遺体用体液漏出防止装置
【課題】従来技術では、注入器や注射器を使っているため、粉体等の体液漏出剤を鼻奥まで即ち咽喉部まで注入することができず、体液の漏出を十分に防止できない。本発明は、注入器や注射器を使わずに、咽喉部からの体液漏出を確実に防止できる遺体用体液漏出防止装置を提供することを目的とする。
【解決手段】高吸水性ポリマーを有する体液吸収材を錠剤、カプセル、繊維体、ブロック体などからなる擬似固形体に形成しておき、この擬似固形体を可撓性カテーテル中に一旦装填させておき、この擬似固形体が装填されたままで可撓性カテーテルを咽喉部まで挿入する。その後、この可撓性カテーテルに内挿した可撓性当て部材で直接この擬似固形体を可撓性カテーテルの先端から咽喉部内に相対的に押し出して、咽喉部に擬似固形体を送り込む。
【解決手段】高吸水性ポリマーを有する体液吸収材を錠剤、カプセル、繊維体、ブロック体などからなる擬似固形体に形成しておき、この擬似固形体を可撓性カテーテル中に一旦装填させておき、この擬似固形体が装填されたままで可撓性カテーテルを咽喉部まで挿入する。その後、この可撓性カテーテルに内挿した可撓性当て部材で直接この擬似固形体を可撓性カテーテルの先端から咽喉部内に相対的に押し出して、咽喉部に擬似固形体を送り込む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺体からの体液漏出を防止するために、遺体の体腔に装填される遺体用体液漏出防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人体は、死亡後に胃液、肺液、腹水、排泄物などの体液を漏出させることがある。このため、例えば病院では、死亡確認後、遺体の口、鼻、耳、肛門、女性の膣等の体腔にガーゼ、脱脂綿等を装填し、体液の漏出を防ぐことが行なわれている。また、事故や手術後の遺体の開口部にも同様な処置がとられている。
【0003】
一般的に行なわれている遺体の口、鼻、耳等の体腔にガーゼ、脱脂綿等を装填する方法では、漏出体液が多い場合には、ガーゼ、脱脂綿等では不十分であって、体外に漏れ出たりしている。漏出した体液の処理時に病原菌に感染する恐れがあり、作業者からは嫌われている。また新しいガーゼ、脱脂綿等と交換する必要があり、煩わしいだけでなく、遺体体液を介して病原菌が感染する危険性があり、交換時にはその周辺に漏出体液の悪臭が残るなどの問題がある。
【0004】
このために、ガーゼ、脱脂綿等に代えて高吸水性の樹脂粉末を口、鼻、耳、咽喉などに装填するものとして、注射器を使って口、鼻、耳に高吸水性樹脂粉末を装填することが知られている(例えば特許文献1)。
【0005】
また、粉体でなく、ゼリーを用いるものとして、消臭剤入りの粉末ポリマーを適当量の水で溶かし適当に混合してゼリーAにし、遺体の鼻腔の奥、口腔の奥、耳穴の奥に注入器等で圧入し充満させ、ゼリーAで止血し、その外側に更に衛生綿で栓Bをするものが知られている(例えば特許文献2)。
【特許文献1】特開平10−298001号公報
【特許文献2】特開平08−133901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、出来るだけ流動性を確保するために、高吸収ポリマーの微粉末を使用することを述べている。しかし、鼻孔や耳孔の入口部分に入れるのであれば、この公報のように微粉末を注射器のようなシリンダで投入しても充填できるが、奥までは充填できない。特に、奥まで充填するために、急速にシリンダを動かすと、先端から出る微粉末が飛び散るだけで、かえって遺体周辺を汚すだけである。
【0007】
即ち特許文献1のように粉末をそのまま遺体に充填する方法では、粉末を押圧しても粉末自体の密度が上がるだけで、充填器内をスムーズに流れないので、シリンダを使用しても充填することが困難である。また、飛び出る粉末が拡散するので、粉末を固めて栓をしたい所に粉末を留めることが困難であり、場合によっては、遺体外に出て遺体周辺を汚す恐れがある。さらに、粉末をそのまま遺体に装填する場合には、体液の少ない遺体に対しては微粉末がこぼれ出る又はゲルが溶けて漏れ出る可能性がある。
【0008】
また特許文献2のものでは、ゼリーに消臭剤を混合して異臭を防止するようにし、ゼリー自体で栓をすることを狙いとしている。その上、ゼリーだけでは封止が十分でないので、衛生綿等で更に封止するようにしている。この特許文献2のように、粉末ポリマーを水に溶かしてゼリー状にすれば、流動性が良くなるので、鼻孔等の奥にも注入しやすく、注入器を使って注入しても、粉体のように飛散することも無く、注入管を伝って滑らかに注入できる。しかし、既に水に溶かしているために、本来ポリマーが有する吸水性能はほとんどなくなっている。したがって、ゼリーは鼻孔の隙間を埋める栓としての機能でしか使われなく、鼻孔を十分に封止することができない。
【0009】
上述したように、上記特許文献1や特許文献2に示されるものでは、注入器や注射器を使っているため、粉体等の体液漏出剤を鼻奥まで即ち咽喉部まで注入することができず、体液の漏出を十分に防止できない。
本発明は、注入器や注射器を使わずに、咽喉部からの体液漏出を確実に防止できる遺体用体液漏出防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、注入器や注射器を使わずに咽喉部等に体液漏出防止材を送り込むことついて、いろいろな方法について実験研究を重ねた。その結果、高吸水性ポリマーを有する体液吸収材を錠剤、カプセル、繊維体、ブロック体などからなる擬似固形体に形成しておき、この擬似固形体を可撓性カテーテル中に一旦装填させておき、この擬似固形体が装填されたままで可撓性カテーテルを咽喉部まで挿入する。その後、この可撓性カテーテルに内挿した可撓性当て部材で直接この擬似固形体を可撓性カテーテルの先端から咽喉部内に押し出して、咽喉部に擬似固形体を送り込むこととした。
【0011】
具体的には、請求項1記載の発明は、遺体の咽喉部に体液漏出防止剤を送り込んで咽喉部から体液が漏出することを防止するための遺体用体液漏出防止装置において、
鼻孔又は口から咽喉部に挿入される合成樹脂製の可撓性カテーテルを有し、
該可撓性カテーテルの内部には、高吸水性ポリマー粉体からなる体液漏出防止剤を有する擬似固形体が内挿され、
先端部が該擬似固形体の後端部に当接又は接近して挿入され、後端部が該可撓性カテーテルの後端部から飛び出て配設され、該可撓性カテーテル内を相対的に移動可能で、該可撓性カテーテルの先端部から擬似固形体を露出させて咽喉部に落とし込む可撓性当て部材を備え、
該擬似固形体及び該可撓性当て部材を内挿した該可撓性カテーテルが遺体の鼻孔又は口から咽喉部に挿入されて、該可撓性カテーテル内の該擬似固形体が該可撓性カテーテルから出されて、該擬似固形体中の該高吸水性ポリマー粉体が咽喉部の体液を吸収して膨張することを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載の遺体用体液漏出防止装置において、該可撓性カテーテルの中間部に、該先端部が咽喉部に達する長さに対応する部分を示すマークが設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の遺体用体液漏出防止装置において、該可撓性カテーテルと該可撓性当て部材との相対移動によって、該可撓性当て部材の先端部が該可撓性カテーテルの該先端部より飛び出る位置を示す印部が、該可撓性当て部材に設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、該可撓性カテーテルの該先端部は先細に形成され、該先細部に形成された部分には長さ方向に複数のスリットが形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、上記擬似固形体は、高吸水性ポリマーからなる粉体を錠剤状に押し固めたものからなることを特徴とする。
【0016】
請求項6の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、上記擬似固形体は、高吸水性ポリマーからなる粉体を接着剤で接着して擬似固形状に形成してなることを特徴とする。
【0017】
請求項7の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、上記擬似固形体は、高吸水性ポリマーからなる粉体を内部に収納した水溶性カプセル及びメッシュ状カプセルの少なくとも1種からなることを特徴とする。
【0018】
請求項8の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、上記擬似固形体は、高吸水性ポリマーからなる粉体を内部に分散混在した繊維体からなることを特徴とする。
【0019】
請求項9の発明は、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、上記擬似固形体は、複数個が連続して該可撓性カテーテル内に内挿されていることを特徴とする。
【0020】
請求項10の発明は、請求項1ないし9のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、高吸水性ポリマーの平均粒度が80〜900μmの粉体からなることを特徴とする。
【0021】
請求項11の発明は、請求項1ないし10のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、該可撓性カテーテルの外径が3mm〜8mm、内径が外径より0.2mm〜1.0mm以下の径からなり、該可撓性当て部材の外径は、該可撓性カテーテルの内径より0.1mm以上小径であることを特徴とする。
【0022】
請求項12の発明は、請求項1ないし11のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、該可撓性当て部材の外径が該可撓性カテーテルの内径の半分以下であることを特徴とする。
【0023】
請求項13の発明は、請求項1ないし12のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、該可撓性当て部材は合成樹脂材からなり、該可撓性当て部材の可撓性は該可撓性カテーテルの可撓性よりも低く形成されていることを特徴とする。
【0024】
請求項14の発明は、請求項1ないし13のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、該可撓性当て部材の印部が、該可撓性当て部材及び該可撓性当て部材の所定量以上の相対移動を制止するストッパを有することを特徴とする。
【0025】
請求項15の発明は、請求項1ないし14のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、該上記擬似固形体に殺菌剤、防カビ剤、防腐剤、消臭剤及び香料の少なくとも1種が含まれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
請求項1の発明によれば、高吸水性ポリマーを有する擬似固形体を可撓性カテールに装填した状態で、鼻孔又は口先から咽喉部に挿入するので、確実に擬似固形体を咽喉部まで運ぶことができる。その上で、擬似固形体の後端部に可撓性当て部材を押し当てた状態で、可撓性カテーテルを引き抜くか、可撓性当て部材を押し込むことによって、可撓性カテーテル内から擬似固形体を飛び出させるので、確実に咽喉部にて擬似固形体を露出した状態にすることができ、高吸水性ポリマーで体液を効果的に吸収でき、体液の漏出を防止できる。
【0027】
また、可撓性カテーテルと可撓性当て部材とを一緒に咽喉部まで挿入してから、可撓性カテーテルと可撓性当て部材とを相対的に移動させるだけでよいので、操作性に優れ、ベテラン看護士や不慣れな看護士であっても、確実に作業できる。
【0028】
また、シリンジなどの注入器を使わないので、可撓性カテーテルとシリンジを接続するなどの作業が不要であり、操作性に優れ、その上コンパクト化・低コスト化を図れる。
【0029】
請求項2の発明によれば、可撓性カテーテルが咽喉部に達した状態を誰でも簡単に把握できるので、看護士等の操作者の作業不安を軽減できる。また、可撓性カテーテルの挿入位置のバラツキが少なく、間違いなく擬似固形体を咽喉部に持ち込むことができる。
【0030】
請求項3の発明によれば、可撓性カテーテルから擬似固形体を露出した状態を誰でも簡単に把握できるので、看護士等の操作者の作業不安を軽減できる。また、位置のバラツキが少なく、間違いなく擬似固形体を咽喉部に位置させることができる。
【0031】
請求項4の発明によれば、鼻孔内壁を損傷することなく、可撓性カテーテルを鼻孔から咽喉部に滑らかに挿入することができると共に、可撓性カテーテルから擬似固形体を容易に露出することができる。
【0032】
請求項5の発明によれば、高吸水性ポリマーをコンパクトにでき、挿入し易い。
【0033】
請求項6、7または8の発明によれば、高吸水性ポリマーの形状維持性に優れ、可撓性当て部材で相対的に擬似固形体を押し込む際に形状崩壊することなく、相対的にスムーズに押し込める。
【0034】
請求項9の発明によれば、擬似固形体が複数個になって装填されているので、相互に位置ズレや変形でき、可撓性カテーテルが折れ曲がりながら鼻孔から咽喉部に挿入される際に可撓性カテーテルの折れ曲がりを阻害することなく、スムーズに可撓性カテーテルを挿入できる。また、咽喉部に出された際にも咽喉部の空間に分散しやすい。
【0035】
必要であれば、擬似固形体の数量を、遺体の大きさや体液量見込みによって増減することも簡単にできる。
【0036】
請求項10の発明によれば、高吸水性ポリマーが微粉末からなるので、体液を素早く吸収して膨潤でき、漏出防止機能に優れる。
【0037】
請求項11の発明によれば、可撓性カテーテルを鼻孔から咽喉部にスムーズに挿入できると共に、可撓性カテーテルと可撓性当て部材との相対移動も滑らかに行うことができる。
【0038】
請求項12の発明によれば、可撓性カテーテルと可撓性当て部材との相対移動を軽い力で滑らかに行うことができる。
【0039】
請求項13の発明によれば、可撓性当て部材も鼻孔の形状に滑らかに追従できるので、スムーズに可撓性カテーテルと一緒に咽喉部まで挿入できると共に、可撓性カテーテルと可撓性当て部材との相対移動も速やかに且つ確実に行うことができる。
【0040】
請求項14の発明によれば、ストッパを有するので、可撓性カテーテルの挿入位置のバラツキが少なく、確実に咽喉部まで可撓性カテーテルを挿入でき、作業不安を軽減できる。また、擬似固形体が確実に可撓性カテーテルから露出できるので、体液吸収性に優れる。
【0041】
請求項15の発明によれば、異臭を吸収できること、又は作業中に作業者が病原菌に感染することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0043】
(実施形態1)
図1及び図2により本発明の実施形態1を説明する。実施形態1の体液漏出防止装置10の可撓性カテーテル11は、鼻孔Aから咽喉部Bに挿入されるものであり、外径:5mm、内径:4.7mmからなる長尺の可撓性の合成樹脂製中空チューブである。可撓性当て部材14は、外径:4.5mm、内径:4mmからなる長尺の可撓性の合成樹脂製中空チューブである。可撓性当て部材14は、可撓性カテーテル11の中に挿入され、可撓性カテーテル11に対して相対的に移動可能となっている。即ち、可撓性カテーテル11の動きを止めておいて、可撓性当て部材14が可撓性カテーテル11内をスライドするように長さ方向に移動できる、または、可撓性当て部材14の動きを止めておいて、可撓性カテーテル11が可撓性当て部材14の外側でスライドするように長さ方向に移動できるようになっている。可撓性カテーテル11及び可撓性当て部材14を中空チューブにすることによって、可撓性カテーテル11及び可撓性当て部材14が共に折れ曲がり易いので、鼻孔から咽喉部に挿入する時に途中で内壁にひっかることなくスムーズに挿入でき、操作性に優れる。
【0044】
なお、可撓性カテーテル11を鼻孔から咽喉部に挿入するものでは、可撓性カテーテル11の外径は3mm〜8mm、内径は外径より0.2mm〜1.0mm以下の径からなるものが好ましい。可撓性当て部材14がこの可撓性カテーテル11内を滑らかに移動する為には、可撓性当て部材14の外径は、可撓性カテーテル11の内径より0.1mm以上小径、特に可撓性カテーテル11内径の半分以下の外径とすることが好ましい。
【0045】
可撓性当て部材14の外径が可撓性カテーテル11の内径の半分以下とする場合には、可撓性当て部材14が可撓性カテーテル11の可撓性よりも低く形成されるようにすると、擬似固形体を相対的にスムーズに押し出す上で有利である。
【0046】
可撓性カテーテル11の内部11cには、先端近くに、複数の擬似固形体20が装填されている。この擬似固形体20は、図2に示すように、高吸水性ポリマー粉体21を圧縮して直径が略4.5mmの円柱状に形成した錠剤タイプのものである。
【0047】
なお、実施形態1の錠剤タイプは擬似固形体の1例であって、本発明に含まれる擬似固形体は、これに限られるものではない。本発明の擬似固形体としては、可撓性カテーテルから出されるまでは、多数の高吸水性ポリマーを含有する団塊状態、即ち固形体として存在し、可撓性カテーテルから出された後は、速やかにできるだけ個々の高吸水性ポリマーに分散するものであり、これらのものを総称して擬似固形体と呼ぶこととした。例えば、擬似固形体の例としては、実施形態1の錠剤タイプのような錠剤タイプ、内部に高吸水性ポリマーを有する水溶性、透水性又はメッシュ状のカプセル(又は袋体)・繊維体等である。
【0048】
可撓性カテーテル11の先端部11aは先細形状に形成され、この先細部分には複数のスリット12が長さ方向に形成されている。この構造によって、可撓性カテーテル11を鼻孔Aから咽喉部Bに挿入する際に、鼻孔Aの内壁に沿って、滑らかに挿入できるようになっている。また、可撓性カテーテル11内の擬似固形体20を相対的に押し出す際には、先細になった先細部分が外側に弾性変形して広がることによって、先細部分からスムーズに軽い力で飛び出すことをできるようになっている。
【0049】
可撓性カテーテル11の先端部11aには、合成樹脂製のキャップ16を外側から外嵌しておき、使用前に擬似固形体20の高吸水性ポリマー21が吸湿して使用できなくなることを防止するようになっている。なお、合成樹脂製のキャップ16の代わりに又は追加してフイルムを可撓性カテーテル11の先端部11aに貼り付けたものでも良い。キャップ16を外嵌するのではなく、可撓性カテーテル11の先端部11a内に内嵌しても良い。
【0050】
実施形態1では、可撓性当て部材14は長尺の可撓性の合成樹脂製中空チューブとなっているが、擬似固形体20の後端部20aが型崩れして可撓性当て部材14の内部に入り込む可能性がある場合には、擬似固形体20の後端部20aに当接する可撓性当て部材14の先端部14aに、変形可能な薄膜やネット等の侵入防止部材を設けても良い。
【0051】
なお、擬似固形体20は高吸水性ポリマー粉体21を圧縮して円柱状に形成したものであるが、形状維持性を向上するために、錠剤状の擬似固形体20を水溶性のシートやネットで包んだものとしても良い。また、接着剤等を混合して形状維持性を向上して円柱状に成形しても良い。なお、形状維持性が高くすることによって、高吸水性ポリマー粉体の型崩れが遅くなり、吸水性速度の低下が気になる場合には、例えば、入浴剤などに使われているような水分を吸収して泡立つような発泡剤を混入しておき吸水すると高吸水性ポリマー粉体21が分散するようにしても良い。
【0052】
本発明で使用する高吸水性ポリマー21としては、ポリビニールアルコール、ポリビニールアクリレート、アルギン酸塩、ポリアクリル酸塩、デンプン・アクリル酸グラフト共重合体架橋物、ビニールアルコールとアクリル酸の共重合物、ポリエチレングリコール系ポリマー、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアクリル酸とマレイン酸の共重合物、ポリアルキレンオキサイド系の熱可燃性を有するノニオン型樹脂の少なくとも1種からなることが好ましい。
【0053】
本発明の高吸水性ポリマー21の粒子は微粒子過ぎると吸水性能が低下し、粒子が大きすぎると体積に対する表面積が少なく体液吸収能力が劣ることとなるので、平均粒度は80〜900μmとするのが好ましく、特に100〜400μmが好ましい。
【0054】
形状維持性を向上する上で、高吸水性ポリマーと増粘剤を混合しても良い。この増粘剤としては、カルボキシビニールポリマー、カルボキシビニールポリマー/アルカリ液、親油性スメクタイト、ベントナイト、合成ヘクトナイト、天然ヘクトナイト等が上げられる。増粘剤の重量%は、制限されるわけではないが、0〜1.0重量%である。
【0055】
実施形態1の遺体用体液漏出防止装置10の使用例を、図12に基づいて説明する。図12において、Aは鼻孔、Bは咽喉部、Cは口で、Dは気管、Eは食道、Fは頚椎、Gは咽喉部の空間を示す。
【0056】
使用時には、可撓性カテーテル11の先端近傍に擬似固形体20を複数個装填する。複数個の擬似固形体20は互いに接触していても、変形を許容する程度に少し隙間を有して装填されていても良い。そして、可撓性当て部材14の先端部14が擬似固形体20の後端部20aに接近する位置まで、或は当接する位置まで可撓性当て部材14を可撓性カテーテル11内に挿入して、可撓性カテーテル11、擬似固形体20及び可撓性当て部材14を一緒にして用意する。
【0057】
鼻孔Aから咽喉部Bに挿入する際の曲がりや変形を考えると、擬似固形体20の変形や潰れを許容するように、擬似固形体20同士が少し隙間を有し、可撓性当て部材14の先端部14とも少し隙間を有することが好ましい。
【0058】
鼻孔Aから咽喉部Bに挿入する際には、可撓性カテーテル11、擬似固形体20及び可撓性当て部材14を一緒にして咽喉部Bまで挿入する。可撓性カテーテル11を所定位置まで挿入すると、可撓性カテーテル11の外周に付与したマーク13が鼻孔Aに接近した位置になるので、この位置まで来ると可撓性カテーテル11の挿入が完了したとして、挿入を停止する。この状態を図12に示す。
【0059】
図12に示す状態から、可撓性当て部材14を長さ方向に動かないように持って、可撓性カテーテル11を軽く持って引き抜く。このとき、可撓性カテーテル11の後端部11bが可撓性当て部材14の外周に設けられた印部14bに近接する位置を目安として引き抜く。この引き抜きによって、可撓性当て部材14の先端部14aが可撓性カテーテル11の先端部11aよりも飛び出た位置になり、擬似固形体20が可撓性カテーテル11から外れて自由になり、可撓性カテーテル11内から完全に露出する。この操作によって、可撓性カテーテル11内の擬似固形体20が可撓性カテーテル11内から飛び出て、咽喉部Bの空間G内に分散する。実施形態1では、擬似固形体20が複数個になっているので、咽喉部B内の空間Gに効果的に分散すると共に個々の擬似固形体20が素早く体液を吸収して膨張することができ、体液が咽喉部Bから体外に露出することを防止できる。その後、可撓性カテーテル11及び可撓性当て部材14を鼻孔Aから引き抜く。
【0060】
なお、可撓性当て部材14に印部14bを設けずに、図12に示す状態から可撓性カテーテル11を鼻孔Aから外れるまで一気に引き抜いて、その後、可撓性当て部材14を引き抜くようにしても良い。
【0061】
上記使用例では、上述したように、擬似固形体20を可撓性カテーテル11内に装填した状態で直接可撓性カテーテル11を咽喉部B付近まで挿入するので、擬似固形体20を咽喉部B内に確実に送り込むことができ、擬似固形体20が咽喉部Bまで到達せずに途中で膨張することを防止できる。それと共に、可撓性カテーテル11を引き抜く際に、擬似固形体20の後端部が可撓性当て部材14に当接して、それ以上は戻されないので、確実に可撓性カテーテル11内の擬似固形体20を咽喉部B内の空間Gに露出させることができる。また、圧縮エアポンプやシリンジ等の空気を使って押し込むのではなく、操作者が押し込み感覚を直接手に感じながら直接咽喉部Bまで擬似固形体20を運ぶので、操作性に優れる。また、挿入時及び引き抜き時の音が比較的静かであり、操作者は周囲の人たちを気にせずに安心して操作できる。
【0062】
又、遺体用体液漏出防止装置10の別の使用例を、図13に基づいて説明する。この使用例は、実施形態1の可撓性カテーテル11及び可撓性当て部材14の変形例であり、可撓性カテーテル111及び可撓性当て部材114としたものである。可撓性当て部材114の本体は、可撓性カテーテル111の内径に対して、1/3程度の径からなる細い棒部材であって、擬似固形体20の後端部20bに当接する先端部114aを擬似固形体20の大きさに等しい大きさとしたものである。可撓性カテーテル111の外周には、マークとしてストッパ113が突出して設けられ、可撓性カテーテル111を挿入した際に目視しなくても、咽喉部Bの所定位置まで達したことが判るようになっている。
【0063】
使用時には、可撓性カテーテル111の先端近傍に擬似固形体20を複数個装填し、可撓性当て部材114の先端部114aが擬似固形体20の後端部20aに接近するまで、可撓性当て部材114を可撓性カテーテル111内に挿入して、可撓性カテーテル111、擬似固形体20及び可撓性当て部材114を一緒にして用意する。この状態のままで、可撓性カテーテル111を鼻孔Aから咽喉部Bまで挿入する。可撓性カテーテル111を所定位置まで挿入すると、ストッパ113が鼻孔Aに当接するので、この位置まで来ると可撓性カテーテル111の挿入が完了したとして、挿入を停止する。このときに、可撓性カテーテル111の先端部111aが咽喉部Bの大きな空間Gに少し入った位置になっている。
【0064】
この状態から、可撓性カテーテル111を軽く持って動かないようにして、可撓性当て部材114を奥に押し込む。この押し込みによって、擬似固形体20が可撓性カテーテル111の先端部111aから飛び出て、咽喉部B内の空間G内に分散していく。押し込み操作は、可撓性当て部材114の外周に設けられた突出部114bが、可撓性カテーテル111の後端部111bに当接するまで押し込む。このことによって、可撓性当て部材114の先端部114aが可撓性カテーテル111の先端部111aよりも出て、可撓性カテーテル111内の擬似固形体20が完全に飛び出ることができる。この状態を図13に示す。
【0065】
この図13の使用例では、擬似固形体20を装填したままで可撓性カテーテル111を鼻孔Aから直接人手で挿入し、更に可撓性当て部材114を直接人手で押し込むので、操作者が押し込み感覚を直接感じながら操作でき、操作性に優れ、確実に咽喉部Bに持ち込むことができる。また、挿入時の音が比較的静かであり、操作者は周囲の人たちを気にせずに安心して操作できる。
【0066】
なお、図12の使用例で使用した可撓性カテーテル11を咽喉部に少し入って位置まで挿入し、この状態で可撓性当て部材14を押し込み擬似固形体を咽喉部の空間に落とし込むようにしても良い。また、図13の使用例で使用した可撓性カテーテル111を咽喉部の奥まで挿入し、この状態で可撓性カテーテル111を引き抜き、擬似固形体を咽喉部の空間に落とし込むようにしても良い。
【0067】
また、図12の使用例でマーク13に代えてストッパ113とする、印部14bに代えてストッパ114bにする、或は、図13の使用例でストッパ113に代えてマーク13とする、ストッパ114bに代えて印部14bにするようにしても良い。また、一方のみ変更することも可能である。
【0068】
以下に擬似固形体の他の実施形態を説明する。
【0069】
(実施形態2)
図3は擬似固形体の別例を示す実施形態2に関わり、実施形態1の図2と同様な図を示す。実施形態2では、実施形態1と異なる点のみ説明し、共通点の説明は省略する。実施形態1の擬似固形体20は、高吸水性ポリマー粉体21を圧縮して円柱状に形成した錠剤タイプであったが、実施形態2の擬似固形体では、断面が楕円形状のカプセル30の中に高吸水性ポリマー21を充填したものである。カプセル30は水溶性のペーパーや合成樹脂材からなり、体液を吸収することによって、溶けるようになっている。また、カプセル30は、この実施形態2に示すような袋形状に限られるものではなく、メッシュ形状であっても良く、多数の孔を開口したものであっても良く、この場合には水溶性でなくても良い。カプセル30は伸縮性のあるメッシュでも良い。カプセル30の材質は、合成樹脂、ラバー、紙材等が考えられる。カプセルは、相対的に押し込む際に破損しない強度を備えることを必要とし、鼻孔から咽喉部に挿入する際の曲がりや変形に追従できる弾力性を備えることが好適である。
なお、この実施形態2でも、水分を吸収して泡立つような発泡剤を混入しても良い。
【0070】
(実施形態3)
図4は実施形態3に関わり、実施形態1の図2と同様な図を示す。実施形態3では、実施形態1と異なる点のみ説明し、共通点の説明は省略する。実施形態3の擬似固形体では、多数の繊維を束ねて円柱状に形成した繊維体40の隙間に高吸水性ポリマー21を充填したものである。
【0071】
この実施形態3では、繊維体40で形状を維持できるので、繊維体40をスムーズに可撓性カテーテル11から露出できると共に、繊維間に存在する高吸水性ポリマー21が体液を吸収して膨張するので、体液漏出を効果的に防止できる。
【0072】
なお、繊維体40としては、水膨潤性繊維を使用することもできる。水膨潤性繊維としては、アクリル繊維で形成された芯材である内層及び該内層を囲撓するように形成され、外層が内層よりも高い吸水性と高い膨潤性とを有する水膨潤性繊維等が使用できる。
【0073】
(実施形態4)
実施形態4について、図5及び図6に基づいて説明する。この実施形態4は、実施形態2のカプセル30の変形例である。実施形態4のカプセル300は、前側に4つに分割去れた片部301を備える。実施形態4のカプセル300の各片部301は、図5の2点鎖線で示すように自由状態ではラッパ状に拡開するように成形されており、押さえると図5の実線で示すようにカプセル300を閉じた状態に合わさるようになっている。閉じた状態では、図6に示すように、各片部301の隣接部分に形成された段部302が合わさって、位置ズレを防止している。
【0074】
可撓性カテーテル11に装填するときは、カプセル内300内に高吸水性ポリマー21を充填して、4つの片部301を閉じた状態として、可撓性カテーテル内に挿入する。そして、可撓性当て部材14を可撓性カテーテル内11内に挿入して可撓性カテーテルに当接した状態として、図8又は図9のように咽喉部Bまで挿入する。そして、可撓性カテーテル11を引き抜くか可撓性当て部材14を押し込むことによって、カプセル300の4つの片部301を閉じた状態に規制するものが無くなり、カプセル300の片部301がラッパ状に開き、咽喉部Bに持ち込まれることになる。これによって、カプセル300内部の高吸水性ポリマー21が咽喉部B内に分散して出て行く。
【0075】
なお、片部301は自由状態でラッパ状に開く状態で形成され、各片部301を押し合わせて可撓性カテーテル11内に装填しているが、開く力が不足する場合には、バネ等の補助開放部材をカプセル300内に入れるようにしても良い。
【0076】
(実施形態5)
実施形態5について、図7に基づいて説明する。この実施形態5は、実施形態2に対して、可撓性カテーテル111の先端部111a即ちカプセル30の前側に、多数の高吸水性ポリマー21の粉体を擬似固形体30に入れないで、粉体のままで充填しておき、先側をフイルム15でシールしたものである。この実施形態5では、カプセル30内の高吸水性ポリマー21がカプセル30から出て体液を吸収する前に、粉体のままの高吸水性ポリマー21が咽喉部B内に素早く分散するので、咽喉部Bに存在する体液を即座に吸収し、体液が体外に溢れ出ることをより確実に防止できる。特に、体液が多い遺体や、体内圧力が高く勢い良く体液が吹き出る可能性の高い遺体に対しては、この実施形態5のように、粉体のままの高吸水性ポリマー21の適切量を可撓性カテーテル111の先端部111aに入れておくことが有効である。フイルム15のシールのみで不足であれば、実施形態1のようにキャップ16をも設けても良い。高吸水性ポリマー21を粉体のままで擬似固形体の前側に充填しておく構成は、実施形態2のカプセル30に限られるものではなく、他の実施形態の擬似固形体に対しても適用可能である。
【0077】
(実施形態6)
実施形態6について、図8及び図9に基づいて説明する。実施形態6の擬似固形体50は、実施形態1の可撓性カテーテル11と同様な材質からなり、その外径が可撓性カテーテル11の内径と略同じである可撓性合成樹脂のリング部材51を備え、リング部材51の内側に高吸水性ポリマー21を充填し、リング部材51の前面及び後面をフイルム52、52等で覆ったものである。
【0078】
可撓性当て部材54はリング部材51とほぼ同じ外径か僅かに小さい外径の中空チューブからなり、可撓性当て部材54の先端部54aが、リング部材51の後端部に当接するようになっている。
【0079】
リング部材51が、可撓性カテーテル11の曲がり等の変形に追従して曲がることが可能であるので、リング部材51内の高吸水性ポリマー21は、リング部材51の変形を許容する程度の密度に充填しておき、フイルム52もリング部材51の変形を許容するような伸縮性を有する合成樹脂、合成繊維、天然繊維等であり、リング部材51に接合しておく。
【0080】
この実施形態6では、体液漏出防止装置10を鼻孔から咽喉部に挿入する時に、鼻孔の曲り構造などのために可撓性カテーテル11が折れ曲って挿入され、上記リング部材51も追従して曲がることができるので、咽喉部Bまで滑らかに挿入できる。また、相対的に可撓性当て部材54を移動させる際には、可撓性当て部材54の先端部54aがリング部材51の後端部Bに当接しているので、確実に擬似固形体50を咽喉部に押し込むことができる。
【0081】
実施形態7について、図10及び図11に基づいて説明する。実施形態7の擬似固形体60は、球状のカプセル61の中に高吸水性ポリマー21を充填したものである。このカプセル61の直径が可撓性カテーテル111の内径に対して小さくなっており、可撓性カテーテル111を鼻孔Aから咽喉部Bに挿入する際の曲がり等の変形に追従し易くなっている。カプセル61の直径は、可撓性カテーテル111の内径に対して3/4〜1/4程度とすることが好ましい。カプセル61は水溶性或いは透水性のペーパー、合成樹脂等からなるか、メッシュ状のペーパー、合成樹脂等が使用可能である。カプセル61の形状は、球体に限らず断面楕円形状、多角体形状でも構わない。
【0082】
この実施形態7の擬似固形体60の使用例としては、図12の使用例でも図13の使用例でも適用可能である。なお、図12に示すように、可撓性カテーテル111を咽喉部Bの奥まで挿入しておき、可撓性カテーテル111を引き抜くようにすると、擬似固形体60を後から押し込むよりも可撓性カテーテル111から飛び出ることが容易であり、好都合である。
【0083】
実施形態8について、図14に基づいて説明する。この実施形態8では、図13で使用した可撓性カテーテル111及び可撓性当て部材114の形状を変更したものである。即ち、実施形態8の可撓性カテーテル211は、中間部外周に突出してストッパ213を備え、このストッパ213に連続して、可撓性カテーテル211の後端部211b付近までの領域(操作者が手に持つ領域)の肉厚を厚くして肉厚部224を形成した。可撓性当て部材214は、中実の細い棒部材(可撓性カテーテル111の内径の1/3の外径)とし、先端部に可撓性カテーテル211の内径に略等しい外径の当て部を設けたものである。
【0084】
可撓性カテーテル211に肉厚部224を設けて可撓性カテーテル211を握る部分の剛性を高くすることによって、可撓性カテーテル211に対して可撓性当て部材214を相対的に移動させた場合に、可撓性カテーテル211を強く持ち過ぎて可撓性当て部材214をスムーズに移動できなくなることを未然に防止するようにしている。また、操作者がこの肉厚部224を安心して持てるので、操作者の不安をなくすことができる。
【0085】
なお、肉厚部224は全周を肉厚にしているが、全周でなく、部分的にリブのように設けても良い。また、肉厚部224に代えて、高剛性樹脂製の円筒部材や金属製円筒部材を外嵌めしても良い。
【0086】
なお、図12のマーク13をストッパ113、印部14bをストッパ114bに変更しても良く、図13のストッパ113をマーク13、ストッパ114bを印部14bに変更しても良い。また、片方のみ変更しても良い。また、図12,13においても、可撓性カテーテル11の握る部分に図14に示すような高剛性部分を設けても良い。
【0087】
また、図12及び図13の使用状態は、実施形態1〜6のどの実施形態のものでも使用可能なものであり、どちらか都合のよいほうを任意に選定すればよい。
【0088】
該体液漏出防止材10には、二酸化安定塩素、消臭剤、殺菌剤、防カビ剤、防腐剤、香料等を添加しても良い。
【0089】
殺菌剤としては、グルコン酸クロルヘキシジン、イソプロピルメチルフェノール、チモール、0−フェニルフェノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、ヒノキチオール、塩化リゾチーム、ε―ポリリシン、グレープフルーツ種子抽出物、トリクロサン、カラシ抽出物「ワサオーロ」(商品名)等が挙げられる。
防カビ防腐剤としては、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸イソブチル、プロピオン酸ナトリウム、チアベンダゾール、イソチアゾロン等が挙げられる。
消臭剤としては、モウソウチク抽出物、緑茶抽出エキス、長鎖ベタイン化合物、柿抽出液の総称型タンニンを主成分とした消臭剤、数種の植物エキスを混合した植物系特殊消臭剤等が挙げられる。
【0090】
香料としては、フルーティー調、フローラル調、シトラル調、ウッディー調、フレッシュノート調、ミックスフレーバー調、グリーン調、ミント調等が挙げられる。
殺菌剤、防カビ防腐剤、消臭剤及び香料の含有量は、各効果を維持し、安全性及び良好な経済性を得る観点から、体液漏出防止剤のゼリー中に殺菌剤、防カビ防腐剤は0.001〜10重量%が好ましく、特に0.003〜5重量%が好ましく、消臭剤は0.05〜15重量%、特に0.1〜5重量%が好ましく、香料は0.001〜7重量%、特に0.01〜3重量%が好ましい。また、その他、色素を添加含有することも可能であり、配合、選択などは特に限定されるものではなく任意に設定でき、なんら制限されない。
【0091】
上記実施形態では、可撓性カテーテル11、111、211を鼻孔Aから咽喉部Bに挿入するもので説明したが、鼻孔Aからでなくて、口Cの口先から口内を通して咽喉部Bに可撓性カテーテルを挿入するようにするものにも、本発明は適用可能である。
【0092】
擬似固形体の数量は、上記実施形態で示した数に限られるものではなく、標準的な遺体の体液に対応した任意の数にすればよい。また、擬似固形体の数量は、初期には上記標準的な数量にしておき、遺体によっては体液が多量にある可能性が高いことが解かる場合には、余分に擬似固形体を付け足してから、可撓性カテーテルを咽喉部に挿入するようにすることも可能である。
【0093】
擬似固形体の形状は、円柱状や断面楕円形のものに限られるものではなく、球体でも良い。また、擬似固形体の大きさは、形状維持性が保てれば、小さい方が好ましいが、押し込み難くなるので、適切な大きさとする。
【0094】
可撓性カテーテル11、111、211の挿入抵抗を軽減するために、挿入前に可撓性カテーテル11、111、211の外周にグリセリン等の潤滑剤を塗布しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0095】
以上説明したように、本発明に係る遺体用咽喉部封止装置は、体液が咽喉部から口内や体外に漏れ出るのを防止するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の実施形態1に係わる遺体用体液漏出防止装置の断面図を示す。
【図2】実施形態1の擬似固形体を示す。
【図3】実施形態2の擬似固形体を示す。
【図4】実施形態3の擬似固形体を示す。
【図5】実施形態4の擬似固形体を示す。
【図6】図5のA−A断面図を示す。
【図7】実施形態5に関わる遺体用体液漏出防止装置の部分断面図を示す。
【図8】実施形態6に関わる遺体用体液漏出防止装置の部分断面図を示す。
【図9】実施形態6の擬似固形体を示す。
【図10】実施形態7に関わる遺体用体液漏出防止装置の部分断面図を示す。
【図11】実施形態7の擬似固形体を示す。
【図12】遺体用体液漏出防止装置の使用例を説明する図である。
【図13】遺体用体液漏出防止装置の別の使用例を説明する図である。
【図14】実施形態8に関わる可撓性カテーテル及び可撓性当て部材の部分断面図を示す。
【符号の説明】
【0097】
10 体液漏出防止装置
20 擬似固形体
21 体液漏出防止剤(高吸水性ポリマー)
11 可撓性カテーテル
12 スリット
13 マーク
14 可撓性当て部材
15 フイルム
16 キャップ
20 擬似固形体
30 擬似固形体
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺体からの体液漏出を防止するために、遺体の体腔に装填される遺体用体液漏出防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人体は、死亡後に胃液、肺液、腹水、排泄物などの体液を漏出させることがある。このため、例えば病院では、死亡確認後、遺体の口、鼻、耳、肛門、女性の膣等の体腔にガーゼ、脱脂綿等を装填し、体液の漏出を防ぐことが行なわれている。また、事故や手術後の遺体の開口部にも同様な処置がとられている。
【0003】
一般的に行なわれている遺体の口、鼻、耳等の体腔にガーゼ、脱脂綿等を装填する方法では、漏出体液が多い場合には、ガーゼ、脱脂綿等では不十分であって、体外に漏れ出たりしている。漏出した体液の処理時に病原菌に感染する恐れがあり、作業者からは嫌われている。また新しいガーゼ、脱脂綿等と交換する必要があり、煩わしいだけでなく、遺体体液を介して病原菌が感染する危険性があり、交換時にはその周辺に漏出体液の悪臭が残るなどの問題がある。
【0004】
このために、ガーゼ、脱脂綿等に代えて高吸水性の樹脂粉末を口、鼻、耳、咽喉などに装填するものとして、注射器を使って口、鼻、耳に高吸水性樹脂粉末を装填することが知られている(例えば特許文献1)。
【0005】
また、粉体でなく、ゼリーを用いるものとして、消臭剤入りの粉末ポリマーを適当量の水で溶かし適当に混合してゼリーAにし、遺体の鼻腔の奥、口腔の奥、耳穴の奥に注入器等で圧入し充満させ、ゼリーAで止血し、その外側に更に衛生綿で栓Bをするものが知られている(例えば特許文献2)。
【特許文献1】特開平10−298001号公報
【特許文献2】特開平08−133901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、出来るだけ流動性を確保するために、高吸収ポリマーの微粉末を使用することを述べている。しかし、鼻孔や耳孔の入口部分に入れるのであれば、この公報のように微粉末を注射器のようなシリンダで投入しても充填できるが、奥までは充填できない。特に、奥まで充填するために、急速にシリンダを動かすと、先端から出る微粉末が飛び散るだけで、かえって遺体周辺を汚すだけである。
【0007】
即ち特許文献1のように粉末をそのまま遺体に充填する方法では、粉末を押圧しても粉末自体の密度が上がるだけで、充填器内をスムーズに流れないので、シリンダを使用しても充填することが困難である。また、飛び出る粉末が拡散するので、粉末を固めて栓をしたい所に粉末を留めることが困難であり、場合によっては、遺体外に出て遺体周辺を汚す恐れがある。さらに、粉末をそのまま遺体に装填する場合には、体液の少ない遺体に対しては微粉末がこぼれ出る又はゲルが溶けて漏れ出る可能性がある。
【0008】
また特許文献2のものでは、ゼリーに消臭剤を混合して異臭を防止するようにし、ゼリー自体で栓をすることを狙いとしている。その上、ゼリーだけでは封止が十分でないので、衛生綿等で更に封止するようにしている。この特許文献2のように、粉末ポリマーを水に溶かしてゼリー状にすれば、流動性が良くなるので、鼻孔等の奥にも注入しやすく、注入器を使って注入しても、粉体のように飛散することも無く、注入管を伝って滑らかに注入できる。しかし、既に水に溶かしているために、本来ポリマーが有する吸水性能はほとんどなくなっている。したがって、ゼリーは鼻孔の隙間を埋める栓としての機能でしか使われなく、鼻孔を十分に封止することができない。
【0009】
上述したように、上記特許文献1や特許文献2に示されるものでは、注入器や注射器を使っているため、粉体等の体液漏出剤を鼻奥まで即ち咽喉部まで注入することができず、体液の漏出を十分に防止できない。
本発明は、注入器や注射器を使わずに、咽喉部からの体液漏出を確実に防止できる遺体用体液漏出防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、注入器や注射器を使わずに咽喉部等に体液漏出防止材を送り込むことついて、いろいろな方法について実験研究を重ねた。その結果、高吸水性ポリマーを有する体液吸収材を錠剤、カプセル、繊維体、ブロック体などからなる擬似固形体に形成しておき、この擬似固形体を可撓性カテーテル中に一旦装填させておき、この擬似固形体が装填されたままで可撓性カテーテルを咽喉部まで挿入する。その後、この可撓性カテーテルに内挿した可撓性当て部材で直接この擬似固形体を可撓性カテーテルの先端から咽喉部内に押し出して、咽喉部に擬似固形体を送り込むこととした。
【0011】
具体的には、請求項1記載の発明は、遺体の咽喉部に体液漏出防止剤を送り込んで咽喉部から体液が漏出することを防止するための遺体用体液漏出防止装置において、
鼻孔又は口から咽喉部に挿入される合成樹脂製の可撓性カテーテルを有し、
該可撓性カテーテルの内部には、高吸水性ポリマー粉体からなる体液漏出防止剤を有する擬似固形体が内挿され、
先端部が該擬似固形体の後端部に当接又は接近して挿入され、後端部が該可撓性カテーテルの後端部から飛び出て配設され、該可撓性カテーテル内を相対的に移動可能で、該可撓性カテーテルの先端部から擬似固形体を露出させて咽喉部に落とし込む可撓性当て部材を備え、
該擬似固形体及び該可撓性当て部材を内挿した該可撓性カテーテルが遺体の鼻孔又は口から咽喉部に挿入されて、該可撓性カテーテル内の該擬似固形体が該可撓性カテーテルから出されて、該擬似固形体中の該高吸水性ポリマー粉体が咽喉部の体液を吸収して膨張することを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載の遺体用体液漏出防止装置において、該可撓性カテーテルの中間部に、該先端部が咽喉部に達する長さに対応する部分を示すマークが設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の遺体用体液漏出防止装置において、該可撓性カテーテルと該可撓性当て部材との相対移動によって、該可撓性当て部材の先端部が該可撓性カテーテルの該先端部より飛び出る位置を示す印部が、該可撓性当て部材に設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、該可撓性カテーテルの該先端部は先細に形成され、該先細部に形成された部分には長さ方向に複数のスリットが形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、上記擬似固形体は、高吸水性ポリマーからなる粉体を錠剤状に押し固めたものからなることを特徴とする。
【0016】
請求項6の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、上記擬似固形体は、高吸水性ポリマーからなる粉体を接着剤で接着して擬似固形状に形成してなることを特徴とする。
【0017】
請求項7の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、上記擬似固形体は、高吸水性ポリマーからなる粉体を内部に収納した水溶性カプセル及びメッシュ状カプセルの少なくとも1種からなることを特徴とする。
【0018】
請求項8の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、上記擬似固形体は、高吸水性ポリマーからなる粉体を内部に分散混在した繊維体からなることを特徴とする。
【0019】
請求項9の発明は、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、上記擬似固形体は、複数個が連続して該可撓性カテーテル内に内挿されていることを特徴とする。
【0020】
請求項10の発明は、請求項1ないし9のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、高吸水性ポリマーの平均粒度が80〜900μmの粉体からなることを特徴とする。
【0021】
請求項11の発明は、請求項1ないし10のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、該可撓性カテーテルの外径が3mm〜8mm、内径が外径より0.2mm〜1.0mm以下の径からなり、該可撓性当て部材の外径は、該可撓性カテーテルの内径より0.1mm以上小径であることを特徴とする。
【0022】
請求項12の発明は、請求項1ないし11のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、該可撓性当て部材の外径が該可撓性カテーテルの内径の半分以下であることを特徴とする。
【0023】
請求項13の発明は、請求項1ないし12のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、該可撓性当て部材は合成樹脂材からなり、該可撓性当て部材の可撓性は該可撓性カテーテルの可撓性よりも低く形成されていることを特徴とする。
【0024】
請求項14の発明は、請求項1ないし13のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、該可撓性当て部材の印部が、該可撓性当て部材及び該可撓性当て部材の所定量以上の相対移動を制止するストッパを有することを特徴とする。
【0025】
請求項15の発明は、請求項1ないし14のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、該上記擬似固形体に殺菌剤、防カビ剤、防腐剤、消臭剤及び香料の少なくとも1種が含まれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
請求項1の発明によれば、高吸水性ポリマーを有する擬似固形体を可撓性カテールに装填した状態で、鼻孔又は口先から咽喉部に挿入するので、確実に擬似固形体を咽喉部まで運ぶことができる。その上で、擬似固形体の後端部に可撓性当て部材を押し当てた状態で、可撓性カテーテルを引き抜くか、可撓性当て部材を押し込むことによって、可撓性カテーテル内から擬似固形体を飛び出させるので、確実に咽喉部にて擬似固形体を露出した状態にすることができ、高吸水性ポリマーで体液を効果的に吸収でき、体液の漏出を防止できる。
【0027】
また、可撓性カテーテルと可撓性当て部材とを一緒に咽喉部まで挿入してから、可撓性カテーテルと可撓性当て部材とを相対的に移動させるだけでよいので、操作性に優れ、ベテラン看護士や不慣れな看護士であっても、確実に作業できる。
【0028】
また、シリンジなどの注入器を使わないので、可撓性カテーテルとシリンジを接続するなどの作業が不要であり、操作性に優れ、その上コンパクト化・低コスト化を図れる。
【0029】
請求項2の発明によれば、可撓性カテーテルが咽喉部に達した状態を誰でも簡単に把握できるので、看護士等の操作者の作業不安を軽減できる。また、可撓性カテーテルの挿入位置のバラツキが少なく、間違いなく擬似固形体を咽喉部に持ち込むことができる。
【0030】
請求項3の発明によれば、可撓性カテーテルから擬似固形体を露出した状態を誰でも簡単に把握できるので、看護士等の操作者の作業不安を軽減できる。また、位置のバラツキが少なく、間違いなく擬似固形体を咽喉部に位置させることができる。
【0031】
請求項4の発明によれば、鼻孔内壁を損傷することなく、可撓性カテーテルを鼻孔から咽喉部に滑らかに挿入することができると共に、可撓性カテーテルから擬似固形体を容易に露出することができる。
【0032】
請求項5の発明によれば、高吸水性ポリマーをコンパクトにでき、挿入し易い。
【0033】
請求項6、7または8の発明によれば、高吸水性ポリマーの形状維持性に優れ、可撓性当て部材で相対的に擬似固形体を押し込む際に形状崩壊することなく、相対的にスムーズに押し込める。
【0034】
請求項9の発明によれば、擬似固形体が複数個になって装填されているので、相互に位置ズレや変形でき、可撓性カテーテルが折れ曲がりながら鼻孔から咽喉部に挿入される際に可撓性カテーテルの折れ曲がりを阻害することなく、スムーズに可撓性カテーテルを挿入できる。また、咽喉部に出された際にも咽喉部の空間に分散しやすい。
【0035】
必要であれば、擬似固形体の数量を、遺体の大きさや体液量見込みによって増減することも簡単にできる。
【0036】
請求項10の発明によれば、高吸水性ポリマーが微粉末からなるので、体液を素早く吸収して膨潤でき、漏出防止機能に優れる。
【0037】
請求項11の発明によれば、可撓性カテーテルを鼻孔から咽喉部にスムーズに挿入できると共に、可撓性カテーテルと可撓性当て部材との相対移動も滑らかに行うことができる。
【0038】
請求項12の発明によれば、可撓性カテーテルと可撓性当て部材との相対移動を軽い力で滑らかに行うことができる。
【0039】
請求項13の発明によれば、可撓性当て部材も鼻孔の形状に滑らかに追従できるので、スムーズに可撓性カテーテルと一緒に咽喉部まで挿入できると共に、可撓性カテーテルと可撓性当て部材との相対移動も速やかに且つ確実に行うことができる。
【0040】
請求項14の発明によれば、ストッパを有するので、可撓性カテーテルの挿入位置のバラツキが少なく、確実に咽喉部まで可撓性カテーテルを挿入でき、作業不安を軽減できる。また、擬似固形体が確実に可撓性カテーテルから露出できるので、体液吸収性に優れる。
【0041】
請求項15の発明によれば、異臭を吸収できること、又は作業中に作業者が病原菌に感染することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0043】
(実施形態1)
図1及び図2により本発明の実施形態1を説明する。実施形態1の体液漏出防止装置10の可撓性カテーテル11は、鼻孔Aから咽喉部Bに挿入されるものであり、外径:5mm、内径:4.7mmからなる長尺の可撓性の合成樹脂製中空チューブである。可撓性当て部材14は、外径:4.5mm、内径:4mmからなる長尺の可撓性の合成樹脂製中空チューブである。可撓性当て部材14は、可撓性カテーテル11の中に挿入され、可撓性カテーテル11に対して相対的に移動可能となっている。即ち、可撓性カテーテル11の動きを止めておいて、可撓性当て部材14が可撓性カテーテル11内をスライドするように長さ方向に移動できる、または、可撓性当て部材14の動きを止めておいて、可撓性カテーテル11が可撓性当て部材14の外側でスライドするように長さ方向に移動できるようになっている。可撓性カテーテル11及び可撓性当て部材14を中空チューブにすることによって、可撓性カテーテル11及び可撓性当て部材14が共に折れ曲がり易いので、鼻孔から咽喉部に挿入する時に途中で内壁にひっかることなくスムーズに挿入でき、操作性に優れる。
【0044】
なお、可撓性カテーテル11を鼻孔から咽喉部に挿入するものでは、可撓性カテーテル11の外径は3mm〜8mm、内径は外径より0.2mm〜1.0mm以下の径からなるものが好ましい。可撓性当て部材14がこの可撓性カテーテル11内を滑らかに移動する為には、可撓性当て部材14の外径は、可撓性カテーテル11の内径より0.1mm以上小径、特に可撓性カテーテル11内径の半分以下の外径とすることが好ましい。
【0045】
可撓性当て部材14の外径が可撓性カテーテル11の内径の半分以下とする場合には、可撓性当て部材14が可撓性カテーテル11の可撓性よりも低く形成されるようにすると、擬似固形体を相対的にスムーズに押し出す上で有利である。
【0046】
可撓性カテーテル11の内部11cには、先端近くに、複数の擬似固形体20が装填されている。この擬似固形体20は、図2に示すように、高吸水性ポリマー粉体21を圧縮して直径が略4.5mmの円柱状に形成した錠剤タイプのものである。
【0047】
なお、実施形態1の錠剤タイプは擬似固形体の1例であって、本発明に含まれる擬似固形体は、これに限られるものではない。本発明の擬似固形体としては、可撓性カテーテルから出されるまでは、多数の高吸水性ポリマーを含有する団塊状態、即ち固形体として存在し、可撓性カテーテルから出された後は、速やかにできるだけ個々の高吸水性ポリマーに分散するものであり、これらのものを総称して擬似固形体と呼ぶこととした。例えば、擬似固形体の例としては、実施形態1の錠剤タイプのような錠剤タイプ、内部に高吸水性ポリマーを有する水溶性、透水性又はメッシュ状のカプセル(又は袋体)・繊維体等である。
【0048】
可撓性カテーテル11の先端部11aは先細形状に形成され、この先細部分には複数のスリット12が長さ方向に形成されている。この構造によって、可撓性カテーテル11を鼻孔Aから咽喉部Bに挿入する際に、鼻孔Aの内壁に沿って、滑らかに挿入できるようになっている。また、可撓性カテーテル11内の擬似固形体20を相対的に押し出す際には、先細になった先細部分が外側に弾性変形して広がることによって、先細部分からスムーズに軽い力で飛び出すことをできるようになっている。
【0049】
可撓性カテーテル11の先端部11aには、合成樹脂製のキャップ16を外側から外嵌しておき、使用前に擬似固形体20の高吸水性ポリマー21が吸湿して使用できなくなることを防止するようになっている。なお、合成樹脂製のキャップ16の代わりに又は追加してフイルムを可撓性カテーテル11の先端部11aに貼り付けたものでも良い。キャップ16を外嵌するのではなく、可撓性カテーテル11の先端部11a内に内嵌しても良い。
【0050】
実施形態1では、可撓性当て部材14は長尺の可撓性の合成樹脂製中空チューブとなっているが、擬似固形体20の後端部20aが型崩れして可撓性当て部材14の内部に入り込む可能性がある場合には、擬似固形体20の後端部20aに当接する可撓性当て部材14の先端部14aに、変形可能な薄膜やネット等の侵入防止部材を設けても良い。
【0051】
なお、擬似固形体20は高吸水性ポリマー粉体21を圧縮して円柱状に形成したものであるが、形状維持性を向上するために、錠剤状の擬似固形体20を水溶性のシートやネットで包んだものとしても良い。また、接着剤等を混合して形状維持性を向上して円柱状に成形しても良い。なお、形状維持性が高くすることによって、高吸水性ポリマー粉体の型崩れが遅くなり、吸水性速度の低下が気になる場合には、例えば、入浴剤などに使われているような水分を吸収して泡立つような発泡剤を混入しておき吸水すると高吸水性ポリマー粉体21が分散するようにしても良い。
【0052】
本発明で使用する高吸水性ポリマー21としては、ポリビニールアルコール、ポリビニールアクリレート、アルギン酸塩、ポリアクリル酸塩、デンプン・アクリル酸グラフト共重合体架橋物、ビニールアルコールとアクリル酸の共重合物、ポリエチレングリコール系ポリマー、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアクリル酸とマレイン酸の共重合物、ポリアルキレンオキサイド系の熱可燃性を有するノニオン型樹脂の少なくとも1種からなることが好ましい。
【0053】
本発明の高吸水性ポリマー21の粒子は微粒子過ぎると吸水性能が低下し、粒子が大きすぎると体積に対する表面積が少なく体液吸収能力が劣ることとなるので、平均粒度は80〜900μmとするのが好ましく、特に100〜400μmが好ましい。
【0054】
形状維持性を向上する上で、高吸水性ポリマーと増粘剤を混合しても良い。この増粘剤としては、カルボキシビニールポリマー、カルボキシビニールポリマー/アルカリ液、親油性スメクタイト、ベントナイト、合成ヘクトナイト、天然ヘクトナイト等が上げられる。増粘剤の重量%は、制限されるわけではないが、0〜1.0重量%である。
【0055】
実施形態1の遺体用体液漏出防止装置10の使用例を、図12に基づいて説明する。図12において、Aは鼻孔、Bは咽喉部、Cは口で、Dは気管、Eは食道、Fは頚椎、Gは咽喉部の空間を示す。
【0056】
使用時には、可撓性カテーテル11の先端近傍に擬似固形体20を複数個装填する。複数個の擬似固形体20は互いに接触していても、変形を許容する程度に少し隙間を有して装填されていても良い。そして、可撓性当て部材14の先端部14が擬似固形体20の後端部20aに接近する位置まで、或は当接する位置まで可撓性当て部材14を可撓性カテーテル11内に挿入して、可撓性カテーテル11、擬似固形体20及び可撓性当て部材14を一緒にして用意する。
【0057】
鼻孔Aから咽喉部Bに挿入する際の曲がりや変形を考えると、擬似固形体20の変形や潰れを許容するように、擬似固形体20同士が少し隙間を有し、可撓性当て部材14の先端部14とも少し隙間を有することが好ましい。
【0058】
鼻孔Aから咽喉部Bに挿入する際には、可撓性カテーテル11、擬似固形体20及び可撓性当て部材14を一緒にして咽喉部Bまで挿入する。可撓性カテーテル11を所定位置まで挿入すると、可撓性カテーテル11の外周に付与したマーク13が鼻孔Aに接近した位置になるので、この位置まで来ると可撓性カテーテル11の挿入が完了したとして、挿入を停止する。この状態を図12に示す。
【0059】
図12に示す状態から、可撓性当て部材14を長さ方向に動かないように持って、可撓性カテーテル11を軽く持って引き抜く。このとき、可撓性カテーテル11の後端部11bが可撓性当て部材14の外周に設けられた印部14bに近接する位置を目安として引き抜く。この引き抜きによって、可撓性当て部材14の先端部14aが可撓性カテーテル11の先端部11aよりも飛び出た位置になり、擬似固形体20が可撓性カテーテル11から外れて自由になり、可撓性カテーテル11内から完全に露出する。この操作によって、可撓性カテーテル11内の擬似固形体20が可撓性カテーテル11内から飛び出て、咽喉部Bの空間G内に分散する。実施形態1では、擬似固形体20が複数個になっているので、咽喉部B内の空間Gに効果的に分散すると共に個々の擬似固形体20が素早く体液を吸収して膨張することができ、体液が咽喉部Bから体外に露出することを防止できる。その後、可撓性カテーテル11及び可撓性当て部材14を鼻孔Aから引き抜く。
【0060】
なお、可撓性当て部材14に印部14bを設けずに、図12に示す状態から可撓性カテーテル11を鼻孔Aから外れるまで一気に引き抜いて、その後、可撓性当て部材14を引き抜くようにしても良い。
【0061】
上記使用例では、上述したように、擬似固形体20を可撓性カテーテル11内に装填した状態で直接可撓性カテーテル11を咽喉部B付近まで挿入するので、擬似固形体20を咽喉部B内に確実に送り込むことができ、擬似固形体20が咽喉部Bまで到達せずに途中で膨張することを防止できる。それと共に、可撓性カテーテル11を引き抜く際に、擬似固形体20の後端部が可撓性当て部材14に当接して、それ以上は戻されないので、確実に可撓性カテーテル11内の擬似固形体20を咽喉部B内の空間Gに露出させることができる。また、圧縮エアポンプやシリンジ等の空気を使って押し込むのではなく、操作者が押し込み感覚を直接手に感じながら直接咽喉部Bまで擬似固形体20を運ぶので、操作性に優れる。また、挿入時及び引き抜き時の音が比較的静かであり、操作者は周囲の人たちを気にせずに安心して操作できる。
【0062】
又、遺体用体液漏出防止装置10の別の使用例を、図13に基づいて説明する。この使用例は、実施形態1の可撓性カテーテル11及び可撓性当て部材14の変形例であり、可撓性カテーテル111及び可撓性当て部材114としたものである。可撓性当て部材114の本体は、可撓性カテーテル111の内径に対して、1/3程度の径からなる細い棒部材であって、擬似固形体20の後端部20bに当接する先端部114aを擬似固形体20の大きさに等しい大きさとしたものである。可撓性カテーテル111の外周には、マークとしてストッパ113が突出して設けられ、可撓性カテーテル111を挿入した際に目視しなくても、咽喉部Bの所定位置まで達したことが判るようになっている。
【0063】
使用時には、可撓性カテーテル111の先端近傍に擬似固形体20を複数個装填し、可撓性当て部材114の先端部114aが擬似固形体20の後端部20aに接近するまで、可撓性当て部材114を可撓性カテーテル111内に挿入して、可撓性カテーテル111、擬似固形体20及び可撓性当て部材114を一緒にして用意する。この状態のままで、可撓性カテーテル111を鼻孔Aから咽喉部Bまで挿入する。可撓性カテーテル111を所定位置まで挿入すると、ストッパ113が鼻孔Aに当接するので、この位置まで来ると可撓性カテーテル111の挿入が完了したとして、挿入を停止する。このときに、可撓性カテーテル111の先端部111aが咽喉部Bの大きな空間Gに少し入った位置になっている。
【0064】
この状態から、可撓性カテーテル111を軽く持って動かないようにして、可撓性当て部材114を奥に押し込む。この押し込みによって、擬似固形体20が可撓性カテーテル111の先端部111aから飛び出て、咽喉部B内の空間G内に分散していく。押し込み操作は、可撓性当て部材114の外周に設けられた突出部114bが、可撓性カテーテル111の後端部111bに当接するまで押し込む。このことによって、可撓性当て部材114の先端部114aが可撓性カテーテル111の先端部111aよりも出て、可撓性カテーテル111内の擬似固形体20が完全に飛び出ることができる。この状態を図13に示す。
【0065】
この図13の使用例では、擬似固形体20を装填したままで可撓性カテーテル111を鼻孔Aから直接人手で挿入し、更に可撓性当て部材114を直接人手で押し込むので、操作者が押し込み感覚を直接感じながら操作でき、操作性に優れ、確実に咽喉部Bに持ち込むことができる。また、挿入時の音が比較的静かであり、操作者は周囲の人たちを気にせずに安心して操作できる。
【0066】
なお、図12の使用例で使用した可撓性カテーテル11を咽喉部に少し入って位置まで挿入し、この状態で可撓性当て部材14を押し込み擬似固形体を咽喉部の空間に落とし込むようにしても良い。また、図13の使用例で使用した可撓性カテーテル111を咽喉部の奥まで挿入し、この状態で可撓性カテーテル111を引き抜き、擬似固形体を咽喉部の空間に落とし込むようにしても良い。
【0067】
また、図12の使用例でマーク13に代えてストッパ113とする、印部14bに代えてストッパ114bにする、或は、図13の使用例でストッパ113に代えてマーク13とする、ストッパ114bに代えて印部14bにするようにしても良い。また、一方のみ変更することも可能である。
【0068】
以下に擬似固形体の他の実施形態を説明する。
【0069】
(実施形態2)
図3は擬似固形体の別例を示す実施形態2に関わり、実施形態1の図2と同様な図を示す。実施形態2では、実施形態1と異なる点のみ説明し、共通点の説明は省略する。実施形態1の擬似固形体20は、高吸水性ポリマー粉体21を圧縮して円柱状に形成した錠剤タイプであったが、実施形態2の擬似固形体では、断面が楕円形状のカプセル30の中に高吸水性ポリマー21を充填したものである。カプセル30は水溶性のペーパーや合成樹脂材からなり、体液を吸収することによって、溶けるようになっている。また、カプセル30は、この実施形態2に示すような袋形状に限られるものではなく、メッシュ形状であっても良く、多数の孔を開口したものであっても良く、この場合には水溶性でなくても良い。カプセル30は伸縮性のあるメッシュでも良い。カプセル30の材質は、合成樹脂、ラバー、紙材等が考えられる。カプセルは、相対的に押し込む際に破損しない強度を備えることを必要とし、鼻孔から咽喉部に挿入する際の曲がりや変形に追従できる弾力性を備えることが好適である。
なお、この実施形態2でも、水分を吸収して泡立つような発泡剤を混入しても良い。
【0070】
(実施形態3)
図4は実施形態3に関わり、実施形態1の図2と同様な図を示す。実施形態3では、実施形態1と異なる点のみ説明し、共通点の説明は省略する。実施形態3の擬似固形体では、多数の繊維を束ねて円柱状に形成した繊維体40の隙間に高吸水性ポリマー21を充填したものである。
【0071】
この実施形態3では、繊維体40で形状を維持できるので、繊維体40をスムーズに可撓性カテーテル11から露出できると共に、繊維間に存在する高吸水性ポリマー21が体液を吸収して膨張するので、体液漏出を効果的に防止できる。
【0072】
なお、繊維体40としては、水膨潤性繊維を使用することもできる。水膨潤性繊維としては、アクリル繊維で形成された芯材である内層及び該内層を囲撓するように形成され、外層が内層よりも高い吸水性と高い膨潤性とを有する水膨潤性繊維等が使用できる。
【0073】
(実施形態4)
実施形態4について、図5及び図6に基づいて説明する。この実施形態4は、実施形態2のカプセル30の変形例である。実施形態4のカプセル300は、前側に4つに分割去れた片部301を備える。実施形態4のカプセル300の各片部301は、図5の2点鎖線で示すように自由状態ではラッパ状に拡開するように成形されており、押さえると図5の実線で示すようにカプセル300を閉じた状態に合わさるようになっている。閉じた状態では、図6に示すように、各片部301の隣接部分に形成された段部302が合わさって、位置ズレを防止している。
【0074】
可撓性カテーテル11に装填するときは、カプセル内300内に高吸水性ポリマー21を充填して、4つの片部301を閉じた状態として、可撓性カテーテル内に挿入する。そして、可撓性当て部材14を可撓性カテーテル内11内に挿入して可撓性カテーテルに当接した状態として、図8又は図9のように咽喉部Bまで挿入する。そして、可撓性カテーテル11を引き抜くか可撓性当て部材14を押し込むことによって、カプセル300の4つの片部301を閉じた状態に規制するものが無くなり、カプセル300の片部301がラッパ状に開き、咽喉部Bに持ち込まれることになる。これによって、カプセル300内部の高吸水性ポリマー21が咽喉部B内に分散して出て行く。
【0075】
なお、片部301は自由状態でラッパ状に開く状態で形成され、各片部301を押し合わせて可撓性カテーテル11内に装填しているが、開く力が不足する場合には、バネ等の補助開放部材をカプセル300内に入れるようにしても良い。
【0076】
(実施形態5)
実施形態5について、図7に基づいて説明する。この実施形態5は、実施形態2に対して、可撓性カテーテル111の先端部111a即ちカプセル30の前側に、多数の高吸水性ポリマー21の粉体を擬似固形体30に入れないで、粉体のままで充填しておき、先側をフイルム15でシールしたものである。この実施形態5では、カプセル30内の高吸水性ポリマー21がカプセル30から出て体液を吸収する前に、粉体のままの高吸水性ポリマー21が咽喉部B内に素早く分散するので、咽喉部Bに存在する体液を即座に吸収し、体液が体外に溢れ出ることをより確実に防止できる。特に、体液が多い遺体や、体内圧力が高く勢い良く体液が吹き出る可能性の高い遺体に対しては、この実施形態5のように、粉体のままの高吸水性ポリマー21の適切量を可撓性カテーテル111の先端部111aに入れておくことが有効である。フイルム15のシールのみで不足であれば、実施形態1のようにキャップ16をも設けても良い。高吸水性ポリマー21を粉体のままで擬似固形体の前側に充填しておく構成は、実施形態2のカプセル30に限られるものではなく、他の実施形態の擬似固形体に対しても適用可能である。
【0077】
(実施形態6)
実施形態6について、図8及び図9に基づいて説明する。実施形態6の擬似固形体50は、実施形態1の可撓性カテーテル11と同様な材質からなり、その外径が可撓性カテーテル11の内径と略同じである可撓性合成樹脂のリング部材51を備え、リング部材51の内側に高吸水性ポリマー21を充填し、リング部材51の前面及び後面をフイルム52、52等で覆ったものである。
【0078】
可撓性当て部材54はリング部材51とほぼ同じ外径か僅かに小さい外径の中空チューブからなり、可撓性当て部材54の先端部54aが、リング部材51の後端部に当接するようになっている。
【0079】
リング部材51が、可撓性カテーテル11の曲がり等の変形に追従して曲がることが可能であるので、リング部材51内の高吸水性ポリマー21は、リング部材51の変形を許容する程度の密度に充填しておき、フイルム52もリング部材51の変形を許容するような伸縮性を有する合成樹脂、合成繊維、天然繊維等であり、リング部材51に接合しておく。
【0080】
この実施形態6では、体液漏出防止装置10を鼻孔から咽喉部に挿入する時に、鼻孔の曲り構造などのために可撓性カテーテル11が折れ曲って挿入され、上記リング部材51も追従して曲がることができるので、咽喉部Bまで滑らかに挿入できる。また、相対的に可撓性当て部材54を移動させる際には、可撓性当て部材54の先端部54aがリング部材51の後端部Bに当接しているので、確実に擬似固形体50を咽喉部に押し込むことができる。
【0081】
実施形態7について、図10及び図11に基づいて説明する。実施形態7の擬似固形体60は、球状のカプセル61の中に高吸水性ポリマー21を充填したものである。このカプセル61の直径が可撓性カテーテル111の内径に対して小さくなっており、可撓性カテーテル111を鼻孔Aから咽喉部Bに挿入する際の曲がり等の変形に追従し易くなっている。カプセル61の直径は、可撓性カテーテル111の内径に対して3/4〜1/4程度とすることが好ましい。カプセル61は水溶性或いは透水性のペーパー、合成樹脂等からなるか、メッシュ状のペーパー、合成樹脂等が使用可能である。カプセル61の形状は、球体に限らず断面楕円形状、多角体形状でも構わない。
【0082】
この実施形態7の擬似固形体60の使用例としては、図12の使用例でも図13の使用例でも適用可能である。なお、図12に示すように、可撓性カテーテル111を咽喉部Bの奥まで挿入しておき、可撓性カテーテル111を引き抜くようにすると、擬似固形体60を後から押し込むよりも可撓性カテーテル111から飛び出ることが容易であり、好都合である。
【0083】
実施形態8について、図14に基づいて説明する。この実施形態8では、図13で使用した可撓性カテーテル111及び可撓性当て部材114の形状を変更したものである。即ち、実施形態8の可撓性カテーテル211は、中間部外周に突出してストッパ213を備え、このストッパ213に連続して、可撓性カテーテル211の後端部211b付近までの領域(操作者が手に持つ領域)の肉厚を厚くして肉厚部224を形成した。可撓性当て部材214は、中実の細い棒部材(可撓性カテーテル111の内径の1/3の外径)とし、先端部に可撓性カテーテル211の内径に略等しい外径の当て部を設けたものである。
【0084】
可撓性カテーテル211に肉厚部224を設けて可撓性カテーテル211を握る部分の剛性を高くすることによって、可撓性カテーテル211に対して可撓性当て部材214を相対的に移動させた場合に、可撓性カテーテル211を強く持ち過ぎて可撓性当て部材214をスムーズに移動できなくなることを未然に防止するようにしている。また、操作者がこの肉厚部224を安心して持てるので、操作者の不安をなくすことができる。
【0085】
なお、肉厚部224は全周を肉厚にしているが、全周でなく、部分的にリブのように設けても良い。また、肉厚部224に代えて、高剛性樹脂製の円筒部材や金属製円筒部材を外嵌めしても良い。
【0086】
なお、図12のマーク13をストッパ113、印部14bをストッパ114bに変更しても良く、図13のストッパ113をマーク13、ストッパ114bを印部14bに変更しても良い。また、片方のみ変更しても良い。また、図12,13においても、可撓性カテーテル11の握る部分に図14に示すような高剛性部分を設けても良い。
【0087】
また、図12及び図13の使用状態は、実施形態1〜6のどの実施形態のものでも使用可能なものであり、どちらか都合のよいほうを任意に選定すればよい。
【0088】
該体液漏出防止材10には、二酸化安定塩素、消臭剤、殺菌剤、防カビ剤、防腐剤、香料等を添加しても良い。
【0089】
殺菌剤としては、グルコン酸クロルヘキシジン、イソプロピルメチルフェノール、チモール、0−フェニルフェノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、ヒノキチオール、塩化リゾチーム、ε―ポリリシン、グレープフルーツ種子抽出物、トリクロサン、カラシ抽出物「ワサオーロ」(商品名)等が挙げられる。
防カビ防腐剤としては、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸イソブチル、プロピオン酸ナトリウム、チアベンダゾール、イソチアゾロン等が挙げられる。
消臭剤としては、モウソウチク抽出物、緑茶抽出エキス、長鎖ベタイン化合物、柿抽出液の総称型タンニンを主成分とした消臭剤、数種の植物エキスを混合した植物系特殊消臭剤等が挙げられる。
【0090】
香料としては、フルーティー調、フローラル調、シトラル調、ウッディー調、フレッシュノート調、ミックスフレーバー調、グリーン調、ミント調等が挙げられる。
殺菌剤、防カビ防腐剤、消臭剤及び香料の含有量は、各効果を維持し、安全性及び良好な経済性を得る観点から、体液漏出防止剤のゼリー中に殺菌剤、防カビ防腐剤は0.001〜10重量%が好ましく、特に0.003〜5重量%が好ましく、消臭剤は0.05〜15重量%、特に0.1〜5重量%が好ましく、香料は0.001〜7重量%、特に0.01〜3重量%が好ましい。また、その他、色素を添加含有することも可能であり、配合、選択などは特に限定されるものではなく任意に設定でき、なんら制限されない。
【0091】
上記実施形態では、可撓性カテーテル11、111、211を鼻孔Aから咽喉部Bに挿入するもので説明したが、鼻孔Aからでなくて、口Cの口先から口内を通して咽喉部Bに可撓性カテーテルを挿入するようにするものにも、本発明は適用可能である。
【0092】
擬似固形体の数量は、上記実施形態で示した数に限られるものではなく、標準的な遺体の体液に対応した任意の数にすればよい。また、擬似固形体の数量は、初期には上記標準的な数量にしておき、遺体によっては体液が多量にある可能性が高いことが解かる場合には、余分に擬似固形体を付け足してから、可撓性カテーテルを咽喉部に挿入するようにすることも可能である。
【0093】
擬似固形体の形状は、円柱状や断面楕円形のものに限られるものではなく、球体でも良い。また、擬似固形体の大きさは、形状維持性が保てれば、小さい方が好ましいが、押し込み難くなるので、適切な大きさとする。
【0094】
可撓性カテーテル11、111、211の挿入抵抗を軽減するために、挿入前に可撓性カテーテル11、111、211の外周にグリセリン等の潤滑剤を塗布しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0095】
以上説明したように、本発明に係る遺体用咽喉部封止装置は、体液が咽喉部から口内や体外に漏れ出るのを防止するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の実施形態1に係わる遺体用体液漏出防止装置の断面図を示す。
【図2】実施形態1の擬似固形体を示す。
【図3】実施形態2の擬似固形体を示す。
【図4】実施形態3の擬似固形体を示す。
【図5】実施形態4の擬似固形体を示す。
【図6】図5のA−A断面図を示す。
【図7】実施形態5に関わる遺体用体液漏出防止装置の部分断面図を示す。
【図8】実施形態6に関わる遺体用体液漏出防止装置の部分断面図を示す。
【図9】実施形態6の擬似固形体を示す。
【図10】実施形態7に関わる遺体用体液漏出防止装置の部分断面図を示す。
【図11】実施形態7の擬似固形体を示す。
【図12】遺体用体液漏出防止装置の使用例を説明する図である。
【図13】遺体用体液漏出防止装置の別の使用例を説明する図である。
【図14】実施形態8に関わる可撓性カテーテル及び可撓性当て部材の部分断面図を示す。
【符号の説明】
【0097】
10 体液漏出防止装置
20 擬似固形体
21 体液漏出防止剤(高吸水性ポリマー)
11 可撓性カテーテル
12 スリット
13 マーク
14 可撓性当て部材
15 フイルム
16 キャップ
20 擬似固形体
30 擬似固形体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺体の咽喉部に体液漏出防止剤を送り込んで咽喉部から体液が漏出することを防止するための遺体用体液漏出防止装置において、
鼻孔又は口から咽喉部に挿入される合成樹脂製の可撓性カテーテルを有し、
該可撓性カテーテルの内部には、高吸水性ポリマー粉体からなる体液漏出防止剤を有する擬似固形体が内挿され、
先端部が該擬似固形体の後端部に当接又は接近して挿入され、後端部が該可撓性カテーテルの後端部から飛び出て配設され、該可撓性カテーテル内を相対的に移動可能で、該可撓性カテーテルの先端部から擬似固形体を露出させて咽喉部に落とし込む可撓性当て部材を備え、
該擬似固形体及び該可撓性当て部材を内挿した該可撓性カテーテルが遺体の鼻孔又は口から咽喉部に挿入されて、該可撓性カテーテル内の該擬似固形体が該可撓性カテーテルから出されて、該擬似固形体中の該高吸水性ポリマー粉体が咽喉部の体液を吸収して膨張することを特徴とする遺体用体液漏出防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載の遺体用体液漏出防止装置において、
該可撓性カテーテルの中間部に、該先端部が咽喉部に達する長さに対応する部分を示すマークが設けられていることを特徴とする遺体用体液漏出防止装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の遺体用体液漏出防止装置において、
該可撓性カテーテルと該可撓性当て部材との相対移動によって、該可撓性当て部材の先端部が該可撓性カテーテルの該先端部より飛び出る位置を示す印部が、該可撓性当て部材に設けられていることを特徴とする遺体用体液漏出防止装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、
該可撓性カテーテルの該先端部は先細に形成され、該先細部に形成された部分には長さ方向に複数のスリットが形成されていることを特徴とする遺体用体液漏出防止装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、
上記擬似固形体は、高吸水性ポリマーからなる粉体を錠剤状に押し固めたものからなることを特徴とする遺体用体液漏出防止装置。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、
上記擬似固形体は、高吸水性ポリマーからなる粉体を接着剤で接着して擬似固形状に形成してなることを特徴とする遺体用体液漏出防止装置。
【請求項7】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、
上記擬似固形体は、高吸水性ポリマーからなる粉体を内部に収納した水溶性カプセル及びメッシュ状カプセルの少なくとも1種からなることを特徴とする遺体用体液漏出防止装置。
【請求項8】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、
上記擬似固形体は、高吸水性ポリマーからなる粉体を内部に分散混在した繊維体からなることを特徴とする遺体用体液漏出防止装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、
上記擬似固形体は、複数個が連続して該可撓性カテーテル内に内挿されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の遺体用体液漏出防止装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、
高吸水性ポリマーの平均粒度が80〜900μmの粉体からなることを特徴とする遺体用体液漏出防止装置。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、
該可撓性カテーテルの外径が3mm〜8mm、内径が外径より0.2mm〜1.0mm以下の径からなり、該可撓性当て部材の外径は、該可撓性カテーテルの内径より0.1mm以上小径であることを特徴とする遺体用体液漏出防止装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、
該可撓性当て部材の外径が該可撓性カテーテルの内径の半分以下であることを特徴とする遺体用体液漏出防止装置。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、
該可撓性当て部材は合成樹脂材からなり、該可撓性当て部材の可撓性は該可撓性カテーテルの可撓性よりも低く形成されていることを特徴とする遺体用体液漏出防止装置。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、
該可撓性カテーテルの該マークが、該該可撓性カテーテルの挿入量を停止するストッパを有することを特徴とする遺体用体液漏出防止装置。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、
該上記擬似固形体に殺菌剤、防カビ剤、防腐剤、消臭剤及び香料の少なくとも1種が含まれることを特徴とする遺体用体液漏出防止装置。
【請求項1】
遺体の咽喉部に体液漏出防止剤を送り込んで咽喉部から体液が漏出することを防止するための遺体用体液漏出防止装置において、
鼻孔又は口から咽喉部に挿入される合成樹脂製の可撓性カテーテルを有し、
該可撓性カテーテルの内部には、高吸水性ポリマー粉体からなる体液漏出防止剤を有する擬似固形体が内挿され、
先端部が該擬似固形体の後端部に当接又は接近して挿入され、後端部が該可撓性カテーテルの後端部から飛び出て配設され、該可撓性カテーテル内を相対的に移動可能で、該可撓性カテーテルの先端部から擬似固形体を露出させて咽喉部に落とし込む可撓性当て部材を備え、
該擬似固形体及び該可撓性当て部材を内挿した該可撓性カテーテルが遺体の鼻孔又は口から咽喉部に挿入されて、該可撓性カテーテル内の該擬似固形体が該可撓性カテーテルから出されて、該擬似固形体中の該高吸水性ポリマー粉体が咽喉部の体液を吸収して膨張することを特徴とする遺体用体液漏出防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載の遺体用体液漏出防止装置において、
該可撓性カテーテルの中間部に、該先端部が咽喉部に達する長さに対応する部分を示すマークが設けられていることを特徴とする遺体用体液漏出防止装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の遺体用体液漏出防止装置において、
該可撓性カテーテルと該可撓性当て部材との相対移動によって、該可撓性当て部材の先端部が該可撓性カテーテルの該先端部より飛び出る位置を示す印部が、該可撓性当て部材に設けられていることを特徴とする遺体用体液漏出防止装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、
該可撓性カテーテルの該先端部は先細に形成され、該先細部に形成された部分には長さ方向に複数のスリットが形成されていることを特徴とする遺体用体液漏出防止装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、
上記擬似固形体は、高吸水性ポリマーからなる粉体を錠剤状に押し固めたものからなることを特徴とする遺体用体液漏出防止装置。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、
上記擬似固形体は、高吸水性ポリマーからなる粉体を接着剤で接着して擬似固形状に形成してなることを特徴とする遺体用体液漏出防止装置。
【請求項7】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、
上記擬似固形体は、高吸水性ポリマーからなる粉体を内部に収納した水溶性カプセル及びメッシュ状カプセルの少なくとも1種からなることを特徴とする遺体用体液漏出防止装置。
【請求項8】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、
上記擬似固形体は、高吸水性ポリマーからなる粉体を内部に分散混在した繊維体からなることを特徴とする遺体用体液漏出防止装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、
上記擬似固形体は、複数個が連続して該可撓性カテーテル内に内挿されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の遺体用体液漏出防止装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、
高吸水性ポリマーの平均粒度が80〜900μmの粉体からなることを特徴とする遺体用体液漏出防止装置。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、
該可撓性カテーテルの外径が3mm〜8mm、内径が外径より0.2mm〜1.0mm以下の径からなり、該可撓性当て部材の外径は、該可撓性カテーテルの内径より0.1mm以上小径であることを特徴とする遺体用体液漏出防止装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、
該可撓性当て部材の外径が該可撓性カテーテルの内径の半分以下であることを特徴とする遺体用体液漏出防止装置。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、
該可撓性当て部材は合成樹脂材からなり、該可撓性当て部材の可撓性は該可撓性カテーテルの可撓性よりも低く形成されていることを特徴とする遺体用体液漏出防止装置。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、
該可撓性カテーテルの該マークが、該該可撓性カテーテルの挿入量を停止するストッパを有することを特徴とする遺体用体液漏出防止装置。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれか1つに記載の遺体用体液漏出防止装置において、
該上記擬似固形体に殺菌剤、防カビ剤、防腐剤、消臭剤及び香料の少なくとも1種が含まれることを特徴とする遺体用体液漏出防止装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−222558(P2007−222558A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−50277(P2006−50277)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(500329906)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(500329906)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]