説明

避難装置

【課題】梯子の軽量化及び剛性を図ると共に、梯子の揺れを防止して、安全に避難することができる避難装置を提供すること。
【解決手段】ベランダ等の床面に設けられた収納枠2内に収納され、緊急時には下階まで伸長する梯子6を有する避難装置において、梯子は、側面が開放された角断面部を有する一対の縦部材20と、両縦部材の下部同士を連結する横部材21とからなる複数の梯子ユニット60を伸縮可能に連結してなり、最上段の梯子ユニットの縦部材の上端側部を、収納枠の一側に突設されたブラケット30に回動可能に取り付け、各梯子ユニットの縦部材の角断面部同士が摺動可能に重合され、かつ、最上段を除く梯子ユニットの縦部材の角断面部の上部側の内部に、断面矩形状の合成樹脂製のスライド部材40を固設し、避難梯子の伸長状態において、上方に隣接する上段の梯子ユニットの角断面部の内面がスライド部材に摺動可能に接触するように形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は避難装置に関するもので、更に詳細には、ベランダ等に設けられた収納枠内に収納され、緊急時には下方に伸長することによって避難可能とする避難梯子を具備する避難装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の避難装置として、ベランダ等のスラブに設けられた開口部に固定される収納枠と、この収納枠の床面側及び天井面側にそれぞれ枢着される上蓋及び下蓋と、収納枠内に折り畳まれて収納されると共に上蓋及び下蓋が開放されたとき、階下の床若しくはその付近まで伸長する例えばテレスコープ式等の避難梯子を具備するものが知られている。
【0003】
上記のように構成される避難装置においては、避難梯子は片持ち支持であるため、梯子の構成部材を軽量化する必要があり、かつ、避難梯子の伸長状態でも最下端部が下階の床面付近に浮いた状態であるため、避難者が降下する際にはどうしても梯子の揺れ、つまり避難者の重量により梯子の下方(足側)が避難者から遠ざかる方向に移動する現象が生じ、円滑な避難を妨げる要因となっている。
【0004】
そこで、従来では上記揺れを防止するために、梯子に剛性を持たせるべく梯子ユニットは、側面が開放された角断面部を有する一対の縦部材と、この縦部材を連結する横部材と、この横部材に対向すると共に、横部材よりも伸長方向下方において一対の縦部材を連結する補強部材とを備え、補強部材は、伸長方向に幅を有すると共に、梯子が伸長したとき、互いに隣接する梯子ユニットのうち、伸長方向前方に位置する梯子ユニットの横部材が、後方に位置する梯子ユニットの補強部材に掛け止められる構成にしたテレスコープ式のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−101340号公報(特許請求の範囲、図1,図2,図8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の構造のものにおいては、梯子を構成する複数の梯子ユニットが、それぞれ一対の縦部材と、縦部材間に架設される横部材との他に補強部材を備える構造であるため、構成部材が多くなると共に、組立が面倒となり、重量が嵩む上、コストアップ等が懸念される。また、特許文献1記載のものにおいては、縦部材は、一般に金属製部材をプレス加工等により側面が開放された角断面部を有する形状であるため、角断面部の角部の加工精度が十分でない上、摺動部全体が金属製の縦部材同士の接触となるため、伸長の際に各梯子ユニットの左右の縦部材の摺動部にずれが生じると共に、梯子全体にぶれが生じる懸念がある。
【0007】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、梯子の軽量化を図ると共に、梯子に剛性を持たせて、安全に避難することができる避難装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、この発明は、ベランダ等の床面に設けられた開口部に嵌装・固定される収納枠内に収納され、緊急時には下階まで伸長することによって避難可能とする避難梯子を有する避難装置において、 上記避難梯子は、側面が開放された角断面部を有する一対の縦部材と、両縦部材の下部同士を横方向に連結する横部材とからなる複数の梯子ユニットを伸縮可能に連結してなり、 最上段の上記梯子ユニットの縦部材の上端側部を、上記収納枠の一側に突設されたブラケットに回動可能に取り付け、 上記各梯子ユニットの縦部材の角断面部同士が摺動可能に重合され、かつ、最上段を除く梯子ユニットの縦部材の角断面部の上部側の内部に、断面矩形状の合成樹脂製のスライド部材を固設し、避難梯子の伸長状態において、上方に隣接する上段の梯子ユニットの角断面部の内面が上記スライド部材に摺動可能に接触するように形成してなる、ことを特徴とする(請求項1)。
【0009】
このように構成することにより、避難梯子を構成する各梯子ユニットを、側面が開放された角断面部を有する一対の縦部材と、両縦部材の下部同士を横方向に連結する横部材とで構成することができる。また、合成樹脂製のスライド部材によって上下に隣接する梯子ユニットの縦部材同士が円滑に摺動することができる。更に、避難梯子の伸長状態において、スライド部材によって隣接する梯子ユニットの縦部材の重合部に係る避難者の重量に伴う荷重を分散することができる。
【0010】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の避難装置において、 上記各梯子ユニットは、該梯子ユニットの手前側の内方及び奥側の外方が開放する角断面部を背中合わせに有する断面略S字状に形成される縦部材と、該縦部材の奥側の角断面部の下部同士を連結する横部材とからなり、 上段の上記梯子ユニットの縦部材の手前側の角断面部と下段の上記梯子ユニットの縦部材の奥側の角断面部とが摺動可能に重合され、かつ、最上段を除く下段の梯子ユニットの縦部材の奥側の角断面部の上端側の内部に、上記スライド部材を固設し、避難梯子の伸長状態において、上方に隣接する上段の梯子ユニットの手前側の角断面部の内面が上記スライド部材に摺動可能に接触するように形成してなる、ことを特徴とする(請求項2)。
【0011】
このように構成することにより、避難梯子を構成する各梯子ユニットを、手前側の内方及び奥側の外方が開放された角断面部を有する一対の断面略S字状に形成される共通の縦部材と、両縦部材の下部同士を横方向に連結する横部材とで構成することができる。また、請求項1記載の発明と同様に、合成樹脂製のスライド部材によって上下に隣接する梯子ユニットの縦部材同士が円滑に摺動することができる。更に、避難梯子の伸長状態において、スライド部材によって隣接する梯子ユニットの縦部材の重合部に係る避難者の重量に伴う荷重を分散することができる。
【0012】
また、請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の避難装置において、上記スライド部材を下段の梯子ユニットの縦部材の角断面部の隣接する2辺との間に隙間をおいて固設し、上段の梯子ユニットの縦部材の角断面部の隣接する2辺を上記隙間内に摺動可能に挿入してなる、ことを特徴とする。
【0013】
このように構成することにより、縦部材の角断面部の隣接する2辺と合成樹脂製のスライド部材とを摺動可能に接触することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、上記のように構成されているので、以下のような優れた効果が得られる。
【0015】
(1)請求項1,2記載の発明によれば、避難梯子の構成部材の削減が図れると共に、避難梯子の伸縮を円滑にすることができ、かつ、避難梯子の伸長状態において、スライド部材によって隣接する梯子ユニットの縦部材の重合部に係る避難者の重量に伴う荷重を分散することができるので、避難梯子の軽量化及び剛性が図れると共に、避難梯子の揺れを防止することができ、安全に避難することができる。
【0016】
(2)請求項3記載の発明によれば、梯子ユニットを構成する縦部材の角断面部の隣接する2辺と合成樹脂製のスライド部材とを摺動可能に接触することができるので、上記(1)に加えて、更に避難梯子の伸縮を円滑にすることができると共に、避難梯子の揺れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明における避難梯子の使用状態(伸長状態)を示す斜視図(a)及び(a)のI部拡大斜視図(b)である。
【図2】上記避難梯子の使用状態(伸長状態)を示す側面図である。
【図3】上記避難梯子の使用状態(伸長状態)を示す正面図である。
【図4】この発明における梯子ユニットを示す斜視図である。
【図5】この発明におけるストッパ部材とロック部材を示す斜視図(a)及び(a)のII部拡大斜視図(b)である。
【図6】この発明における縦部材とスライド部材を示す平面図(a)及び(a)のIII−III線に沿う断面図(b)である。
【図7】上記避難梯子の収縮状態(折り畳み状態)を示す斜視図である。
【図8】この発明における縦部材と横部材の連結部を示す分解斜視図(a)及び連結部の拡大断面図(b)である。
【図9】上記避難梯子の収納状態を示す断面図である。
【図10】図9のIV−IV線に沿う断面図である。
【図11】上記避難梯子の使用(伸長)手順を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、この発明に係る避難装置の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
この発明の避難装置は、床、ベランダ等のスラブ1に設けられた開口部1aに嵌装・固定される方形状の収納枠2と、この収納枠2の1辺の床面側及び天井面側にそれぞれ枢着される上蓋3及び下蓋4と、収納枠2内に折り畳まれて収納されると共に階下の床若しくはその付近まで伸長する避難梯子6(以下に梯子6という)と、この梯子6の伸長降下速度を制御すると共に梯子6を引上げ収納する緩降器7と、上蓋3と下蓋4とを互いに連動して開閉動作させる開閉連動機構8と、伸長状態の梯子6を傾斜状態に保持する吊持用ワイヤ9と、で主要部が構成されている。
【0020】
上記梯子6は、側面が開放された角断面部6a,6bを有する一対の金属製の縦部材20と、両縦部材20の下部同士を横方向に連結する金属製の横部材21とからなる複数段(図面では8段の場合を示す)の梯子ユニット60a〜60hを伸縮可能に連結してなると共に、伸長状態において、梯子6の最下端部は下階の床面Fに到達しない程度に形成されている。
【0021】
最上段の梯子ユニット60aの縦部材20の上端側部は、収納枠2の一側2aに突設されたブラケット30に回動可能に取り付けられて、梯子6は片持ち支持されている。
【0022】
また、収納枠2の対向する側面部2b,2cと、上段側の梯子ユニットすなわち最上段の梯子ユニット60aを構成する両縦部材20は、可撓性を有する吊持用ワイヤ9にて連結されている。この吊持用ワイヤ9によって伸長時の梯子6が傾斜状態に保持されるように形成されている。
【0023】
上記縦部材20は、梯子ユニット60a〜60hの手前側(正面から見た手前側)の内方及び奥側の外方が開放する角断面部6a,6bを背中合わせに有する断面略S字状に形成されている。すなわち、縦部材20は、図6に示すように、中央片20aの両端から相対方向に側片20b,20cが屈曲するクランク状基部20dと、クランク状基部20dの各側片20b,20cの先端から直交状に屈曲される互いに平行な手前片20e,奥片20fと、手前片20e,奥片20fの先端から中央部に向かって直交状に屈曲され、中央片20aとの間に開口部20gを形成する折曲片20h,20iとからなる角断面部6a,6bを背中合わせに有する断面略S字状に形成されている。なお、側片20b,20cの外面に対して折曲片20h,20iの外面は縦部材20の板厚分内方側に位置している。
【0024】
上記一対の縦部材20の奥側の角断面部6bの対向する側片20cに横部材21が連結されている。この場合、横部材21は、図5,図7及び図8に示すように、平坦上面片21aの長手方向の両側に屈曲される一対の垂下片21bと、両垂下片21bの下端から内方に向かって屈曲される一対の下部水平片21cを有しており、長手方向の端部には一方の垂下片21bの端部から直交状に屈曲される第1の端部垂直片21dと、他方の垂下片21bの端部から内方に直交状に屈曲されると共に第1の端部垂直片21dの外側面に重合される第2の端部垂直片21eとを有する。そして、横部材21の長手方向の端部の第1及び第2の端部垂直片21d,21eが縦部材20の奥側の角断面部6bの対向する側片20cにリベット90をもって連結固定されている。この場合、図8に示すように、縦部材20の側片20cには例えば絞り加工によって内方側に向かって突出する略小判形状の突部20lが形成されており、この突部20lに穿設された取付孔20mに挿入されるリベット90が横部材21の第1及び第2の端部垂直片21d,21eに穿設された取付孔21fを貫通して、横部材21の内部でかしめ固定されている。
【0025】
上記のように形成される梯子ユニット(以下に符号60で代表する)において、上段の梯子ユニット60の縦部材20の手前側の角断面部6aと下段の梯子ユニット60の縦部材20の奥側の角断面部6bとが摺動可能に重合されている。
【0026】
また、最上段を除く下段の梯子ユニット60の縦部材20の奥側の角断面部6bの上端側の内部に、断面矩形状の合成樹脂製のスライド部材40が固設されており、梯子6の伸長状態において、上方に隣接する上段の梯子ユニット60の手前側の角断面部6aの内面がスライド部材40に摺動可能に接触するように形成されている(図6参照)。この場合、スライド部材40の一側面の長手方向の両端側の2箇所に突起部41が突設されている。これら突起部41を縦部材20の奥片20fに設けられた取付孔20j内に嵌合することで、スライド部材40が縦部材20の奥側の角断面部6b内の奥片20fと折曲片20iに接触した状態で固設される。この状態では、スライド部材40と中央片20a及び側片20bとの間には、隣接する縦部材20の手前側の角断面部6aを形成する手前片20eと折曲片20iが摺動可能に挿入できる隙間20kが設けられている(図6(a)参照)。
【0027】
上記のように、梯子ユニット60の縦部材20の奥側の角断面部6bの上端側の内部に、断面矩形状の合成樹脂製のスライド部材40を固設し、梯子6の伸長状態において、上方に隣接する上段の梯子ユニット60の手前側の角断面部6aの内面がスライド部材40に摺動可能に接触するように形成することにより、金属部材同士の摺動に比べて隣接する梯子6の収縮を円滑にすることができる。つまり、金属製縦部材20の角断面部6a,6b同士の摺動では、角断面部6a,6bの角部の高精度の加工が必要であるが、上述のように、合成樹脂製のスライド部材40と縦部材20の隣接する2片すなわち手前片20eと折曲片20iを摺動可能に接触することにより、左右の縦部材20の摺動部にずれを生じることなく円滑に摺動することができる。更に、梯子6の伸長状態においては、梯子6に加わる避難者の重量による荷重をスライド部材40が圧縮力として分担(分散)するので、梯子6すなわち縦部材20が変形するのを防止することができる。
【0028】
また、最上段及び最下段の梯子ユニット60a,60hを除く梯子ユニット60b〜60gを構成する一対の縦部材20の上端側には、梯子6の伸長時に上方に隣接する梯子ユニット60a〜60fの横部材21に係合して梯子のずれを防止するためのストッパ部材50とロック部材70が取り付けられている。
【0029】
すなわち、最上段及び最下段の梯子ユニット60a,60hを除く梯子ユニット60b〜60gを構成する一対の縦部材20の奥側の角断面部6bの対向する面部に、奥側に突出するストッパ片51を有するクランク状に屈曲された板状のストッパ部材50の固定片50aが固定ボルト52をもって固定されている。また、このストッパ部材50の固定片50aには、縦部材20の長手方向と直交する軸である固定ボルト52を中心に回動可能であって、先端に係止爪部71を有するロック部材70が枢着されると共に、該ロック部材70の枢着部にロック部材70の先端部を常時奥側に弾発力を付勢するばね部材72が装着されている。
【0030】
上記のように形成されるストッパ部材50とロック部材70を設けることによって、梯子6の伸長状態において、ストッパ部材50のストッパ片51が隣接する上段の梯子ユニット60b〜60f(以下に符号60で代表する)の横部材21の上面に当接すると共に、ロック部材70の係止爪部71を隣接する上段の梯子ユニット60の横部材21の下面に係止して、ストッパ片51と係止爪部71とで横部材21を挟持固定する。したがって、避難時(伸長時)における避難者の重量(荷重)により生ずる梯子6のずれや変形を防止することができる。
【0031】
なお、ストッパ部材50には、梯子6が伸長状態から収縮状態に変位する際に、上段のロック部材70に係合してばね部材72の弾発力の付勢を解除するロック解除部53が形成されている。このロック解除部53は、ストッパ部材50の固定片50aとストッパ片51間に形成される段部によって形成されている。このようにストッパ部材50にロック解除部53を設けることにより、梯子6を伸長状態から収縮状態に変位する際に、下段の梯子ユニット60のストッパ部材50に設けられたロック解除部53が上段のロック部材70に係合して該ロック部材70に装着されたばね部材72の弾発力の付勢を解除することで、梯子6の収縮を容易にすることができる。
【0032】
上記のようにして収縮された梯子6は各梯子ユニット60a〜60hの縦部材20が積層された状態で折り畳まれ、上端のブラケット30による枢着部により収納枠2内に回動された後、上蓋3と下蓋4が閉鎖して収納される(図9参照)。
【0033】
なお、上蓋3と下蓋4は、それぞれ収納枠2の一側端部にヒンジ3a,4aを介して開閉可能に枢着されており、上蓋3及び下蓋4の両側辺及び収納枠2の対向する側面部2b,2cに取り付けられる一対の開閉連動機構8によって上蓋3と下蓋4が互いに連動して開閉動作し得るように構成されている。なお、上蓋3の略中央内面側には、手掛け部5が固設されている。
【0034】
また、緊急時に上蓋3を開放するラッチ機構80が設けられている。このラッチ機構80は、図9に示すように、上蓋3の自由端側の辺に設けられる係止部材81と、収納枠2の側面部2dに設けられ、上蓋3及び下蓋4が閉鎖状態において、係止部材81と係合可能な係合部材82とで構成されている。
【0035】
上記のように構成される避難装置を火災等の緊急時に使用する場合は、まず、ラッチ機構80の係止部材81と係合部材82の係合を解除した後、図11(a)に示すように、上蓋3と下蓋4を開放すると、上蓋3及び下蓋4の開放と同時に、図11(b)に示すように、梯子6が下蓋4に載った状態で下方に回動する。すると、図11(c)に示すように、緩降器7により梯子6は制御されながら伸長降下し、下段側の梯子ユニット60に設けられたストッパ部材50が上方に隣接する上段の梯子ユニット60の横部材21の上面に当接すると共に、ロック部材70の係止爪部71が横部材21の下面に当接して、ストッパ部材50とロック部材70とで横部材21を挟持固定する。この状態で、吊持用ワイヤ9によって梯子6は手前側に傾斜した状態で保持される(図1〜図3参照)。
【0036】
上記のように、使用時(避難時)には、梯子6は吊持用ワイヤ9によって傾斜状に伸長される。この状態で、避難者が降下すると、梯子6に加わる避難者の重量(荷重)をスライド部材40によって隣接する梯子ユニット60の縦部材20の重合部に係る避難者の重量に伴う荷重を分散することができる。したがって、梯子6の揺れを防止することができ、安全に避難することができる。
【0037】
なお、梯子6を使用状態(伸長状態)から収縮して収納する場合は、緩降器7のワイヤを巻き取って、最下段の梯子ユニット60hを隣接する梯子ユニット60gに対して相対的に摺動させて上方へ引上げる。この際、下段の梯子ユニット60の縦部材20に固定されたストッパ部材50に設けられたロック解除部53が上段のロック部材70に係合して該ロック部材70に装着されたばね部材72の弾発力の付勢を解除しながら、各梯子ユニット60は順次上方側へ引上げられて重ね合わされる。そして、収納枠2内に収納された状態で、上蓋3及び下蓋4が閉鎖される。
【0038】
また、上記実施形態の避難装置によれば、梯子6を構成する各梯子ユニット60a〜60hを、内方,外方側面が開放された角断面部6a,6bを有する一対の縦部材20と、両縦部材20の下部同士を連結する横部材21とで構成することができると共に、従来の上端部のみで吊持する梯子に比べて縦部材20の剛性を低減させることができるので、梯子の軽量化が図れると共に、コストの低廉化が図れる。
【符号の説明】
【0039】
1 スラブ
2 収納枠
2a 収納枠の一側
6,6A 避難梯子
6a,6b 角断面部
9 吊持用ワイヤ
20 縦部材
21 横部材
20g 開口部
20j 取付孔
20k 隙間
40 スライド部材
41 突起部
50 ストッパ部材
50a 固定片
51 ストッパ片
53 ロック解除部
60,60a〜60h 梯子ユニット
70 ロック部材
71 係止爪部
72 ばね部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベランダ等の床面に設けられた開口部に嵌装・固定される収納枠内に収納され、緊急時には下階まで伸長することによって避難可能とする避難梯子を有する避難装置において、
上記避難梯子は、側面が開放された角断面部を有する一対の縦部材と、両縦部材の下部同士を横方向に連結する横部材とからなる複数の梯子ユニットを伸縮可能に連結してなり、
最上段の上記梯子ユニットの縦部材の上端側部を、上記収納枠の一側に突設されたブラケットに回動可能に取り付け、
上記各梯子ユニットの縦部材の角断面部同士が摺動可能に重合され、かつ、最上段を除く梯子ユニットの縦部材の角断面部の上部側の内部に、断面矩形状の合成樹脂製のスライド部材を固設し、避難梯子の伸長状態において、上方に隣接する上段の梯子ユニットの角断面部の内面が上記スライド部材に摺動可能に接触するように形成してなる、
ことを特徴とする避難装置。
【請求項2】
請求項1記載の避難装置において、
上記各梯子ユニットは、該梯子ユニットの手前側の内方及び奥側の外方が開放する角断面部を背中合わせに有する断面略S字状に形成される縦部材と、該縦部材の奥側の角断面部の下部同士を連結する横部材とからなり、
上段の上記梯子ユニットの縦部材の手前側の角断面部と下段の上記梯子ユニットの縦部材の奥側の角断面部とが摺動可能に重合され、かつ、最上段を除く下段の梯子ユニットの縦部材の奥側の角断面部の上端側の内部に、上記スライド部材を固設し、避難梯子の伸長状態において、上方に隣接する上段の梯子ユニットの手前側の角断面部の内面が上記スライド部材に摺動可能に接触するように形成してなる、
ことを特徴とする避難装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の避難装置において、
上記スライド部材を下段の梯子ユニットの縦部材の角断面部の隣接する2辺との間に隙間をおいて固設し、上段の梯子ユニットの縦部材の角断面部の隣接する2辺を上記隙間内に摺動可能に挿入してなる、
ことを特徴とする避難装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate