説明

遺伝子発現分析データの正規化のための参照遺伝子

本発明は、患者の血液試料からの遺伝子発現分析データの正規化のための参照遺伝子、プライマー、およびプローブに関する。本発明はさらに、参照遺伝子、プライマー、またはプローブを活用する遺伝子発現分析データの正規化のための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子、特に、遺伝子発現分析データの正規化(normalization)のための請求項1に記載される参照遺伝子のセット、参照遺伝子から導かれたPCRプライマー、特に、請求項2に記載されるPCRプライマーのセット、参照遺伝子から導かれたプローブ、特に、請求項3に記載されるプローブのセット、ならびに請求項4に記載される遺伝子発現分析の正規化のための方法に関する。
【0002】
多様な条件下でも最小限の発現の変化しか示さない遺伝子を、特に、血球から特定することが求められている。これらの所謂「ハウスキーパー」または「ハウスキーピング」遺伝子は、遺伝子発現、RNAおよびmRNAの定量において参照、内部対照、および参照値として利用される。これらの利用は、ノーザンブロッティング、リボヌクレアーゼ保護アッセイ、キャピラリー電気泳動、マイクロアレイ、および定量的リアルタイムPCRのような方法や、さらに転写物からの直接測定および事前増幅後の測定のための方法において行われる。
【0003】
以下においては、用語「ハウスキーパー」、「ハウスキーピング遺伝子」、および「発現制御遺伝子」は、用語「参照遺伝子」に包含されるものとする。この単純化は、本発明のいかなる制限をも意味するものではなく、判読の容易化のために行われるものである。
参照遺伝子を利用する定量データの正規化には、多数の応用の可能性がある。これらの参照遺伝子は、その活性が様々な病的状態において差次的に調節されている遺伝子の同定を可能にし、さらには、それに基づく診断の開発を可能にする。
参照遺伝子は、様々なRNA試料において発現および転写が最小限の変化を示す遺伝子であり、様々な試料の遺伝子活性測定の対照または参照として機能する。全ての組織の亘り不変の活性を示す遺伝子は存在しない。したがって、新しい参照遺伝子、特に血液の診断の為の参照遺伝子が、血液からの発現値が診断において使用されることから、強く求められている。
【0004】
種々の対照遺伝子が後記の文献[1]で公知であるが、全血試料または血球による遺伝子発現および転写の正規化のための参照遺伝子およびそれらの転写物、また、それらの併用は知られていない。血球の中や、全血中の臓器や末梢組織由来の細胞の中に一定濃度で存在する転写物(また、mRNAおよびmicroRNAならびにadditionalRNA)は、遺伝子活性の正規化のため、および他の遺伝子活性変化の決定のための前提条件であり、血液に基づく診断のための前提条件である。同様に、SIRSと敗血症の診断/予後診断のための遺伝子活性の測定についての多くの研究報告が既になされている(たとえば、文献[2]、[3])。しかし、血液由来の参照遺伝子を用いる遺伝子活性シグナルの使用と定量化については、これまで報告されていない。
【0005】
したがって、疾患特異的遺伝子または遺伝子クラスターの遺伝子発現の正規化および定量化を可能にするための、強く、安定性のある、血液および血球由来の参照遺伝子が求められている。
【0006】
本発明は、敗血症の典型である病理学的現象(文献[4]の定義による)が検出された個体の試料中の血球中に存在している様々な遺伝子の遺伝子活性が、敗血症と診断されていない個体の同じ遺伝子の遺伝子活性と異なることがないこと、そして、血球由来の遺伝子活性の正規化や血液由来の転写物の濃度の決定のために、参照遺伝子として組み合わせてまたは単独で使用できることの発見に基づくものである。これにより、他の遺伝子の活性の正規化と相対的な定量化が可能となり、診断、予後診断、治療、および検証に利用することができる。
【0007】
したがって、本発明は、医学的障害によってもたらされる遺伝子発現の変化の識別に対する基準点の提供、ひいては診断または治療検証の手段および方法を提供することを目的とする。
【0008】
この目的は、複数の参照遺伝子を通じて、特に、請求項1により特徴付けられる参照遺伝子セットにより達成される。
【0009】
本発明の目的はさらに、請求項1に記載される参照遺伝子セット由来のプライマー、特に請求項2に記載されるプライマーセット、ならびにプローブ、特に請求項3に記載されるプローブセットにより達成される。
【0010】
方法に関する本発明の目的は、請求項4に記載される特徴により達成される。
【0011】
本発明は、血液由来の新規の参照遺伝子の同定、適切なマイクロアレイプローブとPCRプライマーに関する。また本発明は、それらを、血液および血球からの定量的発現データの正規化のために、マイクロアレイ、リアルタイムPCRアッセイ、増幅や決定のための様々な視覚化のオプションを伴う他のシステムにおいて、使用あるいは併用に関するものである。更に、本発明は、医学的障害に対する全身反応(たとえば、SIRS、敗血症、臓器不全を伴う重症敗血症)により生じる様々な位置での局所的炎症の変化診断のためのそれらの利用に関するものである。
【0012】
これらの検討においては、遺伝子発現分析の正規化は極めて重要である。本発明の目的から、正規化とは以下のように理解されねばならない。
【0013】
「正規化」は、検出技術上避けられない変動幅(誤差)を小さくし、または、除去することによって、様々なアレイもしくはPCR、特に、RT−PCR実験の測定値を比較できるようにすると理解される。これらの実験には、測定値を歪めてしまう可能性がある原因が複数存在する。妨害の可能性のある技術的原因は、逆転写、標識、またはハイブリダイゼーション反応の効率が異なること、ならびに、アレイ、試薬のバッチ差(batch effect)、または実験室特有の条件に伴う問題が挙げられる。
【0014】
本発明の方法は、個体の血液試料中で、1つまたはいくつかの被験遺伝子の活性を識別することができる点で特徴的である。それは、SIRSと敗血症との参照遺伝子の遺伝子産物の量に対する被験遺伝子の遺伝子産物の存在と量を決定することにより行われる。
【0015】
この目的のための、血液および血球に由来する参照遺伝子と遺伝子配列、ならびにそれらから導かれたプライマーおよびプローブが開示される。これらは、遺伝子活性および転写物の決定、視覚化、正規化、および定量のために使用することができる。好ましい実施態様でのオリゴヌクレオチドプローブの配列が表1に示され、これらは、付属の配列プロトコールの配列番号1から配列番号7の1つに対応する。表2のプライマー配列は、付属の配列プロトコールの配列番号8から配列番号21の1つに対応する。オリゴヌクレオチドプローブの配列はまた他の配列とすることもでき、好ましい実施態様においては、50から100ヌクレオチドの長さを有しておりこれは、配列番号22から配列番号97の配列を有している表3−1及び表3−2に示される遺伝子の転写物に特異的に結合する。PCRのような増幅方法において使用される配列は、所望される酵素的操作および増幅をこれらがサポートする限りは、無作為な長さを有することができる。
【0016】
【表1】

【0017】
【表2】

【0018】
【表3−1】


【表3−2】

【0019】
表2のプライマーは、命名された遺伝子の所望される領域(配列)を含む増幅産物を作製するために使用することができる。通常の実施態様においては、生成物は150から200ヌクレオチドの長さを有する。
【0020】
参照遺伝子は単独またはいくつかの遺伝子と組み合わせて使用される。通常は、本明細書中に記載される参照遺伝子の活性は、マイクロアレイ用のハイブリダイゼーションプローブ、またはPCRプライマーとリアルタイムPCRを活用して決定することができる。但し、参照遺伝子とそれらの発現産物は、当業者に公知の他の方法による増幅の後に決めることも可能である。増幅の方法としては、例えば、NASBA (Nucleic Acid Sequence-Based Amplification)あるいはNASBAと他の種々の増幅法との組み合わせなどがある。これらはまた、モノクローナル抗体の活用等の多数の別の方法、または視覚化オプションを活用して、決定することもできる。プライマーおよびプローブは、遺伝子、発現産物(mRNA)、そしてmRNAまでには完全には処理されていない中間体発現産物について使用することができる。
【0021】
他の実施形態においては、プライマーおよびプローブは、本発明によって開示される参照遺伝子またはその転写物の特異的領域に結合する。しかし、プローブおよびプライマーは本発明によって開示される遺伝子配列またはそれらから転写された配列の任意の領域と相互作用することができる。プライマーおよびプローブは連続的な塩基対合によって相互作用することができるが、完全に相補的な配列との相互作用は必ずしも必要ではない。緩衝液の組成、塩濃度、洗浄工程、および温度は、適宜選択することができる。
【0022】
同様に、参照遺伝子と試験遺伝子のこれらの変化は、1つまたはいくつかの参照試料の発現値(または、たとえば平均値のようにそれらから導かれたデータ)と比較されるが、この参照試料は標的試料と同時には決定されるものではない。
【0023】
本発明の実施形態の1つは、1つまたはいくつかの試験核酸に対して発現値を比較するため、および試験核酸と比較した定量化のための参照遺伝子として表3−1及び表3−2に記載される参照遺伝子ならびに血液および血球由来のこれらの参照遺伝子の核酸および転写物を使用することにより発現値を決定することを特徴とする。
【0024】
本発明の他の実施形態は、表1に記載される配列を有している核酸およびDNAプローブ、ならびに、溶液中の、または表面もしくは粒子もしくはビーズ上に固定された、表3−1及び表3−2に記載される遺伝子の血液中または血球由来のRNA(マイクロRNAを含む)および転写物(RNAまたはmRNA)へのそれらの結合体を特徴とする。また本発明の実施形態は、これらの遺伝子の結合した転写物が、プローブに結合した1つまたはいくつかの試験核酸に対する核酸の結合量(発現値)の比較による正規化のために、そして結合した試験核酸と比較した定量化のために使用されることを特徴とする。
【0025】
本発明の他の実施形態は、参照遺伝子由来のRNA量と試験遺伝子由来のRNA量との関係を確立することよるSIRSと敗血症(いずれも文献[4]に対応)のエキソビボ、インビトロ(試験管レベル)での識別方法を特徴とし、以下の工程を含むものである。
a)血液試料から参照遺伝子RNAと試験遺伝子RNAを単離する工程。
b)参照遺伝子RNAと試験遺伝子RNAを検出マーカーでマーキングし、ハイブリダイゼーション条件下でDNAと接触させる工程。ここに、前記DNAは、参照遺伝子の転写物、増幅産物、もしくはインビトロ転写物に特異的に結合する遺伝子断片またはオリゴヌクレオチドである。
c)工程b)による参照遺伝子RNAと試験遺伝子RNAのマーキングシグナルを定量的に検出する工程。ならびに、
d)特定遺伝子または遺伝子断片が参照遺伝子のシグナルと比較してより強く発現されているか、またはより弱く発現されているかどうかの指示を出すためにマーキングシグナルの定量的データを比較する工程。
【0026】
本発明の別の実施形態は、参照遺伝子RNAが標的遺伝子RNAの測定前にDNAとハイブリダイズさせられ、対照RNA/DNA複合体のマーキングシグナルが検出され、必要な場合にはさらに変換され、検量線または表の形式で保存されることを特徴とする。
【0027】
本発明の別の実施形態は、参照遺伝子のRNAまたはその一部が、たとえば、ピロシーケンス(pyrosequencing)による配列決定または部分的な配列決定によって同定され、定量されることを特徴とする。
本発明の別の実施形態は、mRNAまたはマイクロRNAが参照遺伝子RNAとして使用されることを特徴とする。
【0028】
本発明の別の実施形態は、マイクロアレイの形態を有している支持体上の予め決定された領域の中での参照遺伝子RNAまたはそのインビトロ転写物の特異的結合のために、DNAが配置される、具体的には、固定されることを特徴とする。
【0029】
本発明の別の実施形態は、生物学的試料がヒトの試料であることを特徴とする。
【0030】
配列番号1から配列番号97を有しているこれらの配列は本発明の範囲に含まれ、それによる本発明の一部を構成する107の配列を含む付属の配列プロトコールの中に詳細に開示される。
【0031】
本発明の別の実施形態は、固定されたプローブまたは遊離のプローブが表1に対応する配列でマークされることを特徴とする。この実施形態については、自己相補的オリゴヌクレオチド、いわゆる分子ビーコンが、プローブとして使用される。それらの末端に、これらはフルオロフォア・消光剤対(fluorophore/quencher pair)を持っており、結果として、相補的配列が存在しない場合には、これらは折り畳まれたヘアピン構造で存在しており、対応する試料配列を伴う場合にのみ蛍光シグナルを提供する。分子ビーコンのヘアピン構造は、試料が特異的な捕捉(catcher)配列でハイブリダイズして立体構造の変化を生じ、それにより、レポーターの蛍光の放出を生じるまでは安定である。
【0032】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1から14の核酸プローブまたはそれらの相補物が、参照遺伝子の転写物、またはそれらの相補物の結合に使用されることを特徴とする。
【0033】
本発明の別の実施形態は、参照遺伝子の合成アナログまたは参照遺伝子の転写物に結合する合成オリゴヌクレオチドに、具体的に、およそ60の塩基対が含まれることを特徴とする。
【0034】
本発明の別の実施形態は、特許請求の範囲においてDNAとして列挙される遺伝子が、それらのRNA、合成アナログ、アプタマー、およびペプチド核酸に由来する配列によって置き換えられることを特徴とする。
【0035】
本発明の別の実施形態は、放射性マーカー、具体的には、32P、14C、125I、33P、または3Hが検出マーカーとして使用されることを特徴とする。
【0036】
本発明の別の実施形態は、非放射性マーカー、具体的には、色素または蛍光マーカー、酵素マーカー、または免疫マーカー、および/または量子ドット、あるいは、電気的測定が可能なシグナル、具体的には、ハイブリダイゼーションにおける電位および/または伝導率および/または容量の変化が検出マーカーとして使用されることを特徴とする。
【0037】
本発明の別の実施形態は、試料RNAと参照遺伝子RNAおよび/または酵素的もしくは化学的誘導体が同じマーキングを持つことを特徴とする。
【0038】
本発明の別の実施形態は、試験遺伝子RNAと参照遺伝子RNAおよび/または酵素的もしくは化学的誘導体が異なるマーキングを持つことを特徴とする。
【0039】
本発明の別の実施形態は、DNAプローブがガラスまたはプラスチック上に固定されることを特徴とする。
【0040】
本発明の別の実施形態は、1種類のDNA分子が支持体材料への共有結合により固定されることを特徴とする。
【0041】
本発明の別の実施形態は、1種類のDNA分子が、静電気相互作用および/または双極子−双極子相互作用および/または疎水性相互作用、ならびに/あるいは水素結合によって支持体材料に固定されることを特徴とする。
【0042】
本発明の別の実施形態は、敗血症アッセイにおける較正器としての使用方法がある。すなわち、組み換え配列の使用、あるいは、人工的に合成された特異的参照遺伝子核酸配列の使用やその部分的配列の単独使用または特定量での使用の際に、これらの使用を較正器として機能させることが可能である。これらの使用は、SIRSと敗血症の予防および処置のために、有効成分のスクリーニングにおける作用と毒性の評価、もしくは、治療薬の生成、治療薬として用いることを意図する物質または複数物質の混合物の生成に資する。
【0043】
当業者は、特許請求の範囲に示される本発明の各特徴が全く制限なく任意に組み合わせられ得ることを理解するであろう。
【0044】
本発明に含まれる参照遺伝子の意味は、任意の誘導されたDNA配列、部分的な配列、および合成アナログ(たとえば、ペプチド核酸、PNA)であると理解されるべきである。RNAレベルでの遺伝子発現の決定に関する本発明の記述は、限定的なものではなく、むしろ例示的な適用にすぎない。
【0045】
本発明に係る方法の応用例の一つとして、全血から取り出した、相互に異なる遺伝子発現に関する測定データの正規化がある。この正規化は、例えば、SIRSと敗血症との識別並びにそれらの重篤度(何れも参考文献[4]に対応する)の識別のためのものである。この目的のため、対象となる患者の全血から、さらには、健常な被験者または非感染患者の比較サンプルから、参照遺伝子のRNAを単離する。次いで、このRNAをマーキングする。このマーキングは、例えば、32Pを用いた放射性元素により、あるいは、着色用分子(蛍光分子)を用いて行われる。従来、この目的のために知られているあらゆる分子または検出シグナルをマーキング用分子として用いることができる。この目的のために使用される分子または方法は当業者には公知である。
【0046】
このようにマークされたRNAはその後、マイクロアレイ上に固定されたDNA分子とハイブリダイズさせられる。マイクロアレイ上に固定されたDNA分子は、SIRSと敗血症との識別における遺伝子発現データの正規化のための遺伝子の特異的選択を示す。
【0047】
次いで、ハイブリッド分子(混成分子)のシグナル強度が適当な測定装置(フォスホリメージャー(Phosporimager)、マイクロアレイスキャナーなど)を用いて測定され、さらに、ソフトウェアを内蔵した評価装置により解析される。測定されたシグナル強度に基づいて、患者のサンプルの試験遺伝子と参照遺伝子との間の発現比が求められる。過少に、または、過大に調整された遺伝子の発現比に基づいて、以下に述べるような実験において、SIRSと敗血症との識別に関する結論を引き出すことができる。
【0048】
遺伝子活性のもう一つの適用例は、これはマイクロアレイの分析及びこれに続いて行われる遺伝子表現データの正規化のための数量化を伴うものであるが、SIRSと敗血症との識別に対する適用例である。これは、診断目的(例えば、炎症を局地的に抑え、特に感染を伴う固体の免疫応答の重篤度(severity of affliction)を測定するため、あるいは、患者のデータ管理システムまたは専門家用システムのフレームワークにおいて)あるいは細胞シグナルの伝達経路のモデル化を行うためのソフトウェアを作成するための電子的処理に有用である。
【0049】
以下は、本特許出願の目的のためのマイクロアレイの評価の実施態様にあたる。
【0050】
「マイクロアレイ実験の説明」
(ブラズマ Aら、ミニマムインフォーメーションアバウトアマイクロアレイエクスペリメント(MIAME)−トワードスタンダーズフォーマイクロアレイデータ,ネイチャー ジェネテックス29,365−371(2000)(New edition January 2005, based on Brazma A et al., Minimum information about a microarray experiment (MIAME)−toward standards for microarray data, Nature Genetics 29, 365 - 371 (2001)) Minimum Information About a Microarray Experiment(MIMAE)文献[17]に基づく2005年1月の新版であるミニマムインフォーメーションアバウトアマイクロアレイエクスペリメント[MIAME]のチェックリストにしたがう。これらの内容は全体が引用により本明細書中に組み入れられる)
【0051】
(スライドの読み取り/スキャナ技術の詳細)
a)スキャナ:GenePix4000B共焦点落射式蛍光スキャナ(Axon Instruments)
b)スキャニングソフトウェア:GenePix Pro4.0
c)スキャニングパラメーター:レーザー出力:Cy3チャンネル−100%
Cy5チャンネル−100%
PMT電圧: Cy3チャンネル−700V
Cy5チャンネル−800V
d)空間分析能(画素空間)−10μm
【0052】
(データの読み取りと処理)
実験の構成においては、1000を超える患者の血液試料をハイブリダイズさせた。個々のRNA対(患者対比較用RNA)をマイクロアレイ上で同時にハイブリダイズさせた。患者のRNAを赤色蛍光色素でマークし、比較用RNAを緑色蛍光色素でマークした。ハイブリダイズしたアレイのデジタル画像を、Axon機器によってGenePix Pro 4.0または5.0ソフトウェアを用いて評価した。スポットの検出、シグナルの定量、およびスポットの質の評価のためには、GenePix(登録商標)分析ソフトウェアを使用した。スポットをGenePix(登録商標)ソフトウェアの設定にしたがって、100=「良好」、0=「見られる」、−50=「見られない」、−75=「存在しない」、−100=「不良」と記した。生のデータは、対応する *gprファイルに保存した。
【0053】
(正規化、変換、およびデータ選択方法)
e)シグナルデータの変換と正規化
生データの正規化および偏差安定化変換のために、ヒューバーら文献[5]の方法を使用した。ここでは、加算的および乗算的エラーがブロックごとに予測される。全てのスポットのうちの約75%がこのために利用される。その後、シグナルは、arsinh関数によって変換される。(したがって、変換された±0.4の比は、1.5倍の変化にほぼ対応する(大きな数については、arsinh(x)はLn(2x)とほぼ同じである)。
【0054】
ロック DM、ダービン Bの遺伝子発現アレイについての測定誤差のモデル、J Comput Biol.;2001,8(6):557−69(文献[18])では、発現レベルの関数として遺伝子発現アレイの測定誤差を予測するためのモデルが開発された。その内容は引用により本明細書中に完全に組み入れられる。さらなる分析方法、データ変換と重み付け(weighting)とを組み合わせたこの誤差モデルにより、すでに、遺伝子発現データのより正確な比較が可能であり、バックグラウンド分析のための指針、信頼区間の決定、およびさらなる処理または分析のためのそれらの多変量についての分析データの処理が、それぞれ提供される。
【0055】
ロックおよびダービンの文献[18]による上記誤差モデルに基づいて、フーバー W、ハイドブレック A、およびシュルツマン Hの、マイクロアレイデータの較正、および差次的発現の定量に適応された偏差安定化、バイオインフォーマテックス、2002;18(文献[19]),補遣1:96−104頁は、マイクロアレイ遺伝子発現データについての統計学的モデルを開発した。その内容は引用により本明細書中に完全に組み入れられる。このモデルには、データの較正、異なる発現デレベルの定量、ならびに測定誤差の定量が含まれる。これに関して、フーバーらの文献[19]ではシグナル強度の測定と異なる統計値についてのデータ変換を導き、これにより、逆関数arsinhを使用することによるその強度範囲全体にわたってシグナルデータのセットの偏差安定化と正規化がもたらされる。この方法は、マイクロアレイ遺伝子発現データについて具体的に明らかにされているが、本発明の構成における遺伝子発現の測定のための他の方法に置き換えることもできる。
【0056】
これにより、シグナルの評価において頻繁に観察されるシグナル強度に対する偏差の依存性は、逆関数を用い上記変換により補正される。
【0057】
f)フィルトレーション(filtration)
マイクロアレイ上での技術の複製(同じ試料の複数のスポット)が、それらのスポットの質に応じて修正され変換されたシグナル強度から除外される(filtered out)。個々のスポットについて最も高い特徴を有している複製が選択され、関連するシグナル強度が平均される。測定不可能な複製しか有していないスポットの発現は「NA」(該当なし)と記載される。
【0058】
本発明の方法の別の応用は、差次的遺伝子発現の測定にある。本発明は、患者が計画された治療に対応する可能性を治療と同時に決定するため、また、特定の治療に対する対応の決定のため、また、SIRSと敗血症の患者とその重篤度について「薬物モニタリング」の意味での治療終了の特定のために応用される。この目的のためは、任意の時間間隔で回収された患者の血液試料からRNA(試験RNAと対照RNA)が単離される。様々なRNA試料が一緒にマークされ、選択された試験遺伝子やマイクロアレイ上に固定された参照遺伝子とハイブリダイズさせられる。1つまたはいくつかの参照遺伝子と、たとえばTNFαのような試験遺伝子との間での発現比から、患者が計画された治療に対応するであろう可能性、開始された治療が有効であるかどうか、また、どれほど長い間患者が対応して治療されるか、そして、使用された用量および期間によってすでに最大治療効果に達しているかどうかを評価することができる。
【0059】
本発明の方法の別の応用は、ハイブリダイゼーションには依存しない方法、具体的には、酵素的または化学的加水分解、表面プラズモン共鳴法(SPR法)、その後の核酸ならびに/あるいはこれらの誘導体および/または断片の定量を通じて定量的情報を得るための、本発明の遺伝子のRNAの使用にある。
【0060】
PCR(そしてまた、NASBAのような付加的増幅方法)により増幅させられ、定量された参照遺伝子の転写物は、SIRSと敗血症、およびそれらの重篤度の識別における遺伝子発現データの正規化のための、本発明の別の実施形態を構成する。増幅された転写物のシグナル強度が、その後、適切な測定装置(PCR蛍光検出器)によって測定され、ソフトウェアによって支援される評価を活用して分析される。測定されたシグナル強度から、患者試料の試験遺伝子と参照遺伝子との間の発現比が決定される。過小に、または、過大に調整された遺伝子の発現比に基づいて、以下に述べるような実験において、SIRSと敗血症、およびそれらの重篤度を識別するための結論を引き出すことができる。
【0061】
本発明に係る方法のもう一つの適用例は遺伝子活動性の使用方法にある。この使用方法は、PCRまたはその他の増幅方法とこれに続いて行われる遺伝子表現データの正規化のための定量化とを伴い、SIRSと敗血症及びそれらの重篤度の識別を求めるためのものであり、診断目的(例えば、炎症の中心を見つけ、特に細菌感染を伴う固体の免疫応答の重篤度を測定するため、あるいは、患者のデータ管理システムまたは専門家用システムのフレームワークにおいて)あるいは細胞シグナルの伝達経路のモデル化を行うためのソフトウェアを作成するための電子的処理に有用である。
【0062】
本発明の方法の別の応用は、試料中のmRNA量の決定にある。即ち、a)核酸の単離、b)配列番号22から配列番号97より選択された1つまたはいくつかの核酸の発現値の測定、c)mRNAの全量中の核酸の公知の割合値に対する、選択された核酸の発現値の比較、d)mRNAの全量に対する、配列番号22から配列番号97より選択される1つまたはいくつかの核酸の発現値の外挿、およびd)試料中のmRNAの全量の決定を含むものである。
【0063】
本発明の方法の別の応用は、いくつかの試料中の、所定の場合には増幅させられた、mRNA量の正規化にある。即ち、a)様々な試料の間での配列番号22から配列番号97より選択される1つまたはいくつかの核酸の発現値の比較、b)いくつかの試料の間での配列番号22から配列番号97より選択される1つまたはいくつかの核酸の発現値の正規化のための値を導くこと、およびc)工程b)に基づく、いくつかの試料から単離された他の核酸の発現の正規化を含むものである。
【0064】
本発明はさらに、参照遺伝子として使用される、患者試料中の遺伝子発現プロフィールのインビトロ(試験管レベル)での決定のための、少なくとも1から100、好ましい実施形態においては1から5および1から10ヌクレオチドを含む、配列番号22から配列番号97に記載される配列、および/またはそれらの遺伝子断片の選択を含むキットに関係する。
【0065】
本発明はさらに、参照遺伝子として使用される、患者試料中の遺伝子発現プロフィールのインビトロ(試験管レベル)での決定のための、少なくとも50ヌクレオチドを含む、配列番号1から配列番号7に記載されるハイブリダイゼーションプローブ、および/またはそれらの遺伝子断片の選択を含むキットに関係するものである。
【0066】
本発明は同様に、参照遺伝子として使用される、患者試料中の遺伝子発現プロフィールのインビトロ(試験管レベル)での決定のための、少なくとも15ヌクレオチドを含む、配列番号8から配列番号21に記載されるプライマープローブ、および/またはそれらの遺伝子断片の選択を含むキットに関係する。
【0067】
また、本発明は、その最も広く最も一般的な構成において、以下の実施形態に関するものである。
【0068】
A)患者の血液試料からの遺伝子発現分析データの正規化のための少なくとも1つの参照遺伝子。ここで、上記参照遺伝子は以下のRNA配列より選択される:配列番号22から配列番号97、特に、配列番号87、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号93、配列番号95、および配列番号96。
【0069】
B)患者の血液試料からの、核酸の増幅に基づく遺伝子発現分析データの正規化のためにA)に記載された参照遺伝子から導かれた少なくとも1つのプライマー。ここで、上記プライマーは以下のDNA配列より選択される:配列番号8から配列番号21。
【0070】
C)患者の血液試料からの遺伝子発現分析データの正規化のための、B)に記載された参照遺伝子から導かれた、少なくとも1つのプローブ。ここで、上記プローブセットには以下のDNA配列が含まれる:配列番号1から配列番号7、ならびにそれらの相補的核酸配列。
【0071】
D)A)に記載された参照遺伝子、またはB)に記載されたプライマーセット、またはC)に記載されたプローブセットより選択される少なくとも1つの対照核酸を活用する遺伝子発現分析データの正規化のための方法。この方法は、以下の工程を含む。
a)少なくとも1回の遺伝子発現分析アッセイが患者の血液試料についてインビトロ(試験管レベル)で行われる工程。
b)少なくとも1つの対照核酸が、試験される試料(被験試料)の遺伝子発現分析データの正規化のための基準として同じアッセイにおいて一緒に試験される工程。
c)遺伝子発現分析により、複数の遺伝子、および少なくとも1つの対照核酸の遺伝子発現の程度を反映するシグナルが検出される工程。
d)工程c)で得られたシグナルデータを、シグナルデータの検出技術上不可避の変動幅を少なくとも小さくするために、数学的に変換される工程。そしてそれにより、
e)被験試料のシグナルデータが正規化される工程。
【0072】
E)D)に記載された方法の好ましい実施形態は以下の通りである。
シグナルデータの数学的変換がarsinhにより、または対数的アプローチにより行われるD)に記載の方法。
ならびに/あるいは
遺伝子発現アッセイが、以下から選択されるD)に記載の方法。
f)血液試料からの核酸の単離;
g)必要に応じて行われる、対照核酸のセットと試験される核酸のセットの同時増幅;および
h)プローブのハイブリダイゼーション;
ならびに/あるいは
核酸にはmRNAとマイクロRNAが含まれるD)に記載の方法。
ならびに/あるいは
核酸が、PCR、リアルタイムPCR、NASBA、TMA、またはSDAによって増幅されるD)に記載の方法。
ならびに/あるいは
対照核酸と試験核酸の発現値が、ハイブリダイゼーション方法によって決定されるD)に記載の方法。
ならびに/あるいは
対照核酸および/または試験核酸の発現値の測定が、溶液中、または支持体上に固定された核酸上で行われるD)に記載の方法。
ならびに/あるいは
支持体が、マイクロアレイ、粒子、ビーズ、硝子、金属、または膜であるD)に記載の方法。
ならびに/あるいは
対照核酸および/または試験核酸が、抗体、抗原、オリゴヌクレオチド、分子ビーコン、または酵素のような他の結合パートナーを介して支持体に間接的に結合させられるD)に記載の方法。
ならびに/あるいは
患者の試料からインビトロ(試験管レベル)で決定された対照核酸と試験核酸の発現値が、患者の個体の予後診断の説明、診断目的、治療の決定、および/または患者データの管理システムのためのソフトウェアの開発のための入力パラメーターとして利用されるD)に記載の方法。
【0073】
F)全身的免疫反応を含む障害の診断のための遺伝子発現分析方法の正規化を行うための、A)に記載された参照遺伝子、またはB)に記載されたプライマー、またはC)に記載されたプローブから選択される少なくとも1つの対照核酸の使用。
【0074】
G)F)に記載された対照核酸使用の好ましい実施形態は以下の通りである。
上記障害が敗血症、重症敗血症、敗血症ショック、または多臓器不全からなる群より選択される、F)に記載された対照核酸の使用。
ならびに/あるいは
以下の工程を含む、対照核酸のセットと、その発現がSIRSまたは敗血症に特異的である試験核酸のセットを使用することにより、個体のSIRS、敗血症、重症敗血症、敗血症ショック、または多臓器不全のインビトロ(試験管レベル)での診断のための方法。
a)個体の試料からの対照核酸と試験核酸の同時単離
b)必要に応じ、対照核酸と試験核酸の増幅
c)対照核酸と試験核酸の発現値の決定
d)対照核酸の発現値に基づく試験核酸の遺伝子発現の正規化
e)正規化された試験核酸の発現値が、SIRS、敗血症、重症敗血症、敗血症ショック、または多臓器不全についての特有な値に達しているかどうかの決定
【0075】
以下もまた、本発明の構成におけるデータ変換/正規化に基本的に適用される。
【0076】
第一の変形例(1st Variant)(PCR実験または診断用小アレイにおける正規化に使用されるもの)
参照遺伝子のシグナルが集められ、次いで、集められた参照遺伝子のシグナルに対する試験遺伝子のシグナルの比率が計算される。シグナルが対数化されている場合には、この比率はSIRSと敗血症との差異を示す。
【0077】
第二の変形例(2nd Variant)(フーバー等の参照文献[19]における「全ゲノム」式アプローチまたは大アレイ)
参照遺伝子のシグナルを用いて、適切な変換のパラメーターあるいは変換それ自体が予測される。この変換は、その後、試験遺伝子に適用される。
【実施例】
【0078】
本発明のさらなる利点と特徴は、実施例の記載から明らかとなろう。
【0079】
[実施例1]
「血液からおよび血球からの参照遺伝子の同定」
遺伝子発現の測定:
372人の集中治療室にいる患者(ITU患者)の遺伝子発現を測定した。患者は全て、集中治療による医学的治療中(under intensive−care medical treatment)であった。最長7日間のITU日数をそれぞれの患者について検討した。7日間よりも長いITU日数があった患者については、7日間を無作為に選択した。全部で1261のマイクロアレイ実験のデータを分析に入力した。
患者の選択した特徴を表4および5に示す。年齢、性別、およびACCP/SCCMカテゴリーに関する情報が提供される。細胞株SIG−M5由来の全RNAを参照試料とした。患者試料を全て、1つの個々のマイクロアレイ上の参照試料とそれぞれ同時にハイブリダイズさせた。表4に患者の一般的データを、表5に被験者の適応症を夫々示した。
【0080】
【表4】

【0081】
【表5】

【0082】
実験の説明:
(血液の採取とRNAの単離)
患者の全血を、製造業者(Qiagen)の説明書にしたがってPAXGeneキット(PAXGene Kit)を利用して集中治療室にいる患者から採取した。全血の採取後、試料の全RNAを、製造業者(Qiagen)の説明書にしたがってPAXGene血液RNAキット(PAXGene Blood RNA Kit)を使用することによって単離した。
【0083】
(細胞培養)
細胞培養(対照試料)には、19の細胞冷凍保存(SIGM5)(液体窒素の中で凍結させた)を利用した。細胞をそれぞれ、20%のウシ胎児血清(FCS)を補充した2mlのイスコヴ培地(Iscove’s Medium)(バイオクロムAG(Biochrom AG))に接種した。その後、細胞培養物を12ウェルプレートの中で、5%CO2、37℃で24時間インキュベートした。その後、18個のウェルの内容物をそれぞれ同じ容量を有している2つに分け、結果として、最終的には同じ形式の3つのプレート(全部で36ウェル)を利用した。その後、培養を、同じ条件下で24時間続けた。
この後、それぞれのプレートの11個のウェルの得られた培養物を1つにし、遠心分離した(1000×g、5分間、室温)。上清を廃棄し、細胞ペレットを40mlの上記培地中に溶解させた。これらの40mlの溶解させた細胞を、2つの250mlの試験管に等しく分け、48時間インキュベーション、および5mlの上記培地の添加後にもう一度インキュベートした。残りの2つのプレートの残っている2mlのうち、80μlを、1mlの上記培地を用いてあらかじめ準備しておいた同じプレートの空のウェルに入れた。48時間のインキュベーションの後、12ウェルプレートを1つだけ、以下のように処理した。
それぞれのウェルから500μlを取り出し、1つにした。得られた6mlを、およそ10mlの新しい培地を含む250mlの試験管に入れた。この混合物を、室温で5分間、1000×gで遠心分離し、10mlの上記培地の中に溶解させた。その後の細胞の計数により以下の結果が得られた:1.5×107細胞/ml、10mlの全量、細胞の総数:1.5×108。細胞数がまだ十分ではなかったので、2.5mlの上記細胞懸濁液を、250ml(75cm2)の試験管(全部で4つの試験管)中の30mlの上記培地の中に入れた。
72時間のインキュベーションの後、それぞれ20mlの新しい培地を試験管に入れた。24時間のインキュベーション後、細胞の計数を上記にしたがって行い、3.8×108細胞の全細胞数を得た。2×106細胞の所望される細胞数を得るために、細胞を、4つの試験管の中の47.5mlの上記培地に再懸濁した。24時間のインキュベーション期間の後に細胞を遠心分離し、Ca2+もMg2+も含まないリン酸緩衝液(バイオクロムAG)で2回洗浄した。
【0084】
全RNAの単離は、説明書にしたがってヌクレオスピンRNA Lキット(NucleoSpin RNA L Kit)(マシェリーアンドナゲル(Machery & Nagel))によって行った。上記手順を、必要な細胞数が得られるまで繰り返した。これは、108細胞あたり600μgのRNAの効率にほぼ相当する、6mgの全RNAの必要量を得るために不可欠であった。
【0085】
(逆転写/マーキング/ハイブリダイゼーション)
全血の採取後、試料の全RNAを単離し、説明書にしたがってPAXGene血液RNAキット(PAXGene Blood RNA Kit)(プレアナリティX(PreAnalytiX))を使用することによってその性質を試験した。それぞれの試料から10μgの全RNAをアリコートし、参照RNAとしてのSIGM5細胞由来の10μgの全RNAとともに、逆転写酵素スーパースクリプトII(Reverse Transcriptase Superscript II(インビトロジェン(Invitrogen))を用いて相補的DNA(cDNA)に作り直し、その後、RNAをアルカリ加水分解によってバッチ(回分)から除去した。反応バッチの中で、dTTPの部分を、あとでcDNAに対して蛍光色素を結合させることができるように、アミノアリル−dUTP(AA−dUTP)で置き換えた。
【0086】
反応バッチの精製後、試料のcDNAと対照のcDNAを蛍光色素Alexa 647およびAlexa 555で共有結合によってマークし、SIRS−Lab社のマイクロアレイ上にハイブリダイズさせた。使用したマイクロアレイ上には、それぞれが1つのヒト遺伝子と、品質保証のための対照スポットを提示する55から70塩基対の長さを有している5308種類のポリヌクレオチドが固定されている。1つのマイクロアレイを、15×15スポットのラスターを有している28のサブアレイに分けた。
【0087】
ハイブリダイゼーションとその後の洗浄および乾燥は、それぞれ、説明書にしたがって、42℃で10.5時間以内に、ハイブリダイゼーションステーションHS400(テカン(Tecan))の中で行った。使用したハイブリダイゼーション溶液は、個々のマークされたcDNA試料、3.5×SSC(1×SSCは150mMの塩化ナトリウムと15mMのクエン酸ナトリウムを含む)、0.3%のドデシル硫酸ナトリウム(V/V)、25%のホルムアミド(V/V)、および0.8μg・μl-1cot-1のDNA、酵母tRNA、そして各ポリ−A RNAから構成されている。続いて、マイクロアレイの洗浄を以下の手順にて室温で行った:洗浄緩衝液1(2×SSC、0.03%のドデシル硫酸ナトリウム)、洗浄緩衝液2(1×SSC)、最後に洗浄緩衝液3(0.2×SSC)でそれぞれ90秒間のすすぎ。次いで、マイクロアレイを、30℃で150秒間、2.5barの圧力の窒素フロー下で乾燥させた。
【0088】
ハイブリダイゼーション後、マイクロアレイのハイブリダイゼーションシグナルを、GenePix 4000Bスキャナ(アキソン(Axon))を利用して読み取り、差次的に発現された遺伝子の発現比を、ソフトウェアGenePix Pro 4.0(アキソン)を利用して決定した。
【0089】
評価:
評価のために、スポットの平均強度を、関連するスポット画素の中央値として決定した。
【0090】
遺伝子試料の事前選択:
遺伝子プローブの最初の事前選択のために、システム誤差の補正を、フーバーら文献[5]のアプローチにしたがって行った。マイクロアレイの中での加算的および乗算的バイアスを、存在する遺伝子試料の75%から推定した。
【0091】
続いて、患者試料のシグナルの正規化された比と変換された比を、一般的な対照に対して計算した。すなわち、k番目アレイのj番目遺伝子についての計算により以下の値が得られた。
j、k=arsinh(Scy5(j,k))−arsinh(Scy3(j,k))
式中、[Scy3(j,k)、Scy5(j,k)]は、関連する蛍光シグナルの対を示す。全ての遺伝子プローブについて、中央値からの絶対偏差の中央値(MAD)、すなわち、MAD(Gj、1、...、Gj、1261)を続いて計算し、最も低いMADを有している10%の遺伝子プローブを選択した。事前選択の第2の基準として、平均シグナル強度arsinh(Scy5(j,k))+arsinh(Scy3(j,k))を使用した。さらなる分析においては、いわゆるダイナミックシグナルレンジの中、好ましくは(対数目盛で)6と8の間に平均シグナル強度の中央値を有している遺伝子プローブだけを、考慮に入れた。
【0092】
参照遺伝子の選択:
前もって選択した遺伝子プローブについて、相対的な量を最も高い発現値を1に設定することによって計算した。続いて、ヴァンデソンペールら文献[6]の遺伝子安定性の測定値Mを計算した。ヴァンデソンペールらに記載されたものと同じ段階的手順(ここでは、最も低い安定性を有している遺伝子がそれぞれの工程において除外される)により、遺伝子プローブをそれらの安定性にしたがって並べた。遺伝子プローブの選択のための上限値は、安定性の測定値Mの平均値についての(おおよその)値0.6に基づいた(表6−1、表6−2参照)。
【0093】
ヴァンデソンペールらに従う遺伝子安定性の測定値Mの数学的定義は以下のとおりである。
2つの内部参照遺伝子jとkのそれぞれの組み合わせについて、要素mのアレイAjkが提供され、これは、log2に変換された発現比aij/ajkからなる(方程式1)。参照遺伝子jとkについての対となる変分Vjkは、要素Ajkの標準偏差としてさらに定義され(方程式2)、SDは標準偏差である。次いで、参照遺伝子jについての遺伝子安定性の測定値Mjは、全ての対となる変分Vjkの算術平均である(方程式3):
(それぞれのj、kについて、[1,n]とj k):

【数1】


【数2】


【数3】

【0094】
クラスターを、付属の配列プロトコールの一部である配列番号22から配列番号97に対応する不変の遺伝子活性を有している76個の特異的配列について決定した。表6−1、表6−2に決定した参照遺伝子(RNA塩基)とそれらの安定性値を示す。
【0095】
【表6−1】

【表6−2】

【0096】
[実施例2]
「敗血症患者と敗血症に罹患していない患者の遺伝子発現試験による参照遺伝子の安定性の試験」
本実施例において、本発明者らは、第1の実施例において決定した参照遺伝子がまた、集中治療を受けている敗血症患者および敗血症に罹患していない患者の場合にも安定であることを示す。この目的のために、本発明者らは、118人の患者のマイクロアレイデータを検討した。全部で394日ののべ入院日数(マイクロアレイ)を分析し、1人の患者について最長7日間を考慮に入れた。表7に患者の一般的データ、表8にACCP/SCCMカテゴリーによるのべ入院日数の分類ならびに付加的な診断パラメーターを夫々示す。
【0097】
【表7】

【0098】
【表8】

【0099】
SIRS患者と敗血症患者の比較による参照遺伝子の適用性を明らかにするために、以下の試験遺伝子を選択した。表9にSIRS患者と敗血症患者の比較のための試験遺伝子を示す。
【0100】
【表9】

【0101】
これらの試験遺伝子は、敗血症と関連して科学学術文献に記載されている。
【0102】
統計分析のために、6人の重症SIRS患者(SIRS+臓器不全)と、9人の重症敗血症患者(敗血症+臓器不全)を選択した。表10に、SIRS患者と敗血症患者についての選択した特性を示す。
【0103】
【表10】

【0104】
10個の試験遺伝子の正規化を、以下の5個の無作為に選択した参照遺伝子によって行った。ヴァンデソンペールら文献[6]の方法を使用した。表11に、選択した参照遺伝子(セット1)を示す。
【0105】
【表11】

【0106】
2つの試料のt検定による比較によって以下の結果を得た。表12に、参照遺伝子セット1を用いて正規化した試験遺伝子活性を示す。
【0107】
【表12】

【0108】
結果の再現性を明らかにするために、統計比較を、再び無作為に選択した参照遺伝子(セット2)を用いて繰り返した。表13に、参照遺伝子(セット2)を示す。
【0109】
【表13】

【0110】
ヴァンデソンペールらの方法による正規化の後、本発明者らは、2つの試料のt検定について以下の結果を得た。表14に、参照遺伝子のセット2を用いて正規化した試験遺伝子の遺伝子活性を示す。
【0111】
【表14】

【0112】
結果は、結果の極めて優れた再現性を示している。いずれの比較においても、それぞれ5%または10%のレベルで同じマーカーが有意であった。
【0113】
[実施例3]
リアルタイムPCRによるそれらの特異的プライマーを通じた選択した参照遺伝子の安定性値の決定
【0114】
(RNAの単離)
RNAを、説明書にしたがってPAXgeneキット(プレアナリティX)を活用して全血から単離した。
【0115】
(定量的逆転写酵素−PCR(Quantitative Reverse Transcriptase−PCR)(RT−PCR))
逆転写により、mRNAをその配列とは無関係なオリゴdTプライマーを利用してcDNAに作り直した。使用したmRNAに対する相補性のプロセスにおいて形成されたcDNA鎖を、続いて、様々なPCR反応の鋳型として使用した。
a)バッチについては、次の成分をまとめてピペットで採取した。
− 5μgの濃縮したRNA
− 10μlのH2
− 1μlのdNTP(dGTP、dATP、dCTP、dTTP)
− 1μlのオリゴdT(0.5μg/μl)
b)70℃で5分間、その後、氷上で5分間処理した。
c)次の混合物をその後添加した。
− 4μlのRT緩衝液
− 2μlの0.1M DTT
− 1μlのRNaseアウト(RNase阻害剤)
− 1μlのスーパースクリプト(SuperScript)逆転写酵素
d)42℃で1時間インキュベートした。
e)70℃で15分間インキュベートした。
【0116】
(ポリメラーゼ連鎖反応)
選択したDNA部分を、PCRを活用して増幅させ、その後に定量し参照遺伝子の遺伝子発現の強度を決定した。
PCRには、インビトロジェンによるアッキュプライムタックDNAポリメラーゼシステム(AccuPrime Taq DNA Polymerase System)を使用した。
【0117】
25μlのバッチについて、次の成分を200μlのチューブにまとめてピペット採取した:
2.5μlの10×アキュプライムPCR緩衝液I(AccPrime PCR buffer I)
20μlのRNaseを含まないH2
1μlの1:10希釈された鋳型DNA(およそ0.82ng/μl)
1μlのプライマー混合物(表2に対応する、それぞれ0.5μlの正方向プライマー/逆方向プライマー)
0.5μlのアキュプライムタックDNAポリメラーゼ(AccuPrime Taq DNA polymerase)。
次いで、以下のプログラムを、リアルタイムPCRサーモサイクラー(コルベットリサーチ(corbett research)RG3000)の中で行った。
94℃ 2分間
94℃ 30秒間
58℃ 30秒間 30サイクル
68℃ 1分間
68℃ 2分間
最初に、鋳型DNAを94℃で完全に変性させ、酵素を活性化させた。この後、94℃での変性、58℃でのアニーリング、そして68℃での伸長からなる増幅を30サイクル行った。PCR後、試料を、断片の大きさによって生成物の正確性を試験するために、1.5%のアガロースゲル上に移した。表15に、特異的プライマーとリアルタイムPCRによって決定した選択された参照遺伝子(RNA塩基)の安定性値を示す。
【0118】
【表15】

【0119】
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[19]フーバー W,ハイドブレック A,シュルツマン H,バリアンススタビライゼーションアプライドトゥマイクロアレイデータキャリブレーションアンドトゥクアンティフィケーションオブディファレンシャルエクスプレッション,バイオインフォーマテックス.2002;18 補遣1:S96−104(Huber W, Heydebreck A, Sueltmann H, Variance stabilization applied to microarray data calibration and to the quantification of differential expression., Bioinformatics. 2002;18 Suppl 1:S96-104)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血液試料から採取した遺伝子発現分析データの正規化のための参照遺伝子セットであって、前記参照遺伝子セットが配列番号87、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号93、配列番号95、および配列番号96のRNA配列を含むことを特徴とする参照遺伝子セット。
【請求項2】
患者の血液試料から採取した、核酸の増幅に基づく遺伝子発現分析データの正規化のために用いられる、請求項1に記載の参照遺伝子セットに由来するプライマーセットであって、前記プライマーセットが、配列番号8から配列番号21のDNA配列を含むことを特徴とするプライマーセット。
【請求項3】
患者の血液試料から採取した遺伝子発現分析データの正規化のために用いられる、請求項1に記載の参照遺伝子セットに由来するプローブセットであって、前記プローブセットが配列番号1から配列番号7、ならびにそれらの相補的核酸配列のDNA配列を含むことを特徴とするプローブセット。
【請求項4】
請求項1に記載の参照遺伝子セット、請求項2に記載のプライマーセット、または請求項3に記載のプローブセットから選択された対照核酸セットを用いる遺伝子発現分析データの正規化のための方法であって、前記方法が下記a)からe)の工程を含むことを特徴とする遺伝子発現分析データの正規化のための方法。
a)少なくとも1回の遺伝子発現分析アッセイを、患者の血液試料についてインビトロで行う工程
b)対照核酸の1つのセットを、被験試料の遺伝子発現分析データの正規化のための基準として、同じアッセイにおいて一緒に試験する工程
c)遺伝子発現分析の結果として得られたシグナルであって、複数の遺伝子および前記対照核酸のセットの遺伝子発現の程度を反映するシグナルを検出する工程
d)工程c)で得られたシグナルデータを、シグナルデータの検出技術上不可避の変動幅を少なくとも小さくするために、数学的に変換する工程、そして
e)それにより、被験試料の数学的に変換されたシグナルデータを正規化する工程
【請求項5】
シグナルデータの数学的変換が、逆関数arsinhにより、または対数的アプローチにより行われることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
遺伝子発現アッセイが、以下から選択されることを特徴とする請求項4または5に記載の方法。
a)血液試料からの核酸の単離
b)必要に応じて行われる、対照核酸のセットと試験される核酸との同時増幅、および
c)プローブのハイブリダイゼーション
【請求項7】
前記核酸にmRNAまたはマイクロRNAが含まれることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記核酸が、PCR、リアルタイムPCR、NASBA、TMA、またはSDAによって増幅されることを特徴とする請求項4から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記対照核酸の発現値と試験核酸の発現値が、ハイブリダイゼーション方法によって決定されることを特徴とする請求項6から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記対照核酸および/または前記試験核酸の発現値の測定が、溶液中、または支持体上に固定された核酸上で行われることを特徴とする請求項4から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記支持体が、マイクロアレイ、粒子、ビーズ、硝子、金属、または膜であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記対照核酸および/または前記試験核酸が、抗体、抗原、オリゴヌクレオチド、分子ビーコン、または酵素のような他の結合パートナーを介して支持体に間接的に結合させられることを特徴とする請求項4から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
患者の試料からインビトロで決定された前記対照核酸と前記試験核酸の発現値が、患者の個体の予後診断の説明、診断目的、治療の決定のためのソフトウェアの開発、および/または患者データの管理システムの入力パラメーターとして利用されることを特徴とする請求項4から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
全身的免疫反応を含む障害の診断のための遺伝子発現分析方法の正規化を行うための、請求項1に記載の参照遺伝子セット、請求項2に記載のプライマーセット、または請求項3に記載プローブのセットから選択される対照核酸セットの使用。
【請求項15】
前記障害が敗血症、重症敗血症、敗血症ショック、または多臓器不全からなる群より選択される、請求項14に記載の対照核酸セットの使用。
【請求項16】
次の工程を含む、対照核酸のセットと、SIRSまたは敗血症に特異的な発現を有している試験核酸とを使用することにより、個体のSIRS、敗血症、重症敗血症、敗血症ショック、または多臓器不全のインビトロでの診断のための方法における、請求項14または15に記載の対照核酸の使用。
a)個体の試料からの対照核酸と試験核酸の同時単離
b)必要に応じ、対照核酸と試験核酸の増幅
c)対照核酸と試験核酸の発現値の決定
d)対照核酸の発現値に基づく試験核酸の遺伝子発現の正規化、および
e)正規化された試験核酸の発現値が、SIRS、敗血症、重症敗血症、敗血症ショック、または多臓器不全に特有な値に達しているかどうかの決定

【公表番号】特表2010−519893(P2010−519893A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551137(P2009−551137)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際出願番号】PCT/EP2008/001582
【国際公開番号】WO2008/107114
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(507123305)エスアイアールエス‐ラブ ゲーエムベーハー (5)
【Fターム(参考)】