避雷装置
【課題】 フィルタと避雷器とを個別に設置することを不要にし、しかも、外部環境による影響を受けにくい避雷装置を提供する。
【解決手段】 空中線に接続されている給電線1Bであり、かつ、周波数fpの高周波信号に対して周波数fr(fp>fr)の不要な高周波信号が流れる給電線1Bに接続される避雷装置であって、一端が短絡されて接地されると共に他端が給電線1Bに接続され、周波数fpの高周波信号に対して接続点Aでのインピーダンスを無限大にするために、周波数fpの高周波信号の波長λpを基に長さが設定された基本スタブ11と、基本スタブ11に分岐して接続されると共に周波数frの不要な高周波信号に対して接続点Aでのインピーダンスをゼロにするために、長さが設定された補正スタブ12とを備える。
【解決手段】 空中線に接続されている給電線1Bであり、かつ、周波数fpの高周波信号に対して周波数fr(fp>fr)の不要な高周波信号が流れる給電線1Bに接続される避雷装置であって、一端が短絡されて接地されると共に他端が給電線1Bに接続され、周波数fpの高周波信号に対して接続点Aでのインピーダンスを無限大にするために、周波数fpの高周波信号の波長λpを基に長さが設定された基本スタブ11と、基本スタブ11に分岐して接続されると共に周波数frの不要な高周波信号に対して接続点Aでのインピーダンスをゼロにするために、長さが設定された補正スタブ12とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、落雷による影響から送信設備や受信設備を保護する避雷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
VHF(Very High Frequency)帯やUHF(Ultra High Frequency)帯の無線を利用する事業部門、例えば電力会社の配電部門や営業部門で使用される営配用無線の送信設備および受信設備のような無線設備では、見晴らしの良い山頂などに送信機および受信機などの無線機が設置されている。これにより、広範囲の通信が可能である。
【0003】
しかし、無線機が山頂などに設置されているために、雷の影響を受ける。つまり、無線機の空中線に金属柱を用いるので、落雷の可能性がある。雷の影響を防ぐために、通常、空中線の近傍に避雷針が設置されている。これにより、空中線に対する落雷を防ぐことができる。しかし、避雷針に落雷があると、雷による強い電流が流れ、空中線や空中線に接続されている給電線には誘導電流が流れる。この誘導電流は、給電線が接続されている無線設備に悪影響を及ぼす。この誘導電流の影響を軽減するために、給電線には各種の避雷器が設けられている(引用文献1〜引用文献6参照)。これらの避雷器は、同軸ケーブルの内部導体に対して、高周波信号の通過を阻止すると共に一端が接地されているコイルの他端を接続する構成である。雷による誘導電流は直流に近いので、コイルは内部導体に流れる誘導電流をアース側に流す。
【0004】
こうした方式の他にも、避雷器には、同軸ケーブルの内部導体と外部導体とを一端側で短絡して接地し、空中線近傍の給電線経路に他端を並列接続するものがある(引用文献7参照)。つまり、同軸ケーブルにより避雷器を形成する。この方式では、同軸ケーブルである高周波伝送路を高周波信号の波長の1/4の長さにし、その一端側の内部導体と外部導体とを電気的に短絡した場合に、短絡していない側の高周波伝送路端から見た、高周波信号の周波数におけるインピーダンスが無限大となり、直流抵抗が実質的にゼロである、という特性を利用している。給電線を直流的に接地状態にすることで、雷の誘導電流による被害が軽減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−230047号公報
【特許文献2】特開2003−208962号公報
【特許文献3】特開2003−209003号公報
【特許文献4】特開2003−217907号公報
【特許文献5】特開2003−229229号公報
【特許文献6】特開2006−296163号公報
【特許文献7】実願平6−16827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、例えば送信設備では、送信される高周波信号に対して高調波が発生するが、この高調波の強度は電波法で規制されている。一方、受信設備では、受信を目的としない高周波信号が空中線によって受信されるが、この信号が受信機に入力される前に、この信号を排除することが望ましい。このために、無線設備の空中線回路には、高調波の抑制や目的外の高周波信号を排除するために、つまり、不要な周波数の高周波信号(以下、「不要信号」という)を除去するために、フィルタが適所に挿入されている。
【0007】
しかし、先に述べたように、無線設備の空中線側には避雷器が設置されているので、不要信号を除去するフィルタを設けることは、設備のコストアップにつながる。また、不要な周波数を除去するフィルタは一般的にコイルやコンデンサなどの集中定数回路で構成される。しかし、山頂などに設置されている無線設備は季節による寒暖の影響を受けるので、コイルやコンデンサなどのような金属素子は温度によって伸縮する。これにより、集中定数回路に用いられている金属素子の電気的な特性が変化し、フィルタの特性も変化してしまう。つまり、気象等の外部環境による影響を受けやすい野外に設置されている空中線の近傍に対して、フィルタなどを設置することは適切ではない。
【0008】
この発明の目的は、前記の課題を解決し、フィルタと避雷器とを個別に設置することを不要にし、しかも、外部環境による影響を受けにくい避雷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、請求項1の発明は、空中線に接続されている給電線であり、かつ、所定の高周波信号に対して低い周波数の不要な高周波信号が流れる給電線に接続される避雷装置であって、一端が短絡されて接地されると共に他端が前記給電線に接続され、前記所定の高周波信号に対して接続点でのインピーダンスを無限大にするために、前記所定の高周波信号の波長を基に長さが設定された第1の分布定数線路と、前記第1の分布定数線路に分岐して接続されると共に前記不要な高周波信号に対して前記接続点でのインピーダンスをゼロにするために、長さが設定された第2の分布定数線路と、を備えることを特徴とする避雷装置である。
【0010】
請求項1の発明では、不要な高周波信号の周波数が所定の高周波信号に比べて低い場合を対象とし、所定の高周波信号の波長を基に長さが設定された第1の分布定数線路に対して、不要な高周波信号について接続点でのインピーダンスをゼロにするために、長さが調節された第2の分布定数線路が設けられている。
【0011】
請求項2の発明は、空中線に接続されている給電線であり、かつ、所定の高周波信号に対して高い周波数の不要な高周波信号が流れる給電線に接続される避雷装置であって、前記給電線に接続され、前記給電線に流れる不要な高周波信号に対して接続点でのインピーダンスをゼロにするために、前記不要な高周波信号の波長を基に長さが設定された第1の分布定数線路と、一端が短絡されて接地されると共に前記第1の分布定数線路に分岐して他端が接続され、前記所定の高周波信号に対して前記接続点でのインピーダンスを無限大にするために、長さが設定された第2の分布定数線路と、を備えることを特徴とする避雷装置である。
【0012】
請求項2の発明では、不要な高周波信号の周波数が所定の高周波信号に比べて高い場合を対象とし、不要な高周波信号の波長を基に長さが設定された第1の分布定数線路に対して、所定の高周波信号について接続点でのインピーダンスを無限大にするために、長さが設定された第2の分布定数線路が設けられている。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の複数の避雷装置を、給電線に対して所定の間隔をおいて直列に接続したことを特徴とする避雷装置である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、落雷等による直流的な電流に対しては、一端が短絡されている第1の分布定数線路により短絡状態になり、所定の高周波信号に対してはインピーダンスが無限大の状態になり、かつ、不要な高周波信号に対してはインピーダンスがゼロになる。これにより、避雷器の機能と、不要な高周波信号を減衰させるフィルタの機能とを併せ持たせることができる。また、この発明によれば、分布定数線路を用いて装置を構成するので、金属素子を用いる従来のフィルタに比べて外部環境の影響を受け難くすることができる。また、この発明によれば、第2の分布定数線路の長さを調節することにより、任意の周波数の信号を減衰させることが可能である。さらに、この発明によれば、所定の高周波信号の短い波長を基に第1の分布定数線路を形成するので、装置の小型化が可能である。
【0015】
請求項2の発明によれば、直流的な電流に対しては、先端が短絡されている第2の分布定数線路により短絡状態になり、所定の高周波信号に対してはインピーダンスが無限大の状態になり、かつ、不要な高周波信号に対してはインピーダンスがゼロになる。これにより、避雷器の機能と、不要な高周波信号を減衰させるフィルタの機能とを併せ持たせることができる。また、この発明によれば、請求項1の発明と同様に、外部環境の影響を受け難くすることができ、任意の周波数の信号を減衰させることが可能である。さらに、この発明によれば、不要な高周波信号の短い波長を基に第1の分布定数線路を形成するので、装置の小型化が可能である。
【0016】
請求項3の発明によれば、複数の避雷装置を縦続接続することにより、減衰量を増やすことができる。また、異なる周波数の高周波信号を減衰するように避雷装置を構成すれば、複数の周波数の高周波信号を減衰することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施の形態1による避雷装置と、この避雷装置が適用されている送信設備とを示す構成図である。
【図2】実施の形態1による避雷装置を示す構成図である。
【図3】実施の形態1による避雷装置を説明するための説明図である。
【図4】スミスチャートを用いてスタブの長さを求める基本的な方法を説明する図であり、図4(a)は短絡点から中途分岐部までのリアクタンスを求めるための説明図、図4(b)はスタブの長さを求めるための説明図である。
【図5】スミスチャートを用いてスタブの長さを求める方法を説明する図であり、図5(a)は短絡点から中途分岐部までのリアクタンスを求めるための説明図、図5(b)は給電線の接続部までのリアクタンスを求めるための説明図、図5(c)はスタブの長さを求めるための説明図である。
【図6】避雷装置の周波数特性を示す図である。
【図7】実施の形態2による避雷装置を説明する説明図である。
【図8】スミスチャートを用いてスタブの長さを求める基本的な方法を説明する図であり、図8(a)は短絡点から中途分岐部までのリアクタンスを求めるための説明図、図8(b)はスタブの長さを求めるための説明図である。
【図9】スミスチャートを用いてスタブの長さを求める方法を説明する図であり、図9(a)は短絡点から中途分岐部までのリアクタンスを求めるための説明図、図9(b)は給電線の接続部までのリアクタンスを求めるための説明図、図9(c)はスタブの長さを求めるための説明図である。
【図10】実施の形態3を基にした送信設備を示す構成図である。
【図11】実施の形態4を説明するための伝送路を示す図である。
【図12】基本スタブと補正スタブとを説明するための図である。
【図13】具体例1の基本スタブと補正スタブとを説明するための図である。
【図14】具体例2の基本スタブと補正スタブとを説明するための図である。
【図15】具体例3の基本スタブと補正スタブとを説明するための図である。
【図16】具体例3の基本スタブと補正スタブとの、他の例を説明するための図である。
【図17】具体例4の基本スタブと補正スタブとを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、この発明の各実施の形態について、図面を用いて詳しく説明する。各実施の形態では、送信設備に対してこの発明を適用した場合を例としている。
【0019】
(実施の形態1)
この実施の形態による避雷装置と、この避雷装置が適用されている送信設備とを図1に示す。図1の送信設備は送信機1A、2Aを備えている。送信機1A、2Aは、給電線1B、2Bによって空中線1C、2Cにそれぞれ接続されている。給電線1B、2Bは送信機1A、2Aからの高周波信号を流すための同軸ケーブル(分布定数線路)である。空中線1C、2Cは設置柱3に対して離れて設置されている。空中線1C、2Cは給電線1B、2Bを流れて来る高周波信号を、電波で空中に放出する。また、設置柱3には、空中線1C、2Cを落雷から保護するために避雷針4が設置され、避雷針4は接地線5によって接地されている。これにより、避雷針4に落雷があると、雷による強電流は接地線5を経て大地に流れる。
【0020】
送信機1Aは、例えば営配用無線に用いられるものであり、送信機1Aの高周波信号の周波数をfp(波長λp)とする。また、送信機2Aは、例えば工務用無線に用いられるものであり、送信機2Aの高周波信号の周波数をfr(波長λr)とする。そして、この実施の形態では、
fp>fr
である。
【0021】
こうした送信設備の給電線1B、2Bには、この実施の形態による避雷装置10、20がそれぞれ接続されている。避雷装置20は避雷装置10と同じであるので、以下では避雷装置10について説明し、避雷装置20の説明を省略する。
【0022】
避雷装置10は、図2に示すように、給電線1Bに対して並列に接続されている。避雷装置10は、基本スタブ11および補正スタブ12と、アダプタ13、14と、プラグ15と、接地端子16とを備えている。アダプタ13はT字状をした分岐用の部品である。アダプタ13の3つの端部にはジャックが設けられ、各ジャックにはプラグ15がそれぞれ取り付け可能である。これらのアダプタ13、14とプラグ15とにより、基本スタブ11および補正スタブ12が接続される。
【0023】
基本スタブ11は所定長の同軸ケーブルである。基本スタブ11の一端は、アダプタ13とプラグ15とにより、給電線1Bの途中の接続点A(破線円で示す)で、給電線1Bに接続されている。つまり、基本スタブ11の内部導体が給電線1Bの内部導体に接続され、基本スタブ11の外部導体が給電線1Bの外部導体に接続されている。これにより、基本スタブ11が給電線1Bに対して接続点Aで並列に接続されている。基本スタブ11の他端は、接地端子16により、内部導体と外部導体とが短絡されて接地されている。
【0024】
基本スタブ11には次の作用がある。図3に示すように、長さL1の基本スタブ11は周波数fpの3/4波長の伝送路である。なお、図3では図示の簡略化のために、給電線1Bと基本スタブ11および補正スタブ12とを平行2線で示している。周波数fpの3/4波長の基本スタブ11を給電線1Bに接続すると、周波数fpの高周波信号に対しては、給電線1Bの接続点Aから見た基本スタブ11のインピーダンスが無限大になり、送信機1Aからの周波数fpの高周波信号が基本スタブ11に流れることを防いでいる。つまり、周波数fpは給電線1Bのみを通過させる通過周波数である。一方、給電線1Bに流れる誘導電流は直流的な電流であるので、他端が接地されている基本スタブ11が誘導電流を大地に流し、誘導電流が送信機1Aに流れることを防いでいる。つまり、避雷針4に落雷があり、強電流が接地線5に流れたときに、給電線1Bに発生する誘導電流を基本スタブ11が大地に流して、この誘導電流が給電線1Bを通過することを防ぎ、送信機1Aを保護している。
【0025】
こうした基本スタブ11の長さL1は次のようにして得られる。接続点Aから分岐点Bまでの長さをL11とし、短絡されている他端から分岐点Bまでの長さをL12とする。長さL11の基本スタブ11は周波数fpの1/4波長であるので、長さL11は、
【数1】
によって得られる。なお、値vpは使用する伝送路の速度係数であり、伝送路中の伝播速度と光速との比である。一方、長さL12の基本スタブ11は周波数fpの1/2波長であるので、長さL12は、
【数2】
によって得られる。このように算出した長さL11とL12との和により基本スタブ11の長さL1を算出する。
【0026】
補正スタブ12は基本スタブ11に接続されている同軸ケーブルである。補正スタブ12の一端は、アダプタ14とプラグ15とにより、分岐点B(破線円で示す)で基本スタブ11に接続されている。このとき、補正スタブ12の一端は、波長λpの1/4だけ接続点Aから離れた長さL11の位置にあると共に基本スタブ11の短絡点から長さL12の位置にある。分岐点Bでは補正スタブ12の内部導体が基本スタブ11の内部導体に接続され、補正スタブ12の外部導体が基本スタブ11の外部導体に接続されて、補正スタブ12が基本スタブ11から分岐されている。補正スタブ12の他端は開放されている。
【0027】
補正スタブ12には次の作用がある。先に述べたように、設置柱3には空中線1C、2Cが併設されている。したがって、空中線2Cからの電波を空中線1Cが受信することで、給電線1Bに流れる周波数frの高周波信号は、送信機1Aに対しては不要信号になる。そこで、補正スタブ12のインピーダンスを利用して不要信号を除去し、周波数frの高周波信号が給電線1Bを通過することを防いでいる。このために、先の図3に示す接続点Aにおいて、周波数frに対してインピーダンスをゼロにすれば、給電線1Bでは周波数frの高周波信号が短絡状態になり、この信号の伝送を阻止することができる。そこで、長さがL2である補正スタブ12を利用して、阻止周波数である周波数frにおいて接続点Aから基本スタブ11側を見たインピーダンスがゼロになるようにしている。
【0028】
このために、補正スタブ12の長さは次のように設定されている。接続点Aから基本スタブ11の分岐点Bまでの周波数frにおける正規化された波長NW11は、
【数3】
により得られる。同様に、基本スタブ11の短絡点から分岐点Bまでの周波数frにおける正規化された波長NW12は、
【数4】
により得られる。
【0029】
この後、スミスチャートを用いて、図4(a)に示すように、分岐点Bにおける正規化波長NW11、NW12のそれぞれの正規化されたリアクタンスX11、X12を求める。分岐点Bにおいては、正規化リアクタンスX11と正規化リアクタンスX12とが並列に接続されているので、これらの合成正規化リアクタンスCX1は、
【数5】
により得られる。この合成正規化リアクタンスCX1の逆符号の正規化リアクタンスである、
【数6】
を、補正スタブ12により分岐点Bに提供すれば、接続点Aにおける整合がとれることになる。このために、図4(b)に示すように、スミスチャートを用いて、正規化リアクタンスX2を与える正規化波長NW2を読み取る。そして、補正スタブ12の長さL2を、
【数7】
により算出する。
【0030】
具体的には、送信機1Aの高周波信号の周波数fpが370MHzであり、送信機2Aの高周波信号の周波数frが150MHzであるとする。まず、基本スタブ11の短絡点から中途分岐部(分岐点B)までの、150MHzに対する正規化リアクタンスを求める。基本スタブ11の他端の短絡点から中途分岐部(分岐点B)までの波長はλp/2である。正規化リアクタンスを求めるために、図5(a)に示すように、信号源への波長を表すライン101Aのゼロ点を基点として、
0.5λ×(150/370)=0.2027λ
で算出される点と、チャートの中心とを直線102で結ぶ。この後、抵抗成分がゼロであるときのインピーダンスを表す円103と、直線102とが交差する点での、正規化リアクタンスの値j3.3を得る。なお、値λは通過周波数fpおよび阻止周波数frの中で高い方の周波数の波長であり、この実施の形態では波長λpである。
【0031】
次に、給電線1Bと基本スタブ11との接続部(接続点A)において、150MHzの高周波信号に対して、インピーダンスがゼロとなるための、接続部(接続点A)から中途分岐部(分岐点B)までの正規化リアクタンスを求める。基本スタブ11の接続部(接続点A)から中途分岐部(分岐点B)までの波長はλp/4である。正規化リアクタンスを求めるために、図5(b)に示すように、信号源への波長を表すライン101Aのゼロ点を基点として、
0.25λ×(150/370)=0.1014λ
で算出される点と、チャートの中心とを直線104で結ぶ。この後、抵抗成分がゼロであるときのインピーダンスを表す円103と、直線104とが交差する点での、正規化リアクタンスの値j0.74を得る。
【0032】
次に、150MHzに対する先に算出した正規化リアクタンスj3.3と正規化リアクタンスj0.74とが並列接続の関係になるので、このときの合成正規化リアクタンスの値は、
3.3×0.74/(3.3+0.74)=0.604
で算出される値から、j0.604になる。
【0033】
算出した合成正規化リアクタンスに対して逆符号の正規化リアクタンスは、図5(c)に示すように、−j0.6040である。そして、この逆符号の正規化リアクタンス−j0.6040を与える、先端が開放された補正スタブ12の回路長は、負荷側への正規化波長を表すライン101Bにより、
0.25−0.87=0.163
の値から、0.163λである。
【0034】
この後、正規化波長0.163λにより、補正スタブ12の長さを算出する。
【0035】
こうして算出された長さの補正スタブ12が分岐点Bで基本スタブ11に接続されると、基本スタブ11による長さL11と、基本スタブ11による長さL12によって生じる合成リアクタンスと同じ値で、逆符号のリアクタンスを補正スタブ12が与えるので、周波数frが150MHzである高周波信号に対しては、接続点Aにおいて基本スタブ11側のインピーダンスがゼロになる。
【0036】
次に、この実施の形態の動作について説明する。営配用無線については、送信機1Aからの、周波数がfpである高周波信号により、空中線1Cから電波が出力される。このとき、周波数fpの高周波信号に対して、避雷装置10の接続点Aから基本スタブ11側を見たインピーダンスが無限大であるので、避雷装置10が周波数fpの高周波信号に影響を与えることがない。
【0037】
一方、工務用無線については、送信機2Aからの、周波数がfrである高周波信号により、空中線2Cから電波が出力される。このとき、空中線1Cは空中線2Cからの電波を受信して、周波数がfrの高周波信号つまり不要信号を給電線1Bに流す。避雷装置10の接続点Aにおいては、補正スタブ12が分岐点Bで基本スタブ11に接続されているので、基本スタブ11側のインピーダンスがゼロである。これにより、避雷装置10は、周波数をfrの不要信号を基本スタブ11側に流し、この信号が送信機1Aに流れ込むことを防いでいる。
【0038】
また、避雷針4に落雷があると、接地線5により強電流が大地に流れるが、このとき、給電線1Bにも誘導電流が流れる。給電線1Bに流れる誘導電流は直流的な電流であるので、避雷装置10において他端が接地されている基本スタブ11が誘導電流を大地に流し、避雷装置10は、送信機1Aに誘導電流が流れることを防いでいる。
【0039】
このように、この実施の形態によれば、落雷による直流的な誘導電流に対しては短絡状態になり、周波数fpの高周波信号に対してはインピーダンスが無限大の状態になり、かつ、周波数frの不要信号に対してはインピーダンスがゼロになるので、避雷器の機能と、高周波の不要信号を減衰させるフィルタの機能とを併せ持たせることができる。また、この実施の形態によれば、分布定数線路である基本スタブ11と補正スタブ12とで避雷装置10、20を主に構成するので、金属素子を用いる従来のフィルタに比べて外部環境の影響を受け難くすることができる。また、この実施の形態によれば、避雷装置10、20の補正スタブ12の長さを調節することにより、任意の周波数の不要信号を減衰させることが可能である。さらに、この実施の形態によれば、送信機1Aの高周波信号の周波数をfpと、送信機2Aの高周波信号の周波数をfrとがfp>frの関係にある場合、波長はλp<λrであるので、最短の伝送路長で避雷装置10、20を構成することができ、装置の小型化が可能である。
【0040】
なお、高周波信号が、
fp=160MHz
fr=60MHz
である場合の、避雷装置10の周波数特性を図6に示す。図6に示すように、60MHzでの減衰量がほぼ30dbであり、160MHzでの減衰量がほぼゼロである。この実測データからも、この実施の形態による避雷装置10、20がフィルタとしての機能を持つことが示されている。
【0041】
また、この実施の形態では基本スタブ11が短絡されているが、この実施の形態による、基本スタブ11および補正スタブ12の長さの算出手法により、基本スタブ11と補正スタブ12の両方が短絡されている避雷装置10や、基本スタブ11が開放されていると共に補正スタブ12が短絡されている避雷装置10も可能である。
【0042】
(実施の形態2)
実施の形態1では、図7に示すように、送信機1Aの高周波信号の周波数をfpと、送信機2Aの高周波信号の周波数をfrとが、
fp>fr
の関係にあったが、この実施の形態では、
fp<fr
の関係にある場合について説明する。なお、この実施の形態では、先に説明した実施の形態1と同一もしくは同一と見なされる構成要素には、それと同じ参照符号を付けて、その説明を省略する。この実施の形態では、実施の形態1の基本スタブ11と補正スタブ12の代わりに、基本スタブ21と補正スタブ22とを備えている。
【0043】
基本スタブ21は、基本スタブ11と同様の同軸ケーブルであり、長さL5である。基本スタブ21は、周波数fpの3/4波長の伝送路であり、基本スタブ21の一端は接続点Eで給電線1Bに接続され、他端は開放されている。基本スタブ21には次の作用がある。他端が開放されている基本スタブ21により、周波数frの高周波信号に対して、給電線1Bの接続点Eから見た基本スタブ21のインピーダンスがゼロになる。つまり、避雷装置10は、空中線1Cが受信して給電線1Bを流れる、周波数frの高周波信号を基本スタブ21に流して、この高周波信号が給電線1Bを通過すること、つまり、この高周波信号が送信機1Aに流れることを防いでいる。
【0044】
こうした基本スタブ21の長さL5は次のようにして得られる。接続点Eから分岐点Fまでの長さをL51とし、開放されている他端から分岐点Fまでの長さをL52とする。長さL51の基本スタブ21は周波数frの1/2波長であるので、長さL51は、
【数8】
によって得られる。一方、長さL52の基本スタブ21は周波数frの1/4波長であるので、長さL52は、
【数9】
によって得られる。このように算出した長さL51とL52との和により基本スタブ21の長さL5を算出する。
【0045】
補正スタブ22は、実施の形態1の補正スタブ12と同様の同軸ケーブルである。補正スタブ22の一端は、分岐点Fで基本スタブ21に接続されている。このとき、補正スタブ22の一端は、波長λrの1/2だけ接続点Eから離れた長さL51の位置にあると共に基本スタブ21の短絡点から長さL52の位置にある。補正スタブ22の他端は実施の形態1の基本スタブ11の他端と同様に接地されている。これにより、補正スタブ22は、雷による誘導電流を大地に流し、誘導電流が送信機1Aに流れることを防いでいる。
【0046】
補正スタブ22には次の作用がある。先に述べたように、給電線1Bに流れる周波数frの高周波信号は送信機1Aに対しては不要信号であるが、通過周波数fpの高周波信号は必要な信号である。そこで、補正スタブ22のインピーダンスを利用して、先の図7に示す接続点Eにおいて、周波数fpに対してインピーダンスを無限大にすれば、給電線1Bでは周波数fpの高周波信号が影響を受けないことになる。そこで、長さがL6である補正スタブ22を利用して、周波数fpにおいて接続点Eから基本スタブ21側を見たインピーダンスが無限大になるようにしている。
【0047】
このために、補正スタブ22の長さは次のように設定されている。接続点Eから基本スタブ21の分岐点Fまでの周波数fpにおける正規化波長NW51は、
【数10】
により得られる。同様に、スタブ51の開放端から分岐点Fまでの周波数fpにおける正規化された波長NW52は、
【数11】
により得られる。
【0048】
この後、スミスチャートを用いて、図8(a)に示すように、分岐点Fにおける正規化波長NW51、NW52のそれぞれの正規化されたリアクタンスX51、X52を求める。分岐点Fにおいては、正規化リアクタンスX51と正規化リアクタンスX52とが並列に接続されているので、これらの合成正規化リアクタンスCX5は、
【数12】
により得られる。この合成正規化リアクタンスCX5の逆符号の正規化リアクタンスである、
【数13】
を、補正スタブ22により分岐点Fに提供すれば、接続点Eにおける整合がとれることになる。このために、図8(b)に示すように、スミスチャートを用いて、正規化リアクタンスX6を与える正規化波長NW6を読み取る。そして、補正スタブ22の長さL6を、
【数14】
により算出する。
【0049】
具体的には、送信機1Aの高周波信号の周波数fpが150MHzであり、送信機2Aの高周波信号の周波数frが370MHzであるとする。まず、基本スタブ21の開放点から中途分岐部(分岐点B)までの、150MHzに対する正規化リアクタンスを求める。基本スタブ21の他端の短絡点から中途分岐部(分岐点F)までの波長はλr/4である。リアクタンスを求めるために、図9(a)に示すように、信号源への波長を表すライン101Aの値2.5の点を基点として、
0.25λ×(150/370)=0.1014λ
で算出される位置だけ離れた点と、チャートの中心とを直線201で結ぶ。この後、抵抗成分がゼロであるときのインピーダンスを表す円103と、直線201とが交差する点での、正規化リアクタンスの値−j1.36を得る。なお、値λは波長λrである。
【0050】
次に、給電線1Bと基本スタブ21との接続部(接続点E)において、150MHzの高周波信号に対して、インピーダンスが無限大となるための、接続部(接続点E)から中途分岐部(分岐点F)までのリアクタンスを求める。基本スタブ21の接続部(接続点E)から中途分岐部(分岐点F)までの波長はλr/2である。図9(b)に示すように、信号源への正規化波長を表すライン101Aの値2.5の点を基点として、
0.5λ×(150/370)=0.2027λ
で算出される位置だけ離れた点と、チャートの中心とを直線202で結ぶ。この後、抵抗成分がゼロであるときのインピーダンスを表す円103と、直線202とが交差する点での、正規化リアクタンスの値−j0.305を得る。
【0051】
次に、150MHzに対する先に算出した正規化リアクタンス−j1.36と正規化リアクタンス−j0.305とが並列接続の関係になるので、このときの合成正規化リアクタンスの値は、
(−1.36)×(−0.305)/((−1.36)+(−0.305))
=−0.249
で算出される値から、−j0.249になる。
【0052】
算出した合成正規化リアクタンスに対して逆符号の正規化リアクタンスは、図9(c)に示すように、j0.249である。そして、この逆符号の正規化リアクタンスj0.249を与える、先端が短絡された補正スタブ22の回路長は、電源側への波長を表すライン101Aにより、0.038λである。
【0053】
この後、正規化波長0.038λにより、補正スタブ22の長さL6を算出する。
【0054】
こうして算出された長さの補正スタブ22が分岐点Fで基本スタブ21に接続されると、基本スタブ21による長さL51と、補正スタブ22による長さL52とによって生じる合成正規化リアクタンスと同じ値で、逆符号の正規化リアクタンスを補正スタブ22が与えるので、周波数fpの高周波信号に対しては、接続点Eにおいて基本スタブ21側のインピーダンスが無限大になる。
【0055】
この実施の形態により、実施の形態1と同様に避雷器の機能と、不要な高周波信号を減衰させるフィルタの機能とを併せ持たせることができる。また、この実施の形態によれば、送信機1Aの高周波信号の周波数をfpと、送信機2Aの高周波信号の周波数をfrとが、fp<frの関係にある場合、λp>λrであるので、最短の伝送路長で避雷装置10を構成することができ、装置の小型化が可能である。
【0056】
(実施の形態3)
この実施の形態を基にした送信設備を図10に示す。なお、この実施の形態では、先に説明した実施の形態1と同一もしくは同一と見なされる構成要素には、それと同じ参照符号を付けて、その説明を省略する。図10の送信設備では、実施の形態1または実施の形態2による複数の避雷装置10、20を、給電線1B、2Bに対してfrの1/4波長の間隔あるいはその奇数倍の間隔で直列に接続する。つまり、この実施の形態では、避雷装置が複数の避雷装置10、20によって構成される。
【0057】
このように、複数の避雷装置10、20を縦続接続することにより、減衰量を増やすことができる。また、異なる周波数の高周波信号を減衰するように避雷装置10、20を構成すれば、この実施の形態により、不要な複数の周波数の高周波信号を減衰することができる。
【0058】
(実施の形態4)
先に述べた実施の形態1〜実施の形態3では、補正スタブ12、22の長さL2、L6を求める際にスミスチャートを利用したが、この実施の形態では三角関数を利用して長さL2、L6を求める。
【0059】
一般的な伝送路であり例えば図11に示す伝送路では、インピーダンスは次のとおりである。
【数15】
Zs:入力端におけるインピーダンス
Z0:伝送路の特性インピーダンス
ZL:負荷インピーダンス
Γs:入力端から伝送路を見た反射係数
γ:伝播定数(γ=α+jβ:αは減衰定数、βは位相定数)
d:入力端から伝送路の終端までの線路長
以下では、伝送路が無損失である場合について説明する。伝送路が無損失である場合には伝播定数γにおいて減衰定数α=0になることから、無損失伝送路のインピーダンスは次のとおりである。
【数16】
この実施の形態では、先の実施の形態と同様に、使用するスタブは先端短絡と先端開放の2種類である。先端短絡の場合のインピーダンス(実際にはリアクタンス)は、
ZL=0
であるので、先の数16式にこの条件を代入すると、
【数17】
になる。ここで、
β=2π/λ
であるので、インピーダンスは、
【数18】
になる。
【0060】
また、先端開放の場合のインピーダンスは、
ZL=∞
であるので、先の数16式にこの条件を代入すると、
【数19】
になる。
【0061】
先の各実施の形態で述べたように設計基準周波数には、通過させる周波数fpと、通過を阻止する周波数frの2つがある。これらの中で高い方の周波数(波長λ)に着目し、図12に示すように、その3/4波長に相当する基本スタブを設ける。基本スタブの一端は接続点で給電線に接続され、他端である先端は短絡または開放されている。基本スタブの中途の位置に分岐点が設けられ、リアクタンスを補正するための補正スタブの一端が分岐点で基本スタブに対して並列に接続されている。補正スタブの他端である先端は短絡または開放されている。分岐点は1/4波長の位置または2/4波長の位置であり、周波数fpと周波数frとの関係で分岐点が選択される。
【0062】
次に、周波数fpと周波数frとの関係による具体例について説明する。
<具体例1>
具体例1は、通過周波数fpと阻止周波数frとが、
通過周波数fp>阻止周波数fr×1.5
の関係にある場合である。
【0063】
この具体例では、図13に示すように、基本スタブは通過周波数fpの3/4波長の長さとし、先端は短絡して接地する。そして、給電線の接続点から通過周波数fpの1/4波長の位置が分岐点である。この分岐点には、長さdの補正スタブが基本スタブに対して並列に接続されている。補正スタブの先端は開放する。
【0064】
分岐点では、この分岐点から給電線側の線路つまり基本スタブの1/4波長の部分については、阻止周波数frに関して先端短絡の線路のインピーダンスZ1が現れる。同様に、分岐点から短絡点側の線路つまり基本スタブの1/2波長の部分については、阻止周波数frに関して先端短絡の線路のインピーダンスZ2が現れる。
【数20】
インピーダンスZ1とインピーダンスZ2の並列合成インピーダンスは、
【数21】
であり、この並列合成インピーダンスと逆符号のインピーダンスを補正スタブで作成し、分岐点に並列に接続すればよい。つまり、逆符号のインピーダンスは、
【数22】
である。これより、
【数23】
となり、補正スタブの長さdを得ることができる。
<具体例2>
具体例2は、通過周波数fpと阻止周波数frとが、
通過周波数fp<阻止周波数fr×0.5
の関係にある場合である。
【0065】
この具体例では、図14に示すように、基本スタブは阻止周波数frの3/4波長の長さとし、先端は開放する。そして、給電線の接続点から阻止周波数frの1/2波長の位置が分岐点である。この分岐点には、長さdの補正スタブが基本スタブに対して並列に接続されている。補正スタブの先端は短絡して接地する。
【0066】
分岐点では、この分岐点から給電線側の線路つまり基本スタブの1/2波長の部分については、通過周波数fpに関して先端開放の線路のインピーダンスZ1が現れる。同様に、分岐点から開放点側の線路つまり基本スタブの1/4波長の部分については、通過周波数fpに関して先端開放の線路のインピーダンスZ2が現れる。
【数24】
インピーダンスZ1とインピーダンスZ2の並列合成インピーダンスは、先の数21式に示すとおりであり、この並列合成インピーダンスと逆符号のインピーダンスを補正スタブで作成し、分岐点に並列に接続すればよい。つまり、逆符号のインピーダンスは、
【数25】
であり、
【数26】
である。これより、
【数27】
となり、補正スタブの長さdを得ることができる。
<具体例3>
具体例3は、通過周波数fpと阻止周波数frとが、
通過周波数fp(=fr×1.5)>阻止周波数fr
の関係にある場合である。
【0067】
この具体例では、図15に示すように、基本スタブは通過周波数fpの3/4波長の長さとし、先端は短絡して接地する。そして、給電線の接続点から通過周波数fpの1/4波長の位置が分岐点である。この分岐点には、長さdの補正スタブが基本スタブに対して並列に接続されている。補正スタブの先端は短絡する。
【0068】
分岐点では、この分岐点から給電線側の線路つまり基本スタブの1/4波長の部分については、阻止周波数frに関して先端短絡の線路のインピーダンスZ1が現れる。同様に、分岐点から開放点側の線路つまり基本スタブの1/2波長の部分については、阻止周波数frに関して先端短絡の線路のインピーダンスZ2が現れる。
【数28】
インピーダンスZ1とインピーダンスZ2の並列合成インピーダンスは、先の数21式に示すとおりであり、この並列合成インピーダンスと逆符号のインピーダンスを補正スタブで作成し、分岐点に並列に接続すればよい。つまり、逆符号のインピーダンスは、
【数29】
であり、
【数30】
である。これより、
【数31】
となり、補正スタブの長さdを得ることができる。
【0069】
なお、具体例3では、図16に示すように、先端開放の基本スタブにより、使用するスタブ長を短くして、装置を構成してもよい。
<具体例4>
具体例4は、通過周波数fpと阻止周波数frとが、
通過周波数fp(=fr×0.5)<阻止周波数fr
の関係にある場合である。
【0070】
この具体例では、図17に示すように、基本スタブは阻止周波数frの3/4波長の長さとし、先端は開放する。そして、給電線の接続点から阻止周波数frの1/2波長の位置が分岐点である。この分岐点には、長さdの補正スタブが基本スタブに対して並列に接続されている。補正スタブの先端は短絡して接地する。
【0071】
分岐点では、この分岐点から給電線側の線路つまり基本スタブの1/2波長の部分については、通過周波数fpに関して先端開放の線路のインピーダンスZ1が現れる。同様に、分岐点から開放点側の線路つまり基本スタブの1/4波長の部分については、通過周波数fpに関して先端開放の線路のインピーダンスZ2が現れる。
【数32】
インピーダンスZ1とインピーダンスZ2の並列合成インピーダンスは、先の数21式に示すとおりであり、この並列合成インピーダンスと逆符号のインピーダンスを補正スタブで作成し、分岐点に並列に接続すればよい。なお、補正スタブの長さdは、
d=d1+(fpのλ/4)
である。そして、逆符号のインピーダンスは、
【数33】
であり、
【数34】
である。そして、
【数35】
である。これより、
【数36】
となり、補正スタブの長さdを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
この発明は、無線の送信設備や受信設備に限らず、各種の高周波信号を扱う設備や回路に利用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1A、2A 送信機
1B、2B 給電線
1C、2C 空中線
10、20 避雷装置
11、21 基本スタブ(第1の分布定数線路)
12、22 補正スタブ(第2の分布定数線路)
【技術分野】
【0001】
この発明は、落雷による影響から送信設備や受信設備を保護する避雷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
VHF(Very High Frequency)帯やUHF(Ultra High Frequency)帯の無線を利用する事業部門、例えば電力会社の配電部門や営業部門で使用される営配用無線の送信設備および受信設備のような無線設備では、見晴らしの良い山頂などに送信機および受信機などの無線機が設置されている。これにより、広範囲の通信が可能である。
【0003】
しかし、無線機が山頂などに設置されているために、雷の影響を受ける。つまり、無線機の空中線に金属柱を用いるので、落雷の可能性がある。雷の影響を防ぐために、通常、空中線の近傍に避雷針が設置されている。これにより、空中線に対する落雷を防ぐことができる。しかし、避雷針に落雷があると、雷による強い電流が流れ、空中線や空中線に接続されている給電線には誘導電流が流れる。この誘導電流は、給電線が接続されている無線設備に悪影響を及ぼす。この誘導電流の影響を軽減するために、給電線には各種の避雷器が設けられている(引用文献1〜引用文献6参照)。これらの避雷器は、同軸ケーブルの内部導体に対して、高周波信号の通過を阻止すると共に一端が接地されているコイルの他端を接続する構成である。雷による誘導電流は直流に近いので、コイルは内部導体に流れる誘導電流をアース側に流す。
【0004】
こうした方式の他にも、避雷器には、同軸ケーブルの内部導体と外部導体とを一端側で短絡して接地し、空中線近傍の給電線経路に他端を並列接続するものがある(引用文献7参照)。つまり、同軸ケーブルにより避雷器を形成する。この方式では、同軸ケーブルである高周波伝送路を高周波信号の波長の1/4の長さにし、その一端側の内部導体と外部導体とを電気的に短絡した場合に、短絡していない側の高周波伝送路端から見た、高周波信号の周波数におけるインピーダンスが無限大となり、直流抵抗が実質的にゼロである、という特性を利用している。給電線を直流的に接地状態にすることで、雷の誘導電流による被害が軽減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−230047号公報
【特許文献2】特開2003−208962号公報
【特許文献3】特開2003−209003号公報
【特許文献4】特開2003−217907号公報
【特許文献5】特開2003−229229号公報
【特許文献6】特開2006−296163号公報
【特許文献7】実願平6−16827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、例えば送信設備では、送信される高周波信号に対して高調波が発生するが、この高調波の強度は電波法で規制されている。一方、受信設備では、受信を目的としない高周波信号が空中線によって受信されるが、この信号が受信機に入力される前に、この信号を排除することが望ましい。このために、無線設備の空中線回路には、高調波の抑制や目的外の高周波信号を排除するために、つまり、不要な周波数の高周波信号(以下、「不要信号」という)を除去するために、フィルタが適所に挿入されている。
【0007】
しかし、先に述べたように、無線設備の空中線側には避雷器が設置されているので、不要信号を除去するフィルタを設けることは、設備のコストアップにつながる。また、不要な周波数を除去するフィルタは一般的にコイルやコンデンサなどの集中定数回路で構成される。しかし、山頂などに設置されている無線設備は季節による寒暖の影響を受けるので、コイルやコンデンサなどのような金属素子は温度によって伸縮する。これにより、集中定数回路に用いられている金属素子の電気的な特性が変化し、フィルタの特性も変化してしまう。つまり、気象等の外部環境による影響を受けやすい野外に設置されている空中線の近傍に対して、フィルタなどを設置することは適切ではない。
【0008】
この発明の目的は、前記の課題を解決し、フィルタと避雷器とを個別に設置することを不要にし、しかも、外部環境による影響を受けにくい避雷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、請求項1の発明は、空中線に接続されている給電線であり、かつ、所定の高周波信号に対して低い周波数の不要な高周波信号が流れる給電線に接続される避雷装置であって、一端が短絡されて接地されると共に他端が前記給電線に接続され、前記所定の高周波信号に対して接続点でのインピーダンスを無限大にするために、前記所定の高周波信号の波長を基に長さが設定された第1の分布定数線路と、前記第1の分布定数線路に分岐して接続されると共に前記不要な高周波信号に対して前記接続点でのインピーダンスをゼロにするために、長さが設定された第2の分布定数線路と、を備えることを特徴とする避雷装置である。
【0010】
請求項1の発明では、不要な高周波信号の周波数が所定の高周波信号に比べて低い場合を対象とし、所定の高周波信号の波長を基に長さが設定された第1の分布定数線路に対して、不要な高周波信号について接続点でのインピーダンスをゼロにするために、長さが調節された第2の分布定数線路が設けられている。
【0011】
請求項2の発明は、空中線に接続されている給電線であり、かつ、所定の高周波信号に対して高い周波数の不要な高周波信号が流れる給電線に接続される避雷装置であって、前記給電線に接続され、前記給電線に流れる不要な高周波信号に対して接続点でのインピーダンスをゼロにするために、前記不要な高周波信号の波長を基に長さが設定された第1の分布定数線路と、一端が短絡されて接地されると共に前記第1の分布定数線路に分岐して他端が接続され、前記所定の高周波信号に対して前記接続点でのインピーダンスを無限大にするために、長さが設定された第2の分布定数線路と、を備えることを特徴とする避雷装置である。
【0012】
請求項2の発明では、不要な高周波信号の周波数が所定の高周波信号に比べて高い場合を対象とし、不要な高周波信号の波長を基に長さが設定された第1の分布定数線路に対して、所定の高周波信号について接続点でのインピーダンスを無限大にするために、長さが設定された第2の分布定数線路が設けられている。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の複数の避雷装置を、給電線に対して所定の間隔をおいて直列に接続したことを特徴とする避雷装置である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、落雷等による直流的な電流に対しては、一端が短絡されている第1の分布定数線路により短絡状態になり、所定の高周波信号に対してはインピーダンスが無限大の状態になり、かつ、不要な高周波信号に対してはインピーダンスがゼロになる。これにより、避雷器の機能と、不要な高周波信号を減衰させるフィルタの機能とを併せ持たせることができる。また、この発明によれば、分布定数線路を用いて装置を構成するので、金属素子を用いる従来のフィルタに比べて外部環境の影響を受け難くすることができる。また、この発明によれば、第2の分布定数線路の長さを調節することにより、任意の周波数の信号を減衰させることが可能である。さらに、この発明によれば、所定の高周波信号の短い波長を基に第1の分布定数線路を形成するので、装置の小型化が可能である。
【0015】
請求項2の発明によれば、直流的な電流に対しては、先端が短絡されている第2の分布定数線路により短絡状態になり、所定の高周波信号に対してはインピーダンスが無限大の状態になり、かつ、不要な高周波信号に対してはインピーダンスがゼロになる。これにより、避雷器の機能と、不要な高周波信号を減衰させるフィルタの機能とを併せ持たせることができる。また、この発明によれば、請求項1の発明と同様に、外部環境の影響を受け難くすることができ、任意の周波数の信号を減衰させることが可能である。さらに、この発明によれば、不要な高周波信号の短い波長を基に第1の分布定数線路を形成するので、装置の小型化が可能である。
【0016】
請求項3の発明によれば、複数の避雷装置を縦続接続することにより、減衰量を増やすことができる。また、異なる周波数の高周波信号を減衰するように避雷装置を構成すれば、複数の周波数の高周波信号を減衰することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施の形態1による避雷装置と、この避雷装置が適用されている送信設備とを示す構成図である。
【図2】実施の形態1による避雷装置を示す構成図である。
【図3】実施の形態1による避雷装置を説明するための説明図である。
【図4】スミスチャートを用いてスタブの長さを求める基本的な方法を説明する図であり、図4(a)は短絡点から中途分岐部までのリアクタンスを求めるための説明図、図4(b)はスタブの長さを求めるための説明図である。
【図5】スミスチャートを用いてスタブの長さを求める方法を説明する図であり、図5(a)は短絡点から中途分岐部までのリアクタンスを求めるための説明図、図5(b)は給電線の接続部までのリアクタンスを求めるための説明図、図5(c)はスタブの長さを求めるための説明図である。
【図6】避雷装置の周波数特性を示す図である。
【図7】実施の形態2による避雷装置を説明する説明図である。
【図8】スミスチャートを用いてスタブの長さを求める基本的な方法を説明する図であり、図8(a)は短絡点から中途分岐部までのリアクタンスを求めるための説明図、図8(b)はスタブの長さを求めるための説明図である。
【図9】スミスチャートを用いてスタブの長さを求める方法を説明する図であり、図9(a)は短絡点から中途分岐部までのリアクタンスを求めるための説明図、図9(b)は給電線の接続部までのリアクタンスを求めるための説明図、図9(c)はスタブの長さを求めるための説明図である。
【図10】実施の形態3を基にした送信設備を示す構成図である。
【図11】実施の形態4を説明するための伝送路を示す図である。
【図12】基本スタブと補正スタブとを説明するための図である。
【図13】具体例1の基本スタブと補正スタブとを説明するための図である。
【図14】具体例2の基本スタブと補正スタブとを説明するための図である。
【図15】具体例3の基本スタブと補正スタブとを説明するための図である。
【図16】具体例3の基本スタブと補正スタブとの、他の例を説明するための図である。
【図17】具体例4の基本スタブと補正スタブとを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、この発明の各実施の形態について、図面を用いて詳しく説明する。各実施の形態では、送信設備に対してこの発明を適用した場合を例としている。
【0019】
(実施の形態1)
この実施の形態による避雷装置と、この避雷装置が適用されている送信設備とを図1に示す。図1の送信設備は送信機1A、2Aを備えている。送信機1A、2Aは、給電線1B、2Bによって空中線1C、2Cにそれぞれ接続されている。給電線1B、2Bは送信機1A、2Aからの高周波信号を流すための同軸ケーブル(分布定数線路)である。空中線1C、2Cは設置柱3に対して離れて設置されている。空中線1C、2Cは給電線1B、2Bを流れて来る高周波信号を、電波で空中に放出する。また、設置柱3には、空中線1C、2Cを落雷から保護するために避雷針4が設置され、避雷針4は接地線5によって接地されている。これにより、避雷針4に落雷があると、雷による強電流は接地線5を経て大地に流れる。
【0020】
送信機1Aは、例えば営配用無線に用いられるものであり、送信機1Aの高周波信号の周波数をfp(波長λp)とする。また、送信機2Aは、例えば工務用無線に用いられるものであり、送信機2Aの高周波信号の周波数をfr(波長λr)とする。そして、この実施の形態では、
fp>fr
である。
【0021】
こうした送信設備の給電線1B、2Bには、この実施の形態による避雷装置10、20がそれぞれ接続されている。避雷装置20は避雷装置10と同じであるので、以下では避雷装置10について説明し、避雷装置20の説明を省略する。
【0022】
避雷装置10は、図2に示すように、給電線1Bに対して並列に接続されている。避雷装置10は、基本スタブ11および補正スタブ12と、アダプタ13、14と、プラグ15と、接地端子16とを備えている。アダプタ13はT字状をした分岐用の部品である。アダプタ13の3つの端部にはジャックが設けられ、各ジャックにはプラグ15がそれぞれ取り付け可能である。これらのアダプタ13、14とプラグ15とにより、基本スタブ11および補正スタブ12が接続される。
【0023】
基本スタブ11は所定長の同軸ケーブルである。基本スタブ11の一端は、アダプタ13とプラグ15とにより、給電線1Bの途中の接続点A(破線円で示す)で、給電線1Bに接続されている。つまり、基本スタブ11の内部導体が給電線1Bの内部導体に接続され、基本スタブ11の外部導体が給電線1Bの外部導体に接続されている。これにより、基本スタブ11が給電線1Bに対して接続点Aで並列に接続されている。基本スタブ11の他端は、接地端子16により、内部導体と外部導体とが短絡されて接地されている。
【0024】
基本スタブ11には次の作用がある。図3に示すように、長さL1の基本スタブ11は周波数fpの3/4波長の伝送路である。なお、図3では図示の簡略化のために、給電線1Bと基本スタブ11および補正スタブ12とを平行2線で示している。周波数fpの3/4波長の基本スタブ11を給電線1Bに接続すると、周波数fpの高周波信号に対しては、給電線1Bの接続点Aから見た基本スタブ11のインピーダンスが無限大になり、送信機1Aからの周波数fpの高周波信号が基本スタブ11に流れることを防いでいる。つまり、周波数fpは給電線1Bのみを通過させる通過周波数である。一方、給電線1Bに流れる誘導電流は直流的な電流であるので、他端が接地されている基本スタブ11が誘導電流を大地に流し、誘導電流が送信機1Aに流れることを防いでいる。つまり、避雷針4に落雷があり、強電流が接地線5に流れたときに、給電線1Bに発生する誘導電流を基本スタブ11が大地に流して、この誘導電流が給電線1Bを通過することを防ぎ、送信機1Aを保護している。
【0025】
こうした基本スタブ11の長さL1は次のようにして得られる。接続点Aから分岐点Bまでの長さをL11とし、短絡されている他端から分岐点Bまでの長さをL12とする。長さL11の基本スタブ11は周波数fpの1/4波長であるので、長さL11は、
【数1】
によって得られる。なお、値vpは使用する伝送路の速度係数であり、伝送路中の伝播速度と光速との比である。一方、長さL12の基本スタブ11は周波数fpの1/2波長であるので、長さL12は、
【数2】
によって得られる。このように算出した長さL11とL12との和により基本スタブ11の長さL1を算出する。
【0026】
補正スタブ12は基本スタブ11に接続されている同軸ケーブルである。補正スタブ12の一端は、アダプタ14とプラグ15とにより、分岐点B(破線円で示す)で基本スタブ11に接続されている。このとき、補正スタブ12の一端は、波長λpの1/4だけ接続点Aから離れた長さL11の位置にあると共に基本スタブ11の短絡点から長さL12の位置にある。分岐点Bでは補正スタブ12の内部導体が基本スタブ11の内部導体に接続され、補正スタブ12の外部導体が基本スタブ11の外部導体に接続されて、補正スタブ12が基本スタブ11から分岐されている。補正スタブ12の他端は開放されている。
【0027】
補正スタブ12には次の作用がある。先に述べたように、設置柱3には空中線1C、2Cが併設されている。したがって、空中線2Cからの電波を空中線1Cが受信することで、給電線1Bに流れる周波数frの高周波信号は、送信機1Aに対しては不要信号になる。そこで、補正スタブ12のインピーダンスを利用して不要信号を除去し、周波数frの高周波信号が給電線1Bを通過することを防いでいる。このために、先の図3に示す接続点Aにおいて、周波数frに対してインピーダンスをゼロにすれば、給電線1Bでは周波数frの高周波信号が短絡状態になり、この信号の伝送を阻止することができる。そこで、長さがL2である補正スタブ12を利用して、阻止周波数である周波数frにおいて接続点Aから基本スタブ11側を見たインピーダンスがゼロになるようにしている。
【0028】
このために、補正スタブ12の長さは次のように設定されている。接続点Aから基本スタブ11の分岐点Bまでの周波数frにおける正規化された波長NW11は、
【数3】
により得られる。同様に、基本スタブ11の短絡点から分岐点Bまでの周波数frにおける正規化された波長NW12は、
【数4】
により得られる。
【0029】
この後、スミスチャートを用いて、図4(a)に示すように、分岐点Bにおける正規化波長NW11、NW12のそれぞれの正規化されたリアクタンスX11、X12を求める。分岐点Bにおいては、正規化リアクタンスX11と正規化リアクタンスX12とが並列に接続されているので、これらの合成正規化リアクタンスCX1は、
【数5】
により得られる。この合成正規化リアクタンスCX1の逆符号の正規化リアクタンスである、
【数6】
を、補正スタブ12により分岐点Bに提供すれば、接続点Aにおける整合がとれることになる。このために、図4(b)に示すように、スミスチャートを用いて、正規化リアクタンスX2を与える正規化波長NW2を読み取る。そして、補正スタブ12の長さL2を、
【数7】
により算出する。
【0030】
具体的には、送信機1Aの高周波信号の周波数fpが370MHzであり、送信機2Aの高周波信号の周波数frが150MHzであるとする。まず、基本スタブ11の短絡点から中途分岐部(分岐点B)までの、150MHzに対する正規化リアクタンスを求める。基本スタブ11の他端の短絡点から中途分岐部(分岐点B)までの波長はλp/2である。正規化リアクタンスを求めるために、図5(a)に示すように、信号源への波長を表すライン101Aのゼロ点を基点として、
0.5λ×(150/370)=0.2027λ
で算出される点と、チャートの中心とを直線102で結ぶ。この後、抵抗成分がゼロであるときのインピーダンスを表す円103と、直線102とが交差する点での、正規化リアクタンスの値j3.3を得る。なお、値λは通過周波数fpおよび阻止周波数frの中で高い方の周波数の波長であり、この実施の形態では波長λpである。
【0031】
次に、給電線1Bと基本スタブ11との接続部(接続点A)において、150MHzの高周波信号に対して、インピーダンスがゼロとなるための、接続部(接続点A)から中途分岐部(分岐点B)までの正規化リアクタンスを求める。基本スタブ11の接続部(接続点A)から中途分岐部(分岐点B)までの波長はλp/4である。正規化リアクタンスを求めるために、図5(b)に示すように、信号源への波長を表すライン101Aのゼロ点を基点として、
0.25λ×(150/370)=0.1014λ
で算出される点と、チャートの中心とを直線104で結ぶ。この後、抵抗成分がゼロであるときのインピーダンスを表す円103と、直線104とが交差する点での、正規化リアクタンスの値j0.74を得る。
【0032】
次に、150MHzに対する先に算出した正規化リアクタンスj3.3と正規化リアクタンスj0.74とが並列接続の関係になるので、このときの合成正規化リアクタンスの値は、
3.3×0.74/(3.3+0.74)=0.604
で算出される値から、j0.604になる。
【0033】
算出した合成正規化リアクタンスに対して逆符号の正規化リアクタンスは、図5(c)に示すように、−j0.6040である。そして、この逆符号の正規化リアクタンス−j0.6040を与える、先端が開放された補正スタブ12の回路長は、負荷側への正規化波長を表すライン101Bにより、
0.25−0.87=0.163
の値から、0.163λである。
【0034】
この後、正規化波長0.163λにより、補正スタブ12の長さを算出する。
【0035】
こうして算出された長さの補正スタブ12が分岐点Bで基本スタブ11に接続されると、基本スタブ11による長さL11と、基本スタブ11による長さL12によって生じる合成リアクタンスと同じ値で、逆符号のリアクタンスを補正スタブ12が与えるので、周波数frが150MHzである高周波信号に対しては、接続点Aにおいて基本スタブ11側のインピーダンスがゼロになる。
【0036】
次に、この実施の形態の動作について説明する。営配用無線については、送信機1Aからの、周波数がfpである高周波信号により、空中線1Cから電波が出力される。このとき、周波数fpの高周波信号に対して、避雷装置10の接続点Aから基本スタブ11側を見たインピーダンスが無限大であるので、避雷装置10が周波数fpの高周波信号に影響を与えることがない。
【0037】
一方、工務用無線については、送信機2Aからの、周波数がfrである高周波信号により、空中線2Cから電波が出力される。このとき、空中線1Cは空中線2Cからの電波を受信して、周波数がfrの高周波信号つまり不要信号を給電線1Bに流す。避雷装置10の接続点Aにおいては、補正スタブ12が分岐点Bで基本スタブ11に接続されているので、基本スタブ11側のインピーダンスがゼロである。これにより、避雷装置10は、周波数をfrの不要信号を基本スタブ11側に流し、この信号が送信機1Aに流れ込むことを防いでいる。
【0038】
また、避雷針4に落雷があると、接地線5により強電流が大地に流れるが、このとき、給電線1Bにも誘導電流が流れる。給電線1Bに流れる誘導電流は直流的な電流であるので、避雷装置10において他端が接地されている基本スタブ11が誘導電流を大地に流し、避雷装置10は、送信機1Aに誘導電流が流れることを防いでいる。
【0039】
このように、この実施の形態によれば、落雷による直流的な誘導電流に対しては短絡状態になり、周波数fpの高周波信号に対してはインピーダンスが無限大の状態になり、かつ、周波数frの不要信号に対してはインピーダンスがゼロになるので、避雷器の機能と、高周波の不要信号を減衰させるフィルタの機能とを併せ持たせることができる。また、この実施の形態によれば、分布定数線路である基本スタブ11と補正スタブ12とで避雷装置10、20を主に構成するので、金属素子を用いる従来のフィルタに比べて外部環境の影響を受け難くすることができる。また、この実施の形態によれば、避雷装置10、20の補正スタブ12の長さを調節することにより、任意の周波数の不要信号を減衰させることが可能である。さらに、この実施の形態によれば、送信機1Aの高周波信号の周波数をfpと、送信機2Aの高周波信号の周波数をfrとがfp>frの関係にある場合、波長はλp<λrであるので、最短の伝送路長で避雷装置10、20を構成することができ、装置の小型化が可能である。
【0040】
なお、高周波信号が、
fp=160MHz
fr=60MHz
である場合の、避雷装置10の周波数特性を図6に示す。図6に示すように、60MHzでの減衰量がほぼ30dbであり、160MHzでの減衰量がほぼゼロである。この実測データからも、この実施の形態による避雷装置10、20がフィルタとしての機能を持つことが示されている。
【0041】
また、この実施の形態では基本スタブ11が短絡されているが、この実施の形態による、基本スタブ11および補正スタブ12の長さの算出手法により、基本スタブ11と補正スタブ12の両方が短絡されている避雷装置10や、基本スタブ11が開放されていると共に補正スタブ12が短絡されている避雷装置10も可能である。
【0042】
(実施の形態2)
実施の形態1では、図7に示すように、送信機1Aの高周波信号の周波数をfpと、送信機2Aの高周波信号の周波数をfrとが、
fp>fr
の関係にあったが、この実施の形態では、
fp<fr
の関係にある場合について説明する。なお、この実施の形態では、先に説明した実施の形態1と同一もしくは同一と見なされる構成要素には、それと同じ参照符号を付けて、その説明を省略する。この実施の形態では、実施の形態1の基本スタブ11と補正スタブ12の代わりに、基本スタブ21と補正スタブ22とを備えている。
【0043】
基本スタブ21は、基本スタブ11と同様の同軸ケーブルであり、長さL5である。基本スタブ21は、周波数fpの3/4波長の伝送路であり、基本スタブ21の一端は接続点Eで給電線1Bに接続され、他端は開放されている。基本スタブ21には次の作用がある。他端が開放されている基本スタブ21により、周波数frの高周波信号に対して、給電線1Bの接続点Eから見た基本スタブ21のインピーダンスがゼロになる。つまり、避雷装置10は、空中線1Cが受信して給電線1Bを流れる、周波数frの高周波信号を基本スタブ21に流して、この高周波信号が給電線1Bを通過すること、つまり、この高周波信号が送信機1Aに流れることを防いでいる。
【0044】
こうした基本スタブ21の長さL5は次のようにして得られる。接続点Eから分岐点Fまでの長さをL51とし、開放されている他端から分岐点Fまでの長さをL52とする。長さL51の基本スタブ21は周波数frの1/2波長であるので、長さL51は、
【数8】
によって得られる。一方、長さL52の基本スタブ21は周波数frの1/4波長であるので、長さL52は、
【数9】
によって得られる。このように算出した長さL51とL52との和により基本スタブ21の長さL5を算出する。
【0045】
補正スタブ22は、実施の形態1の補正スタブ12と同様の同軸ケーブルである。補正スタブ22の一端は、分岐点Fで基本スタブ21に接続されている。このとき、補正スタブ22の一端は、波長λrの1/2だけ接続点Eから離れた長さL51の位置にあると共に基本スタブ21の短絡点から長さL52の位置にある。補正スタブ22の他端は実施の形態1の基本スタブ11の他端と同様に接地されている。これにより、補正スタブ22は、雷による誘導電流を大地に流し、誘導電流が送信機1Aに流れることを防いでいる。
【0046】
補正スタブ22には次の作用がある。先に述べたように、給電線1Bに流れる周波数frの高周波信号は送信機1Aに対しては不要信号であるが、通過周波数fpの高周波信号は必要な信号である。そこで、補正スタブ22のインピーダンスを利用して、先の図7に示す接続点Eにおいて、周波数fpに対してインピーダンスを無限大にすれば、給電線1Bでは周波数fpの高周波信号が影響を受けないことになる。そこで、長さがL6である補正スタブ22を利用して、周波数fpにおいて接続点Eから基本スタブ21側を見たインピーダンスが無限大になるようにしている。
【0047】
このために、補正スタブ22の長さは次のように設定されている。接続点Eから基本スタブ21の分岐点Fまでの周波数fpにおける正規化波長NW51は、
【数10】
により得られる。同様に、スタブ51の開放端から分岐点Fまでの周波数fpにおける正規化された波長NW52は、
【数11】
により得られる。
【0048】
この後、スミスチャートを用いて、図8(a)に示すように、分岐点Fにおける正規化波長NW51、NW52のそれぞれの正規化されたリアクタンスX51、X52を求める。分岐点Fにおいては、正規化リアクタンスX51と正規化リアクタンスX52とが並列に接続されているので、これらの合成正規化リアクタンスCX5は、
【数12】
により得られる。この合成正規化リアクタンスCX5の逆符号の正規化リアクタンスである、
【数13】
を、補正スタブ22により分岐点Fに提供すれば、接続点Eにおける整合がとれることになる。このために、図8(b)に示すように、スミスチャートを用いて、正規化リアクタンスX6を与える正規化波長NW6を読み取る。そして、補正スタブ22の長さL6を、
【数14】
により算出する。
【0049】
具体的には、送信機1Aの高周波信号の周波数fpが150MHzであり、送信機2Aの高周波信号の周波数frが370MHzであるとする。まず、基本スタブ21の開放点から中途分岐部(分岐点B)までの、150MHzに対する正規化リアクタンスを求める。基本スタブ21の他端の短絡点から中途分岐部(分岐点F)までの波長はλr/4である。リアクタンスを求めるために、図9(a)に示すように、信号源への波長を表すライン101Aの値2.5の点を基点として、
0.25λ×(150/370)=0.1014λ
で算出される位置だけ離れた点と、チャートの中心とを直線201で結ぶ。この後、抵抗成分がゼロであるときのインピーダンスを表す円103と、直線201とが交差する点での、正規化リアクタンスの値−j1.36を得る。なお、値λは波長λrである。
【0050】
次に、給電線1Bと基本スタブ21との接続部(接続点E)において、150MHzの高周波信号に対して、インピーダンスが無限大となるための、接続部(接続点E)から中途分岐部(分岐点F)までのリアクタンスを求める。基本スタブ21の接続部(接続点E)から中途分岐部(分岐点F)までの波長はλr/2である。図9(b)に示すように、信号源への正規化波長を表すライン101Aの値2.5の点を基点として、
0.5λ×(150/370)=0.2027λ
で算出される位置だけ離れた点と、チャートの中心とを直線202で結ぶ。この後、抵抗成分がゼロであるときのインピーダンスを表す円103と、直線202とが交差する点での、正規化リアクタンスの値−j0.305を得る。
【0051】
次に、150MHzに対する先に算出した正規化リアクタンス−j1.36と正規化リアクタンス−j0.305とが並列接続の関係になるので、このときの合成正規化リアクタンスの値は、
(−1.36)×(−0.305)/((−1.36)+(−0.305))
=−0.249
で算出される値から、−j0.249になる。
【0052】
算出した合成正規化リアクタンスに対して逆符号の正規化リアクタンスは、図9(c)に示すように、j0.249である。そして、この逆符号の正規化リアクタンスj0.249を与える、先端が短絡された補正スタブ22の回路長は、電源側への波長を表すライン101Aにより、0.038λである。
【0053】
この後、正規化波長0.038λにより、補正スタブ22の長さL6を算出する。
【0054】
こうして算出された長さの補正スタブ22が分岐点Fで基本スタブ21に接続されると、基本スタブ21による長さL51と、補正スタブ22による長さL52とによって生じる合成正規化リアクタンスと同じ値で、逆符号の正規化リアクタンスを補正スタブ22が与えるので、周波数fpの高周波信号に対しては、接続点Eにおいて基本スタブ21側のインピーダンスが無限大になる。
【0055】
この実施の形態により、実施の形態1と同様に避雷器の機能と、不要な高周波信号を減衰させるフィルタの機能とを併せ持たせることができる。また、この実施の形態によれば、送信機1Aの高周波信号の周波数をfpと、送信機2Aの高周波信号の周波数をfrとが、fp<frの関係にある場合、λp>λrであるので、最短の伝送路長で避雷装置10を構成することができ、装置の小型化が可能である。
【0056】
(実施の形態3)
この実施の形態を基にした送信設備を図10に示す。なお、この実施の形態では、先に説明した実施の形態1と同一もしくは同一と見なされる構成要素には、それと同じ参照符号を付けて、その説明を省略する。図10の送信設備では、実施の形態1または実施の形態2による複数の避雷装置10、20を、給電線1B、2Bに対してfrの1/4波長の間隔あるいはその奇数倍の間隔で直列に接続する。つまり、この実施の形態では、避雷装置が複数の避雷装置10、20によって構成される。
【0057】
このように、複数の避雷装置10、20を縦続接続することにより、減衰量を増やすことができる。また、異なる周波数の高周波信号を減衰するように避雷装置10、20を構成すれば、この実施の形態により、不要な複数の周波数の高周波信号を減衰することができる。
【0058】
(実施の形態4)
先に述べた実施の形態1〜実施の形態3では、補正スタブ12、22の長さL2、L6を求める際にスミスチャートを利用したが、この実施の形態では三角関数を利用して長さL2、L6を求める。
【0059】
一般的な伝送路であり例えば図11に示す伝送路では、インピーダンスは次のとおりである。
【数15】
Zs:入力端におけるインピーダンス
Z0:伝送路の特性インピーダンス
ZL:負荷インピーダンス
Γs:入力端から伝送路を見た反射係数
γ:伝播定数(γ=α+jβ:αは減衰定数、βは位相定数)
d:入力端から伝送路の終端までの線路長
以下では、伝送路が無損失である場合について説明する。伝送路が無損失である場合には伝播定数γにおいて減衰定数α=0になることから、無損失伝送路のインピーダンスは次のとおりである。
【数16】
この実施の形態では、先の実施の形態と同様に、使用するスタブは先端短絡と先端開放の2種類である。先端短絡の場合のインピーダンス(実際にはリアクタンス)は、
ZL=0
であるので、先の数16式にこの条件を代入すると、
【数17】
になる。ここで、
β=2π/λ
であるので、インピーダンスは、
【数18】
になる。
【0060】
また、先端開放の場合のインピーダンスは、
ZL=∞
であるので、先の数16式にこの条件を代入すると、
【数19】
になる。
【0061】
先の各実施の形態で述べたように設計基準周波数には、通過させる周波数fpと、通過を阻止する周波数frの2つがある。これらの中で高い方の周波数(波長λ)に着目し、図12に示すように、その3/4波長に相当する基本スタブを設ける。基本スタブの一端は接続点で給電線に接続され、他端である先端は短絡または開放されている。基本スタブの中途の位置に分岐点が設けられ、リアクタンスを補正するための補正スタブの一端が分岐点で基本スタブに対して並列に接続されている。補正スタブの他端である先端は短絡または開放されている。分岐点は1/4波長の位置または2/4波長の位置であり、周波数fpと周波数frとの関係で分岐点が選択される。
【0062】
次に、周波数fpと周波数frとの関係による具体例について説明する。
<具体例1>
具体例1は、通過周波数fpと阻止周波数frとが、
通過周波数fp>阻止周波数fr×1.5
の関係にある場合である。
【0063】
この具体例では、図13に示すように、基本スタブは通過周波数fpの3/4波長の長さとし、先端は短絡して接地する。そして、給電線の接続点から通過周波数fpの1/4波長の位置が分岐点である。この分岐点には、長さdの補正スタブが基本スタブに対して並列に接続されている。補正スタブの先端は開放する。
【0064】
分岐点では、この分岐点から給電線側の線路つまり基本スタブの1/4波長の部分については、阻止周波数frに関して先端短絡の線路のインピーダンスZ1が現れる。同様に、分岐点から短絡点側の線路つまり基本スタブの1/2波長の部分については、阻止周波数frに関して先端短絡の線路のインピーダンスZ2が現れる。
【数20】
インピーダンスZ1とインピーダンスZ2の並列合成インピーダンスは、
【数21】
であり、この並列合成インピーダンスと逆符号のインピーダンスを補正スタブで作成し、分岐点に並列に接続すればよい。つまり、逆符号のインピーダンスは、
【数22】
である。これより、
【数23】
となり、補正スタブの長さdを得ることができる。
<具体例2>
具体例2は、通過周波数fpと阻止周波数frとが、
通過周波数fp<阻止周波数fr×0.5
の関係にある場合である。
【0065】
この具体例では、図14に示すように、基本スタブは阻止周波数frの3/4波長の長さとし、先端は開放する。そして、給電線の接続点から阻止周波数frの1/2波長の位置が分岐点である。この分岐点には、長さdの補正スタブが基本スタブに対して並列に接続されている。補正スタブの先端は短絡して接地する。
【0066】
分岐点では、この分岐点から給電線側の線路つまり基本スタブの1/2波長の部分については、通過周波数fpに関して先端開放の線路のインピーダンスZ1が現れる。同様に、分岐点から開放点側の線路つまり基本スタブの1/4波長の部分については、通過周波数fpに関して先端開放の線路のインピーダンスZ2が現れる。
【数24】
インピーダンスZ1とインピーダンスZ2の並列合成インピーダンスは、先の数21式に示すとおりであり、この並列合成インピーダンスと逆符号のインピーダンスを補正スタブで作成し、分岐点に並列に接続すればよい。つまり、逆符号のインピーダンスは、
【数25】
であり、
【数26】
である。これより、
【数27】
となり、補正スタブの長さdを得ることができる。
<具体例3>
具体例3は、通過周波数fpと阻止周波数frとが、
通過周波数fp(=fr×1.5)>阻止周波数fr
の関係にある場合である。
【0067】
この具体例では、図15に示すように、基本スタブは通過周波数fpの3/4波長の長さとし、先端は短絡して接地する。そして、給電線の接続点から通過周波数fpの1/4波長の位置が分岐点である。この分岐点には、長さdの補正スタブが基本スタブに対して並列に接続されている。補正スタブの先端は短絡する。
【0068】
分岐点では、この分岐点から給電線側の線路つまり基本スタブの1/4波長の部分については、阻止周波数frに関して先端短絡の線路のインピーダンスZ1が現れる。同様に、分岐点から開放点側の線路つまり基本スタブの1/2波長の部分については、阻止周波数frに関して先端短絡の線路のインピーダンスZ2が現れる。
【数28】
インピーダンスZ1とインピーダンスZ2の並列合成インピーダンスは、先の数21式に示すとおりであり、この並列合成インピーダンスと逆符号のインピーダンスを補正スタブで作成し、分岐点に並列に接続すればよい。つまり、逆符号のインピーダンスは、
【数29】
であり、
【数30】
である。これより、
【数31】
となり、補正スタブの長さdを得ることができる。
【0069】
なお、具体例3では、図16に示すように、先端開放の基本スタブにより、使用するスタブ長を短くして、装置を構成してもよい。
<具体例4>
具体例4は、通過周波数fpと阻止周波数frとが、
通過周波数fp(=fr×0.5)<阻止周波数fr
の関係にある場合である。
【0070】
この具体例では、図17に示すように、基本スタブは阻止周波数frの3/4波長の長さとし、先端は開放する。そして、給電線の接続点から阻止周波数frの1/2波長の位置が分岐点である。この分岐点には、長さdの補正スタブが基本スタブに対して並列に接続されている。補正スタブの先端は短絡して接地する。
【0071】
分岐点では、この分岐点から給電線側の線路つまり基本スタブの1/2波長の部分については、通過周波数fpに関して先端開放の線路のインピーダンスZ1が現れる。同様に、分岐点から開放点側の線路つまり基本スタブの1/4波長の部分については、通過周波数fpに関して先端開放の線路のインピーダンスZ2が現れる。
【数32】
インピーダンスZ1とインピーダンスZ2の並列合成インピーダンスは、先の数21式に示すとおりであり、この並列合成インピーダンスと逆符号のインピーダンスを補正スタブで作成し、分岐点に並列に接続すればよい。なお、補正スタブの長さdは、
d=d1+(fpのλ/4)
である。そして、逆符号のインピーダンスは、
【数33】
であり、
【数34】
である。そして、
【数35】
である。これより、
【数36】
となり、補正スタブの長さdを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
この発明は、無線の送信設備や受信設備に限らず、各種の高周波信号を扱う設備や回路に利用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1A、2A 送信機
1B、2B 給電線
1C、2C 空中線
10、20 避雷装置
11、21 基本スタブ(第1の分布定数線路)
12、22 補正スタブ(第2の分布定数線路)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空中線に接続されている給電線であり、かつ、所定の高周波信号に対して低い周波数の不要な高周波信号が流れる給電線に接続される避雷装置であって、
一端が短絡されて接地されると共に他端が前記給電線に接続され、前記所定の高周波信号に対して接続点でのインピーダンスを無限大にするために、前記所定の高周波信号の波長を基に長さが設定された第1の分布定数線路と、
前記第1の分布定数線路に分岐して接続されると共に前記不要な高周波信号に対して前記接続点でのインピーダンスをゼロにするために、長さが設定された第2の分布定数線路と、
を備えることを特徴とする避雷装置。
【請求項2】
空中線に接続されている給電線であり、かつ、所定の高周波信号に対して高い周波数の不要な高周波信号が流れる給電線に接続される避雷装置であって、
前記給電線に接続され、前記給電線に流れる不要な高周波信号に対して接続点でのインピーダンスをゼロにするために、前記不要な高周波信号の波長を基に長さが設定された第1の分布定数線路と、
一端が短絡されて接地されると共に前記第1の分布定数線路に分岐して他端が接続され、前記所定の高周波信号に対して前記接続点でのインピーダンスを無限大にするために、長さが設定された第2の分布定数線路と、
を備えることを特徴とする避雷装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の複数の避雷装置を、給電線に対して所定の間隔をおいて直列に接続したことを特徴とする避雷装置。
【請求項1】
空中線に接続されている給電線であり、かつ、所定の高周波信号に対して低い周波数の不要な高周波信号が流れる給電線に接続される避雷装置であって、
一端が短絡されて接地されると共に他端が前記給電線に接続され、前記所定の高周波信号に対して接続点でのインピーダンスを無限大にするために、前記所定の高周波信号の波長を基に長さが設定された第1の分布定数線路と、
前記第1の分布定数線路に分岐して接続されると共に前記不要な高周波信号に対して前記接続点でのインピーダンスをゼロにするために、長さが設定された第2の分布定数線路と、
を備えることを特徴とする避雷装置。
【請求項2】
空中線に接続されている給電線であり、かつ、所定の高周波信号に対して高い周波数の不要な高周波信号が流れる給電線に接続される避雷装置であって、
前記給電線に接続され、前記給電線に流れる不要な高周波信号に対して接続点でのインピーダンスをゼロにするために、前記不要な高周波信号の波長を基に長さが設定された第1の分布定数線路と、
一端が短絡されて接地されると共に前記第1の分布定数線路に分岐して他端が接続され、前記所定の高周波信号に対して前記接続点でのインピーダンスを無限大にするために、長さが設定された第2の分布定数線路と、
を備えることを特徴とする避雷装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の複数の避雷装置を、給電線に対して所定の間隔をおいて直列に接続したことを特徴とする避雷装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−142414(P2011−142414A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−801(P2010−801)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】
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