説明

部分中和されたクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマー

0.5〜10重量パーセントの塩素および0.25〜5重量パーセントの硫黄を含有する部分中和されたクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーは、プロピレン/エチレンコポリマー、エチレン/プロピレン/ジエンコポリマー、イソブチレン/ジエンコポリマー、イソブチレンホモポリマー、水素化スチレン/ブタジエンブロックコポリマ−および水素化スチレン/イソプレンブロックコポリマ−からなる群から選択されるポリオレフィンエラストマーベース樹脂から製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも部分中和されたクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーに、より具体的には、複数の−SO3M基(ここで、Mは陽イオンである)を有するクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーに関する。
【背景技術】
【0002】
クロロスルホン化ポリエチレンエラストマーおよびクロロスルホン化エチレンコポリマーエラストマーは、ワイヤおよびケーブル外被、型製品、自動車ホース、動力伝達ベルト、屋根ふき部材ならびにタンクライナーなどの用途に使用するための非常に良好な弾性材料であることが分かった。これらの材料は、耐油性、熱安定性、耐オゾン性および耐化学薬品性のそれらのバランスについて注目されている。
【0003】
歴史的に、エチレンホモポリマーおよびコポリマーをはじめとする、多種多様なポリオレフィンポリマーは、クロロスルホン化製品の製造用の出発ポリマー(すなわち、「ベースポリマー」または「ベース樹脂」)として利用されてきた。クロロスルホン化エラストマーの製造に用いられるベースポリマーの大部分はこれまで、ポリエチレンタイプ、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)および高密度ポリエチレン(HDPE)であった。これらのエラストマーを製造するために用いられるエチレンホモポリマーおよびコポリマーのほとんどは、高圧フリーラジカル触媒法によってかまたはZiegler−NattaもしくはPhillipsタイプ触媒を使用する低圧法によって重合される。
【0004】
米国特許第5,668,220号明細書は、20〜50重量パーセントの塩素および0.8〜2.5重量パーセントの硫黄を含有する塩素化およびクロロスルホン化エラストマーを開示している。これらのエラストマーは、シングルサイト、すなわち、メタロセン触媒の存在下に重合されたエチレン/アルファ−オレフィンコポリマーから製造される。かかるエチレンコポリマーは、同じ分子量分布を有するがZiegler−Natta触媒を使用して製造されたポリマーと比較したときに改善された押出または流動特性を有する。
【0005】
特開平2[1990]−18681号公報は、−SO3M基(ここで、Mは一価の陽イオンである)を含有するポリオレフィンアイオノマーを開示している。このアイオノマーは、クロロスルホン化ポリオレフィン上の−SO2Cl基の一部を塩基と反応させることによって製造される。クロロスルホン化ポリエチレンは、25〜36%の塩素を有すると記載されている。しかしながら、米国特許第5,688,220号明細書に教示されたタイプのクロロスルホン化エチレン/アルファ−オレフィンから製造されたアイオノマーは開示されていない。
【0006】
エチレンベースのエラストマー(例えば、EPおよびEPDM)は、自動車および工業用途でオイル用の粘度調整剤として利用される。これらのポリマーは、パラフィン系およびナフテン系オイルに容易に可溶で、かつ、安定であるが、より極性のポリマー(例えば、エチレン・アクリルまたはメタクリルコポリマーおよび高塩素化エチレンポリマー)はそうではない。
【0007】
イソブチレンベースのエラストマー(例えば、PIBおよびイソブチレン/ジエンコポリマー)は伝統的に、より高い温度でのそれらの実用性を高めるための自動車オイルおよびグリース用の改質剤として使用されてきた。
【0008】
スチレンベースのエラストマー(例えば、SBSおよびSISブロックコポリマ−ならびに好ましくはそれらの水素化誘導体)もまた、オイル調合物および接着剤用途において粘度調整剤としての用途を示してきた。
【0009】
プロピレンベースのポリマー(例えば、アタクチックポリプロピレンおよびプロピレン/エチレンコポリマー)は、工業用途において粘度調整剤だけでなく接着剤および接合剤としても利用されてきた。
【0010】
これらのポリマーの多くは、オイルベースの調合物用の安定剤を組み込むために、反応性基で官能基化され、高められた安定性と機器での沈着物形成の防止とをもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
オイルベースの溶液およびエマルジョン中で使用するための20重量パーセント未満の塩素および低レベルの残留結晶化度を有する部分中和されたクロロスルホン化弾性ポリマー(すなわち、アイオノマー)を有することが望ましいであろう。溶液粘度がオイル溶解性、ポリマー熱安定性および洗浄力とバランスをとらなければならないこれらの用途の幾つかでは、コポリマーの混合物を用いることが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の態様は、クロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーの総重量を基準として、0.5〜10重量パーセントの塩素および0.25〜5重量パーセントの硫黄と、複数の−SO3M基(ここで、Mは陽イオンである)とを有する少なくとも1種のクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーを含むクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマー組成物であって、前記クロロスルホン化ポリオレフィンエラストマー組成物中に存在する前記クロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーのそれぞれが異なるポリオレフィンコポリマーから製造され、前記ポリオレフィンコポリマーが、プロピレン/エチレンコポリマー、エチレン/プロピレン/ジエンコポリマー、イソブチレン/ジエンコポリマー、イソブチレンホモポリマー、水素化スチレン/ブタジエンブロックコポリマ−および水素化スチレン/イソプレンブロックコポリマ−からなる群から選択される組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の少なくとも部分中和されたクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーは、ある種のクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマー(本明細書で以下に記載される)上のペンダント−SO2Cl基の一部を塩基で中和することによって製造される。典型的には、−SO2Cl基の約10〜90%のみ(FTIR測定または滴定分析によって証明されるように)が塩基と反応して複数の−SO3M基を形成し、その結果エラストマーは「部分中和された」と称される。しかしながら、完全に中和されたエラストマーもまた本発明の一部であるとみなされる。
【0014】
中和プロセスでは、少なくとも1種のクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーが先ず、四塩化炭素、テトラクロロエチレン、キシレンまたはミネラルオイルなどの溶媒に約40℃で溶解される。場合により、溶解させなければならない固体のクロロスルホン化ポリマーから出発するよりもむしろ、本明細書で以下に記載されるクロロスルホン化プロセスからできた少なくとも1種のクロロスルホン化ポリマーの溶液を(脱ガス後に)利用することができる。ある量の脱塩水がこの溶液に加えられる。次に、塩基、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液がコポリマー溶液に加えられ、生じた液体は高剪断速度で所望の時間混合される。加えられる塩基の量は典型的には、コポリマー上の−SO2Cl基の1当量当たり塩基の0.5〜2.5モル当量である。場合により、塩基は、脱塩水、塩基、および相溶化剤(例えば、イオン性または非イオン性界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム、Triton(登録商標)X−100など)、ステアリン酸ナトリウム、金属ロジン石鹸、または第四級アンモニウム塩など)、および溶媒(例えば、四塩化炭素、テトラクロロエチレンまたはキシレン)を含むエマルジョンの形態で加えられる。生じたポリマーは、非溶媒(例えば、メタノールもしくはイソプロパノール)の添加による沈殿、次に回収ポリマーの真空オーブン中での乾燥などの様々な技法によって、または溶液をスチームストリッピングして溶媒を除去し、次に回収ポリマーを真空オーブン中で乾燥させることによって単離することができる。好ましい単離方法はドラム乾燥であり、この方法では、ポリマー溶液は加熱ドラムと接触させられ、ドラムは溶媒をフラッシュさせ、ポリマーを薄膜として沈着させ、薄膜はポリマーを回収するために取り外される。
【0015】
生じた少なくとも部分的に中和されたクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーは、複数の−SO3M基(ここで、Mは陽イオンである)を含有する。陽イオンMは、中和反応に用いられた塩基に由来し、一価または多価であってもよい。Mは好ましくはナトリウムまたはカリウムイオンである。中和反応に利用されてもよい塩基の例には、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、脂肪酸のナトリウム塩ならびにアルキル第三級アミンおよび様々なエトキシル化第三級アミンなどの第三級アミン塩基が挙げられるが、それらに限定されない。無機塩基と有機塩基との組み合わせが使用されてもよい。
【0016】
本発明に用いられるクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーは、0.5〜10(好ましくは0.75〜8、最も好ましくは1〜6)重量パーセントの塩素および0.25〜5(好ましくは0.35〜3、最も好ましくは0.5〜2)重量パーセントの硫黄を含有する。これらのエラストマーは、Cl2およびSO2との反応か、塩化スルフリル(SO2Cl2)との反応かのどちらかによって溶液法(ベースポリマーが溶媒に溶解していることを意味する)で製造されてもよい。
【0017】
Cl2/SO2クロロスルホン化法では、四塩化炭素とクロロホルムとの溶媒混合物が、冷却器および圧力調整を有する反応器に導入される。次に、ある量の少なくとも1種のポリオレフィンエラストマーベース樹脂が反応器に加えられる。場合により、2種以上のベース樹脂が、クロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーのブレンド物をもたらすために加えられてもよい。必要ならば、反応器中に存在するいかなる水分も、少量の化学的捕捉剤(例えば、塩化チオニルまたは塩化アセチル)の添加によって除去されてもよい。場合により、水分は、低沸点の水/溶媒共沸混合物を含有する少量の溶媒をフラッシュさせるために反応器を真空に引くことによって除去することができる。アゾ開始剤(例えば、DuPontから入手可能なVazo(登録商標)52)が導入され、反応器は、酸素を除去するために窒素でパージされる。反応器は、ベース樹脂の全てを素速く溶解させるために約85℃に加熱される。温度を55℃〜60℃に下げた後、塩素ガス、二酸化硫黄および追加の開始剤が反応器に導入される。所望のレベルのクロロスルホン化が起こったとき、反応塊は窒素で脱ガスされ、真空の適用がそれに続く。場合により、エポキシド、例えば、Epon(登録商標)828(Hexion Specialty Chemicalsから入手可能な)が生成物を安定化させるために添加される。同様に場合により、酸化防止剤、例えば、Irganox(登録商標)1010(Ciba Specialty Chemicalsから入手可能な)も、貯蔵中にポリマーを保護するために添加される。生じたクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマー溶液は、貯蔵するか、または上記の中和プロセスに直接使用することができる。場合により、クロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーは、中和プロセスに使用する前に溶媒から単離されてもよい。
【0018】
SO2Cl2クロロスルホン化法は、塩素ガス/二酸化硫黄混合物よりもむしろ、塩化スルフリルおよび任意のアミン活性化剤(例えば、ピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)など)がベース樹脂をクロロスルホン化するために用いられるという点でCl2/SO2法とは異なる。
【0019】
本発明の少なくとも部分中和されたクロロスルホン化ポリオレフィンを製造するためのベース樹脂として用いられるポリオレフィンエラストマーは、プロピレン/エチレンコポリマー、エチレン/プロピレン/ジエンコポリマー、イソブチレン/ジエンコポリマー、イソブチレンホモポリマー、水素化スチレン/ブタジエンブロックコポリマーおよび水素化スチレン/イソプレンブロックコポリマ−からなる群から選択される。これらのコポリマーは半結晶性または非晶質であってもよい。
【0020】
これらのポリオレフィンエラストマーの市販の具体例には、両方ともThe Dow Chemical Companyから入手可能な、Versify(登録商標)PlastomerおよびElastomer(プロピレン/エチレンコポリマー)ならびにNordel(登録商標)EPDM(エチレン/プロピレン/ジエンコポリマー);ExxonMobilから入手可能な、Vistamaxx(登録商標)スペシャルティエラストマー(プロピレン/エチレンコポリマー)、Vistalon(登録商標)EPDM(エチレン/プロピレン/ジエンコポリマー)、Exxon Butyl(登録商標)(イソブチレン/ジエンコポリマー)およびVistanex(登録商標)PIB(イソブチレンホモポリマー);ならびにThe Kraton company製のKraton(登録商標)G SEBS(水素化スチレン/ブタジエンブロックコポリマ−)およびSEPS(水素化スチレン/イソプレンブロックコポリマ−)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
本発明の少なくとも部分中和されたクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーは、粘度調整剤、接着剤、相溶化剤、硬化および未硬化エラストマー系、耐衝撃性改良剤およびオルガノゾル成分などの様々な最終用途を有する。
【0022】
本発明の部分中和されたクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーの配合物は、伝統的なクロロスルホン化ポリオレフィン配合物に典型的に用いられる硬化剤および他の添加剤を含有するために調合されてもよい。
【0023】
有用な硬化剤には、ビスマレイミド、過酸化物(例えば、Di−Cup(登録商標))、硫黄供与体(例えば、ジチオカルバミルポリスルフィド)および金属酸化物(例えば、MgO)が含まれる。
【0024】
配合物に使用するのに好適な添加剤の例には、i)フィラー、ii)可塑剤、iii)加工助剤、iv)酸受容体、v)酸化防止剤、およびvi)オゾン劣化防止剤が挙げられるが、それらに限定されない。
【実施例】
【0025】
試験方法
クロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーに組み込まれた重量パーセントClおよびSは、Schoniger燃焼法(J.C.TorrおよびG.J.Kallos、American Industrial Association J.July、419(1974)ならびにA.M.MacDonald、Analyst、v86、1018(1961))によって測定した。
【0026】
−SO3M基に変換された−SO2Cl基のパーセントは、赤外分光分析法を利用し、−SO2Clおよび−SO3M基の吸収領域を検討することによって推定した。
【0027】
実施例1
クロロスルホン化エチレン/プロピレン/エチリデンノルボルネンターポリマーは、塩素ガス/SO2手順によって製造した。90重量パーセント(重量%)の四塩化炭素と10重量%のクロロホルムとからなる40ポンド(18.2kg)の溶媒を、冷却器および圧力調整を備え付けた10ガロン(37.9リットル)のジャケット付き反応容器に加えた。2.0ポンド(0.91kg)のエチレン/プロピレン/エチリデンノルボルネン(25のムーニー(Mooney)粘度(125℃でのML 1+4)および0.88g/cm3の密度を有する、The Dow Chemical Co.から入手可能な、Nordel 4725P)を次に反応器に加えた。反応器を閉じ、約10リットル/分で20分間窒素でスパージして空気を除去した。反応塊を二酸化硫黄でスパージし、次に二酸化硫黄で2psig(13.8kPa)に加圧し、窒素で10psig(69kPa)に上げた。反応器内容物を次に、ポリマーを溶解させるために反応器ジャケットでのスチームで、85℃に30分間加熱した。反応温度を次に、反応器ジャケットを通したスチーム水混合物を使用して65℃に下げた。反応温度を65℃に維持しながら、クロロホルム中の0.7重量%溶液Vazo(登録商標)52開始剤(DuPontから入手可能)を、ガス状塩素添加の開始前に10分間、そして反応の全体にわたって200ml毎時の流量で連続的に加えた。全体にわたって65℃の反応温度を維持しながら、0.1ポンド(45グラム)の塩素および2.6ポンド(1.2kg)の二酸化硫黄が加えられるまで塩素ガスを次に0.05ポンド/時(22.7g/時)の流量で反応器中へスパージし、二酸化硫黄を1ポンド/時(0.45kg/時)の流量で加えた。反応器溶液のサンプルを分析のために採取した。生成物は0.98重量%の硫黄および2.98重量%の塩素を含有した。反応塊を、20psig(138kPa)圧力下に反応器内容物を90℃に加熱し、次に反応器圧力を大気圧に下げることによって脱ガスした。反応物を、8.5gのEpon(登録商標)828(Hexion Specialty Chemicalsから入手可能な、エピクロロヒドリンとビスフェノールAとの縮合生成物)および0.9gのIrganox(登録商標)1010(Ciba Specialty Chemicalsから入手可能)の添加によって安定化させた。クロロスルホン化エチレン/プロピレン/エチリデンノルボルネンターポリマーは、溶液を加熱ドラム乾燥機上へゆっくり注ぎ、そこで溶媒をフラッシュさせて除いてポリマーの薄膜を残し、それを、ドクターブレードを用いてドラムから取り外すことによって単離した。
【0028】
0.98重量%の結合硫黄および2.98重量%の結合塩素を含有する、上で製造した100グラムのクロロスルホン化エチレン/プロピレン/エチリデンノルボルネンターポリマーを、水冷冷却器を備え付けた撹拌式の電気ジャケット付き反応器中で90重量%の四塩化炭素と10重量%のクロロホルムとからなる1リットルの溶媒に溶解させた。溶液を撹拌しながら加熱して還流させ(約72℃)、反応塊を反応期間の全体にわたって72℃に維持した。70mlの2−プロパノールを次に反応器に加えた。5.25グラムの50重量%水酸化ナトリウム水溶液を10分間にわたって加えた。激しい還流が始まり、それは5〜6分で治まり、加水分解および中和が完了したことを示唆した。反応塊は非常に粘稠になり、粘度を10mlの水の添加によって低下させた。溶液からサンプルを蒸発によって単離し、フィルムへプレスし、FTIRによって分析した。未中和ポリマーと比較して、1051cm-1の新しい強いピークは、スルホン酸ナトリウム塩の形成を示唆した。追加のエビデンスには、1161cm-1の−SO2Clピークの1172cm-1へのシフトが含まれた。ポリマーは、スチーム加熱ドラム乾燥機上へゆっくり注ぎ、そこで溶媒をフラッシュさせて除いて薄膜を残し、それを、ドクターナイフを用いてドラムから取り外すことによって溶液から単離した。
【0029】
実施例2
クロロスルホン化プロピレン/エチレンコポリマーは、塩素ガス/SO2手順によって製造した。冷却器および圧力調整を備え付けた10ガロン(37.9リットル)のジャケット付き反応容器に、90重量パーセント(重量%)の四塩化炭素と10重量%のクロロホルムとからなる40ポンド(18.2kg)の溶媒を装入した。3.0ポンド(1.36kg)の、3のMFR(ASTM D−1238、230℃、2.16kgでのg/10分)および0.860g/cm3の密度を有するプロピレン/エチレンコポリマー(ExxonMobil Chemical Corporationから入手可能なVistamaxx(登録商標)1100)を次に反応器に加えた。ポリマーを、連続的な攪拌下に反応器温度を70℃に上げ、この温度に30分間保持することによって溶媒に溶解させた。反応器温度を次に、反応器ジャケットを通したスチーム水混合物を使用して約55℃に下げた。反応温度を57℃〜59℃に維持しながら、クロロホルム中の0.7重量%溶液Vazo(登録商標)52開始剤(DuPontから入手可能)の供給を開始し、200ml毎時の流量で連続的に加えた。二酸化硫黄ガスの低いフローを反応器中へ開始して反応器圧力を約2psig(13.8kPa)に上げた。反応器圧力を次に、窒素ガスのフローによって20psig(138kPa)に上げた。二酸化硫黄ガスを約1ポンド/時(約0.45kg/時)の流量で反応器中へ連続的に供給した。反応器圧力を20psig(138kPa)に上げたおよそ10分後に、塩素ガスの非常に低いフロー、約0.1ポンド/時(約0.045kg/時)を反応器へ開始した。反応を約95分間続行し、その時間中に、小サンプルを反応器から採取し、FTIR分光分析法によって分析してクロロスルホン化ポリマーの塩素および硫黄含有率を監視した。所望のレベルの塩素化およびクロロスルホン化が起こったとき、全てのフローを停止し、反応器を大気圧に脱圧して溶液を脱ガスした。生じたポリマーを安定化させるために、10gの安定剤、Epon(登録商標)828(Hexion Specialty Chemicalsから入手可能な、エピクロロヒドリンとビスフェノールAとの縮合生成物)を四塩化炭素に溶解させ、反応器に加えた。反応液を反応器から排出し、濾過し、1gのIrganox(登録商標)1010安定剤を含有するバケツに集めた。クロロスルホン化ポリマーは、スチーム加熱ドラムのドラム乾燥機上で溶媒を蒸発させ、薄いポリマーフィルムを残し、それをドクターブレードでドラムから取り外すことによって単離した。Schoniger元素分析を乾燥ポリマーについて行ってそれが1.2重量%の塩素および0.45重量%の硫黄を含有することを測定した。クロロスルホン化ポリマー中のスルホニルクロリド基[−SO2Cl]の存在はまた、FTIRスペクトルにおける領域1160〜1170cm-1での特徴的な幅広いが強いピークによっても検出された。
【0030】
上で製造した50グラムのクロロスルホン化プロピレン/エチレンコポリマーを、90重量%の四塩化炭素と10重量%のクロロホルムとからなる600gの溶媒に溶解させた。36.7gの脱塩水を加え、成分をSilverson L4Rミキサーで、高速でおよび25℃で5分間混合した。この混合物に、83重量%の水、1.6重量%の水酸化ナトリウム、4.6重量%のラウリル硫酸ナトリウム(DuPont製のDupanol)および9.1重量%の四塩化炭素を含有する75gの水性エマルジョンを加えた。混合物を、Silverson L4Rホモミキサーを用いて1時間高速で撹拌した。ポリマーは、ドラム乾燥によってエマルジョンから単離した。FTIR分析は、出発ポリマーと比較したときに1051cm-1に新しいピークを示し、スルホン酸ナトリウムの形成を示唆した。
【0031】
実施例3
クロロスルホン化ブチルポリマーは、塩素ガス/SO2手順によって製造した。90重量パーセント(重量%)の四塩化炭素と10重量%のクロロホルムとからなる40ポンド(18.2kg)の溶媒を、冷却器および圧力調整を備え付けた10ガロン(37.9リットル)のジャケット付き反応容器に加えた。32のムーニー粘度(125℃でのML 1+4)および0.92g/cm3の密度を有する2ポンド(0.908kg)のブチルゴム(Exxon Chemical Co.から入手可能なButyl 165)を次に反応器に加えた。10ml(17グラム)の塩化アセチルを加えて反応器内容物から水分を除去した。10mlのクロロホルムに溶解させた2グラムのVazo(登録商標)52開始剤(DuPontから入手可能な2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル))を次に反応器に加えた。反応器を閉じ、反応物を75℃に加熱しながら約10リットル/分で、約20分間にわたって窒素でスパージして空気を除去した。75℃で30分後に、反応温度を、反応器ジャケットを通したスチーム水混合物を使用して61℃に下げた。反応温度を60℃に維持しながら、クロロホルム中のVazo(登録商標)52触媒の0.7重量%溶液を200ml毎時の流量で連続的に加え、反応の全体にわたって続行した。二酸化硫黄ガスを次に、5psig(34.4kPa)の反応器圧力に達するまで反応器中へスパージした。反応器圧力を次に、55℃〜60℃の反応温度を維持しながら、窒素で20psig(138kPa)に上げた。クロロスルホン化反応は90分を要し、その間ずっと、55℃〜60℃の反応温度を維持しながら、0.18ポンド(82g)の塩素および1.5ポンド(0.68kg)の二酸化硫黄が加えられるまで、塩素ガスを0.12ポンド/時(54.5g/時)の流量で反応器中へスパージし、二酸化硫黄を1ポンド/時(0.454kg/時)の流量で加えた。反応液のサンプルを分析のために採取した。単離生成物は3.7重量%の塩素および0.7重量%の硫黄を含有することが分かった。反応塊を、約10リットル/分で5分間窒素のフローでスパージすることによって脱ガスした。反応塊を85℃に加熱し、次に圧力を大気圧に、反応温度を72℃に下げて反応物をさらに脱ガスした。反応生成物を次に、10グラムのEpon(登録商標)828(Hexion Specialty Chemicalsから入手可能な、エピクロロヒドリンとビスフェノールAとの縮合生成物)および0.9グラムのIrganox 1010(Ciba Specialty Chemicalsから入手可能)の添加によって安定化させた。生じた溶液を中和実験に使用するために保存した。
【0032】
90/10(重量で)四塩化炭素/クロロホルム中の上で製造したクロロスルホン化ブチルゴムの6.8重量%溶液の2,000gに、110グラムの脱塩水を加えた。成分を、25℃でSilverson L4Rホモゲナイザーにて高速で5分間混合した。この混合物に、83.4重量%の水、4.6重量%のラウリル硫酸ナトリウム(DuPont製のDupanol)、9.1重量%の四塩化炭素および2.9重量%の水酸化ナトリウムからなる250グラムのエマルジョンを加えた。混合物を、Silverson L4Rホモミキサーを用いて1時間高速で撹拌した。ポリマーは、溶液をスチーム加熱ドラム乾燥機上へ注ぎ、そこで溶媒をフラッシュさせて除き、ポリマーフィルムを,ドクターナイフを用いて取り外すことによってエマルジョンから単離した。FTIR分析は、出発ポリマーと比較したときに1051cm-1に新しいピークを示し、スルホン酸ナトリウムの形成を示唆した。
【0033】
実施例4
クロロスルホン化ブチルポリマーの製造:
クロロスルホン化ブチルポリマーは、ブチルゴム(32のムーニー(Mooney)粘度(125℃でのML 1+4)および0.92g/cm3の密度を有する、Exxon Chemical Co.から入手可能な、Butyl 165)を使用して実施例3に記載された塩素ガス/SO2手順によって製造した。生じたクロロスルホン化ブチルポリマーは、溶液を加熱ドラム乾燥機上へゆっくり注ぎ、そこで溶媒をフラッシュさせて除いてポリマーの薄膜を残し、それを、ドクターブレードを用いてドラムから取り外すことによって単離した。生じたクロロスルホン化ブチルポリマーは3.4重量%の塩素および0.96重量%の硫黄を含有すると測定された。
【0034】
20重量%脂肪酸塩コンセントレートの調製
脂肪酸ナトリウム塩コンセントレートは、150gのWestvaco 1408脂肪酸(1480は、Westvaco Companyから入手した、280g/当量の当量のトール油誘導体である)を750gの水に加え、次に撹拌しながら40gの50重量%水性水酸化ナトリウムを加えることによって調製した。この溶液を50℃で1時間撹拌して20重量%の脂肪酸ナトリウム塩と80重量%の水とを含有するワックス状材料を形成した。この材料を将来の使用のために保存した。
【0035】
脂肪酸塩エマルジョンの調製:
脂肪酸塩エマルジョンは、5.5gの上記の20重量%脂肪酸塩コンセントレートを、10mlのCCl4と10gの水とに穏やかに撹拌しながら加えることによって調製した。
【0036】
部分中和されたクロロスルホン化ブチルポリマーコンセントレートの調製:
クロロスルホン化ブチルポリマーの8重量%溶液は、32gの上記の単離クロロスルホン化ブチルポリマーをおよそ1g片で、Silverson Homomixerで3,000rpmで攪拌しながら400mlビーカー中の36gクロロホルムと332gの四塩化炭素とを含有する溶媒混合物中へ5分間にわたって加えることによって調製した。全てのポリマー片を加えた後、混合を3分間続行し、次に、上に調製した脂肪酸塩エマルジョンをこの溶液に加え、攪拌を30分間続行した。生じた7.5重量%の高粘度コンセントレートを将来の使用のために保存した。コンセントレートの小サンプルを採取し、ポリマーを単離し、赤外分光分析法によって調べた。FTIRスペクトルは、1052cm-1および1182cm-1にピークを示し、スルホニルクロリド基のスルホン酸ナトリウム塩への変換を示唆した。
【0037】
コンセントレートの希釈:
10gの上記の少なくとも部分中和されたクロロスルホン化ブチルポリマーコンセントレートを、Silverson Homomixerで3,000rpmで攪拌しながら90gのCCl4/CHCl3溶媒混合物(9.7重量%CHCl3)に2分間にわたって加えた。生じた0.75重量%溶液は、放置時に安定で、流動性があり、かつ、容易に注ぐことが可能であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーの総重量を基準として、0.5〜10重量パーセントの塩素および0.25〜5重量パーセントの硫黄と、複数の−SO3M基(ここで、Mは陽イオンである)とを有する少なくとも1種のクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーを含むクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマー組成物であって、前記クロロスルホン化ポリオレフィンエラストマー組成物中に存在する前記クロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーのそれぞれが、異なるポリオレフィンコポリマーから製造され、前記ポリオレフィンコポリマーが、プロピレン/エチレンコポリマー、エチレン/プロピレン/ジエンコポリマー、イソブチレン/ジエンコポリマー、イソブチレンホモポリマー、水素化スチレン/ブタジエンブロックコポリマ−および水素化スチレン/イソプレンブロックコポリマ−からなる群から選択される組成物。
【請求項2】
前記ポリオレフィンコポリマーが、プロピレン/エチレンコポリマー、エチレン/プロピレン/ジエンコポリマー、およびイソブチレン/ジエンコポリマーからなる群から選択される請求項1に記載のクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマー組成物。
【請求項3】
前記ポリオレフィンコポリマーがプロピレン/エチレンコポリマーである請求項2に記載のクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマー組成物。
【請求項4】
前記プロポリオレフィンコポリマーがエチレン/プロピレン/ジエンコポリマーである請求項2に記載のクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマー組成物。
【請求項5】
前記ポリオレフィンコポリマーがイソブチレン/ジエンコポリマーである請求項2に記載のクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマー組成物。
【請求項6】
Mが、ナトリウム、リチウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、およびアルミニウムイオンからなる群から選択される陽イオン、ならびに第三級アミンの陽イオンである請求項1に記載のクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマー組成物。
【請求項7】
塩素の前記重量パーセントが0.76〜8であり、かつ、硫黄の前記重量パーセントが0.35〜3である請求項1に記載のクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマー組成物。
【請求項8】
塩素の前記重量パーセントが1〜6であり、かつ、硫黄の前記重量パーセントが0.5〜2である請求項8に記載のクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマー組成物。

【公表番号】特表2010−523761(P2010−523761A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502124(P2010−502124)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【国際出願番号】PCT/US2008/004271
【国際公開番号】WO2008/123991
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(597035953)デュポン パフォーマンス エラストマーズ エルエルシー (44)
【Fターム(参考)】