説明

避難所情報提供システム

【課題】津波災害発生時に、津波の高さに対して安全な海抜の避難所の情報を提供する。
【解決手段】災害発生時に携帯電話端末を所有する利用者に対して避難所情報を提供するシステムであって携帯電話端末情報収集サーバは、携帯電話プロバイダから取得した情報に基づいた各携帯電話端末の位置情報を記憶し、特定の携帯電話端末の位置情報を抽出し提供する手段を備え、避難所情報提供サーバは、各避難所について海抜及びエリアの情報を含む避難所登録情報を予め記憶し、津波の高さを含む災害情報を取得し、携帯電話端末情報収集サーバから取得した特定の携帯電話端末の位置情報を位置情報を利用者位置情報として用いて決定したエリアに存在しかつ津波の高さに対して所定の十分な高低差のある海抜に位置する避難所を決定し、避難所の情報を特定の携帯電話端末に対して提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害発生時、特に津波発生時において、避難の必要な対象者に対し、津波の高さに応じて最も安全な避難所の情報を提供するシステムに関し、特に、津波の高さと避難所の海抜との高低差に基づいて最適な避難所へ誘導することができる避難所情報提供システムに関する。
【背景技術】
【0002】
大規模な地震が発生した際には、地震により津波が発生する場合もあり、特に沿岸地域では地震以上の大きな被害をもたらす可能性がある。先の2011年3月11日に発生した東日本震災においても、最大震度7を記録した本震以上に、地震によって引き起こされた津波によって、より大きな被害が発生した。
【0003】
地震発生時には気象庁より、地震によって引き起こされる津波の想定される規模によって津波注意報・津波警報・大津波警報が発令され、沿岸地域の住民はそれらの情報を元に、必要に応じて高台などの安全な場所へ避難をする。
【0004】
津波の発生規模等を予測する技術は現在でも様々研究されており、例えば特許文献1では、沖合海面に設置された計測器より計測された観測データから波の周波数成分を抽出し、この周波数成分から津波の発生や大きさ・到達時間などを算出し、避難対象地域の自治体などに提供することで、住民に迅速に津波情報を提供することを可能としている。
【0005】
また、災害発生時に避難住民に対して安全な避難経路へ誘導する技術も研究されており、例えば特許文献2では、避難を要する対象者の所在地を自動的に把握し、その位置情報と災害情報データベース、地図情報データベースを検索して、所在地近くの避難所への経路を通知し、避難誘導することを特徴としている。
【0006】
災害発生時に地域住民が安全に避難するための適切な情報を提供することで、被害の規模を最小限に抑えることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−18291号公報
【特許文献2】特開2005−17027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方で、現在提供されている津波に関する避難情報には、想定される津波の高さに関する情報はあるが、具体的にどこまで避難すればよいかの情報は含まれていない。一般的に高台に避難することになっており、地域ごとに指定の避難区域などの定義はされているが、実際に海抜からの高低差を明確にした避難地図は存在せず、発生した津波に対してどこまで逃げればよいかは避難住民の判断次第となっている。
【0009】
現在の避難所の基準は地震の際、前後左右や上部より瓦礫等が崩れて来ないような拓けた場所、より多くの人間が集合できるような広い場所、地理的に分かりやすい場所、主要な地図に必ず掲載され、近所の人なら名前を言っただけでわかる場所、集団での行事が行われトイレや水道などが多数設置されている場所、等であり、その基準に照らし合わせると公園・学校・公共施設などが選ばれる。
【0010】
上記の基準から例えば東京の大井競馬場は近隣地区の広域避難所として指定されているが、海抜が2mで海岸からの距離も近く、関東で大規模な地震が発生した際に想定される津波被害の状況を考慮すると確実に安全である保証は無く、実際の避難所としては適当ではないと思われる。このように、避難先の高低差を意識した避難経路を提供しないと、避難をしたにも関わらず津波の被害に巻き込まれてしまう可能性が出てきてしまう。
【0011】
そこで、本発明は、このような実情に鑑みて、災害発生時に、海抜情報を加味した避難経路マップを用い、想定される津波の高さに対して十分な高低差を持った避難経路を提示することが可能な避難所情報提供システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記解決課題に鑑みて鋭意研究の結果、本発明者は、避難所の海抜情報については事前に収集・登録することが可能なことから、災害発生時にこの海抜情報を参照し、発生した津波の高さと比較して、安全と見なされる避難所情報を提供することができることに想到した。
【0013】
すなわち、本発明は、災害発生時に、携帯電話端末を所有する利用者に対して避難すべき避難所を知らせる避難所情報を提供するために、互いに接続された携帯電話端末情報収集サーバと避難所情報提供サーバとを有するシステムであって、前記携帯電話端末情報収集サーバは、携帯電話プロバイダから取得した情報に基づいて前記携帯電話端末の位置情報を決定して前記避難所情報提供サーバに提供する手段を備え、前記避難所情報提供サーバは、各避難所について海抜及びエリアの情報を含む避難所登録情報を予め記憶部に記憶する手段と、災害発生時に津波の高さを含む災害情報を取得する手段と、災害発生時に前記携帯電話端末情報収集サーバから特定の前記携帯電話端末の位置情報を取得する手段と、取得した特定の前記携帯電話端末の位置情報を利用者位置情報として用いて該当するエリアを決定し、決定した前記エリアに存在しかつ前記津波の高さに対して所定の十分な高低差のある海抜に位置する避難所を前記避難所登録情報に基づいて決定し、決定した前記避難所を知らせる避難所情報を特定の前記携帯電話端末に対して配信する手段と、を備えたことを特徴とする避難所情報提供システムを提供するものである。
【0014】
本発明の避難所情報提供システムにおいて、前記携帯電話端末情報収集サーバは、さらに、前記携帯電話プロバイダから前記携帯電話端末と通信基地局との間の通信記録と、前記通信基地局の位置に関するマッピング情報とを取得し、前記通信記録と前記マッピング情報とを関連づけて前記携帯電話端末の位置情報を決定することを特徴とする。
【0015】
本発明の避難所情報提供システムにおいて、災害関連情報サーバをさらに有し、前記避難所情報提供サーバは、さらに、前記災害関連情報サーバから前記災害情報を取得することを特徴とする。
【0016】
本発明の避難所情報提供システムにおいて、前記避難所情報提供サーバは、さらに、前記利用者の体力を分類する利用者区分の情報を含む利用登録情報を記憶部に記憶する手段を備えるとともに、前記避難所登録情報としてさらに避難所までの到達難度の情報を含み、前記利用者区分及び前記到達難度にも基づいて前記避難所を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上、説明したように、本発明の避難所情報提供システムによれば、災害発生時、携帯電話プロバイダからの情報に基づいた携帯電話端末の位置情報により、利用者がどの位置に存在するのかをほぼリアルタイムに知ることができる。また、災害時の津波の高さの情報と、予め登録してある避難所の海抜との高低差に基づいて、発生している津波に対して安全であることが見込まれる避難所を決定し、決定した避難所を知らせる避難所情報を利用者に提供することができる。
【0018】
これにより、津波発生時に自分がどこまで避難すれば安全なのかを利用者は把握することができ、落ち着いた対処をすることができる。本発明の避難所情報提供システムから避難所情報の提供を受けることができるため、例えば外出先などにおいても、事前に調べることなく避難所の存在地を把握することができる。
【0019】
また、携帯電話端末がどの通信基地局といつ通信を行ったかという通信記録の情報と、その通信基地局の位置に関するマッピング情報とから、携帯電話端末の位置情報すなわち利用者位置情報を割り出すことが可能となる。
【0020】
利用者の体力を分類する利用者区分と、避難所の到達難度とを事前に登録しておくことにより、利用者の体力に合わせた到達難度をもつ避難所の情報を提供することができ、無理の無い避難行動を取ることができる。
【0021】
また、本発明の避難所情報提供システムを運用する地方自治体等にとっては、避難所の到達難度を事前に登録しておくことにより、体力のある若者はより高所にあるが到達が困難な避難所へ、体力のないお年寄りや幼児は低所ではあるが避難しやすい避難所へと誘導することができ、例えば人工透析の設備などはお年寄りが訪れやすい避難所へ優先して配布するなど、災害時の効率的な避難計画の立案に役立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の一実施形態にかかる避難所情報提供システムについて、その全体構成を示す概略図である。
【図2】図2は、図1に示す携帯電話端末情報収集サーバの内部構成を概略的に示す機能ブロック図である。
【図3】図3は、図2に示す携帯電話端末情報収集サーバの携帯電話端末情報記憶部に記憶されるデータ構造を例示する概略図である。
【図4】図4は、図2に示す携帯電話端末情報収集サーバのマッピング情報記憶部に記憶されるデータ構造を例示する概略図である。
【図5】図5は、図1に示す避難所情報提供サーバの内部構成を概略的に示す機能ブロック図である。
【図6】図6は、図5に示す避難所情報提供サーバの利用登録情報記憶部に記憶されるデータ構造を例示する概略図である。
【図7】図7は、図5に示す避難所情報提供サーバの災害情報記憶部に記憶されるデータ構造を例示する概略図である。
【図8】図8は、図5に示す避難所情報提供サーバの避難所登録情報記憶部570に記憶されるデータ構造を例示する概略図である。
【図9】図9は、避難所情報提供サーバが携帯電話端末情報提供サーバに対して利用者の位置情報を要求する際に送受信される要求データおよび応答データの内容を示す図である。
【図10】図10は、本発明の避難所情報提供システムの平常時における動作を示すシーケンス図である。
【図11】図11は、本発明の避難所情報提供システムの災害発生時における動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の避難所情報提供システムを実施するための形態を詳細に説明する。
図1〜図11は、本発明の一実施形態を例示する図であり、これらの図において、同一の符号を付した部分は同一要素を表わし、基本的な構成及び動作は同様であるものとする。また、各図の説明において他の図の符号を参照する場合がある。
【0024】
[1]避難所情報提供システムの全体構成
図1は、本発明の一実施形態にかかる避難所情報提供システムについて、その全体構成を示す概略図である。
図1において、本実施形態の避難所情報提供システムは、避難所情報提供サーバ110と、携帯電話端末情報収集サーバ120と、災害関連情報サーバ130と、携帯電話プロバイダ会社141,142,…と、携帯電話プロバイダ会社が各地に所有する通信基地局151,152,153,…と、利用者が所有し、避難所情報提供サーバにアクセスするための携帯電話端末160とを含んでいる。各サーバは、各コンピュータが本システムに関連するそれぞれの機能を実現するプログラムをメモリに読み込みCPUが実行することにより実施される。
【0025】
利用者が所有する携帯電話端末160は、いずれかの通信基地局151,152,153,…の通信可能圏内にいるときには、その通信基地局との間で、自端末の位置を知らせるための通信を定常的に行っている。この通信は、通信基地局が通信記録として記録する。
【0026】
ここで、携帯電話端末と通信基地局との「通信記録」とは、携帯電話端末が自端末の位置を知らせ、通信経路を確認するために、通信基地局に対して定常的に送受信している制御用電波の記録のことを言うものとする。
【0027】
各携帯電話プロバイダ会社141,142,…は、自社内のサーバ装置などにおいて、各通信基地局から受信した携帯電話端末160との通信記録を一定期間保存している。通常は、一定期間を経過した通信記録は新しいものと置き換えられるようになっている。尚、各携帯電話プロバイダ会社141,142,…は、通信記録として、少なくとも、携帯電話端末160の識別情報、通信を行った通信基地局151,…の識別情報、並びに通信時刻を保存するものとする。この通信記録により、特定の携帯電話端末160が特定の時刻に特定の通信基地局151,…と通信を行ったことが分かるので、当該携帯電話端末160のその時刻における位置情報が分かることとなる。
【0028】
また、各携帯電話端末160が通信した通信基地局151,…及びアンテナの位置から、当該携帯電話端末160の位置を算出しており、上記通信記録とともに保存している場合もある。
【0029】
携帯電話端末情報収集サーバ120は、各携帯電話プロバイダ会社141,142,…から、その時点で保存されている通信記録を定常的に取得している。あるいは、その時点で保存されている通信記録のうち最新のものだけを取得するようにしてもよい。携帯電話端末情報収集サーバ120も、平常時においては、一定期間を経過した通信記録を新しいものと置き換えている。
【0030】
携帯電話端末情報収集サーバ120は、この取得した通信記録を集計し、各携帯電話端末160の位置情報として一定期間保存する。あるいは、各携帯電話プロバイダ会社141,142,…が各携帯電話端末160の位置を所定の手段により算出して保存している場合には、これを通信記録とともに取得し、各携帯電話端末の位置情報として一定期間保存するようにしてもよい。
【0031】
避難所情報提供サーバ110は、災害発生時には必要に応じて、携帯電話端末情報収集サーバ120から、本システムに登録されている該当の各携帯電話端末の位置情報を得ることができる。
【0032】
尚、携帯電話プロバイダ会社141,142,…、及び通信基地局151,152,153,…は、上記した機能のほか、携帯電話端末に対して電話通話やメール送受信などのサービスを提供する通常の機能も、当然、有しているものである。
【0033】
また、上記において、利用者が所有し、避難所情報提供サーバにアクセスするための携帯電話端末160は、既存の日本独自の通信方式の携帯電話端末いわゆる「ガラパゴス携帯」端末に限らず、スマートフォン携帯電話端末も含んでいるものとする。
【0034】
[2]携帯電話端末情報収集サーバの構成
図2は、携帯電話端末情報収集サーバ120の内部構成を概略的に示す機能ブロック図である。
図2において、携帯電話端末情報収集サーバ120は、各携帯電話プロバイダ会社141,142,…から取得した携帯電話端末の通信記録を集信処理する集信処理部230と、その集信した通信記録を記憶する携帯電話端末情報記憶部210と、各通信基地局151,152,153,…ごとに基地局の位置情報を記憶したマッピング情報記憶部220と、携帯電話端末情報記憶部210及びマッピング情報記憶部220に記憶された情報を所定の条件で抽出する抽出処理部240と、を含んでいる。
【0035】
図3は、携帯電話端末情報収集サーバ120の携帯電話端末情報記憶部210に記憶されるデータ構造を例示する概略図である。図3において、携帯電話端末情報記憶部210は、集信データ310及び集計データ320を記憶している。
【0036】
集信データ310は、携帯電話端末情報収集サーバ120の集信処理部230により集信処理をされた携帯電話端末の通信記録を、集信IDを付して記憶したものである。集信データ310の各レコードは、集信ID311、受信日時312、携帯電話プロバイダ会社313及び通信記録のファイル実体314から構成されている。
【0037】
通信記録のファイル実体314は、その取得元である各携帯電話プロバイダ会社141,142,…ごとにフォーマットが異なっていたとしても、少なくとも、以下に説明する集計データ320に含まれる各データ項目が実質的に含まれているものとする。図3に示す例では、ファイル実体314はテキストファイルとなっているが、携帯電話端末情報収集サーバ120の集信処理部230が各携帯電話プロバイダ会社141,142,…ごとに異なるフォーマットの通信記録をテキストファイルに変換してから、携帯電話端末情報記憶部210に記憶させるようにするのが好ましい。
【0038】
尚、携帯電話端末情報収集サーバ120は、各携帯電話プロバイダ会社141,142,…から通信記録を定常的に取得しているので、平常時は、集信データ310は随時新たな通信記録により更新されているものとする。
【0039】
集計データ320は、集信データ310の各レコードに含まれる通信記録のファイル実体314から、携帯電話端末と通信基地局との通信記録を取り出して集計処理したデータである。図3に示す例では、集計データ320の各レコードは、各通信の記録日時321、通信基地局の識別情報である基地局ID322、携帯電話端末の識別情報である携帯電話端末ID323及び携帯電話端末の携帯電話番号324から構成されているが、これら以外にも例えば、データ取得元の通信記録のファイル実体314に関する情報や、各携帯電話プロバイダ会社141,142,…により提供される携帯電話端末の位置などを含んでいてもよい。また、集計データ320は、各レコードを任意のデータ項目でソートした状態で利用することができるものとする。
【0040】
この集計データ320により、例えば、図3に示す例では、2011/06/30 10:15の時刻に、通信基地局A001において電話番号09011111111の携帯電話端末との通信が行われたことが確認される。すなわち、通信基地局が特定されれば当該時刻における当該携帯電話端末の位置情報が得られることとなる。
【0041】
尚、通信基地局の位置情報に関しては、基地局IDを参照キーとして、後述するマッピング情報記憶部220の基地局位置情報410及び基地局エリア情報420から取得することができる。
【0042】
図4は、携帯電話端末情報収集サーバ120のマッピング情報記憶部220に記憶されるデータ構造を例示する概略図である。図4において、マッピング情報記憶部220は、基地局位置情報410及び基地局エリア情報420を記憶している。
【0043】
基地局位置情報410は、各携帯電話プロバイダ会社141,142,…の各通信基地局の位置に関する情報として、基地局ID411、その所在地412及び郵便番号413を含んでいる。また、これら以外にも通信基地局の位置を示す情報、例えば、経度緯度情報などを含んでいてもよい。
【0044】
基地局エリア情報420は、各携帯電話プロバイダ会社141,142,…の各通信基地局に設定されたエリア情報として、基地局ID421、大エリア情報422、中エリア情報423、小エリア情報424を含んでいる。このエリア情報は、各通信基地局がカバーする通信可能エリアを示すものであり、各携帯電話プロバイダ会社141,142,…から携帯電話端末情報収集サーバ120に通知されるものである。
【0045】
したがって、マッピング情報記憶部220では、特定の通信基地局の基地局IDを特定することにより、その所在地やカバーしている通信可能エリアを取得することができることとなる。
【0046】
再び図2において、抽出処理部240は、上記した携帯電話端末情報記憶部210及びマッピング情報記憶部220に記憶された情報から、特定の携帯電話端末の位置情報を所定の条件で抽出することができる。すなわち携帯電話端末の位置情報を決定することができる。
【0047】
抽出処理部240が行う抽出処理は、特定の携帯電話端末の携帯電話番号又は携帯電話端末IDである識別情報を指定してその位置情報を抽出する端末抽出処理241である。
【0048】
あるいは、上記の端末抽出処理241の処理に限らず、携帯電話端末情報記憶部210及びマッピング情報記憶部220のデータ構造により携帯電話端末の位置情報の決定が可能となる端末抽出処理であれば、どのような端末抽出処理を行ってもよい。
【0049】
尚、通常は、抽出処理部240は、避難所情報提供サーバ110からの要求に応じて抽出処理を行い、その結果を避難所情報提供サーバ110に送信するようになっているが、このような動作に限定されるわけではない。
【0050】
以上説明したように、本システムの一実施形態においては、携帯電話端末情報収集サーバ120は、各携帯電話プロバイダ会社141,142,…から取得した携帯電話端末の通信記録を参照し、携帯電話端末が通信を行った通信基地局の位置情報により当該携帯電話端末の位置情報を決定し、避難所情報提供サーバ110に提供するものである。
【0051】
尚、携帯電話端末の位置情報の取得方法については、携帯電話プロバイダ会社ごとに、様々な方法を採用することができる。上記した通信基地局の通信エリアから携帯電話端末の位置情報を割り出す方法の他に、例えばGPS機能を備えた携帯電話端末では、端末の緯度・経度情報をそのまま位置情報として利用することも可能である。
【0052】
したがって、携帯電話端末情報収集サーバ120が、携帯電話端末の位置情報を決定する具体的手法は、携帯電話プロバイダ会社から取得する情報の内容により多様な形態が考えられる。携帯電話端末情報収集サーバ120が、携帯電話プロバイダ会社から取得した情報を用いて上記のような端末抽出処理を行って決定する場合もあれば、携帯電話プロバイダから取得した情報をほぼそのまま用いて決定する場合もある。いずれの場合も、携帯電話端末情報収集サーバ120は、携帯電話プロバイダ会社から取得した情報に基づいて携帯電話端末の位置情報を決定する。
【0053】
[3]避難所情報提供サーバの構成
図5は、避難所情報提供サーバ110の内部構成を概略的に示す機能ブロック図である。
図5において、避難所情報提供サーバ110は、携帯電話端末情報収集サーバ120から提供された携帯電話端末の位置情報を利用者位置情報として取得する利用者位置情報取得部510と、災害関連情報サーバ130から災害の詳細情報を取得する災害情報取得部520と、本サーバの動作を管理する管理機能部530と、通信回線網を通じて、利用者の携帯電話端末160に対して避難所情報の提供を行う避難所情報提供部540と、本システムの利用者の登録情報を記録する利用登録情報記憶部550と、災害の詳細情報を記憶する災害情報記憶部560と、避難所の住所や海抜情報などを記憶する避難所登録情報記憶部570と、を含んでいる。
【0054】
図6は、避難所情報提供サーバ110の利用登録情報記憶部550に記憶されるデータ構造を例示する概略図である。図6において、利用登録情報記憶部550は、本システムの利用に先立って予め登録される利用登録情報610を記憶している。
【0055】
利用登録情報610は、本システムに予め登録する利用者の登録情報であり、具体的には、各利用者について、利用者ID611、パスワード612、利用者名613、年齢や性別などを表す利用者区分614、携帯電話番号615、携帯電話端末ID616などを含んでいる。この他にも、利用者個人を識別するのに有用な情報を含んでいてもよい。
【0056】
利用者区分614は、利用者の体力を判断するために分類した区分であり、この情報を元に、例えば体力のある若者にはより高所にあって安全であるが、到達するのが困難な避難所の情報を提供し、お年寄りや幼児には、津波の高さに対する海抜に余裕は無いが、避難しやすい避難所の情報を提供するなどの調整を行うことができる。
【0057】
図7は、避難所情報提供サーバ110の災害情報記憶部560に記憶されるデータ構造を例示する概略図である。図7において、災害情報記憶部560は、災害情報710を記憶している。
【0058】
災害情報710は、発生した災害の種類、規模、エリアなどを逐次記録した情報であり、災害の発生日時711、被災エリア712、災害種別713、災害規模714及び更新日時715を含んでいる。災害規模714は、津波の高さである。災害情報710は、災害関連情報サーバから随時送信されてくるデータを自動で受信して登録しているものである。
【0059】
図8は、避難所情報提供サーバ110の避難所登録情報記憶部570に記憶されるデータ構造を例示する概略図である。図8において、避難所登録情報記憶部570は、本システムの運用に先立って予め登録される避難所基礎情報810、避難所高度情報820及び利用推奨レベル830を含んでいる。
【0060】
避難所基礎情報810は、避難所の基本的な情報を記録しており、避難所ID811、避難所のエリア812、避難所の住所813、避難所の収容人数814などを含んでいる。他にも、シャワー設備の有無や、暖房設備の有無など、避難所に対してのオプション的な情報を含んでいてもよい。
【0061】
避難所高度情報820は、避難所が利用者に提供するだけの環境を備えているかの情報を記憶しており、避難所ID821、海抜822、到達難度823を含んでいる。海抜822は避難所の海面からの高さを示しており、災害時に発生した津波に対し、十分安全な高さに避難所が立てられているかの判断に利用される。
【0062】
到達難度823は避難所が存在している場所に対しての到達難度を示しており、例えば急な坂の上にある避難所などは、海抜は高くて安全であっても、お年寄りなどが避難するには困難な場所である場合もあるため、到達難度を「高」に設定しておく。
【0063】
利用推奨レベル830は、利用登録情報610に含まれる利用者区分614と、到達難度823の対応付けを表したものであり、この情報を元に、利用者へ提供する避難所情報の有益性を向上させる。
【0064】
避難所基礎情報810、避難所高度情報820及び利用推奨レベル830は、平常時から避難所情報提供サーバ110の管理者が管理用端末100aにより入力するものである。
【0065】
再び図5において、避難所情報提供サーバ110の利用者位置情報取得部510は、災害発生時、利用者からの避難所情報照会要求に応じ、携帯電話端末情報収集サーバ120に対して、利用者位置情報(携帯電話端末情報収集サーバ120においては携帯電話端末の位置情報)を要求する。
【0066】
利用者位置情報の要求は、利用登録情報記憶部550に記憶されている利用者の携帯電話番号又は携帯電話端末IDに基づいて行うものとし、また、携帯電話端末情報収集サーバ120の抽出処理部240が備える処理機能に応じて、特定の利用者(携帯電話端末)の位置情報を抽出する端末抽出処理241を要求することができる。
【0067】
災害情報取得部520は、災害発生時に、災害関連情報サーバから災害の発生時刻やエリアごとの規模などの災害に関する詳細情報を取得して災害情報記憶部560への登録を行う。新たな災害情報が通知されるたび、災害情報記憶部560へは最新の災害情報が自動で登録されることとする。
【0068】
管理機能部530は、平常時より、管理者等が管理用端末110aからの指示により、避難所登録情報記憶部570に記憶されている避難所ごとのエリア、住所、海抜、到達難度等を随時更新する。管理機能部530は、また、避難所情報提供サーバ110におけるほかの機能を必要に応じて管理する。
【0069】
避難所情報提供部540は、通信回線網を通じて、本システムの利用者が所有する携帯電話端末160に対して、利用登録処理541、避難所照会受付処理542、避難所検索処理543、避難所配信処理544などのサービスを提供する。
【0070】
利用登録処理541は、利用者の新規登録や登録情報の追加・変更・削除を受け付け、その情報を利用登録情報記憶部550に反映させるものである。
【0071】
避難所照会受付処理542は、本システムにアクセスしてきた利用者に対して、避難所情報の照会要求を受け付けるものである。
【0072】
避難所検索処理543は、利用者からの避難所情報の照会要求を受けて、携帯電話端末情報収集サーバ120より取得した利用者位置情報と、災害情報560に記憶されている該当エリアの災害規模と、避難所登録情報記憶部570に記憶されている避難所のエリアや海抜情報等を元に、利用者が避難すべき最適な避難所を検索するものである。
【0073】
避難所配信処理544は、避難所検索処理543にて検索された避難所の情報を、通信回線網を通じて携帯電話端末に配信する、すなわち利用者に提供するものである。
【0074】
図9は、避難所情報提供サーバ110が携帯電話端末情報収集サーバ120に対して利用者位置情報を要求する際に送受信される要求データ及び応答データの内容を示す図である。
【0075】
利用者位置情報要求データ910は、携帯電話端末情報提供サーバ120に対する検索条件として、携帯電話番号を指定しており、必要な情報の項目として、携帯電話番号、記録日時及び小エリアを指定している。これに対する応答データ920は、携帯電話番号921、記録日時922及び小エリア923の情報を、上記検索条件に該当するレコードに対して返却する。
【0076】
[4]避難所情報提供システムの動作
次に、図10及び図11を参照しながら、上記した本実施形態の避難所情報提供システムの動作について説明する。
【0077】
図10は、本実施形態の避難所情報提供システムの平常時における動作を示すシーケンス図である。
図10において、各通信基地局151,152,153,…は、定期的に自エリア内の携帯電話端末と通信を行っており、その携帯電話端末の情報を携帯電話プロバイダ会社141,142,…に送信する。携帯電話プロバイダ会社141,142,…は、各通信基地局151,152,153,…から取得した携帯電話端末情報を通信記録として一定期間保存する。
【0078】
携帯電話端末情報収集サーバ120は、携帯電話プロバイダ会社141,142,…に定期的にアクセスし、携帯電話端末160の通信記録を取得する。その後、集信処理部230において集信処理を行い、取得した通信記録から必要な情報を抽出し、携帯電話端末情報記憶部210に記憶する。携帯電話端末情報収集サーバ120は、また、携帯電話プロバイダ会社141,142,…から、通信基地局の位置や通信エリアに関する情報を取得し、マッピング情報記憶部220に記憶しているものとする。
【0079】
一方、避難所情報提供サーバ110は、管理者からの避難所情報の登録処理を受け付けている。管理機能部530の避難所登録処理により、避難所登録情報記憶部570へ避難所のエリア・住所などの基礎情報や、海抜・到達難度などの付加的な情報を記憶させる。
【0080】
また、雛所情報提供部540の利用登録処理541では、利用者から利用登録や各種設定の操作を受け付け、利用登録情報記憶部550に記憶させる。
【0081】
図11は、本実施形態の避難所情報提供システムの災害発生時における動作を示すシーケンス図である。
災害が発生すると、避難所情報提供サーバ110には災害関連情報サーバ130から災害発生の通知が送られ、災害情報取得処理部520により、災害情報記憶部560へ災害情報が記憶される。
【0082】
避難所照会受付処理542にて利用者からの避難所情報の提供の照会要求を受け付け、利用者位置情報取得部510により、携帯電話端末情報収集サーバ120に利用者位置情報の提供の要求を行う。
【0083】
要求を受け付けた携帯電話端末情報収集サーバ120は、抽出処理部240により、携帯電話端末情報記憶部210に記憶されているデータの中から、該当する携帯電話の位置情報を取得し、避難所情報提供サーバ110へ抽出結果を返却する。
【0084】
避難所検索処理543は、利用者位置情報取得部510で取得した携帯電話の位置情報すなわち利用者位置情報を用いて利用者が存在する該当エリアを決定し、決定した該当エリアに存在する避難所について、災害情報記憶部560に記憶されている該当エリアの津波の高さと、避難所登録情報記憶部570に記憶されている避難所の海抜を基に、該当エリアにおいて発生している津波の高さに対して所定の十分な高低差のある海抜に位置する避難所を提供候補として抽出する。本システムの最も簡易な形態では、この段階で抽出された避難所を知らせる避難所情報を利用者へ配信してもよい。
【0085】
さらに、好適例として、提供候補として抽出された上記の避難所の中から、利用登録情報550に登録されている利用者の利用者区分と、避難所登録情報記憶部570に登録されている避難所の到達難度、利用推奨レベルを基に、照会要求をした利用者の体力に合わせた避難所の候補を決定する。
【0086】
避難所配信処理544は、避難所検索処理543にて決定された避難所を知らせる避難所情報を、通信回線網を通して利用者へ配信する。
【0087】
また、新たな津波の発生など、災害情報に更新があった場合には、災害関連情報サーバから随時通知されることとし、災害情報取得部520により、災害情報記憶部560へ記憶される。
【0088】
災害情報の更新を受けて、避難所情報提供サーバ110には、利用者位置情報取得部510により携帯電話端末情報収集サーバ120へ最新の利用者位置情報の要求を行う。
【0089】
避難所検索処理543では、利用者位置情報取得処理510にて取得された最新の利用者位置情報と、災害情報560に記憶されている最新の災害の規模すなわち津波の高さを元に、利用者にとって安全と見なされる避難所の再検索を行い、避難所配信処理544にて、利用者への配信を行う。
【0090】
以上、本発明の避難所情報提供システムについて、具体的な実施の形態を示して説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。当業者であれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、上記各実施形態又は他の実施形態にかかる発明の構成及び機能に様々な変更・改良を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0091】
110 避難所情報提供サーバ
110a 管理用端末
120 携帯電話端末情報収集サーバ
130 災害関連情報サーバ
141,142,… 携帯電話プロバイダ会社
151,152,153,… 携帯電話端末基地局
160 携帯電話端末
210 携帯電話端末情報記憶部
220 マッピング情報記憶部
230 集信処理部
240 抽出処理部
241 端末抽出処理
310 集信データ
311 集信ID
312 受信日時
313 携帯電話プロバイダ会社
314 ファイル名
320 集計データ
321 記録日時
322 基地局ID
323 携帯電話端末ID
324 携帯電話番号
410 基地局位置情報
411 基地局ID
412 所在地
413 郵便番号
420 基地局エリア情報
421 基地局ID
422 大エリア
423 中エリア
424 小エリア
510 利用者位置情報取得部
520 災害情報取得部
530 管理機能部
540 避難所情報提供部
541 利用登録処理
542 避難所照会受付処理
543 避難所検索処理
544 避難所配信処理
550 利用登録情報記憶部
560 災害情報記憶部
570 避難所登録情報記憶部
610 利用登録情報
611 利用者ID
612 パスワード
613 利用者名
614 利用者区分
615 携帯電話番号
616 携帯電話端末ID
710 災害情報
711 発生日時
712 エリア
713 災害種別
714 規模
715 更新日時
810 避難所基礎情報
811 避難所ID
812 エリア
813 住所
814 収容人数
820 避難所高度情報
821 避難所ID
822 海抜
823 到達難度
830 利用推奨レベル
831 区分
832 到達難度
910 利用者位置情報要求データ
911 携帯電話番号
920 利用者位置情報応答データ
921 携帯電話番号
922 記録日時
923 小エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
災害発生時に、携帯電話端末を所有する利用者に対して避難すべき避難所を知らせる避難所情報を提供するために、互いに接続された携帯電話端末情報収集サーバと避難所情報提供サーバとを有するシステムであって、
前記携帯電話端末情報収集サーバは、
携帯電話プロバイダから取得した情報に基づいて前記携帯電話端末の位置情報を決定して前記避難所情報提供サーバに提供する手段を備え、
前記避難所情報提供サーバは、
各避難所について海抜及びエリアの情報を含む避難所登録情報を予め記憶部に記憶する手段と、災害発生時に津波の高さを含む災害情報を取得する手段と、災害発生時に前記携帯電話端末情報収集サーバから特定の前記携帯電話端末の位置情報を取得する手段と、取得した特定の前記携帯電話端末の位置情報を利用者位置情報として用いて該当するエリアを決定し、決定した前記エリアに存在しかつ前記津波の高さに対して所定の十分な高低差のある海抜に位置する避難所を前記避難所登録情報に基づいて決定し、決定した前記避難所を知らせる避難所情報を特定の前記携帯電話端末に対して配信する手段と、を備えたことを特徴とする避難所情報提供システム。
【請求項2】
前記携帯電話端末情報収集サーバは、さらに、前記携帯電話プロバイダから前記携帯電話端末と通信基地局との間の通信記録と、前記通信基地局の位置に関するマッピング情報とを取得し、前記通信記録と前記マッピング情報とを関連づけて前記携帯電話端末の位置情報を決定することを特徴とする、請求項1に記載の避難所情報提供システム。
【請求項3】
災害関連情報サーバをさらに有し、前記避難所情報提供サーバは、さらに、前記災害関連情報サーバから前記災害情報を取得することを特徴とする、請求項1又は2に記載の避難所情報提供システム。
【請求項4】
前記避難所情報提供サーバは、さらに、前記利用者の体力を分類する利用者区分の情報を含む利用登録情報を記憶部に記憶する手段を備えるとともに、前記避難所登録情報としてさらに避難所までの到達難度の情報を含み、前記利用者区分及び前記到達難度にも基づいて前記避難所を決定することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の避難所情報提供システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−54543(P2013−54543A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192347(P2011−192347)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000233055)株式会社日立ソリューションズ (1,610)
【Fターム(参考)】