の全ての多型について、DNA断片R3(=18bp)、DNA断片R2(=13bp)が生成する。E3、E4ではDNA断片R4(=35bp)も生成する。このように、下流側プライマーの5’末端の位置を第2の切断位置より好ましくは70bp以上の下流の位置とすることで、E2、E3、E4の全ての多型について生成するDNA断片R1、或いは18bp(断片R3)、13bp(R2)のDNA断片を、例えば上記のように消化反応の良否判断等の目的で利用することができる。ここで、例えば、E2、E3、E4のすべてについて生成するDNA断片Rを利用することを考えると、良好な分離が可能であるように、下流側プライマーの5’末端の位置は、より好ましくは80bp以上、90bp以上、と第2の切断位置より更に下流に設定することが好ましく、より好ましくは100bp以上の下流の位置に設定する。
【0058】
一方、DNA断片R1と、特にDNA断片B(更にはDNA断片C、D)とを良好に分離するためには、下流側プライマーの5’末端の位置は、第2切断位置より202bp以下の下流の位置に設定するのが好ましい。この観点からは、下流側プライマーの5’末端の位置は、第2切断位置より185bp以下の下流の位置に設定するのが好ましい。更に、ApoE遺伝子多型の判定の根拠の一つとして利用可能なDNA断片AとDNA断片R1との分離を良好とすることをも考慮すると、下流側プライマーの5’末端の位置は、好ましくは第2切断位置より166bp以下の下流の位置、より好ましくは156bp以下の下流の位置に5’末端を設定する。
【0059】
好ましい一実施態様では、下記の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドから成るプライマーの対を用いる。
【0060】
AE−F1プライマー(配列番号1):
5’−AATCGGAACTGGAGGAACAACTG−3’
AE−R1プライマー(配列番号2):
5’−GCCCGCACGCGGCCCTGTTC−3’
上記オリゴヌクレオチド配列のプライマー対によれば、ApoE遺伝子多型の2箇所の一塩基多型部位、即ち、ApoEのコドン112、ApoEのコドン158の一塩基多型部位を含み、75番目〜191番目のアミノ酸をコードするコドン領域にわたる352bpのオリゴヌクレオチド配列をPCR法によって増幅することができる。又、上記上流側プライマーの5’末端は、第1切断位置より106bp上流に位置し、下流側プライマーの5’末端の位置は、第2切断位置より101bp下流に位置する。斯かるオリゴヌクレオチド配列の各プライマーは、斯界にて周知のDNA合成方法、装置を用いて得ることができる。
【0061】
図10に示すように、この場合、ホモ接合体について、E2/E2では106bp及び180bp、E3/E3では106bp及び145bp、E4/E4では251bpのDNA制限断片が得られる。又、ヘテロ接合体であるE2/E3、E2/E4、E3/E4についても、図10に示すようにそれぞれ異なったDNA制限断片の組合せが得られる。図示の通り、この場合、AflIIIは、コドン112の一塩基多型部位を含む切断位置より上流及び下流に他の切断位置を持たず、又HaeIIは、コドン158の一塩基多型部位を含む切断位置より上流に他の切断位置を持たない。
【0062】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。
【0063】
(実施例)
まず、ヒト検体の血液を試料として、下記の条件にてPCR法によりApoE遺伝子の多型領域の1回目の増幅を行った。使用するプライマー対は、DNA合成装置により合成して得た。又、耐熱性DNAポリメラーゼとしては、KOD−plus−(東洋紡社)を用いた。
【0064】
a)プライマー対
AE−F1(5’−AATCGGAACTGGAGGAACAACTG−3’)
・・・・・(配列番号1)
AE−R1(5’−GCCCGCACGCGGCCCTGTTC−3’)
・・・・・(配列番号2)
【0065】
b)1回目PCR反応混合物
血液: 1μL
プライマー対: 0.3μM
dNTP: 200μM
緩衝液(10倍濃縮標準PCR緩衝液): 2μL
MgSO4: 1mM
Betaine(ベタイン): 2M
KOD−plus−ポリメラーゼ: 0.02units
総反応量: 20μL
【0066】
c)1回目PCRサイクルの条件
94℃,2分間(変性)
次いで、下記のサイクルを10回繰り返す。
【0067】
94℃,20秒(変性)
60℃,30秒(プライマーアニーリング)
68℃,30秒(伸長反応)
次いで、次の条件で2本鎖を形成する
68℃,5分間(最終伸長反応)
【0068】
上記1回目PCRで得られた増幅産物溶液の一部を採取し、下記の方法により2回目PCRを行った。使用するプライマー対は上記と同一のものを使用した。
【0069】
d)2回目PCR反応混合物
1回目PCR増幅産物溶液: 1μL
プライマー対: 0.3μM
dNTP: 200μM
緩衝液(10倍濃縮標準PCR緩衝液): 1μL
MgSO4: 1mM
KOD−plus−ポリメラーゼ: 0.02units
総反応量: 10μL。
【0070】
c)2回目PCRサイクルの条件
94℃,1分間(変性)
次いで、下記のサイクルを30回繰り返す。
94℃,20秒(変性)
60℃,30秒(プライマーアニーリング)
68℃,30秒(伸長反応)
次いで、次の条件で2本鎖を形成する。
68℃,5分間(最終伸長反応)。
【0071】
上記で得られた上記で得られたApoE遺伝子多型領域のPCR増幅産物の1μLを、測定用のマイクロチップとしてi−チップDNA IC−1100、試薬キットとしてIC−9101を用いた日立SV1210によるPCR増幅産物の確認に供した。測定手順は、装置供給元の指示に従った。DNA制限断片の分離結果は、当該装置に接続されたコンピュータのディスプレイ上に表示される。代表的なPCR増幅産物の確認結果を図2(中段)〜図5(中段)に示す。
【0072】
[RFLP及び制限酵素切断断片の分離とゲノタイピング]
上記で充分な増幅が確認されたApoE遺伝子多型領域のPCR増幅産物、制限酵素AflIII(New England biolabs社)(4units)及びHaeII(New England biolabs社)(2units)、1×NEB Buffer3、1×BSAを含む反応溶液を、全量が5μLになるように調製し、37℃で30分以上反応させた。その後、50mM EDTAを2.5μL加え、制限酵素を失活させた。各サンプルについて、上記PCR増幅産物の確認と同様の方法によりDNA制限酵素の分離、検出に供した。代表的なDNA切断断片の分離結果を図6(中段)〜図9(中段)に示す。
【0073】
(比較例1)
まず、ヒト検体の血液を試料として下記の条件にてPCR法によりApoE遺伝子の多型領域の単回増幅を行った。使用するプライマー対は、上記実施例と同一のものを使用した。
【0074】
b)PCR反応混合物
抽出したゲノムDNA: 50ng
プライマー対: 0.3μM
dNTP: 200μM
緩衝液(10倍濃縮標準PCR緩衝液): 2.5μL
MgSO4: 1mM
Betaine: 2M
KOD−plus−ポリメラーゼ: 0.02units
総反応量: 25μL。
【0075】
c)PCRサイクルの条件
94℃,2分間(変性)
次いで、下記のサイクルを40回繰り返す。
94℃,20秒(変性)
60℃,30秒(プライマーアニーリング)
68℃,30秒(伸長反応)
次いで、次の条件で2本鎖を形成する。
68℃,5分間(最終伸長反応)。
【0076】
上記で得られた上記で得られたApoE遺伝子多型領域のPCR増幅産物の1μLを、実施例と同様の方法によりPCR増幅産物の確認に供した。代表的なPCR増幅産物の確認結果を図2(上段)〜図5(上段)に示す。
【0077】
[RFLP及び制限酵素切断断片の分離とゲノタイピング]
上記で充分な増幅が確認されたApoE遺伝子多型領域のPCR増幅産物を実施例と同様な方法によりRFLPおよび制限酵素切断断片の分離とゲノタイピングを行った。代表的なDNA切断断片の分離結果を図6(上段)〜図9(上段)に示す。
【0078】
(比較例2)
まず、ヒト検体の血液を試料として、DNA抽出操作を行い、精製DNA試料を得た。ここでは、DNAの抽出は、DNA Mini Kit(Qiagen社)を用いて行った。下記の条件にてPCR法によりApoE遺伝子の多型領域の単回増幅を行った。使用するプライマー対は、上記実施例と同一のものを使用した。
【0079】
b)PCR反応混合物
抽出したゲノムDNA: 50ng
プライマー対: 0.3μM
dNTP: 200μM
緩衝液(10倍濃縮標準PCR緩衝液): 2μL
MgSO4: 1mM
Betaine: 2M
KOD−plus−ポリメラーゼ: 0.02units
総反応量: 20μL。
【0080】
c)PCRサイクルの条件
94℃,2分間(変性)
次いで、下記のサイクルを40回繰り返す。
94℃,20秒(変性)
60℃,30秒(プライマーアニーリング)
68℃,30秒(伸長反応)
次いで、次の条件で2本鎖を形成する。
68℃,5分間(最終伸長反応)。
【0081】
上記で得られた上記で得られたApoE遺伝子多型領域のPCR増幅産物の1μLを、実施例と同様の方法によりPCR増幅産物の確認に供した。代表的なPCR増幅産物の確認結果を図2(下段)〜図5(下段)に示す。
【0082】
[RFLP及び制限酵素切断断片の分離とゲノタイピング]
上記で充分な増幅が確認されたApoE遺伝子多型領域のPCR増幅産物を実施例と同様な方法によりRFLPおよび制限酵素切断断片の分離とゲノタイピングを行った。代表的なDNA切断断片の分離結果を図6(下段)〜図9(下段)に示す。
【0083】
[本実施例と比較例との対比]
上記の実施例、比較例1および比較例2はそれぞれ全血の2回PCR法によるApoE遺伝子多型のゲノタイピング、全血の単回PCR法による同ゲノタイピングおよびゲノム抽出DNAの単回PCR法による同ゲノタイピングである。
【0084】
a)正確性
通常のApoE遺伝子多型のゲノタイピングは比較例2で示すゲノムDNAを抽出した後、PCR増幅、RFLPおよびゲノタイピングによる方法が行われ、得られる結果の信頼性は高い。従って、比較例2で得られた結果を正診として、以下、実施例および比較例1と対比を行う。
【0085】
図2〜図5に示すようにE3/3、E2/3、E3/4およびE4/4の各検体とも、実施例、比較例1および比較例2の全てにおいて図中330bp付近に良好なPCR増幅が確認されている。
【0086】
しかし、比較例1で得られたE3/3およびE2/3のRFLPの制限酵素切断断片パターンは実施例および比較例2と異なり、E3/3ではE3/4様のパターンを示し、E2/3では図中236bpおよび270bpに非特異的な切断片が確認されている。特にE3/3での結果は重大であり、本来ならばE3/3と判定すべきゲノタイプが誤った結果が得られることになり、臨床診断を行う上で問題となる。本発明は理論により束縛されるものではないが、試料中の夾雑タンパク質の影響により制限酵素による切断が阻害されているもの考えられる。一方、実施例においてはE3/3およびE2/3とも抽出DNAを検体とした比較例と同パターンとなり、正確なゲノタイピングが実施できている。
【0087】
b)簡便性、迅速性
本発明によれば、全血から直接DNA増幅を行うため、DNA抽出操作及び抽出時間は不要となり、検体採取からApoE遺伝子多型の検出結果を得るまでの操作および時間を大幅に低減または短縮することができる。比較例2ではDNA抽出操作を行った後にApoE遺伝子多型を検出しているため、正確なゲノタイピングが可能であるが、通常のDNA抽出操作では約1日、簡易抽出法でも30分程の時間を要する。これらの抽出法は数段階の操作で実施されるため、操作中に他試料など目的外物質の混入の危険性もあり、遺伝子多型検出結果へ影響を否定できない。引き続き実施されるPCRにおいては実施例、比較例2ともPCRサイクル所要時間は同等であり、双方とも良好なDNA増幅が確認されている。従って、実施例は比較例2より簡便かつ迅速なゲノタイピング法といえる。
【0088】
c)検体必要量
本発明に従えば、遺伝子多型検出に際して必要とする全血は微少量であり、検体採取時の肉体的及び精神的負担を軽減できる。一般に全血よりDNA抽出操作を行う際には数mL、比較例2で示した簡易抽出法においても数百μLの血液が必要となる。実施例における、検体量は1μLであり検体採取時の負担を大幅に低減できる。
【0089】
以上説明したように、本実施例によれば、ヒト全血を検体として正確且つ迅速にアポリポタンパクE遺伝子多型を検出することができる。又、本実施例によれば、操作が煩雑で長時間を要するDNA分離抽出操作は不要であり、検体測定時間の大幅な短縮が可能となる。更に、全血からの直接測定であるため、必要とする検体量は微少であり、検体採取時の肉体的・精神的な負担を大幅に低減することができる。
【0090】
上述ではDNA抽出を行うことなく、例えば全血等の試料を用いて目的遺伝子を増幅し、ゲノタイピング法としてRFLPを用いて遺伝子多型のゲノタイピングを行う場合に即して本発明を詳しく説明したが、ゲノタイピング法として、RFLPの他、例えば直接塩基配列決定法、スナップショット法、タックマン法、質量分析法が公知である。これらその他のゲノタイピング法においても、抽出されたDNAを試料として用いない場合は、試料中の夾雑タンパク質によってゲノタイピングを誤ることが考えられる。本発明は、RFLP及びその他のゲノタイピング法に供する目的遺伝子を増幅するための遺伝子増幅方法をも提供する。本発明によれば、遺伝子増幅方法は、少なくとも抽出DNAではない試料と目的遺伝子に特異的なプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応を行う1回目の増幅段階と、前記1回目の増幅段階の増幅産物を含む反応溶液を試料として前記1回目の増幅段階と同一のプライマー対を用いてポリメラーゼ連鎖反応を行う2回目の増幅段階と、を有する。本発明の遺伝子増幅方法によれば、同一プライマーを用いた少なくとも2回のPCR増幅段階によって、簡便、迅速に夾雑タンパク質を除去することができる。特に、1回目のPCR増幅段階を10サイクル程度の低サイクルとすることで、時間短縮の効果は顕著となる。又、第1の増幅段階におけるPCRの増幅産物を含む反応溶液を試料として第2の増幅段階にてPCRを行うことで希釈効果を得ることができ、夾雑タンパク失の影響を大幅に抑止絵することができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
上記実施例では、試料として末梢血液(全血)を用い、血液中の細胞、即ち、被験者本人のゲノムDNAから、アルツハイマー型痴呆症など、ApoE遺伝子多型が関連する疾患の診断、治療にとって有用な情報となるApoE遺伝子多型のゲノタイプ判別を正確、且つ、迅速に行うことのできるApoE遺伝子多型検出方法を提供し得ることを説明した。
【0092】
本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、DNAの増幅工程における1回目の増幅段階の試料は、動物細胞;植物細胞;細菌、真菌、ウイルスを含む微生物のいずれであってもよい。本発明は、上記動物として、特に、哺乳動物、中でもヒトにおいて有用性が高い。より詳細には、DNAの増幅工程における1回目の増幅段階の試料は、動物の体液、粘膜、生体排泄物(尿、糞)、体毛の毛根、又はこれらに含まれる細胞であってよく、好ましくは、全血、血液中の細胞、又はリンパ球である。体液とは、血液、リンパ液、唾液、涙腺分泌液、瞼脂腺、鼻汁、汗腺分泌物、液化腺分泌液、膣等泌尿生殖器分泌液など、種々の器官よりの分泌液を含む。
【0093】
試料として体液を用い、その中の体細胞、異種細胞、菌体、微生物、真菌、ウイルス等を標的とする場合も、体液を直接試料として目的遺伝子を増幅するという本法の有用性は非常に高いと考えられる。有用性の例を示せば、RFLP、その他のゲノタイピングを利用することによって、
1)人の血液中にある微生物(細菌等)の特定を行うことによって、菌血症、敗血症の起炎菌の同定が簡便にかつ正確に行うことができる。
2)器官移植および異種細胞移植の場合において、血液等の体液中にそれらが存在することを本法において、正確に知りうることができる。そのことによって、移植後の状態を評価することが可能である。
3)血液および体液中の肝炎ウイルス、HIV、HITLV、HSV等のウイルス、あるいはカンジダ感染症などのウイルスおよび真菌症の存在の有無、またそのタイプを同定することが可能である。これらは、臨床診断や治療に有用な情報であり、それによって最大の治療効果を得ることができる。
4)白血病等の血液疾患において、減少あるいは、増加している特定の細胞の同定が可能となり、診断治療に有用である。
5)体毛の毛根、微量の体液からDNAの増幅が可能なため、法医学的な情報、人物同定等に有用な情報が本法によって簡便、正確かつ迅速に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】ヒトより採取した全血から遺伝子多型を検出するまでのフロー図である。
【図2】ApoE3/3型検体の実施例および比較例でのDNA増幅結果を示す図である。
【図3】ApoE2/3型検体の実施例および比較例でのDNA増幅結果を示す図である。
【図4】ApoE3/4型検体の実施例および比較例でのDNA増幅結果を示す図である。
【図5】ApoE4/4型検体の実施例および比較例でのDNA増幅結果を示す図である。
【図6】ApoE3/3型検体の実施例および比較例でのApoE遺伝子の制限断片を分離した結果を示す図である。
【図7】ApoE2/3型検体の実施例および比較例でのApoE遺伝子の制限断片を分離した結果を示す図である。
【図8】ApoE3/4型検体の実施例および比較例でのApoE遺伝子の制限断片を分離した結果を示す図である。
【図9】ApoE4/4型検体の実施例および比較例でのApoE遺伝子の制限断片を分離した結果を示す図である。
【図10】本発明を適用し得るApoE遺伝子多型の検出方法の一例の概念図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の目的遺伝子の遺伝子多型検出方法において、
目的遺伝子に特異的なプライマー対を用いてDNAを増幅する工程、
増幅されたDNAを目的遺伝子の一塩基多型を認識配列に含む制限酵素を用いて切断する工程、
切断されたDNA断片を分離する工程、
分離されたDNA断片を検出する工程、
を有し、
前記増幅工程は、ポリメラーゼ連鎖反応を行う第1、第2の増幅段階を備え、前記第2の増幅段階は、前記第1の段階の増幅産物を含む反応溶液を試料として、前記第1の増幅段階と同一のプライマー対を用いてポリメラーゼ連鎖反応を行うことを特徴とする遺伝子多型検出方法。
【請求項2】
ポリメラーゼ連鎖反応におけるDNAの変性、プライマーアニーリング、DNAの伸長から成るサイクルの数は、前記第2の増幅段階としての前記増幅工程における2回目の増幅段階よりも、前記第1の増幅段階としての前記増幅工程における1回目の増幅段階の方が少ないことを特徴とする請求項1の遺伝子多型検出方法。
【請求項3】
前記1回目の増幅段階の前記サイクル数は15サイクル以下であることを特徴とする請求項2の遺伝子多型検出方法。
【請求項4】
前記第2の増幅段階における試料としての前記第1の増幅段階の反応溶液は、前記第2の増幅段階の反応溶液の総量の1/5以下であることを特徴とする請求項1、2又は3の遺伝子多型検出方法。
【請求項5】
前記増幅工程における1回目の増幅段階の試料は、動物細胞;植物細胞;又は細菌、真菌、ウイルスを含む微生物である請求項1〜4のいずれかの項に記載の遺伝子多型検出方法。
【請求項6】
前記増幅工程における1回目の増幅段階の試料は、体液、粘膜、生体排泄物、体毛の毛根、又はこれらに含まれる細胞であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の遺伝子多型検出方法。
【請求項7】
前記増幅工程における1回目の増幅段階の試料は、全血、血液中の細胞、又はリンパ球であることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
目的とする遺伝子がアポリポタンパクE遺伝子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の遺伝子多型検出方法。
【請求項9】
前記切断工程において、増幅されたDNAを、アポリポタンパクE遺伝子のコドン112の一塩基多型部位を認識配列に含む第1の制限酵素と、アポリポタンパクE遺伝子のコドン158の一塩基多型部位を認識配列に含む第2の制限酵素と、を用いて、前記コドン112の一塩基多型部位を認識配列での第1の切断部位で切断し、且つ、前記プライマー対及び前記第1、第2の制限酵素は、それぞれのアポリポタンパクE遺伝子多型に特異的なそれぞれ略100bp以上のDNA断片を生成し得るように選択されことを特徴とする請求項8の遺伝子多型検出方法。
【請求項10】
前記第1、第2の制限酵素はいずれも、前記コドン112の一塩基多型部位を含む認識配列と、前記コドン158の一塩基多型部位を含む認識配列との間に切断部位を持たないことを特徴とする請求項9の遺伝子多型検出方法。
【請求項11】
前記第1の制限酵素は前記増幅したDNAにおいてアポリポタンパクE遺伝子のコドン112の一塩基多型部位を含む認識配列より上流に切断位置を持たず、前記第2の制限酵素の前記増幅したDNAにおいてアポリポタンパクE遺伝子のコドン158の一塩基多型部位を含む認識配列より上流に切断位置を持たないことを特徴とする請求項9又は10の遺伝子多型検出方法。
【請求項12】
前記第1の制限酵素は塩基配列ACRYGT(RはA又はG、YはC又はT)を認識して切断し、前記第2の制限酵素は塩基配列RGCGCY(RはA又はG、YはC又はT)を認識して切断することを特徴とする請求項9、10又は11の遺伝子多型検出方法。
【請求項13】
前記第1の制限酵素はAflIII、前記第2の制限酵素はHaeIIであることを特徴とする請求項12の遺伝子多型検出方法。
【請求項14】
前記切断工程において、増幅されたたDNAを2種類の制限酵素を用いてアポリポタンパクE遺伝子のコドン112の一塩基多型部位を含む認識配列での第1の切断部位及びアポリポタンパクE遺伝子のコドン158の一塩基多型部位を含む認識配列での第2の切断部位で切断することを特徴とする請求項8の遺伝子多型検出方法。
【請求項15】
前記2種類の制限酵素のうち一方は塩基配列ACRYGT(RはA又はG、YはC又はT)を認識して切断し、他方は塩基配列RGCGCY(RはA又はG、YはC又はT)を認識して切断することを特徴とする請求項14の遺伝子多型検出方法。
【請求項16】
前記2種類の制限酵素は、AflIII及びHaeIIであることを特徴とする請求項15の遺伝子多型検出方法。
【請求項17】
それぞれのアポリポタンパクE遺伝子多型に特異的なそれぞれ略100bp以上のDNA断片が生成されることを特徴とする請求項14、15又は16の遺伝子多型検出方法。
【請求項18】
前記プライマー対のうち上流側プライマーは、前記第1の切断位置より、60bp以上、136bp以下の上流の位置に5’末端が設定されることを特徴とする請求項9〜17のいずれかの項に記載の遺伝子多型検出方法。
【請求項19】
前記プライマー対のうち上流側プライマーは、前記第1の切断位置より90bp以上の上流の位置に5’末端が設定されることを特徴とする請求項18の遺伝子多型検出方法。
【請求項20】
前記プライマー対のうち上流側プライマーは、前記第1の切断位置より100bp以上の上流の位置に5’末端が設定されることを特徴とする請求項19の遺伝子多型検出方法。
【請求項21】
前記プライマー対のうち上流側プライマーは、前記第1の切断位置より120bp以下の上流の位置に5’末端が設定されることを特徴とする請求項18、19又は20の遺伝子多型検出方法。
【請求項22】
前記プライマー対のうち下流側プライマーは、前記第2の切断位置より、30bp以上、202bp以下の下流の位置に5’末端が設定されることを特徴とする請求項9〜21のいずれかの項に記載の遺伝子多型検出方法。
【請求項23】
前記プライマー対のうち下流側プライマーは、前記第2の切断位置より70bp以上の下流の位置に5’末端が設定されることを特徴とする請求項22のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
【請求項24】
前記プライマー対のうち下流側プライマーは、前記第2の切断位置より100bp以上の下流の位置に5’末端が設定されることを特徴とする請求項22又は23の遺伝子多型検出方法。
【請求項25】
前記プライマー対のうち下流側プライマーは、前記第2の切断位置より185bp以下の下流の位置に5’末端が設定されることを特徴とする請求項22、23又は24の遺伝子多型検出方法。
【請求項26】
前記プライマー対のうち下流側プライマーは、前記第2の切断位置より156bp以下の下流の位置に5’末端が設定されることを特徴とする請求項22〜25のいずれかの項に記載のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
【請求項27】
前記プライマー対の各プライマーは、それぞれ下記の塩基配列、
AATCGGAACTGGAGGAACAACTG(配列番号1)
GCCCGCACGCGGCCCTGTTC(配列番号2)
を有するオリゴンヌクレオチドであることを特徴とする請求項8〜26のいずれかの項に記載のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
【請求項28】
前記増幅工程における1回目の増幅段階の試料は全血であることを特徴とする請求項8〜27のいずれかの項に記載の遺伝子多型検出方法。
【請求項29】
切断したDNA断片を電気泳動で分離することを特徴とする請求項1〜28のいずれかの項に記載の遺伝子多型検出方法。
【請求項30】
試料中の目的遺伝子のゲノタイピングのための遺伝子増幅方法において、目的遺伝子に特異的なプライマー対を用いてDNAを増幅する工程を有し、前記増幅工程は、ポリメラーゼ連鎖反応を行う第1、第2の増幅段階を備え、前記第2の増幅段階は、前記第1の段階の増幅産物を含む反応溶液を試料として、前記第1の増幅段階と同一のプライマー対を用いてポリメラーゼ連鎖反応を行うことを特徴とする遺伝子増幅方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−101715(P2006−101715A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−289432(P2004−289432)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】