遺伝子導入のためのエンドサイトーシス促進表面を有するペルフルオロカーボンナノエマルション
本発明は、遺伝子導入に適する、エンドサイトーシス促進表面を備えた安定なペルフルオロカーボンナノエマルション、その作製及び使用を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子導入に適する安定なペルフルオロカーボンナノエマルション、その作製及び使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
従来のオリゴヌクレオチド及び最近の短い干渉RNAは、遺伝子導入のための有望で且つ広く使用される物質である。現在までのところ、この遺伝物質を生きている動物に適用する可能性は非常に限られている。
【0003】
遺伝物質の送達のために、ペルフルオロカーボン(PFC)エマルションは酸素運搬剤として成功裏に使用されているので、これらのエマルションは有望なツールである(Daugherty, W. P., et al., Neurosurgery 54: 1223-1230 (2004); Riess, J. G., Artif. Cells Blood Substit. Immobil. Biotechnol. 33:47-63 (2005))。気管内適用後、従来のペルフルオロカーボンエマルションは薬剤を肺に運搬することができる (Dickson, E. W. et al., Acad. Emerg. Med. 10: 1019-1023 (2003))。さらに、PFCエマルションは、呼気による安全な排出という利点を有する (Putyatina, T. K. et al., Artif. Cells Blood Substit. Immobil. Biotechnol. 22: 1281-1285 (1994))。
【0004】
従って、ペルフルオロカーボンは、生存動物への遺伝物質の送達のための有効で安全なツールとして機能することができる。酸素運搬剤としてのそれらの機能のために、従来のPFCエマルションは血管床から離れるのを妨げる大きさを有し、従ってそのようなエマルションは生きている生物の細胞に物質を輸送するができない。
【0005】
それよりは有効でないいくつかの運搬システム、例えばコレステロールに結合した又はアポリポタンパク質Aによって媒介される肝臓への輸送(Kim, S. I. et al., A-I. Mol. Ther. 15: 1145-1152 (2007))がここ数年間に提起されてきた。
【0006】
欧州特許第B−0788347号は、平均直径10nmまでの水滴を含有する油中水型フルオロカーボンエマルションの作製を開示する。フッ素化界面活性剤又は少なくとも1つのフッ素化界面活性剤を含む界面活性剤の混合物が乳化剤として利用される。
【0007】
欧州特許第A−1844772号は、乳化剤がC10〜C36炭化水素鎖又はフルオロカーボン鎖を有するイミダゾリウム誘導体である、オリゴヌクレオチドによる細胞のトランスフェクションのための組成物を開示する。
【0008】
欧州特許第B−00831770号は、医薬活性化合物を担持する不連続相を含むフッ素化化合物の連続マイクロディスパージョンを開示する。
【0009】
米国特許出願第2004/0115159号は、化粧品及び医薬品のための運搬剤として適する三成分系の界面活性物質からなる水中油型ナノエマルションを開示する。この三成分系は、アニオン、カチオン及び両親媒性界面活性剤を含有する。
【0010】
米国特許第7,211,248号は、超音波造影剤に、血漿DNAを担持するタンパク質安定化マイクロ粒子を添加する、DNAによる肝細胞のトランスフェクションのための方法を開示する。トランスフェクションは肝細胞の超音波処理によって実施される。
【0011】
米国特許出願第2007/0184076号は、フルオロカーボンと治療活性物質、例えば抗癌剤の生物学的に許容される油性混合物からなるナノドロップの混合物を開示する。
【0012】
米国特許出願第2006/0013820号は、様々なフルオロカーボン、治療薬として適切な抗原、及び場合により付加的な医薬担体を含有する組成物を開示する。この組成物は、特にHIVを治療するためのワクチンとして適切であると述べられている。
【0013】
国際公開第96/40057号、同第96/40053号及び欧州特許第A−1306083号は、治療活性物質のための担体としての安定なペルフルオロカーボン(ナノ)エマルションを開示する。
【0014】
米国特許第6,071,890号は、体内でDNA及びRNA及びさらに生物学的に活性な化合物の運搬を支持する両親媒性カチオン物質を開示する。これらの物質はステロイドに結合されている。
【0015】
国際公開第01/722812号は、トランスフェクション剤としての、ポリマー物質、生物学的に活性な治療因子及び脂質タンパク質を含有するマイクロ粒子を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】欧州特許第B−0788347号
【特許文献2】欧州特許第A−1844772号
【特許文献3】欧州特許第B−00831770号
【特許文献4】米国特許出願第2004/0115159号
【特許文献5】米国特許第7,211,248号
【特許文献6】米国特許出願第2007/0184076号
【特許文献7】米国特許出願第2006/0013820号
【特許文献8】国際公開第96/40057号
【特許文献9】国際公開第96/40053号
【特許文献10】欧州特許第A−1306083号
【特許文献11】米国特許第6,071,890号
【特許文献12】国際公開第01/722812号
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Daugherty, W. P., et al., Neurosurgery 54: 1223-1230 (2004)
【非特許文献2】Riess, J. G., Artif. Cells Blood Substit. Immobil. Biotechnol. 33:47-63 (2005)
【非特許文献3】Dickson, E. W. et al., Acad. Emerg. Med. 10: 1019-1023 (2003)
【非特許文献4】Putyatina, T. K. et al., Artif. Cells Blood Substit. Immobil. Biotechnol. 22: 1281-1285 (1994)
【非特許文献5】Kim, S. I. et al., A-I. Mol. Ther. 15: 1145-1152 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
生物における遺伝子導入のための信頼できる運搬ビヒクルが今もなお必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
今や、エンドサイトーシス促進表面を有するペルフルオロカーボンナノエマルション、特に乳化剤としてリン脂質を有するペルフルオロカーボンナノエマルションがインビボでの遺伝物質の適用のために適切であることが見出された。
【0020】
エンドサイトーシス促進表面を提供する分子をナノエマルションに添加することは、細胞内へのペルフルオロカーボンナノエマルションの取り込みを有意に上昇させる。本発明は、従って、
(1)エンドサイトーシス促進表面を有する安定なペルフルオロカーボンナノエマルション;
(2)前記ナノエマルションが、連続ペルフルオロカーボン相と緩衝不連続水相を有し、且つ
(a)少なくとも1つのペルフルオロカーボン化合物を含むペルフルオロカーボン成分;
(b)乳化成分;及び
(c)エンドサイトーシスを介したナノエマルションの細胞取り込みを誘導する少なくとも1つの化合物を含むエンドサイトーシス促進成分
を含有する、上記(1)の好ましい実施形態;
(3)上記(1)又は(2)で定義されたナノエマルションを含有する遺伝子導入剤又は医薬組成物;
(4)以下の工程:
(a)乳化成分を含む緩衝水溶液を調製すること、
(b)ペルフルオロカーボン成分を添加すること、及び
(c)工程(b)の反応生成物を混合し、高圧ホモジナイザーによって均質化すること
を含む、上記(1)若しくは(2)のナノエマルション又は上記(3)の遺伝子導入剤若しくは医薬組成物を調製するための方法;
(5)遺伝物質を患者に導入するための薬剤を調製するための、上記(1)又は(2)で定義されたナノエマルションの使用;
(6)上記(1)若しくは(2)で定義されたナノエマルション又は上記(3)で定義された遺伝子導入剤若しくは医薬組成物を患者に投与することを含む、遺伝物質を患者に導入するための方法;並びに
(7)細胞を上記(1)若しくは(2)で定義されたナノエマルション又は上記(3)で定義された遺伝子導入剤と接触させることを含む、親水性化合物をインビトロで細胞に導入するための方法
を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】加熱ユニットの温度プロフィール及び5匹の麻酔マウスの平均体温と標準偏差を示す。
【図2】冷却期間中の5匹の麻酔マウスの平均動脈圧を標準偏差と共に示す(対照)。
【図3】ACE遮断薬カプトプリル(Captoperil)の適用(n=5、10mg/kgカプトプリル)から6から7時間後の平均動脈圧(±SD)を示す。灰色の点=対照値、黒い点=実測値。
【図4】アンギオテンシノーゲンsiRNAを有するナノ担体(n=5、ナノ担体300μl、Agt siRNA 60μg、表面:フォルテコルチン(Fortecortin)によって保護されたトランスフェリン)の適用から24時間後の平均動脈圧(±SD)を示す。灰色の点=対照値、黒い点=実測値。
【図5】「ハイドロダイナミックトランスフェクション」の2秒以内に注射した、ナノ担体なしでのアンギオテンシノーゲンsiRNA(n=5、Agt siRNA 60μg)の適用から24時間後の平均動脈圧(±SD)を示す。灰色の点=対照値、黒い点=実測値。
【図6】ナノ担体の表面がエンドサイトーシス促進タンパク質トランスフェリンを有さない、不完全なナノ担体を使用したアンギオテンシノーゲンsiRNA(n=5、ナノ担体300μl、Agt siRNA 60μg、表面:トランスフェリンなし、フォルテコルチンの添加)の適用から24時間後の平均動脈圧(±SD)を示す。灰色の点=対照値、黒い点=実測値。
【図7】ナノ担体を使用した非コードsiRNA(n=5、ナノ担体300μl、Agt siRNA 60μg、表面:フォルテコルチンによって保護されたトランスフェリン)の適用から24時間後の平均動脈圧(±SD)を示す。灰色の点=対照値、黒い点=実測値。
【図8】ナノ担体だけ(n=5、ナノ担体300μl、Agt siRNA 60μg、表面:フォルテコルチンによって保護されたトランスフェリン)の適用から24時間後の平均動脈圧(±SD)を示す。灰色の点=対照値、黒い点=実測値。
【図9】ナノ担体の粒子を示す電子顕微鏡画像。粒子は約50ナノメートルの大きさを有する。
【図10】画像は、46,000倍率での肝細胞を示す。siRNAを含有するナノ担体の静脈内注射の30分後に肝臓を外植した。矢印は、siRNAを担持するナノ担体の粒子を含む、受容体媒介性エンドサイトーシス後のエンドソームを示す。細胞表面近傍の粒子の周囲の膜及び自由間隙は、受容体を介したエンドサイトーシスによって取り込みが起こることを実証する。
【図11】50,000倍率での肝細胞の電子顕微鏡画像。ナノ担体及びsiRNAの静脈内注射の2時間後に肝臓を外植した。周囲の膜を有さない暗構造体を含むナノ担体の円形小胞。図10の画像におけるナノ担体小胞と異なり、粒子は膜によって覆われていない。明らかに、すべての可視ナノ担体はサイトゾル中に放出された。
【図12】図10で提示した電子顕微鏡切片の拡大詳細画像。175,000倍率で、肝細胞の細胞質中に放出されたsiRNA担持ナノ担体の粒子を示す。図10及び11においても可視である粒子内の暗構造体は、組み込まれたsiRNAに相当する。
【図13】50,000倍率での肝細胞の電子顕微鏡画像。静脈内注射の4時間後に、動物を犠死させ、肝臓を抽出した。この時点でナノ担体はもはや図10から12において可視であった暗構造体を含まない。おそらくナノ担体によって送達されたsiRNAは細胞質中に放出されたと考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の態様(1)又は(2)の安定なペルフルオロカーボンナノエマルション(以下では簡単に「本発明のナノエマルション」と称する)は、連続ペルフルオロカーボン相と緩衝不連続水相を有する。緩衝水相はナノエマルションの25〜60重量%に相当することが好ましい。水相のための適切な緩衝剤は、リン酸緩衝剤、例えばリン酸二水素ナトリウムを含む。
【0023】
本発明のナノエマルションは、100nm未満の粒径を有することを意味するナノエマルションである。本発明のナノエマルションは、約50nmの平均粒径を有する粒子からなる。
【0024】
本発明のナノエマルションは、少なくとも1つのペルフルオロカーボン化合物を含むペルフルオロカーボン成分(a)、好ましくは必須乳化成分としてリン脂質を含み、ヘルパー脂質をさらに含んでもよい乳化成分(b)、及びナノエマルションの細胞取り込みを誘導する少なくとも1つの化合物を含むエンドサイトーシス促進成分(c)からなる。
【0025】
成分(a)の少なくとも1つのペルフルオロカーボン化合物は、好ましくは、構造:
CmF2m+1X、XCmF2mX、XCnF2nOCoF2oX、N(CoF2oX)3及びN(CoF2o+1X)3
(式中、mは3〜10の整数であり、n及びoは1〜5の整数であり、Xは、存在する各々の場合に独立してCl、Br及びIから選択される)
を有する化合物から選択される。
【0026】
成分(a)は、前記ペルフルオロカーボン化合物の混合物を含み得る。特に好ましいペルフルオロカーボン化合物は、ペルフルオロオクチルブロマイド及びペルフルオロトリブチルアミン及びそれらの混合物である。
【0027】
乳化成分(b)は、当分野で公知の多種多様な乳化化合物、特に導入部の中で引用した参考文献に開示されているものを含み得る。好ましい乳化化合物はリン脂質であり、さらには、前述したように、リン脂質が乳化成分(b)の必須乳化化合物であることが特に好ましい。従って、乳化成分(b)は、好ましくは、式I:
【化1】
(式中、
R1及びR2は、独立してH及びC16〜24アシル残基(前記アシル残基は飽和であってもよく又は不飽和であってもよく、1〜3個の残基R3を担持してもよく、C原子の1又はそれ以上は、O又はNR4によって置換されてもよい)から選択され、
Xは、H、−(CH2)p−N(R4)3+、−(CH2)p−CH(N(R4)3+)−COO−、−(CH2)p−CH(OH)−CH2OH及び−CH2(CHOH)p−CH2OH(式中、pは1〜5の整数であり;
R3は、独立してH、低級アルキル、F、Cl、CN及びOHから選択され;
R4は、独立してH、CH3及びCH2CH3から選択される)
から選択される)
によって表される少なくとも1つのリン脂質化合物又は薬理学的に許容されるその塩を含む。
【0028】
上記構造において、R1及びR2は、独立してH及び非置換C16〜24アシル残基から選択され、前記アシル残基は飽和であってもよく又は不飽和であってもよく、Xは、コリン、セリン、エタノールアミン及びイノシトール残基から選択されることが好ましい。リン脂質成分は、ホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン及びそれらの混合物から選択されることが最も好ましい。
【0029】
乳化成分(b)は、脂肪酸、ステロイド類、ビタミン類及びそれらの混合物から選択される1又はそれ以上のヘルパー脂質をさらに含んでもよい。
【0030】
エンドサイトーシス促進成分(c)において、細胞取り込みを誘導する前記少なくとも1つの化合物は、エンドサイトーシスを介した細胞取り込みを促進する化合物から選択される。これらの化合物は、トランスフェリン、そのフラグメント及び誘導体及び類似の作用/活性を有する化合物;アポリポタンパク質A1、そのフラグメント及び誘導体及び類似の作用/活性を有する化合物;グリコシルホスファチジルイノシトール(GIP)アンカー型タンパク質、そのフラグメント及び誘導体及び類似の作用/活性を有する化合物;メガリン結合タンパク質、そのフラグメント及び誘導体及び類似の作用/活性を有する化合物;並びにアンテナペディアタンパク質、そのフラグメント及び誘導体及び類似の作用/活性を有する化合物を含むが、これらに限定されない。特に好ましいのは、鉄輸送タンパク質トランスフェリン並びにそのフラグメント及び誘導体、特に、鉄担持シデロトランスフェリンとして特異的受容体に結合し、その結果としてエンドサイトーシスを誘導する、ヒトホロトランスフェリン並びにそのフラグメント及び誘導体である。
【0031】
これらの輸送タンパク質は、インビボ及びインビトロで細胞エンドサイトーシスを促進するために表面に結合される可変物質を有するペルフルオロカーボンナノ担体の表面において提供される。
【0032】
本発明の特に好ましいナノエマルションは、ペルフルオロカーボン成分(a)としてペルフルオロオクチルブロマイド、リン脂質としてホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、コレステロール、リゾホスファチジルコリン、DL−α−トコフェロール及びホスファチジルエタノールアミンを含む乳化成分(b)、並びにエンドサイトーシス促進成分(c)としてトランスフェリンを含有する。
【0033】
本発明のナノエマルションは、インビボ及びインビトロで細胞を標的するための、医薬品及び遺伝物質を含む親水性化合物の導入に適し、特に本発明のナノエマルションは、RNA及びDNA配列並びにそれらの組合せ及び誘導体から選択される、好ましくはすべての種類のオリゴヌクレオチド、miRNA、siRNA、dsRNA等から選択される遺伝物質の導入に適する。
【0034】
本発明のナノエマルションは、mRNA内の相補的配列を同定し、それがタンパク質に翻訳されるのを妨げる又はタンパク質複合体によるmRNAの切断を生じさせる、短い干渉RNA(siRNA)の導入のために特に好ましい。対応する遺伝子は、21〜23ヌクレオチドを含むこれらの二本鎖のRNAの使用によって沈黙化される。遺伝子サイレンシングのためにsiRNAを使用する場合、投与のための局所経路及びビヒクルの選択は、無傷生存哺乳動物細胞及び器官においてsiRNAの有効な細胞内濃度を得るために極めて重要である。
【0035】
本発明のナノエマルションを調製するための本発明の態様(4)の方法は、以下の工程:
(a)乳化成分を含む緩衝水溶液を調製すること、
(b)ペルフルオロカーボン成分を添加すること、及び
(c)その後、工程(b)の反応生成物を混合し、次に均質化して(例えば超音波処理によって)、最後に高圧均質化すること
を含む。
【0036】
ナノエマルションにエンドサイトーシス促進成分又は親水性化合物を担持させるために、前記方法は、工程:
(d)工程(c)の反応生成物に、エンドサイトーシス促進成分及び/又は導入のための親水性化合物(特に遺伝物質)を添加すること、及び生じた混合物を均質化すること(例えば超音波処理によって)
の1又はそれ以上をさらに含む。
【0037】
エンドサイトーシス促進成分及び親水性化合物は、単一工程(d)又は別々の工程(d)で添加してもよく、またそれらを工程(a)の緩衝水溶液に含めてもよい。
【0038】
本発明の態様(3)の遺伝子導入剤又は医薬組成物及び態様(5)の薬剤は、医薬的に許容される添加物、担体等をさらに含有してもよい。
【0039】
ナノ担体の作用機構を説明し、その有効性を明らかにするために、トランスフェリンをエンドサイトーシス促進物質とするその使用を以下の「実施例」で示す。
【0040】
例示的な遺伝子導入は、平均動脈圧の明らかな低下を生じさせるアンギオテンシノーゲンsiRNAの適用である。
【0041】
本発明を以下の「実施例」においてより詳細に説明し、実施例では、トランスフェリンをエンドサイトーシス促進物質として及び短い干渉RNAを遺伝物質として使用する。これらの実施例は、しかし、本発明を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0042】
ペルフルオロカーボン/トランスフェリンナノ担体の調製:
ペルフルオロカーボンナノ担体の調製のために、ペルフルオロオクチルブロマイド(Perflubron)をリン脂質の混合物で乳化する。混合物1gは、蒸留水及び75mM リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)緩衝液中にホスファチジルコリン(980mg)、スフィンゴミエリン(10mg)、コレステロール(5mg)及びリゾホスファチジルコリン(5mg)を含む。ペルフルオロカーボンナノ担体1000μlを得るために、ペルフルオロオクチルブロマイド475μl、リン脂質36mg、75mM NaH2PO4 200μl、pH7.4及び蒸留水325μlを使用する。
【0043】
最初に、リン脂質、リン酸二水素ナトリウム及び蒸留水を混合し、その後ペルフルオロカーボン(PFC)溶液を添加する。40秒以内に、複合物質を振とう機によって60秒間混合し、中断することなく超音波装置によって1100kHzの周波数で120秒間、30秒の間隔をおいて2回均質化しなければならない。音波処理ユニットを4℃の温度に保持する。そうでなければ不溶性のPFCの最終的な乳化のために、混合物を高圧ホモジナイザーに入れる。2500バールで6回以内の均質化工程で、乳状複合物質は透明な青みがかったエマルションになる。この透明性への変化が、ペルフルオロカーボン粒子の大きさが可視波長未満になることの肉眼的マーカーである。λ=400nmの最低可視波長(青/紫)は、混合物が透明になったとき粒径をλ/2と定義する。この時点でさらに4サイクルの均質化を追加する。粒径は、100nm未満のすべての粒子に関して電子顕微鏡検査で50nm(平均)と測定された。機能性ナノ担体を得るために、ホロトランスフェリン4mgを滅菌0.9%NaCl 60μlに溶解する。その直後に、冷却した超音波装置によってトランスフェリンを2秒間均質化する。溶解したトランスフェリンをペルフルオロカーボンエマルション1000μlに添加して、4mg/mlの最終濃度を得る。再び、化合物を30秒間直接振とう機上に置く。
【実施例2】
【0044】
遺伝子導入
例示的遺伝子導入:レニンは、血圧低下に応答して腎臓によって合成されるホルモンである。レニンはアンギオテンシノーゲンをアンギオテンシン1に変換し、アンギオテンシン1は、最終的にアンギオテンシン変換酵素(ACE)によってアンギオテンシン2へと活性化される。アンギオテンシン2は中期的血圧調節のために極めて重要である。ナノ担体によって送達されるsiRNAを介したアンギオテンシノーゲン翻訳の抑制は、従来のACE遮断薬と同様の血圧低下を生じさせるはずである。作用の比較のために、動物の群をアンギオテンシン変換酵素遮断薬カプトプリルで処置した。この低分子水溶性物質を腹腔内注射として適用した。注射の6時間後、規定された温度調節プロフィール(以下参照)を使用して血圧への作用を測定した。
【0045】
siRNAの添加:雄性CD1マウスへのsiRNAの導入を明らかにする。35gのマウスにおける使用のために、インビボ試験の直前にsiRNA 60μgを等張NaCl 30μlに添加する。この溶液をナノ担体300μlに添加し、超音波装置によって4℃で2秒間均質化する。
【0046】
マウスの尾静脈へのナノ担体及び遺伝物質の注射:全身吸入麻酔のために、半閉鎖系において動物に63% N2O、35% O2及び2% CO2中のイソフルランの混合物を自発的に吸入させた。
【0047】
siRNAとナノ担体からなる化合物を全身吸入麻酔下で微静脈に注射した。安定な呼吸循環状態を確保するため、マウスを温度調節ベッドに横たわらせ、赤外線ランプによって加温した。注射の間及び注射後に呼吸頻度を観測した。静脈内注射の直後に麻酔を停止し、動物はその後2分以内に回復した。
【0048】
種々の配列のアンギオテンシノーゲンsiRNAを商業的に合成し、各々を5匹の動物の群において試験した。対照動物は、siRNAを含まない若しくは非コードsiRNAを含む完全なナノ担体、siRNAの高流量注射、又はトランスフェリンを含まないPFCナノ担体中のsiRNAを摂取した。
【0049】
遺伝子導入の標的;アンギオテンシノーゲンsiRNAの適用後の血圧の低下:アンギオテンシノーゲンmRNAの翻訳が成功裏に阻止されるか否かを評価するため、規定された温度プロフィール(以下参照)の間の血圧調節への作用を測定した。温度調節ベッドを使用して、レニン−アンギオテンシノーゲン系が活性化して血圧を安定に保持するように、マウスの体温を低下させることが可能であった。機能的レニン−アンギオテンシン系の不活性化は、温度プロフィールの間に明らかに目に見える血圧の有意の低下を生じさせる。
【0050】
静脈内注射によって動物に種々の前記化合物を投与した24時間後に、動物に全身吸入麻酔を実施した。温度調節ベッドを42℃に調整し、従って測定の最初の15分間はマウスの体温を安定に保持し、基礎血圧を確認した。15分後、ベッドの温度を30℃に調整した。それにより加熱されたベッドの温度は継続的に低下し、血圧プロフィールが開始してから30分後に30.5℃に達する。この時点(30分目)で再び血圧を測定した。ベッドの温度が30℃に達していれば、この低温を10分間保持した。この期間中、ベッドの温度が30℃に達した5分後及び10分後(プロフィールを開始してから35分後及び40分後)に血圧を測定した。ベッドの温度が30℃に達した10分後に、ベッドの温度を再び42℃に調整した。ベッドの温度が41.5℃に達したとき、従ってプロフィールの開始時点から47分後に、その次の血圧値を測定した。従って、さらに3回の血圧値を5分の間隔で、すなわち血圧プロフィールを開始した52分後、57分後及び62分後に評価した。加熱ベッドの温度プロフィールを表1に示す。
【表1】
【0051】
例示的遺伝子導入の結果:アンギオテンシノーゲンsiRNAが生存動物の細胞に成功裏に送達されるか否かを評価するため、温度調節ベッドを利用した動物の体温低下による血圧の低下を誘導した。温度プロフィールは、麻酔したマウスの平均体温を38℃から35℃へと有意に低下させ、ベッドを再加熱した後の回復を生じさせた。図1は、加温ユニットにおける前記温度プロフィール後の平均体温を示す。
【0052】
血圧へのアンギオテンシノーゲンsiRNAの作用を比較するため、ヒトにおいてレニン−アンギオテンシン系を抑制するための一般的な治療選択肢である、アンギオテンシン変換酵素遮断薬カプトプリルで処置した動物における温度プロフィールの影響を試験した。その後、ペルフルオロカーボンナノエマルション及びトランスフェリンを含有する又はナノエマルションだけを含有するナノ担体中のアンギオテンシノーゲンsiRNAを摂取した動物において温度プロフィールの影響を試験した。データを、ナノ担体、ナノ担体と非コードsiRNA又はsiRNA単独で処置した対照動物の血圧値と比較した。機能的ナノ担体及びsiRNAは動物によって良好に耐容された。
【0053】
未処置動物における血圧プロフィール:図2は、未処置マウスの平均動脈圧を示す。
【0054】
アンギオテンシン変換酵素遮断薬で処置した動物における血圧プロフィール:アンギオテンシン変換酵素遮断薬カプトプリルで処置したマウスは、レニン−アンギオテンシン系の障害を有する。規定された温度プロフィールの間の血圧への体温低下の影響を試験した。それにより、ベッドの温度が30℃に達した5分後及び10分後に血圧の著明な低下が明らかにされた。これらの動物おいて正常基礎血圧値への回復は緩やかに起こったため、動物は52分目でまだ低血圧であった(図3)。
【0055】
ナノ担体を介したアンギオテンシノーゲンsiRNA送達後のマウスにおける血圧プロフィール:動物は、ナノ担体によって送達されたアンギオテンシノーゲンsiRNA配列CCG GTT CTT GCC ACT GAG AAA(配列番号1)を摂取した。静脈内注射により、ナノ担体300μl中でsiRNA 60μgを適用した。24時間のインキュベーション期間により、siRNAはアンギオテンシノーゲンの翻訳を妨げ、それによってレニン−アンギオテンシン系に影響を及ぼした。対照と比較して、動物は基礎血圧の障害を有し、体温の低下後に明確な血圧の低下があった。さらに、血圧は57分目まで低い値のままであった。従って、測定された血圧値は、アンギオテンシン変換酵素阻害剤で処置した動物とナノ担体を介して送達されたアンギオテンシンsiRNAを摂取した動物との間で同様であった。図4は、siRNA後の動脈圧の低下がアンギオテンシノーゲンの阻害を誘導したことを示す。
【0056】
さらなる対照動物における血圧プロフィール:4つの群の対照動物に、表2に示す複合物質を与えた。これらの群の動物では、体温低下に対する応答として35分目及び40分目に血圧が低下した。37℃〜42℃の正常値への回復により血圧は再び急速に上昇し、動物は47分目からプロフィールが終了するまで正常基礎値を有していた。体温低下に関連して認められた血圧低下はわずかであり、温度が再び正常値に達した直後に正常基礎値への回復が起こり、従ってこれらのプロフィールは未処置動物のものと同様であった(統計的に差がなかった)。
【表2】
【0057】
エンドサイトーシス促進分子を有さないペルフルオロカーボンナノエマルション:エンドサイトーシス促進表面を有さないペルフルオロカーボンナノエマルションに関する実験データを、血圧調節性レニン−アンギオテンシノーゲン系に対するsiRNAの例示的使用について図6に示す。
【0058】
エンドサイトーシス促進表面を有さないペルフルオロカーボンナノエマルションで処置した動物の血圧プロフィールを対照動物の血圧プロフィールと比較した。この実験データは、エンドサイトーシス促進表面を有さないペルフルオロカーボンナノエマルションは、この物質を摂取した動物の血圧プロフィールが対照の血圧プロフィールと有意に異ならなかったことから、生存動物の細胞への遺伝物質の送達に関して機能性ではないことを明らかにする。
【0059】
マウスの肝細胞へのアンギオテンシノーゲンsiRNA送達の電子顕微鏡可視化:体重35gのマウスに、アンギオテンシノーゲンsiRNAを担持するナノ担体の尾静脈注射を実施した。30分間及びそれぞれ4時間ずつ2回の間隔を置いた後、動物を犠死させ、肝臓を外植した。肝組織をエポキシ樹脂で包埋し、ミクロトームによって薄切片を得た。これらの切片の電子顕微鏡検査は、細胞に組み込まれたナノ粒子の特殊な外観を明確に示した。生存動物の無傷器官にsiRNAを送達するためのナノ担体の効率性が電子顕微鏡画像において明らかにされた:最初の30分以内にナノ担体は受容体媒介性取り込みによって細胞内エンドソームに組み込まれた。注射後最初の2時間に、ナノ担体はエンドソームを離れ、細胞質中に遊離された。次の2時間の後に、ナノ担体の高電子密度の構造体はもはや目に見えず、おそらく運搬されたsiRNAが放出されて、サイトゾル内に遊離されたことを示唆する。
【0060】
図9から13に示す電子顕微鏡画像は、ナノ担体の構造を示し、生存マウスにおける静脈内注射後のその受容体を介した取り込み、細胞内エンドソームからの遊離及び送達されたsiRNAの放出を明らかにする。
【0061】
図10から13は、マウスの肝組織からの横断面の電子顕微鏡画像を示す。
配列表、フリーテキスト
配列番号1 アンギオテンシノーゲンsiRNA配列
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子導入に適する安定なペルフルオロカーボンナノエマルション、その作製及び使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
従来のオリゴヌクレオチド及び最近の短い干渉RNAは、遺伝子導入のための有望で且つ広く使用される物質である。現在までのところ、この遺伝物質を生きている動物に適用する可能性は非常に限られている。
【0003】
遺伝物質の送達のために、ペルフルオロカーボン(PFC)エマルションは酸素運搬剤として成功裏に使用されているので、これらのエマルションは有望なツールである(Daugherty, W. P., et al., Neurosurgery 54: 1223-1230 (2004); Riess, J. G., Artif. Cells Blood Substit. Immobil. Biotechnol. 33:47-63 (2005))。気管内適用後、従来のペルフルオロカーボンエマルションは薬剤を肺に運搬することができる (Dickson, E. W. et al., Acad. Emerg. Med. 10: 1019-1023 (2003))。さらに、PFCエマルションは、呼気による安全な排出という利点を有する (Putyatina, T. K. et al., Artif. Cells Blood Substit. Immobil. Biotechnol. 22: 1281-1285 (1994))。
【0004】
従って、ペルフルオロカーボンは、生存動物への遺伝物質の送達のための有効で安全なツールとして機能することができる。酸素運搬剤としてのそれらの機能のために、従来のPFCエマルションは血管床から離れるのを妨げる大きさを有し、従ってそのようなエマルションは生きている生物の細胞に物質を輸送するができない。
【0005】
それよりは有効でないいくつかの運搬システム、例えばコレステロールに結合した又はアポリポタンパク質Aによって媒介される肝臓への輸送(Kim, S. I. et al., A-I. Mol. Ther. 15: 1145-1152 (2007))がここ数年間に提起されてきた。
【0006】
欧州特許第B−0788347号は、平均直径10nmまでの水滴を含有する油中水型フルオロカーボンエマルションの作製を開示する。フッ素化界面活性剤又は少なくとも1つのフッ素化界面活性剤を含む界面活性剤の混合物が乳化剤として利用される。
【0007】
欧州特許第A−1844772号は、乳化剤がC10〜C36炭化水素鎖又はフルオロカーボン鎖を有するイミダゾリウム誘導体である、オリゴヌクレオチドによる細胞のトランスフェクションのための組成物を開示する。
【0008】
欧州特許第B−00831770号は、医薬活性化合物を担持する不連続相を含むフッ素化化合物の連続マイクロディスパージョンを開示する。
【0009】
米国特許出願第2004/0115159号は、化粧品及び医薬品のための運搬剤として適する三成分系の界面活性物質からなる水中油型ナノエマルションを開示する。この三成分系は、アニオン、カチオン及び両親媒性界面活性剤を含有する。
【0010】
米国特許第7,211,248号は、超音波造影剤に、血漿DNAを担持するタンパク質安定化マイクロ粒子を添加する、DNAによる肝細胞のトランスフェクションのための方法を開示する。トランスフェクションは肝細胞の超音波処理によって実施される。
【0011】
米国特許出願第2007/0184076号は、フルオロカーボンと治療活性物質、例えば抗癌剤の生物学的に許容される油性混合物からなるナノドロップの混合物を開示する。
【0012】
米国特許出願第2006/0013820号は、様々なフルオロカーボン、治療薬として適切な抗原、及び場合により付加的な医薬担体を含有する組成物を開示する。この組成物は、特にHIVを治療するためのワクチンとして適切であると述べられている。
【0013】
国際公開第96/40057号、同第96/40053号及び欧州特許第A−1306083号は、治療活性物質のための担体としての安定なペルフルオロカーボン(ナノ)エマルションを開示する。
【0014】
米国特許第6,071,890号は、体内でDNA及びRNA及びさらに生物学的に活性な化合物の運搬を支持する両親媒性カチオン物質を開示する。これらの物質はステロイドに結合されている。
【0015】
国際公開第01/722812号は、トランスフェクション剤としての、ポリマー物質、生物学的に活性な治療因子及び脂質タンパク質を含有するマイクロ粒子を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】欧州特許第B−0788347号
【特許文献2】欧州特許第A−1844772号
【特許文献3】欧州特許第B−00831770号
【特許文献4】米国特許出願第2004/0115159号
【特許文献5】米国特許第7,211,248号
【特許文献6】米国特許出願第2007/0184076号
【特許文献7】米国特許出願第2006/0013820号
【特許文献8】国際公開第96/40057号
【特許文献9】国際公開第96/40053号
【特許文献10】欧州特許第A−1306083号
【特許文献11】米国特許第6,071,890号
【特許文献12】国際公開第01/722812号
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Daugherty, W. P., et al., Neurosurgery 54: 1223-1230 (2004)
【非特許文献2】Riess, J. G., Artif. Cells Blood Substit. Immobil. Biotechnol. 33:47-63 (2005)
【非特許文献3】Dickson, E. W. et al., Acad. Emerg. Med. 10: 1019-1023 (2003)
【非特許文献4】Putyatina, T. K. et al., Artif. Cells Blood Substit. Immobil. Biotechnol. 22: 1281-1285 (1994)
【非特許文献5】Kim, S. I. et al., A-I. Mol. Ther. 15: 1145-1152 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
生物における遺伝子導入のための信頼できる運搬ビヒクルが今もなお必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
今や、エンドサイトーシス促進表面を有するペルフルオロカーボンナノエマルション、特に乳化剤としてリン脂質を有するペルフルオロカーボンナノエマルションがインビボでの遺伝物質の適用のために適切であることが見出された。
【0020】
エンドサイトーシス促進表面を提供する分子をナノエマルションに添加することは、細胞内へのペルフルオロカーボンナノエマルションの取り込みを有意に上昇させる。本発明は、従って、
(1)エンドサイトーシス促進表面を有する安定なペルフルオロカーボンナノエマルション;
(2)前記ナノエマルションが、連続ペルフルオロカーボン相と緩衝不連続水相を有し、且つ
(a)少なくとも1つのペルフルオロカーボン化合物を含むペルフルオロカーボン成分;
(b)乳化成分;及び
(c)エンドサイトーシスを介したナノエマルションの細胞取り込みを誘導する少なくとも1つの化合物を含むエンドサイトーシス促進成分
を含有する、上記(1)の好ましい実施形態;
(3)上記(1)又は(2)で定義されたナノエマルションを含有する遺伝子導入剤又は医薬組成物;
(4)以下の工程:
(a)乳化成分を含む緩衝水溶液を調製すること、
(b)ペルフルオロカーボン成分を添加すること、及び
(c)工程(b)の反応生成物を混合し、高圧ホモジナイザーによって均質化すること
を含む、上記(1)若しくは(2)のナノエマルション又は上記(3)の遺伝子導入剤若しくは医薬組成物を調製するための方法;
(5)遺伝物質を患者に導入するための薬剤を調製するための、上記(1)又は(2)で定義されたナノエマルションの使用;
(6)上記(1)若しくは(2)で定義されたナノエマルション又は上記(3)で定義された遺伝子導入剤若しくは医薬組成物を患者に投与することを含む、遺伝物質を患者に導入するための方法;並びに
(7)細胞を上記(1)若しくは(2)で定義されたナノエマルション又は上記(3)で定義された遺伝子導入剤と接触させることを含む、親水性化合物をインビトロで細胞に導入するための方法
を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】加熱ユニットの温度プロフィール及び5匹の麻酔マウスの平均体温と標準偏差を示す。
【図2】冷却期間中の5匹の麻酔マウスの平均動脈圧を標準偏差と共に示す(対照)。
【図3】ACE遮断薬カプトプリル(Captoperil)の適用(n=5、10mg/kgカプトプリル)から6から7時間後の平均動脈圧(±SD)を示す。灰色の点=対照値、黒い点=実測値。
【図4】アンギオテンシノーゲンsiRNAを有するナノ担体(n=5、ナノ担体300μl、Agt siRNA 60μg、表面:フォルテコルチン(Fortecortin)によって保護されたトランスフェリン)の適用から24時間後の平均動脈圧(±SD)を示す。灰色の点=対照値、黒い点=実測値。
【図5】「ハイドロダイナミックトランスフェクション」の2秒以内に注射した、ナノ担体なしでのアンギオテンシノーゲンsiRNA(n=5、Agt siRNA 60μg)の適用から24時間後の平均動脈圧(±SD)を示す。灰色の点=対照値、黒い点=実測値。
【図6】ナノ担体の表面がエンドサイトーシス促進タンパク質トランスフェリンを有さない、不完全なナノ担体を使用したアンギオテンシノーゲンsiRNA(n=5、ナノ担体300μl、Agt siRNA 60μg、表面:トランスフェリンなし、フォルテコルチンの添加)の適用から24時間後の平均動脈圧(±SD)を示す。灰色の点=対照値、黒い点=実測値。
【図7】ナノ担体を使用した非コードsiRNA(n=5、ナノ担体300μl、Agt siRNA 60μg、表面:フォルテコルチンによって保護されたトランスフェリン)の適用から24時間後の平均動脈圧(±SD)を示す。灰色の点=対照値、黒い点=実測値。
【図8】ナノ担体だけ(n=5、ナノ担体300μl、Agt siRNA 60μg、表面:フォルテコルチンによって保護されたトランスフェリン)の適用から24時間後の平均動脈圧(±SD)を示す。灰色の点=対照値、黒い点=実測値。
【図9】ナノ担体の粒子を示す電子顕微鏡画像。粒子は約50ナノメートルの大きさを有する。
【図10】画像は、46,000倍率での肝細胞を示す。siRNAを含有するナノ担体の静脈内注射の30分後に肝臓を外植した。矢印は、siRNAを担持するナノ担体の粒子を含む、受容体媒介性エンドサイトーシス後のエンドソームを示す。細胞表面近傍の粒子の周囲の膜及び自由間隙は、受容体を介したエンドサイトーシスによって取り込みが起こることを実証する。
【図11】50,000倍率での肝細胞の電子顕微鏡画像。ナノ担体及びsiRNAの静脈内注射の2時間後に肝臓を外植した。周囲の膜を有さない暗構造体を含むナノ担体の円形小胞。図10の画像におけるナノ担体小胞と異なり、粒子は膜によって覆われていない。明らかに、すべての可視ナノ担体はサイトゾル中に放出された。
【図12】図10で提示した電子顕微鏡切片の拡大詳細画像。175,000倍率で、肝細胞の細胞質中に放出されたsiRNA担持ナノ担体の粒子を示す。図10及び11においても可視である粒子内の暗構造体は、組み込まれたsiRNAに相当する。
【図13】50,000倍率での肝細胞の電子顕微鏡画像。静脈内注射の4時間後に、動物を犠死させ、肝臓を抽出した。この時点でナノ担体はもはや図10から12において可視であった暗構造体を含まない。おそらくナノ担体によって送達されたsiRNAは細胞質中に放出されたと考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の態様(1)又は(2)の安定なペルフルオロカーボンナノエマルション(以下では簡単に「本発明のナノエマルション」と称する)は、連続ペルフルオロカーボン相と緩衝不連続水相を有する。緩衝水相はナノエマルションの25〜60重量%に相当することが好ましい。水相のための適切な緩衝剤は、リン酸緩衝剤、例えばリン酸二水素ナトリウムを含む。
【0023】
本発明のナノエマルションは、100nm未満の粒径を有することを意味するナノエマルションである。本発明のナノエマルションは、約50nmの平均粒径を有する粒子からなる。
【0024】
本発明のナノエマルションは、少なくとも1つのペルフルオロカーボン化合物を含むペルフルオロカーボン成分(a)、好ましくは必須乳化成分としてリン脂質を含み、ヘルパー脂質をさらに含んでもよい乳化成分(b)、及びナノエマルションの細胞取り込みを誘導する少なくとも1つの化合物を含むエンドサイトーシス促進成分(c)からなる。
【0025】
成分(a)の少なくとも1つのペルフルオロカーボン化合物は、好ましくは、構造:
CmF2m+1X、XCmF2mX、XCnF2nOCoF2oX、N(CoF2oX)3及びN(CoF2o+1X)3
(式中、mは3〜10の整数であり、n及びoは1〜5の整数であり、Xは、存在する各々の場合に独立してCl、Br及びIから選択される)
を有する化合物から選択される。
【0026】
成分(a)は、前記ペルフルオロカーボン化合物の混合物を含み得る。特に好ましいペルフルオロカーボン化合物は、ペルフルオロオクチルブロマイド及びペルフルオロトリブチルアミン及びそれらの混合物である。
【0027】
乳化成分(b)は、当分野で公知の多種多様な乳化化合物、特に導入部の中で引用した参考文献に開示されているものを含み得る。好ましい乳化化合物はリン脂質であり、さらには、前述したように、リン脂質が乳化成分(b)の必須乳化化合物であることが特に好ましい。従って、乳化成分(b)は、好ましくは、式I:
【化1】
(式中、
R1及びR2は、独立してH及びC16〜24アシル残基(前記アシル残基は飽和であってもよく又は不飽和であってもよく、1〜3個の残基R3を担持してもよく、C原子の1又はそれ以上は、O又はNR4によって置換されてもよい)から選択され、
Xは、H、−(CH2)p−N(R4)3+、−(CH2)p−CH(N(R4)3+)−COO−、−(CH2)p−CH(OH)−CH2OH及び−CH2(CHOH)p−CH2OH(式中、pは1〜5の整数であり;
R3は、独立してH、低級アルキル、F、Cl、CN及びOHから選択され;
R4は、独立してH、CH3及びCH2CH3から選択される)
から選択される)
によって表される少なくとも1つのリン脂質化合物又は薬理学的に許容されるその塩を含む。
【0028】
上記構造において、R1及びR2は、独立してH及び非置換C16〜24アシル残基から選択され、前記アシル残基は飽和であってもよく又は不飽和であってもよく、Xは、コリン、セリン、エタノールアミン及びイノシトール残基から選択されることが好ましい。リン脂質成分は、ホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン及びそれらの混合物から選択されることが最も好ましい。
【0029】
乳化成分(b)は、脂肪酸、ステロイド類、ビタミン類及びそれらの混合物から選択される1又はそれ以上のヘルパー脂質をさらに含んでもよい。
【0030】
エンドサイトーシス促進成分(c)において、細胞取り込みを誘導する前記少なくとも1つの化合物は、エンドサイトーシスを介した細胞取り込みを促進する化合物から選択される。これらの化合物は、トランスフェリン、そのフラグメント及び誘導体及び類似の作用/活性を有する化合物;アポリポタンパク質A1、そのフラグメント及び誘導体及び類似の作用/活性を有する化合物;グリコシルホスファチジルイノシトール(GIP)アンカー型タンパク質、そのフラグメント及び誘導体及び類似の作用/活性を有する化合物;メガリン結合タンパク質、そのフラグメント及び誘導体及び類似の作用/活性を有する化合物;並びにアンテナペディアタンパク質、そのフラグメント及び誘導体及び類似の作用/活性を有する化合物を含むが、これらに限定されない。特に好ましいのは、鉄輸送タンパク質トランスフェリン並びにそのフラグメント及び誘導体、特に、鉄担持シデロトランスフェリンとして特異的受容体に結合し、その結果としてエンドサイトーシスを誘導する、ヒトホロトランスフェリン並びにそのフラグメント及び誘導体である。
【0031】
これらの輸送タンパク質は、インビボ及びインビトロで細胞エンドサイトーシスを促進するために表面に結合される可変物質を有するペルフルオロカーボンナノ担体の表面において提供される。
【0032】
本発明の特に好ましいナノエマルションは、ペルフルオロカーボン成分(a)としてペルフルオロオクチルブロマイド、リン脂質としてホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、コレステロール、リゾホスファチジルコリン、DL−α−トコフェロール及びホスファチジルエタノールアミンを含む乳化成分(b)、並びにエンドサイトーシス促進成分(c)としてトランスフェリンを含有する。
【0033】
本発明のナノエマルションは、インビボ及びインビトロで細胞を標的するための、医薬品及び遺伝物質を含む親水性化合物の導入に適し、特に本発明のナノエマルションは、RNA及びDNA配列並びにそれらの組合せ及び誘導体から選択される、好ましくはすべての種類のオリゴヌクレオチド、miRNA、siRNA、dsRNA等から選択される遺伝物質の導入に適する。
【0034】
本発明のナノエマルションは、mRNA内の相補的配列を同定し、それがタンパク質に翻訳されるのを妨げる又はタンパク質複合体によるmRNAの切断を生じさせる、短い干渉RNA(siRNA)の導入のために特に好ましい。対応する遺伝子は、21〜23ヌクレオチドを含むこれらの二本鎖のRNAの使用によって沈黙化される。遺伝子サイレンシングのためにsiRNAを使用する場合、投与のための局所経路及びビヒクルの選択は、無傷生存哺乳動物細胞及び器官においてsiRNAの有効な細胞内濃度を得るために極めて重要である。
【0035】
本発明のナノエマルションを調製するための本発明の態様(4)の方法は、以下の工程:
(a)乳化成分を含む緩衝水溶液を調製すること、
(b)ペルフルオロカーボン成分を添加すること、及び
(c)その後、工程(b)の反応生成物を混合し、次に均質化して(例えば超音波処理によって)、最後に高圧均質化すること
を含む。
【0036】
ナノエマルションにエンドサイトーシス促進成分又は親水性化合物を担持させるために、前記方法は、工程:
(d)工程(c)の反応生成物に、エンドサイトーシス促進成分及び/又は導入のための親水性化合物(特に遺伝物質)を添加すること、及び生じた混合物を均質化すること(例えば超音波処理によって)
の1又はそれ以上をさらに含む。
【0037】
エンドサイトーシス促進成分及び親水性化合物は、単一工程(d)又は別々の工程(d)で添加してもよく、またそれらを工程(a)の緩衝水溶液に含めてもよい。
【0038】
本発明の態様(3)の遺伝子導入剤又は医薬組成物及び態様(5)の薬剤は、医薬的に許容される添加物、担体等をさらに含有してもよい。
【0039】
ナノ担体の作用機構を説明し、その有効性を明らかにするために、トランスフェリンをエンドサイトーシス促進物質とするその使用を以下の「実施例」で示す。
【0040】
例示的な遺伝子導入は、平均動脈圧の明らかな低下を生じさせるアンギオテンシノーゲンsiRNAの適用である。
【0041】
本発明を以下の「実施例」においてより詳細に説明し、実施例では、トランスフェリンをエンドサイトーシス促進物質として及び短い干渉RNAを遺伝物質として使用する。これらの実施例は、しかし、本発明を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0042】
ペルフルオロカーボン/トランスフェリンナノ担体の調製:
ペルフルオロカーボンナノ担体の調製のために、ペルフルオロオクチルブロマイド(Perflubron)をリン脂質の混合物で乳化する。混合物1gは、蒸留水及び75mM リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)緩衝液中にホスファチジルコリン(980mg)、スフィンゴミエリン(10mg)、コレステロール(5mg)及びリゾホスファチジルコリン(5mg)を含む。ペルフルオロカーボンナノ担体1000μlを得るために、ペルフルオロオクチルブロマイド475μl、リン脂質36mg、75mM NaH2PO4 200μl、pH7.4及び蒸留水325μlを使用する。
【0043】
最初に、リン脂質、リン酸二水素ナトリウム及び蒸留水を混合し、その後ペルフルオロカーボン(PFC)溶液を添加する。40秒以内に、複合物質を振とう機によって60秒間混合し、中断することなく超音波装置によって1100kHzの周波数で120秒間、30秒の間隔をおいて2回均質化しなければならない。音波処理ユニットを4℃の温度に保持する。そうでなければ不溶性のPFCの最終的な乳化のために、混合物を高圧ホモジナイザーに入れる。2500バールで6回以内の均質化工程で、乳状複合物質は透明な青みがかったエマルションになる。この透明性への変化が、ペルフルオロカーボン粒子の大きさが可視波長未満になることの肉眼的マーカーである。λ=400nmの最低可視波長(青/紫)は、混合物が透明になったとき粒径をλ/2と定義する。この時点でさらに4サイクルの均質化を追加する。粒径は、100nm未満のすべての粒子に関して電子顕微鏡検査で50nm(平均)と測定された。機能性ナノ担体を得るために、ホロトランスフェリン4mgを滅菌0.9%NaCl 60μlに溶解する。その直後に、冷却した超音波装置によってトランスフェリンを2秒間均質化する。溶解したトランスフェリンをペルフルオロカーボンエマルション1000μlに添加して、4mg/mlの最終濃度を得る。再び、化合物を30秒間直接振とう機上に置く。
【実施例2】
【0044】
遺伝子導入
例示的遺伝子導入:レニンは、血圧低下に応答して腎臓によって合成されるホルモンである。レニンはアンギオテンシノーゲンをアンギオテンシン1に変換し、アンギオテンシン1は、最終的にアンギオテンシン変換酵素(ACE)によってアンギオテンシン2へと活性化される。アンギオテンシン2は中期的血圧調節のために極めて重要である。ナノ担体によって送達されるsiRNAを介したアンギオテンシノーゲン翻訳の抑制は、従来のACE遮断薬と同様の血圧低下を生じさせるはずである。作用の比較のために、動物の群をアンギオテンシン変換酵素遮断薬カプトプリルで処置した。この低分子水溶性物質を腹腔内注射として適用した。注射の6時間後、規定された温度調節プロフィール(以下参照)を使用して血圧への作用を測定した。
【0045】
siRNAの添加:雄性CD1マウスへのsiRNAの導入を明らかにする。35gのマウスにおける使用のために、インビボ試験の直前にsiRNA 60μgを等張NaCl 30μlに添加する。この溶液をナノ担体300μlに添加し、超音波装置によって4℃で2秒間均質化する。
【0046】
マウスの尾静脈へのナノ担体及び遺伝物質の注射:全身吸入麻酔のために、半閉鎖系において動物に63% N2O、35% O2及び2% CO2中のイソフルランの混合物を自発的に吸入させた。
【0047】
siRNAとナノ担体からなる化合物を全身吸入麻酔下で微静脈に注射した。安定な呼吸循環状態を確保するため、マウスを温度調節ベッドに横たわらせ、赤外線ランプによって加温した。注射の間及び注射後に呼吸頻度を観測した。静脈内注射の直後に麻酔を停止し、動物はその後2分以内に回復した。
【0048】
種々の配列のアンギオテンシノーゲンsiRNAを商業的に合成し、各々を5匹の動物の群において試験した。対照動物は、siRNAを含まない若しくは非コードsiRNAを含む完全なナノ担体、siRNAの高流量注射、又はトランスフェリンを含まないPFCナノ担体中のsiRNAを摂取した。
【0049】
遺伝子導入の標的;アンギオテンシノーゲンsiRNAの適用後の血圧の低下:アンギオテンシノーゲンmRNAの翻訳が成功裏に阻止されるか否かを評価するため、規定された温度プロフィール(以下参照)の間の血圧調節への作用を測定した。温度調節ベッドを使用して、レニン−アンギオテンシノーゲン系が活性化して血圧を安定に保持するように、マウスの体温を低下させることが可能であった。機能的レニン−アンギオテンシン系の不活性化は、温度プロフィールの間に明らかに目に見える血圧の有意の低下を生じさせる。
【0050】
静脈内注射によって動物に種々の前記化合物を投与した24時間後に、動物に全身吸入麻酔を実施した。温度調節ベッドを42℃に調整し、従って測定の最初の15分間はマウスの体温を安定に保持し、基礎血圧を確認した。15分後、ベッドの温度を30℃に調整した。それにより加熱されたベッドの温度は継続的に低下し、血圧プロフィールが開始してから30分後に30.5℃に達する。この時点(30分目)で再び血圧を測定した。ベッドの温度が30℃に達していれば、この低温を10分間保持した。この期間中、ベッドの温度が30℃に達した5分後及び10分後(プロフィールを開始してから35分後及び40分後)に血圧を測定した。ベッドの温度が30℃に達した10分後に、ベッドの温度を再び42℃に調整した。ベッドの温度が41.5℃に達したとき、従ってプロフィールの開始時点から47分後に、その次の血圧値を測定した。従って、さらに3回の血圧値を5分の間隔で、すなわち血圧プロフィールを開始した52分後、57分後及び62分後に評価した。加熱ベッドの温度プロフィールを表1に示す。
【表1】
【0051】
例示的遺伝子導入の結果:アンギオテンシノーゲンsiRNAが生存動物の細胞に成功裏に送達されるか否かを評価するため、温度調節ベッドを利用した動物の体温低下による血圧の低下を誘導した。温度プロフィールは、麻酔したマウスの平均体温を38℃から35℃へと有意に低下させ、ベッドを再加熱した後の回復を生じさせた。図1は、加温ユニットにおける前記温度プロフィール後の平均体温を示す。
【0052】
血圧へのアンギオテンシノーゲンsiRNAの作用を比較するため、ヒトにおいてレニン−アンギオテンシン系を抑制するための一般的な治療選択肢である、アンギオテンシン変換酵素遮断薬カプトプリルで処置した動物における温度プロフィールの影響を試験した。その後、ペルフルオロカーボンナノエマルション及びトランスフェリンを含有する又はナノエマルションだけを含有するナノ担体中のアンギオテンシノーゲンsiRNAを摂取した動物において温度プロフィールの影響を試験した。データを、ナノ担体、ナノ担体と非コードsiRNA又はsiRNA単独で処置した対照動物の血圧値と比較した。機能的ナノ担体及びsiRNAは動物によって良好に耐容された。
【0053】
未処置動物における血圧プロフィール:図2は、未処置マウスの平均動脈圧を示す。
【0054】
アンギオテンシン変換酵素遮断薬で処置した動物における血圧プロフィール:アンギオテンシン変換酵素遮断薬カプトプリルで処置したマウスは、レニン−アンギオテンシン系の障害を有する。規定された温度プロフィールの間の血圧への体温低下の影響を試験した。それにより、ベッドの温度が30℃に達した5分後及び10分後に血圧の著明な低下が明らかにされた。これらの動物おいて正常基礎血圧値への回復は緩やかに起こったため、動物は52分目でまだ低血圧であった(図3)。
【0055】
ナノ担体を介したアンギオテンシノーゲンsiRNA送達後のマウスにおける血圧プロフィール:動物は、ナノ担体によって送達されたアンギオテンシノーゲンsiRNA配列CCG GTT CTT GCC ACT GAG AAA(配列番号1)を摂取した。静脈内注射により、ナノ担体300μl中でsiRNA 60μgを適用した。24時間のインキュベーション期間により、siRNAはアンギオテンシノーゲンの翻訳を妨げ、それによってレニン−アンギオテンシン系に影響を及ぼした。対照と比較して、動物は基礎血圧の障害を有し、体温の低下後に明確な血圧の低下があった。さらに、血圧は57分目まで低い値のままであった。従って、測定された血圧値は、アンギオテンシン変換酵素阻害剤で処置した動物とナノ担体を介して送達されたアンギオテンシンsiRNAを摂取した動物との間で同様であった。図4は、siRNA後の動脈圧の低下がアンギオテンシノーゲンの阻害を誘導したことを示す。
【0056】
さらなる対照動物における血圧プロフィール:4つの群の対照動物に、表2に示す複合物質を与えた。これらの群の動物では、体温低下に対する応答として35分目及び40分目に血圧が低下した。37℃〜42℃の正常値への回復により血圧は再び急速に上昇し、動物は47分目からプロフィールが終了するまで正常基礎値を有していた。体温低下に関連して認められた血圧低下はわずかであり、温度が再び正常値に達した直後に正常基礎値への回復が起こり、従ってこれらのプロフィールは未処置動物のものと同様であった(統計的に差がなかった)。
【表2】
【0057】
エンドサイトーシス促進分子を有さないペルフルオロカーボンナノエマルション:エンドサイトーシス促進表面を有さないペルフルオロカーボンナノエマルションに関する実験データを、血圧調節性レニン−アンギオテンシノーゲン系に対するsiRNAの例示的使用について図6に示す。
【0058】
エンドサイトーシス促進表面を有さないペルフルオロカーボンナノエマルションで処置した動物の血圧プロフィールを対照動物の血圧プロフィールと比較した。この実験データは、エンドサイトーシス促進表面を有さないペルフルオロカーボンナノエマルションは、この物質を摂取した動物の血圧プロフィールが対照の血圧プロフィールと有意に異ならなかったことから、生存動物の細胞への遺伝物質の送達に関して機能性ではないことを明らかにする。
【0059】
マウスの肝細胞へのアンギオテンシノーゲンsiRNA送達の電子顕微鏡可視化:体重35gのマウスに、アンギオテンシノーゲンsiRNAを担持するナノ担体の尾静脈注射を実施した。30分間及びそれぞれ4時間ずつ2回の間隔を置いた後、動物を犠死させ、肝臓を外植した。肝組織をエポキシ樹脂で包埋し、ミクロトームによって薄切片を得た。これらの切片の電子顕微鏡検査は、細胞に組み込まれたナノ粒子の特殊な外観を明確に示した。生存動物の無傷器官にsiRNAを送達するためのナノ担体の効率性が電子顕微鏡画像において明らかにされた:最初の30分以内にナノ担体は受容体媒介性取り込みによって細胞内エンドソームに組み込まれた。注射後最初の2時間に、ナノ担体はエンドソームを離れ、細胞質中に遊離された。次の2時間の後に、ナノ担体の高電子密度の構造体はもはや目に見えず、おそらく運搬されたsiRNAが放出されて、サイトゾル内に遊離されたことを示唆する。
【0060】
図9から13に示す電子顕微鏡画像は、ナノ担体の構造を示し、生存マウスにおける静脈内注射後のその受容体を介した取り込み、細胞内エンドソームからの遊離及び送達されたsiRNAの放出を明らかにする。
【0061】
図10から13は、マウスの肝組織からの横断面の電子顕微鏡画像を示す。
配列表、フリーテキスト
配列番号1 アンギオテンシノーゲンsiRNA配列
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドサイトーシス促進表面を有する安定なペルフルオロカーボンナノエマルションであって、連続ペルフルオロカーボン相と緩衝不連続水相を有し、且つ
(a)少なくとも1つのペルフルオロカーボン化合物を含むペルフルオロカーボン成分;
(b)乳化成分;及び
(c)エンドサイトーシスを介したナノエマルションの細胞取り込みを誘導する少なくとも1つの化合物を含むエンドサイトーシス促進成分
を含有するナノエマルション。
【請求項2】
100nm未満の粒径を有し、好ましくは約50nmの平均粒径を有する粒子からなる、請求項1に記載のナノエマルション。
【請求項3】
前記緩衝水相がナノエマルションの25〜60重量%を占める、請求項1又は2に記載のナノエマルション。
【請求項4】
エンドサイトーシスを介した細胞取り込みを誘導する前記少なくとも1つの化合物が、トランスフェリン、アポリポタンパク質A1、グリコシルホスファチジルイノシトール(GIP)アンカー型タンパク質、メガリン結合タンパク質、アンテナペディアタンパク質、前記化合物のフラグメント及び誘導体並びに類似作用を有する化合物から選択され、最も好ましくは前記化合物がトランスフェリン又はそのフラグメント若しくは誘導体である、請求項1から3のいずれか一項に記載のナノエマルション。
【請求項5】
前記少なくとも1つのペルフルオロカーボン化合物が、CmF2m+1X、XCmF2mX、XCnF2nOCoF2oX、N(CoF2oX)3及びN(CoF2o+1X)3(式中、mは3〜10の整数であり、n及びoは1〜5の整数であり、Xは、存在する各々の場合に独立してCl、Br及びIから選択される)から選択され、好ましくはペルフルオロカーボンがペルフルオロオクチルブロマイド及びペルフルオロトリブチルアミン及びそれらの混合物から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載のナノエマルション。
【請求項6】
前記乳化成分が、必須乳化成分としての少なくとも1つのリン脂質及び1又はそれ以上のヘルパー脂質を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のナノエマルション。
【請求項7】
前記少なくとも1つのリン脂質が、式I:
【化1】
(式中、R1及びR2は、独立してH及びC16〜24アシル残基(前記アシル残基は飽和であってもよく又は不飽和であってもよく、1〜3個の残基R3を担持してもよく、C原子の1又はそれ以上は、O又はNR4によって置換されてもよい)から選択され、Xは、H、−(CH2)p−N(R4)3+、−(CH2)p−CH(N(R4)3+)−COO−、−(CH2)p−CH(OH)−CH2OH及び−CH2(CHOH)p−CH2OH(式中、pは1〜5の整数であり;R3は、独立してH、低級アルキル、F、Cl、CN及びOHから選択され;R4は、独立してH、CH3及びCH2CH3から選択される)から選択される)
によって表される化合物又は薬理学的に許容されるその塩から選択され、好ましくは、R1及びR2が、独立してH及び非置換C16〜24アシル残基(前記アシル残基は飽和であってもよく又は不飽和であってもよい)から選択され、Xが、コリン、セリン、エタノールアミン及びイノシトール残基から選択され、最も好ましくは、リン脂質成分が、ホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン及びそれらの混合物から選択される、請求項6に記載のナノエマルション。
【請求項8】
前記ヘルパー脂質が、脂肪酸、ステロイド類、ビタミン類及びそれらの混合物から選択される、請求項6又は7に記載のナノエマルション。
【請求項9】
ペルフルオロカーボン成分(a)としてペルフルオロオクチルブロマイド、リン脂質としてホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、コレステロール及びリゾホスファチジルコリンを含む乳化成分(b)、並びにエンドサイトーシス促進成分(c)としてトランスフェリンを含有する、請求項1から8のいずれか一項に記載のナノエマルション。
【請求項10】
医薬品及び遺伝物質を含む、親水性化合物をインビボ及びインビトロで細胞に導入するのに適する、好ましくはRNA及びDNA配列並びにそれらの組合せ及び誘導体から選択される遺伝物質の導入に適する、最も好ましくはmiRNA、siRNA又はdsRNAの導入に適する、請求項1から9のいずれか一項に記載のナノエマルション。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載のナノエマルションを含有する遺伝子導入剤又は医薬組成物。
【請求項12】
インビボ及びインビトロで細胞に導入される医薬品及び遺伝物質をさらに含有する、好ましくはRNA及びDNA配列並びにそれらの組合せ及び誘導体から選択される遺伝物質を含有する、最も好ましくはmiRNA、siRNA又はdsRNAを含有する、請求項11に記載の遺伝子導入剤又は医薬組成物。
【請求項13】
請求項1から10に記載のナノエマルション、及び請求項11又は12に記載の遺伝子導入剤又は医薬組成物を調製するための方法であって、以下の工程:
(a)乳化成分を含む緩衝水溶液を調製すること、
(b)ペルフルオロカーボン成分を添加すること、及び
(c)その後、工程(b)の反応生成物を混合し、高圧均質化すること
を含む方法。
【請求項14】
(d)工程(c)の反応生成物にエンドサイトーシス促進成分及び/又は導入のための親水性化合物を添加し、生じた混合物を均質化すること
をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
親水性化合物をインビトロで細胞に導入するための方法であって、細胞を請求項1から10に記載のナノエマルション又は請求項11若しくは12に記載の遺伝子導入剤と接触させることを含む方法。
【請求項16】
医薬品及び遺伝物質を患者に導入するための薬剤を調製するための、請求項1から10のいずれか一項に記載のナノエマルションの使用。
【請求項17】
医薬品及び遺伝物質を患者に導入するための方法であって、請求項1から10のいずれか一項に記載のナノエマルション又は請求項11若しくは12に記載の遺伝子導入剤若しくは医薬組成物を患者に投与することを含む方法。
【請求項1】
エンドサイトーシス促進表面を有する安定なペルフルオロカーボンナノエマルションであって、連続ペルフルオロカーボン相と緩衝不連続水相を有し、且つ
(a)少なくとも1つのペルフルオロカーボン化合物を含むペルフルオロカーボン成分;
(b)乳化成分;及び
(c)エンドサイトーシスを介したナノエマルションの細胞取り込みを誘導する少なくとも1つの化合物を含むエンドサイトーシス促進成分
を含有するナノエマルション。
【請求項2】
100nm未満の粒径を有し、好ましくは約50nmの平均粒径を有する粒子からなる、請求項1に記載のナノエマルション。
【請求項3】
前記緩衝水相がナノエマルションの25〜60重量%を占める、請求項1又は2に記載のナノエマルション。
【請求項4】
エンドサイトーシスを介した細胞取り込みを誘導する前記少なくとも1つの化合物が、トランスフェリン、アポリポタンパク質A1、グリコシルホスファチジルイノシトール(GIP)アンカー型タンパク質、メガリン結合タンパク質、アンテナペディアタンパク質、前記化合物のフラグメント及び誘導体並びに類似作用を有する化合物から選択され、最も好ましくは前記化合物がトランスフェリン又はそのフラグメント若しくは誘導体である、請求項1から3のいずれか一項に記載のナノエマルション。
【請求項5】
前記少なくとも1つのペルフルオロカーボン化合物が、CmF2m+1X、XCmF2mX、XCnF2nOCoF2oX、N(CoF2oX)3及びN(CoF2o+1X)3(式中、mは3〜10の整数であり、n及びoは1〜5の整数であり、Xは、存在する各々の場合に独立してCl、Br及びIから選択される)から選択され、好ましくはペルフルオロカーボンがペルフルオロオクチルブロマイド及びペルフルオロトリブチルアミン及びそれらの混合物から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載のナノエマルション。
【請求項6】
前記乳化成分が、必須乳化成分としての少なくとも1つのリン脂質及び1又はそれ以上のヘルパー脂質を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のナノエマルション。
【請求項7】
前記少なくとも1つのリン脂質が、式I:
【化1】
(式中、R1及びR2は、独立してH及びC16〜24アシル残基(前記アシル残基は飽和であってもよく又は不飽和であってもよく、1〜3個の残基R3を担持してもよく、C原子の1又はそれ以上は、O又はNR4によって置換されてもよい)から選択され、Xは、H、−(CH2)p−N(R4)3+、−(CH2)p−CH(N(R4)3+)−COO−、−(CH2)p−CH(OH)−CH2OH及び−CH2(CHOH)p−CH2OH(式中、pは1〜5の整数であり;R3は、独立してH、低級アルキル、F、Cl、CN及びOHから選択され;R4は、独立してH、CH3及びCH2CH3から選択される)から選択される)
によって表される化合物又は薬理学的に許容されるその塩から選択され、好ましくは、R1及びR2が、独立してH及び非置換C16〜24アシル残基(前記アシル残基は飽和であってもよく又は不飽和であってもよい)から選択され、Xが、コリン、セリン、エタノールアミン及びイノシトール残基から選択され、最も好ましくは、リン脂質成分が、ホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン及びそれらの混合物から選択される、請求項6に記載のナノエマルション。
【請求項8】
前記ヘルパー脂質が、脂肪酸、ステロイド類、ビタミン類及びそれらの混合物から選択される、請求項6又は7に記載のナノエマルション。
【請求項9】
ペルフルオロカーボン成分(a)としてペルフルオロオクチルブロマイド、リン脂質としてホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、コレステロール及びリゾホスファチジルコリンを含む乳化成分(b)、並びにエンドサイトーシス促進成分(c)としてトランスフェリンを含有する、請求項1から8のいずれか一項に記載のナノエマルション。
【請求項10】
医薬品及び遺伝物質を含む、親水性化合物をインビボ及びインビトロで細胞に導入するのに適する、好ましくはRNA及びDNA配列並びにそれらの組合せ及び誘導体から選択される遺伝物質の導入に適する、最も好ましくはmiRNA、siRNA又はdsRNAの導入に適する、請求項1から9のいずれか一項に記載のナノエマルション。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載のナノエマルションを含有する遺伝子導入剤又は医薬組成物。
【請求項12】
インビボ及びインビトロで細胞に導入される医薬品及び遺伝物質をさらに含有する、好ましくはRNA及びDNA配列並びにそれらの組合せ及び誘導体から選択される遺伝物質を含有する、最も好ましくはmiRNA、siRNA又はdsRNAを含有する、請求項11に記載の遺伝子導入剤又は医薬組成物。
【請求項13】
請求項1から10に記載のナノエマルション、及び請求項11又は12に記載の遺伝子導入剤又は医薬組成物を調製するための方法であって、以下の工程:
(a)乳化成分を含む緩衝水溶液を調製すること、
(b)ペルフルオロカーボン成分を添加すること、及び
(c)その後、工程(b)の反応生成物を混合し、高圧均質化すること
を含む方法。
【請求項14】
(d)工程(c)の反応生成物にエンドサイトーシス促進成分及び/又は導入のための親水性化合物を添加し、生じた混合物を均質化すること
をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
親水性化合物をインビトロで細胞に導入するための方法であって、細胞を請求項1から10に記載のナノエマルション又は請求項11若しくは12に記載の遺伝子導入剤と接触させることを含む方法。
【請求項16】
医薬品及び遺伝物質を患者に導入するための薬剤を調製するための、請求項1から10のいずれか一項に記載のナノエマルションの使用。
【請求項17】
医薬品及び遺伝物質を患者に導入するための方法であって、請求項1から10のいずれか一項に記載のナノエマルション又は請求項11若しくは12に記載の遺伝子導入剤若しくは医薬組成物を患者に投与することを含む方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2011−520936(P2011−520936A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509929(P2011−509929)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【国際出願番号】PCT/EP2009/055779
【国際公開番号】WO2009/141257
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(510305837)ソルベンティス アーゲー (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【国際出願番号】PCT/EP2009/055779
【国際公開番号】WO2009/141257
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(510305837)ソルベンティス アーゲー (1)
【Fターム(参考)】
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