説明

遺伝子配列分析のための多重ポリメラーゼ連鎖反応

一般に多数の遺伝子標的の増幅法及びマイクロアレイを用いた増幅産物の分析法を提供すること。
【課題】多数の遺伝子標的の増幅法及びマイクロアレイを用いた増幅産物の分析法を提供する。
【解決手段】
あらかじめ定義されたセットの病原体からの1またはそれ以上の病原体核酸を含むことが疑われる生物学的試料を提供すること;試料に、あらかじめ定義された病原体のセットに認められる遺伝子に対応する複数のPCRプライマーを添加すること;および遺伝子に対応する核酸のサブセットを増幅するために試料に関するポリメラーゼ連鎖反応を実施すること、を含むPCR方法。但し、上記プライマーは、各々の病原体について少なくとも1つのプライマー対を含み、および上記プライマーは、あらかじめ定義されたセットの病原体のいずれのDNAまたは試料中のいずれのバックグラウンドDNAにも相同でないテール配列を含む。ポリメラーゼ連鎖反応における少なくとも1個のプライマーの濃度は約100nM以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に多数の遺伝子標的の増幅方法およびマイクロアレイを用いた増幅産物の分析に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトにおいて急性呼吸器感染症(ARI)を引き起こす感染性病原体の正確で迅速な同定は、呼吸器疾病の治療成功、適切な集団発生管理措置の適用、および貴重な抗生物質と抗ウイルス薬の効率的な使用において決定的に重要な因子であり得る。しかし、ARIの臨床鑑別診断は、異なる病原体によって引き起こされる症状の類似性およびそれらの病原因子の数と生物学的多様性のゆえに困難である。現在、呼吸器病原体同定のために最も広く使用されている方法は、培養、免疫測定法およびRT−PCR/PCRアッセイである。培養と免疫測定手法は一般に特定病原体に特異的であり、それ自体、種のレベルおよび時として血清型レベルで1つの疑わしい病原因子を検出することに限定される。これに対し、RT−PCR/PCRなどの核酸に基づく手法は多用途であり、選好性またはさもなければ培養の困難な生物を含む、すべての病原体の検出において高い感受性を提供する。PCRの多用途な性質のゆえに、その手法は多数の病原因子に同時に適用することができ、詳細な病因を確立する可能性を高め(非特許文献1)、2以上の病原体に関わる同時感染の正確な検出を可能にする(非特許文献2)。
【0003】
【非特許文献1】McDonough et al.,“A multiplex PCR for detection of Mycoplasma pneumoniae,Chlamydophila pneumoniae,Legionella pneumophila,and Bordetella pertussis in clinical specimens”Mol.Cell Probes,19,314−322(2005)
【非特許文献2】Grondahl et al.,“Rapid identification of nine microorganisms causing acute respiratory tract infections by single−tube multiplex reverse transcription−PCR:feasibility study”J.Clin.Microbiol,37,1−7(1999)
【0004】
ARI病原因子は症候学的に(symptomologically)非特異的であり得るので、多重(マルチプレックス)アプローチによる1つ反応内でのいくつかの生物の検出は望ましい。つまり、一度に1つの病原体を検定することは非効率的であり、起こり得る同時感染についての情報を与えない。これに対処するためにいくつかの多重RT−PCR/PCR試験が開発されてきた(非特許文献3);(非特許文献4);(非特許文献5);(非特許文献6);(非特許文献7);(非特許文献8);(非特許文献9);(非特許文献10);が、そのアプローチは、現在のアンプリコン検出法の識別力によって限定される。ゲルベースの分析アプローチは、その生成物が大きさだけによって識別できる限られた数の病原体に限定される傾向があるのに対し、リアルタイムPCRのような蛍光レポーター系は、3または4時間以内で、明瞭に分割できる蛍光ピークの数によって制限される。そこで、ARIなどの、多くの潜在的原因を有する疾患症候群の原因である病原体の迅速な識別と同定を可能にする診断アッセイが求められている。
【0005】
【非特許文献3】McDonough;Grondahl;Puppe et al.,“Evaluation of a multiplex reverse transcriptase PCR ELISA for the detection of nine respiratory tract pathogens”J.Clin.Virol.,30,165−174(2004)
【非特許文献4】Bellau−Pujol et al.,“Development of three multiplex RT−PCR assays for the detection of 12 respiratory RNA viruses”J.Virol.Methods,126,53−63(2005)
【非特許文献5】Miyashita et al.,“Multiplex PCR for the simultaneous detection of Chlamydia pneumoniae,Mycoplasma pneumoniae and Legionella pneumophila in community−acquired pneumonia”Respir.Med.,98,542−550(2004)
【非特許文献6】Osiowy,“Direct detection of respiratory syncytial virus,parainfluenza virus,and adenovirus in clinical respiratory specimens by a multiplex reverse transcription−PCR assay”J.Clin.Microbiol.,36,3149−3154(1998)
【非特許文献7】Verstrepen et al.,“Rapid detection of enterovirus RNA in cerebrospinal fluid specimens with a novel single−tube real−time reverse transcription−PCR assay”J.Clin.Microbiol,39,4093−4096(2001)
【非特許文献8】Coiras et al.,“Simultaneous detection of fourteen respiratory viruses in clinical specimens by two multiplex reverse transcription nested−PCR assays”J.Med.Virol,72,484−495(2004)
【非特許文献9】Coiras et al.,“Oligonucleotide array for simultaneous detection of respiratory viruses using a reverse−line blot hybridization assay”J.Med.Virol,76,256−264(2005)
【非特許文献10】Gruteke et al.,“Practical implementation of a multiplex PCR for acute respiratory tract infections in children”J.Clin.Microbiol,42,5596−5603(2004)
【0006】
より多くの病原体をRT−PCR/PCR法によって同時に検出することを可能にするいくつかのテクノロジーが開発された。22までの呼吸器病原体の多重同定が、MASSCODE(商標)マルチプレックスRT−PCRシステム(非特許文献11)によって成された。スポット(特に長いオリゴヌクレオチド)マイクロアレイも、多重PCR分析ツールとして使用され、ある程度の成功を収めた(非特許文献12);(非特許文献13);(非特許文献14);(非特許文献15);(非特許文献16);(非特許文献17);(非特許文献18);(非特許文献19);(非特許文献20)。これらのシステムの主要な制限は、検出されるハイブリダイゼーション事象が部分配列の相違に対して非感受性であり得るため、同じ生物の密接に関連する菌株を識別できないことである。たとえばスポットマイクロアレイプローブは、25%も異なる配列と非特異的にクロスハイブリダイズすることがあり、この目に見えない変異は、多型が特異的に定義できれば高度の菌株識別を可能にする十分な情報を担持するという事実を考慮すると、不幸な事実である。
【0007】
【非特許文献11】Briese et al.,“Diagnostic system for rapid and sensitive differential detection of pathogens”Emerg.Infect.Dis.,11,310−313(2005)
【非特許文献12】Roth et al.,“Use of an oligonucleotide array for laboratory diagnosis of bacteria responsible for acute upper respiratory infections”J.Clin.Microbiol,42,4268−4274(2004)
【非特許文献13】Chizhikov et al.,“Microarray analysis of microbial virulence factors”Appl.Environ.Microbiol,67,3258−3263(2001);
【非特許文献14】Chizhikov et al.,“Detection and genotyping of human group A rotaviruses by oligonucleotide microarray hybridization”J. Clin.Microbiol,40,2398−2407(2002);
【非特許文献15】Wang et al.,“Microarray−based detection and genotyping of viral pathogens”Proc.Natl.Acad.Sci.USA,99,15687−15692(2002)
【非特許文献16】Wang et al.,“Viral discovery and sequence recovery using DNA microarrays”PLoS Biol,1,E2(2003)
【非特許文献17】Wilson et al.,“High−density microarray of small−subunit ribosomal DNA probes”Appl. Environ.Microbiol,68,2535−2541(2002)
【非特許文献18】Wilson et al.,“Sequence−specific identification of 18 pathogenic microorganisms using microarray technology”Mol.Cell Probes,16,119−127(2002)
【非特許文献19】Call et al.,“Identifying antimicrobial resistance genes with DNA microarrays”Antimicrob. Agents Chemother.,47,3290−3295(2003)
【非特許文献20】Call et al.,“Mixed−genome microarrays reveal multiple serotype and lineage−specific differences among strains of Listeria monocytogenes”J.Clin.Microbiol.,41,632−639(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
菌株レベルの同定は、密接に関連する生物が非常に異なる臨床結果と疫学パターンを有し得る場合、決定的に重要であり得る。そのような場合、適切な治療と管理ができるように菌株を識別しなければならない。臨床的に関連する百日咳菌とその姉妹種である臨床的に無関係なパラ百日咳菌は古典的な例を提供する。もう1つの例は、ワクチン感受性と非感受性菌株、ならびに循環ヒト単離物と可能性のある人獣共通伝染病菌株(たとえば鳥H5N1)の識別が直ちに且つ明らかな価値を有する、インフルエンザウイルスである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、あらかじめ決められたセットの病原体からの1またはそれ以上の病原体核酸を含むことが疑われる生物学的試料を用意し;試料に、あらかじめ決められた病原体のセットに認められる遺伝子に対応する複数のPCRプライマーを添加すること;そして試料上でポリメラーゼ連鎖反応を実施して遺伝子に対応する核酸のサブセットを増幅することを含む方法を包含する。プライマーは、各々の病原体について少なくとも1つのプライマー対を含み、およびプライマーは、いずれの病原体のDNAまたは試料中のいずれのバックグラウンドDNAにも相同でないテール配列を含む。ポリメラーゼ連鎖反応における少なくとも1個のプライマーの濃度は、約100nM以下である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
説明のためであって限定ではない、以下の説明において、特定の詳細は本発明の十分な理解を与えるために示すものである。しかし、本発明が、これらの特定詳細から逸脱する他の実施形態でも実施し得ることは当業者に明白である。また別の場合、不必要な詳細で本発明の説明をあいまいにしないように周知の方法および装置の詳細な説明は省く。
【0011】
臨床症候群が単一に病原体に特異的であることはめったになく、それ故多数の候補病原体を試験し、それらを識別することを可能にするアッセイは、公衆衛生の取り組みのために疑いなく有益である。ここで提示する研究は、広いスペクトルの条件下で20の一般的な呼吸器病原体、ならびに6の生物脅威因子に関する、多重RT−PCR/PCR、リシークエンシングアレイ(RA)、および自動配列類似性検索および病原体特定−RPM v.1システムを組み合わせた、RAアプローチの臨床診断および疫学的監視の潜在的可能性を明らかにする。多重PCR増幅の感受性とRAの特異性を組み合わせることにより、診断アッセイを評価するときにしばしば見られる特異性と感受性の間の相殺取引を回避し得る。これは、抽出緩衝液中または健常患者の臨床試料にスパイクした複合体混合物としての対照試料を用いて明らかにされた。データはまた、このシステムが、インフルエンザ様疾病を有する患者からの101の咽喉スワブ試料を使用して、HAdVおよびインフルエンザA型ウイルスの両方について受け入れられているRT−PCR/PCRおよび培養ベースの方法と等しい感受性を提供することを示す。
【0012】
短いオリゴヌクレオチドのリシークエンシングアレイ(RA)は、ARI病原体からのPCRアンプリコンの種レベルと菌株レベルの両方の同定を同時に提供し得る。これまでに認識されていない変異体からのユニーク多型を含む、菌株特異的情報が、アレイにタイル状に配置された原型配列からハイブリダイズされた標的を識別する配列相違を明らかにするRAの能力によって提供される(特許文献1参照)。これまでの試験は、明白な統計的解釈で、種と菌株の両方のレベルで広いスペクトルの気道病原体同定を達成するために、特注設計の呼吸器病原体マイクロアレイ(RPM v.1)を微生物核酸富化、ランダム核酸増幅および自動配列類似性検索を組み合わせた(非特許文献21);(非特許文献22)。しかし、一般的な増幅方法は、低い力価の病原体を有する臨床試料を取り扱うときには限られた成功しか収めてこなかった。本明細書で開示するのは、ランダムな標的増幅に関連する感受性の問題を軽減する改善された多重PCR増幅戦略である。ARIを呈する患者から得た臨床試料を使用した、実際に可能であることを示す実験の成功は、改善された検定時間(8.5時間)での直接配列読取りによる正しい種および菌株レベルの同定を提供しながら、標準参照アッセイ(たとえば培養、米国病理学会(College of American Pathologist)[CAP]認定PCR)との高い種レベルでの一致が達成できることを明らかにする。それらの結果は、このアプローチが直接自動化および小型化工程を受け入れやすく、それ故診断と監視の両方を目的としたマイクロアレイベースのプラットフォームを導き得ることを示唆する。
【0013】
【特許文献1】ProSeqs、本出願と同日に出願された、“Computer−Implemented Biological Sequence Identifier System and Method”と題するMalanoski et al.への米国特許出願第11/
【非特許文献21】Lin et al.,“Broad−spectrum respiratory tract pathogen identification using resequencing DNA microarrays”Genome Res.,16(4),527−535(2006)
【非特許文献22】;Wang et al.,”Rapid,Broad−spectrum Identification of Influenza Viruses by Resequencing Microarrays”Emerg.Infect.Dis.,12(4),638−646(2006)
【0014】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は当技術分野において周知である。本発明の方法は、病原体核酸を含み得る生物学的試料を使用する。この方法は、たとえば健常個体からの検体に関して実施し得るので、病原体核酸の存在を必要としない。予備段階として、病原体核酸を、鼻洗浄液、咽喉スワブ、痰、血液または環境試料などの、しかしこれらに限定されない、臨床試料から抽出し得る。臨床試料は、ヒトを含むがこれに限定されない、いかなる種の生物から入手してもよい。呼吸器病原体、腸病原体、および炭疽菌奉仕などの生物脅威病原体を含むがこれらに限定されない、いかなる種類の病原体も試験し得る。病原体のセットは、たとえば種レベルまたは菌株レベルで定義され得る。
【0015】
本発明の方法は、病原体に認められ得る遺伝子に対応するPCRプライマーを含む。PCRプライマーは当分野において周知である。各々の病原体について少なくとも1つのプライマー対が存在する。この方法で使用するプライマーは、病原体のいずれのDNAまたは試料中のいずれのバックグラウンドDNAにも相同でないテール配列を有する。バックグラウンドDNAは、臨床試料が得られた種のDNAであり得る。潜在的テール配列は、ランダムにまたは別の方法で作製でき、たとえばGenBankなどの遺伝子配列のデータベースとの比較によって評価し得る。テール配列は、一般に、テールがいかなる他のプライマーにも相補的でないので、それ自体は病原体DNAに結合せず、PCRにおけるプライマー二量体の形成を低減させ得る。ヒトから得た検体に関する使用に適するテールは、
CGATACGACGGGCGTACTAGCG(プライマーL、配列番号1)および
CGATACGACGGGCGTACTAGCGNNNNNNNNN(プライマーLN、配列番号2)を含むが、これらに限定されない。
【0016】
1つのPCRにおけるプライマーのセットは、たとえば少なくとも30、40、50、60、70、80、90または100個の異なるプライマーを含み得る。異なる長さの遺伝子に対応するプライマーを同じPCRにおいて使用し得る。たとえば少なくとも50、100または200以下および3000または2000以上のヌクレオチド長の増幅核酸が1回のPCRで生産され得る。
【0017】
これらのプライマーを使用するPCRは、PCRの分野で一般に知られるおよび本明細書で開示する他の成分または使用装置を含み得る。プライマーの低濃度が反応において使用され得る。1個からすべてのプライマーが約100nM以下の濃度で存在し得る。40−50nMのようなより低い濃度を使用し得る。
【0018】
生物学的試料を複数のアリコートに分割し、各々のアリコートに関して異なるプライマーを使用した別々のPCRを実施し得る。PCR後にアリコートを再び組み合わせ得る。これは、多数のプライマーを使用するときに実施し得る。PCRにおいてより多くのプライマーを使用するほど、プライマー二量体の形成を生じやすい。種々のプライマー混合物により、多数のアリコートに関してPCRをより良く最適化し得る。
【0019】
PCR後、病原体の同定を実施し得る。これは、試料を、増幅核酸の少なくとも一部に相補的である複数の核酸配列を含むマイクロアレイに接触させること、および増幅核酸を相補的核酸にハイブリダイズさせることによって実施し得る。そのような方法は(特許文献2)に述べられている。相補的核酸は、25から29量体であり得るが、これらに限定されない。そのような短い相補的核酸の使用は、不正対合がマイクロアレイにハイブリダイズする可能性を低下させる。相補的核酸は、増幅核酸の少なくとも1個から全部までに完全にマッチするプローブおよび各々の完全にマッチするプローブの中央位置の3個の異なる一塩基多型を含み得る。この配置は遺伝子の配列全体を決定することを可能にし、そのことが病原体の菌株の同定を可能にし得る。
【0020】
【特許文献2】米国特許出願第11/177,646号
【0021】
ハイブリダイゼーション後、いずれの相補的核酸が増幅核酸にハイブリダイズしたかを検出するために蛍光などの公知の方法を使用し得る。次に、いずれの増幅核酸が検出されるかに基づいて病原体を同定し得る。これは、いずれの遺伝子がアレイにハイブリダイズするかに基づいて病原体を同定する、パターン認識アルゴリズムによって実施し得る。また、上述したようにハイブリダイズした遺伝子の配列決定に基づいても実施し得る。
【0022】
分子診断手法は、病因因子の迅速で感受性のある同定を可能にする。PCR、RT−PCRおよびスポットマイクロアレイ等のような現在の方法は、偽陽性および偽陰性試験結果による誤同定を生じやすく、感受性と特異性の間で直接の相殺取引を受ける傾向がある。試料は、診断的PCR増幅のために使用される標的配列に類似の領域も同時に含み得る、バックグラウンド生物の大きくて多様な群から成る。非標的DNA(特にヒトDNA)の遺伝的複雑さは、交差反応性に起因する「偽陽性」産物の増幅を引き起こし得る。加えて、ウイルスは非常に速い速度で突然変異と組換え事象を通して進化し、特に感受性の高い試験を、絶え間ない再設計状態にさせるまたはほとんど即時に陳腐化する。遺伝的変異はまた、それらが感染の持続性と治療および/またはワクチン接種に対する応答に潜在的な影響がある抗原変異と相関し得るので、臨床的にも重要である。現在のPCR法で遺伝的変異を検討するには、付加的な配列決定工程が常に必要とされる。RPM v.1法は、種および菌株レベルで感染病原因子を検出するだけでなく、さらなる実験を必要とせずに微妙なゲノム差異も同定することができる。このアプローチはまた、7個までの病原体を高い感受性と特異性で同時に検出するための有効な手段であり、マイクロアレイ上の適切に選択された原型配列(ProSeqs)により、病原体についての明白で再現可能な配列に基づく菌株同定を可能にすることが示される。これは、各々の病原体の正確なフィンガープリンティング、抗生物質耐性プロファイリング、遺伝的浮動/シフト分析、法医学的分析、および多くの他のパラメータを許容することにより、臨床管理および局地的流行対策を増強するために有用であり得る。この能力は、鳥H5N1インフルエンザウイルスおよび生物テロ事象などの新たに生じる疾患の迅速な検出のために極めて貴重であり得る。
【0023】
本発明を説明したが、以下の実施例は本発明の特定適用を例証するために提示するものである。これらの特定実施例は、本出願において述べる本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例1】
【0024】
RPM v.1チップの設計−RPM v.1(呼吸器病原体マイクロアレイ)チップの設計は、27の呼吸器病原体と生物兵器因子からの29.7kbの配列のリシークエンシングを可能にする57のタイル状に配置された領域を含み、以前の試験において詳細に述べられている(非特許文献23)。簡単に述べると、RPMアレイは、標的生物のゲノムから選択される配列内の各々の塩基である(およびそれを中心とする)連続的な25量体の完全にマッチするプローブから成る。さらに、各々の完全にマッチするプローブについて、中央位置の3つの可能な一塩基多型(SNP)にあたる3個のミスマッチプローブもアレイ上に配置した。このようにして、一連の完全対合配列へのハイブリダイゼーションは重複存在/不在情報を提供し、ミスマッチプローブへのハイブリダイゼーションは菌株特異的なSNPデータを明らかにする。このチップ上で、2つの病原体、HAdVおよびインフルエンザA型には他の病原体よりも多くのプローブ表示を与えた。これらは、直ちに関係のある母集団(訓練中の米国陸軍入隊者)にとっての臨床的重要性に基づいて選択した。HAdVについては、血清型4、5および7の診断領域を含むE1A、ヘクソンおよびファイバー遺伝子からの部分配列を、すべてのARI関連HAdVの検出のためにタイル状に配列した。同様に、インフルエンザA型ウイルス検出のために配列した領域は、赤血球凝集素(亜型H1、H3およびH5)、ノイラミニダーゼ(亜型N1およびN2)、およびマトリックス遺伝子からの部分配列から成った。3つのHAdVと3つのインフルエンザA型ウイルスに加えて、現在のRPM設計は、15の他の一般的呼吸器病原体、および感染の初期段階でARI、すなわち「インフルエンザ様」症状を生じさせることが知られる、6つの米国疾病予防センターカテゴリーAの生物テロ病原体(表1)の識別を可能にする。RPM v.1の感受性と特異性を試験するために使用したすべての対照および野生株およびそれらの供給源を表1に列挙する。
【0025】
【非特許文献23】Lin et al.,“Broad−spectrum respiratory tract pathogen identification using resequencing DNA microarrays”Genome Res.,16(4),527−535(2006)
【0026】
表1:原型対照菌株についてのマイクロアレイに基づく検出の分析感受性
【表1】

【0027】
注:@:精製プラーク;:試験した最小検出限界;:BlueHeron Biotechnology(Bothell,WA)によって標的遺伝子が構築され、pUC119にクローニングされた。
【実施例2】
【0028】
臨床試料−アーカイブに保存されている咽喉スワブは、1999年−2005年に様々な陸軍入隊者訓練施設、米国/メキシコ国境地帯、および配備中の海軍艦船においてARI症状を有する患者から収集された。これらを、輸送の間ウイルス粒子を維持するために直ちにウイルス輸送培地(VTM)1.5mLを含む2mL凍結用バイアルに入れ、凍結して、−80℃またはそれ以下で保存した。その後試料を海軍健康研究センター(NHRC,San Diego,CA)に輸送し、解凍して、アリコートに分け、CAP認定の診断RT−PCR/PCRおよび培養試験を用いてHAdVおよびインフルエンザに関して試験した。凍結アリコートを、その後、盲検方式でマイクロアレイに基づく検出に供した。
【実施例3】
【0029】
核酸抽出−RNアーゼ消化を省く、MASTERPURE(商標)DNA精製キット(Epicentre Technologies,Madison,WI)、またはMagNA Pure Compact Nucleic Acid Isolation Kit I(Roche Applied Science,Indianapolis,IN)のいずれかを製造者の推奨するプロトコールに従って使用して、核酸を臨床試料から抽出した。
【実施例4】
【0030】
内部対照−NAC1およびトリオースリン酸イソメラーゼ(TIM)に対応する2つのシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)遺伝子を、それらは臨床試料中で自然に生じる可能性が低いので、逆転写(RT)およびPCR反応のための内部対照として選択した。上記の2個の遺伝子の〜500bpを含む2個のプラスミド、pSP64ポリ(A)−NAC1およびpSP64ポリ(A)−TIMは、The Institute for Genome Research(Rockville,MD)のDr.Norman H.Leeの好意により提供された。NAC1をSP6およびM13RプライマーでPCRによって増幅し、QIAquick PCR Purification Kit(Qiagen,Valencia,CA)を用いてPCR産物を精製した。pSP64ポリ(A)−TIMからRNAを作製するため、プラスミドをEcoRIで線形化し、MEGASCRIPT(登録商標)High Yield Transciption Kit(Ambion,Austin,TX)を用いてSP6プロモーターからインビトロ転写した。NAC1およびTIMの各々60fgを、増幅効率および検体中の阻害因子の存在を調べるための内部対照として使用した。
【実施例5】
【0031】
プライマーの設計と多重RT−PCR増幅−プライマーを2つの独立した反応に分けることは、プライマーの設計と最適化を単純にした。26の標的病原体(西ナイルウイルスがアレイに含まれているが、この増幅スキームには含まない)からのすべての標的遺伝子が、ハイブリダイゼーションを可能にするように十分に増幅することを確実にするため、両方の混合物に対する微調整(良好に増幅しなかったプライマーを新しいものと取り替えること)を実施した。RPM v.1チップ上のすべての標的についての遺伝子特異的プライマー対(表2、3および4〜7に列挙する)を、多重PCRのために良好な増幅効率を確保するように設計した。すべてのプライマーが同様のアニーリング温度を有するように設計し、唯一性を確実にするため、公知の配列についてのBLASTプログラムによるGenBankデータベースの完全な検索を使用して確認した。プライマー二量体形成の潜在的可能性を低減するため、全プライマーを他のプライマーへの潜在的ハイブリダイゼーションに関して検討した。加えて、我々は、(非特許文献24)および(非特許文献25)によって開発された方法を、プライマー二量体形成をさらに抑えるためこの試験において使用したプライマーの5’末端に22bpのリンカー配列(プライマーL)を付加することによって適合させた。逆転写(RT)反応は、50mMトリス−HCl(pH8.3)、75mM KC1、3mM MgCl、dATP、dCTP、dGTP、dTTPの各々500μM、RNアーゼOUT(商標)40U、10mM DTT、プライマーLN 2μM、Superscript III 200U(Invitrogen Life Technologies,Carlsbad,CA)、2つの内部対照(NAC1およびTIM)の各々60fg、および抽出した臨床検体または実験対照5−8μlを含む20μl容量中で実施した。反応は、Peltier Thermal Cycler−PTC240 DNA Engine Tetrad 2(MJ Research Inc.,Reno,NV)を製造者の推奨するプロトコールに従って使用して実施した。
【0032】
【非特許文献24】Shuber et al.,“A simplified procedure for developing multiplex PCRs”Genome Res.,5,488−493(1995)
【非特許文献25】Brownie et al.,“The elimination of primer−dimer accumulation in PCR”Nucleic Acids Res.,25,3235−3241(1997)
【0033】
表2、3:多重PCRのために使用したプライマー混合物AにおけるPCRプライマーのリスト
【表2】

【0034】
【表3】

【0035】
表4〜7:多重PCRのために使用したプライマー混合物BにおけるPCRプライマーのリスト
【表4】

【0036】
【表5】

【0037】
【表6】

【0038】
【表7】

*RSV:呼吸器合胞体ウイルス
【0039】
RT反応産物を、2つの異なる多重PCR反応に供するために2つの10μl容量に分けた。プライマー混合物Aは、19のプライマー対を含み、3個の異なるインフルエンザA型ウイルス、1個のインフルエンザB型ウイルス、3つの血清型のHAdVからの18個の遺伝子標的、および1個の内部対照(TIM)を増幅する。プライマー混合物Bは、38のプライマー対を含み、残りの37個の遺伝子標的および他方の内部対照(NAC1)を増幅する。PCR反応は、20mMトリス−HCl(pH8.4)、50mM KC1、2mM MgCl、dATP、dCTP、dGTP、dUTPの各々400μM、熱不安定性ウラシル−DNAグリコシラーゼ1U(USB,Carlsbad,CA)、プライマーL 2μM、混合物Aからのプライマー各々40nMまたは混合物Bからのプライマー各々50nM、白金Taq DNAポリメラーゼ(Invitrogen Life Technologies,Carlsbad,CA)、およびRT産物10μlを含む50μl中で実施した。増幅反応は、Peltier Thermal Cycler− PTC240 DNA Engine Tetrad 2(MJ Research Inc.,Reno,NV)において、初期インキュベーション25℃、10分、予備変性94℃、3分、次いで94℃、30秒、50℃、90秒、72℃、120秒の5サイクル、次に94℃、30秒、64℃、120秒の35サイクル、および72℃、5分の最終伸長で実施した。両方のPCR反応からの増幅産物を単一容量に混合し、精製およびプロセシングに供した後、RPM v.1チップにハイブリダイズした(以下参照)。
【実施例6】
【0040】
マイクロアレイハイブリダイゼーションとプロセシング−2つのPCR産物混合物を、断片化とマイクロアレイへのハイブリダイゼーションのために増幅後に再び一緒にした。マイクロアレイハイブリダイゼーションおよびプロセシングを、以下の修正を加えて製造者の推奨するプロトコールに従って(Affymetrix Inc.,Santa Clara,CA)実施した。精製したPCR産物を37℃で5分間断片化し、その後37℃で30分間ビオチン−N6−ddATPで標識した。ロティサリーオーブンにおいて45℃、60回転/分で2時間、ハイブリダイゼーションを実施した。走査後、対応するプローブ位置の各々に割り当てた強度で生画像(.DAT)ファイルを単純化ファイル形式(.CELファイル)に変換するためにGCOSソフトウエアを使用した。最後に、正しいベースコール(塩基呼び出し)の推定値を生成するためにGDASソフトウエアを使用して組み込み型のABACUS(非特許文献26)アルゴリズムを適用し、センスとアンチセンスプローブセットについてのそれぞれの強度を比較した。ベースコールのパーセンテージを高めるため、最も許容性のベースコーリングを可能にするようにパラメータを調整した(以下参照)。リシークエンシングアレイの各々のタイル状配置領域について作製したベースコールからの配列を、次に、FASTA形式ファイルとしてGDASからエクスポートした。
【0041】
【非特許文献26】Cutler et al.,“High−throughput variation detection and genotyping using microarrays”Genome Res.,11,1913−1925(2001))
【0042】
−フィルター条件
・無シグナル閾値=0.500(デフォルト=1.000000)
・弱シグナルフォールド閾値=20000.000(デフォルト=20.000000)
・大きなSNR閾値=20.000000(デフォルト=20.000000)
−アルゴリズムパラメータ
・鎖のクオリティ閾値=0.000(デフォルト=0.000000)
・総クオリティ閾値=25.0000(デフォルト=75.000000)
・ヘテロ接合コールの最大フラクション=0.99000(デフォルト=0.900000)
・モデル型(0=ヘテロ接合、1=ホモ接合)=0
・完全コールクオリティ閾値=0.500(デフォルト=2.000000)
−最終信頼性規則
・近接プローブにおけるコールの最小フラクション=1.0000(フィルターを無効にする)
・試料のコールの最小フラクション=1.0000(フィルターを無効にする)
【実施例7】
【0043】
自動病原体同定アルゴリズム(NA配列に基づく病原体同定)−マイクロアレイハイブリダイゼーションと走査から生じた生出力配列を、データベース記録に対する配列類似性比較を用いて病原体を同定するアルゴリズムを使用して処理した。Resequencing Pathogen Identification (REPI)プログラムにおいてこれまでに実施された作業を組み込み(非特許文献27)、加えてこれまで手動で行われた決定を実施することによって完全に結果を解析するため、新しいソフトウエアプログラム、omputer−mplemented iological equence−based dentifierシステムバージョン2(CIBSI 2.0)を開発した。改善されたREPIアルゴリズムを含む、このプロトコールのより広い考察が、2006年6月6日出願の米国特許出願第11/422,431号に詳細に述べられている。
【0044】
【非特許文献27】Lin et al.,“Broad−spectrum respiratory tract pathogen identification using resequencing DNA microarrays”Genome Res.,16(4),527−535(2006)
【実施例8】
【0045】
病原体の定量−このアッセイの特異性を、様々な原型菌株および臨床試料を用いて確認した。結果は、標的間の識別可能な干渉を示さなかった。RPM v.1アッセイの分析感受性を、次に、原型菌株の核酸鋳型の連続10倍希釈を用いて評価した。表1は、各々の病原体についてその病原体が検出可能である最小希釈を示す。それらの結果は、原型菌株について反応当たり10−10ゲノムコピーの感受性範囲を明らかにし、これは標準多重RT−PCR/PCR法の感受性に匹敵する。ゲノムコピー数は、呼吸器病原体についての生菌数より桁違いに高くない限り、通常は少なくとも1であるので、ゲノムコピー数は生菌数(プラーク形成単位)と同じではないことに留意すべきである。より特異的なプロトコールで最初に明らかにされた近接する遺伝子を同定し、識別するRPM v.1の能力が、このプロトコールで再現された。ヒトアデノウイルス(HAdV)の17の異なる血清型から生じた配列は、このアッセイが様々なARI関連HAdV菌株を区別できることを明らかにし、このアッセイが広範囲の変異体を検出するために使用できることを証明した(表8)。標的のクロスハイブリダイゼーションは、種々の血清型の中でHAdVヘクソン遺伝子に関してのみ認められた;しかしこれは、正しい標的病原体の明確な同定を妨げない。
【0046】
表8:様々なFRIが引き起こすHAdVのRPM v.1による識別
【表8】

【0047】
感受性評価のため、各々の試料中のアデノウイルスの数を測定するためにiCyclerまたはMYIQ(商標)装置(Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA)でリアルタイムPCRアッセイを実施した。試料についての所見を、ファイバー特異的プライマーAd4F−FおよびAd4F−Rを使用することにより、既知のコピー数(10−10コピー)のHAdV−4原型ゲノムDNA鋳型の10倍連続希釈に関する所見と比較した(表9)。精製ウイルスDNAからDNA濃度を測定し、以下の換算係数を用いることによってHAdV−4ゲノムコピー数を算定した:0.384fg=〜35kbの1個のアデノウイルスゲノム。リアルタイムPCR反応は、FastStart Reaction Mix SYBR Green I(Roche Applied Science,Indianapolis,IN)2.5μl、20mMトリス−HCl(pH 8.4)、50mM KCl、3mM MgCl、dATP、dTTP、dGTP、dCTPの各々200μM、プライマー200nM、およびアデノウイルスゲノムDNA(臨床検体またはDNA抽出物1−4μl)を含む反応容量25μl中で実施した。増幅反応は、94℃、10分の予備変性、次いで94℃、20秒、60℃、30秒の40サイクルで実施した。
【0048】
特異的プライマー(表4)および先に述べられている(非特許文献28);(非特許文献29);(非特許文献30);(非特許文献31);(非特許文献32)RT−PCR/PCR条件を使用することにより、他の病原体のゲノムコピー数を測定するために同様のアッセイを実施した。
【0049】
【非特許文献28】Stone et al.,“Rapid detection and simultaneous subtype differentiation of influenza A viruses by real time PCR”J.Virol.Methods,117,103−112(2004)
【非特許文献29】Hardegger et al.,“Rapid detection of Mycoplasma pneumoniae in clinical samples by real−time PCR”J.Microbiol.Methods,41,45−51(2000)
【非特許文献30】Corless et al.,“Simultaneous detection of Neisseria meningitidis, Haemophilus influenzae,and Streptococcus pneumoniae in suspected cases of meningitis and septicemia using realtime PCR”J.Clin.Microbiol,39,1553−1558(2001)
【非特許文献31】Moiling et al.,“Direct and rapid identification and genogrouping of meningococci andporA amplification by LightCycler PCR”J. Clin.Microbiol.,40,4531−4535(2002)
【非特許文献32】Vabret et al.,“Direct diagnosis of human respiratory coronaviruses 229E and OC43 by the polymerase chain reaction”J.Virol.Methods,91,59−66(2001)
【0050】
表9.定量的リアルタイムPCRのために使用したPCRプライマーのリスト
【表9】

【0051】
呼吸シンシチアルウイルス、二重ラベルプローブは5’末端でフルオレス−レポーター色素として6−カルボキシ−フルオレスセンス(FAM)、および3’末端にブラックホールクエンチャー(Black Hole Quenchers)を含有する。
参考文献:(非特許文献33).((非特許文献34).(非特許文献35).(非特許文献36).(非特許文献37).(非特許文献38).
【0052】
【非特許文献33】Stone et al.,“Rapid detection and simutaneous subtype differentiation of influenza A viruses by real time PCR”J.Virol. Methods,117,103−112(2004)
【非特許文献34】Vabret et al.,“Direct diagnosis of human respiratory coronaviruses 229E and OC43by the polymerase chainreaction”J.Virol. Methods,97,59−66(2002)
【非特許文献35】Hardegger er at.,”Rapid detection of Mycoplasma pneumoniae in clinic samles by real−time PCR”J.Microbiol.Methods,41,45−51(2000)
【非特許文献36】Corless at al.,“Simultaneous detection of Neisseria meningitidis, Haemophilus influenzae, and Streptococcus peneumoniae in suspected cases of meningitis and septicemia using real−time PCR”J.Clin.Microbiol.,39,1553−1558(2001)
【非特許文献37】Mentel et al.,“Real−time PCRto improve the diagnosis of respiratory syncytial virus infection”J.Med.Microbiol.,52,893−896(2003)
【非特許文献38】Molling et al.,“Direct and rapid identification and genogrouping of meningococci and porA amplification by LightCycler PCR”J.Clin.Microbiol.,40,4531−4535(2002)
【実施例9】
【0053】
呼吸器病原体の同時検出と識別−これまでの試験は、単一病原体種を正確に同定することに加えて、病原体検出のためにRPM v.1アッセイを使用することの顕著な利益の1つが同時感染を検出する能力であることを示した。この試験では、多数の病原体を同時に同定するRPM v.1アッセイの能力を、病原体鋳型の様々な組合せの製剤によってさらに評価した(表10および11)。多数の病原体についての検出感受性および特異性を評価するために鋳型の連続希釈を使用した。各々の病原体、HAdV−4、化膿連鎖球菌、肺炎マイコプラスマ、およびペスト菌の反応当たり10−10ゲノムコピーを含む核酸鋳型を混合し、RPM v.1アレイで試験した。これらの結果は、このアッセイが、反応当たりの標的につき10ゲノムコピーの最小濃度でも4つの病原体すべての再現可能な配列に基づく同定を可能にすることを明らかにした(表10)。この複雑な混合物において識別可能な干渉が存在しなかったという事実は、複雑な混合物においても、RAのヌクレオチドベースコーリング能力および付随する同定アルゴリズムの頑健性を裏付けた。
【0054】
複雑な混合物における多病原体検出のためのこのアプローチの有効性をさらに評価するため、3−7の培養生物を、志願者から収集した鼻洗浄液プールに異なる力価で[10−10(cfuまたはpfu)/mL]スパイクし、調製した試料150μLを試験のために使用した。初期結果は、このアプローチが、100cfu(pfu)/mLの最小力価で同時に7つの病原体、HAdV−4、HAdV−7、炭疽菌、インフルエンザA型−H1N1、パラインフルエンザウイルス、RSV−A、肺炎マイコプラスマ、および化膿連鎖球菌の明確な検出を可能にすることを明らかにした(表11)。異なるセットの7つの病原体に関するさらなる評価は、RPM v.1アッセイがそれらのうちの6つを同時に検出できることを示した。これらの中で、HAdV−4、炭疽菌、インフルエンザA型−H1N1、RSV−A、および肺炎マイコプラスマは100cfu(pfu)/mLの最小力価で検出され、化膿連鎖球菌は1000cfu(pfu)/mLで検出された(表6)。ペスト菌は最高濃度でも検出できなかった。精製核酸鋳型を使用したときには1000ゲノムコピーのペスト菌が検出できたので、これは無傷ペスト菌病原体についての核酸抽出プロトコールの不適切さに帰せられた(表1および10)。さらなる確認のため、RPM v.1を、精製核酸鋳型を使用して試験した同じセットの4つの病原体に関して培養生物で試験した(表10)。失敗することなく、結果は、このアッセイが100cfu(pfu)/mLでHAdV−4と肺炎マイコプラスマを再現可能に検出できるが、化膿連鎖球菌に対してより感受性が低く(1000cfu(pfu)/mL)、ペスト菌は検出できないことを示した。3つの病原体、この場合は炭疽菌、インフルエンザA型−H1N1、およびHCoV−229EまたはRSV−A、を同時に試験したとき、アッセイは100cfu(pfu)/mLの低い力価で3つの病原体すべてを検出した(表11)。これらの結果は、RAに基づくアプローチが、少なくとも7つの病原体の同時感染を検出するための高い感受性と特異性の利点を備えた、鼻洗浄液試料から直接様々な病原体を検出し、分類する有効な手段であることを指示する。このアプローチは、個体群内でのこれらの病原体の常套的診断および疫学調査のために有用であり、多数の病原体の発生率に関する新しい情報を提供する。
【0055】
表10:RPM v.1による多数の核酸鋳型の同時検出
【表10】

注:試料は、10ゲノムコピー/μlの原液を作製するためにTE緩衝液中で精製核酸鋳型を混合することによって生成した。この濃度から始めて、TE緩衝液中で10倍連続希釈を調製した。
【0056】
表11:RPM v.1による多数の病原体の同時検出
【表11】

【0057】
注:試料は、10cfu(pfu)/mlを生成するために健常志願者から収集した鼻洗浄液プールと培養試料を混合することによって作製した。この濃度から始めて、健常志願者から収集した鼻洗浄液プールによる10倍連続希釈を調製した。各々の希釈について、試料150μlをRPM v.1処理のために使用した。BA−炭疽菌(Sterne)、H1N1−インフルエンザA型−H1N1、HCoV229E−ヒトコロナウイルス229E、HAdV−ヒトアデノウイルス、GAS−化膿連鎖球菌(A群連鎖球菌属)、MP−肺炎マイコプラスマ、PIV1−パラインフルエンザウイルス1、RSV−呼吸器多核体(RS)ウイルス、YP−ペスト菌。+:検出、−:検出されず。
【実施例10】
【0058】
臨床検体の評価−病原体検出に関するRPM v.1アッセイの能力を成功裏に証明した後、ARIを引き起こす感染症の予期的および後方視的診断のためにそれを使用した。主としてARIを呈する陸軍入隊者から収集した臨床検体を、マイクロアッセイに基づく診断の有用性を呼吸器病原体検出のより確立された方法と比較するために使用した。試料(n=101)は、臨床的に確認された呼吸器疾病を有するウイルス輸送培地中の咽喉スワブから成った。試料は、NHRCにおいてCAP認定の診断方法(細胞培養および/またはPCR)を用いてHAdVまたはインフルエンザウイルスに関して試験陽性であったセットから無作為に選択した。これらを盲検化し(無作為に改めて番号を割り当て、関連する臨床記録から切り離した)、RPM v.1試験のために海軍研究所(NRL)に送った。比較した実験は2つの独立した研究室によって実施され、試料の同一性は結果がまとめられた後に初めて明らかにされた。インフルエンザA型ウイルスについては、RPM v.1法は、初期診断結果に関して87%の検出感受性および96%の特異性、および92%の全体的一致を示した(表12)。アデノウイルスについては、RPM v.1の検出感受性は97%、特異性は97%であり、97%の全体的一致であった(表12)。RPM v.1結果を培養およびPCR法とさらに比較したとき、データは、培養またはPCRアッセイに比肩し得る検出感受性および特異性を示した(表13)。データは、分子学的方法が一般に培養よりも感受性が高いことから予想され得るように、RPM v.1が培養またはPCRよりも良好な感受性および特異性を有すること、およびRPM v.1法の配列決定能力はPCRよりも高い特異性を提供することを示唆した(表14)。このデータは、マイクロアレイに基づく診断が非培養患者検体中の臨床的に関連するインフルエンザA型菌株を正しく同定する能力をさらに強力に示した。
【0059】
表12:臨床試料におけるアデノウイルス、インフルエンザA型ウイルスおよび陰性対照検出に関するRPM v.1の評価
【表12】

【0060】
表13:40の臨床試料におけるインフルエンザA型ウイルス陽性および陰性対照検出についての、培養およびリアルタイムPCRアッセイとRPM v.1の比較
【表13】

【0061】
表14:40の臨床試料におけるインフルエンザA型ウイルス陽性および陰性対照検出についてのリアルタイムPCRアッセイと培養の比較
【表14】

【0062】
この試験は、このアッセイがインフルエンザウイルスの亜型を同定し、インフルエンザ菌株内の遺伝子変化を追跡する能力を明らかにした。抗原ドリフトは、インフルエンザウイルスがそれまでの自然暴露およびワクチン接種によって誘導される免疫圧を免れる機構であるので、これはインフルエンザの疫学にとって特に重要である。RPM v.1から生じた赤血球凝集素(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)配列の分析は、抗原ドリフトを通して1999−2005年に起こった公知の系統変化を反復した(表15)。2003−2004年のインフルエンザシーズンに先立って収集された7つのインフルエンザA/H3N2臨床検体は、A/Panama/2007/99様系統に属すると同定され、一方2003−2004年のインフルエンザシーズンに収集された9つのインフルエンザA/H3N2試料は、明らかに、HA遺伝子内にシグナチャーA/Fujian/411/2002様系統のヌクレオチド置換を担持していた。A/Fujian/411/2002様菌株からA/California/7/2004様菌株へのシフトは、2004−2005年のインフルエンザシーズンに収集された18のインフルエンザA/H3N2試料において明らかである。3つの試料がA/Fujian/411/2002様菌株と同定され、残りはHA遺伝子内のシグナチャーCalifornia様核酸置換を示した。同じ期間中に収集された2つの試料は、インフルエンザA/H3N2とだけしか同定することができなかった。これは、標的の増幅および/またはハイブリダイゼーションの不良によるものであり、菌株レベルの同定のための十分な配列情報を生じなかった。2000−2001年に収集された2つのインフルエンザA/H1N1試料は、A/New Caledonia/20/99に密接に関連すると同定された。
【0063】
表15:RPM v.1を用いたインフルエンザ菌株および系統の同定
【表15】

注:は、1つの菌株だけが同定されたことを示す。
【0064】
臨床試料中の1つの病原体を検出することに加えて、HAdV−4/インフルエンザA型ウイルス、HAdV−4/化膿連鎖球菌、およびインフルエンザA型ウイルス/肺炎マイコプラスマなどの様々な同時感染を臨床試料において検出することができた(データは示していない)。これらの同時感染は、公表されている型特異的PCRアッセイ(非特許文献39);(非特許文献40)および手持ちの特異的PCRプライマー(表9)を用いてさらに確認された(データは示していない)。さらに、このアッセイはまた、臨床試料の26%における肺炎連鎖球菌および16%における髄膜炎菌を検出した。肺炎連鎖球菌および髄膜炎菌の存在は、臨床試料のうちの40のサブセットにおいて(使用可能な試料容量のために制限された)公表されている種特異的な定量的リアルタイムPCRアッセイによって確認された(データは示していない)。肺炎連鎖球菌と髄膜炎菌が口内および上気道系における共生細菌であることは周知であるので、これらが臨床試料中で一般的に認められることは意外ではない。しかし、定量的リアルタイムPCRデータは、臨床試料中に存在する肺炎連鎖球菌および髄膜炎菌の大部分が低い力価であったが(≦10ゲノムコピー/μl)、インフルエンザ陽性試料の32%が高い力価の肺炎連鎖球菌(7/25)または髄膜炎菌(1/25)(≧10ゲノムコピー/μL)を有することを示した(データは示していない)。これらの臨床試料中に存在する高力価細菌は、おそらくウイルスが誘導する細菌の重複感染によるものである。
【0065】
【非特許文献39】Stone et al.,“Rapid detection and simultaneous subtype differentiation of influenza A viruses by real time PCR”J.Virol.Methods,117,103−112(2004)
【非特許文献40】Hardegger et al.,“Rapid detection of Mycoplasma pneumoniae in clinical samples by real−time PCR”J.Microbiol.Methods,41,45−5(2000)
【実施例11】
【0066】
プライマーLおよびLNによる多重PCRプロトコール−以下は、実施例手順の詳細なプロトコールである。
【0067】
調製作業
1.pSP64ポリ(A)−TIM−MEGASCRIPT(登録商標)SP6キット(Ambion,カタログ番号1330)からTIM RNAを作製する
a)pSP64ポリ(A)−TIM 1μgをEcoRI酵素で線形化する
xμl pSP64ポリ(A)−TIM
2μl 10xEcoRI緩衝液
2μl EcoRI(NEB,カタログ番号R0101S)
(16−x)μl H
――――――――――――――――――――――――――――――――――
20μl 総容量
反応物を37℃で5時間インキュベートする。
b)以下を添加することによって制限消化を停止する:
・1/20容の0.5M EDTA(1μl)
・1/10容の3M酢酸ナトリウム(2μl)
・2容のエタノール(40μl)
c)十分に混合し、−20℃で20分間冷却する。次に最高速度のマイクロ遠心分離機で15分間DNAをペレット化する。
d)上清を除去し、チューブを数秒間再び遠心して、非常に微細な先端のピペットで残留液を取り出す。ヌクレアーゼ不含水20μlに再懸濁する。
e)RNAポリメラーゼ酵素混合物を氷上に置く。
f)10X反応混合液および4つのリボヌクレオチド溶液をボルテックスする。
g)(ATP、CTP、GTPおよびUTP)それらが完全に溶液になるまで。
h)ひとたび解凍すれば、リボヌクレオチドを氷上で保存するが、10X反応緩衝液は、反応物を作製する間室温に保持する。
i)すべての試薬は、チューブの縁の周囲に存在し得る物質の損失および/または汚染を防ぐために開封前に短時間マイクロ遠心すべきである。
j)以下の転写反応物を室温で組み合わせる。
16μl 線形化pSP64ポリ(A)−TIM
16μl NTP(ATP、GTP、CTP、UTP−各々4μl)
4μl 10X反応緩衝液
4μl 酵素混合物
40μl 総容量
――――――――――――――――――――――――――――――――――
反応物を37℃で6時間インキュベートする。
k)RNA産物をProbeQuant(商標)G−50 Micro Column(Amersham,カタログ番号27533501)で精製する。
l)回収したRNAのO.D.を測定し、希釈して60fg/μl原液を作製する。
【0068】
2.白金Taq DNAポリメラーゼ(Invitrogen,カタログ番号10966−034)でpSP64ポリ(A)−NAC1−PCRからNAC1 DNAフラグメントを作製する
1μl pSP64ポリ(A)−NAC1(1ng/μl)
5μl 10xPCR緩衝液
2μl 50mM MgCl
1μl 10mM dNTP混合物
1μl SP6(10μM)
5’−ATT TAG GTG ACA CTA TAG AAT−3’
1μl SP6(10μM)
5’−CAG GAA ACA GCT ATG ACC ATG−3’
0.5μl 白金Taqポリメラーゼ
38.5μl H
――――――――――――――――――――――――――――――――――
50μl 総容量
以下のPCRプログラムを実施する:
94℃−3分
以下の40サイクル:
94℃−30秒
50℃−30秒
72℃−40秒
72℃−5分
4℃−永続的。
【0069】
精製PCR産物−QIAquick(登録商標)PCR精製キット(Qiagen,カタログ番号28106)
a)PB緩衝液250μlをPCR試料50μlに添加する。
b)QIAquick遠心カラムを2ml収集チューブに入れる。
c)DNAを結合するため、試料をQIAquickカラムに適用し、30−60秒間遠心する。
d)フロースルー液を廃棄し、QIAquickカラムを同じチューブに戻す。
e)洗浄するため、PE緩衝液0.75mlをQIAquickカラムに添加し、30−60秒間遠心する。
f)フロースルー液を廃棄し、QIAquickカラムを同じチューブに戻す。
g)カラムをさらに1分間遠心する。
h)QIAquickカラムを正常な1.5mlマイクロ遠心チューブに入れる。
i)DNAを溶出するため、EB緩衝液(10mMトリス・Cl、pH8.5)またはHO 50μlをQIAquick膜の中心部に添加し、カラムを1分間放置して、その後カラムを1分間遠心する。
j)PCR産物のO.D.を測定し、希釈して60fg/μl原液を作製する。
【0070】
3.100μMオリゴ原液10μl(表2(a))を混合することによって1μMプライマー混合物A原液1mlを作製し、水を加えて1mlにする。十分に混合し、その後100μlアリコートに分ける。
4.100μMオリゴ原液10μl(表2(b))を混合することによって1μMプライマー混合物B原液1mlを作製し、水を加えて1mlにする。十分に混合し、その後100μlアリコートに分ける。
【0071】
多重PCR
1.核酸抽出−MASTERPURE(商標)DNA精製キット(Epicentre,カタログ番号MC89010)
a)1XPBS100μlを鼻洗浄液50μlに添加する。
b)プロテイナーゼK1μlと2XT&C溶解溶液150μlを添加する。
c)65℃で15分間インキュベートし、5分ごとにボルテックスする。
d)氷上または4℃で3−5分間インキュベートする。
e)MPC溶液150μlを試料に添加し、10秒間ボルテックスする。
f)最大速度で10分間遠心する。
g)上清を新鮮1.5mlチューブに移し、次にイソプロパノール500μlを加えて、十分に混合する。
h)4℃にて最大速度で10分間遠心する。上清を廃棄し、その後80%アルコールで2回洗浄する。
i)ペレットを乾燥し、ヌクレアーゼ不含水8μlに再懸濁する。
2.プライマーLNによる逆転写−Invitrogen Superscript III(Invitrogen,カタログ番号18080−093)
工程1からのNA 8μl
プライマーLN(40μM) 1μl
5’−CGA TAC GAC GGG CGT ACT AGC GNN NNN NNN N−3’
10mM dNTP 1μl
TIM(60fg/μl) 1μl
NAC1(60fg/μl) 1μl
――――――――――――――――――――――――――――――――――
総容量 12μl
65℃で5分間インキュベートし、その後>1分間氷上に置く。
以下の反応混合物をチューブに添加し、ピペットで取ることによって静かに混合する:
5X第一鎖緩衝液 4μl
0.1M DTT 2μl
RNアーゼOUT 1μl
SuperScript III 1μl
――――――――――――――――――――――――――――――――――
総容量 8μl
PCR装置で以下のプログラムを実施する:
25℃−10分
50℃−50分
85℃−5分
【0072】
3.多重PCRをプライマーLで分割する
a.反応物A:
10XPCR緩衝液 5μl
50mM MgCl 4μl
50XdNTP 2μl
プライマーL(100μM) 1μl
5’−CGA TAC GAC GGG CGT ACT AGC G−3’
プライマーA混合物(1μM) 2μl
5xQ溶液 5μl
RT鋳型(工程2から) 10μl
白金taq 2μl
ヌクレアーゼ不含水 18μl
UDG 1μl
――――――――――――――――――――――――――――――――――
総容量 50μl
b.反応物B:
10XPCR緩衝液 5μl
50mM MgCl 4μl
50XdNTP 2μl
プライマーL(100μM) 1μl
5’−CGA TAC GAC GGG CGT ACT AGC G−3’
プライマーB混合物(1μM) 2.5μl
5xQ溶液 5μl
RT鋳型 10μl
白金taq 2μl
ヌクレアーゼ不含水 17.5μl
UDG 1μl
――――――――――――――――――――――――――――――――――
総容量 50μl
以下のPCRプログラムを実施する:
94℃−3分
以下の5サイクル:
94℃−30秒
50℃−90秒
72℃−2分
以下の35サイクル:
94℃−30秒
64℃−2分
72℃−5分
4℃−永続的。
【0073】
アレイの作製
タグIQ−EX PCR−1.0kbのタグIQ−EXまたは7.5kbのタグIQ−EX
1.0kbのタグIQ−EX PCR
正プライマー(1kb) 3μl
逆プライマー 3μl
タグIQ−EX 5μl
MgCl(50mM) 5μl
dNTP(10mM) 2μl
10XPCR緩衝液 10μl
白金Taq DNAポリメラーゼ 1μl
水 71μl
――――――――――――――――――――――――――――――――――
総容量 100μl
・94℃、3分
・94℃、30秒;68℃、30秒;72℃、40秒の30サイクル
・72℃、10分
7.5kbのタグIQ−EX PCR
正プライマー(7.5kb) 3μl
逆プライマー 3μl
タグIQ−EX 5μl
dNTP(LA PCRキット) 16μl
10XPCR緩衝液(LA PCRキット) 10μl
TaKaRa Taq 1μl
水 62μl
――――――――――――――――――――――――――――――――――
総容量 100μl
・94℃、3分
・94℃、30秒;68℃、7分30秒の30サイクル
・68℃、10分
【0074】
精製PCR産物(タグIQ−EXおよび多重PCR)−QIAquick(登録商標)PCR精製キット(Qiagen,カタログ番号28106)
a)PB緩衝液500μlをPCR試料100μl(反応物AとBを一緒にする)に添加する。
b)QIAquick遠心カラムを2ml収集チューブに入れる。
c)DNAを結合するため、試料をQIAquickカラムに適用し、30−60秒間遠心する。
d)フロースルー液を廃棄する。QIAquickカラムを同じチューブに戻す。
e)洗浄するため、PE緩衝液0.75mlをQIAquickカラムに添加し、30−60秒間遠心する。
f)フロースルー液を廃棄し、QIAquickカラムを同じチューブに戻す。
g)カラムをさらに1分間遠心する。
h)QIAquickカラムを清浄な1.5mlマイクロ遠心チューブに入れる。
i)DNAを溶出するため、EB緩衝液(10mMトリス・Cl、pH8.5)またはHO 40μlをQIAquick膜の中心部に添加し、カラムを1分間放置して、その後カラムを1分間遠心する。
j)PCR産物のO.D.を測定する。
【0075】
断片化と標識化
1.断片化のために試料につき1つのチューブを用意し、各々の反応物について最終容量35μlになるまでEB緩衝液を添加する。タグIQ−EXを1つの試料として処理する。
【0076】
【表16】

【0077】
2.氷上で断片化カクテルを調製する
10X断片化緩衝液 4.3μl
水 3.23μl
断片化試薬 0.07μl
総容量 7.6μl
3.氷上で断片化試薬を冷却し、その後工程1および2から作製した各々のDNAに7.6μlを添加する。
4.以下のプログラムを実施する:
・37℃、5分
・95℃、10分
・4℃、保持
5.標識化カクテルを調製する(反応物当たり)
Tdt緩衝液(5X) 12μl
遺伝子チップDNA標識化試薬(5mM) 2μl
TdT(30U/μl) 3.4μl
総量 17.4μl
6.標識化カクテル17.4μlを反応物の各々1つずつおよび対照断片化PCR産物に添加する。
【0078】
7.以下のプログラムを実施する:
・37℃、30分
・95℃、5分
・4℃、保持
ハイブリダイゼーション
1.45℃に設定したハイブリダイゼーションオーブンのスイッチを入れ、チップを室温に温める。
2.プレハイブリダイゼーション溶液を調製する。
1%トゥイーン−20 2μl
1Mトリス、pH7.8 2μl
水 196μl
――――――――――――――――――――――――――――――――――
総容量(チップ当たり) 200μl
3.チップを45℃のプレハイブリダイゼーション緩衝液とプレハイブリダイズする。
4.ハイブリダイゼーションマスターミックスを作製する。
タグIQ−EX(断片化して0.26μg) 1.9μl
5M TMAC 132μl
1Mトリス、pH7.8 2.2μl
1%トゥイーン−20 2.2μl
ニシン精子DNA(10mg/ml) 2.2μl
アセチル化BSA 2.2μl
対照オリゴB2 3.4μl
水 13.9μl
――――――――――――――――――――――――――――――――――
最終容量(チップ当たり) 160μl
ハイブリダイゼーションマスターミックスのためにどれだけの断片化タグIQ−EXが必要かを決定するには以下の計算を用いる:
・精製PCR産物濃縮物(たとえば100ng/μl)×35μl=3500ng
・断片化および標識後の最終容量は60μlである。
・断片化タグIQ−EXの最終濃度=58.3ng/μl
・260/58.3=4.4658.3μlが必要である。
5.標識試料60μlに160μlを添加する。以下のプログラムを実施する:
・95℃、5分
・45℃、5分
6.チップからプレハイブリダイゼーション緩衝液を除去し、ハイブリダイゼーションミックスを満たす。
7.45℃、60rpmで一晩ハイブリダイズする。
洗浄と染色
1.洗浄緩衝液AおよびBを調製する。
緩衝液A
20XSSPE 300ml
10%トゥイーン−20 1ml
水 699ml
――――――――――――――――――――――――――――――――――
0.2μmフィルターでろ過し、ふたをして室温で保存する。
緩衝液B
20XSSPE 30ml
10%トゥイーン−20 1ml
水 969ml
――――――――――――――――――――――――――――――――――
0.2μmフィルターでろ過し、ふたをして室温で保存する。
2.SAPE染色溶液を調製する(各々のチップについて)
20XSSPE 360μl
1%トゥイーン−20 12μl
50mg/mlアセチル化BSA 50μl
SAPE 12μl
DI水 766μl
――――――――――――――――――――――――――――――――――
十分に混合し、600μlの2つのアリコート(染色1および染色3)に分ける。
3.抗体溶液を調製する(各々のチップについて)
20XSSPE 180μl
1%トゥイーン−20 6μl
50mg/mlアセチル化BSA 25μl
10mg/ml正常ヤギIgG 6μl
0.5mg/mlビオチニル化抗体 3.6μl
DI水 379.4μl
――――――――――――――――――――――――――――――――――
最終容量 600μl
4.洗浄プロトコール−DNAARRAY WS4を実施する。
【0079】
伝統的な方法と異なり、最適化したRPM v.1アッセイは、病原体を同定し得るだけでなく、配列情報も提供し、同じアッセイにおいて多数の病原体を検出し、系統発生的に分類することを可能にし得る。配列情報は、循環および突発出現ウイルス(すなわちインフルエンザ)の遺伝的変異分析のための強力なツールである、広い範囲の変異体(たとえばHAdV)を同定するためのRPM v.1の能力を明らかにした。これはまた、公知の変異体の動きを追跡する上でも有用である。この有用性は、A/A/Panama/2007/99様菌株(2003年のインフルエンザシーズン以前)から、2003−2004年のインフルエンザシーズンにA/Fujian/411/2002様菌株へ、次に2004−2005年のインフルエンザシーズンにA/California/7/2004様菌株への系統変化を示したインフルエンザA型陽性臨床試料において明らかに示された。インフルエンザA型ウイルスの間で比較的保存されている、1個のM遺伝子(H1N1)配列だけがRPM v.1上に配置された。しかし、M遺伝子ProSeqはまだ全く異なる亜型の相同領域を検出することができ、正しい識別を可能にした(表15)。このM遺伝子ProSeqは、理論的には、抗原性HAおよびNA配列がアレイ上に配置されなかったいかなる他の型のインフルエンザウイルスの検出も可能にする。
【0080】
この試験は、このシステムが卓越した臨床的感受性と特異性、感受性を失うことなく複雑な同時感染を解明する能力を示し得ること、および感受性は26の標的病原体および潜在的生物兵器因子すべてに対して同様であることを明らかにする。培養およびPCRのどちらとも異なり、このアッセイプラットフォームは、HAdVとインフルエンザA型ウイルスの両方に対して同等の検出感受性と特異性を示した(表12)。データは、RPM v.1システムを、従来の検出方法と良好に相関する形で、直接(非培養)臨床検体において臨床的に関連するアデノウイルスとインフルエンザA型ウイルスを正しく同定し、型検出するための診断ツールとして使用することの実現可能性を裏付ける。
【0081】
明らかに、上記の教示に照らして本発明の多くの修正および変法が可能である。それ故、特許請求される本発明が、特定して記述されているのとは異なる方法で実施され得ることは了解されるべきである。単数の、たとえば冠詞「a」、「an」、「the」または「said」を用いた、特許請求要素への言及は、要素を単数に限定するとは解釈されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
あらかじめ決めたセットの病原体からの1またはそれ以上の病原体核酸を含むことが疑われる生物学的試料を用意し;
前記試料に、あらかじめ決めた病原体のセットに認められる遺伝子に対応する複数のPCRプライマーを添加し;
ここで前記プライマーは各々の病原体について少なくとも1つのプライマー対を含み、そして該プライマーはあらかじめ決めたセットの病原体のいずれのDNAまたは試料中のいずれのバックグラウンドDNAにも相同でないテール配列を含む;そして
試料上でポリメラーゼ連鎖反応を実施して遺伝子に対応する核酸のサブセットを増幅する;
ここでポリメラーゼ連鎖反応における少なくとも1個のプライマーの濃度は約100nM以下とする;
ことを特長とする方法。
【請求項2】
ポリメラーゼ連鎖反応における各々のプライマーの濃度が約100nM以下である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
テール配列が、CGATACGACGGGCGTACTAGCG(配列番号1)である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
テール配列が、CGATACGACGGGCGTACTAGCGNNNNNNNNN(配列番号2)である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
生物学的試料を生成するために臨床試料から核酸を抽出することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
臨床試料が鼻洗浄液、咽喉スワブ、痰、血液または環境試料を含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
臨床試料が生物からのものであり、および
テール配列が前記生物の種のDNAと相同でない請求項5に記載の方法。
【請求項8】
生物がヒトである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
病原体が呼吸器病原体である請求項1に記載の方法。
【請求項10】
病原体が腸病原体または生物脅威因子(biothreat agent)である請求項1に記載の方法。
【請求項11】
増幅された核酸が200ヌクレオチド以下の配列および2000ヌクレオチド以上の配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
テール配列がプライマー二量体の形成を低下させる請求項1に記載の方法。
【請求項13】
PCRプライマーが少なくとも50個の異なるプライマーを含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
複数のPCRプライマーを添加することおよびポリメラーゼ連鎖反応を実施することを、各々、生物学的試料の複数のアリコートに関して実施し;
各々のアリコートについて異なる複数のPCRプライマーを使用し;および
PCR反応後にアリコートを一緒にする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
試料を、増幅核酸の少なくとも一部に相補的である複数の核酸配列を含むマイクロアレイに接触させ;および
増幅核酸を相補的核酸にハイブリダイズさせることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
相補的核酸が25量体から29量体である請求項15に記載の方法。
【請求項17】
相補的核酸が、増幅核酸の少なくとも1個に完全にマッチするプローブおよび各々の完全にマッチするプローブの中央位置の3個の異なる一塩基多型を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
いずれの増幅核酸が相補的核酸にハイブリダイズするかを検出することをさらに含む請求項15に記載の方法。
【請求項19】
いずれの増幅核酸が検出されるかに基づいて病原体を同定することをさらに含む請求項18に記載の方法。
【請求項20】
同定がパターン認識に基づく請求項19に記載の方法。
【請求項21】
同定が増幅核酸の配列決定に基づく請求項19に記載の方法。
【請求項22】
同定が病原体の菌株を含む請求項18に記載の方法。

【公表番号】特表2009−509499(P2009−509499A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516960(P2008−516960)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【国際出願番号】PCT/US2006/022623
【国際公開番号】WO2006/138183
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(504031388)アメリカ合衆国 (4)
【Fターム(参考)】