遺伝子発現の阻害のためのショートヘアピンRNA
ウイルス媒介性遺伝子発現などの遺伝子発現の阻害のために有用な低分子ヘアピンRNA(shRNA)を含む方法、組成物、およびキットが記載される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府によって資金援助された研究開発に関する声明
本発明は、米国国立衛生研究所(the National Institutes of Health)からのNIH補助金R44AI056611(BHJ)によって援助された作業の間に部分的になされた。政府は本発明において特定の権利を有し得る。
【0002】
発明の分野
本発明は、ウイルス遺伝子発現、例えば、ショートヘアピンRNA(shRNA)を用いる、C型肝炎IRES媒介性遺伝子発現の阻害に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
RNA干渉(RNAi)は、分解および翻訳減衰のために、二本鎖RNA(dsRNA)を使用してメッセンジャーRNA(mRNA)を標的とする細胞プロセスである。このプロセスは遺伝子特異的であり、標的配列の小さな変化に不応性であり、そして多重遺伝子標的化が受け入れ可能である。この現象は1990年に植物において最初に報告された(Napoli,C.,et al.,Introduction of a chimeric chalcone synthase gene into petunia results in reversible co−suppression of homologous genes in trans.Plant Cell,1990,2(4):279−289)。これは後に、真菌および蠕虫を含む他の生物において観察された(Romano,N.,et al.,Quelling:transient inactivation of gene expression in Neurospora crassa by transformation with homologous sequences.Mol.Microbiol.,1992,6(22):3343−53)。機構的には、長いdsRNAは、III型RNaseであるDicerによって短い干渉RNA(siRNA)二重鎖に切断できる。続いて、これらの小さな二重鎖が、ヘリカーゼ活性と相同転写物の分解を媒介するエンドヌクレアーゼ活性の両方を含むマルチサブユニット複合体であるRNA誘導性サイレンシング複合体(RISC)と相互作用する。約19〜29bpの合成siRNAが哺乳動物細胞および動物において遺伝子発現を効果的に阻害できるというこの発見が、治療剤としてこれらの阻害剤を開発するための相次ぐ活動をもたらした(Elbashir,S.M.,et al.,Duplexes of 21−nucleotide RNAs mediate RNA interference in cultured mammalian cells.Nature,2001,411(6836):494−8)。アルゴリズムに基づく合理的設計選択を含む、高度なsiRNA選択法の最近の進歩は、鍵となる配列および標的配列非依存的である熱力学的パラメーターによって潜在的なsiRNA二重鎖を研究者が選択することを可能にする(Khvorova,A.,et al.,Functional siRNAs and miRNAs exhibit strand bias.Cell,2003,115(1):209−216)。
【0004】
化学的に合成されるか、またはバクテリオファージ(例えば、T7、T3、またはSP6)もしくは哺乳動物(U6もしくはH1などのpol IIIまたはpol II)プロモーターから発現された19〜29bpの低分子ヘアピンRNA(shRNA)もまた、哺乳動物細胞における標的遺伝子の強固な阻害を示している。さらに、その単一分子構造を有する合成shRNAは、2つの鎖を含むsiRNAよりも効力および単純性において利点を有しており、この後者は、様々な純度プロフィールおよび標的を外れる効果を有し得る2つの別々の鎖の正確な化学量論的量の注意深いアニーリングを必要とする(Siolas,D.,et al.,Synthetic shRNAs as potent RNAi triggers.Nature Biotechnology,2005,23(2):227−231;Vlassov,A.V.,et al.,shRNAs targeting hepatitis C:effects of sequence and structural features,and comparison with siRNA.Oligonucleotides,2007,17:223−236)。
【0005】
しかし、shRNAの設計および開発の過程にわたっていくつかの難問が生じてきた。第1に、研究者達は、様々なshRNAによって誘導されるサイレンシングのレベルの広い範囲の変動性を観察してきた。第2に、ステム長、ループ長、およびループ位置が変動しているshRNAは、様々なノックダウン能力を有する(McManus,M.T.,et al.,Gene silencing using micro−RNA designed hairpins.RNA,2002,8:842−850;Harborth,J.,et al.,Sequence,chemical,and structural variatioin of small interfering RNAs and short hairpin RNAs and the effect on mammalian gene silencing.Antisense And Nucleic Acid Drug Development.2003,13:83−105;Li,L.,et al.,Defining the optimal parameters for hairpin−based knockdown constructs.RNA,2007,13:1765−1774;Vlassov,A.V.,et al.,shRNAs targeting hepatitis C:effects of sequence and structural features,and comparison with siRNA.Oligonucleotides,2007,17:223−236)。ヘアピンの5’末端に19ヌクレオチドのガイド鎖(左側ループ)を有するいくつかのshRNAは、ヘアピンの3’末端にそれらのガイド鎖(右側ループ)を有するものよりも有効であることが見い出されてきたのに対して(Scaringe,S.US 2004/0058886 A1)、他のshRNAは、右側ループ構造がより有効であると報告された(Vermeulen,et al.US 2006/0223777 A1)。ヘアピンの3’末端に19マーのガイド鎖(右側ループ)を有するshRNAは、25または29マーのshRNA(右側ループを有する)よりも強力であることが見い出された。以前に利用可能であった限られたデータは、右側ループを伴う19bpステムを有するshRNAの最適なループサイズは、4ヌクレオチドより長く、好ましくは9または10ヌクレオチドであることを示唆した。第3の難問は、合成shRNA、とりわけ、19マーのヘアピンの細胞質におけるプロセシングの機構が不明なことである。長いdsRNAおよび29マーのshRNAとは異なり、19マーのshRNAはDicerによって切断されない(Siolas,D.,et al., Synthetic shRNAs as potent RNAi triggers.Nature Biotechnology,2005,23(2):227−231)。それゆえに、より高度に機能的な阻害剤を提供するために、優れたshRNAのための信頼できる設計、ならびに構造−活性相関およびshRNAのプロセシングのより良好な理解を有することが有利である。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、遺伝子サイレンシングにおける使用のためのshRNA、フラクチャーされたshRNA、およびT字型RNAに関連する方法および組成物に関する。従って、本発明は、RNA干渉の効率を増加させるための組成物、方法、およびキットを提供する。
【0007】
1つの態様において、本発明は、15ヌクレオチド〜30ヌクレオチドからなり、標的ヌクレオチド配列に少なくとも部分的に相補的である、第1の配列(例えば、第1のRNA配列)、例えば、ガイド鎖;第1の配列の少なくとも一部に少なくとも部分的に相補的である配列を含み、第1の配列の長さよりも10ヌクレオチドから1ヌクレオチドの間の短い長さを有する、第2の配列(例えば、第2のRNA配列)、例えば、パッセンジャー鎖;任意に、第1の配列と第2の配列の間に配置され、1〜100ヌクレオチドからなるループ配列;および任意に、1または2ヌクレオチドからなるヌクレオチド突出を含むポリヌクレオチド、例えば、DNAまたはRNA分子を特徴とする。
【0008】
別の態様において、本発明は、16ヌクレオチド〜30ヌクレオチドからなり、標的ヌクレオチド配列に少なくとも部分的に相補的である、第1の配列(例えば、第1のRNA配列)、例えば、ガイド鎖;第1の配列の少なくとも一部に少なくとも部分的に相補的である配列を含み、第1の配列よりも少なくとも1ヌクレオチド多く、かつ100ヌクレオチドを超えない第2の配列(例えば、第2のRNA配列)、例えば、パッセンジャー鎖;任意に、第1の配列と第2の配列の間に配置され、1〜100ヌクレオチドからなるループ配列;および任意に、1または2ヌクレオチドからなるヌクレオチド突出を含むポリヌクレオチド、例えば、DNAまたはRNA分子を特徴とする。
【0009】
別の態様において、本発明は、16ヌクレオチド〜18ヌクレオチドからなり、標的ヌクレオチド配列に少なくとも部分的に相補的である、第1の配列(例えば、第1のRNA配列)、例えば、ガイド鎖;第1の配列の少なくとも一部に少なくとも部分的に相補的である配列を含み、第1の配列と同じ数のヌクレオチドを有する第2の配列(例えば、第2のRNA配列)、例えば、パッセンジャー鎖;任意に、第1の配列と第2の配列の間に配置され、1または2ヌクレオチドからなるループ配列;および任意に、1または2ヌクレオチドからなるヌクレオチド突出を含むポリヌクレオチド、例えば、DNAまたはRNA分子を特徴とする。
【0010】
別の態様において、本発明は、19ヌクレオチドからなり、標的ヌクレオチド配列に少なくとも部分的に相補的である、第1の配列(例えば、第1のRNA配列)、例えば、ガイド鎖;第1の配列の少なくとも一部に少なくとも部分的に相補的である配列を含み、17ヌクレオチドまたは18ヌクレオチドからなる第2の配列(例えば、第2のRNA配列)、例えば、パッセンジャー鎖;任意に、第1の配列と第2の配列の間に配置され、1〜100ヌクレオチドからなるループ配列;および任意に、1または2ヌクレオチドからなるヌクレオチド突出を含むポリヌクレオチド、例えば、DNAまたはRNA分子を特徴とする。
【0011】
別の態様において、本発明は、15ヌクレオチド〜30ヌクレオチドからなり、標的ヌクレオチド配列に少なくとも部分的に相補的である、第1の配列(例えば、第1のRNA配列)、例えば、ガイド鎖;第1の配列の少なくとも一部に少なくとも部分的に相補的である配列を含み、第1の配列と同じかまたはより少ない数のヌクレオチドを有する第2の配列(例えば、第2のRNA配列)、例えば、パッセンジャー鎖;任意に、第1の配列と第2の配列の間に配置され、1ヌクレオチドからなるループ配列;および任意に、1または2ヌクレオチドからなるヌクレオチド突出を含むポリヌクレオチド、例えば、DNAまたはRNA分子を特徴とする。
【0012】
別の態様において、本発明は、約5ヌクレオチド〜約15ヌクレオチドからなり、標的ヌクレオチド配列に少なくとも部分的に相補的である、第1のRNA配列、例えば、ガイド鎖;第1の配列とヘアピン構造を形成可能であり、このヘアピン構造は約23ヌクレオチド〜約100ヌクレオチドを含む第2のRNA配列、例えば、パッセンジャー鎖、そしてこの第2の配列は以下を含む:第1の配列と少なくとも80%相同性を有しかつ第1の配列と19塩基対より少ない第1の二重鎖領域を形成可能である第1の領域;第1の領域と連結された第2の領域;第2の領域と連結された第3の領域;および第3の領域と連結され、第2の領域と少なくとも80%相同性を有し、第2の領域と第2の二重鎖領域を形成可能であって、その結果、第3の領域が第2の二重鎖領域に隣接するループを形成し、第1の二重鎖領域と第2の二重鎖領域の長さの合計が23塩基対未満である、第4の領域;および任意に、RNA分子の5’または3’末端で約6ヌクレオチドより少ない突出を含む、RNA分子を特徴とする。
【0013】
別の態様において、本発明は、配列番号1〜39のいずれか1つのRNA配列を含むRNA分子を特徴とする。
【0014】
別の態様において、第3の領域は、5’−UU−3’の配列を有するヌクレオチドを含むループを形成する。さらに、第2の鎖は、5’リン酸基を有するパッセンジャー鎖の一部を含むことができる。1つの実施形態において、5’リン酸基を有する第2の鎖は、第2の鎖の第4の領域に隣接する。別の実施形態において、5’リン酸基を有する第2の鎖は、第2の鎖の第4の領域に隣接していない。
【0015】
別の態様において、本発明は、標的ヌクレオチド配列に少なくとも部分的に相補的である第1のRNA配列、例えば、ガイド鎖、第2のRNA配列、例えば、パッセンジャー鎖、および第3のRNA配列を含み、ここで、第1の配列は、第2の配列の第1の領域に対して少なくとも80%の相補性である約18ヌクレオチドから約29ヌクレオチドまでを有する第1の領域を含み;この第1の配列は、第3の配列の第1の領域に対して少なくとも約90%の相補性である約4ヌクレオチドから約10ヌクレオチドまでを有する第2の領域をさらに含み;第2の配列は、第1の配列の第1の領域に対して少なくとも約80%の相補性である約18ヌクレオチドから約29ヌクレオチドまでを有する第1の領域を含み;第2の配列は、第3の配列の第2の領域に少なくとも約90%相補性である約4ヌクレオチドから約10ヌクレオチドを有する第2の領域をさらに含み、ここで、第3の配列の第2の領域は、第3の配列の第1の領域に対して3’で隣接しており、そして任意に、RNA分子の5’または3’末端で約6ヌクレオチドよりも少ない突出をさらに含む、T字型RNA分子を特徴とする。
【0016】
本明細書に記載されたいずれかの態様のある実施形態において、ポリヌクレオチド、例えば、本明細書に記載されたDNAまたはRNA分子は、約30ヌクレオチドから約84ヌクレオチドまでを含むことができる。
【0017】
本明細書に記載されるいずれかの態様のある実施形態において、ポリヌクレオチド、例えば、本明細書に記載されるDNAまたはRNA分子は、第1の配列の少なくとも一部に少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%相補性である配列を含む第2の配列を含む。特定の実施形態において、第2の配列は、第1の配列の5’末端の部分に対して少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%相補性である、例えば、第2の配列の3’末端における配列を含む。
【0018】
本明細書に記載されるいずれかの態様のある実施形態において、ポリヌクレオチド、例えば、本明細書に記載されるDNAまたはRNA分子は、少なくとも1つの修飾、例えば、本明細書に記載される化学修飾を含む。ある実施形態において、本明細書に記載されるRNA分子におけるヌクレオチドの約20%〜約100%、例えば、約40%〜約90%が化学修飾される。1つの実施形態において、本明細書に記載されるRNA分子の約20%〜約100%のUおよびCが2’O−メチル修飾または2’Fである。
【0019】
本明細書に記載されるいずれかの態様のある実施形態において、ポリヌクレオチド、例えば、本明細書に記載されるDNAまたはRNA分子は、少なくとも1つの非ヌクレオチド分子を含むループを含む。
【0020】
本明細書に記載されるいずれかの態様のある実施形態において、ポリヌクレオチド、例えば、本明細書に記載されるDNAまたはRNA分子は、分子の3’末端または5’末端において突出を含む。例えば、この突出は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個のヌクレオチドである。
【0021】
本明細書に記載されるいずれかの態様のある実施形態において、ポリヌクレオチド、例えば、本明細書に記載されるDNAまたはRNA分子は、第1の配列と第2の配列の間の1個または2個のミスマッチを含む。1つの実施形態において、ミスマッチは、5’末端およびパッセンジャー鎖の逆鎖のヌクレオチドから数えて、ガイド鎖上の11位、12位、13位、14位、15位、16位、または17位、好ましくは、5’末端およびパッセンジャー鎖の逆鎖のヌクレオチドから数えて、ガイド鎖上の14位に存在する。
【0022】
本明細書に記載されるいずれかの態様のある実施形態において、第1の配列は第2の配列に対して3’である。他の実施形態において、第1の配列は第2の配列に対して5’である。
【0023】
本明細書に記載されるいずれかの態様のある実施形態において、本明細書に記載されるRNA分子は、リンカーを介してRNA分子のループ領域または3’末端に結合された少なくとも1つの結合体部分をさらに含む。この結合体部分は、ステロイド分子、ビタミン、ペプチド、ガラクトースおよびその誘導体、またはタンパク質であり得る。ある実施形態において、この結合体部分は、コレステロール、コレスタノール、スチグマステロール、コラン酸、およびエルゴステロールからなる群より選択されるステロイド分子である。他の実施形態において、この結合体部分はコレステロールであり、リンカーはC5リンカー分子である。なお他の実施形態において、この結合体部分はビタミンEである。
【0024】
他の実施形態において、本明細書に記載されるRNA分子は、RNA分子のループ領域または3’末端に結合された少なくとも1つの検出可能な標識をさらに含む。ある実施形態において、検出可能な標識は色素分子である。ある実施形態において、このRNA分子は、結合体部分と検出可能な標識の両方を含むことができる。
【0025】
ある実施形態において、本明細書に記載されるRNA分子は、標的ヌクレオチド配列、例えば、ウイルス配列の発現を阻害することが可能である。ある実施形態において、ウイルス配列はC型肝炎ウイルス配列である。特定の実施形態において、標的ヌクレオチド配列は、C型肝炎ウイルスの内部リボソーム侵入部位(IRES)配列中の配列である。
【0026】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載されるRNA分子をコードする配列を含むDNA配列、または本明細書に記載されるRNA分子をコードする配列を含むDNA配列を含む発現ベクターを特徴とする。ある実施形態において、このベクターはレトロウイルスベクターである。
【0027】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載されるRNA分子および薬学的に許容される賦形剤を含む組成物を特徴とする。別の態様において、本発明は、本明細書に記載されるRNA分子をコードする配列を含むベクターを含む組成物を特徴とする。
【0028】
別の態様において、本発明は、遺伝子の発現または活性を阻害する方法を特徴とし、この方法は、遺伝子を発現する細胞を本明細書に記載されるRNA分子と接触させることを包含し、ここで、第1のRNA配列は、遺伝子の少なくとも一部によってコードされる標的ヌクレオチド配列に少なくとも部分的に相補的である。
【0029】
別の態様において、本発明は、C型肝炎ウイルスの発現または活性を阻害する方法を特徴とし、この方法は、C型肝炎ウイルスを発現する細胞を本明細書に記載されるRNA分子と接触させることを包含し、ここで、第1のRNA配列はC型肝炎ウイルス配列に対して少なくとも部分的に相補的である。
【0030】
これらの態様のいずれかにおいて、細胞は、哺乳動物、例えば、ヒトまたは非ヒト霊長類におけるものであり得る。
【0031】
特定の実施形態において、本明細書に記載されるRNA分子は、IFN応答を誘導しない。
【0032】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載されるRNA分子を含む容器;および任意に減少させた血清組織培養培地を含むキットを特徴とする。
【0033】
以下の図面は例示目的のみのために提示され、限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1A〜1Dは、種々の構成を含むヘアピンの実施形態の構造を描写する。
【図2】図2は、T字型RNA分子の構造、ならびに第1鎖および第2鎖の第2の領域に相補的な反復配列とともに、長い第3鎖を有することによるT字型RNA分子の増大を描写する。
【図3】図3A〜3Cは、5’パッセンジャー鎖を有するshRNAおよび5’ガイド鎖を有するshRNAの用量応答を比較する。これらのshRNAはIDTによって合成され、siRNA緩衝液(Dharmacon、20mM KCl、6mM HEPES−KOH pH 7.5、0.2mM MgCl2を含有)で再構築された。293FT細胞(96ウェルプレート中のウェルあたり23,000細胞)が、shRNA、およびホタルルシフェラーゼ発現がHCV IRESに依存する標的DNAプラスミド(IRES−fLuc)と同時トランスフェクトされた。リポフェクタミン(Lipofectamine)(商標)2000(Invitrogen)がトランスフェクション試薬として使用された。48時間後、細胞が溶解され、ホタルルシフェラーゼ活性がルミノメーターによって測定された。すべてのデータは、3連で実行された個々の独立した実験の結果である。図3D〜3Fは、Oligo 4.0によって計算されたshRNAの内部安定性について同じshRNAのセットを比較する。結果は、5’−ガイド鎖を有するshRNAが5’−パッセンジャー鎖を有するshRNAと比較して機能が増強されたことを実証する。増強の程度は配列依存性であり、5’末端の内部安定性の違いは重要な寄与を生じる。
【図4】図4は、種々のループ長、配列、およびループを閉じる塩基対を有するshRNAの用量応答を描写する。この実験は、図3において記載された様に行われた。図4Aは、10ヌクレオチド、5ヌクレオチド、2ヌクレオチド、および1ヌクレオチド(nt)のループを有するshRNAの効力を比較する。二重鎖領域の配列は、これらのshRNAおよびsiRNA 19−3の中で同じである。これらの結果は、5’−ガイド鎖を有するshRNAが、ループサイズがより大きい場合(5または10nt)よりもループサイズが非常に小さい(1または2nt)場合に、高い効力を有することを示す。ループ配列は、おそらく、shRNA活性に影響を与えない。なぜなら、3つの異なるループ配列が使用されているからである。図4Bは、ループの直前のU:AおよびC:G塩基対を有するshRNAの活性を比較する。ループの配列(下線)および隣接する塩基対は括弧内に示される。二重鎖領域の配列は、これらのshRNAの中で同じである。この比較は、ループが2nt長である場合に、ループに隣接するC:G塩基対を有するshRNAが、隣接するU:A対を有するものよりも良好な効力を与えることを示す。図4Cは、shRNAのループ中のUU−リボヌクレオチド配列が、shRNAの効力に影響を与えることなく、TT−デオキシリボヌクレオチド配列で置き換えできることを示す。二重鎖の配列は、これらのshRNAおよびsiRNA19−3の両方について同じである。
【図5】図5は、種々の二重鎖長および3’突出を有するshRNAの用量応答を描写する。この実験は図3に記載されたように行われた。図5Aは3’突出のあるなしでshRNAの活性を比較する。結果は、平滑末端または3’−TT突出を有するshRNAが、3’−UU突出を有する対応するshRNAと非常によく似た効力を有することを示す。図5Bは、種々の長さの二重鎖またはパッセンジャー鎖を有するshRNAの効力を比較する。g/p値は、ガイド鎖/パッセンジャー鎖の長さを表す。この比較は、19ntのガイド鎖の長さを維持しながら、17または16ntまでパッセンジャー鎖を短縮することが、遺伝子サイレンシング活性を有意に減少することを示唆する(SG115およびSG116)。しかし、パッセンジャー鎖とガイド鎖の両方を18nt長まで短縮することは、効力に有意な影響を与えなかった(SG117)。図5Cは、さらに短い二重鎖長を有するshRNAの活性を描写する。二重鎖中に17または16塩基対を有するshRNA(SG117およびSG119)は非常に類似した効力を有する。二重鎖中に11塩基対を有するshRNA(SG120)は、サイレンシング活性の顕著な喪失を示し、この分子のIC50はなおナノモル以下の範囲にある。
【図6】図6は、種々の短いステム長を有するshRNAの用量応答を描写する。この実験は、図3において記載されたように行われた。図6Aは、ガイド鎖とパッセンジャー鎖の両方の長さを変化させたshRNAの活性を比較する。結果は、14塩基対以下の長さの二重鎖を有するshRNAが使用された場合(SG132およびSG120)、shRNAの効力が顕著に減少することを示す。図6Bは、ガイド鎖の長さを19ntに維持しながら、10〜13ntのパッセンジャー鎖を有するshRNAの活性を描写する。結果は、shRNAの活性が、パッセンジャー鎖について11ntの最小長を含むヘアピンを必要とすることを示す。
【図7】図7は、様々な標的に対する種々の構造のshRNAの効力を描写する。この実験は、図3に記載されたように行われた。図7Aおよび7Bは、si72およびsi74と同じ標的に対するshRNAの活性をそれぞれ示すが、構造は異なっている。結果は、3’−UU突出がshRNAの活性のためには必須ではないことを示す。二重鎖領域の短縮は、標的遺伝子ノックダウン活性を部分的に減少できた。
【図8】図8は、二重鎖領域の様々な位置で単一のミスマッチを有するshRNAの用量応答を描写する。図8Aは、パッセンジャー鎖の5’末端からの6位(ガイド鎖の5’末端からの逆鎖の14位)に単一のミスマッチを有するshRNA(SG110)と有さないshRNA(SG142)の間で同様の活性を示す。図8Bは、単一のミスマッチを有さないshRNA(SG142)と、パッセンジャー鎖の5’末端から6位(SG126)、7位(SG127)、5位(SG128)、および4位(SG129)(ガイド鎖の5’末端から逆鎖の14位、13位、15位、および16位)に単一のミスマッチ変異をそれぞれ有するshRNAの間で同様の活性を示す。単一のミスマッチに伴うこの活性喪失の欠如は、ミスマッチの型と無関係であるようであり(例えば、U−U(SG110)=U−C(SG126))、この形質が配列非依存的であることを示唆する。すべてのshRNAは5’−UU−3’ループおよび3’−UU突出を有する。
【図9】図9は、shRNAの標的阻害がダイマーまたはオリゴマーの形成に起因していないことを描写する。図9Aは、加熱および即時冷却のありなしでのshRNAの標的阻害を比較する。複数の種を有するshRNAよりもわずかに低いが、加熱および即時冷却によって得られたshRNAモノマーの単一の種は、試験された配列または長さに関わらず標的遺伝子サイレンシングにおいて高い活性を示す。図9Bは、加熱(95℃で4分間)および氷冷バス中でのshRNAの即時冷却のあるなしでの、10%ネイティブポリアクリルアミドゲル中でのshRNAのモノマー、ダイマー、およびオリゴマーを示す。このゲルはSYBR Gold(Invitrogen)で染色された。
【図10】図10は、モノマーおよび混合種におけるshRNAの様々な挙動を描写する。図10Aは、大部分がモノマーである場合にはSG119がより高いサイレンシング活性を有するのに対して、大部分がダイマーである場合にはSG120がより高いサイレンシング活性を有することを示す。図10Bは、加熱(95℃で4分間)および氷冷バス中でのshRNAの即時冷却のあるなしでの、10%ネイティブポリアクリルアミドゲル中でのshRNAのモノマー、ダイマー、およびオリゴマーを示す。
【図11】図11は、ニックのあるなしの、およびT字型RNAのshRNAの効力を描写する。この実験は、図3に記載されたように行われた。これらの実験において使用されたshRNAの濃度には、0.3nM、0.1nM、0.03nM、0.01nM、および0.003nMが含まれる。2通りの濃度(0.3および0.03nM)のみがSG102で試験された。SG68L、SG146、およびSG142は、3’−UU突出を伴う同じ二重鎖配列を有する。SG68LおよびSG146は5’−CAAUA−3’ループを有するのに対して、SG142は5’−UU−3’ループを有する。SG146はDharmaconのsiRNAアニーリング指示書に従って一緒にアニーリングされた2つのRNA分子から構成される。第1の分子はガイド鎖、ループ、および4−ヌクレオチドパッセンジャー鎖を含み;第2の分子は15ヌクレオチドのパッセンジャー鎖の3’末端および3’突出を含む。SG102は、第1の鎖および第2の鎖の第1の領域にガイド鎖およびパッセンジャー鎖を有する3RNA分子から構成される(図2A)。第3の鎖は第1の鎖および第2の鎖の第2の領域に相補的である。
【図12】図12は、肝細胞癌細胞系統Huh7におけるshRNAの効力を描写する。293FT細胞における結果と一致して、SG68LはSG68よりも効力が高い。陰性対照であるSG101は、いかなる所定の濃度においてもホタルルシフェラーゼ遺伝子発現を減少させなかった。
【図13】図13は、いくつかの高度に強力なshRNAの阻害活性がIFN応答または細胞傷害性に起因しないことを示す。図13Aは、shRNAトランスフェクション後のヒト末梢血単核細胞(PBMC)におけるIFN−応答性遺伝子OAS1の発現を描写する。図13Bは、shRNAトランスフェクション後のヒト肝細胞癌細胞系統(Huh7)における3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)の取り込みを描写する。まとめると、図13Aおよび13Bのこれらのパネルは、IFN応答または細胞傷害性がこれらのshRNAによって誘導されたのではないことを示す。
【図14】図14は、19以下の塩基対のステム長を有するshRNAが組換えDicerのための基質であることを示す。Dicerによる処理の生成物は、非変性PAGE(図14A)および変性PAGE(図14B)によって分析される。
【発明を実施するための形態】
【0035】
発明の詳細な説明
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって共通して理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様のまたは等価な方法および材料は本発明の実施または試験において使用できるが、適切な方法および材料は以下に説明される。GenBankデータベース配列を含む、本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、それらの全体が参照により組み込まれる。矛盾する場合には、定義を含む本明細書が優先する。加えて、材料、方法、および実施例は例示のみであって、限定することを意図しない。
【0036】
本開示の実施形態は、shRNA誘導性遺伝子サイレンシングを実施するための組成物および方法に向けられる。shRNA、修飾shRNA、フラクチャーshRNA、修飾フラクチャーshRNA、T字型RNA、およびこれらの誘導体の使用により、RNA干渉の効率が改善されてもよい。従って、本開示は、shRNAの機能を増加するための組成物、方法、およびキットを提供する。好ましくは、本開示は、ウイルス遺伝子発現を阻害するため、および/またはヒトなどの哺乳動物におけるウイルス感染を治療するために、shRNAの機能を改善するための組成物および方法を提供する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるshRNA構築物は、shRNAのガイド鎖配列によって認識される標的配列の中または近傍のウイルスポリヌクレオチド配列の切断を誘導することによって、ウイルスの遺伝子発現を阻害する。
【0037】
本明細書で使用される「ショートヘアピンRNA」という語句または「shRNA」という用語は、RNAiを実施することが可能であり、かつパッセンジャー鎖、ループ、およびガイド鎖を有する単分子RNAをいう。好ましくは、パッセンジャー鎖およびガイド鎖は、互いに実質的に相補的である。ガイド鎖は約16〜約29ヌクレオチド長、より好ましくは18〜19ヌクレオチド長であり得る。パッセンジャー鎖は約11〜約29ヌクレオチド長、より好ましくは17〜19ヌクレオチド長であり得る。ガイド鎖は、標的mRNAに相補的である少なくとも17塩基を含むことができる。いくつかの実施形態において、標的に相補的なガイド鎖はミスマッチを含むことができる。その配列は、遺伝的変異または表現型の配列に相補的であるように標的配列を変化させることによって、標的、例えば、ウイルス標的の1つ以上の遺伝的変異または表現型を標的とするために変動可能である。いくつかの実施形態において、配列は、複数のウイルス系統、例えば、HCVのウイルス系統を標的とすることができるが、配列は、標的配列の少なくとも1つのヌクレオチド(例えば、1個、2個、または3個のヌクレオチド)によって、1つの系統の標的とは異なり得る。shRNAは、例えば、0〜約24ヌクレオチド長、好ましくは、0〜約10ヌクレオチド長、およびより好ましくは、2ヌクレオチド長までの長さのループを有してもよい。このループの配列は、標的に無関係なヌクレオチド残基を含むことができる。1つの特に好ましい実施形態において、ループは5’−UU−3’である。いくつかの実施形態において、これは非ヌクレオチド部分を含んでもよい。さらに他の実施形態において、このループはいかなる非ヌクレオチド部分も含まない。任意に、shRNAは、分子の3’末端に2塩基の突出領域を有することができる。shRNAは、ミスマッチおよび/またはバルジを含むステム−ループ構造を伴うRNAもまた含むことができる。標的に対して相同であるパッセンジャー鎖は、例えば、天然に存在するマイクロRNAにはよくあることだが、約1〜約5ヌクレオチドのミスマッチ、挿入、または欠失を有することによって、約0〜約5箇所の部位において異なり得る。上記の構造のいずれかを含むRNAは、ループがヌクレオチド、非ヌクレオチド、またはヌクレオチドおよび非ヌクレオチドの組み合わせを含む構造を含有することができる。任意のshRNAの中で、好ましくは、複数の、より好ましくはすべてのヌクレオチドがリボヌクレオチドである。
【0038】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるshRNAは、少なくとも1つの結合体部分を任意に含む。
【0039】
本明細書で使用される「フラクチャーshRNA」という語句は、2つ以上の離れた鎖を含むショートヘアピンRNAをいう。このような分子は、種々の様式で組織化でき(例えば、5’−パッセンジャー−フラクチャー−パッセンジャー−ループ−ガイド、5’−ガイド−ループ−パッセンジャー−フラクチャー−パッセンジャー)、分子中のフラクチャーは、ニック、1つ以上の不対ヌクレオチドに接するニック、またはギャップを含むことができる。
【0040】
本明細書で使用される「T字型RNA」という語句は、少なくとも別々の3つの鎖:第1の鎖、第2の鎖、および第3の鎖を含むT字型RNAをいう。第1の鎖と第2の鎖の両方は、以下のような2つの領域(IおよびII)を含む:第1の鎖の第1の領域は、第2の鎖の第1の領域とアニーリングまたはハイブリダイズが可能であり;1つの鎖の第1の領域は標的mRNAに相補的な少なくとも17塩基を含むことができ;両方の鎖の第1の領域は約17〜29ヌクレオチド長、好ましくは22ヌクレオチド長であり得;第1の鎖の第2の領域は、第3の鎖の部分とアニールまたはハイブリダイズでき;第2の鎖の第2の領域は、第1の鎖の第2の領域とハイブリダイズする部分に対して隣接しかつ3’である第3の鎖の部分とアニールまたはハイブリダイズでき;第1の鎖および第2の鎖の第2の領域は互いに相補的ではなく、約4〜約10ヌクレオチド長、好ましくは8ヌクレオチド長であり得;第3の鎖は少なくとも約8ヌクレオチド長であり得;第3の鎖は、第1の鎖および第2の鎖の対(her pairs)の第2の領域に対して相補的である複数の配列を有してもよく、その結果、第1の鎖および第2の鎖から構成される複数の二重鎖が第3の鎖にアニールすることができ;任意に、第2の鎖の3’末端に2塩基の突出領域が存在する。
【0041】
本明細書に記載されるshRNA、フラクチャーshRNA、およびT字型RNAは、遺伝子サイレンシングを実施する際に有用であり得る。また、いくつかの例において、これらはヘアピンのステムの長さと同様または等価である長さを有する二重鎖より好ましくあり得、このことは、本明細書に記載されるshRNAは、RNA干渉がより効率的であり、かつ細胞のストレスおよび/または毒性を誘導する可能性がより少なくあり得るという事実に起因する。
【0042】
加えて、「ショートヘアピンRNA」という語句および「shRNA」という用語は、修飾ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド間連結、非ヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、およびこれらの言及されたヌクレオチドのアナログを含むがこれらに限定されない、リボヌクレオチド部分以外の部分もまた含有する核酸を含む。
【0043】
本明細書で使用される「siRNA」という用語は、各々の末端において二重鎖領域および非相同残基の3’突出を含むRNA分子をいう。二重鎖領域は、典型的には、約18〜約30ヌクレオチド長であり、突出は任意の長さの非相同残基の突出であってもよいが、2ヌクレオチド突出が好ましい。
【0044】
本明細書で使用される「ガイド鎖」という語句は、目的の標的核酸に実質的に相補的であるか(例えば、80%以上)または100%相補的であるポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの領域をいう。shRNAのガイド鎖はまた、そのパッセンジャー鎖に少なくとも実質的に相補的である。ガイド鎖は、RNA、DNA、またはキメラRNA/DNAであるポリヌクレオチド領域から構成できる。ガイド鎖中の任意のヌクレオチドが、そこに結合される置換基を、例えば、2’修飾において、含むことによって修飾できる。ガイド鎖はまた、小分子および/または結合体の多様な群で修飾できる。例えば、ガイド鎖は、メッセンジャーRNAの分子、mRNAではないRNA配列(例えば、tRNA、rRNA、hnRNA、ネガティブ鎖およびポジティブ鎖ウイルスRNA、およびその相補RNA)またはコード鎖もしくは非コード鎖のいずれかであるDNAの配列に対して、全体としてまたは部分的に相補的であってもよい。
【0045】
ガイド鎖は、ガイド鎖ヌクレオチド以外のヌクレオチドを含む、より大きな鎖の一部であってもよい。例えば、T字型RNA構造の場合において、第1の鎖または第2の鎖は、ガイド鎖、および第3の鎖に対して相補的であるが、標的に対しては相補的ではないさらなるヌクレオチドを含んでもよい。フラクチャーヘアピンの場合において、ガイド鎖は、ループ領域およびガイド鎖の一部に相補的である第3の領域もまた含む鎖の一部であり得る。
【0046】
本明細書で使用される「パッセンジャー鎖」という語句は、メッセンジャーRNAまたはDNAの配列などの標的核酸と同じヌクレオチド配列を、全体としてまたは部分的に有する、ポリヌクレオチドまたは領域をいう。配列が慣例によって提供されるとき、他に示されない限り、これはパッセンジャー鎖(または領域)であり、相補的なガイド鎖(または領域)の存在は暗黙である。
【0047】
本明細書で使用される「相補性」という用語は、互いと塩基対を形成するポリヌクレオチドの能力をいう。塩基対は、典型的には、逆平行ポリヌクレオチド鎖または領域におけるヌクレオチド単位の間の水素結合によって形成される。相補的ポリヌクレオチド鎖または領域は、ワトソン−クリック様式で(例えば、AとT、AとU、CとG)または安定な二重鎖の形成を可能にする任意の他の様式で塩基対形成できる。
【0048】
本明細書で使用される「完全な相補性」または「100%相補性」とは、1つのポリヌクレオチド鎖または領域(regioin)の各ヌクレオチド単位が、第2のポリヌクレオチド鎖または領域の各ヌクレオチド単位と水素結合を形成できる状態をいう。完全より少ない相補性とは、2つの鎖または2つの領域のいくつかの、しかしすべてではないヌクレオチド単位が、互いに水素結合できる状態をいう。例えば、2つの19マーについては、各鎖または各領域上の17塩基対がお互いに水素結合できる場合、これらのポリヌクレオチド鎖は89.5%相補性を示す。実質的な相補性は、80%以上の相補性を示すポリヌクレオチド鎖または領域をいう。
【0049】
本明細書で使用される「デオキシヌクレオチド」という用語は、適切な結合および/または2’,3’末端ジデオキシを有する糖部分の2’または3’位のOH基を欠き、代わりに2’および/または3’炭素に結合された水素を有する、ヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいう。
【0050】
本明細書で使用される「デオキシリボヌクレオチド」および「DNA」という用語は、そのリボシル部分の2’位において、OHの代わりにHを有する少なくとも1つのリボシル部分を含む、ヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいう。
【0051】
本明細書で使用される「ミスマッチ」という用語は、ワトソン−クリック塩基対形成が、ガイド鎖のヌクレオチドとパッセンジャー鎖のヌクレオチドの間で起こらない状況を含み、ここで、これらのヌクレオチドは、ミスマッチ位置のすぐ後で(5’方向で)開始する5’方向のミスマッチの塩基対、およびミスマッチ位置のすぐ後で(3’方向で)開始する3’方向のミスマッチの塩基対を含む二重鎖によって隣接される。ミスマッチの例には、Gに向き合ったA、Aに向き合ったC、Cに向き合ったU、Aに向き合ったA、Gに向き合ったG、Cに向き合ったCなどが非限定的に含まれる。ミスマッチには、ヌクレオチドまたは修飾ヌクレオチドに向き合った無塩基残基、ヌクレオチドまたは修飾ヌクレオチドに向き合った非環式残基、ギャップ、または不対ループもまた含まれる。その最も広い意味において、ミスマッチには、変化が出現する位置またはその近傍において熱力学的安定性を減少し、その結果、特定の位置における二重鎖の熱力学的安定性が、その位置におけるワトソン−クリック塩基対の熱力学的安定性よりも小さい、所定の位置における任意の変化が含まれる。好ましいミスマッチには、Aに向き合ったG、Cに向き合ったAが含まれる。特に好ましいミスマッチには、Aに向き合ったA、Gに向き合ったG、Cに向き合ったC、およびUに向き合ったUが含まれる。
【0052】
「RISC」および「RNA誘導性サイレンシング複合体」という語句は、本明細書で交換可能に使用され、RNAiを媒介するタンパク質の複合体を表す(例えば、Hutvagner,G.FEBS Letters,2005 579(26):5850−7を参照のこと)。
【0053】
「RNA干渉」という語句および「RNAi」という用語は本明細書で交換可能に使用され、一本鎖、二本鎖、またはT字型の分子(例えば、siRNA、shRNA、miRNA、piRNA)が、Drosha、DISC、Dicerなどを含むがこれらに限定されないRNAi経路の1つ以上の構成要素と相互作用することによって生物学的プロセスに対して効果を発揮するプロセスをいう。このプロセスは、mRNAを分解することによる遺伝子サイレンシング;翻訳の減衰、tRNA、rRNA、hnRNA、cDNA、およびゲノムDNAとの相互作用;ならびに補助タンパク質を用いるDNAの阻害およびメチル化を包含するがこれらに限定されない。加えて、RNAiを調節する分子(例えば、siRNA、piRNA、またはmiRNA阻害剤)は、RNAi経路を増強する分子のリストに含まれる(例えば、Tomari,Y.ら、Genes Dev.2005,19(5):517−29を参照のこと)。
【0054】
本明細書で使用される「サイレンシング」という語句は、例えば、ルシフェラーゼレポーターアッセイ、PCRベースの方法、ノーザンブロット分析、分枝DNA、ウェスタンブロット分析、および当該分野で認識されている他の技術などのレポーター方法を含む任意の数の方法によって測定できる、遺伝子発現におけるRNAi媒介性の減少を意味する。
【0055】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、飽和または不飽和、および置換または非置換であり得る炭化水素部分をいう。これは、直鎖状、分枝状、環状、および/または複素環式であり、エーテル、ケトン、アルデヒド、カルボン酸などのような官能基を含む部分を含んでもよい。他に特定されない限り、アルキル基は、環状、複素環式ではなく、または官能基を含む。
【0056】
例示的なアルキル基には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコイル(eicoyl)、およびより大きな数の炭素のアルキル基の置換および非置換基、ならびに2−メチルプロピル、2−メチル−4−エチルブチル、2,4−ジエチルプロピル、3−プロピルブチル、2,8−ジブチルデシル、6,6−ジメチルオクチル、6−プロピル−6−ブチルオクチル、2−メチルブチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、および(nad)2−エチルヘキシルが含まれるがこれらに限定されない。アルキルという用語は、ビニル基、アリル基、アラルキル基、およびアルキニル基などのアルケニル基もまた包含する。他に特定されない限り、アルキル基は置換されていない。
【0057】
アルキル基の中での置換は、存在すると特定される場合、アルキル部分の中で容認できる任意の原子または基を含むことができ、これには、ハロゲン、硫黄、チオール、チオエーテル、チオエステル、アミン(1級、2級、または3級)、アミド、エーテル、エステル、アルコール、および酸素が含まれるがこれらに限定されない。アルキル基は、例として、アゾ基、ケト基、アルデヒド基、カルボキシル基、ニトロ基、ニトロソ基、またはニトリル基、イミダゾールなどの複素環、ヒドラジンまたはヒドロキシアミノ基、イソシアネート基またはシアネート基、ならびにスルホキシド、スルホン、スルフィド、およびジスルフィドなどの硫黄含有基などの修飾もまた含むことができる。他に特定されない限り、アルキル基は、ハロゲン、硫黄、チオール、チオエーテル、チオエステル、アミン、アミド、エーテル、エステル、アルコール、酸素、または上記に列挙された修飾を含まない。
【0058】
さらに、アルキル基はまた、ヘテロ置換を含んでもよく、これは、例えば、窒素、酸素、または硫黄による炭素原子の置換である。複素環式置換とは、1つ以上のヘテロ原子を有するアルキル環をいう。複素環部分の例には、モルホリノ、イミダゾール、およびピロリジノが含まれるがこれらに限定されない。他に特定されない限り、アルキル基は、ヘテロ置換、または1つ以上のヘテロ原子を有するアルキル環(すなわち、複素環置換)を含まない。
【0059】
2’修飾のための好ましいアルキル基は、リボシル部分の2’炭素へのO連結を有するメチル基、すなわち、2’−O−メチル基を含む2’O−アルキルである。
【0060】
「2’−O−アルキル修飾ヌクレオチド」という語句は、本明細書で使用される場合、糖部分、例えば、酸素原子が、糖の2’位に配置された炭素原子とアルキル基の両方に結合されるように、2’位において修飾されているデオキシリボシル部分を有するヌクレオチド(nuclotide)単位をいう。種々の実施形態において、このアルキル部分は、炭素および水素から本質的になる。特に好ましい実施形態は、アルキル部分がメチルであるものである。
【0061】
本明細書で使用される場合、「2’炭素修飾」という用語は、糖部分、例えば、糖サブユニットの2’位において修飾されている部分を有するヌクレオチド単位をいう。「2’−O−アルキル修飾ヌクレオチド」は、この位置で修飾され、その結果、酸素原子が糖の2’位に結合されるのと、アルキル基に位置することの両方であり、例えば、2’−O−メチル、2’−O−エチル、2’−O−プロピル、2’−O−イソプロピル、2’−O−ブチル、2’−O−イソブチル、2’−O−エチル−O−メチル(−OCH2CH2OCH3)、および2’−O−エチル−OH(−OCH2CH2OH)である。本明細書で使用される場合、「2’炭素パッセンジャー鎖修飾」は、パッセンジャー鎖上のヌクレオチドの2’炭素の位置における修飾をいう。本明細書で使用される場合、「2’炭素ガイド鎖修飾」は、ガイド鎖上のヌクレオチドの2’炭素の位置における修飾をいう。
【0062】
本明細書で使用される場合、「ヌクレオチド」という用語は、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドまたはこれらの修飾型、ならびにそれらのアナログをいう。ヌクレオチドには、プリン、例えば、アデニン、ヒポキサンチン、グアニン、およびそれらの誘導体およびアナログ、ならびにピリミジン、例えば、シトシン、ウラシル、チミン、およびそれらの誘導体およびアナログを含む種が含まれる。好ましくは、「ヌクレオチド」は、シトシン、ウラシル、チミン、アデニン、またはグアニン部分を含む。
【0063】
ヌクレオチドアナログには、塩基、糖、および/またはリン酸の化学構造の修飾を有するヌクレオチドが含まれ、これらには、5位ピリミジン修飾、8位プリン修飾、シトシン環外アミンの修飾、および5−ブロモウラシルの置換が含まれるがこれらに限定されず;ならびに2’位糖修飾が含まれるがこれらに限定されず、ここでは、2’−OHが、H、OR、R、ハロ、SH、SR、NH2、NHR、NR2、またはCNなどの基によって置き換えられる糖修飾リボヌクレオチドが含まれ、ここで、Rは本明細書で定義されるようなアルキル部分である。ヌクレオチドアナログは、イノシン、クエオシン、キサンチンなどの塩基、2’−メチルリボースなどの糖、メチルホスホネート、ホスホロチオエート(phophorothioates)、およびペプチドなどの非天然ホスホジエステル結合を伴うヌクレオチドもまた含む。
【0064】
修飾塩基は、1つ以上の原子または基の置き換えまたは付加によって修飾された、例えば、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、およびウラシル、キサンチン、イノシン、およびクエオシンなどのヌクレオチド塩基をいう。修飾の型のいくつかの例には、塩基部分に関して修飾されているヌクレオチドが含まれ、これには、種々の組み合わせにおける、アルキル化、ハロゲン化、チオール化、アミノ化、アミド化、またはアセチル化された塩基が含まれるがこれらに限定されない。より特定の修飾塩基には、例えば、5−プロピニルウリジン、5−プロピニルシチジン、6−メチルアデニン、6−メチルグアニン、N,N,−ジメチルアデニン、2−プロピルアデニン、2−プロピルグアニン、2’−アミノアデニン、1−メチルイノシン、3−メチルウリジン、5−メチルシチジン、5−メチルウリジン、および5位に修飾を有する他のヌクレオチド、5−(2−アミノ)プロピルウリジン、5−ハロシチジン、5−ハロウリジン、4−アセチルシチジン、1−メチルアデノシン、2−メチルアデノシン(adenosien)、3−メチルシチジン、6−メチルウリジン、2−メチルグアノシン、7−メチルグアノシン、2,2−ジメチルグアノシン、5−メチルアミノエチルウリジン、5−メチルオキシウリジン、7−デアザ−アデノシンなどのデアザヌクレオチド、6−アゾウリジン、6−アゾシチジン、6−アゾチミジン、5−メチル−2−チオウリジン、2−チオウリジンおよび4−チオウリジンおよび2−チオシチジンなどの他のチオ塩基、ジヒドロウリジン、プソイドウリジン、クエオシン、アーカエオシン、ナフチルおよび置換ナフチル基、任意のO−およびN−アルキル化プリンおよびピリミジン、例えば、N6−メチルアデノシン、5−メチルカルボニルメチルウリジン、ウリジン5−オキシ酢酸、ピリジン−4−オン、ピリジン−2−オン、アミノフェノールまたは2,4,6−トリメトキシベンゼンなどのフェニルおよび修飾フェニル基、G−クランプヌクレオチドとして働く修飾シトシン、8−置換アデニンおよびグアニン、5−置換ウラシルおよびチミン、アザピリミジン、カルボキシヒドロキシアルキルヌクレオチド、カルボキシアルキルアミノアルキルヌクレオチド、ならびにアルキルカルボニルアルキル化ヌクレオチドが含まれる。修飾ヌクレオチドはまた、糖部分に関して修飾されているヌクレオチド、ならびにリボシルではない糖またはそのアナログを有するヌクレオチドを含む。例えば、糖部分は、マンノース、アラビノース、グルコピラノース、ガラクトピラノース、4−チオリボース、および他の糖、複素環または炭素環であってもよく、またはこれらの糖をベースにしてもよい。ヌクレオチドアナログという用語は、普遍的な塩基として当該分野において公知であるものもまた含む。例として、普遍的塩基には、3−ニトロピロール、5−ニトロインドール、またはネブラリンが含まれるがこれらに限定されない。
【0065】
さらに、ヌクレオチドアナログという用語には、例えば、ヌクレオチドに結合された放射活性部分もしくは蛍光部分、または質量標識などの検出可能な標識を有する種もまた含まれる。
【0066】
本明細書で使用される場合、「突出」という用語は、第1の鎖または領域が二重鎖を形成する相補鎖の末端を超えて伸びる1つの鎖または領域から生じる末端の非塩基対形成ヌクレオチドをいう。水素結合を通して二重鎖を形成することが可能である1つ以上のポリヌクレオチドは突出を有することができる。二重鎖の3’末端を超えて伸びる一本鎖領域は突出と呼ばれる。
【0067】
本明細書で使用される場合、「リボヌクレオチド」という用語および「リボ核酸」(RNA)という語句は、少なくとも1つのリボヌクレオチド単位を含む修飾または非修飾のヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいう。リボヌクレオチド単位は、リボシル部分の1’位におけるNグリコシド結合で結合された窒素性塩基を有するリボシル部分の2’位に結合した酸素、および別のヌクレオチドへの連結を可能にするか、または連結を防止するかのいずれかである部分を含む。
【0068】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容されるキャリア」という語句は、本開示の組成物を動物またはヒトに投与するための薬学的に許容される塩、溶媒、懸濁剤、または媒体を意味する。キャリアは液体、半固体、または固体であってもよく、しばしば、希釈剤、賦形剤、または塩と同義語的に使用される。「薬学的に許容される」という語句は、開示される成分、賦形剤、キャリア、または成分が、合理的な損益比率と釣り合っている、過度の有害な副作用(毒性、炎症、およびアレルギー反応など)を伴うことなくヒトおよび/または動物での使用のために適切であるものであることを意味する。Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition、Osol、A.編(1980)を参照のこと。
【0069】
「約」という用語は、所与の数値の±20%の値を意味するために本明細書で使用される。従って、「約60%」は、60±(60の20%)の間の値(すなわち、48と70の間)を意味する。
【0070】
本明細書で使用される場合、「含む」は、「含有する」「包含する」または「によって特徴付けられる」と同義語であり、包括的またはオープンエンド型であり、さらなる列挙されていない構成要素または方法の工程を除外しない。本明細書で使用される場合、「からなる」は、請求項の要素において特定されていない任意の要素、工程、または成分を除外する。本明細書で使用される場合、「から本質的になる」は、請求項の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を与えない物質または工程を除外しない。本明細書における各々の例において、「含む」、「から本質的になる」、および「からなる」という用語は、他の2つの用語のいずれかで置き換えられてもよい。本明細書において適切に例示的に説明された本開示は、本明細書において具体的に開示されていない構成要素の任意の要素、1つまたは複数の限定の非存在下で実施されてもよい。
【0071】
いくつかの実施形態において、HCV IRES配列を標的とするshRNAを試験する方法が、十分な活性(例えば、このような配列の選択された群の中で最高の活性)を有する配列を、治療としての使用のための候補として同定するために含まれる。試験はまた、望ましくない標的を外れた効果を有するshRNAをスクリーニングすることもまた含んでもよい。標的を外れる効果には、非限定的に、標的としていない遺伝子のノックダウン、標的としていない遺伝子の発現の阻害、および天然のマイクロRNA経路との競合が含まれる。細胞傷害性効果を同定するための方法は当該分野において公知である。
【0072】
1つの実施形態において、本明細書に記載されるshRNAは、C型肝炎ウイルス(HCV)の内部リボソーム侵入部位(IRES)エレメントの配列に相補的な配列を含む。
【0073】
ホタルルシフェラーゼ(fLuc)発現がHCV IRESに依存する二重レポータールシフェラーゼプラスミドが使用された。上流レニラルシフェラーゼの発現はHCV IRES依存的ではなく、Cap依存的プロセスで翻訳される。HCV IRES shRNAの直接トランスフェクションは、ヒト293FT細胞およびHuh7細胞において、HCV IRES媒介fluc発現を効率的に阻止した。二重変異を含む対照shRNAは、fLuc発現に効果がほとんどないかまたは効果が全くなく、単一の変異のみを含むshRNAは部分的な阻害を示した。これらのshRNAは、DNA構築物が、尾静脈を介する流体力学的トランスフェクションによって肝臓中の細胞に送達されたマウスモデルにおいてもまた評価された。二重ルシフェラーゼ発現プラスミド、shRNA、および分泌性アルカリホスファターゼプラスミドは、肝臓中の細胞をトランスフェクトするために使用され、これらの動物は12〜96時間にわたる時点で画像化された。インビボ画像化は、HCV IRES shRNAが、直接的に、または代替的にはpolIIIプラスミドベクターから発現され、HCV IRES依存性レポーター遺伝子発現を阻害し;変異型または無関係なshRNAはほとんど効果がなかったかまたは全く効果がなかったことを明らかにした。これらの結果は、RNAとして送達されたか、またはウイルスベクターもしくは非ウイルスベクターから発現されたshRNAが、HCVおよび関連するウイルスの制御のために有効な抗ウイルス剤として有用であることを示す。
【0074】
RNAi活性と合成shRNAの構造との間の関連性をさらに研究するために、HCV IRESの配列に相補的なガイド鎖配列および同じ配列を含む対応する合成siRNAを有する、複数のshRNA、フラクチャーshRNA、およびT字型RNAが、阻害活性、IFN、および細胞傷害性についてアッセイされた。試験された構築物の多くが高レベルのRNAi活性を示した。一般的に、ヘアピンの5’末端にガイド鎖を有するshRNAは、3’末端に同じガイド鎖を有するものよりも強力であった。次いで、5’ガイド鎖を有するshRNAの構造改変体がさらに研究された。
【0075】
shRNAのループ領域のサイズおよび配列もまた研究された。ループは、shRNA活性に有意な影響を与えることなく1ヌクレオチドまで小さくあり得、ループサイズには明確な上限がない;一般的に、ループは2〜10ヌクレオチドの間であり、一般的には、例えば、非標的遺伝子に対して相補的であることによって、意図されない効果を引き起こすことはない配列である。しかし、5’末端にガイド鎖を有するshRNAには短いループが有利である。具体的には、2ヌクレオチドループ(5’−UU−3’)は、10ヌクレオチド、5ヌクレオチド、または1ヌクレオチドのループを有するshRNAの間で最良の効力をshRNAに与えた。ループの直前のループを閉じる塩基対は、短いループ(例えば、2ヌクレオチドループ)に対して重要であるが、shRNAの高い機能を維持するためには長いループ(5ヌクレオチドループ)に対して重要なほどではない。従って、二重鎖形成を強化するために働くことができた、UUループの直前に「CGクランプ」を有するshRNAは、AU塩基対を有するものよりも4.6倍低いIC50を与えた(図5B)。別の態様において、このループは、shRNAの遺伝子ノックダウン活性に影響を与えることなく、パッセンジャー鎖の5’末端に直接結合された、ガイド鎖の3’部分を含むことができる。この場合において、このループは2〜8ヌクレオチド長である。
【0076】
ループ構造はまた、デオキシリボヌクレオチド、非ヌクレオチドモノマー、およびS−S結合などの可逆的連結を含むことができ、これは、例えば、(Earnshwaw et al.,J.Mol.Biol.,1997,274:197−212;Sigurdsson et al.Thiol−containing RNA for the study of Structure and Function of Ribozymes. Methods:A Companion to Methods in Enzymology,1999,18:71−77)記載されるように、ヌクレオチド残基に導入された−SH基の酸化によって形成できる。
【0077】
本発明は、以下の実施例によってさらに例証される。これらの実施例は例示目的のみのために提供される。これらは、いかなる場合においても、本発明の範囲および内容を限定するものとしては解釈されない。
【実施例】
【0078】
実施例1−標的ノックダウンにおける効力を改善するためのshRNA構造の最適化
標的ノックダウンにおける効力が増加したshRNA構造を同定するために、5’−パッセンジャー鎖(右側のループ)を有する3セットのshRNA(shRNA68、shRNA 72、shRNA 74)および5’−ガイド鎖(左側のループ)を有する3つが、IDT(Coralvilled,IA)によって化学合成され、RNaseおよびパイロジェンを含まない緩衝液(Dharmacon)に再懸濁され、そして評価された。具体的には以下の通りであった:
構造5’−パッセンジャー鎖−5ntループ−ガイド鎖−3’(SG68、SG72、およびSG74)を有するshRNA
【0079】
shRNA中の二重鎖の長さもまた、標的遺伝子抑制に影響を与える。ガイド鎖が19ヌクレオチド長で維持される間、3’末端から(17または16ヌクレオチド長まで)短縮されたshRNAのパッセンジャー鎖を有するshRNAは、有意に低いサイレンシング効力を有する。ガイド鎖を19ヌクレオチドで維持しながらパッセンジャー鎖を5’末端から(17ヌクレオチド長まで)短縮することは、shRNA活性に影響を与えない。興味深いことに、shRNAは、ガイド鎖が19ヌクレオチド長に維持される場合に、11ヌクレオチド長まで短い(5’末端から短縮化される)パッセンジャー鎖で何らかの活性を維持する。短縮化されたパッセンジャー鎖とガイド鎖の両方を有するshRNA(各18ヌクレオチド長であり、二重鎖中に18塩基対を形成する)は、19塩基対二重鎖を有するshRNAと比較して非常に類似した効力を示した。特定の位置における単一のミスマッチは、shRNAの効力に影響を与えることなく、shRNAの二重鎖領域に導入できる。
【0080】
フラクチャーshRNAおよびT字型RNAもまた試験され、実施例6において示されるように、高レベルのRNAi活性が見られた。
【0081】
範囲が本明細書中で与えられるときにはいつでも、例えば、温度範囲、時間範囲、配列同一性パーセント、配列相補性範囲、長さ範囲、または組成もしくは濃度の範囲、すべての中間の範囲および部分的な範囲、ならびに与えられた範囲に含まれるすべての個々の値は、本開示に含まれることが意図される。 構造5’−ガイド鎖−5ntループ−パッセンジャー鎖−3’(SG68L、SG72L、およびSG74L)を有するshRNA
【0082】
これらのshRNAの配列は表1に示される。shRNAループに下線を付す。3’突出を形成するヌクレオチドは小文字によって示される。
【表1】
【0083】
ヒト293FT(Invitrogen)細胞は、2mM L−グルタミンおよび1mM ピルビン酸ナトリウムを補充した、10% 加熱不活化ウシ胎仔血清(Hyclone)を有するDMEM中に維持された。トランスフェクションの前日に、細胞は96ウェルプレート中のウェルあたり23,000細胞で播種され、トランスフェクションの時点で約80%細胞コンフルエンシーを生じた。製造業者の指示書に従って、細胞はLipofectamine(商標)2000(Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いてトランスフェクトされた。具体的には、示された濃度(例えば、10、3、1、0.3、0.1、0.03、0.01、および0.003nM)の合成shRNAサンプル、13ng DNA プラスミドpSG154m(これはHCV IRES標的配列およびホタルルシフェラーゼレポーター配列を含む)、20ng pSEAP2−対照プラスミド(BD Biosciences Clontech、トランスフェクション対照として)は、OptiMem(Invitrogen)中0.25μl Lipofectamine 2000と混合され、3連で293FT細胞に導入された。48時間後、上清は取り除かれ、65℃で15〜30分間加熱され、そして5〜10μlの上清が150μl p−ニトロフェニルホスフェート液体基質システム(pNPP、Sigma)に加えられた。室温で30〜60分間のインキュベーション後、サンプルは、Molecular Devices Thermomaxマイクロプレートリーダー上で読み取られ(405nm)、SOFTmaxソフトウェア(Molecular Devices)を使用して定量された。残っている細胞は溶解され、ルシフェラーゼ活性はMicroLumat LB 96Pルミノメーター(Berthold)を使用して測定された。
【0084】
これらの実験の結果は図3A〜3Cに提示される。3つのshRNAの1つ、sh68は、(右側の代わりに)左側のループが使用されたときに、ほぼ30倍高い効力を示した。他の2種のshRNA、特に、sh72は、右側および左側のループを有するshRNAの間で効力の有意な違いを示さなかった。
【0085】
5’−ガイド鎖を有するshRNAの効力の増強に関連する鍵となる特性を同定するために、5’−パッセンジャー鎖を有するshRNAおよび5’−ガイド鎖を有するshRNAの内部安定性が、プログラムOligo 4.0を使用して計算された。5’鎖の19塩基のみが計算された。
【0086】
計算の結果は図3D〜3Fに提示され、左側ループを有するsh72における活性増加の欠如がおそらく配列特異的であり、5’末端の内部安定性の違いに少なくとも部分的に起因することを実証する。右側ループおよび左側ループを有するshRNAの5’末端の内部安定性は、sh68においては互いに非常に近かったが、sh72ではそうではなかった。左側ループを有するshRNAはガイド鎖の侵入を簡単にし、ガイド鎖の優先的な使用を助長することが可能である。なぜなら、これは、5’末端にありかつ5’リン酸を有し、このことは、RISCにおいてDicerおよびAgo2に結合するための必要条件であるからである。この利点は、右側ループを有するshRNAと左側ループを有するshRNAの間で5’末端の内部安定性が有意に異なるときに消失する。
【0087】
実施例2:shRNAの最適なループ構造およびループを閉じる塩基対の同定
sh19−3のループ構造は(本明細書に具体的に参照により組み込まれるWO2007/032794において記載されるように)以前に研究された。sh19−3と同じIRES領域を標的とするSG68対SG68Lの効力の増強を考慮して、ループ構造が再試験された。293FT細胞におけるHCV IRES媒介性レポーター発現を阻害する能力に対する種々のループ構造の効果は実施例1に記載された。結果は図4に示される。SEAPレベルはすべてのサンプルにおいて均一であり、0.003nM〜0.3nMのshRNA濃度において、効率的なトランスフェクションおよび非特異的阻害または毒性効果の非存在を示す。
【0088】
ループ長は、siRNA 19−3(si19−3)と同じIRES領域を標的とするshRNAを使用して最初に調べられた。shRNAの構造は、5’−ガイド鎖−ループ−パッセンジャー鎖−3’(左側ループ)であった。この二重鎖長は19塩基対であり、パッセンジャー鎖の3’末端にUU−突出を伴った。種々のループの長さを有するshRNAの配列は表2に列挙される。shRNAループに下線を付す。3’突出のヌクレオチドは小文字で示される。
【0089】
10ヌクレオチドループ(SG113、5’−CUUCCUGUCA−3’)、5ヌクレオチドループ(SG68L、5’−CAAUA−3’)、2ヌクレオチドループ(SG142、5’−UU−3’)、および1ヌクレオチドループ(SG114、5’−U−3’)を有するshRNAが試験され、結果は図4Aに示される。5’パッセンジャー鎖(右側ループ)を有するshRNAを用いた結果とは異なり(Vlassov et al.,Oligonucleotides 17:223−236,2007)、5’ガイド鎖(左側ループ)を有するshRNAは、ループサイズが大きいとき(5または10nt)よりも、非常に小さいとき(1または2nt)に高い効力を有した(図4A)。このループ構造は、おそらく、shRNA活性に影響を与えない。なぜなら、miR−23 マイクロRNAループ構造から誘導されたものを含む、3つの異なるループ配列が使用されたからである。SG142(左側5’−UU−3’ループ)のIC50は最低4.6pMまで−siRNA 19−3よりも強力であり、これは、同じ領域を標的とする。右側ループを有するshRNAは、ループに直に隣接する塩基対としてA:Uを有し、左側ループを有するそれは同じ位置にC:G対を有する。これらの対は、実際、2ntループから潜在的な緊張を軽減するために塩基対形成しなくてもよい。そのような状況であれば、SG118のC:G塩基対形成は、SG103の4ntループAUUUよりも安定である4ループ構造(CUUG)に関与する可能性がある。興味深いことに、4ループ形成SG118は、最も低いIC50を有した(図4B、SG118)。二重鎖領域の配列はこれらのshRNAの中で同じであり、表2に列挙される。
【0090】
エンドリボヌクレアーゼによる切断に対して抵抗性があるループを作製するために、2’−デオキシジヌクレオチドTTがループとして試験された。ループ配列UU(SG142)をTT(SG112)で置き換える際に、顕著な活性の損失は検出されず(図4C)、デオキシ置換は、機能的活性を犠牲にすることなく、リボヌクレアーゼ抵抗性のためにループに適用できたことを示す。Dicerも任意の他のエンドリボヌクレアーゼも、19bp shRNAのプロセシングに関与しないこともまた示唆される。なぜなら、任意の他のデオキシリボヌクレアーゼは、おそらくジヌクレオチドの5’側を例外として、RNaseによって切断できないからである。
【0091】
これらのshRNAの配列は表2に示される。shRNAループには下線を付す。3’突出のヌクレオチドは小文字によって示される。
【表2】
【0092】
実施例3:効力と、shRNA突出および二重鎖長の間の関連性の研究
Vlassov et al.は、3’−UU突出の存在が19−bp shRNAの効力を増加することを見い出した(Vlassov、et al.2007)。この以前の研究において使用されたshRNAは右側ループを有した(5’−パッセンジャー鎖−ループ−ガイド鎖−3’)。従って、ガイド鎖の3’末端におけるUU突出は、ガイド鎖の3’−UU突出へのAgo PAZドメインの結合を容易にする可能性がある。左側ループを有するshRNA(5’−ガイド鎖−ループ−パッセンジャー鎖−3’)は、より良好な標的遺伝子抑制を示したので、shRNA効力に対する、パッセンジャー鎖の3’末端におけるUU突出の効果が試験された。図5Aに示されるように、3’−UU配列を欠くshRNA(SG105)および突出としてデオキシリボヌクレオチド3’−TTを有するshRNA(SG111)は、3’−UU突出を有する対応するshRNAに非常に類似した効力を有した。
【0093】
shRNA活性に対するステム長の効果もまた調べられた。図5Bに示されるように、ガイド鎖の長さを19ntに維持しながら、パッセンジャー鎖を17ntまたは16ntに短縮することは、遺伝子サイレンシング活性を有意に減少した(SG115およびSG116)。しかし、両方の鎖を18nt長に短縮することは、効力に有意な影響を有さなかった(SG117)。驚くべきことに、16bpまで短いステムを有するshRNA(19ntガイド鎖および17ntパッセンジャー鎖を有するSG119)は、17bpステムを有するもの(SG117)と類似の阻害を示した(図5C)。しかし、15bpのステムを有するshRNA(SG131)は阻害活性の減少を示し始めた(図6A)。このことは、高いサイレンシング活性は16bp以上の二重鎖の長さを必要とすることを示す。
【0094】
極端な場合を試験するために、11bp二重鎖および8ntループを有するshRNA(SG120)(11ntパッセンジャー鎖に直接連結された19ntガイド鎖)によるサイレンシングが測定された(図5C)。効力は他と比較すると低かったが、ショートRNAヘアピンはなお200pM未満のIC50を有した。同様に、13bp二重鎖および6ntループを有するshRNA(SG134)(13ntパッセンジャー鎖に直接連結された19ntガイド鎖)は、同じレベルの標的ノックダウンを与えた(図6B)。パッセンジャー鎖の10ntへのさらなる短縮は、サイレンシングを顕著に減少させた。ヘアピンの3’末端から5’末端まで11ntパッセンジャー鎖を変化させること(SG135)はサイレンシングを無効にした(図6B)。
【0095】
突出長およびステム長が配列特異的であるか否かを調べるために、図5および6において使用されたもの以外の2つの標的配列が試験された(図7Aおよび7B)。3’−UU突出の欠乏は、ヘアピンの標的サイレンシングを有意に減少させなかった。ステムの18bp(SG139)または16bp(SG136)への短縮は、ヘアピンの標的ノックダウン能力を減少させ、このことは、本ステム短縮戦略がある程度の配列依存性を有することを示した。
【0096】
これらのshRNAの配列は表3に示される。shRNAループには下線を付す。3’突出のヌクレオチドは小文字で示される。
【表3】
【0097】
実施例4:19bp shRNAにおける単一のミスマッチの位置および型の効果の研究
siRNAのガイド鎖とパッセンジャー鎖の両方がRISC複合体に取り込み可能であることが示されてきた。このことは、shRNAのガイド鎖およびパッセンジャー鎖に適用可能であるかもしれない。パッセンジャー鎖(特にシード領域)がメッセンジャーRNAのコード領域または3’−UTRに対して相補的である場合、Agoによるパッセンジャー鎖の選択が望ましくない効果を誘導可能であったので、、単一の変異が、パッセンジャー鎖の5’末端から4位〜7位で作製された。
【0098】
図8Aおよび8Bに示されるように、これらの変異は、19ヌクレオチド長の両方の鎖、3’UU突出、およびUU−ループを有するshRNAの効力に有意に影響を与えなかった。加えて、単一のミスマッチを伴う活性の持続は、ミスマッチの型に無関係なように見え(例えば、U−U(SG110)=U−C(SG126))、この形質が配列非依存的であることを示唆した。
【0099】
これらのshRNAの配列は表4に示される。shRNAループに下線を付す。3’突出のヌクレオチドは小文字によって示される。ミスマッチヌクレオチドは斜字体で示される。
【表4】
【0100】
実施例5:shRNAの効力に対するモノマーおよびダイマーの効果の研究
IDTによって合成され、HPLC精製されたshRNAは、ネイティブポリアクリルアミドゲル中で3つの主要な種:モノマー、ダイマー、およびトリマーを含むことが見い出された。対照的に、変性条件下(8M 尿素および20% ホルムアミドを含む12% ポリアクリルアミドゲル)では、この混合物は単一の主要バンドのみを示した。shRNAが95℃まで4分間加熱され、アイスバス中で迅速に冷却されたときに、モノマー、ダイマー、およびトリマーのこの混合物は、大部分がモノマーに転換でき(図9Bおよび図10B)、モノマーshRNAは、293FT細胞の中で、その混合物よりもわずかに弱いとしても、IRES依存性ルシフェラーゼ発現の強力な阻害剤のままであった(図9A)。shRNAが16ヌクレオチドまで短縮され(SG119)、この分子のダイマーが、バルジまたはミスマッチなしで完全な二重鎖を形成したときに、モノマーは、モノマー−ダイマー混合物よりも良好な効力を有した(図10A)。これは、おそらく、ダイマーがDicerによる非効率的な切断または種々の切断生成物を有したという事実に起因した。しかし、shRNAが極度に短い場合(ループとしての残りのガイド鎖を伴う11塩基対)、ヘアピンは混合物中でより活性であり、おそらく、モノマーのみの型よりもダイマー型であった(図10A)。しかし、純粋なモノマー型においてさえ、SG120は高い効率で標的遺伝子発現を減少させ、98.6pMのIC50であった。
【0101】
実施例6:機能性の増強を伴う最適なshRNA構成の同定
遺伝子ノックダウンの増強を有する最適なshRNA構成を同定するために、IRESの同じ領域を標的とする3つのshRNAが合成され、評価された。
a.SG68L:5’ガイド鎖−CAAUA(ループ)−パッセンジャー鎖−3’
b.SG146:2つのRNA分子からのアニール生成物。SG146−1、5’−ガイド鎖−CAAUA(ループ)−部分パッセンジャー鎖−3’;SG146−2、ガイド鎖に相補的である5’−部分パッセンジャー鎖
c.SG142:5’−ガイド鎖−UU(ループ)−パッセンジャー鎖−3’
【0102】
様々な濃度(0.3、0.1、0.03、0.01、および0.003nM)のshRNAサンプル、および13μg DNAプラスミドpSG154m(標的配列HCV IRESおよびレポーター配列ホタルルシフェラーゼを含む)、およびpUC19(同じ量の核酸から作製)が、OptiMem(Invitrogen)中で0.25μl Lipofectamine 2000(Invitrogen)とともに混合され、293FT細胞に導入された(96ウェルプレートのウェルあたり23,000細胞)。ホタルルシフェラーゼ遺伝子発現のノックダウンは、48時間目にルミノメーターによって測定された。
【0103】
これらの実験の結果は図11に提示され、1)2−ヌクレオチドループを有するshRNA(SG142)が、5−ヌクレオチドループを有するshRNA(SG68L)よりもわずかに強力であったこと、および2)2つの分子からアニールされたshRNA(SG146)が良好なノックダウン機能を有したことを実証する。
【0104】
これらのshRNAの配列は表5に示される、shRNAループに下線を付す。3’突出のヌクレオチドは小文字で示される。
【表5】
【0105】
実施例7:肝細胞腫細胞系統におけるshRNAのサイレンシング効果の研究
細胞系統が肝細胞癌細胞系統Huh7に変更されたこと以外は、これらの実験は実施例1において記載されたものと同様に実施された(図12)。SG68、SG68L、および陰性対照SG101(配列:5’−CGU GCU UAG GAU UUG GAG UCA AUA ACU CCA AAU CCU AAG CAC GUU−3’)を含む、種々の濃度を有する3つのshRNAが比較された。ホタルルシフェラーゼの減少は、SG101でトランスフェクトされた細胞において見い出されなかった。293FT細胞における結果と一致して、SG68Lは、肝細胞癌細胞における標的遺伝子発現のサイレンシングにおいてSG68よりもはるかに強力である。
【0106】
実施例8:shRNAの高い効力はIFN応答または細胞傷害性に起因しない
いくつかのsiRNAまたはshRNAは、IFN応答および/または標的を外れた効果を誘導する。上記に試験されたshRNAがこれらの望ましくない特徴を有したか否かを調べるために、IFN応答性遺伝子OAS1がshRNAトランスフェクションの後で測定された。具体的には、ヒトPBMCが、密度勾配遠心分離によってバフィーコートから調製され、洗浄され、次いで、10%熱不活化ウシ胎仔血清を含むRPMI 1640に再懸濁された。これらの細胞は、24ウェルプレートのウェルあたり5×105細胞で培養され、次いで、shRNA(20nM、約170〜180ng)//DOTAP(1.5μl、Roche)複合体で24時間トランスフェクトされた。次いで、これらの細胞は、Trizol(Invitrogen)中で溶解し、総RNAは製造業者の指示書に従って抽出された。qRT−PCRは、製造業者の指示書に従って、High−Capacity cDNA Reverse Transcription Kits、TaqMan Universal PCR Master Mix、OAS1 (Hs00242943_m1)およびGAPDH(Hs99999905_m1)Taqmanプローブ、ならびにFast 7500リアルタイムPCR機器(Applied Biosystem)を使用して行った。
【0107】
図13Aに示されるように、DOTAPを用いてトランスフェクトされた陽性対照、ポリ(I:C)ウェルあたり18ng(ウェルあたりのshRNAの量に等価)は、未処理の陰性対照と比較して、10.6倍のOAS1発現の増加を生じた。しかし、試験されたshRNAはどれもOAS1の増加を生じず、IFNがヒトPBMCの中で誘導されなかったことを示した。
【0108】
細胞傷害性は、shRNAトランスフェクションの後のヒト肝細胞癌細胞系統(Huh7)において、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)の取り込みを測定することによってもまた試験された。前日の夜に96ウェルプレートに播種されたHuh7細胞(13,000細胞/ウェル)は、Lipofectamine 2000(LF2K、Invitrogen)を使用して、標的DNAと一緒に10nM shRNAでトランスフェクトされた。ポリ(I:C)(33ng)は陽性対照として使用された。48時間後、Hepes緩衝化生理食塩水中5mg/ml中の16μl/ウェルのMTT(Sigma)が培養に加えられた。これらの細胞は、酸性イソプロパノール(0.04N HCl)で溶解される前3時間の間、さらにインキュベートされた。溶解されたホルマザンレベルはMolecular Devices Thermomaxマイクロプレートリーダーによって測定され、SOFTmaxソフトウェア(Molecular Devices)を使用して定量され、570nmの試験波長および650nmの参照波長を用いた。
【0109】
図13Bに示されるように、陰性対照である、リポフェクタミン中のプラスミドDNAに対して有意な細胞死は見い出されなかった。陽性対照である、リポフェクタミン中のポリ(I:C)は、50%より多い細胞死を誘導した。全体として、上記で試験したshRNAは、ヒトPBMCおよび肝細胞癌細胞において、IFNを示さず、有意な細胞傷害性を示さなかった。
【0110】
実施例9:19塩基対以下の二重鎖長さを有するshRNAはDicerの基質ではない
19塩基対以下の二重鎖長さを有するshRNAがDicerによって切断できるか否かを調べるために、いくつかのshRNAがインビトロDicer切断分析のために選択された。25塩基対(5’−GGGAGCACGAAUCCUAAACCUCAAAGACUUCCUGUCAUCUUUGAGGUUUAGGAUUCGUGCUCUU−3’)(配列番号40)の二重鎖長さを有するshRNA(sh1)が陽性対照として使用された。具体的には、すべての合成shRNAは、20mM KCl、6mM HEPES−KOH(pH 7.5)、0.2mM MgCl2を含む緩衝液中で5μM最終濃度に溶解した。すべての分子がヘアピンモノマーを形成したことを保証するために、shRNAは95℃で4分間加熱し、次いで、直ちに氷冷バスに移動させ、さらなる使用の前に10〜20分間冷却させた。各shRNAの8pmolが、1Uの組換えdicer酵素(Stratagene、カタログ番号240100)および150mM NaCl、20mM Tris−HCl(pH 8)、および2.5mM MgCl2を含む1×緩衝液の存在下で、10μL反応において、37℃で18時間インキュベートされた。各shRNAを含むがdicer酵素を欠いている対照反応が並行してインキュベートされた。
【0111】
サンプルは、10%非変性PAGE(図14A)と12%変性PAGE(8M尿素/20%ホルムアミド)(図14B)の両方によって分析され、SYBR Gold(Invitrogen)によって染色された。図14に示されるように、25塩基対長、10ヌクレオチドループ、ならびに5’−および3’−突出を含んだsh1 RNAは、Dicerによって切断されて、20塩基対から25塩基対の間のサイズを有する生成物を生じた。19塩基対のステム、および2または5ヌクレオチド長のヘアピン、ならびに18塩基対および2ヌクレオチドのヘアピンのステムを有するものを有する3つを含む、試験されたshRNAの他のすべては、非変性PAGEと変性PAGEにおいていかなる切断生成物も示さなかった。これらの結果は、19塩基対以下の二重鎖長さを有するショートヘアピンはDicerの基質ではないことを示す。
【0112】
他の実施形態
本発明は、その詳細な説明とともに記載されてきたが、前述の説明は、例示することが意図され、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲を限定することは意図されないことが理解される。他の態様、利点、および改変は添付の特許請求の範囲の中にある。
【技術分野】
【0001】
連邦政府によって資金援助された研究開発に関する声明
本発明は、米国国立衛生研究所(the National Institutes of Health)からのNIH補助金R44AI056611(BHJ)によって援助された作業の間に部分的になされた。政府は本発明において特定の権利を有し得る。
【0002】
発明の分野
本発明は、ウイルス遺伝子発現、例えば、ショートヘアピンRNA(shRNA)を用いる、C型肝炎IRES媒介性遺伝子発現の阻害に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
RNA干渉(RNAi)は、分解および翻訳減衰のために、二本鎖RNA(dsRNA)を使用してメッセンジャーRNA(mRNA)を標的とする細胞プロセスである。このプロセスは遺伝子特異的であり、標的配列の小さな変化に不応性であり、そして多重遺伝子標的化が受け入れ可能である。この現象は1990年に植物において最初に報告された(Napoli,C.,et al.,Introduction of a chimeric chalcone synthase gene into petunia results in reversible co−suppression of homologous genes in trans.Plant Cell,1990,2(4):279−289)。これは後に、真菌および蠕虫を含む他の生物において観察された(Romano,N.,et al.,Quelling:transient inactivation of gene expression in Neurospora crassa by transformation with homologous sequences.Mol.Microbiol.,1992,6(22):3343−53)。機構的には、長いdsRNAは、III型RNaseであるDicerによって短い干渉RNA(siRNA)二重鎖に切断できる。続いて、これらの小さな二重鎖が、ヘリカーゼ活性と相同転写物の分解を媒介するエンドヌクレアーゼ活性の両方を含むマルチサブユニット複合体であるRNA誘導性サイレンシング複合体(RISC)と相互作用する。約19〜29bpの合成siRNAが哺乳動物細胞および動物において遺伝子発現を効果的に阻害できるというこの発見が、治療剤としてこれらの阻害剤を開発するための相次ぐ活動をもたらした(Elbashir,S.M.,et al.,Duplexes of 21−nucleotide RNAs mediate RNA interference in cultured mammalian cells.Nature,2001,411(6836):494−8)。アルゴリズムに基づく合理的設計選択を含む、高度なsiRNA選択法の最近の進歩は、鍵となる配列および標的配列非依存的である熱力学的パラメーターによって潜在的なsiRNA二重鎖を研究者が選択することを可能にする(Khvorova,A.,et al.,Functional siRNAs and miRNAs exhibit strand bias.Cell,2003,115(1):209−216)。
【0004】
化学的に合成されるか、またはバクテリオファージ(例えば、T7、T3、またはSP6)もしくは哺乳動物(U6もしくはH1などのpol IIIまたはpol II)プロモーターから発現された19〜29bpの低分子ヘアピンRNA(shRNA)もまた、哺乳動物細胞における標的遺伝子の強固な阻害を示している。さらに、その単一分子構造を有する合成shRNAは、2つの鎖を含むsiRNAよりも効力および単純性において利点を有しており、この後者は、様々な純度プロフィールおよび標的を外れる効果を有し得る2つの別々の鎖の正確な化学量論的量の注意深いアニーリングを必要とする(Siolas,D.,et al.,Synthetic shRNAs as potent RNAi triggers.Nature Biotechnology,2005,23(2):227−231;Vlassov,A.V.,et al.,shRNAs targeting hepatitis C:effects of sequence and structural features,and comparison with siRNA.Oligonucleotides,2007,17:223−236)。
【0005】
しかし、shRNAの設計および開発の過程にわたっていくつかの難問が生じてきた。第1に、研究者達は、様々なshRNAによって誘導されるサイレンシングのレベルの広い範囲の変動性を観察してきた。第2に、ステム長、ループ長、およびループ位置が変動しているshRNAは、様々なノックダウン能力を有する(McManus,M.T.,et al.,Gene silencing using micro−RNA designed hairpins.RNA,2002,8:842−850;Harborth,J.,et al.,Sequence,chemical,and structural variatioin of small interfering RNAs and short hairpin RNAs and the effect on mammalian gene silencing.Antisense And Nucleic Acid Drug Development.2003,13:83−105;Li,L.,et al.,Defining the optimal parameters for hairpin−based knockdown constructs.RNA,2007,13:1765−1774;Vlassov,A.V.,et al.,shRNAs targeting hepatitis C:effects of sequence and structural features,and comparison with siRNA.Oligonucleotides,2007,17:223−236)。ヘアピンの5’末端に19ヌクレオチドのガイド鎖(左側ループ)を有するいくつかのshRNAは、ヘアピンの3’末端にそれらのガイド鎖(右側ループ)を有するものよりも有効であることが見い出されてきたのに対して(Scaringe,S.US 2004/0058886 A1)、他のshRNAは、右側ループ構造がより有効であると報告された(Vermeulen,et al.US 2006/0223777 A1)。ヘアピンの3’末端に19マーのガイド鎖(右側ループ)を有するshRNAは、25または29マーのshRNA(右側ループを有する)よりも強力であることが見い出された。以前に利用可能であった限られたデータは、右側ループを伴う19bpステムを有するshRNAの最適なループサイズは、4ヌクレオチドより長く、好ましくは9または10ヌクレオチドであることを示唆した。第3の難問は、合成shRNA、とりわけ、19マーのヘアピンの細胞質におけるプロセシングの機構が不明なことである。長いdsRNAおよび29マーのshRNAとは異なり、19マーのshRNAはDicerによって切断されない(Siolas,D.,et al., Synthetic shRNAs as potent RNAi triggers.Nature Biotechnology,2005,23(2):227−231)。それゆえに、より高度に機能的な阻害剤を提供するために、優れたshRNAのための信頼できる設計、ならびに構造−活性相関およびshRNAのプロセシングのより良好な理解を有することが有利である。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、遺伝子サイレンシングにおける使用のためのshRNA、フラクチャーされたshRNA、およびT字型RNAに関連する方法および組成物に関する。従って、本発明は、RNA干渉の効率を増加させるための組成物、方法、およびキットを提供する。
【0007】
1つの態様において、本発明は、15ヌクレオチド〜30ヌクレオチドからなり、標的ヌクレオチド配列に少なくとも部分的に相補的である、第1の配列(例えば、第1のRNA配列)、例えば、ガイド鎖;第1の配列の少なくとも一部に少なくとも部分的に相補的である配列を含み、第1の配列の長さよりも10ヌクレオチドから1ヌクレオチドの間の短い長さを有する、第2の配列(例えば、第2のRNA配列)、例えば、パッセンジャー鎖;任意に、第1の配列と第2の配列の間に配置され、1〜100ヌクレオチドからなるループ配列;および任意に、1または2ヌクレオチドからなるヌクレオチド突出を含むポリヌクレオチド、例えば、DNAまたはRNA分子を特徴とする。
【0008】
別の態様において、本発明は、16ヌクレオチド〜30ヌクレオチドからなり、標的ヌクレオチド配列に少なくとも部分的に相補的である、第1の配列(例えば、第1のRNA配列)、例えば、ガイド鎖;第1の配列の少なくとも一部に少なくとも部分的に相補的である配列を含み、第1の配列よりも少なくとも1ヌクレオチド多く、かつ100ヌクレオチドを超えない第2の配列(例えば、第2のRNA配列)、例えば、パッセンジャー鎖;任意に、第1の配列と第2の配列の間に配置され、1〜100ヌクレオチドからなるループ配列;および任意に、1または2ヌクレオチドからなるヌクレオチド突出を含むポリヌクレオチド、例えば、DNAまたはRNA分子を特徴とする。
【0009】
別の態様において、本発明は、16ヌクレオチド〜18ヌクレオチドからなり、標的ヌクレオチド配列に少なくとも部分的に相補的である、第1の配列(例えば、第1のRNA配列)、例えば、ガイド鎖;第1の配列の少なくとも一部に少なくとも部分的に相補的である配列を含み、第1の配列と同じ数のヌクレオチドを有する第2の配列(例えば、第2のRNA配列)、例えば、パッセンジャー鎖;任意に、第1の配列と第2の配列の間に配置され、1または2ヌクレオチドからなるループ配列;および任意に、1または2ヌクレオチドからなるヌクレオチド突出を含むポリヌクレオチド、例えば、DNAまたはRNA分子を特徴とする。
【0010】
別の態様において、本発明は、19ヌクレオチドからなり、標的ヌクレオチド配列に少なくとも部分的に相補的である、第1の配列(例えば、第1のRNA配列)、例えば、ガイド鎖;第1の配列の少なくとも一部に少なくとも部分的に相補的である配列を含み、17ヌクレオチドまたは18ヌクレオチドからなる第2の配列(例えば、第2のRNA配列)、例えば、パッセンジャー鎖;任意に、第1の配列と第2の配列の間に配置され、1〜100ヌクレオチドからなるループ配列;および任意に、1または2ヌクレオチドからなるヌクレオチド突出を含むポリヌクレオチド、例えば、DNAまたはRNA分子を特徴とする。
【0011】
別の態様において、本発明は、15ヌクレオチド〜30ヌクレオチドからなり、標的ヌクレオチド配列に少なくとも部分的に相補的である、第1の配列(例えば、第1のRNA配列)、例えば、ガイド鎖;第1の配列の少なくとも一部に少なくとも部分的に相補的である配列を含み、第1の配列と同じかまたはより少ない数のヌクレオチドを有する第2の配列(例えば、第2のRNA配列)、例えば、パッセンジャー鎖;任意に、第1の配列と第2の配列の間に配置され、1ヌクレオチドからなるループ配列;および任意に、1または2ヌクレオチドからなるヌクレオチド突出を含むポリヌクレオチド、例えば、DNAまたはRNA分子を特徴とする。
【0012】
別の態様において、本発明は、約5ヌクレオチド〜約15ヌクレオチドからなり、標的ヌクレオチド配列に少なくとも部分的に相補的である、第1のRNA配列、例えば、ガイド鎖;第1の配列とヘアピン構造を形成可能であり、このヘアピン構造は約23ヌクレオチド〜約100ヌクレオチドを含む第2のRNA配列、例えば、パッセンジャー鎖、そしてこの第2の配列は以下を含む:第1の配列と少なくとも80%相同性を有しかつ第1の配列と19塩基対より少ない第1の二重鎖領域を形成可能である第1の領域;第1の領域と連結された第2の領域;第2の領域と連結された第3の領域;および第3の領域と連結され、第2の領域と少なくとも80%相同性を有し、第2の領域と第2の二重鎖領域を形成可能であって、その結果、第3の領域が第2の二重鎖領域に隣接するループを形成し、第1の二重鎖領域と第2の二重鎖領域の長さの合計が23塩基対未満である、第4の領域;および任意に、RNA分子の5’または3’末端で約6ヌクレオチドより少ない突出を含む、RNA分子を特徴とする。
【0013】
別の態様において、本発明は、配列番号1〜39のいずれか1つのRNA配列を含むRNA分子を特徴とする。
【0014】
別の態様において、第3の領域は、5’−UU−3’の配列を有するヌクレオチドを含むループを形成する。さらに、第2の鎖は、5’リン酸基を有するパッセンジャー鎖の一部を含むことができる。1つの実施形態において、5’リン酸基を有する第2の鎖は、第2の鎖の第4の領域に隣接する。別の実施形態において、5’リン酸基を有する第2の鎖は、第2の鎖の第4の領域に隣接していない。
【0015】
別の態様において、本発明は、標的ヌクレオチド配列に少なくとも部分的に相補的である第1のRNA配列、例えば、ガイド鎖、第2のRNA配列、例えば、パッセンジャー鎖、および第3のRNA配列を含み、ここで、第1の配列は、第2の配列の第1の領域に対して少なくとも80%の相補性である約18ヌクレオチドから約29ヌクレオチドまでを有する第1の領域を含み;この第1の配列は、第3の配列の第1の領域に対して少なくとも約90%の相補性である約4ヌクレオチドから約10ヌクレオチドまでを有する第2の領域をさらに含み;第2の配列は、第1の配列の第1の領域に対して少なくとも約80%の相補性である約18ヌクレオチドから約29ヌクレオチドまでを有する第1の領域を含み;第2の配列は、第3の配列の第2の領域に少なくとも約90%相補性である約4ヌクレオチドから約10ヌクレオチドを有する第2の領域をさらに含み、ここで、第3の配列の第2の領域は、第3の配列の第1の領域に対して3’で隣接しており、そして任意に、RNA分子の5’または3’末端で約6ヌクレオチドよりも少ない突出をさらに含む、T字型RNA分子を特徴とする。
【0016】
本明細書に記載されたいずれかの態様のある実施形態において、ポリヌクレオチド、例えば、本明細書に記載されたDNAまたはRNA分子は、約30ヌクレオチドから約84ヌクレオチドまでを含むことができる。
【0017】
本明細書に記載されるいずれかの態様のある実施形態において、ポリヌクレオチド、例えば、本明細書に記載されるDNAまたはRNA分子は、第1の配列の少なくとも一部に少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%相補性である配列を含む第2の配列を含む。特定の実施形態において、第2の配列は、第1の配列の5’末端の部分に対して少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%相補性である、例えば、第2の配列の3’末端における配列を含む。
【0018】
本明細書に記載されるいずれかの態様のある実施形態において、ポリヌクレオチド、例えば、本明細書に記載されるDNAまたはRNA分子は、少なくとも1つの修飾、例えば、本明細書に記載される化学修飾を含む。ある実施形態において、本明細書に記載されるRNA分子におけるヌクレオチドの約20%〜約100%、例えば、約40%〜約90%が化学修飾される。1つの実施形態において、本明細書に記載されるRNA分子の約20%〜約100%のUおよびCが2’O−メチル修飾または2’Fである。
【0019】
本明細書に記載されるいずれかの態様のある実施形態において、ポリヌクレオチド、例えば、本明細書に記載されるDNAまたはRNA分子は、少なくとも1つの非ヌクレオチド分子を含むループを含む。
【0020】
本明細書に記載されるいずれかの態様のある実施形態において、ポリヌクレオチド、例えば、本明細書に記載されるDNAまたはRNA分子は、分子の3’末端または5’末端において突出を含む。例えば、この突出は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個のヌクレオチドである。
【0021】
本明細書に記載されるいずれかの態様のある実施形態において、ポリヌクレオチド、例えば、本明細書に記載されるDNAまたはRNA分子は、第1の配列と第2の配列の間の1個または2個のミスマッチを含む。1つの実施形態において、ミスマッチは、5’末端およびパッセンジャー鎖の逆鎖のヌクレオチドから数えて、ガイド鎖上の11位、12位、13位、14位、15位、16位、または17位、好ましくは、5’末端およびパッセンジャー鎖の逆鎖のヌクレオチドから数えて、ガイド鎖上の14位に存在する。
【0022】
本明細書に記載されるいずれかの態様のある実施形態において、第1の配列は第2の配列に対して3’である。他の実施形態において、第1の配列は第2の配列に対して5’である。
【0023】
本明細書に記載されるいずれかの態様のある実施形態において、本明細書に記載されるRNA分子は、リンカーを介してRNA分子のループ領域または3’末端に結合された少なくとも1つの結合体部分をさらに含む。この結合体部分は、ステロイド分子、ビタミン、ペプチド、ガラクトースおよびその誘導体、またはタンパク質であり得る。ある実施形態において、この結合体部分は、コレステロール、コレスタノール、スチグマステロール、コラン酸、およびエルゴステロールからなる群より選択されるステロイド分子である。他の実施形態において、この結合体部分はコレステロールであり、リンカーはC5リンカー分子である。なお他の実施形態において、この結合体部分はビタミンEである。
【0024】
他の実施形態において、本明細書に記載されるRNA分子は、RNA分子のループ領域または3’末端に結合された少なくとも1つの検出可能な標識をさらに含む。ある実施形態において、検出可能な標識は色素分子である。ある実施形態において、このRNA分子は、結合体部分と検出可能な標識の両方を含むことができる。
【0025】
ある実施形態において、本明細書に記載されるRNA分子は、標的ヌクレオチド配列、例えば、ウイルス配列の発現を阻害することが可能である。ある実施形態において、ウイルス配列はC型肝炎ウイルス配列である。特定の実施形態において、標的ヌクレオチド配列は、C型肝炎ウイルスの内部リボソーム侵入部位(IRES)配列中の配列である。
【0026】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載されるRNA分子をコードする配列を含むDNA配列、または本明細書に記載されるRNA分子をコードする配列を含むDNA配列を含む発現ベクターを特徴とする。ある実施形態において、このベクターはレトロウイルスベクターである。
【0027】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載されるRNA分子および薬学的に許容される賦形剤を含む組成物を特徴とする。別の態様において、本発明は、本明細書に記載されるRNA分子をコードする配列を含むベクターを含む組成物を特徴とする。
【0028】
別の態様において、本発明は、遺伝子の発現または活性を阻害する方法を特徴とし、この方法は、遺伝子を発現する細胞を本明細書に記載されるRNA分子と接触させることを包含し、ここで、第1のRNA配列は、遺伝子の少なくとも一部によってコードされる標的ヌクレオチド配列に少なくとも部分的に相補的である。
【0029】
別の態様において、本発明は、C型肝炎ウイルスの発現または活性を阻害する方法を特徴とし、この方法は、C型肝炎ウイルスを発現する細胞を本明細書に記載されるRNA分子と接触させることを包含し、ここで、第1のRNA配列はC型肝炎ウイルス配列に対して少なくとも部分的に相補的である。
【0030】
これらの態様のいずれかにおいて、細胞は、哺乳動物、例えば、ヒトまたは非ヒト霊長類におけるものであり得る。
【0031】
特定の実施形態において、本明細書に記載されるRNA分子は、IFN応答を誘導しない。
【0032】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載されるRNA分子を含む容器;および任意に減少させた血清組織培養培地を含むキットを特徴とする。
【0033】
以下の図面は例示目的のみのために提示され、限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1A〜1Dは、種々の構成を含むヘアピンの実施形態の構造を描写する。
【図2】図2は、T字型RNA分子の構造、ならびに第1鎖および第2鎖の第2の領域に相補的な反復配列とともに、長い第3鎖を有することによるT字型RNA分子の増大を描写する。
【図3】図3A〜3Cは、5’パッセンジャー鎖を有するshRNAおよび5’ガイド鎖を有するshRNAの用量応答を比較する。これらのshRNAはIDTによって合成され、siRNA緩衝液(Dharmacon、20mM KCl、6mM HEPES−KOH pH 7.5、0.2mM MgCl2を含有)で再構築された。293FT細胞(96ウェルプレート中のウェルあたり23,000細胞)が、shRNA、およびホタルルシフェラーゼ発現がHCV IRESに依存する標的DNAプラスミド(IRES−fLuc)と同時トランスフェクトされた。リポフェクタミン(Lipofectamine)(商標)2000(Invitrogen)がトランスフェクション試薬として使用された。48時間後、細胞が溶解され、ホタルルシフェラーゼ活性がルミノメーターによって測定された。すべてのデータは、3連で実行された個々の独立した実験の結果である。図3D〜3Fは、Oligo 4.0によって計算されたshRNAの内部安定性について同じshRNAのセットを比較する。結果は、5’−ガイド鎖を有するshRNAが5’−パッセンジャー鎖を有するshRNAと比較して機能が増強されたことを実証する。増強の程度は配列依存性であり、5’末端の内部安定性の違いは重要な寄与を生じる。
【図4】図4は、種々のループ長、配列、およびループを閉じる塩基対を有するshRNAの用量応答を描写する。この実験は、図3において記載された様に行われた。図4Aは、10ヌクレオチド、5ヌクレオチド、2ヌクレオチド、および1ヌクレオチド(nt)のループを有するshRNAの効力を比較する。二重鎖領域の配列は、これらのshRNAおよびsiRNA 19−3の中で同じである。これらの結果は、5’−ガイド鎖を有するshRNAが、ループサイズがより大きい場合(5または10nt)よりもループサイズが非常に小さい(1または2nt)場合に、高い効力を有することを示す。ループ配列は、おそらく、shRNA活性に影響を与えない。なぜなら、3つの異なるループ配列が使用されているからである。図4Bは、ループの直前のU:AおよびC:G塩基対を有するshRNAの活性を比較する。ループの配列(下線)および隣接する塩基対は括弧内に示される。二重鎖領域の配列は、これらのshRNAの中で同じである。この比較は、ループが2nt長である場合に、ループに隣接するC:G塩基対を有するshRNAが、隣接するU:A対を有するものよりも良好な効力を与えることを示す。図4Cは、shRNAのループ中のUU−リボヌクレオチド配列が、shRNAの効力に影響を与えることなく、TT−デオキシリボヌクレオチド配列で置き換えできることを示す。二重鎖の配列は、これらのshRNAおよびsiRNA19−3の両方について同じである。
【図5】図5は、種々の二重鎖長および3’突出を有するshRNAの用量応答を描写する。この実験は図3に記載されたように行われた。図5Aは3’突出のあるなしでshRNAの活性を比較する。結果は、平滑末端または3’−TT突出を有するshRNAが、3’−UU突出を有する対応するshRNAと非常によく似た効力を有することを示す。図5Bは、種々の長さの二重鎖またはパッセンジャー鎖を有するshRNAの効力を比較する。g/p値は、ガイド鎖/パッセンジャー鎖の長さを表す。この比較は、19ntのガイド鎖の長さを維持しながら、17または16ntまでパッセンジャー鎖を短縮することが、遺伝子サイレンシング活性を有意に減少することを示唆する(SG115およびSG116)。しかし、パッセンジャー鎖とガイド鎖の両方を18nt長まで短縮することは、効力に有意な影響を与えなかった(SG117)。図5Cは、さらに短い二重鎖長を有するshRNAの活性を描写する。二重鎖中に17または16塩基対を有するshRNA(SG117およびSG119)は非常に類似した効力を有する。二重鎖中に11塩基対を有するshRNA(SG120)は、サイレンシング活性の顕著な喪失を示し、この分子のIC50はなおナノモル以下の範囲にある。
【図6】図6は、種々の短いステム長を有するshRNAの用量応答を描写する。この実験は、図3において記載されたように行われた。図6Aは、ガイド鎖とパッセンジャー鎖の両方の長さを変化させたshRNAの活性を比較する。結果は、14塩基対以下の長さの二重鎖を有するshRNAが使用された場合(SG132およびSG120)、shRNAの効力が顕著に減少することを示す。図6Bは、ガイド鎖の長さを19ntに維持しながら、10〜13ntのパッセンジャー鎖を有するshRNAの活性を描写する。結果は、shRNAの活性が、パッセンジャー鎖について11ntの最小長を含むヘアピンを必要とすることを示す。
【図7】図7は、様々な標的に対する種々の構造のshRNAの効力を描写する。この実験は、図3に記載されたように行われた。図7Aおよび7Bは、si72およびsi74と同じ標的に対するshRNAの活性をそれぞれ示すが、構造は異なっている。結果は、3’−UU突出がshRNAの活性のためには必須ではないことを示す。二重鎖領域の短縮は、標的遺伝子ノックダウン活性を部分的に減少できた。
【図8】図8は、二重鎖領域の様々な位置で単一のミスマッチを有するshRNAの用量応答を描写する。図8Aは、パッセンジャー鎖の5’末端からの6位(ガイド鎖の5’末端からの逆鎖の14位)に単一のミスマッチを有するshRNA(SG110)と有さないshRNA(SG142)の間で同様の活性を示す。図8Bは、単一のミスマッチを有さないshRNA(SG142)と、パッセンジャー鎖の5’末端から6位(SG126)、7位(SG127)、5位(SG128)、および4位(SG129)(ガイド鎖の5’末端から逆鎖の14位、13位、15位、および16位)に単一のミスマッチ変異をそれぞれ有するshRNAの間で同様の活性を示す。単一のミスマッチに伴うこの活性喪失の欠如は、ミスマッチの型と無関係であるようであり(例えば、U−U(SG110)=U−C(SG126))、この形質が配列非依存的であることを示唆する。すべてのshRNAは5’−UU−3’ループおよび3’−UU突出を有する。
【図9】図9は、shRNAの標的阻害がダイマーまたはオリゴマーの形成に起因していないことを描写する。図9Aは、加熱および即時冷却のありなしでのshRNAの標的阻害を比較する。複数の種を有するshRNAよりもわずかに低いが、加熱および即時冷却によって得られたshRNAモノマーの単一の種は、試験された配列または長さに関わらず標的遺伝子サイレンシングにおいて高い活性を示す。図9Bは、加熱(95℃で4分間)および氷冷バス中でのshRNAの即時冷却のあるなしでの、10%ネイティブポリアクリルアミドゲル中でのshRNAのモノマー、ダイマー、およびオリゴマーを示す。このゲルはSYBR Gold(Invitrogen)で染色された。
【図10】図10は、モノマーおよび混合種におけるshRNAの様々な挙動を描写する。図10Aは、大部分がモノマーである場合にはSG119がより高いサイレンシング活性を有するのに対して、大部分がダイマーである場合にはSG120がより高いサイレンシング活性を有することを示す。図10Bは、加熱(95℃で4分間)および氷冷バス中でのshRNAの即時冷却のあるなしでの、10%ネイティブポリアクリルアミドゲル中でのshRNAのモノマー、ダイマー、およびオリゴマーを示す。
【図11】図11は、ニックのあるなしの、およびT字型RNAのshRNAの効力を描写する。この実験は、図3に記載されたように行われた。これらの実験において使用されたshRNAの濃度には、0.3nM、0.1nM、0.03nM、0.01nM、および0.003nMが含まれる。2通りの濃度(0.3および0.03nM)のみがSG102で試験された。SG68L、SG146、およびSG142は、3’−UU突出を伴う同じ二重鎖配列を有する。SG68LおよびSG146は5’−CAAUA−3’ループを有するのに対して、SG142は5’−UU−3’ループを有する。SG146はDharmaconのsiRNAアニーリング指示書に従って一緒にアニーリングされた2つのRNA分子から構成される。第1の分子はガイド鎖、ループ、および4−ヌクレオチドパッセンジャー鎖を含み;第2の分子は15ヌクレオチドのパッセンジャー鎖の3’末端および3’突出を含む。SG102は、第1の鎖および第2の鎖の第1の領域にガイド鎖およびパッセンジャー鎖を有する3RNA分子から構成される(図2A)。第3の鎖は第1の鎖および第2の鎖の第2の領域に相補的である。
【図12】図12は、肝細胞癌細胞系統Huh7におけるshRNAの効力を描写する。293FT細胞における結果と一致して、SG68LはSG68よりも効力が高い。陰性対照であるSG101は、いかなる所定の濃度においてもホタルルシフェラーゼ遺伝子発現を減少させなかった。
【図13】図13は、いくつかの高度に強力なshRNAの阻害活性がIFN応答または細胞傷害性に起因しないことを示す。図13Aは、shRNAトランスフェクション後のヒト末梢血単核細胞(PBMC)におけるIFN−応答性遺伝子OAS1の発現を描写する。図13Bは、shRNAトランスフェクション後のヒト肝細胞癌細胞系統(Huh7)における3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)の取り込みを描写する。まとめると、図13Aおよび13Bのこれらのパネルは、IFN応答または細胞傷害性がこれらのshRNAによって誘導されたのではないことを示す。
【図14】図14は、19以下の塩基対のステム長を有するshRNAが組換えDicerのための基質であることを示す。Dicerによる処理の生成物は、非変性PAGE(図14A)および変性PAGE(図14B)によって分析される。
【発明を実施するための形態】
【0035】
発明の詳細な説明
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって共通して理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様のまたは等価な方法および材料は本発明の実施または試験において使用できるが、適切な方法および材料は以下に説明される。GenBankデータベース配列を含む、本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、それらの全体が参照により組み込まれる。矛盾する場合には、定義を含む本明細書が優先する。加えて、材料、方法、および実施例は例示のみであって、限定することを意図しない。
【0036】
本開示の実施形態は、shRNA誘導性遺伝子サイレンシングを実施するための組成物および方法に向けられる。shRNA、修飾shRNA、フラクチャーshRNA、修飾フラクチャーshRNA、T字型RNA、およびこれらの誘導体の使用により、RNA干渉の効率が改善されてもよい。従って、本開示は、shRNAの機能を増加するための組成物、方法、およびキットを提供する。好ましくは、本開示は、ウイルス遺伝子発現を阻害するため、および/またはヒトなどの哺乳動物におけるウイルス感染を治療するために、shRNAの機能を改善するための組成物および方法を提供する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるshRNA構築物は、shRNAのガイド鎖配列によって認識される標的配列の中または近傍のウイルスポリヌクレオチド配列の切断を誘導することによって、ウイルスの遺伝子発現を阻害する。
【0037】
本明細書で使用される「ショートヘアピンRNA」という語句または「shRNA」という用語は、RNAiを実施することが可能であり、かつパッセンジャー鎖、ループ、およびガイド鎖を有する単分子RNAをいう。好ましくは、パッセンジャー鎖およびガイド鎖は、互いに実質的に相補的である。ガイド鎖は約16〜約29ヌクレオチド長、より好ましくは18〜19ヌクレオチド長であり得る。パッセンジャー鎖は約11〜約29ヌクレオチド長、より好ましくは17〜19ヌクレオチド長であり得る。ガイド鎖は、標的mRNAに相補的である少なくとも17塩基を含むことができる。いくつかの実施形態において、標的に相補的なガイド鎖はミスマッチを含むことができる。その配列は、遺伝的変異または表現型の配列に相補的であるように標的配列を変化させることによって、標的、例えば、ウイルス標的の1つ以上の遺伝的変異または表現型を標的とするために変動可能である。いくつかの実施形態において、配列は、複数のウイルス系統、例えば、HCVのウイルス系統を標的とすることができるが、配列は、標的配列の少なくとも1つのヌクレオチド(例えば、1個、2個、または3個のヌクレオチド)によって、1つの系統の標的とは異なり得る。shRNAは、例えば、0〜約24ヌクレオチド長、好ましくは、0〜約10ヌクレオチド長、およびより好ましくは、2ヌクレオチド長までの長さのループを有してもよい。このループの配列は、標的に無関係なヌクレオチド残基を含むことができる。1つの特に好ましい実施形態において、ループは5’−UU−3’である。いくつかの実施形態において、これは非ヌクレオチド部分を含んでもよい。さらに他の実施形態において、このループはいかなる非ヌクレオチド部分も含まない。任意に、shRNAは、分子の3’末端に2塩基の突出領域を有することができる。shRNAは、ミスマッチおよび/またはバルジを含むステム−ループ構造を伴うRNAもまた含むことができる。標的に対して相同であるパッセンジャー鎖は、例えば、天然に存在するマイクロRNAにはよくあることだが、約1〜約5ヌクレオチドのミスマッチ、挿入、または欠失を有することによって、約0〜約5箇所の部位において異なり得る。上記の構造のいずれかを含むRNAは、ループがヌクレオチド、非ヌクレオチド、またはヌクレオチドおよび非ヌクレオチドの組み合わせを含む構造を含有することができる。任意のshRNAの中で、好ましくは、複数の、より好ましくはすべてのヌクレオチドがリボヌクレオチドである。
【0038】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるshRNAは、少なくとも1つの結合体部分を任意に含む。
【0039】
本明細書で使用される「フラクチャーshRNA」という語句は、2つ以上の離れた鎖を含むショートヘアピンRNAをいう。このような分子は、種々の様式で組織化でき(例えば、5’−パッセンジャー−フラクチャー−パッセンジャー−ループ−ガイド、5’−ガイド−ループ−パッセンジャー−フラクチャー−パッセンジャー)、分子中のフラクチャーは、ニック、1つ以上の不対ヌクレオチドに接するニック、またはギャップを含むことができる。
【0040】
本明細書で使用される「T字型RNA」という語句は、少なくとも別々の3つの鎖:第1の鎖、第2の鎖、および第3の鎖を含むT字型RNAをいう。第1の鎖と第2の鎖の両方は、以下のような2つの領域(IおよびII)を含む:第1の鎖の第1の領域は、第2の鎖の第1の領域とアニーリングまたはハイブリダイズが可能であり;1つの鎖の第1の領域は標的mRNAに相補的な少なくとも17塩基を含むことができ;両方の鎖の第1の領域は約17〜29ヌクレオチド長、好ましくは22ヌクレオチド長であり得;第1の鎖の第2の領域は、第3の鎖の部分とアニールまたはハイブリダイズでき;第2の鎖の第2の領域は、第1の鎖の第2の領域とハイブリダイズする部分に対して隣接しかつ3’である第3の鎖の部分とアニールまたはハイブリダイズでき;第1の鎖および第2の鎖の第2の領域は互いに相補的ではなく、約4〜約10ヌクレオチド長、好ましくは8ヌクレオチド長であり得;第3の鎖は少なくとも約8ヌクレオチド長であり得;第3の鎖は、第1の鎖および第2の鎖の対(her pairs)の第2の領域に対して相補的である複数の配列を有してもよく、その結果、第1の鎖および第2の鎖から構成される複数の二重鎖が第3の鎖にアニールすることができ;任意に、第2の鎖の3’末端に2塩基の突出領域が存在する。
【0041】
本明細書に記載されるshRNA、フラクチャーshRNA、およびT字型RNAは、遺伝子サイレンシングを実施する際に有用であり得る。また、いくつかの例において、これらはヘアピンのステムの長さと同様または等価である長さを有する二重鎖より好ましくあり得、このことは、本明細書に記載されるshRNAは、RNA干渉がより効率的であり、かつ細胞のストレスおよび/または毒性を誘導する可能性がより少なくあり得るという事実に起因する。
【0042】
加えて、「ショートヘアピンRNA」という語句および「shRNA」という用語は、修飾ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド間連結、非ヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、およびこれらの言及されたヌクレオチドのアナログを含むがこれらに限定されない、リボヌクレオチド部分以外の部分もまた含有する核酸を含む。
【0043】
本明細書で使用される「siRNA」という用語は、各々の末端において二重鎖領域および非相同残基の3’突出を含むRNA分子をいう。二重鎖領域は、典型的には、約18〜約30ヌクレオチド長であり、突出は任意の長さの非相同残基の突出であってもよいが、2ヌクレオチド突出が好ましい。
【0044】
本明細書で使用される「ガイド鎖」という語句は、目的の標的核酸に実質的に相補的であるか(例えば、80%以上)または100%相補的であるポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの領域をいう。shRNAのガイド鎖はまた、そのパッセンジャー鎖に少なくとも実質的に相補的である。ガイド鎖は、RNA、DNA、またはキメラRNA/DNAであるポリヌクレオチド領域から構成できる。ガイド鎖中の任意のヌクレオチドが、そこに結合される置換基を、例えば、2’修飾において、含むことによって修飾できる。ガイド鎖はまた、小分子および/または結合体の多様な群で修飾できる。例えば、ガイド鎖は、メッセンジャーRNAの分子、mRNAではないRNA配列(例えば、tRNA、rRNA、hnRNA、ネガティブ鎖およびポジティブ鎖ウイルスRNA、およびその相補RNA)またはコード鎖もしくは非コード鎖のいずれかであるDNAの配列に対して、全体としてまたは部分的に相補的であってもよい。
【0045】
ガイド鎖は、ガイド鎖ヌクレオチド以外のヌクレオチドを含む、より大きな鎖の一部であってもよい。例えば、T字型RNA構造の場合において、第1の鎖または第2の鎖は、ガイド鎖、および第3の鎖に対して相補的であるが、標的に対しては相補的ではないさらなるヌクレオチドを含んでもよい。フラクチャーヘアピンの場合において、ガイド鎖は、ループ領域およびガイド鎖の一部に相補的である第3の領域もまた含む鎖の一部であり得る。
【0046】
本明細書で使用される「パッセンジャー鎖」という語句は、メッセンジャーRNAまたはDNAの配列などの標的核酸と同じヌクレオチド配列を、全体としてまたは部分的に有する、ポリヌクレオチドまたは領域をいう。配列が慣例によって提供されるとき、他に示されない限り、これはパッセンジャー鎖(または領域)であり、相補的なガイド鎖(または領域)の存在は暗黙である。
【0047】
本明細書で使用される「相補性」という用語は、互いと塩基対を形成するポリヌクレオチドの能力をいう。塩基対は、典型的には、逆平行ポリヌクレオチド鎖または領域におけるヌクレオチド単位の間の水素結合によって形成される。相補的ポリヌクレオチド鎖または領域は、ワトソン−クリック様式で(例えば、AとT、AとU、CとG)または安定な二重鎖の形成を可能にする任意の他の様式で塩基対形成できる。
【0048】
本明細書で使用される「完全な相補性」または「100%相補性」とは、1つのポリヌクレオチド鎖または領域(regioin)の各ヌクレオチド単位が、第2のポリヌクレオチド鎖または領域の各ヌクレオチド単位と水素結合を形成できる状態をいう。完全より少ない相補性とは、2つの鎖または2つの領域のいくつかの、しかしすべてではないヌクレオチド単位が、互いに水素結合できる状態をいう。例えば、2つの19マーについては、各鎖または各領域上の17塩基対がお互いに水素結合できる場合、これらのポリヌクレオチド鎖は89.5%相補性を示す。実質的な相補性は、80%以上の相補性を示すポリヌクレオチド鎖または領域をいう。
【0049】
本明細書で使用される「デオキシヌクレオチド」という用語は、適切な結合および/または2’,3’末端ジデオキシを有する糖部分の2’または3’位のOH基を欠き、代わりに2’および/または3’炭素に結合された水素を有する、ヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいう。
【0050】
本明細書で使用される「デオキシリボヌクレオチド」および「DNA」という用語は、そのリボシル部分の2’位において、OHの代わりにHを有する少なくとも1つのリボシル部分を含む、ヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいう。
【0051】
本明細書で使用される「ミスマッチ」という用語は、ワトソン−クリック塩基対形成が、ガイド鎖のヌクレオチドとパッセンジャー鎖のヌクレオチドの間で起こらない状況を含み、ここで、これらのヌクレオチドは、ミスマッチ位置のすぐ後で(5’方向で)開始する5’方向のミスマッチの塩基対、およびミスマッチ位置のすぐ後で(3’方向で)開始する3’方向のミスマッチの塩基対を含む二重鎖によって隣接される。ミスマッチの例には、Gに向き合ったA、Aに向き合ったC、Cに向き合ったU、Aに向き合ったA、Gに向き合ったG、Cに向き合ったCなどが非限定的に含まれる。ミスマッチには、ヌクレオチドまたは修飾ヌクレオチドに向き合った無塩基残基、ヌクレオチドまたは修飾ヌクレオチドに向き合った非環式残基、ギャップ、または不対ループもまた含まれる。その最も広い意味において、ミスマッチには、変化が出現する位置またはその近傍において熱力学的安定性を減少し、その結果、特定の位置における二重鎖の熱力学的安定性が、その位置におけるワトソン−クリック塩基対の熱力学的安定性よりも小さい、所定の位置における任意の変化が含まれる。好ましいミスマッチには、Aに向き合ったG、Cに向き合ったAが含まれる。特に好ましいミスマッチには、Aに向き合ったA、Gに向き合ったG、Cに向き合ったC、およびUに向き合ったUが含まれる。
【0052】
「RISC」および「RNA誘導性サイレンシング複合体」という語句は、本明細書で交換可能に使用され、RNAiを媒介するタンパク質の複合体を表す(例えば、Hutvagner,G.FEBS Letters,2005 579(26):5850−7を参照のこと)。
【0053】
「RNA干渉」という語句および「RNAi」という用語は本明細書で交換可能に使用され、一本鎖、二本鎖、またはT字型の分子(例えば、siRNA、shRNA、miRNA、piRNA)が、Drosha、DISC、Dicerなどを含むがこれらに限定されないRNAi経路の1つ以上の構成要素と相互作用することによって生物学的プロセスに対して効果を発揮するプロセスをいう。このプロセスは、mRNAを分解することによる遺伝子サイレンシング;翻訳の減衰、tRNA、rRNA、hnRNA、cDNA、およびゲノムDNAとの相互作用;ならびに補助タンパク質を用いるDNAの阻害およびメチル化を包含するがこれらに限定されない。加えて、RNAiを調節する分子(例えば、siRNA、piRNA、またはmiRNA阻害剤)は、RNAi経路を増強する分子のリストに含まれる(例えば、Tomari,Y.ら、Genes Dev.2005,19(5):517−29を参照のこと)。
【0054】
本明細書で使用される「サイレンシング」という語句は、例えば、ルシフェラーゼレポーターアッセイ、PCRベースの方法、ノーザンブロット分析、分枝DNA、ウェスタンブロット分析、および当該分野で認識されている他の技術などのレポーター方法を含む任意の数の方法によって測定できる、遺伝子発現におけるRNAi媒介性の減少を意味する。
【0055】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、飽和または不飽和、および置換または非置換であり得る炭化水素部分をいう。これは、直鎖状、分枝状、環状、および/または複素環式であり、エーテル、ケトン、アルデヒド、カルボン酸などのような官能基を含む部分を含んでもよい。他に特定されない限り、アルキル基は、環状、複素環式ではなく、または官能基を含む。
【0056】
例示的なアルキル基には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコイル(eicoyl)、およびより大きな数の炭素のアルキル基の置換および非置換基、ならびに2−メチルプロピル、2−メチル−4−エチルブチル、2,4−ジエチルプロピル、3−プロピルブチル、2,8−ジブチルデシル、6,6−ジメチルオクチル、6−プロピル−6−ブチルオクチル、2−メチルブチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、および(nad)2−エチルヘキシルが含まれるがこれらに限定されない。アルキルという用語は、ビニル基、アリル基、アラルキル基、およびアルキニル基などのアルケニル基もまた包含する。他に特定されない限り、アルキル基は置換されていない。
【0057】
アルキル基の中での置換は、存在すると特定される場合、アルキル部分の中で容認できる任意の原子または基を含むことができ、これには、ハロゲン、硫黄、チオール、チオエーテル、チオエステル、アミン(1級、2級、または3級)、アミド、エーテル、エステル、アルコール、および酸素が含まれるがこれらに限定されない。アルキル基は、例として、アゾ基、ケト基、アルデヒド基、カルボキシル基、ニトロ基、ニトロソ基、またはニトリル基、イミダゾールなどの複素環、ヒドラジンまたはヒドロキシアミノ基、イソシアネート基またはシアネート基、ならびにスルホキシド、スルホン、スルフィド、およびジスルフィドなどの硫黄含有基などの修飾もまた含むことができる。他に特定されない限り、アルキル基は、ハロゲン、硫黄、チオール、チオエーテル、チオエステル、アミン、アミド、エーテル、エステル、アルコール、酸素、または上記に列挙された修飾を含まない。
【0058】
さらに、アルキル基はまた、ヘテロ置換を含んでもよく、これは、例えば、窒素、酸素、または硫黄による炭素原子の置換である。複素環式置換とは、1つ以上のヘテロ原子を有するアルキル環をいう。複素環部分の例には、モルホリノ、イミダゾール、およびピロリジノが含まれるがこれらに限定されない。他に特定されない限り、アルキル基は、ヘテロ置換、または1つ以上のヘテロ原子を有するアルキル環(すなわち、複素環置換)を含まない。
【0059】
2’修飾のための好ましいアルキル基は、リボシル部分の2’炭素へのO連結を有するメチル基、すなわち、2’−O−メチル基を含む2’O−アルキルである。
【0060】
「2’−O−アルキル修飾ヌクレオチド」という語句は、本明細書で使用される場合、糖部分、例えば、酸素原子が、糖の2’位に配置された炭素原子とアルキル基の両方に結合されるように、2’位において修飾されているデオキシリボシル部分を有するヌクレオチド(nuclotide)単位をいう。種々の実施形態において、このアルキル部分は、炭素および水素から本質的になる。特に好ましい実施形態は、アルキル部分がメチルであるものである。
【0061】
本明細書で使用される場合、「2’炭素修飾」という用語は、糖部分、例えば、糖サブユニットの2’位において修飾されている部分を有するヌクレオチド単位をいう。「2’−O−アルキル修飾ヌクレオチド」は、この位置で修飾され、その結果、酸素原子が糖の2’位に結合されるのと、アルキル基に位置することの両方であり、例えば、2’−O−メチル、2’−O−エチル、2’−O−プロピル、2’−O−イソプロピル、2’−O−ブチル、2’−O−イソブチル、2’−O−エチル−O−メチル(−OCH2CH2OCH3)、および2’−O−エチル−OH(−OCH2CH2OH)である。本明細書で使用される場合、「2’炭素パッセンジャー鎖修飾」は、パッセンジャー鎖上のヌクレオチドの2’炭素の位置における修飾をいう。本明細書で使用される場合、「2’炭素ガイド鎖修飾」は、ガイド鎖上のヌクレオチドの2’炭素の位置における修飾をいう。
【0062】
本明細書で使用される場合、「ヌクレオチド」という用語は、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドまたはこれらの修飾型、ならびにそれらのアナログをいう。ヌクレオチドには、プリン、例えば、アデニン、ヒポキサンチン、グアニン、およびそれらの誘導体およびアナログ、ならびにピリミジン、例えば、シトシン、ウラシル、チミン、およびそれらの誘導体およびアナログを含む種が含まれる。好ましくは、「ヌクレオチド」は、シトシン、ウラシル、チミン、アデニン、またはグアニン部分を含む。
【0063】
ヌクレオチドアナログには、塩基、糖、および/またはリン酸の化学構造の修飾を有するヌクレオチドが含まれ、これらには、5位ピリミジン修飾、8位プリン修飾、シトシン環外アミンの修飾、および5−ブロモウラシルの置換が含まれるがこれらに限定されず;ならびに2’位糖修飾が含まれるがこれらに限定されず、ここでは、2’−OHが、H、OR、R、ハロ、SH、SR、NH2、NHR、NR2、またはCNなどの基によって置き換えられる糖修飾リボヌクレオチドが含まれ、ここで、Rは本明細書で定義されるようなアルキル部分である。ヌクレオチドアナログは、イノシン、クエオシン、キサンチンなどの塩基、2’−メチルリボースなどの糖、メチルホスホネート、ホスホロチオエート(phophorothioates)、およびペプチドなどの非天然ホスホジエステル結合を伴うヌクレオチドもまた含む。
【0064】
修飾塩基は、1つ以上の原子または基の置き換えまたは付加によって修飾された、例えば、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、およびウラシル、キサンチン、イノシン、およびクエオシンなどのヌクレオチド塩基をいう。修飾の型のいくつかの例には、塩基部分に関して修飾されているヌクレオチドが含まれ、これには、種々の組み合わせにおける、アルキル化、ハロゲン化、チオール化、アミノ化、アミド化、またはアセチル化された塩基が含まれるがこれらに限定されない。より特定の修飾塩基には、例えば、5−プロピニルウリジン、5−プロピニルシチジン、6−メチルアデニン、6−メチルグアニン、N,N,−ジメチルアデニン、2−プロピルアデニン、2−プロピルグアニン、2’−アミノアデニン、1−メチルイノシン、3−メチルウリジン、5−メチルシチジン、5−メチルウリジン、および5位に修飾を有する他のヌクレオチド、5−(2−アミノ)プロピルウリジン、5−ハロシチジン、5−ハロウリジン、4−アセチルシチジン、1−メチルアデノシン、2−メチルアデノシン(adenosien)、3−メチルシチジン、6−メチルウリジン、2−メチルグアノシン、7−メチルグアノシン、2,2−ジメチルグアノシン、5−メチルアミノエチルウリジン、5−メチルオキシウリジン、7−デアザ−アデノシンなどのデアザヌクレオチド、6−アゾウリジン、6−アゾシチジン、6−アゾチミジン、5−メチル−2−チオウリジン、2−チオウリジンおよび4−チオウリジンおよび2−チオシチジンなどの他のチオ塩基、ジヒドロウリジン、プソイドウリジン、クエオシン、アーカエオシン、ナフチルおよび置換ナフチル基、任意のO−およびN−アルキル化プリンおよびピリミジン、例えば、N6−メチルアデノシン、5−メチルカルボニルメチルウリジン、ウリジン5−オキシ酢酸、ピリジン−4−オン、ピリジン−2−オン、アミノフェノールまたは2,4,6−トリメトキシベンゼンなどのフェニルおよび修飾フェニル基、G−クランプヌクレオチドとして働く修飾シトシン、8−置換アデニンおよびグアニン、5−置換ウラシルおよびチミン、アザピリミジン、カルボキシヒドロキシアルキルヌクレオチド、カルボキシアルキルアミノアルキルヌクレオチド、ならびにアルキルカルボニルアルキル化ヌクレオチドが含まれる。修飾ヌクレオチドはまた、糖部分に関して修飾されているヌクレオチド、ならびにリボシルではない糖またはそのアナログを有するヌクレオチドを含む。例えば、糖部分は、マンノース、アラビノース、グルコピラノース、ガラクトピラノース、4−チオリボース、および他の糖、複素環または炭素環であってもよく、またはこれらの糖をベースにしてもよい。ヌクレオチドアナログという用語は、普遍的な塩基として当該分野において公知であるものもまた含む。例として、普遍的塩基には、3−ニトロピロール、5−ニトロインドール、またはネブラリンが含まれるがこれらに限定されない。
【0065】
さらに、ヌクレオチドアナログという用語には、例えば、ヌクレオチドに結合された放射活性部分もしくは蛍光部分、または質量標識などの検出可能な標識を有する種もまた含まれる。
【0066】
本明細書で使用される場合、「突出」という用語は、第1の鎖または領域が二重鎖を形成する相補鎖の末端を超えて伸びる1つの鎖または領域から生じる末端の非塩基対形成ヌクレオチドをいう。水素結合を通して二重鎖を形成することが可能である1つ以上のポリヌクレオチドは突出を有することができる。二重鎖の3’末端を超えて伸びる一本鎖領域は突出と呼ばれる。
【0067】
本明細書で使用される場合、「リボヌクレオチド」という用語および「リボ核酸」(RNA)という語句は、少なくとも1つのリボヌクレオチド単位を含む修飾または非修飾のヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいう。リボヌクレオチド単位は、リボシル部分の1’位におけるNグリコシド結合で結合された窒素性塩基を有するリボシル部分の2’位に結合した酸素、および別のヌクレオチドへの連結を可能にするか、または連結を防止するかのいずれかである部分を含む。
【0068】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容されるキャリア」という語句は、本開示の組成物を動物またはヒトに投与するための薬学的に許容される塩、溶媒、懸濁剤、または媒体を意味する。キャリアは液体、半固体、または固体であってもよく、しばしば、希釈剤、賦形剤、または塩と同義語的に使用される。「薬学的に許容される」という語句は、開示される成分、賦形剤、キャリア、または成分が、合理的な損益比率と釣り合っている、過度の有害な副作用(毒性、炎症、およびアレルギー反応など)を伴うことなくヒトおよび/または動物での使用のために適切であるものであることを意味する。Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition、Osol、A.編(1980)を参照のこと。
【0069】
「約」という用語は、所与の数値の±20%の値を意味するために本明細書で使用される。従って、「約60%」は、60±(60の20%)の間の値(すなわち、48と70の間)を意味する。
【0070】
本明細書で使用される場合、「含む」は、「含有する」「包含する」または「によって特徴付けられる」と同義語であり、包括的またはオープンエンド型であり、さらなる列挙されていない構成要素または方法の工程を除外しない。本明細書で使用される場合、「からなる」は、請求項の要素において特定されていない任意の要素、工程、または成分を除外する。本明細書で使用される場合、「から本質的になる」は、請求項の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を与えない物質または工程を除外しない。本明細書における各々の例において、「含む」、「から本質的になる」、および「からなる」という用語は、他の2つの用語のいずれかで置き換えられてもよい。本明細書において適切に例示的に説明された本開示は、本明細書において具体的に開示されていない構成要素の任意の要素、1つまたは複数の限定の非存在下で実施されてもよい。
【0071】
いくつかの実施形態において、HCV IRES配列を標的とするshRNAを試験する方法が、十分な活性(例えば、このような配列の選択された群の中で最高の活性)を有する配列を、治療としての使用のための候補として同定するために含まれる。試験はまた、望ましくない標的を外れた効果を有するshRNAをスクリーニングすることもまた含んでもよい。標的を外れる効果には、非限定的に、標的としていない遺伝子のノックダウン、標的としていない遺伝子の発現の阻害、および天然のマイクロRNA経路との競合が含まれる。細胞傷害性効果を同定するための方法は当該分野において公知である。
【0072】
1つの実施形態において、本明細書に記載されるshRNAは、C型肝炎ウイルス(HCV)の内部リボソーム侵入部位(IRES)エレメントの配列に相補的な配列を含む。
【0073】
ホタルルシフェラーゼ(fLuc)発現がHCV IRESに依存する二重レポータールシフェラーゼプラスミドが使用された。上流レニラルシフェラーゼの発現はHCV IRES依存的ではなく、Cap依存的プロセスで翻訳される。HCV IRES shRNAの直接トランスフェクションは、ヒト293FT細胞およびHuh7細胞において、HCV IRES媒介fluc発現を効率的に阻止した。二重変異を含む対照shRNAは、fLuc発現に効果がほとんどないかまたは効果が全くなく、単一の変異のみを含むshRNAは部分的な阻害を示した。これらのshRNAは、DNA構築物が、尾静脈を介する流体力学的トランスフェクションによって肝臓中の細胞に送達されたマウスモデルにおいてもまた評価された。二重ルシフェラーゼ発現プラスミド、shRNA、および分泌性アルカリホスファターゼプラスミドは、肝臓中の細胞をトランスフェクトするために使用され、これらの動物は12〜96時間にわたる時点で画像化された。インビボ画像化は、HCV IRES shRNAが、直接的に、または代替的にはpolIIIプラスミドベクターから発現され、HCV IRES依存性レポーター遺伝子発現を阻害し;変異型または無関係なshRNAはほとんど効果がなかったかまたは全く効果がなかったことを明らかにした。これらの結果は、RNAとして送達されたか、またはウイルスベクターもしくは非ウイルスベクターから発現されたshRNAが、HCVおよび関連するウイルスの制御のために有効な抗ウイルス剤として有用であることを示す。
【0074】
RNAi活性と合成shRNAの構造との間の関連性をさらに研究するために、HCV IRESの配列に相補的なガイド鎖配列および同じ配列を含む対応する合成siRNAを有する、複数のshRNA、フラクチャーshRNA、およびT字型RNAが、阻害活性、IFN、および細胞傷害性についてアッセイされた。試験された構築物の多くが高レベルのRNAi活性を示した。一般的に、ヘアピンの5’末端にガイド鎖を有するshRNAは、3’末端に同じガイド鎖を有するものよりも強力であった。次いで、5’ガイド鎖を有するshRNAの構造改変体がさらに研究された。
【0075】
shRNAのループ領域のサイズおよび配列もまた研究された。ループは、shRNA活性に有意な影響を与えることなく1ヌクレオチドまで小さくあり得、ループサイズには明確な上限がない;一般的に、ループは2〜10ヌクレオチドの間であり、一般的には、例えば、非標的遺伝子に対して相補的であることによって、意図されない効果を引き起こすことはない配列である。しかし、5’末端にガイド鎖を有するshRNAには短いループが有利である。具体的には、2ヌクレオチドループ(5’−UU−3’)は、10ヌクレオチド、5ヌクレオチド、または1ヌクレオチドのループを有するshRNAの間で最良の効力をshRNAに与えた。ループの直前のループを閉じる塩基対は、短いループ(例えば、2ヌクレオチドループ)に対して重要であるが、shRNAの高い機能を維持するためには長いループ(5ヌクレオチドループ)に対して重要なほどではない。従って、二重鎖形成を強化するために働くことができた、UUループの直前に「CGクランプ」を有するshRNAは、AU塩基対を有するものよりも4.6倍低いIC50を与えた(図5B)。別の態様において、このループは、shRNAの遺伝子ノックダウン活性に影響を与えることなく、パッセンジャー鎖の5’末端に直接結合された、ガイド鎖の3’部分を含むことができる。この場合において、このループは2〜8ヌクレオチド長である。
【0076】
ループ構造はまた、デオキシリボヌクレオチド、非ヌクレオチドモノマー、およびS−S結合などの可逆的連結を含むことができ、これは、例えば、(Earnshwaw et al.,J.Mol.Biol.,1997,274:197−212;Sigurdsson et al.Thiol−containing RNA for the study of Structure and Function of Ribozymes. Methods:A Companion to Methods in Enzymology,1999,18:71−77)記載されるように、ヌクレオチド残基に導入された−SH基の酸化によって形成できる。
【0077】
本発明は、以下の実施例によってさらに例証される。これらの実施例は例示目的のみのために提供される。これらは、いかなる場合においても、本発明の範囲および内容を限定するものとしては解釈されない。
【実施例】
【0078】
実施例1−標的ノックダウンにおける効力を改善するためのshRNA構造の最適化
標的ノックダウンにおける効力が増加したshRNA構造を同定するために、5’−パッセンジャー鎖(右側のループ)を有する3セットのshRNA(shRNA68、shRNA 72、shRNA 74)および5’−ガイド鎖(左側のループ)を有する3つが、IDT(Coralvilled,IA)によって化学合成され、RNaseおよびパイロジェンを含まない緩衝液(Dharmacon)に再懸濁され、そして評価された。具体的には以下の通りであった:
構造5’−パッセンジャー鎖−5ntループ−ガイド鎖−3’(SG68、SG72、およびSG74)を有するshRNA
【0079】
shRNA中の二重鎖の長さもまた、標的遺伝子抑制に影響を与える。ガイド鎖が19ヌクレオチド長で維持される間、3’末端から(17または16ヌクレオチド長まで)短縮されたshRNAのパッセンジャー鎖を有するshRNAは、有意に低いサイレンシング効力を有する。ガイド鎖を19ヌクレオチドで維持しながらパッセンジャー鎖を5’末端から(17ヌクレオチド長まで)短縮することは、shRNA活性に影響を与えない。興味深いことに、shRNAは、ガイド鎖が19ヌクレオチド長に維持される場合に、11ヌクレオチド長まで短い(5’末端から短縮化される)パッセンジャー鎖で何らかの活性を維持する。短縮化されたパッセンジャー鎖とガイド鎖の両方を有するshRNA(各18ヌクレオチド長であり、二重鎖中に18塩基対を形成する)は、19塩基対二重鎖を有するshRNAと比較して非常に類似した効力を示した。特定の位置における単一のミスマッチは、shRNAの効力に影響を与えることなく、shRNAの二重鎖領域に導入できる。
【0080】
フラクチャーshRNAおよびT字型RNAもまた試験され、実施例6において示されるように、高レベルのRNAi活性が見られた。
【0081】
範囲が本明細書中で与えられるときにはいつでも、例えば、温度範囲、時間範囲、配列同一性パーセント、配列相補性範囲、長さ範囲、または組成もしくは濃度の範囲、すべての中間の範囲および部分的な範囲、ならびに与えられた範囲に含まれるすべての個々の値は、本開示に含まれることが意図される。 構造5’−ガイド鎖−5ntループ−パッセンジャー鎖−3’(SG68L、SG72L、およびSG74L)を有するshRNA
【0082】
これらのshRNAの配列は表1に示される。shRNAループに下線を付す。3’突出を形成するヌクレオチドは小文字によって示される。
【表1】
【0083】
ヒト293FT(Invitrogen)細胞は、2mM L−グルタミンおよび1mM ピルビン酸ナトリウムを補充した、10% 加熱不活化ウシ胎仔血清(Hyclone)を有するDMEM中に維持された。トランスフェクションの前日に、細胞は96ウェルプレート中のウェルあたり23,000細胞で播種され、トランスフェクションの時点で約80%細胞コンフルエンシーを生じた。製造業者の指示書に従って、細胞はLipofectamine(商標)2000(Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いてトランスフェクトされた。具体的には、示された濃度(例えば、10、3、1、0.3、0.1、0.03、0.01、および0.003nM)の合成shRNAサンプル、13ng DNA プラスミドpSG154m(これはHCV IRES標的配列およびホタルルシフェラーゼレポーター配列を含む)、20ng pSEAP2−対照プラスミド(BD Biosciences Clontech、トランスフェクション対照として)は、OptiMem(Invitrogen)中0.25μl Lipofectamine 2000と混合され、3連で293FT細胞に導入された。48時間後、上清は取り除かれ、65℃で15〜30分間加熱され、そして5〜10μlの上清が150μl p−ニトロフェニルホスフェート液体基質システム(pNPP、Sigma)に加えられた。室温で30〜60分間のインキュベーション後、サンプルは、Molecular Devices Thermomaxマイクロプレートリーダー上で読み取られ(405nm)、SOFTmaxソフトウェア(Molecular Devices)を使用して定量された。残っている細胞は溶解され、ルシフェラーゼ活性はMicroLumat LB 96Pルミノメーター(Berthold)を使用して測定された。
【0084】
これらの実験の結果は図3A〜3Cに提示される。3つのshRNAの1つ、sh68は、(右側の代わりに)左側のループが使用されたときに、ほぼ30倍高い効力を示した。他の2種のshRNA、特に、sh72は、右側および左側のループを有するshRNAの間で効力の有意な違いを示さなかった。
【0085】
5’−ガイド鎖を有するshRNAの効力の増強に関連する鍵となる特性を同定するために、5’−パッセンジャー鎖を有するshRNAおよび5’−ガイド鎖を有するshRNAの内部安定性が、プログラムOligo 4.0を使用して計算された。5’鎖の19塩基のみが計算された。
【0086】
計算の結果は図3D〜3Fに提示され、左側ループを有するsh72における活性増加の欠如がおそらく配列特異的であり、5’末端の内部安定性の違いに少なくとも部分的に起因することを実証する。右側ループおよび左側ループを有するshRNAの5’末端の内部安定性は、sh68においては互いに非常に近かったが、sh72ではそうではなかった。左側ループを有するshRNAはガイド鎖の侵入を簡単にし、ガイド鎖の優先的な使用を助長することが可能である。なぜなら、これは、5’末端にありかつ5’リン酸を有し、このことは、RISCにおいてDicerおよびAgo2に結合するための必要条件であるからである。この利点は、右側ループを有するshRNAと左側ループを有するshRNAの間で5’末端の内部安定性が有意に異なるときに消失する。
【0087】
実施例2:shRNAの最適なループ構造およびループを閉じる塩基対の同定
sh19−3のループ構造は(本明細書に具体的に参照により組み込まれるWO2007/032794において記載されるように)以前に研究された。sh19−3と同じIRES領域を標的とするSG68対SG68Lの効力の増強を考慮して、ループ構造が再試験された。293FT細胞におけるHCV IRES媒介性レポーター発現を阻害する能力に対する種々のループ構造の効果は実施例1に記載された。結果は図4に示される。SEAPレベルはすべてのサンプルにおいて均一であり、0.003nM〜0.3nMのshRNA濃度において、効率的なトランスフェクションおよび非特異的阻害または毒性効果の非存在を示す。
【0088】
ループ長は、siRNA 19−3(si19−3)と同じIRES領域を標的とするshRNAを使用して最初に調べられた。shRNAの構造は、5’−ガイド鎖−ループ−パッセンジャー鎖−3’(左側ループ)であった。この二重鎖長は19塩基対であり、パッセンジャー鎖の3’末端にUU−突出を伴った。種々のループの長さを有するshRNAの配列は表2に列挙される。shRNAループに下線を付す。3’突出のヌクレオチドは小文字で示される。
【0089】
10ヌクレオチドループ(SG113、5’−CUUCCUGUCA−3’)、5ヌクレオチドループ(SG68L、5’−CAAUA−3’)、2ヌクレオチドループ(SG142、5’−UU−3’)、および1ヌクレオチドループ(SG114、5’−U−3’)を有するshRNAが試験され、結果は図4Aに示される。5’パッセンジャー鎖(右側ループ)を有するshRNAを用いた結果とは異なり(Vlassov et al.,Oligonucleotides 17:223−236,2007)、5’ガイド鎖(左側ループ)を有するshRNAは、ループサイズが大きいとき(5または10nt)よりも、非常に小さいとき(1または2nt)に高い効力を有した(図4A)。このループ構造は、おそらく、shRNA活性に影響を与えない。なぜなら、miR−23 マイクロRNAループ構造から誘導されたものを含む、3つの異なるループ配列が使用されたからである。SG142(左側5’−UU−3’ループ)のIC50は最低4.6pMまで−siRNA 19−3よりも強力であり、これは、同じ領域を標的とする。右側ループを有するshRNAは、ループに直に隣接する塩基対としてA:Uを有し、左側ループを有するそれは同じ位置にC:G対を有する。これらの対は、実際、2ntループから潜在的な緊張を軽減するために塩基対形成しなくてもよい。そのような状況であれば、SG118のC:G塩基対形成は、SG103の4ntループAUUUよりも安定である4ループ構造(CUUG)に関与する可能性がある。興味深いことに、4ループ形成SG118は、最も低いIC50を有した(図4B、SG118)。二重鎖領域の配列はこれらのshRNAの中で同じであり、表2に列挙される。
【0090】
エンドリボヌクレアーゼによる切断に対して抵抗性があるループを作製するために、2’−デオキシジヌクレオチドTTがループとして試験された。ループ配列UU(SG142)をTT(SG112)で置き換える際に、顕著な活性の損失は検出されず(図4C)、デオキシ置換は、機能的活性を犠牲にすることなく、リボヌクレアーゼ抵抗性のためにループに適用できたことを示す。Dicerも任意の他のエンドリボヌクレアーゼも、19bp shRNAのプロセシングに関与しないこともまた示唆される。なぜなら、任意の他のデオキシリボヌクレアーゼは、おそらくジヌクレオチドの5’側を例外として、RNaseによって切断できないからである。
【0091】
これらのshRNAの配列は表2に示される。shRNAループには下線を付す。3’突出のヌクレオチドは小文字によって示される。
【表2】
【0092】
実施例3:効力と、shRNA突出および二重鎖長の間の関連性の研究
Vlassov et al.は、3’−UU突出の存在が19−bp shRNAの効力を増加することを見い出した(Vlassov、et al.2007)。この以前の研究において使用されたshRNAは右側ループを有した(5’−パッセンジャー鎖−ループ−ガイド鎖−3’)。従って、ガイド鎖の3’末端におけるUU突出は、ガイド鎖の3’−UU突出へのAgo PAZドメインの結合を容易にする可能性がある。左側ループを有するshRNA(5’−ガイド鎖−ループ−パッセンジャー鎖−3’)は、より良好な標的遺伝子抑制を示したので、shRNA効力に対する、パッセンジャー鎖の3’末端におけるUU突出の効果が試験された。図5Aに示されるように、3’−UU配列を欠くshRNA(SG105)および突出としてデオキシリボヌクレオチド3’−TTを有するshRNA(SG111)は、3’−UU突出を有する対応するshRNAに非常に類似した効力を有した。
【0093】
shRNA活性に対するステム長の効果もまた調べられた。図5Bに示されるように、ガイド鎖の長さを19ntに維持しながら、パッセンジャー鎖を17ntまたは16ntに短縮することは、遺伝子サイレンシング活性を有意に減少した(SG115およびSG116)。しかし、両方の鎖を18nt長に短縮することは、効力に有意な影響を有さなかった(SG117)。驚くべきことに、16bpまで短いステムを有するshRNA(19ntガイド鎖および17ntパッセンジャー鎖を有するSG119)は、17bpステムを有するもの(SG117)と類似の阻害を示した(図5C)。しかし、15bpのステムを有するshRNA(SG131)は阻害活性の減少を示し始めた(図6A)。このことは、高いサイレンシング活性は16bp以上の二重鎖の長さを必要とすることを示す。
【0094】
極端な場合を試験するために、11bp二重鎖および8ntループを有するshRNA(SG120)(11ntパッセンジャー鎖に直接連結された19ntガイド鎖)によるサイレンシングが測定された(図5C)。効力は他と比較すると低かったが、ショートRNAヘアピンはなお200pM未満のIC50を有した。同様に、13bp二重鎖および6ntループを有するshRNA(SG134)(13ntパッセンジャー鎖に直接連結された19ntガイド鎖)は、同じレベルの標的ノックダウンを与えた(図6B)。パッセンジャー鎖の10ntへのさらなる短縮は、サイレンシングを顕著に減少させた。ヘアピンの3’末端から5’末端まで11ntパッセンジャー鎖を変化させること(SG135)はサイレンシングを無効にした(図6B)。
【0095】
突出長およびステム長が配列特異的であるか否かを調べるために、図5および6において使用されたもの以外の2つの標的配列が試験された(図7Aおよび7B)。3’−UU突出の欠乏は、ヘアピンの標的サイレンシングを有意に減少させなかった。ステムの18bp(SG139)または16bp(SG136)への短縮は、ヘアピンの標的ノックダウン能力を減少させ、このことは、本ステム短縮戦略がある程度の配列依存性を有することを示した。
【0096】
これらのshRNAの配列は表3に示される。shRNAループには下線を付す。3’突出のヌクレオチドは小文字で示される。
【表3】
【0097】
実施例4:19bp shRNAにおける単一のミスマッチの位置および型の効果の研究
siRNAのガイド鎖とパッセンジャー鎖の両方がRISC複合体に取り込み可能であることが示されてきた。このことは、shRNAのガイド鎖およびパッセンジャー鎖に適用可能であるかもしれない。パッセンジャー鎖(特にシード領域)がメッセンジャーRNAのコード領域または3’−UTRに対して相補的である場合、Agoによるパッセンジャー鎖の選択が望ましくない効果を誘導可能であったので、、単一の変異が、パッセンジャー鎖の5’末端から4位〜7位で作製された。
【0098】
図8Aおよび8Bに示されるように、これらの変異は、19ヌクレオチド長の両方の鎖、3’UU突出、およびUU−ループを有するshRNAの効力に有意に影響を与えなかった。加えて、単一のミスマッチを伴う活性の持続は、ミスマッチの型に無関係なように見え(例えば、U−U(SG110)=U−C(SG126))、この形質が配列非依存的であることを示唆した。
【0099】
これらのshRNAの配列は表4に示される。shRNAループに下線を付す。3’突出のヌクレオチドは小文字によって示される。ミスマッチヌクレオチドは斜字体で示される。
【表4】
【0100】
実施例5:shRNAの効力に対するモノマーおよびダイマーの効果の研究
IDTによって合成され、HPLC精製されたshRNAは、ネイティブポリアクリルアミドゲル中で3つの主要な種:モノマー、ダイマー、およびトリマーを含むことが見い出された。対照的に、変性条件下(8M 尿素および20% ホルムアミドを含む12% ポリアクリルアミドゲル)では、この混合物は単一の主要バンドのみを示した。shRNAが95℃まで4分間加熱され、アイスバス中で迅速に冷却されたときに、モノマー、ダイマー、およびトリマーのこの混合物は、大部分がモノマーに転換でき(図9Bおよび図10B)、モノマーshRNAは、293FT細胞の中で、その混合物よりもわずかに弱いとしても、IRES依存性ルシフェラーゼ発現の強力な阻害剤のままであった(図9A)。shRNAが16ヌクレオチドまで短縮され(SG119)、この分子のダイマーが、バルジまたはミスマッチなしで完全な二重鎖を形成したときに、モノマーは、モノマー−ダイマー混合物よりも良好な効力を有した(図10A)。これは、おそらく、ダイマーがDicerによる非効率的な切断または種々の切断生成物を有したという事実に起因した。しかし、shRNAが極度に短い場合(ループとしての残りのガイド鎖を伴う11塩基対)、ヘアピンは混合物中でより活性であり、おそらく、モノマーのみの型よりもダイマー型であった(図10A)。しかし、純粋なモノマー型においてさえ、SG120は高い効率で標的遺伝子発現を減少させ、98.6pMのIC50であった。
【0101】
実施例6:機能性の増強を伴う最適なshRNA構成の同定
遺伝子ノックダウンの増強を有する最適なshRNA構成を同定するために、IRESの同じ領域を標的とする3つのshRNAが合成され、評価された。
a.SG68L:5’ガイド鎖−CAAUA(ループ)−パッセンジャー鎖−3’
b.SG146:2つのRNA分子からのアニール生成物。SG146−1、5’−ガイド鎖−CAAUA(ループ)−部分パッセンジャー鎖−3’;SG146−2、ガイド鎖に相補的である5’−部分パッセンジャー鎖
c.SG142:5’−ガイド鎖−UU(ループ)−パッセンジャー鎖−3’
【0102】
様々な濃度(0.3、0.1、0.03、0.01、および0.003nM)のshRNAサンプル、および13μg DNAプラスミドpSG154m(標的配列HCV IRESおよびレポーター配列ホタルルシフェラーゼを含む)、およびpUC19(同じ量の核酸から作製)が、OptiMem(Invitrogen)中で0.25μl Lipofectamine 2000(Invitrogen)とともに混合され、293FT細胞に導入された(96ウェルプレートのウェルあたり23,000細胞)。ホタルルシフェラーゼ遺伝子発現のノックダウンは、48時間目にルミノメーターによって測定された。
【0103】
これらの実験の結果は図11に提示され、1)2−ヌクレオチドループを有するshRNA(SG142)が、5−ヌクレオチドループを有するshRNA(SG68L)よりもわずかに強力であったこと、および2)2つの分子からアニールされたshRNA(SG146)が良好なノックダウン機能を有したことを実証する。
【0104】
これらのshRNAの配列は表5に示される、shRNAループに下線を付す。3’突出のヌクレオチドは小文字で示される。
【表5】
【0105】
実施例7:肝細胞腫細胞系統におけるshRNAのサイレンシング効果の研究
細胞系統が肝細胞癌細胞系統Huh7に変更されたこと以外は、これらの実験は実施例1において記載されたものと同様に実施された(図12)。SG68、SG68L、および陰性対照SG101(配列:5’−CGU GCU UAG GAU UUG GAG UCA AUA ACU CCA AAU CCU AAG CAC GUU−3’)を含む、種々の濃度を有する3つのshRNAが比較された。ホタルルシフェラーゼの減少は、SG101でトランスフェクトされた細胞において見い出されなかった。293FT細胞における結果と一致して、SG68Lは、肝細胞癌細胞における標的遺伝子発現のサイレンシングにおいてSG68よりもはるかに強力である。
【0106】
実施例8:shRNAの高い効力はIFN応答または細胞傷害性に起因しない
いくつかのsiRNAまたはshRNAは、IFN応答および/または標的を外れた効果を誘導する。上記に試験されたshRNAがこれらの望ましくない特徴を有したか否かを調べるために、IFN応答性遺伝子OAS1がshRNAトランスフェクションの後で測定された。具体的には、ヒトPBMCが、密度勾配遠心分離によってバフィーコートから調製され、洗浄され、次いで、10%熱不活化ウシ胎仔血清を含むRPMI 1640に再懸濁された。これらの細胞は、24ウェルプレートのウェルあたり5×105細胞で培養され、次いで、shRNA(20nM、約170〜180ng)//DOTAP(1.5μl、Roche)複合体で24時間トランスフェクトされた。次いで、これらの細胞は、Trizol(Invitrogen)中で溶解し、総RNAは製造業者の指示書に従って抽出された。qRT−PCRは、製造業者の指示書に従って、High−Capacity cDNA Reverse Transcription Kits、TaqMan Universal PCR Master Mix、OAS1 (Hs00242943_m1)およびGAPDH(Hs99999905_m1)Taqmanプローブ、ならびにFast 7500リアルタイムPCR機器(Applied Biosystem)を使用して行った。
【0107】
図13Aに示されるように、DOTAPを用いてトランスフェクトされた陽性対照、ポリ(I:C)ウェルあたり18ng(ウェルあたりのshRNAの量に等価)は、未処理の陰性対照と比較して、10.6倍のOAS1発現の増加を生じた。しかし、試験されたshRNAはどれもOAS1の増加を生じず、IFNがヒトPBMCの中で誘導されなかったことを示した。
【0108】
細胞傷害性は、shRNAトランスフェクションの後のヒト肝細胞癌細胞系統(Huh7)において、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)の取り込みを測定することによってもまた試験された。前日の夜に96ウェルプレートに播種されたHuh7細胞(13,000細胞/ウェル)は、Lipofectamine 2000(LF2K、Invitrogen)を使用して、標的DNAと一緒に10nM shRNAでトランスフェクトされた。ポリ(I:C)(33ng)は陽性対照として使用された。48時間後、Hepes緩衝化生理食塩水中5mg/ml中の16μl/ウェルのMTT(Sigma)が培養に加えられた。これらの細胞は、酸性イソプロパノール(0.04N HCl)で溶解される前3時間の間、さらにインキュベートされた。溶解されたホルマザンレベルはMolecular Devices Thermomaxマイクロプレートリーダーによって測定され、SOFTmaxソフトウェア(Molecular Devices)を使用して定量され、570nmの試験波長および650nmの参照波長を用いた。
【0109】
図13Bに示されるように、陰性対照である、リポフェクタミン中のプラスミドDNAに対して有意な細胞死は見い出されなかった。陽性対照である、リポフェクタミン中のポリ(I:C)は、50%より多い細胞死を誘導した。全体として、上記で試験したshRNAは、ヒトPBMCおよび肝細胞癌細胞において、IFNを示さず、有意な細胞傷害性を示さなかった。
【0110】
実施例9:19塩基対以下の二重鎖長さを有するshRNAはDicerの基質ではない
19塩基対以下の二重鎖長さを有するshRNAがDicerによって切断できるか否かを調べるために、いくつかのshRNAがインビトロDicer切断分析のために選択された。25塩基対(5’−GGGAGCACGAAUCCUAAACCUCAAAGACUUCCUGUCAUCUUUGAGGUUUAGGAUUCGUGCUCUU−3’)(配列番号40)の二重鎖長さを有するshRNA(sh1)が陽性対照として使用された。具体的には、すべての合成shRNAは、20mM KCl、6mM HEPES−KOH(pH 7.5)、0.2mM MgCl2を含む緩衝液中で5μM最終濃度に溶解した。すべての分子がヘアピンモノマーを形成したことを保証するために、shRNAは95℃で4分間加熱し、次いで、直ちに氷冷バスに移動させ、さらなる使用の前に10〜20分間冷却させた。各shRNAの8pmolが、1Uの組換えdicer酵素(Stratagene、カタログ番号240100)および150mM NaCl、20mM Tris−HCl(pH 8)、および2.5mM MgCl2を含む1×緩衝液の存在下で、10μL反応において、37℃で18時間インキュベートされた。各shRNAを含むがdicer酵素を欠いている対照反応が並行してインキュベートされた。
【0111】
サンプルは、10%非変性PAGE(図14A)と12%変性PAGE(8M尿素/20%ホルムアミド)(図14B)の両方によって分析され、SYBR Gold(Invitrogen)によって染色された。図14に示されるように、25塩基対長、10ヌクレオチドループ、ならびに5’−および3’−突出を含んだsh1 RNAは、Dicerによって切断されて、20塩基対から25塩基対の間のサイズを有する生成物を生じた。19塩基対のステム、および2または5ヌクレオチド長のヘアピン、ならびに18塩基対および2ヌクレオチドのヘアピンのステムを有するものを有する3つを含む、試験されたshRNAの他のすべては、非変性PAGEと変性PAGEにおいていかなる切断生成物も示さなかった。これらの結果は、19塩基対以下の二重鎖長さを有するショートヘアピンはDicerの基質ではないことを示す。
【0112】
他の実施形態
本発明は、その詳細な説明とともに記載されてきたが、前述の説明は、例示することが意図され、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲を限定することは意図されないことが理解される。他の態様、利点、および改変は添付の特許請求の範囲の中にある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RNA分子であって:
15ヌクレオチド〜30ヌクレオチドからなり、標的ヌクレオチド配列に少なくとも部分的に相補的である第1のRNA配列;
前記第1の配列の少なくとも一部に少なくとも部分的に相補的である配列を含み、前記第1の配列の長さよりも10ヌクレオチドから1ヌクレオチドの間の少ない長さを有する第2のRNA配列;
任意に、前記第1の配列と前記第2の配列の間に配置され、1〜100ヌクレオチドからなるループ配列;および
任意に、1〜2ヌクレオチドからなるヌクレオチド突出
を含む、RNA分子。
【請求項2】
RNA分子であって:
16ヌクレオチド〜30ヌクレオチドからなり、標的ヌクレオチド配列に少なくとも部分的に相補的である第1のRNA配列;
前記第1の配列の少なくとも一部に少なくとも部分的に相補的である配列を含み、前記第1の配列よりも少なくとも1ヌクレオチド多くを有し、100ヌクレオチドを超えない第2のRNA配列;
任意に、前記第1の配列と前記第2の配列の間に配置され、1〜100ヌクレオチドからなるループ配列;および
任意に、1〜2ヌクレオチドからなるヌクレオチド突出
を含む、RNA分子。
【請求項3】
RNA分子であって:
16ヌクレオチド〜18ヌクレオチドからなり、標的ヌクレオチド配列に少なくとも部分的に相補的である第1のRNA配列;
前記第1の配列の少なくとも一部に少なくとも部分的に相補的である配列を含み、前記第1の配列と同じ数のヌクレオチドを有する第2のRNA配列;
任意に、前記第1の配列と前記第2の配列の間に配置され、1〜2ヌクレオチドからなるループ配列;および
任意に、1〜2ヌクレオチドからなるヌクレオチド突出
を含む、RNA分子。
【請求項4】
RNA分子であって:
19ヌクレオチドからなり、標的ヌクレオチド配列に少なくとも部分的に相補的である第1のRNA配列;
前記第1の配列の少なくとも一部に少なくとも部分的に相補的である配列を含み、17ヌクレオチドまたは18ヌクレオチドからなる、第2のRNA配列;
任意に、前記第1の配列と前記第2の配列の間に配置され、1〜100ヌクレオチドからなるループ配列;および
任意に、1〜2ヌクレオチドからなるヌクレオチド突出
を含む、RNA分子。
【請求項5】
RNA分子であって:
15〜30ヌクレオチドからなり、標的ヌクレオチド配列に少なくとも部分的に相補的である第1のRNA配列;
前記第1の配列の少なくとも一部に少なくとも部分的に相補的である配列を含み、前記第1の配列と同じかまたはそれより少ない数のヌクレオチドを有する、第2のRNA配列;
任意に、前記第1の配列と前記第2の配列の間に配置され、1ヌクレオチドからなるループ配列;および
任意に、1〜2ヌクレオチドからなるヌクレオチド突出
を含む、RNA分子。
【請求項6】
第2の配列が、第1の配列の少なくとも一部に少なくとも85%相補的である配列を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のRNA分子。
【請求項7】
第2の配列が、第1の配列の5’末端における部分に少なくとも85%相補的である配列を含む、請求項6に記載のRNA分子。
【請求項8】
第2の配列の3’末端の配列が、第1の配列の5’末端における部分に少なくとも85%相補的である、請求項6に記載のRNA分子。
【請求項9】
RNA分子が少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のRNA分子。
【請求項10】
ループが少なくとも1つの非ヌクレオチド分子を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のRNA分子。
【請求項11】
RNA分子の3’末端が突出を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のRNA分子。
【請求項12】
RNA分子が第1の配列と第2の配列の間の1個または2個のミスマッチを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のRNA分子。
【請求項13】
第1の配列が第2の配列に対して3’である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のRNA分子。
【請求項14】
第1の配列が第2の配列に対して5’である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のRNA分子。
【請求項15】
RNA分子が標的ヌクレオチド配列の発現を阻害することが可能である、請求項1に記載のRNA分子。
【請求項16】
標的ヌクレオチド配列がウイルス配列である、請求項1に記載のRNA分子。
【請求項17】
ウイルス配列がC型肝炎ウイルス配列である、請求項16に記載のRNA分子。
【請求項18】
標的ヌクレオチド配列が、C型肝炎ウイルスの内部リボソーム侵入部位(IRES)配列の中の配列である、請求項1に記載のRNA分子。
【請求項19】
RNA分子であって:
約5ヌクレオチド〜約15ヌクレオチドからなり、標的ヌクレオチド配列に少なくとも部分的に相補的である第1のRNA配列;
前記第1の配列とヘアピン構造を形成することが可能であり、前記ヘアピン構造は約23ヌクレオチド〜約100ヌクレオチドを含む第2のRNA配列であって、
前記第1の配列と少なくとも80%相補的であり、前記第1の配列と、19塩基対よりも少ない第1の二重鎖領域を形成することが可能である第1の領域;
前記第1の領域に結合する第2の領域;
前記第2の領域に結合する第3の領域;および
前記第3の領域に結合し、前記第2の領域と少なくとも80%相補的であり、前記第2の領域と第2の二重鎖領域を形成することが可能であり、その結果、前記第3の領域が前記第2の二重鎖領域に隣接するループを形成し、前記第1の二重鎖領域および前記第2の二重鎖領域の長さの合計が23塩基対未満である、第4の領域
を含む、第2のRNA配列;ならびに
任意に、約6ヌクレオチドより少ないRNA分子の5’または3’末端における突出
を含む、RNA分子。
【請求項20】
T字型RNA分子であって、標的ヌクレオチド配列に少なくとも部分的に相補的な第1のRNA配列、第2のRNA配列、および第3のRNA配列を含み、ここで、
前記第1の配列は、前記第2の配列の第1の領域に少なくとも80%相補的な約18ヌクレオチド〜約29ヌクレオチドを有する第1の領域を含み;
前記第1の配列は、前記第3の配列の第1の領域に少なくとも約90%相補的な約4ヌクレオチド〜約10ヌクレオチドを有する第2の領域をさらに含み;
前記第2の配列は、前記第1の配列の第1の領域に少なくとも約80%相補的である約18ヌクレオチド〜約29ヌクレオチドを有する第1の領域を含み;
前記第2の配列は、前記第3の配列の第2の領域に少なくとも約90%相補的である約4ヌクレオチド〜約10ヌクレオチドを有する第2の領域をさらに含み、前記第3の配列の第2の領域は前記第3の配列の第1の領域に対して3’で隣接し;および
任意に、約6ヌクレオチドより少ないRNA分子の5’または3’末端における突出
を含む、T字型RNA分子。
【請求項21】
配列番号1〜39のいずれか1つのRNA配列を含むRNA分子。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか1項に記載のRNAをコードする配列を含むDNA配列。
【請求項23】
請求項22に記載のDNA配列を含む発現ベクター。
【請求項24】
請求項22に記載のDNA配列を含むレトロウイルスベクター。
【請求項25】
請求項1〜21のいずれか1項に記載のRNA分子および薬学的に許容可能な賦形剤を含む組成物。
【請求項26】
請求項1〜21のいずれか1項に記載のRNA分子をコードする配列を含むベクターを含む組成物。
【請求項27】
遺伝子の発現または活性を阻害する方法であって、前記方法は、請求項1〜21のいずれか1項に記載のRNA分子と、遺伝子を発現する細胞を接触させることを包含し、ここで、第1のRNA配列は、前記遺伝子の少なくとも一部によってコードされる標的ヌクレオチド配列に少なくとも部分的に相補的である、方法。
【請求項28】
C型肝炎ウイルスの発現または活性を阻害する方法であって、前記方法は、請求項1〜20のいずれか1項に記載のRNA分子と、C型肝炎ウイルスを発現する細胞を接触させることを包含し、ここで、第1のRNA配列は、C型肝炎ウイルス配列と少なくとも部分的に相補的である、方法。
【請求項29】
C型肝炎ウイルスの発現または活性を阻害する方法であって、前記方法は、請求項21に記載のRNA分子と、C型肝炎ウイルスを発現する細胞を接触させることを包含する、方法。
【請求項30】
前記細胞が哺乳動物である、請求項27〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記哺乳動物がヒトである、請求項27〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記哺乳動物が非ヒト霊長類である、請求項27〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記RNA分子がIFN応答を誘導しない、請求項27〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項1】
RNA分子であって:
15ヌクレオチド〜30ヌクレオチドからなり、標的ヌクレオチド配列に少なくとも部分的に相補的である第1のRNA配列;
前記第1の配列の少なくとも一部に少なくとも部分的に相補的である配列を含み、前記第1の配列の長さよりも10ヌクレオチドから1ヌクレオチドの間の少ない長さを有する第2のRNA配列;
任意に、前記第1の配列と前記第2の配列の間に配置され、1〜100ヌクレオチドからなるループ配列;および
任意に、1〜2ヌクレオチドからなるヌクレオチド突出
を含む、RNA分子。
【請求項2】
RNA分子であって:
16ヌクレオチド〜30ヌクレオチドからなり、標的ヌクレオチド配列に少なくとも部分的に相補的である第1のRNA配列;
前記第1の配列の少なくとも一部に少なくとも部分的に相補的である配列を含み、前記第1の配列よりも少なくとも1ヌクレオチド多くを有し、100ヌクレオチドを超えない第2のRNA配列;
任意に、前記第1の配列と前記第2の配列の間に配置され、1〜100ヌクレオチドからなるループ配列;および
任意に、1〜2ヌクレオチドからなるヌクレオチド突出
を含む、RNA分子。
【請求項3】
RNA分子であって:
16ヌクレオチド〜18ヌクレオチドからなり、標的ヌクレオチド配列に少なくとも部分的に相補的である第1のRNA配列;
前記第1の配列の少なくとも一部に少なくとも部分的に相補的である配列を含み、前記第1の配列と同じ数のヌクレオチドを有する第2のRNA配列;
任意に、前記第1の配列と前記第2の配列の間に配置され、1〜2ヌクレオチドからなるループ配列;および
任意に、1〜2ヌクレオチドからなるヌクレオチド突出
を含む、RNA分子。
【請求項4】
RNA分子であって:
19ヌクレオチドからなり、標的ヌクレオチド配列に少なくとも部分的に相補的である第1のRNA配列;
前記第1の配列の少なくとも一部に少なくとも部分的に相補的である配列を含み、17ヌクレオチドまたは18ヌクレオチドからなる、第2のRNA配列;
任意に、前記第1の配列と前記第2の配列の間に配置され、1〜100ヌクレオチドからなるループ配列;および
任意に、1〜2ヌクレオチドからなるヌクレオチド突出
を含む、RNA分子。
【請求項5】
RNA分子であって:
15〜30ヌクレオチドからなり、標的ヌクレオチド配列に少なくとも部分的に相補的である第1のRNA配列;
前記第1の配列の少なくとも一部に少なくとも部分的に相補的である配列を含み、前記第1の配列と同じかまたはそれより少ない数のヌクレオチドを有する、第2のRNA配列;
任意に、前記第1の配列と前記第2の配列の間に配置され、1ヌクレオチドからなるループ配列;および
任意に、1〜2ヌクレオチドからなるヌクレオチド突出
を含む、RNA分子。
【請求項6】
第2の配列が、第1の配列の少なくとも一部に少なくとも85%相補的である配列を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のRNA分子。
【請求項7】
第2の配列が、第1の配列の5’末端における部分に少なくとも85%相補的である配列を含む、請求項6に記載のRNA分子。
【請求項8】
第2の配列の3’末端の配列が、第1の配列の5’末端における部分に少なくとも85%相補的である、請求項6に記載のRNA分子。
【請求項9】
RNA分子が少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のRNA分子。
【請求項10】
ループが少なくとも1つの非ヌクレオチド分子を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のRNA分子。
【請求項11】
RNA分子の3’末端が突出を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のRNA分子。
【請求項12】
RNA分子が第1の配列と第2の配列の間の1個または2個のミスマッチを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のRNA分子。
【請求項13】
第1の配列が第2の配列に対して3’である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のRNA分子。
【請求項14】
第1の配列が第2の配列に対して5’である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のRNA分子。
【請求項15】
RNA分子が標的ヌクレオチド配列の発現を阻害することが可能である、請求項1に記載のRNA分子。
【請求項16】
標的ヌクレオチド配列がウイルス配列である、請求項1に記載のRNA分子。
【請求項17】
ウイルス配列がC型肝炎ウイルス配列である、請求項16に記載のRNA分子。
【請求項18】
標的ヌクレオチド配列が、C型肝炎ウイルスの内部リボソーム侵入部位(IRES)配列の中の配列である、請求項1に記載のRNA分子。
【請求項19】
RNA分子であって:
約5ヌクレオチド〜約15ヌクレオチドからなり、標的ヌクレオチド配列に少なくとも部分的に相補的である第1のRNA配列;
前記第1の配列とヘアピン構造を形成することが可能であり、前記ヘアピン構造は約23ヌクレオチド〜約100ヌクレオチドを含む第2のRNA配列であって、
前記第1の配列と少なくとも80%相補的であり、前記第1の配列と、19塩基対よりも少ない第1の二重鎖領域を形成することが可能である第1の領域;
前記第1の領域に結合する第2の領域;
前記第2の領域に結合する第3の領域;および
前記第3の領域に結合し、前記第2の領域と少なくとも80%相補的であり、前記第2の領域と第2の二重鎖領域を形成することが可能であり、その結果、前記第3の領域が前記第2の二重鎖領域に隣接するループを形成し、前記第1の二重鎖領域および前記第2の二重鎖領域の長さの合計が23塩基対未満である、第4の領域
を含む、第2のRNA配列;ならびに
任意に、約6ヌクレオチドより少ないRNA分子の5’または3’末端における突出
を含む、RNA分子。
【請求項20】
T字型RNA分子であって、標的ヌクレオチド配列に少なくとも部分的に相補的な第1のRNA配列、第2のRNA配列、および第3のRNA配列を含み、ここで、
前記第1の配列は、前記第2の配列の第1の領域に少なくとも80%相補的な約18ヌクレオチド〜約29ヌクレオチドを有する第1の領域を含み;
前記第1の配列は、前記第3の配列の第1の領域に少なくとも約90%相補的な約4ヌクレオチド〜約10ヌクレオチドを有する第2の領域をさらに含み;
前記第2の配列は、前記第1の配列の第1の領域に少なくとも約80%相補的である約18ヌクレオチド〜約29ヌクレオチドを有する第1の領域を含み;
前記第2の配列は、前記第3の配列の第2の領域に少なくとも約90%相補的である約4ヌクレオチド〜約10ヌクレオチドを有する第2の領域をさらに含み、前記第3の配列の第2の領域は前記第3の配列の第1の領域に対して3’で隣接し;および
任意に、約6ヌクレオチドより少ないRNA分子の5’または3’末端における突出
を含む、T字型RNA分子。
【請求項21】
配列番号1〜39のいずれか1つのRNA配列を含むRNA分子。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか1項に記載のRNAをコードする配列を含むDNA配列。
【請求項23】
請求項22に記載のDNA配列を含む発現ベクター。
【請求項24】
請求項22に記載のDNA配列を含むレトロウイルスベクター。
【請求項25】
請求項1〜21のいずれか1項に記載のRNA分子および薬学的に許容可能な賦形剤を含む組成物。
【請求項26】
請求項1〜21のいずれか1項に記載のRNA分子をコードする配列を含むベクターを含む組成物。
【請求項27】
遺伝子の発現または活性を阻害する方法であって、前記方法は、請求項1〜21のいずれか1項に記載のRNA分子と、遺伝子を発現する細胞を接触させることを包含し、ここで、第1のRNA配列は、前記遺伝子の少なくとも一部によってコードされる標的ヌクレオチド配列に少なくとも部分的に相補的である、方法。
【請求項28】
C型肝炎ウイルスの発現または活性を阻害する方法であって、前記方法は、請求項1〜20のいずれか1項に記載のRNA分子と、C型肝炎ウイルスを発現する細胞を接触させることを包含し、ここで、第1のRNA配列は、C型肝炎ウイルス配列と少なくとも部分的に相補的である、方法。
【請求項29】
C型肝炎ウイルスの発現または活性を阻害する方法であって、前記方法は、請求項21に記載のRNA分子と、C型肝炎ウイルスを発現する細胞を接触させることを包含する、方法。
【請求項30】
前記細胞が哺乳動物である、請求項27〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記哺乳動物がヒトである、請求項27〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記哺乳動物が非ヒト霊長類である、請求項27〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記RNA分子がIFN応答を誘導しない、請求項27〜29のいずれか1項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2012−505657(P2012−505657A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532222(P2011−532222)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/060712
【国際公開番号】WO2010/045384
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(511094266)ソマジェニックス インク. (1)
【氏名又は名称原語表記】SOMAGENICS INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/060712
【国際公開番号】WO2010/045384
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(511094266)ソマジェニックス インク. (1)
【氏名又は名称原語表記】SOMAGENICS INC.
【Fターム(参考)】
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