説明

遺伝子解析によるクルクマ属植物の分類・判別方法

【課題】本発明は、クルクマ属植物の種や系統を、簡便に、高い精度で判別する方法を提供することを課題とする。
【解決手段】ウコンのDCS1遺伝子に含まれる2つのイントロンのうち少なくとも一方、DCS2遺伝子に含まれる2つのイントロンのうち少なくとも一方、CURS1遺伝子のイントロン、CURS2遺伝子のイントロン、及び、CURS3遺伝子のイントロンから選択される少なくとも1つを増幅可能なプライマーセットを用い、被検クルクマ属植物のゲノムDNAを鋳型とするPCR法を行い、増幅産物の有無、数、又は構造を指標として、被検クルクマ属植物の種及び/又は系統を判別する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の遺伝子のイントロンの構造の相違に基づいて、クルクマ属植物の種及び/又は系統を分類、判別する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウコン・ターメリックは熱帯アジアに自生するショウガ科の多年草で、独特な香気と刺激性の辛み、わずかな苦みを持ち、鮮やかなオレンジ色を呈するため、香辛料、食用色素として用いられている。また、根茎に含まれる有用成分クルクミノイドに、抗炎症,抗腫瘍,肝機能改善などのさまざまな健康効果があることが報告されており、ウコンは、健康食品としても人気が高い。
【0003】
一般にウコンと呼ばれているのは、日本では秋ウコン(学名Curcuma longa)を指す。ウコンが属するショウガ科クルクマ(Curcuma)属の植物群は何世紀にもわたり、インドや中国などのアジア地域において民間療法や漢方薬として用いられてきたため、該地域では、様々なクルクマ属の近縁植物が自生している。これらの近縁植物は、外観から識別することが困難なため、ウコンの流通時に混入して品質の低下をもたらすことがあった。また、同じウコンの中にも、有用成分クルクミノイドの含有量、香りに影響を与える精油含量や組成が異なるさまざまな系統が存在しているが、外観が似通っているため、それらを区別するためには、特別な技術や経験が必要だった。
【0004】
近年の分子遺伝学の発展は、生物分類学における方法論に多大な影響を与えた。すなわち、これまでの形態学的な分類に加えて、ある特定の遺伝子を選択して、その塩基配列を比較することにより、遺伝子の類似性からその進化の過程を推定し、生物種や系統を分類することが可能となった。
【0005】
生物種による遺伝子の差異の度合いは、基本的な生命活動をつかさどる蛋白質をコードする遺伝子では驚くほど保存されている一方、多くの遺伝子ではそれぞれの蛋白質の機能の分散に従って変化し、もはや同一起源であるかどうかの判断さえ難しいものまで様々である。従って分類の対象となる生物種の範囲に応じて適切な遺伝子領域を選択することで、例えば鯨と他の哺乳類との関係のような、広い範囲の近縁関係から、地域差のような、ごく限定された範囲内の詳細な分類まで可能となる。
【0006】
クルクマ属植物を判別するための手段としては、葉緑体DNAのtrnSとtrnfM遺伝子の間の領域の配列の比較(非特許文献1)、18S rRNA遺伝子とtrnK遺伝子の領域の配列の比較(非特許文献2)に関する報告がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-200630号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】M. Minami et. al., Identification of Curcuma Plants and curcumin content level by DNA polymorphism in the trnS-trnfM intergenetic spacer in chloroplast DNA, J. Nat. Med. 63, 75-79 (2009)
【非特許文献2】Y. Sasaki et. al., Sequence analysis of Chinese and Japanese Curcuma drugs on the 18S rRNA gene and trnK gene and the application of amplification refractory mutation system analysis for their authentication, Biol. Pharm. Bull. 25(12), 1593-1599 (2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
非特許文献1及び2に記載されているクルクマ属植物の判別方法では、配列違いのパターンのバリエーションが限られ、精度が高い判別を簡便に行なうことが難しいという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、クルクマ属植物の種や系統を、簡便に、高い精度で判別する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らはこれまでに、ウコン(Curcuma longa)のcDNAプールより、クルクミノイドの生合成に関連する5種類の酵素および酵素遺伝子を取得した。DCS1、DCS2(diketide CoA synthase)遺伝子がコードする酵素タンパクは、主に、フェルロイルCoAとマロニルCoAからジケタイドCoAを生成する活性を持ち、CURS1、CURS2、CURS3(curcumin synthase)遺伝子がコードする酵素タンパクは、主に、ジケタイドCoAとフェルロイルCoAからクルクミンを生成する活性を持つ。これら遺伝子のmRNA(cDNA)配列のうち、タンパクをコードする部分の配列は現在、GenBankに登録され、DCS1(AB495006, 配列番号1)、DCS2(AB535216, 配列番号2)、CURS1(AB495007, 配列番号3)、CURS2(AB506762, 配列番号4)、CURS3(AB506763, 配列番号5)の登録番号で公開されている。また、「クルクミノイド合成酵素およびクルクミノイド製造方法」として特許出願されている(特許文献1)。
【0012】
本発明者らは、これら5種類の遺伝子の、ウコンのゲノムDNAにおける構造を調査し、上記のmRNA(cDNA)配列と比較することにより、DCS1,2の配列中に2つのイントロンが、CURS1,2,3の配列中には1つのイントロンが挿入されていることを見出した (図4及び5参照)。さらに、さまざまなウコンの系統や、ウコンの近縁種であるクルクマ属植物のゲノムでも同様の調査を行ない、エクソンの塩基数や塩基配列が種や系統間で高度に保存されている一方で、イントロンの塩基数や塩基配列には種や系統に特異的な、さまざまな多型が存在することを見出した。クルクマ属植物は主に栄養繁殖で増殖する植物であり、特にウコンは不稔であるために、交配によって遺伝子の入換えが起こることは稀である。そのため、イントロンの構造の多型は、種や系統内で比較的長期間保存されると予想される。これらの知見を基にして、我々は、この多型を利用してクルクマ属植物の種や系統を鑑別できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は以下の発明を包含する。
【0013】
(1) 被検クルクマ属植物の種及び/又は系統を判別する方法であって、
ウコンのDCS1遺伝子に含まれる2つのイントロンのうち少なくとも一方を含む該遺伝子中の塩基配列をPCR法により増幅させることが可能な少なくとも1つのプライマーセット、
ウコンのDCS2遺伝子に含まれる2つのイントロンのうち少なくとも一方を含む該遺伝子中の塩基配列をPCR法により増幅させることが可能な少なくとも1つのプライマーセット、
ウコンのCURS1遺伝子中の、イントロンを含む塩基配列をPCR法により増幅させることが可能なプライマーセット、
ウコンのCURS2遺伝子中の、イントロンを含む塩基配列をPCR法により増幅させることが可能なプライマーセット、及び
ウコンのCURS3遺伝子中の、イントロンを含む塩基配列をPCR法により増幅させることが可能なプライマーセット、
からなる群から選択される少なくとも1つをプライマーセットとし、被検クルクマ属植物のゲノムDNAを鋳型とするPCR法を行い、増幅産物の有無、数、又は構造を指標として、被検クルクマ属植物の種及び/又は系統を判別する判別工程を含む方法。
【0014】
(2) 前記プライマーセットが、
ウコンのDCS1遺伝子のタンパク質コード領域の塩基配列(AB495006) (配列番号1)の第94〜143番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列からなるフォワードプライマーと、第209〜258番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列の逆相補鎖からなるリバースプライマーとの第1プライマーセット、
ウコンのDCS1遺伝子のタンパク質コード領域の塩基配列(AB495006) (配列番号1)の第604〜653番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列からなるフォワードプライマーと、第783〜832番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列の逆相補鎖からなるリバースプライマーとの第2プライマーセット、
ウコンのDCS2遺伝子のタンパク質コード領域の塩基配列(AB535216) (配列番号2)の第94〜143番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列からなるフォワードプライマーと、第209〜258番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列の逆相補鎖からなるリバースプライマーとの第3プライマーセット、
ウコンのDCS2遺伝子のタンパク質コード領域の塩基配列(AB535216) (配列番号2)の第604〜653番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列からなるフォワードプライマーと、第783〜832番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列の逆相補鎖からなるリバースプライマーとの第4プライマーセット、
ウコンのCURS1遺伝子のタンパク質コード領域の塩基配列(AB495007) (配列番号3)の第97〜146番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列からなるフォワードプライマーと、第205〜254番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列の逆相補鎖からなるリバースプライマーとの第5プライマーセット、
ウコンのCURS2遺伝子のタンパク質コード領域の塩基配列(AB506762) (配列番号4)の第103〜152番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列からなるフォワードプライマーと、第211〜260番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列の逆相補鎖からなるリバースプライマーとの第6プライマーセット、及び
ウコンのCURS3遺伝子のタンパク質コード領域の塩基配列(AB506763) (配列番号5)の第97〜146番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列からなるフォワードプライマーと、第205〜254番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列の逆相補鎖からなるリバースプライマーとの第7プライマーセット、
からなる群から選択される少なくとも1つである、(1)の方法。
(3) 前記判別工程が、前記増幅産物のDNA断片の長さを指標として被検クルクマ属植物の種及び/又は系統を判別する工程である、(2)の方法。
【0015】
(4) 第1プライマーセット及び第3プライマーセットがともに、5’-GACTWCTAYTTCCGSGTCAC-3’で表されるフォワードプライマーA (配列番号6)と、5’-GAGCCAGCAARCTMGGATTC-3’で表されるリバースプライマーB (配列番号7)とのプライマーセットであり、
第2プライマーセット及び第4プライマーセットがともに、5’-CCACATCGAGAGCCTCTTCG-3’で表されるフォワードプライマーC (配列番号8) と、5’-CTGGCTYTTSAGGTGGAAGGTC-3’で表されるリバースプライマーD (配列番号9) とのプライマーセットであり、
第5プライマーセット、第6プライマーセット及び第7プライマーセットがともに、上記フォワードプライマーA (配列番号6)と、5’-CTTSGGCCKCTSCTTCAGGATC-3’で表されるリバースプライマーE (配列番号10)とのプライマーセットである、
[上記塩基配列中、WはA又はTを示し、YはT又はCを示し、SはG又はCを示し、RはG又はAを示し、MはA又はCを示し、KはG又はTを示す]
(2)又は(3)の方法。
【0016】
(5) 前記プライマーセットが、
ウコンのDCS1遺伝子の塩基配列中の、5’側非翻訳領域の塩基配列を少なくとも一部に含む15〜30個の連続した塩基配列からなるフォワードプライマーと、3’側非翻訳領域の塩基配列を少なくとも一部に含む15〜30個の連続した塩基配列の逆相補鎖からなるリバースプライマーとの第8プライマーセット、
ウコンのDCS2遺伝子の塩基配列中の、5’側非翻訳領域の塩基配列を少なくとも一部に含む15〜30個の連続した塩基配列からなるフォワードプライマーと、3’側非翻訳領域の塩基配列を少なくとも一部に含む15〜30個の連続した塩基配列の逆相補鎖からなるリバースプライマーとの第9プライマーセット、
ウコンのCURS1遺伝子の塩基配列中の、5’側非翻訳領域の塩基配列を少なくとも一部に含む15〜30個の連続した塩基配列からなるフォワードプライマーと、3’側非翻訳領域の塩基配列を少なくとも一部に含む15〜30個の連続した塩基配列の逆相補鎖からなるリバースプライマーとの第10プライマーセット、
ウコンのCURS2遺伝子の塩基配列中の、5’側非翻訳領域の塩基配列を少なくとも一部に含む15〜30個の連続した塩基配列からなるフォワードプライマーと、3’側非翻訳領域の塩基配列を少なくとも一部に含む15〜30個の連続した塩基配列の逆相補鎖からなるリバースプライマーとの第11プライマーセット、及び
ウコンのCURS3遺伝子の塩基配列中の、5’側非翻訳領域の塩基配列を少なくとも一部に含む15〜30個の連続した塩基配列からなるフォワードプライマーと、3’側非翻訳領域の塩基配列を少なくとも一部に含む15〜30個の連続した塩基配列の逆相補鎖からなるリバースプライマーとの第12プライマーセット、
からなる群から選択される少なくとも1つである、(1)の方法。
(6) 前記判別工程が、前記増幅産物のDNA断片に含まれるイントロンの塩基配列を指標として被検クルクマ属植物の種及び/又は系統を判別する工程である、(5)の方法。
【0017】
(7) 第8プライマーセットが、5’-GTAACACGCGTCATTCTTTGCCGAG-3’で表されるフォワードプライマーF (配列番号11) と、5’-GGATGCAGACTGGAACAATTCAGTG-3’で表されるリバースプライマーG (配列番号12) とのプライマーセットであり、
第9プライマーセットが、5’-CTAAGACGAGATCGCCGTC-3’で表されるフォワードプライマーH (配列番号13) と、5’-GGATGCTTATCCTTAGCTCATC-3’で表されるリバースプライマーI (配列番号14) とのプライマーセットであり、
第10プライマーセットが、5’-CTCTGCGACTGCGAGAAGAAG-3’で表されるフォワードプライマーJ (配列番号15) と、5’-CAGCAATATAGATACGCATG-3’で表されるリバースプライマーK (配列番号16) とのプライマーセットであり、
第11プライマーセットが、5’-CTTGCTAATCAGTCAATCCAGATGG-3’で表されるフォワードプライマーL (配列番号17) と、5’-GTCTATCGATTGATCGATCGTGTTC-3’で表されるリバースプライマーM (配列番号18) とのプライマーセットであり、
第12プライマーセットが、5’-CTGCTAGCTAGCTGCAATTCG-3’で表されるフォワードプライマーN (配列番号19) と、5’-GACAAGTGCTAGCTTAGCTTG-3’で表されるリバースプライマーO (配列番号20) とのプライマーセットである
(5)又は(6)の方法。
【0018】
(8) 被検クルクマ属植物の種及び/又は系統を判別する方法であって、被検クルクマ属植物の
DCS1遺伝子に含まれる5’末端寄りのイントロン、
DCS1遺伝子に含まれる3’末端寄りのイントロン、
DCS2遺伝子に含まれる5’末端寄りのイントロン、
DCS2遺伝子に含まれる3’末端寄りのイントロン、
CURS1遺伝子に含まれるイントロン、
CURS2遺伝子に含まれるイントロン、及び
CURS3遺伝子に含まれるイントロン
のうち少なくとも1つの構造を指標として被検クルクマ属植物の種及び/又は系統を判別する判別工程を含む方法。
(9) 前記判別工程が、前記少なくとも1つイントロンの長さを指標として被検クルクマ属植物の種及び/又は系統を判別する工程である、(8)の方法。
(10) 前記判別工程が、前記少なくとも1つのイントロンの塩基配列を指標として被検クルクマ属植物の種及び/又は系統を判別する工程である、(8)の方法。
【0019】
(11) 5’-GACTWCTAYTTCCGSGTCAC-3’で表されるフォワードプライマーA (配列番号6) と5’-GAGCCAGCAARCTMGGATTC-3’で表されるリバースプライマーB (配列番号7) とのプライマーセット、
5’-CCACATCGAGAGCCTCTTCG-3’で表されるフォワードプライマーC (配列番号8) と5’-CTGGCTYTTSAGGTGGAAGGTC-3’で表されるリバースプライマーD (配列番号9) とのプライマーセット、及び
上記フォワードプライマーA (配列番号6) と5’-CTTSGGCCKCTSCTTCAGGATC-3’で表されるリバースプライマーE (配列番号10) とのプライマーセット
[上記塩基配列中、WはA又はTを示し、YはT又はCを示し、SはG又はCを示し、RはG又はAを示し、MはA又はCを示し、KはG又はTを示す]
から選択される1つ以上のプライマーセット。
【0020】
(12) 5’-GTAACACGCGTCATTCTTTGCCGAG-3’で表されるフォワードプライマーF (配列番号11) と5’-GGATGCAGACTGGAACAATTCAGTG-3’で表されるリバースプライマーG (配列番号12) とのプライマーセット、
5’-CTAAGACGAGATCGCCGTC-3’で表されるフォワードプライマーH (配列番号13) と5’-GGATGCTTATCCTTAGCTCATC-3’で表されるリバースプライマーI (配列番号14) とのプライマーセット、
5’-CTCTGCGACTGCGAGAAGAAG-3’で表されるフォワードプライマーJ (配列番号15) と5’-CAGCAATATAGATACGCATG-3’で表されるリバースプライマーK (配列番号16) とのプライマーセット、
5’-CTTGCTAATCAGTCAATCCAGATGG-3’で表されるフォワードプライマーL (配列番号17) と5’-GTCTATCGATTGATCGATCGTGTTC-3’で表されるリバースプライマーM (配列番号18) とのプライマーセット、及び
5’-CTGCTAGCTAGCTGCAATTCG-3’で表されるフォワードプライマーN (配列番号19) と5’-GACAAGTGCTAGCTTAGCTTG-3’で表されるリバースプライマーO (配列番号20) とのプライマーセット
から選択される1つ以上のプライマーセット。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、クルクマ属植物の種や系統を簡便に高い精度で分類・同定する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】各種クルクマ属植物のゲノムDNAを鋳型とし、蛍光標識プライマーAと無蛍光プライマーEとのプライマーセットを用いるPCR増幅により得られる増幅産物のフラグメント解析結果を示す。
【図2】各種クルクマ属植物のDCS1をコードする遺伝子の 5'側イントロンの塩基配列を示す。
【図3】各種クルクマ属植物のDCS1をコードする遺伝子の 3'側イントロンの塩基配列を示す。
【図4】クルクマ属植物のDCS1遺伝子及びDCS2遺伝子の構造、並びに遺伝子とプライマーとの関係を模式的に示す。
【図5】クルクマ属植物のCURS1遺伝子、CURS2遺伝子及びCURS3遺伝子の構造、並びに遺伝子とプライマーとの関係を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
クルクマ属植物が有するDCS1、DCS2(diketide CoA synthase)遺伝子は、フェルロイルCoAとマロニルCoAからジケタイドCoAを生成する活性を主に有する酵素タンパク質をコードする遺伝子である。DCS1タンパク質とDCS2タンパク質とはアイソザイムの関係にある。
【0024】
クルクマ属植物が有するCURS1、CURS2、CURS3(curcumin synthase)遺伝子は、ジケタイドCoAとフェルロイルCoAからクルクミンを生成する活性を主に有する酵素タンパク質をコードする遺伝子である。CURS1、CURS2、CURS3タンパク質は、DCS1、DCS2タンパク質が触媒するフェルロイルCoAとマロニルCoAからジケタイドCoAを生成する反応も触媒する活性を有するが、ジケタイドCoAとフェルロイルCoAからクルクミンを生成する反応を触媒する活性が高い。CURS1タンパク質、CURS2タンパク質、CURS3タンパク質はアイソザイムの関係にある。
【0025】
DCS1遺伝子のゲノムDNAの構造を図4に基づき説明する。5’末端側(図左側)から3’末端側(図右側)にかけて順に、5’側非翻訳領域(1)、エクソンα(11)、5’側イントロン(21)、エクソンβ(31)、3’側イントロン(41)、エクソンγ(51)、3’側非翻訳領域(61)を有する。DCS2遺伝子のゲノムDNAも同様の構造を有する。
【0026】
CURS1遺伝子のゲノムDNAの構造を図5に基づき説明する。5’末端側(図左側)から3’末端側(図右側)にかけて順に、5’側非翻訳領域(3)、エクソンα(13)、5’側イントロン(23)、エクソンβ(33)、エクソンγ(53)、3’側非翻訳領域(63)を有する。DCS1, DCS2遺伝子とは異なりイントロンは1つのみ含まれる。CURS2遺伝子、CURS3遺伝子のゲノムDNAも同様の構造を有する。
【0027】
エクソンα(11, 12, 13, 14, 15)、エクソンβ(31, 32, 33, 34, 35)、エクソンγ(51, 52, 53, 54, 55)は、それぞれ、DCS1、DCS2、CURS1、CURS2、CURS3の5つの遺伝子間で、塩基数がほぼ同じであり、且つ、塩基配列に共通部分がある。更に、これらの、5’側及び3’側非翻訳領域以外のエクソン(エクソンα、β、γ)の塩基数及び配列は、クルクマ属植物の種及び系統間でも保存性が高い。一方、イントロン(21, 22, 23, 24, 25, 41, 42)は5つの遺伝子間、並びに、クルクマ属植物の種及び系統間において、塩基数及び配列が大きく異なる。
【0028】
本発明は、DCS1、DCS2、CURS1、CURS2、CURS3の5つの遺伝子に含まれる1つ以上のイントロンの構造(長さ、配列、増幅産物の制限酵素による処理後の断片の数、長さ、配列等)の違い等を指標として、被検クルクマ属植物の種及び/又は系統を判別する判別ことを基本的技術思想とする。イントロンの構造の比較は、PCRや、ハイブリダイゼーション等の手法を用いて行うことができる。
【0029】
PCR法を用いる本発明の方法では、DCS1、DCS2、CURS1、CURS2、CURS3の5つの遺伝子に含まれる1つ以上のイントロンを含む領域を増幅可能に設計されたプライマーセットを用いて、被検クルクマ属植物のゲノムDNAを鋳型とするポリメーラーゼ連鎖反応(PCR)法を行い、増幅産物 (遺伝子断片) の有無、数、構造(長さ、配列、増幅産物の制限酵素による処理後の断片の数、長さ、配列等)の違い等を指標として、被検クルクマ属植物の種及び/又は系統を判別する。
【0030】
本発明においてPCR法は通常の方法により行うことができる。複数のプライマーセットを用いる場合には、プライマーセットごとにPCR法を行って目的とする遺伝子の領域を増幅させてもよいし、複数のプライマーセットを1つのPCR系に用い、該1つのPCR系から目的とする複数の遺伝子を増幅させてもよい。また、後述するとおり、1つのプライマーセットを用いた1つのPCR系により、目的とする複数の遺伝子を増幅させるようにすることもできる。
【0031】
プライマーセットを用いてPCR増幅して得られたDNA断片は、アガロースやポリアクリルアミドノゲルを用いて電気泳動し、泳動パターン比較しても良いし、蛍光標識したプライマーを用いて、フラグメント解析によりフラグメント長(DNA断片長)を比較しても良い。また、増幅したDNA断片を制限酵素で切断し、同様に泳動パターンの比較やフラグメント解析を行なうこともできる。あるいは、増幅したDNA断片の配列をシーケンスし、塩基配列を比較することもできる。
【0032】
本発明の判別方法から得られた結果と、材料植物の間の相関関係から、さまざまなクルクマ属植物の種や系統を分類することができる。また、種や系統が明らかである基準個体の結果と比較することにより、種や系統が不明なクルクマ属植物の個体を特定の種や系統へと同定することもできる。本発明の判別方法が適用できるクルクマ属植物としては、特に限定されないが、例えばCurcuma longa (= Curcuma domestica) (ウコン、アキウコン、ウッチン、ターメリック)、Curcuma amada (マンゴージンジャー)、Curcuma aromatica(キョウオウ, ハルウコン)、Curcuma kwangsiensis(桂莪朮)、Curcuma phaeocaulis (川莪朮)、Curcuma wenyujin(温莪朮)、Curcuma xanthorrhiza(タムラワ)、Curcuma zedoaria (ガジュツ、ムラサキウコン)、Curcuma aeruginosa (蓬莪朮)、Curcuma yunnanensis(頂花莪朮)、 Curcuma chuanhuangjiang(川姜黄)、Curcuma petiolata(クルクマ・ペティオラタ)などが挙げられる。
【0033】
本発明において用いられるプライマーセットは、DCS1、DCS2、CURS1、CURS2、CURS3の5つの遺伝子に含まれる1つ以上のイントロンを含む領域を増幅可能なように設定される。
【0034】
本発明の方法の好ましい実施形態は、プライマーセットの種類により2つに大別することができる。
【0035】
本発明の第一の方法では、プライマーセットとして、増幅しようとするイントロンの5’末端側に隣接するエクソン中の15〜30個の連続した部分塩基配列からなるフォワードプライマーと、該イントロンの3’末端側に隣接するエクソン中の15〜30個の連続した部分塩基配列の逆相補鎖からなるリバースプライマーとからなるプライマーセットを用いる。上記の通り5つの遺伝子間において、エクソンα〜γの塩基配列に共通する部分があるため、1組のプライマーセットを用いて複数の異なる遺伝子のイントロン含有領域を増幅することが可能である。
【0036】
本発明の第二の方法では、プライマーセットとして、各遺伝子の5’側非翻訳領域の塩基配列を少なくとも一部に含む15〜30個の連続した塩基配列からなるフォワードプライマーと、3’側非翻訳領域の塩基配列を少なくとも一部に含む15〜30個の連続した塩基配列の逆相補鎖からなるリバースプライマーとからなるプライマーセットを用いる。この方法では、エクソンα〜γとイントロンを含むゲノムDNAの全体を増幅することができる。5’側非翻訳領域及び3’側非翻訳領域は遺伝子間の共通性が低いため、上記のプライマーセットは遺伝子特異性が高く、目的とする遺伝子を個別に区別して増幅させることができる。
【0037】
本発明の第一の方法に用いるプライマーセットは、好ましくは、
ウコンのDCS1遺伝子のタンパク質コード領域の塩基配列(AB495006) (配列番号1)の第94〜143番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列からなるフォワードプライマーと、第209〜258番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列の逆相補鎖からなるリバースプライマーとの第1プライマーセット (DCS1遺伝子に含まれる5’末端寄りのイントロンを含む領域を増幅するプライマーセット)、
ウコンのDCS1遺伝子のタンパク質コード領域の塩基配列(AB495006) (配列番号1)の第604〜653番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列からなるフォワードプライマーと、第783〜832番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列の逆相補鎖からなるリバースプライマーとの第2プライマーセット (DCS1遺伝子に含まれる3’末端寄りのイントロンを含む領域を増幅するプライマーセット)、
ウコンのDCS2遺伝子のタンパク質コード領域の塩基配列(AB535216) (配列番号2)の第94〜143番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列からなるフォワードプライマーと、第209〜258番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列の逆相補鎖からなるリバースプライマーとの第3プライマーセット (DCS2遺伝子に含まれる5’末端寄りのイントロンを含む領域を増幅するプライマーセット)、
ウコンのDCS2遺伝子のタンパク質コード領域の塩基配列(AB535216) (配列番号2)の第604〜653番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列からなるフォワードプライマーと、第783〜832番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列の逆相補鎖からなるリバースプライマーとの第4プライマーセット (DCS2遺伝子に含まれる3’末端寄りのイントロンを含む領域を増幅するプライマーセット)、
ウコンのCURS1遺伝子のタンパク質コード領域の塩基配列(AB495007) (配列番号3)の第97〜146番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列からなるフォワードプライマーと、第205〜254番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列の逆相補鎖からなるリバースプライマーとの第5プライマーセット (CURS1遺伝子に含まれるイントロンを含む領域を増幅するプラマーセット)、
ウコンのCURS2遺伝子のタンパク質コード領域の塩基配列(AB506762) (配列番号4)の第103〜152番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列からなるフォワードプライマーと、第211〜260番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列の逆相補鎖からなるリバースプライマーとの第6プライマーセット (CURS2遺伝子に含まれるイントロンを含む領域を増幅するプラマーセット)、及び
ウコンのCURS3遺伝子のタンパク質コード領域の塩基配列(AB506763) (配列番号5)の第97〜146番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列からなるフォワードプライマーと、第205〜254番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列の逆相補鎖からなるリバースプライマーとの第7プライマーセット (CURS3遺伝子に含まれるイントロンを含む領域を増幅するプラマーセット)、
からなる群から選択される少なくとも1つである。判別の精度を高めるためには、これらのプライマーセットを好ましくは2以上、より好ましくは全て用意し、PCR法を行い、増幅産物を得る。
【0038】
エクソンα〜γの配列の遺伝子間での共通性から、第1及び第3プライマーセット、第2及び第4プライマーセット、第5〜第7プライマーセットは、それぞれ、共通するプライマーセットを用いることができる。また、第1、第3、第5、第6、第7プライマーセットのフォワードプライマーは共通のプライマーを用いることができる。
【0039】
より好ましくは、第1プライマーセット及び第3プライマーセットがともに、5’-GACTWCTAYTTCCGSGTCAC-3’で表されるフォワードプライマーA (配列番号6)と、5’-GAGCCAGCAARCTMGGATTC-3’で表されるリバースプライマーB (配列番号7)とのプライマーセットであり、
第2プライマーセット及び第4プライマーセットがともに、5’-CCACATCGAGAGCCTCTTCG-3’で表されるフォワードプライマーC (配列番号8) と、5’-CTGGCTYTTSAGGTGGAAGGTC-3’で表されるリバースプライマーD (配列番号9) とのプライマーセットであり、
第5プライマーセット、第6プライマーセット及び第7プライマーセットがともに、上記フォワードプライマーA (配列番号6)と、5’-CTTSGGCCKCTSCTTCAGGATC-3’で表されるリバースプライマーE (配列番号10)とのプライマーセットである。
【0040】
上記塩基配列中、WはA又はTを示し、YはT又はCを示し、SはG又はCを示し、RはG又はAを示し、MはA又はCを示し、KはG又はTを示す。
【0041】
フォワードプライマーAは、配列番号6で表される塩基配列からなるプライマーの何れか1つであるか、或いは、配列番号6で表される塩基配列からなる2種以上のプライマーの混合物であり、好ましくは、当該2種以上のプライマーの混合物である。より好ましくは、フォワードプライマーAは、GACTACTATTTCCGGGTCAC (配列番号21)、GACTACTATTTCCGCGTCAC (配列番号22)、GACTACTACTTCCGGGTCAC (配列番号23)、GACTACTACTTCCGCGTCAC (配列番号24)、GACTTCTATTTCCGGGTCAC (配列番号25)、GACTTCTATTTCCGCGTCAC (配列番号26)、GACTTCTACTTCCGGGTCAC (配列番号27)、及びGACTTCTACTTCCGCGTCAC (配列番号28) を含む混合物であり、特に好ましくは、これらをそれぞれ等モル量で含む混合物である。
【0042】
リバースプライマーBは、配列番号7で表される塩基配列からなるプライマーの何れか1つであるか、或いは、配列番号7で表される塩基配列からなる2種以上のプライマーの混合物であり、好ましくは、当該2種以上のプライマーの混合物である。より好ましくは、リバースプライマーBは、GAGCCAGCAAGCTAGGATTC (配列番号29)、GAGCCAGCAAGCTCGGATTC (配列番号30)、GAGCCAGCAAACTAGGATTC (配列番号31)、及びGAGCCAGCAAACTCGGATTC (配列番号32) を含む混合物であり、特に好ましくは、これらをそれぞれ等モル量で含む混合物である。
【0043】
リバースプライマーDは、配列番号9で表される塩基配列からなるプライマーの何れか1つであるか、或いは、配列番号9で表される塩基配列からなる2種以上のプライマーの混合物であり、好ましくは、当該2種以上のプライマーの混合物である。より好ましくは、リバースプライマーDは、CTGGCTTTTGAGGTGGAAGGTC (配列番号33)、CTGGCTTTTCAGGTGGAAGGTC (配列番号34)、CTGGCTCTTGAGGTGGAAGGTC (配列番号35)、及びCTGGCTCTTCAGGTGGAAGGTC (配列番号36)を含む混合物であり、特に好ましくは、これらをそれぞれ等モル量で含む混合物である。
【0044】
リバースプライマーEは、配列番号10で表される塩基配列からなるプライマーの何れか1つであるか、或いは、配列番号10で表される塩基配列からなる2種以上のプライマーの混合物であり、好ましくは、当該2種以上のプライマーの混合物である。より好ましくは、リバースプライマーEは、CTTGGGCCGCTGCTTCAGGATC (配列番号37)、CTTGGGCCGCTCCTTCAGGATC (配列番号38)、CTTGGGCCTCTGCTTCAGGATC (配列番号39)、CTTGGGCCTCTCCTTCAGGATC (配列番号40)、CTTCGGCCGCTGCTTCAGGATC (配列番号41)、CTTCGGCCGCTCCTTCAGGATC (配列番号42)、CTTCGGCCTCTGCTTCAGGATC (配列番号43)、及びCTTCGGCCTCTCCTTCAGGATC (配列番号44)を含む混合物であり、特に好ましくは、これらをそれぞれ等モル量で含む混合物である。
【0045】
プライマーA〜Eと遺伝子との位置関係を図4及び5に模式的に示す。
プライマーは、上記A〜Eに限らず、DCS1,2 、CURS1,2,3のイントロン含有領域を、別々あるいは同時に増幅させうるものを適宜設計して使用すればよい。プライマーA〜Eを用いた場合、複数の遺伝子のイントロン含有領域を同時に増幅して比較することが可能であり、別々に増幅して一つ一つ比較するよりも手間が少なくてすみ、クルクマ属植物の判別が容易になる。
【0046】
本発明の第二の方法に用いるプライマーセットは、好ましくは、
ウコンのDCS1遺伝子の塩基配列中の、5’側非翻訳領域の塩基配列を少なくとも一部に含む15〜30個の連続した塩基配列からなるフォワードプライマーと、3’側非翻訳領域の塩基配列を少なくとも一部に含む15〜30個の連続した塩基配列の逆相補鎖からなるリバースプライマーとの第8プライマーセット(DCS1遺伝子の2つのイントロンを含む領域を特異的に増幅するプライマーセット)、
ウコンのDCS2遺伝子の塩基配列中の、5’側非翻訳領域の塩基配列を少なくとも一部に含む15〜30個の連続した塩基配列からなるフォワードプライマーと、3’側非翻訳領域の塩基配列を少なくとも一部に含む15〜30個の連続した塩基配列の逆相補鎖からなるリバースプライマーとの第9プライマーセット(DCS2遺伝子の2つのイントロンを含む領域を特異的に増幅するプライマーセット)、
ウコンのCURS1遺伝子の塩基配列中の、5’側非翻訳領域の塩基配列を少なくとも一部に含む15〜30個の連続した塩基配列からなるフォワードプライマーと、3’側非翻訳領域の塩基配列を少なくとも一部に含む15〜30個の連続した塩基配列の逆相補鎖からなるリバースプライマーとの第10プライマーセット(CURS1遺伝子のイントロンを含む領域を特異的に増幅するプライマーセット)、
ウコンのCURS2遺伝子の塩基配列中の、5’側非翻訳領域の塩基配列を少なくとも一部に含む15〜30個の連続した塩基配列からなるフォワードプライマーと、3’側非翻訳領域の塩基配列を少なくとも一部に含む15〜30個の連続した塩基配列の逆相補鎖からなるリバースプライマーとの第11プライマーセット(CURS2遺伝子のイントロンを含む領域を特異的に増幅するプライマーセット)、及び
ウコンのCURS3遺伝子の塩基配列中の、5’側非翻訳領域の塩基配列を少なくとも一部に含む15〜30個の連続した塩基配列からなるフォワードプライマーと、3’側非翻訳領域の塩基配列を少なくとも一部に含む15〜30個の連続した塩基配列の逆相補鎖からなるリバースプライマーとの第12プライマーセット(CURS3遺伝子のイントロンを含む領域を特異的に増幅するプライマーセット)
からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0047】
各遺伝子の5’側非翻訳領域及び3’側非翻訳領域の塩基配列は5’-RACE法及び3’-RACE法により決定することができる。この手法の具体的な手順は以下の通りである。クルクマ属植物からmRNAを抽出し、逆転写によりcDNAを作成する。作成されたcDNAの5’末端、または3’末端にアンカー配列を付加し、遺伝子本体部分とアンカー配列部分それぞれにアニールするように設計したプライマーを用いてPCR増幅を行い、PCR産物を得る。得られたPCR産物の配列をシーケンスする。こうして5’側非翻訳領域及び3’側非翻訳領域の塩基配列を決定することができる。
【0048】
より好ましくは、第8プライマーセットが、5’-GTAACACGCGTCATTCTTTGCCGAG-3’で表されるフォワードプライマーF (配列番号11) と、5’-GGATGCAGACTGGAACAATTCAGTG-3’で表されるリバースプライマーG (配列番号12) とのプライマーセットであり、
第9プライマーセットが、5’-CTAAGACGAGATCGCCGTC-3’で表されるフォワードプライマーH (配列番号13) と、5’-GGATGCTTATCCTTAGCTCATC-3’で表されるリバースプライマーI (配列番号14) とのプライマーセットであり、
第10プライマーセットが、5’-CTCTGCGACTGCGAGAAGAAG-3’で表されるフォワードプライマーJ (配列番号15) と、5’-CAGCAATATAGATACGCATG-3’で表されるリバースプライマーK (配列番号16) とのプライマーセットであり、
第11プライマーセットが、5’-CTTGCTAATCAGTCAATCCAGATGG-3’で表されるフォワードプライマーL (配列番号17) と、5’-GTCTATCGATTGATCGATCGTGTTC-3’で表されるリバースプライマーM (配列番号18) とのプライマーセットであり、
第12プライマーセットが、5’-CTGCTAGCTAGCTGCAATTCG-3’で表されるフォワードプライマーN (配列番号19) と、5’-GACAAGTGCTAGCTTAGCTTG-3’で表されるリバースプライマーO (配列番号20) とのプライマーセットである。
【0049】
プライマーF〜Oと遺伝子との位置関係を図4及び5に模式的に示す。
本発明の第二の方法によれば、5つの遺伝子のイントロン含有領域を個別に増幅することが可能であるため、増幅産物を遺伝子毎に分画することなくイントロンの構造の解析に用いることができる。プライマーは、上記F〜Oに限らず、DCS1,2 、CURS1,2,3のイントロン及びエクソンα〜γを含む領域を、特異的に増幅させうるものを適宜設計して使用すればよい。
【実施例】
【0050】
実施例1: DCS1,2、CURS1,2,3をコードするcDNAの調製と配列解析
圃場にて4ヶ月生育させたウコン (Curcuma longa) の根茎(約80 mg)から、RNeasy(登録商標)Plant Mini Kit (Qiagen)を用いてtotal RNAを抽出した。その後、混入したDNAを除去するためTURBO DNA-freeTM Kit(Applied Biosystems)でDNase処理した後、RNeasy(登録商標)MinElute(登録商標)Cleanup Kit(Qiagen)で濃縮を行った。得られたtotal RNA(363.65ng)を鋳型として、SMARTTM RACE cDNA Amplification Kit(Clontech)およびPrimeScript(登録商標)Reverse Transcriptase (Takara)を用いてアンカー配列を付加したファーストストランドcDNAを作成した。GenBank(NCBI)データベースに登録されているウコンのESTクローン配列を対象にBLAST検索を行い、イネのos07g17010 cDNA配列と相同性が高い配列を検索し、得られた配列を参考に設計したプライマーを用いて、ファーストストランドcDNAを鋳型とし、RACE法などを含むPCR法で、DCS1,2、CURS1,2,3の酵素タンパクをコードする部分全体(開始コドンから終始コドンまで)を含むPCR産物を得た。得られたそれぞれのPCR産物をシーケンスし、塩基配列を明らかにした。
【0051】
実施例2: フラグメント解析の例
Curcuma 属植物として、Curcuma longa 4系統、Curcuma aromatica 1系統、Curcuma zedoaria 1系統の計6つの植物を用いた。
それぞれの植物の約100mgの葉からDNeasy Plant Mini Kit(Qiagen)を用いてゲノムDNAを精製し、蛍光標識したフォワードプライマーAと無蛍光リバースプライマーBの組み合わせ、無蛍光フォワードプライマーCと蛍光標識リバースプライマーDの組み合わせ、蛍光標識プライマーAと無蛍光リバースプライマーEの組み合わせ、の3種類の組み合わせでPCRを行なった。
フォワードプライマーA:5’-GACTWCTAYTTCCGSGTCAC-3’ (配列番号6)
リバースプライマーB:5’-GAGCCAGCAARCTMGGATTC-3’ (配列番号7)
フォワードプライマーC:5’-CCACATCGAGAGCCTCTTCG-3’ (配列番号8)
リバースプライマーD:5’-CTGGCTYTTSAGGTGGAAGGTC-3’ (配列番号9)
リバースプライマーE:5’-CTTSGGCCKCTSCTTCAGGATC-3’ (配列番号10)
フォワードプライマーAは、具体的には、配列番号21、22、23、24、25、26、27及び28の塩基配列からなるプライマーの等モル混合物である。
【0052】
リバースプライマーBは、具体的には、配列番号29、30、31及び32の塩基配列からなるプライマーの等モル混合物である。
【0053】
リバースプライマーDは、具体的には、配列番号33、34、35及び36の塩基配列からなるプライマーの等モル混合物である。
【0054】
リバースプライマーEは、具体的には、配列番号37、38、39、40、41、42、43及び44の塩基配列からなるプライマーの等モル混合物である。
【0055】
フォワードプライマーAとリバースプライマーBの組み合わせでは、DCS1、DCS2遺伝子由来の5’末端寄りのイントロン、フォワードプライマーCとリバースプライマーDの組み合わせでは、DCS1、DCS2遺伝子由来の3’末端寄りのイントロン、フォワードプライマーAとリバースプライマーEの組み合わせでは、CURS1、CURS2、CURS3遺伝子由来のイントロンが増幅される。相同染色体由来の対立遺伝子(アリル)が存在するため、それぞれの遺伝子から、複数の増幅産物(フラグメント)が得られる場合があった。
【0056】
PCR反応液の組成は、5x PrimeSTAR GXL buffer 5μl、dNTP mixture (2.5mM each) 2μl、それぞれのプライマー(25μM) 0.3μlずつ、鋳型DNA(20〜50ng/μl)1μl、 PrimeSTAR GXL(TaKaRa) 0.5μlとし、サーマルサイクラーGeneAmp (登録商標) PCR System 9700 (Applied Biosystems)を用いて、(98℃ 10秒、58℃ 30秒、68℃ 1分)x 35サイクルの反応サイクルで反応を行なった。
【0057】
適宜希釈したPCR反応液0.5 μlを、脱イオン済みFormamide 9μl、GeneScan 500 ROX Size Standard 0.5 μl(Applied Biosystems)と混合し、95℃ 2分加熱した後に氷上で急冷し、遺伝子解析システムABI PRISM (登録商標) 310 Genetic Analyzer 310(Applied Biosystems)のGeneScanモードにてフラグメント解析を行なった。フラグメント解析とは、蛍光プライマーによって標識されたフラグメントをキャピラリー電気泳動し、予めフラグメント長がわかっているサイズスタンダードの泳動時間と比較することにより標識されたフラグメントの長さを測定する方法である。
【0058】
フラグメント解析の代表的な結果として、蛍光標識フォワードプライマーAと無蛍光リバースプライマーEの組み合わせの解析結果を図1に示す。6つの植物から4つのフラグメントパターンが得られた。Curcuma longa 4系統のうち3系統は同じフラグメントパターンで、残り1種類は別のパターンを示した。Curcuma aromaticaCurcuma zedoariaは、Curcuma longaとは違うフラグメントパターンだった。
【0059】
同様に、蛍光標識したフォワードプライマーAと無蛍光リバースプライマーBの組み合わせ、無蛍光フォワードプライマーCと蛍光標識リバースプライマーDの組み合わせでも解析を行なったところ、さまざまなフラグメントパターンが得られた。
【0060】
それぞれのプライマー組み合わせで得られたフラグメントパターンの一覧表を表1に示す。Curcuma longaの系統1と系統2の間にはフラグメントパターンの違いが見られなかったが、系統3,4およびCurcuma aromaticaCurcuma zedoariaは、他の種や系統とは異なるフラグメントパターンを示し、これらのフラグメントパターンにより、種や系統の識別・分類が可能であることが示された。
【0061】
【表1】

【0062】
実施例3: 配列解析の例
Curcuma 属植物として、Curcuma longa 4系統、Curcuma aromatica 1系統、Curcuma zedoaria 1系統の計6つの植物を用いた。
それぞれの植物の約100mgの葉からDNeasy Plant Mini Kit(Qiagen)を用いてゲノムDNAを精製し、DCS1の5’および3’非翻訳領域にアニールするフォワードプライマーF,リバースプライマーGのプライマーセットを用いてPCRを行ない、DCS1の2つのイントロン領域を含む増幅産物を得た。その後、得られた増幅産物のシーケンス(配列解析)を行なった。
【0063】
DCS1の5’および3’末端寄りのイントロン領域のシーケンスの結果をそれぞれ図2および図3に示す。実施例1に用いたプライマーの領域とは異なり、5’および3’ 非翻訳領域は変異が大きい部分で、相同染色体由来の対立遺伝子(アリル)のうち、増幅されないものがあるため、PCR増幅、シーケンスできたものの配列のみ示す。それぞれ、塩基置換や挿入・欠失など、他の種や系統と配列の違いが見られ、これらのパターンの違いにより、種や系統の識別・分類が可能であることが示された。
フォワードプライマーF:5’-GTAACACGCGTCATTCTTTGCCGAG-3’ (配列番号11)
リバースプライマーG:5’-GGATGCAGACTGGAACAATTCAGTG-3’ (配列番号12)
【符号の説明】
【0064】
1: DCS1遺伝子5’側非翻訳領域
2: DCS2遺伝子5’側非翻訳領域
3: CURS1遺伝子5’側非翻訳領域
4: CURS2遺伝子5’側非翻訳領域
5: CURS3遺伝子5’側非翻訳領域
11: DCS1遺伝子エクソンα
12: DCS2遺伝子エクソンα
13: CURS1遺伝子エクソンα
14: CURS2遺伝子エクソンα
15: CURS3遺伝子エクソンα
21: DCS1遺伝子5’側イントロン
22: DCS2遺伝子5’側イントロン
23: CURS1遺伝子イントロン
24: CURS2遺伝子イントロン
25: CURS3遺伝子イントロン
31: DCS1遺伝子エクソンβ
32: DCS2遺伝子エクソンβ
33: CURS1遺伝子エクソンβ
34: CURS2遺伝子エクソンβ
35: CURS3遺伝子エクソンβ
41: DCS1遺伝子3’側イントロン
42: DCS2遺伝子3’側イントロン
51: DCS1遺伝子エクソンγ
52: DCS2遺伝子エクソンγ
53: CURS1遺伝子エクソンγ
54: CURS2遺伝子エクソンγ
55: CURS3遺伝子エクソンγ
61: DCS1遺伝子3’側非翻訳領域
62: DCS2遺伝子3’側非翻訳領域
63: CURS1遺伝子3’側非翻訳領域
64: CURS2遺伝子3’側非翻訳領域
65: CURS3遺伝子3’側非翻訳領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検クルクマ属植物の種及び/又は系統を判別する方法であって、
ウコンのDCS1遺伝子に含まれる2つのイントロンのうち少なくとも一方を含む該遺伝子中の塩基配列をPCR法により増幅させることが可能な少なくとも1つのプライマーセット、
ウコンのDCS2遺伝子に含まれる2つのイントロンのうち少なくとも一方を含む該遺伝子中の塩基配列をPCR法により増幅させることが可能な少なくとも1つのプライマーセット、
ウコンのCURS1遺伝子中の、イントロンを含む塩基配列をPCR法により増幅させることが可能なプライマーセット、
ウコンのCURS2遺伝子中の、イントロンを含む塩基配列をPCR法により増幅させることが可能なプライマーセット、及び
ウコンのCURS3遺伝子中の、イントロンを含む塩基配列をPCR法により増幅させることが可能なプライマーセット、
からなる群から選択される少なくとも1つをプライマーセットとし、被検クルクマ属植物のゲノムDNAを鋳型とするPCR法を行い、増幅産物の有無、数、又は構造を指標として、被検クルクマ属植物の種及び/又は系統を判別する判別工程を含む方法。
【請求項2】
前記プライマーセットが、
ウコンのDCS1遺伝子のタンパク質コード領域の塩基配列(AB495006) (配列番号1)の第94〜143番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列からなるフォワードプライマーと、第209〜258番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列の逆相補鎖からなるリバースプライマーとの第1プライマーセット、
ウコンのDCS1遺伝子のタンパク質コード領域の塩基配列(AB495006) (配列番号1)の第604〜653番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列からなるフォワードプライマーと、第783〜832番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列の逆相補鎖からなるリバースプライマーとの第2プライマーセット、
ウコンのDCS2遺伝子のタンパク質コード領域の塩基配列(AB535216) (配列番号2)の第94〜143番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列からなるフォワードプライマーと、第209〜258番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列の逆相補鎖からなるリバースプライマーとの第3プライマーセット、
ウコンのDCS2遺伝子のタンパク質コード領域の塩基配列(AB535216) (配列番号2)の第604〜653番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列からなるフォワードプライマーと、第783〜832番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列の逆相補鎖からなるリバースプライマーとの第4プライマーセット、
ウコンのCURS1遺伝子のタンパク質コード領域の塩基配列(AB495007) (配列番号3)の第97〜146番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列からなるフォワードプライマーと、第205〜254番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列の逆相補鎖からなるリバースプライマーとの第5プライマーセット、
ウコンのCURS2遺伝子のタンパク質コード領域の塩基配列(AB506762) (配列番号4)の第103〜152番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列からなるフォワードプライマーと、第211〜260番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列の逆相補鎖からなるリバースプライマーとの第6プライマーセット、及び
ウコンのCURS3遺伝子のタンパク質コード領域の塩基配列(AB506763) (配列番号5)の第97〜146番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列からなるフォワードプライマーと、第205〜254番目の領域中の15〜30個の連続した塩基配列の逆相補鎖からなるリバースプライマーとの第7プライマーセット、
からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1の方法。
【請求項3】
前記判別工程が、前記増幅産物のDNA断片の長さを指標として被検クルクマ属植物の種及び/又は系統を判別する工程である、請求項2の方法。
【請求項4】
第1プライマーセット及び第3プライマーセットがともに、5’-GACTWCTAYTTCCGSGTCAC-3’で表されるフォワードプライマーA (配列番号6)と、5’-GAGCCAGCAARCTMGGATTC-3’で表されるリバースプライマーB (配列番号7)とのプライマーセットであり、
第2プライマーセット及び第4プライマーセットがともに、5’-CCACATCGAGAGCCTCTTCG-3’で表されるフォワードプライマーC (配列番号8) と、5’-CTGGCTYTTSAGGTGGAAGGTC-3’で表されるリバースプライマーD (配列番号9) とのプライマーセットであり、
第5プライマーセット、第6プライマーセット及び第7プライマーセットがともに、上記フォワードプライマーA (配列番号6)と、5’-CTTSGGCCKCTSCTTCAGGATC-3’で表されるリバースプライマーE (配列番号10)とのプライマーセットである、
[上記塩基配列中、WはA又はTを示し、YはT又はCを示し、SはG又はCを示し、RはG又はAを示し、MはA又はCを示し、KはG又はTを示す]
請求項2又は3の方法。
【請求項5】
前記プライマーセットが、
ウコンのDCS1遺伝子の塩基配列中の、5’側非翻訳領域の塩基配列を少なくとも一部に含む15〜30個の連続した塩基配列からなるフォワードプライマーと、3’側非翻訳領域の塩基配列を少なくとも一部に含む15〜30個の連続した塩基配列の逆相補鎖からなるリバースプライマーとの第8プライマーセット、
ウコンのDCS2遺伝子の塩基配列中の、5’側非翻訳領域の塩基配列を少なくとも一部に含む15〜30個の連続した塩基配列からなるフォワードプライマーと、3’側非翻訳領域の塩基配列を少なくとも一部に含む15〜30個の連続した塩基配列の逆相補鎖からなるリバースプライマーとの第9プライマーセット、
ウコンのCURS1遺伝子の塩基配列中の、5’側非翻訳領域の塩基配列を少なくとも一部に含む15〜30個の連続した塩基配列からなるフォワードプライマーと、3’側非翻訳領域の塩基配列を少なくとも一部に含む15〜30個の連続した塩基配列の逆相補鎖からなるリバースプライマーとの第10プライマーセット、
ウコンのCURS2遺伝子の塩基配列中の、5’側非翻訳領域の塩基配列を少なくとも一部に含む15〜30個の連続した塩基配列からなるフォワードプライマーと、3’側非翻訳領域の塩基配列を少なくとも一部に含む15〜30個の連続した塩基配列の逆相補鎖からなるリバースプライマーとの第11プライマーセット、及び
ウコンのCURS3遺伝子の塩基配列中の、5’側非翻訳領域の塩基配列を少なくとも一部に含む15〜30個の連続した塩基配列からなるフォワードプライマーと、3’側非翻訳領域の塩基配列を少なくとも一部に含む15〜30個の連続した塩基配列の逆相補鎖からなるリバースプライマーとの第12プライマーセット、
からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1の方法。
【請求項6】
前記判別工程が、前記増幅産物のDNA断片に含まれるイントロンの塩基配列を指標として被検クルクマ属植物の種及び/又は系統を判別する工程である、請求項5の方法。
【請求項7】
第8プライマーセットが、5’-GTAACACGCGTCATTCTTTGCCGAG-3’で表されるフォワードプライマーF (配列番号11) と、5’-GGATGCAGACTGGAACAATTCAGTG-3’で表されるリバースプライマーG (配列番号12) とのプライマーセットであり、
第9プライマーセットが、5’-CTAAGACGAGATCGCCGTC-3’で表されるフォワードプライマーH (配列番号13) と、5’-GGATGCTTATCCTTAGCTCATC-3’で表されるリバースプライマーI (配列番号14) とのプライマーセットであり、
第10プライマーセットが、5’-CTCTGCGACTGCGAGAAGAAG-3’で表されるフォワードプライマーJ (配列番号15) と、5’-CAGCAATATAGATACGCATG-3’で表されるリバースプライマーK (配列番号16) とのプライマーセットであり、
第11プライマーセットが、5’-CTTGCTAATCAGTCAATCCAGATGG-3’で表されるフォワードプライマーL (配列番号17) と、5’-GTCTATCGATTGATCGATCGTGTTC-3’で表されるリバースプライマーM (配列番号18) とのプライマーセットであり、
第12プライマーセットが、5’-CTGCTAGCTAGCTGCAATTCG-3’で表されるフォワードプライマーN (配列番号19) と、5’-GACAAGTGCTAGCTTAGCTTG-3’で表されるリバースプライマーO (配列番号20) とのプライマーセットである
請求項5又は6の方法。
【請求項8】
被検クルクマ属植物の種及び/又は系統を判別する方法であって、被検クルクマ属植物の
DCS1遺伝子に含まれる5’末端寄りのイントロン、
DCS1遺伝子に含まれる3’末端寄りのイントロン、
DCS2遺伝子に含まれる5’末端寄りのイントロン、
DCS2遺伝子に含まれる3’末端寄りのイントロン、
CURS1遺伝子に含まれるイントロン、
CURS2遺伝子に含まれるイントロン、及び
CURS3遺伝子に含まれるイントロン
のうち少なくとも1つの構造を指標として被検クルクマ属植物の種及び/又は系統を判別する判別工程を含む方法。
【請求項9】
前記判別工程が、前記少なくとも1つイントロンの長さを指標として被検クルクマ属植物の種及び/又は系統を判別する工程である、請求項8の方法。
【請求項10】
前記判別工程が、前記少なくとも1つのイントロンの塩基配列を指標として被検クルクマ属植物の種及び/又は系統を判別する工程である、請求項8の方法。
【請求項11】
5’-GACTWCTAYTTCCGSGTCAC-3’で表されるフォワードプライマーA (配列番号6) と5’-GAGCCAGCAARCTMGGATTC-3’で表されるリバースプライマーB (配列番号7) とのプライマーセット、
5’-CCACATCGAGAGCCTCTTCG-3’で表されるフォワードプライマーC (配列番号8) と5’-CTGGCTYTTSAGGTGGAAGGTC-3’で表されるリバースプライマーD (配列番号9) とのプライマーセット、及び
上記フォワードプライマーA (配列番号6) と5’-CTTSGGCCKCTSCTTCAGGATC-3’で表されるリバースプライマーE (配列番号10) とのプライマーセット
[上記塩基配列中、WはA又はTを示し、YはT又はCを示し、SはG又はCを示し、RはG又はAを示し、MはA又はCを示し、KはG又はTを示す]
から選択される1つ以上のプライマーセット。
【請求項12】
5’-GTAACACGCGTCATTCTTTGCCGAG-3’で表されるフォワードプライマーF (配列番号11) と5’-GGATGCAGACTGGAACAATTCAGTG-3’で表されるリバースプライマーG (配列番号12) とのプライマーセット、
5’-CTAAGACGAGATCGCCGTC-3’で表されるフォワードプライマーH (配列番号13) と5’-GGATGCTTATCCTTAGCTCATC-3’で表されるリバースプライマーI (配列番号14) とのプライマーセット、
5’-CTCTGCGACTGCGAGAAGAAG-3’で表されるフォワードプライマーJ (配列番号15) と5’-CAGCAATATAGATACGCATG-3’で表されるリバースプライマーK (配列番号16) とのプライマーセット、
5’-CTTGCTAATCAGTCAATCCAGATGG-3’で表されるフォワードプライマーL (配列番号17) と5’-GTCTATCGATTGATCGATCGTGTTC-3’で表されるリバースプライマーM (配列番号18) とのプライマーセット、及び
5’-CTGCTAGCTAGCTGCAATTCG-3’で表されるフォワードプライマーN (配列番号19) と5’-GACAAGTGCTAGCTTAGCTTG-3’で表されるリバースプライマーO (配列番号20) とのプライマーセット
から選択される1つ以上のプライマーセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−95549(P2012−95549A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243983(P2010−243983)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000111487)ハウス食品株式会社 (262)
【Fターム(参考)】