説明

遺伝的に改変された細胞を製造する方法

【課題】二重鎖切断誘導による相同組み換えを利用して遺伝子的に改変された細胞を製造する手法において、二重鎖切断部位における相同組み換えの頻度を高めること。
【解決手段】ブルームDNAヘリカーゼおよび/またはエキソヌクレアーゼExo1の利用により、二重鎖切断誘導による相同組み換えの頻度を飛躍的に高めることができることを見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子的に改変された細胞を製造する方法に関する。より詳しくは、二重鎖DNA切断により誘導される相同組み換えを介して遺伝子的に改変された細胞を製造する方法において、ブルームDNAヘリカーゼおよび/またはエキソヌクレアーゼExo1を利用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
RecQヘリカーゼは、3'-5'の方向に二重鎖DNAを巻き戻す活性をもつDNAヘリカーゼのサブファミリーである。RecQのホモログは、出芽酵母からヒトまで広範囲に渡る生物種において同定されている(非特許文献1)。ヒトRecQファミリータンパクは、Blm、Wrn、RecQ1、RecQ4およびRecQ5の5つからなる。BLM、WRNおよびRECQ4遺伝子に変異が生じると、それぞれ、Bloom症候群(BS)、Werner's症候群、およびRothmund-Thomson症候群を引き起こす(非特許文献1〜3)。
【0003】
Bloom症候群細胞の特徴は、DNA複製中に生じるDNA損傷を修復するクロスオーバータイプの相同組換え(HR)である姉妹染色分体交換(SCE)が劇的に増加することである(非特許文献4、5)。このタイプの相同組み換えは、Dループ形成後の鎖交換によって、組換え中間体であるダブルクロスストランド構造(ホリデージャンクション[HJ])の形成を導く。Bloom症候群細胞において姉妹染色分体交換の数が増加することは、Blmがホリデージャンクションの形成を抑制するという考え方を支持している。Bloom症候群細胞の表現型はまた、Blm依存的なホリデージャンクションの解消という生化学的な実験結果と一致する(非特許文献6)。従って、Blmは、これまで組換え抑制因子として作用し、異常な組換えを抑制していると考えられてきた。この考え方は、酵母のBlmオーソログであるSgs1が、減数分裂時の組換えの際(非特許文献7、8)と複製のブロックの際(非特許文献9)に生じる異常な組換え中間体の解消を促進するという観察からも支持される。
【0004】
相同組み換えは、上記のように、損傷を受けた鋳型鎖をDNA複製のブロックから解き放つことによってゲノムの安定性を維持するばかりでなく、DNAの二重鎖切断(DSB)を正確に修復することによって、ゲノムの安定性を維持するという重要な役割も担っている(非特許文献10、11)。相同組み換えによる二重鎖切断修復についての最近のモデルでは、二重鎖切断は、まず、3'一本鎖突出DNAに加工され、次いでRad51が一本鎖部分に巻きつく(非特許文献12、13)。結果として生じるRAD51-DNAフィラメントは、相同性検索を経て、無損傷で相同性のある2本鎖DNAへ侵入し、Dループを形成する。侵入した一本鎖DNAは、相補鎖を利用してDNAを伸長させ、次に相同な二重鎖DNAから解離し、最終的に、新しく合成された鎖と二重鎖切断のもう一方の末端への再アニールを経て、二重鎖切断修復を完了する。このタイプの相同組み換えは、合成依存的な鎖アニール(SDSA)と呼ばれ、結果として無傷の鋳型配列(ドナー)から損傷を受けたDNA(レシピエント)へと塩基配列情報が写される。体細胞分裂の際の相同組み換えの大部分は合成依存的な鎖アニールによって占められている(非特許文献12、14)。
【0005】
染色体DNA中の特定部位における二重鎖切断が、その部位での高効率の組換え現象を導き、細胞の修復機構を誘導することから、この二重鎖切断誘導による相同組み換えを利用して、遺伝子的に改変された細胞を製造する方法が開発されてきた(特許文献1)。これにより、相同組み換えを利用した細胞の遺伝子的改変の効率を高めることに成功している。
【0006】
しかしながら、DNAの二重鎖切断は相同組換え以外に、非相同末端結合等の他のDNA修復システムによっても修復される。従って、二重鎖切断後、切断末端を相同組換え修復によって優先的に修復させる手法の開発が待ち望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第00/46386号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Cobb, J.A. and L. Bjergbaek. 2006. Nucleic Acids Res 34: 4106-4114
【非特許文献2】Hickson, I.D. 2003. Nat Rev Cancer 3: 169-78
【非特許文献3】Kitao,S. et al. 1999 Nature Genetics 22: 82-84
【非特許文献4】Chaganti, R.S. et al. 1974. Proc Natl Acad Sci U S A 71: 4508-4512
【非特許文献5】Sonoda, E. et al. 1999. Mol Cell Biol 19: 5166-5169
【非特許文献6】Wu, L. And Hickson, I.D. 2003 Nature 426: 870-874
【非特許文献7】Jessop, L. and M. Lichten. 2008. Mol Cell 31: 313-323
【非特許文献8】Oh, S.D. et al. 2008. Mol Cell 31: 324-336
【非特許文献9】Branzei, D. et al. 2006. Cell 127: 509-522
【非特許文献10】San Filippo, J. et al. 2008. Annu Rev Biochem 77: 229-257
【非特許文献11】Branzei, D. and Foiani, M. 2008. Nature Reviews Molecular Cell Biology 9: 297-308
【非特許文献12】Frederic Paques and James E. Haber 1999. Microbiol Mol Biol Rev 63: 349-404
【非特許文献13】Symington, L.S. 2002. Microbiol Mol Biol Rev 66: 630-670, table of contents.
【非特許文献14】Johnson, R.D. and M. Jasin. 2000. Embo J 19: 3398-3407
【非特許文献15】Eleni P.M. & Lorraine S.S. 2008. Nature 455, 770-775
【非特許文献16】Zhu, Z. 2008. Cell 134, 981-994
【非特許文献17】Gravel, S. 2008. Genes & Development 22, 2767-2772
【非特許文献18】Nimonkar, A.V. et al. 2008. Proc Natl Acad Sci U S A 105: 16906-16911
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、二重鎖切断誘導による相同組み換えを介して遺伝子的に改変された細胞を製造する手法において、二重鎖切断部位における相同組み換えの頻度を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
合成依存的な鎖アニールを介した相同組み換えとブルームDNAヘリカーゼまたはエキソヌクレアーゼExo1との関係については、近年、酵母において、二重鎖切断後の3'一本鎖突出DNAの形成に、BlmオーソログであるSgs1が関与していることが報告された(非特許文献15)。また、この過程において、ヘリカーゼであるSgs1のみならず、ヌクレアーゼであるExo1とDna1が関与していることが報告された(非特許文献16)。さらに、ヒト細胞株において、siRNAでBLMとExo1の双方を抑制すると、カンプトテシン(Camptothecin)誘導による二重鎖切断後の細胞生存率が低下することが報告された(非特許文献17)。しかしながら、これら報告は、Sgs1、Blm1、あるいはExo1の変異又は発現抑制によって、二重鎖切断末端のプロセシング効率や二重鎖切断後の細胞生存率などが低下することを示しているにすぎない。
【0011】
また、最近、ヒトにおけるDNA損傷のプロセシングに、BlmとExo1と協調的に関与していることが報告された(非特許文献18)。この報告では、in vitroにおいてヒトBLMが、ヒトEXO1のみでは不十分である二重鎖切断末端の一本鎖DNA形成を強化させ、結果としてDNAペアリングを刺激することが記載されている。すなわち、この報告は、in vitroにおいて、二重鎖切断末端の一本鎖DNA形成においては、ヒトBLMおよびヒトEXO1のいずれか一方では不十分であることを示唆している。
【0012】
このように、いずれの報告も、BLM遺伝子および/またはExo1遺伝子を細胞内で過剰発現することにより、相同組み換えの頻度が高まることは、何ら示していない。
【0013】
相同組換えに関与する主要因子の細胞内での過剰発現による標的部位での相同組み換え頻度の向上については、これまで実用に堪える成功例が全くないという状況下、本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、標的遺伝子領域の二重鎖切断により誘導される、合成依存的な鎖アニールを介した相同組み換えにおいて、ブルームDNAヘリカーゼおよび/またはエキソヌクレアーゼExo1を過剰発現することにより、細胞内における相同組み換えの頻度を飛躍的に向上させることに成功した。標的組み換え効率が3〜4桁向上することが知られている標的遺伝子領域の二重鎖切断と、本発明の方法とを組み合わせることにより、最終的には、5〜6桁も標的組み換え効率を向上させることが可能になる。
【0014】
即ち、本発明者らは、ブルームDNAヘリカーゼおよび/またはエキソヌクレアーゼExo1を利用することにより、先行技術から予測出来ないほど飛躍的に相同組み換えの頻度を向上させ、ひいては、遺伝的に改変された細胞を効率的に製造することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
本発明は、より詳しくは、以下の発明を提供するものである。
【0016】
(1) 遺伝子的に改変された細胞を製造する方法であって、外因性のブルームDNAヘリカーゼおよび/またはエキソヌクレアーゼExo1を、二重鎖DNA切断による相同組み換えを生じさせたい所望の標的DNA部位を染色体上に持つ細胞内で発現または該細胞内に投与することを特徴とする方法。
【0017】
(2) 遺伝子的に改変された細胞を製造する方法であって、下記(a)から(c)の処理を含む方法。
(a) 相同組み換えを生じさせたい所望の標的DNA部位を染色体上に持つ細胞において、該標的DNA部位で二重鎖切断を誘導すること
(b) 該標的DNA部位との間で相同組み換えが生じるように、該標的DNA部位の少なくとも一部の配列と相同な配列を持つターゲティングDNA構築物を導入すること
(c) 外因性のブルームDNAヘリカーゼおよび/またはExo1を該細胞内で発現または該細胞内に投与すること
【0018】
(3) 遺伝子的に改変された細胞が高等真核細胞である、(1)または(2)に記載の方法。
【0019】
(4) 遺伝子的に改変された細胞が鳥類または植物に由来する細胞である、(1)または(2)に記載の方法。
【0020】
(5) 遺伝子的に改変された細胞がニワトリまたはイネに由来する細胞である、(1)または(2)に記載の方法。
【0021】
(6) (1)または(2)に記載の方法により製造される、遺伝子的に改変された細胞。
【0022】
(7) 遺伝子的に改変された細胞が高等真核細胞である、(6)に記載の細胞。
【0023】
(8) 遺伝子的に改変された細胞が鳥類または植物に由来する細胞である、(6)に記載の細胞。
【0024】
(9) 遺伝子的に改変された細胞がニワトリまたはイネに由来する細胞である、(6)に記載の細胞。
【0025】
(10) (1)から(5)のいずれかに記載の方法に用いるための、下記(a)から(d)の少なくとも一つを含むキット。
(a)ブルームDNAヘリカーゼ
(b)Exo1
(c)ブルームDNAヘリカーゼを細胞内で発現させるためのDNA構築物
(d)Exo1を細胞内で発現させるためのDNA構築物
【0026】
(11) 動物の品種改良の方法であって、
(a)動物の形質を改変させるための所望の遺伝子を保持するターゲティングDNA構築物を用いて、(1)または(2)に記載の方法により、遺伝子的に改変された動物細胞を製造する工程、および
(b)製造された動物細胞を個体へと発生させる工程、
を含む方法。
【0027】
(12) 遺伝子的に改変された動物細胞が鳥類に由来する細胞である、(11)に記載の方法。
【0028】
(13) 遺伝子的に改変された動物細胞がニワトリに由来する細胞である、(11)に記載の方法。
【0029】
(14) 植物の品種改良の方法であって、
(a)植物の形質を改変させるための所望の遺伝子を保持するターゲティングDNA構築物を用いて、(1)または(2)に記載の方法により、遺伝子的に改変された植物細胞を製造する工程、および
(b)製造された植物細胞から植物体を再生させる工程、
を含む方法。
【0030】
(15) 遺伝子的に改変された植物細胞がイネに由来する細胞である、(14)に記載の方法。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、二重鎖切断誘導による相同組み換えを介した、遺伝子的に改変された細胞の製造において、標的DNA部位における制限エンドヌクレアーゼ認識部位(及びその近傍)とターゲティングDNA構築物の対応部位との間の相同組み換えの頻度を飛躍的に向上させることが可能である。本発明により、遺伝子的に改変された細胞を製造する効率を飛躍的に高めることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1A】Ig遺伝子変換アッセイの原理を示す図である。
【図1B】Ig遺伝子変換と二重鎖切断誘導性のジーンターゲティングとの比較を示す図である。
【図2A】クローン的に3週間培養した野生型およびBLM-/-細胞における表面上のIgM(sIgM)獲得復帰突然変異株の頻度を示す図である。中央値は、野生型の独立した23のサブクローンとBLM-/-の3回の独立した系による24、24、15のサブクローンから算出した。パネルの水平のバーは、中央値のパーセンテージを示す。
【図2B】TSA添加後14日目の培養物における、sIgM獲得復帰変異株の頻度を示す図である。細胞は、1.25ng/mlのTSAを含む培地で培養した。
【図2C】sIgM増加変異体の存在量を、トリコスタチンA(TSA)処理下で12日間クローン増殖した後に、sIgM陰性の単一細胞に由来する24程度のパラレルな培養物において決定した結果を示す図である
【図2D】sIgM陽性復帰変異体由来の再編成したVセグメントにおける平均な区域の長さを表している遺伝子変換区域分布を示す図である。それぞれの水平な線は、遺伝子変換区域(線の上の水平な線)と共に、再編成したVλ(450bp)を示す。
【図3A】G2期のBLM-/-細胞における、電離放射線(IR)照射による染色体の切断を検出した結果を示す図である。(-)は、野生型およびBLM-/-細胞における、細胞周期を通じた染色体切断を検出した結果を示し、(+)は、2GyのIR照射後の染色体切断を検出した結果を示す。細胞への照射は、回収の3時間前に行った。有糸分裂細胞は、細胞収穫前の3時間のコルセミド処理によって濃縮された。データは、100の中期延展細胞のマクロ染色体(1〜5とZ)の切断として示した。平均値の標準誤差は、「(√ 切断の数 )/ 解析された中期延展の数」として計算した。野生型細胞とBLM-/-細胞について、それぞれ100の中期延展した細胞を解析した。
【図3B】IR照射3時間後の染色体の切断から、自然発生的な染色体切断の数を引き算することによって、2Gy-rayの照射によって誘導された染色体切断の数を計測した結果を示す図である。
【図4A】G418耐性クローンをカウントすることによるジーンターゲティング頻度を測定する実験方法を示す図である。卵アルブミン遺伝子座内にS2neoを保有する細胞に対して、ターゲティングフラグメント(白い四角)と共に、I-SceIをコードする発現ベクターが導入され、そして、ジーンターゲティングが成功した場合、機能的なneoR遺伝子を再構成することが示されている。黒と灰色の四角はそれぞれ、neoR遺伝子の5'の非翻訳領域と翻訳領域を示す。
【図4B】ターゲティングフラグメントのシリーズ(Mneo-1〜Mneo-4)におけるI-SceI部位周辺配列の塩基配列のアラインメントを示す図である。ハイフンは、S2neoレシピエントに一致する配列と比較した場合における、ドナーフラグメントのミス配列を示す。文字の下線は終止コドンを示す。イタリック体の文字は、I-SceI認識配列を示す。
【図4C】BLM-/-細胞におけるターゲティングフラグメントのジーンターゲティング頻度を示す図である。図中の「1」〜「4」の数字は、S2neoを保有する細胞に導入した一連のターゲティングフラグメントの番号を示す。「+GdBLM-GFP」は、一過的なBLM導入遺伝子の発現によって相補される細胞を示す。エラーバーは標準偏差を示す。
【図4D】BLM-/-細胞と、BLMトランスジーンの発現によって相補された細胞における、一連のターゲティングフラグメントの導入による相同組換えの頻度の比を示す図である。
【図5A】分岐した配列間での相同組み換えのBlmによる促進における、ATPアーゼ依存性の有無を解析した結果を示す図である。縦軸は、ジーンターゲティング頻度を示し、エラーバーは標準偏差を示す。分岐した配列間での相同組み換えにおけるBLMとEXO1の遺伝学的な関係を示す。I-SceI発現ベクターと共に、BLM導入遺伝子(図中「Gd-BLM-GFP」)、Exo1導入遺伝子(図中「Gd-Exo1」)、または両方(図中「Gd-BLM-GFP+Gd-Exo1」)が、ターゲティングDNAフラグメント(Mneo3)を持つS2neoを保有する野生型の細胞に形質転換された。陰性対照のデータはパネルBに由来する。
【図5B】二重鎖切断により誘導される分岐した配列間のジーンターゲティングへのBlmの作用における、ATPアーゼ活性依存性の解析結果を示す図である。I-SceI発現ベクターと共に、野生型ヒトBLM(図中「hBLM」)、またはK695A変異体(図中「hBLM-K695A」)が、ターゲティングDNAフラグメントMneo3を持つS2neoを保有する野生型の細胞に形質転換された。
【図6A】合成依存的な鎖アニールを介した相同組み換えの早い段階の末端プロセシング過程における、Blmの機能のモデルを示す図である。
【図6B】合成依存的な鎖アニールを介した相同組み換えにおいて、Dループ形成と安定化を促進するBlmの機能のモデルを示す図である。
【図7】ブラストサイジンS耐性およびGFP緑色蛍光を示すクローンをカウントすることによるジーンターゲティング頻度を測定する実験方法を示す図である。イネゲノム中に不活性型のブラストサイジンS抵抗性遺伝子+GFP融合遺伝子(gfbsd2、文献Ochiai-Fukuda T. et al. 2006. J Biotechnol 122: 521-527)を保有するイネ細胞に対して、I-SceIあるいは、I-SceI及びExo1をコードする発現ベクターが導入され、そして、ジーンターゲティングが成功した場合、機能的な活性型gfbsd2遺伝子を再構成することが示されている。背景が灰色と黒色で表示された遺伝子は、それぞれ、不活性型gfbsd2遺伝子および活性型gfbsd2遺伝子を示す。
【図8】ジーターゲティング個体のPCR解析の概略図(上)とその典型的な結果を示す写真(下)である。背景が灰色と黒色で表示された遺伝子は、それぞれ、不活性型gfbsd2遺伝子および活性型gfbsd2遺伝子を示す。レーンP1はジーンターゲティング構築物を導入していない不活性型gfbsd2遺伝子を保持するアクセプターイネ細胞を用いた結果を示し、レーンP2はジーンターゲティングにより得られたイネ細胞を用いた結果を示す。
【図9】不活性型gfbsd2遺伝子を保有するイネ細胞におけるターゲティングフラグメントのジーンターゲティング頻度を示す図である。図中の数値は形質転換に使用したカルス細胞塊1つあたり得られたジーンターゲティングカルスの数(3回の実験を行い、その平均値)を示した。エラーバーは標準偏差を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、染色体DNA中の二重鎖DNA切断により誘導される相同組換えの頻度が、細胞における外因性のブルームDNAヘリカーゼおよび/またはエキソヌクレアーゼExo1の発現により飛躍的に向上するという、本発明者の発見に基づいている。従って、本発明は、遺伝子的に改変された細胞を製造する方法であって、外因性のブルームDNAヘリカーゼおよび/またはエキソヌクレアーゼExo1を、二重鎖DNA切断による相同組み換えを生じさせたい所望の標的DNA部位を染色体上に持つ細胞内で発現または該細胞内に投与することを特徴とする方法に関する。
【0034】
本発明の方法は、典型的には、(a)相同組み換えを生じさせたい所望の標的DNA部位を染色体上に持つ細胞において、該標的DNA部位で二重鎖切断を誘導すること、(b)該標的DNA部位との間で相同組み換えが生じるように、該標的DNA部位の少なくとも一部の配列と相同な配列を持つターゲティングDNA構築物を導入すること、(c)外因性のブルームDNAヘリカーゼおよび/またはエキソヌクレアーゼExo1を該細胞内で発現または該細胞内に投与すること、を含む。上記(a)から(c)の各処理の順は、目的の相同組み換えの効率に支障を生じない限り、適宜選択することができ、また、同時でありうる。
【0035】
本発明において「標的DNA部位」とは、二重鎖切断により、その遺伝子座で相同組換えによる細胞修復機構を誘導することを意図する染色体上の位置を意味する。標的DNA部位での二重鎖切断の誘導は、標的DNA部位を認識し切断する制限エンドヌクレアーゼを用いて行うことができる。
【0036】
本発明に用いられる制限エンドヌクレアーゼとしては、遺伝子的に改変したい染色体上の部位に、その認識配列を持つ所望の制限エンドヌクレアーゼを用いることができる。非常に大きいDNA配列を認識し、染色体上で低い頻度で切断を生じさせるメガヌクレアーゼ酵素は、本発明で使用し得る制限エンドヌクレアーゼの好適な例である。メガヌクレアーゼ酵素としては、例えば、18塩基配列(5'-TAGGGATAA↓CAGGGTAAT-3’)を認識し,3'-OHの4塩基突出末端を生成するI-SceIが挙げられるが、本発明においては、目的に応じて、I-ChuI、I-DmoI、I-CreI、I-CsmI、PI-SceI、PI-PfuIなど、その他種々のメガヌクレアーゼ酵素を用いることができる。また、目的に応じて、当初のメガヌクレアーゼとは異なる部位を認識・切断するように変異させた、カスタムメイドメガヌクレアーゼ(国際公開第2004/067736号パンフレット)を、本発明において用いることもできる。さらに、特異的ヌクレオチド配列を認識するジンクフィンガードメインと制限酵素からの非特異的DNA開裂ドメインとを融合して調製したキメラ制限エンドヌクレアーゼ(国際公開第00/46386号パンフレット、国際公開第03/080809号パンフレット)を、本発明に用いることもできる。キメラ制限エンドヌクレアーゼの調製においては、ジンクフィンガードメインと非特異的DNA開裂ドメインは、単一の連続ユニットして調製することもでき、また、別々に製造した上で、結合することもできる。
【0037】
制限エンドヌクレアーゼの認識部位は、染色体上に人為的に設定することもできる。こうして制限エンドヌクレアーゼの認識部位を設定した後、該部位を認識する制限酵素を作用させることによって、二重鎖切断を誘導することができる。特定の遺伝子座に、制限エンドヌクレアーゼの認識部位を人為的に設定する手法としては、例えば、制限エンドヌクレアーゼの認識部位を含むターゲティングベクターを用いて相同組換えを行う方法が挙げられる(Fukushima, T. et al. 2001. J Biol Chem 276, 44413-44418、Kobayashi, J. et al. 2002. Nature 420, 93-98)。また、制限エンドヌクレアーゼの認識部位は、ランダムに挿入することも可能である(Johonson, R.D. et al. 1999. Nature 401, 397-399、Pierce, A.J. et al. 1999. Genes Dev 13, 2633-2638)。
【0038】
二重鎖切断を生じさせるために、制限エンドヌクレアーゼは、それをコードする核酸を含むベクターとして細胞に導入し、発現させることができる。細胞内で制限エンドヌクレアーゼを発現させるためのベクターとしては、特に制限はなく、目的に応じて種々のベクターを使用すること可能である。例えば、プラスミド、ウイルスベクター、YAC(酵母人工染色体)、BAC(細菌人工)、ファージ、ファージミド、コスミド、RNAベクターなどが挙げられる。ベクターにおいて、制限エンドヌクレアーゼをコードする核酸は、少なくとも1個の発現制御配列に機能的に(即ち、細胞内で発現させることが可能な形態で)連結されている。このような発現制御配列には、プロモーター配列及びエンハンサーが含まれる。ベクターの細胞への導入は、ベクターの種類等に応じて、種々の方法で行うことができる。これら方法には、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、マイクロインジェクション、感染、リポフェクションなどが含まれる。また、制限エンドヌクレアーゼは、細胞内で発現させることの他、精製酵素として投与することも可能である。DNAの組み換え、ベクターの構築、及びベクターの細胞への導入などの基本的な操作・手法については、文献(サムブルックらの分子クローニング:研究室マニュアル、コールドスプリングハーバー、NY)を参照のこと。
【0039】
本発明における、標的DNA部位での二重鎖切断の誘導には、制限エンドヌクレアーゼを利用する以外の方法として、化学物質の使用も考えられる。標的DNA部位の切断における化学物質の利用は、当業者に公知である(国際公開第00/46386号パンフレット)。
【0040】
本発明においては、二重鎖切断を生じた標的DNA部位との間で相同組み換えが生じるように、該標的DNA部位の少なくとも一部の配列と相同な配列を持つターゲティングDNA構築物を細胞に導入する。ターゲティングDNA構築物は、典型的には、標的DNA部位の特定の配列を修復するためのDNAの各末端に、標的DNA部位の配列と相同な配列からなるDNAが隣接した構造を有している。即ち、相同DNAは、ターゲティングDNA構築物の左右のアームにあり、標的DNA部位の特定の配列を修復するためのDNAは、この2本のアームの間に位置している。ここで「相同」とは、配列同士が完全に(即ち、100%)同一である場合の他、相同組み換えが生じる限り、一部の配列が相違している場合も含まれる。通常、少なくとも95%以上、好ましくは97%以上、さらに好ましくは99%以上の配列が同一である。染色体上の標的DNA部位とターゲティングDNA構築物の相同な配列とが相互作用することにより、標的DNA部位における特定の配列と、それを修復するためのターゲティングDNA構築物上のDNAが交換され、これにより細胞を遺伝子的に改変することができる。
【0041】
本発明においては、二重鎖切断部位を相同組み換えが生じやすいようにプロセスし、相同組み換えの頻度を向上させるために、外因性のブルームDNAヘリカーゼおよび/またはエキソヌクレアーゼExo1を利用することを特徴とする。本実施例において、ニワトリ細胞において、ブルームDNAヘリカーゼおよびエキソヌクレアーゼExo1の双方を使用した場合のみならず、いずれか一方の使用でも、相同組み換えの頻度は飛躍的に向上することが示された。また、本実施例において、イネ細胞において、エキソヌクレアーゼExo1を単独で使用した場合でも、相同組み換えの頻度は飛躍的に向上することが示された。従って、本発明においては、相同組み換えの頻度を向上させる限り、ブルームDNAヘリカーゼとエキソヌクレアーゼExo1のいずれか一方の使用態様も含まれる。
【0042】
ブルームDNAヘリカーゼおよびエキソヌクレアーゼExo1の由来としては、特に制限はなく、ヒト、ニワトリ、その他動物由来のもの、植物由来のもの、酵母などの真菌由来のものなどが含まれる。細胞に導入して発現させることにより、相同組み換えの頻度を向上させることが可能なDNAヘリカーゼまたはエキソヌクレアーゼである限り、各種生物に由来するものが含まれ、また、その名称は問わない。また、天然型の配列を有するものに限られず、相同組み換えの頻度を向上させる限り、1または複数のアミノ酸が置換、欠失または挿入等された変異体であってもよい。なお、本発明に用いられる、ブルームDNAヘリカーゼおよびエキソヌクレアーゼExo1の例として、ヒト由来のブルームDNAヘリカーゼの塩基配列を配列番号:1に、そのアミノ酸配列を配列番号:2に、ヒト由来のエキソヌクレアーゼExo1aの塩基配列を配列番号:3に、そのアミノ酸配列を配列番号:4に、ヒト由来のエキソヌクレアーゼExo1bの塩基配列を配列番号:5に、そのアミノ酸配列を配列番号:6に、ニワトリ由来のブルームDNAヘリカーゼの塩基配列を配列番号:7に、そのアミノ酸配列を配列番号:8に、ニワトリ由来のエキソヌクレアーゼExo1の塩基配列を配列番号:9に、そのアミノ酸配列を配列番号:10に、それぞれ示す。
【0043】
本発明の方法は、外因性のブルームDNAヘリカーゼおよび/またはエキソヌクレアーゼExo1の使用により、これらを使用しない場合と比較して、相同組み換えの頻度を、好ましくは10倍以上、より好ましくは、30倍以上、さらに好ましくは、50倍以上、最も好ましくは100倍以上(例えば、150倍以上)、向上させることができる。
【0044】
ターゲティングDNA構築物、及びブルームDNAヘリカーゼまたはエキソヌクレアーゼExo1を発現させるためのDNA構築物の作製やこれら構築物の細胞への導入などの、基本的な操作・手法については、上記した制限エンドヌクレアーゼを発現させるための構築物の場合と同様である(サムブルックらの分子クローニング:研究室マニュアル、コールドスプリングハーバー、NYを参照のこと)。
【0045】
本発明において、遺伝子的に改変する細胞としては、目的に応じて、動物、植物などの高等真核細胞、酵母等の真核細胞、バクテリア等の原核細胞を用いることができるが、好ましくは高等真核細胞である。動物または植物起源の細胞は、幹細胞(ES細胞、iPS細胞等)、受精卵、または体細胞であり得る。動物細胞としては、例えば、ヒト、ウシ、ヒツジ、ブタ、マウス、ウサギおよびサルなどの哺乳動物細胞、ニワトリなどの鳥類の細胞が挙げられる。植物細胞としては、例えば、イネなどの有用農作物、アラビドプシスなどの実験用植物、ユーカリなどの樹木など種々の植物に由来する、カルス、懸濁培養細胞、葉、根、茎、花における細胞、種子中の胚盤等の細胞が挙げられる。本発明は、こうして製造された、遺伝的に改変された細胞をも提供するものである。本発明において、植物細胞や分化全能性を有する動物由来の細胞(上記幹細胞)や受精卵などを利用することにより、遺伝子的に改変された個体、組織、または器官を製造することも可能である。
【0046】
本発明は、また、上記本発明の方法に用いるためのキットを提供する。細胞における相同組み換えの頻度を向上させるために、本発明のキットは、少なくとも、(a)ブルームDNAヘリカーゼ、(b)Exo1、(c)ブルームDNAヘリカーゼを細胞内で発現させるためのDNA構築物、(d)Exo1を細胞内で発現させるためのDNA構築物、のいずれか一つの標品を含む。標品は、例えば、ブルームDNAヘリカーゼとExo1の組み合わせ、あるいは、ブルームDNAヘリカーゼを細胞内で発現させるためのDNA構築物とExo1を細胞内で発現させるためのDNA構築物の組み合わせであってもよい。また、本発明のキットは、標的遺伝子の二重鎖切断を行うための標品(例えば、制限エンドヌクレアーゼあるいはそれを細胞内で発現させるためのDNA構築物、化学物質など)、制限エンドヌクレアーゼの認識部位を人為的に設定するための標品(例えば、例えば、制限エンドヌクレアーゼの認識部位を染色体内に導入するためのDNA構築物)を含んでいてもよい。さらに、本発明のキットは、キットの使用説明書を含んでいてもよい。
【0047】
本発明は、遺伝子機能の解析などの研究目的以外に、例えば、細胞への有用遺伝子の導入により、動物や植物の品種改良を行うことにも利用が可能である。例えば、動物の形質を改変させるための所望の遺伝子を保持するターゲティングDNA構築物を用いて、本発明の方法により、遺伝子的に改変された動物細胞(例えば、ES細胞やiPS細胞などの幹細胞、受精卵など)を製造し、当該動物細胞を個体へと発生させることにより、動物の品種改良を行うことができる。また、例えば、植物の形質を改変させるための所望の遺伝子を保持するターゲティングDNA構築物を用いて、本発明の方法により、遺伝子的に改変された植物細胞(例えば、懸濁培養細胞、プロトプラスト、葉の切片、カルス、未熟胚、花粉などの繁殖材料)を製造し、当該植物細胞から植物体を再生させることにより、植物の品種改良を行うことができる。動物細胞から個体への発生の方法や植物細胞から植物体を再生される方法は、公知の手法を用いることができる。また、本発明を利用して、疾患の原因となる変異遺伝子を、正常遺伝子と置換することにより、種々の疾患の遺伝子治療を行うことも可能である。例えば、ヒトから疾患の原因となる変異遺伝子を有する細胞を取り出し、正常遺伝子を保持するターゲティングDNA構築物を用いて、本発明の方法により、変異遺伝子が正常遺伝子に置換された細胞を製造し、その細胞を体内に戻すことにより、遺伝子治療を行うことができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0049】
なお、本実施例に利用した材料及び実験手法は、下記の通りである。
【0050】
[1] マウスにおける二重鎖切断誘導性のジーンターゲティングへのBlmおよびExo1の関与の解析
【0051】
<プラスミドの作成>
ジーンターゲティングの基質は、下記表1でリストされているプライマーによって増幅した。増幅されたPCR産物は、pCR2.1-TOPOベクター(Invitrogen)を用いてクローン化した。
【0052】
【表1】

【0053】
<細胞培養、DNA形質転換、放射線照射>
細胞は、10-5Mメルカプトエタノール、10%ウシ胎児血清、1%ニワトリの血清(Sigma, St Louis, MO, USA)を含むRPMI1640培養液を用いて39.5℃で培養した。
【0054】
安定した形質転換体を作成するためのDNA形質転換の方法と遺伝毒性の処理の方法は、文献(Takata, M. et al. 1998. EMBO J 17: 5497-5508)に記載の通りである。
【0055】
放射線として、137Cs(0.02 Gy/s; Gammacell 40, Nordion, Kanata, Ontario, Canada)を用いた。
【0056】
<Ig遺伝子変換の解析>
sIgM陰性のDT40細胞のサブクローンであるCL18から、Ig遺伝子が変換したBLM-/-細胞を確立した(Buerstedde, J.M. et al. 1990. EMBO J 9, 921-927)。IgVl領域の塩基配列決定により、BLM-/-細胞が、野生型CL18細胞と同じフレームシフト変異を保持していることを確認した。Ig遺伝子変換の割合は、文献(Kawamoto, T. et al. 2005. Mol Cell 20, 793-799)に記載の通り、sIgM発現の獲得を測定することによって評価した。sIgM獲得復帰突然変異体は、サブクローニングから3週間経った細胞のフローサイトメトリー分析でモニターし、抗ヤギ-ニワトリIgM(Bethyl, Montgomery, TX)を結合させたフルオレセインイソチオシアネート(FITC)で染色した。Ig遺伝子変換を強化するため、TSA(和光大阪、濃度:1.25ng/ml)を図3のsIgM陽性サブクローンの混合物に添加した。各々の解析において、sIgM陽性細胞の存在量は、FITC蛍光がsIgM陰性細胞のFITC蛍光ピークよりも、少なくとも8倍以下に低下した生細胞のパーセンテージとして決定した。
【0057】
<IgVλヌクレオチド配列の解析>
DNAは、TSA処理後、4週間培養したサブクローンから抽出した。PCRで増幅したVセグメントのフラグメントは、プラスミドを用いてクローン化し、塩基配列解析を行った。再編成されたVλは、文献(Sale, J.E. et al. 2001. Nature 412, 921-926)に記載の通り、Pyrobest DNA ポリメラーゼ(Takara Bio)とプライマー「5'-CAGGAGCTCGCGGGGCCGTCACTGATTGCCG-3'(配列番号:21)と5'-GCGCAAGCTTCCCCAGCCTGCCGCCAAGTCCAAG-3'(配列番号:22)」を用いて、「94℃で30秒を30サイクル、60℃で1分、72℃で1分」の反応条件にて、PCRで増幅した。PCR産物は、TOPO pCR2.1クローニングベクター(Invitrogen)でクローン化し、M13フォワードプライマーとリバースプライマーを用いて、ABI PRISM 3100 sequencer(Applied Biosystems)によって塩基配列決定した。GENETYX-MAC(Software Development, Tokyo, Japan)を使用した塩基配列の整列では、それぞれのクローンのパラレルな塩基配列の変化を識別することができた。鋳型なしでのヌクレオチド置換と遺伝子変換との識別は、文献(Sale, J.E. et al. 2001. Nature 412, 921-926)記載の方法で行った。
【0058】
<I-SceIで誘導したジーンターゲティング>
107個の細胞を、0.1mlのNucleofector Solution T(Amaxa biosystems)に懸濁し、Amaxa(Amaxa biosystems)のプログラムB-23を用いてエレクトロポレーションした。2gのターゲティングDNAフラグメントおよび発現ベクター(Gd-BLM-GFP、EXO1およびヒトBLM)を、ヌクレアーゼ発現ベクターと共に、形質転換した。pBluescript I II KS+を陰性対照として使用した。ターゲティングDNAフラグメントは、Mneo1〜Mneo4基質プラスミドから、Pyrobest DNA polymerase(Takara Bio)とプライマー「5'-GGATCGGCCATTGAACAAGATGGATTGCAC-3'(配列番号:23)と5'-GGAAACAGCTATGACCATGATTACGCCAAG-3'(配列番号:24)」を用いて、「94℃で30秒を30サイクル、60℃で30秒、72℃で2分」の反応条件にて、PCRにより増幅した。エレクトロポレーションの24時間後、FACSによって生細胞数を計数し、G418(2.0mg/mL)を添加または無添加の96穴トレイへ移した。細胞は7〜10日培養した後に、下記に示す式で相同組み換え頻度を計算した。染色体の異常は、文献(Fujimori, A. et al. 2001. EMBO J 20, 5513-20)に記載の通り、計測した。
【0059】
「相同組み換え頻度(コロニー/細胞)」
= G418耐性のコロニー数 /
(形質移入された細胞のG418非存在下でのプレーティング効率×エレクトロポレーション後にFACSで計測した生細胞数)
【0060】
[2] イネにおける二重鎖切断誘導性のジーンターゲティングへのExo1の関与の解析
<プラスミドの作成>
ジーンターゲティングに用いたアクセプターサイト構築物およびジーンターゲティング構築物を構成する遺伝子断片は、下記表2でリストされているプライマーによって増幅した。
【0061】
【表2】

【0062】
増幅されたPCR産物は、pDONR201、pDONR221(P1-P4)、pDONR221(P4r-P3r)及びpDONR221(P3-P2)ベクター(Invitrogen)を用いてクローン化した。クローン化したDNA断片は、バイナリーベクターpPZP201(文献_Hajdukiewicz, P. et al. 1994. Plant Mol Biol, 25: 989-994)に組み込み、各構築物を作製した。
【0063】
<イネカルス培養、DNA形質転換>
安定した形質転換体を作成するためのイネカルス培養とアグロバクテリウム法によるDNA形質転換の方法は、文献(Toki, S. et al.2007. Plant J 17: 5497-5508)に記載の通りである。
【0064】
<I-SceIで誘導したジーンターゲティング>
イネ種子から誘導したカルス塊を用いてアグロバクテリウム法により行った。遺伝子導入はジーターゲティング構築物を保持するアグロバクテリウムおよびI-SceI発現構築物(あるいはI-SceI+Exo1発現構築物)を保持するアグロバクテリウムの2種類のアグロバクテリウムをイネカルスに共感染させることにより行った。3日間のアグロバクテリウム共感染後、アグロバクテリウムの除菌処理後に形質転換処理カルスを10mg/LのブラストサイジンS(和光純薬)を含むイネカルス誘導培地上に置床し、ブラストサイジンS耐性を示し、かつ、GFPの緑色蛍光を示す個体をジーンターゲティング個体として選抜した。選抜開始から2〜3週間後に、PCR解析(図8)によって、得られたカルス系統についてジーンターゲティングが成立していることを確認し、下記に示す式で相同組み換え頻度を計算した。
【0065】
「相同組み換え頻度」
= ブラストサイジンS耐性及びGFP蛍光シグナルを発するコロニー数 /
(形質転換に使用したカルス塊数)
【0066】
[実施例1] マウスにおける二重鎖切断誘導性のジーンターゲティングへのBlmおよびExo1の関与の解析
【0067】
(1) BLM-/-細胞におけるIg遺伝子変換の解析
合成依存的な鎖アニールにおけるBlmの役割を調査するために、まず、Ig遺伝子変換の動態を測定した。野生型およびBLM-/-細胞(文献[Nakahara,M. et al. 2009. PLoS Genet.5(1):e1000356, Kawamoto, T. et al. 2005. Mol Cell 20, 793-799、Buerstedde, J.M. et al. 1990. Embo J 9, 921-927]において報告されたようにIgVセグメントにフレームシフト変異を持つ)から派生したサブクローンにおいて、sIgM発現の獲得を測定した。フレームシフト変異は、pseudo-VセグメントからIgVへの遺伝子変換によって除去されるため、sIgM獲得のレベルは、遺伝子変換の頻度を反映する(図1A)。本発明者は、限界まで希釈した野生型およびBLM-/-株から誘導されるマルチプルサブクローンを培養した。その結果、驚くべきことに、3週間のクローン培養期間を通じて、BLM-/-細胞のわずか0.6%程度がsIgMの獲得を示したのに対し、野生型クローンでは4%程度のsIgM陽性細胞を示した(図2A)。
【0068】
BLM-/-細胞においてsIgMの獲得は稀であったため、この稀な遺伝子変換現象をより効率的に検出するために、本発明者は、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤であるTSAの存在下において、sIgMの獲得を解析した。TSAは、DT40細胞において、Ig遺伝子変換の頻度を増加させることが報告されている(Seo, H. et al. 2005. Nat Biotechnol 23, 731-735)。本発明者は、98%以上の細胞がsIgMを発現しない細胞集団を培養し、sIgM獲得を2週間モニターした。その結果、野生型細胞の10%がsIgM発現を獲得したのに対し、BLM-/-細胞のうちの0.92%のみがsIgM陽性に変換した(図2B)。このことから、Blmの非存在下では、Ig遺伝子の変換が損なわれることが推測された。この結論はまた、野生型およびBLM-/-クローンに由来する、それぞれ独立した22と24のサブクローンのsIgM獲得のゆらぎ解析によっても支持される(図2C)。これらの結果は、IgV遺伝子座における効率的な遺伝子変換において、Blmが中心的役割を担うことを示す。
【0069】
(2) Ig遺伝子変換におけるドナー選択プロセスへのBlmの関与の解析
Blm欠損細胞における、Ig遺伝子変換生産物を解析するため、次に、IgVセグメントのヌクレオチド配列を決定した。この目的のため、本発明者はTSAの存在下で細胞を4週間培養し、PCRでIgVセグメントを増幅させてヌクレオチド配列を決定した。その結果、野生型の細胞内において、遺伝子変換区域は、分析した44のIgV配列のうちの37(84%)から検出された。これに対し、BLM-/-細胞からの47のIgV配列の分析では、7の遺伝子変換(15%)しか検出できなかった(図2D)。BLM-/-細胞において、異常な遺伝子変換現象が観察されなかったことは、相同組み換えの正確さがBlmの欠損によって失われないことを示す。これらの結果は、Blmが、DT40細胞におけるIg遺伝子変換の動態を増加させ得ることを示す。
【0070】
BLM-/-クローンにおける遺伝子変換現象の前後関係を解析するため、本発明者はsIgM発現を獲得したBLM-/-細胞におけるIgV遺伝子の配列の解析を行った。
【0071】
本発明者は、TSAの存在下で4週間増殖させた後のBLM-/-細胞からsIgM陽性細胞を選別し、46セグメントのヌクレオチド配列を決定した。その結果、野生型細胞は、ドナーとして様々なpseudo-Vλセグメントを使用していた(図2D)。対照的に、BLM-/-細胞はドナーとして制限された数のpseudo-Vセグメントをのみを使用するようであった。実際、解析された92の遺伝子変換現象のうち46と45は、それぞれpseudo-8とpseudo-12セグメント由来の遺伝子変換区域を含んでおり、1つの遺伝子変換(1.1%)だけが他のpseudo-Vセグメントと関連していた(図2D)。注目すべきことに、pseudo-V8とpseudo-V12セグメントのヌクレオチド配列は、野生型細胞にのみ使用された他のセグメントと比較して、再編成したVλセグメントとより高い相同性を有している。以上から、Blmが、特に、分岐したドナーセグメントとの効率的な遺伝子変換に必要である可能性が示唆される。
【0072】
(3) 姉妹染色分体の組み換え修復へのBlmの関与の解析
BLM-/-細胞において、同一の配列間での相同組み換えの頻度を調査するため、本発明者は、G2期における電離放射線(IR)照射に続いて生じる、細胞における染色体の切断を計測した。この二重鎖切断は、DT40細胞では、非相同的末端結合(Non-homologous end joining)による修復よりも、無傷なもう一方の姉妹染色分体を利用した、損傷をうけた姉妹染色分体の相同組み換えによって優先的に修復される(Takata, M. et al. 1998. Embo J 17, 5497-508)。IR照射の後、S期ではなくG2期の細胞が3時間以内でM期に移行すると考えられるため、IR照射の3時間後に有糸分裂細胞の中で染色体切断を分析することによって、相同組み換えによる二重鎖切断修復を選択的に評価することができる(Sonoda, E. et al. 2003. EMBO J 22, 3188-3197)。その結果、従前の報告(Imamura,O. et al. 2002. Oncogene 21: 954-963、Kohzaki,M. et al. 2007 Mol. Cell Biol. 27(8): 2812-2820、Otsuki, M. et al. 2007. J Cell Biol 179, 53-63)と同様に、BLM-/-細胞は、自然発生的に生じる染色体切断のレベルを増加することが示された(図3A)。
【0073】
また、本発明者は、IR照射の三時間後の染色体の切断から自然発生的な染色体切断の数を引き算することによって、2Gy-rayの照射によって誘導された染色体切断の数を計測した(図3A)。算出したIR誘導性の切断は、野生型細胞と比較してBLM-/-細胞において僅かに増加していた(1.5倍)(図3B)。しかしながら、この観察結果は、RAD54-/-細胞における劇的な増加(11倍)(Takata, M. et al. 1998. EMBO J 17, 5497-5508)とは、著しく対照的であった。以上から、姉妹染色分体の組み換え修復をもう一方の姉妹染色分体を用いて行う際は、Blmは、マイナーな役割しか担わないと考えられる。Ig遺伝子変換におけるBlmの重要な役割を考えると、BLM-/-細胞における効率的な姉妹染色分体の相同組み換えは、Blmが分岐した配列間で相同組み換えを促進するが、同一の配列間では促進しないことを示唆している。
【0074】
(4) ヘテロガスな配列を有するDNAフラグメントの二重鎖切断誘導性のジーンターゲングへのBlmの関与の解析
分岐した配列間の相同組み換えへのBlmの関与を調査するために、二重鎖切断誘導によるジーンターゲティング解析を行った(図1B)。ターゲティングDNAフラグメント(ドナー)において、S2neo(ゲノム内のレシピエント)の二重鎖切断部位に対応する配列の近傍に異なった数の配列分岐がある場合の、二重鎖切断誘導性のジーンターゲティングの効率を調査した(図4A)(Kikuchi, K. et al. 2005. Mol Cell Biol 25, 6948-6955)。
【0075】
まず、卵アルブミン遺伝子座にS2neo構築物を保有するBLM-/-細胞を作製した。I-SceI制限酵素の一過性の形質転換により、S2neo遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)に存在する切断部位が切断される。この切断は、S2neo遺伝子内への、同時導入したドナーDNAフラグメントの標的組込みを刺激して、この遺伝子(図4Bの配列に下線を引いた)のORFに存在する終止コドンを除去する。これにより無損傷のネオマイシン耐性遺伝子が再構成される。本発明者は、S2neoのI-SceI部位からの分岐が最も少ない配列を持つMneo1と共に、様々な数の異種配列を有する一連のジーンターゲティングのドナーフラグメントを調製した(図4BのMneo1〜Mneo4)。
【0076】
個々のターゲティングドナーフラグメントをI-SceI発現ベクターと共に、S2neoを保有するBLM-/-クローンに形質転換した。ドナーフラグメントの中の異種配列の挿入が、再構成されたネオマイシン耐性遺伝子内のアミノ酸の欠失または付加を生じるが、本発明者は、結果として生じる修飾されたネオマシン耐性酵素が機能的であることを確認した(Kikuchi, K. et al. 2005. Mol Cell Biol 25, 6948-6955)。次いで、本発明者は、ネオマイシン耐性コロニーの数を計数することによってジーンターゲティングの頻度を測定した。その結果、BLM-/-細胞でのMneo1フラグメントが引き起こしたジーンターゲティングの頻度は、BLMトランスジーンの一時的な発現によって相補される対照細胞と比較して、約10倍少なかった(図4C)。注目すべきことに、最も分岐したドナー構築物であるMneo4は、対照細胞と比較して、BLM-/-細胞において起こすジーンターゲティングの頻度が約100倍少なかった。さらに、本発明者は、対照細胞と比較したBLM-/-細胞のジーンターゲティング頻度の割合を算出した。その結果、図4Dに示すように、ドナーフラグメントにおけるより多数の異種配列の存在下において、BLM-/-細胞は、相補された対照細胞と比較して、ジーンターゲティング効率のより顕著な減少を示した(図4D)。これらの結果は、Ig遺伝子変換における結果と共に、Blmが、分岐した配列間の相同組み換えを促進するために必要なことを強く示唆する。
【0077】
(5) 分岐した配列間の相同組み換えにおけるBlmとExo1の関係の解析
分岐した配列間の相同組み換えにおけるBlmとExo1との間の可能な協調を検討するために、本発明者は、卵アルブミン遺伝子座にS2neo構築物を有する野生型細胞において、BlmとExo1とを同時に過剰発現させ、Mneo3をドナー配列として用いて、ジーンターゲティング効率を測定した。その結果、驚くべきことに、ジーンターゲティング効率は、BlmかExo1のいづれか一方の過剰発現だけで劇的に増加した(図5A)。さらに、ジーンターゲティング効率は、BlmとExo1の同時発現でも、いずれかを発現する場合より僅かに増加するだけであった(図5A)。これらの結果は、BlmとExo1が部分的に重なり合う役割を有する可能性を示唆する。
【0078】
(6) 二重鎖切断により誘導される分岐した配列間のジーンターゲティングへのBlmの作用における、ATPアーゼ活性依存性の解析
本発明者は、次に、分岐した配列間の相同組み換えに、BlmのATPアーゼ活性が必要かどうかを調査した。卵アルブミン遺伝子座にS2neo構築物を有する野生型細胞において、Blm K695A変異体(ATPアーゼが失活している)を過剰発現させ、ドナー配列としてMneo3を用いて、ジーンターゲティングの効率を計測した。その結果、野生型のヒトBlmを発現させたときに、ジーンターゲティング効率は劇的に増加した(図5B)。さらに、Blm K695A変異の発現もまた、野生型のBlmと同様に、ジーンターゲティング効率を向上させた(図5B)。Bugreevらによる生化学データと共に、これらの結果は、BlmがATPアーゼ活性非依存性の機構を通じて、分岐した配列間の相同組み換えを促進することを示す。
【0079】
[実施例2] イネにおける二重鎖切断誘導性のジーンターゲティングへのExo1の関与の解析
【0080】
高等植物であるイネにおいて、分岐した配列間の相同組み換えへのExo1の関与を調査するために、二重鎖切断誘導によるジーンターゲティング解析を行った(図7)。
【0081】
まず、イネゲノム中に切断酵素I-SceIの切断認識配列を組込んだ不活性型gfbsd2遺伝子構築物を導入したイネ系統を作出した(図7)。このイネ系統では、不活性型gfbsd2遺伝子断片中にI-SceI切断認識配列が挿入されることにより、gfbsd2タンパク質の読み枠がずれることに加えて、終止コドンが生じている。このため、このイネ系統は、正常なタンパク質が発現できず、gfbsd2タンパク質は不活性型である。
【0082】
I-SceI制限酵素のイネ細胞内における発現により、不活性型gfbsd2遺伝子中に存在する切断部位が切断される。この切断により、同時に導入したジーンターゲティング構築物の、不活性型gfbsd2遺伝子内への標的組込みが刺激され、この遺伝子のORFに存在する終止コドンが除去される。これにより活性型gfbsd2遺伝子が再構成される。
【0083】
不活性型gfbsd2遺伝子の5’側および3’側には、それぞれイネグリセロール3-リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター領域(2.5kb)およびターミネーター領域があらかじめ連結されているため、相同組換えによる活性型gfbsd2遺伝子の再構成の結果、ブラストサイジンS耐性およびGFPタンパク質の緑色蛍光シグナルにより、ジーンターゲティング個体の選抜が可能となる。
【0084】
本発明者らは、不活性型gfbsd2遺伝子をジーンターゲティングのアクセプターサイトとして保持するイネ細胞に対して、ジーンターゲティング構築物と共にI-SceI発現カセット構築物を用いて遺伝子導入を行った。その結果、ジーンターゲティング頻度が、I-SceI制限酵素による二重鎖切断誘発を用いない場合と比較して、約30倍上昇することが判明した(図9)
【0085】
さらにI-SceI発現カセット構築物及びExo1発現カセット構築物をイネ細胞に同時に導入した結果、劇的なジーンターゲティング頻度の上昇が認められた。この上昇は、I-SceI制限酵素による二重鎖切断誘発を行わない条件におけるジーンターゲティング頻度の約158倍であり、I-SceIのみ発現させた条件のジーンターゲティング頻度の約5倍であった(図9)。
【0086】
この結果は、Exo1の過剰発現によるジーンターゲティング効率の劇的な増加が、ニワトリDT40細胞にとどまらず、高等動植物に普遍的な現象である可能性を示唆する。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明により、二重鎖切断誘導による相同組み換えを介した遺伝子的に改変された細胞の製造において、相同組み換えの頻度を約100倍にまで向上させることが可能となった。これまで、特に高等真核生物では、一般に遺伝子ターゲティングの効率が低く、その実用化を妨げてきたが、本発明により、その効率を飛躍的に高めることが可能となった。従って、本発明は、将来における、動物や植物の品種改良、あるいはヒトの遺伝子治療の進展において、大きく貢献するものと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子的に改変された細胞を製造する方法であって、外因性のブルームDNAヘリカーゼおよび/またはエキソヌクレアーゼExo1を、二重鎖DNA切断による相同組み換えを生じさせたい所望の標的DNA部位を染色体上に持つ細胞内で発現または該細胞内に投与することを特徴とする方法。
【請求項2】
遺伝子的に改変された細胞を製造する方法であって、下記(a)から(c)の処理を含む方法。
(a) 相同組み換えを生じさせたい所望の標的DNA部位を染色体上に持つ細胞において、該標的DNA部位で二重鎖切断を誘導すること
(b) 該標的DNA部位との間で相同組み換えが生じるように、該標的DNA部位の少なくとも一部の配列と相同な配列を持つターゲティングDNA構築物を導入すること
(c) 外因性のブルームDNAヘリカーゼおよび/またはExo1を該細胞内で発現または該細胞内に投与すること
【請求項3】
遺伝子的に改変された細胞が高等真核細胞である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
遺伝子的に改変された細胞が鳥類または植物に由来する細胞である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
遺伝子的に改変された細胞がニワトリまたはイネに由来する細胞である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
請求項1または2に記載の方法により製造される、遺伝子的に改変された細胞。
【請求項7】
遺伝子的に改変された細胞が高等真核細胞である、請求項6に記載の細胞。
【請求項8】
遺伝子的に改変された細胞が鳥類または植物に由来する細胞である、請求項6に記載の細胞。
【請求項9】
遺伝子的に改変された細胞がニワトリまたはイネに由来する細胞である、請求項6に記載の細胞。
【請求項10】
請求項1から5のいずれかに記載の方法に用いるための、下記(a)から(d)の少なくとも一つを含むキット。
(a)ブルームDNAヘリカーゼ
(b)Exo1
(c)ブルームDNAヘリカーゼを細胞内で発現させるためのDNA構築物
(d)Exo1を細胞内で発現させるためのDNA構築物
【請求項11】
動物の品種改良の方法であって、
(a)動物の形質を改変させるための所望の遺伝子を保持するターゲティングDNA構築物を用いて、請求項1または2に記載の方法により、遺伝子的に改変された動物細胞を製造する工程、および
(b)製造された動物細胞を個体へと発生させる工程、
を含む方法。
【請求項12】
遺伝子的に改変された動物細胞が鳥類に由来する細胞である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
遺伝子的に改変された動物細胞がニワトリに由来する細胞である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
植物の品種改良の方法であって、
(a)植物の形質を改変させるための所望の遺伝子を保持するターゲティングDNA構築物を用いて、請求項1または2に記載の方法により、遺伝子的に改変された植物細胞を製造する工程、および
(b)製造された植物細胞から植物体を再生させる工程、
を含む方法。
【請求項15】
遺伝子的に改変された植物細胞がイネに由来する細胞である、請求項14に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−15678(P2011−15678A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132987(P2010−132987)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度農林水産省、生物系特定産業技術研究支援センター基礎的試験研究委託事業「クロマチン構造と細胞周期制御による高等植物の高効率・高精度遺伝子操作技術の開発」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(501167644)独立行政法人農業生物資源研究所 (200)
【Fターム(参考)】