説明

部分強化型金属基複合材料の製造方法

【課題】金属融体に低い周波数の磁場を印加しても部分強化型金属基複合材料を製造することが可能な部分強化型金属基複合材料の製造方法を提供する。
【解決手段】まず、るつぼ11内に金属を投入し、誘導コイル13に交流電流を流して誘導加熱し、溶湯15とする。その後、一旦、誘導加熱を停止して該溶湯15内に強化材粒子を投入して均一分散させる。次いで、再び誘導コイル13に交流電流を流して溶湯15に電磁力を作用させ、強化材粒子をるつぼ11の側壁側に集積させる。このとき、誘導コイル13に交流電流を間欠的に通電し、間欠的な交流磁場を発生させる。次いで、水スプレー管14よりるつぼ11の側面に冷却水を噴射して溶湯15を凝固させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は部分強化型金属基複合材料の製造方法に係り、特に、鋳型と、該鋳型内部を貫くように磁力線を発生させる誘導コイルとを用い、金属融体中の強化材粒子を非接触で目的部位に集積させることにより、該強化材粒子が偏在することにより該部位の機械的、物理的、化学的特性を向上させた部分強化型金属基複合材料を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
強化材粒子を特定の部位のみに偏在させることにより、この特定部位の機械的、物理的ないし化学的特性を向上させた部分強化型金属基複合材料が各種産業分野で利用されている。
【0003】
例えば、アルミニウム(Al)を珪素(Si)で強化すると、耐摩耗性等の特性は向上するが、逆に伸びや引張強度が低下する。このため、ピストンやシリンダブロック等の用途において、表層部のみ耐磨耗性等を高め、内層においては伸びや引張強度を維持すべく、表層部のみにSi結晶を偏在させた部分強化型Al基複合材料が用いられている。
【0004】
従来、このような部分強化型金属基複合材料の製造方法としては、(1)粉末冶金法、(2)加圧含浸法、(3)遠心鋳造法などが提案されている。
【0005】
(1)粉末冶金法は、粉末状の異種材料を材料設計に応じた成分比にて型に配列し、ホットプレスなどによって成型する方法であるが、粉末状の原材料を用意しなければならないことや粉末を型に配列する手間など、製造工程が複雑であり、製造コストが高くつくという欠点がある。(2)加圧含浸法は、予め強化材のプリフォームを作製し、これを鋳型内に配置した状態で母相となる金属融体を高圧にて噴入し、プリフォーム間に十分浸透させた後、凝固させる方法であるが、粉末冶金法と同様、製造工程が複雑で製造コストが高いことが問題となっている。(3)遠心鋳造法は、遠心力を用いて金属融体中の強化材粒子を非接触にて要求部位へ集積させる方法であるが、金属融体と強化材粒子の比重差を利用するため、用いる材料の組み合せが限定されることや、回転を利用するため強化材粒子を集積できる部位が限定されるなど、適用範囲が狭いことが問題として挙げられる。また、遠心力を発生させるための大掛かりな回転装置が必要であることから、操業上の危険性や設備コストの高さも懸念されている。更に、(1)、(2)、(3)に共通する課題として、製造コスト削減に最も貢献すると考えられる連続鋳造製造プロセスへの適用が困難であることが挙げられる。
【0006】
また、特開平8−218129号公報には、電磁力を用いたSi部分強化型Al合金の製造法が記載されている。この方法では、電磁力付与の方法として直流電流、直流磁場を独立に印加しており、電流印加の際には溶融Alに浸漬する電極が必要となっている。この電極の存在により連続鋳造は困難であり、また、局部的に電磁力を付与することも困難であることが、実用化に際しての問題となっている。
【0007】
本出願人は特開2004−034084号公報において上記従来の問題点を解決し、強化部位に制約を受けることなく、あらゆる部位に所望の濃度で強化材粒子を集積させることができ、操作が容易で高価な設備を必要とすることなく、しかも連続鋳造にも適用することができる部分強化型金属基複合材料の製造方法を提供した。
【0008】
即ち、かかる部分強化型金属基複合材料の製造方法は、鋳型と、該鋳型内部を貫くように磁力線を発生させる誘導コイルとを用い、該鋳型内に強化材粒子が分散した金属融体を存在させ、前記誘導コイルに交流電流を通電して該金属融体に電磁力を付与することにより、該強化材粒子を該電磁力と反対方向に移動させ、次いで該金属融体を凝固させることにより強化材粒子が前記誘導コイルの中心軸から離反した部位に集積された部分強化型金属基複合材料を製造することを特徴とする。
【0009】
導電性の金属融体中に交流磁場を作用させると、この導電性の金属融体中には誘導電流が流れ、磁場との相互作用により電磁力が発生する。一方、この金属融体中に含まれる非導電性の強化材粒子には誘導電流が流れないため、電磁力は発生せず、導電性の金属融体内に生じる圧力勾配によって、電磁力とは反対の方向に移動する。このように、金属融体内を強化材粒子が移動することにより、強化材粒子を偏在させることができる。
【0010】
なお、強化材粒子は必ずしも非導電性である必要はなく、母材となる金属融体の金属よりも導電性が低いものであれば良い。即ち、低導電性の強化材粒子であれば、流れる誘導電流が少なく、発生する電磁力が小さいため、大きな電磁力が発生する金属融体中を移動させることができる。
【0011】
かかる部分強化型金属基複合材料の製造方法によると、電磁力場付与手段として交流が通電されるコイルを用いており、金属融体に電極を浸漬する必要がない。また、この交流磁場による強化材粒子の移動は、非常に速い速度で行われる。そして、強化材粒子を迅速に集積させながら金属融体を凝固させることができるため、連続鋳造への適用が可能である。
【0012】
また、交流磁場発生手段としての誘導コイルの形状、電流量、周波数等を選択することにより、任意の領域へ任意の大きさの磁場印加が可能であり、あらゆる要求部位に強化材粒子を所望の濃度に集積させることができ、任意の設計の部分強化型金属基複合材料を容易に製造することができる。
【0013】
かかる部分強化型金属基複合材料の製造方法は、誘導コイルを鋳型部分に組み込み、強化材粒子の集積と共に金属融体を冷却凝固させるための冷却手段を設けた簡易な装置により、煩雑な操作を必要とすることなく、容易かつ効率的に、低コストで実施することができる。
【特許文献1】特開平8−218129号公報
【特許文献2】特開2004−034084号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記部分強化型金属基複合材料の製造方法において、金属融体に誘導コイルによって交流磁場を印加すると、金属融体中に発生する誘導電流と磁場との相互作用によって、金属融体を圧縮する向きの電磁力が発生する。この電磁力の反作用によって、非導電性の介在物やセラミックス粒子等の強化材粒子が電磁力とは逆向きに泳動する結果、強化材粒子が鋳型の壁近傍に集積することになる。この電磁力は表皮効果のために、作用する厚さδ(表皮厚さ)が限られており、δは磁場の周波数f、透磁率μ、導電率σによって、
δ=(πfμσ)-1/2 ‥式(1)
のように表される。したがって、印加磁場の周波数を変化させることによって、粒子集積厚みを変化させることができる。このため、厚い集積層を得るためには、低い周波数の磁場を印加すれば良いと考えられる。しかしながら、周波数が低くなると金属融体の電磁攪拌が激しくなり、粒子集積を妨害する現象が現れるようになる。
【0015】
本発明は上記問題点を解決し、金属融体に低い周波数の磁場を印加しても部分強化型金属基複合材料を製造することが可能な部分強化型金属基複合材料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1の部分強化型金属基複合材料の製造方法は、鋳型と、該鋳型内部を貫くように磁力線を発生させる誘導コイルとを用い、該鋳型内に強化材粒子が分散した金属融体を存在させ、前記誘導コイルに交流電流を通電して該金属融体に磁場を印加し、該磁場と該金属融体中に発生する誘導電流との相互作用によって該金属融体に電磁力を付与することにより、該強化材粒子を該電磁力と反対方向に移動させ、次いで該金属融体を凝固させることにより該強化材粒子が前記誘導コイルの中心軸から離反した部位に集積された部分強化型金属基複合材料を製造する部分強化型金属基複合材料の製造方法において、前記誘導コイルに供給する電力を周期的に変化させることにより、前記金属融体に印加する磁場を周期的に変化させることを特徴とするものである。
【0017】
請求項2の部分強化型金属基複合材料の製造方法は、請求項1において、前記金属融体に前記磁場を間欠的に印加することを特徴とするものである。
【0018】
請求項3の部分強化型金属基複合材料の製造方法は、請求項2において、前記磁場は、印加時間tが0.5〜2秒、停止時間tが0.5〜2秒であることを特徴とするものである。
【0019】
請求項4の部分強化型金属基複合材料の製造方法は、請求項1ないし3のいずれか1項において、該金属融体の金属がアルミニウムであり、該強化材粒子が炭化珪素粒子であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の部分強化型金属基複合材料の製造方法は、鋳型と、該鋳型内部を貫くように磁力線を発生させる誘導コイルとを用い、該鋳型内に強化材粒子が分散した金属融体を存在させ、前記誘導コイルに交流電流を通電して該金属融体に磁場を印加し、該磁場と該金属融体中に発生する誘導電流との相互作用によって該金属融体に電磁力を付与することにより、該強化材粒子を該電磁力と反対方向に移動させ、次いで該金属融体を凝固させることにより該強化材粒子が前記誘導コイルの中心軸から離反した部位に集積された部分強化型金属基複合材料を製造する部分強化型金属基複合材料の製造方法において、前記誘導コイルに供給する電力を周期的に変化させることにより、前記金属融体に印加する磁場を周期的に変化させることを特徴とするものである。
【0021】
金属融体には慣性があるために、金属融体の電磁流動は電磁力を印加した直後から次第に強くなっていく。一方、金属融体中の強化材粒子は十分に小さいため、慣性はきわめて小さく、強化材粒子は電磁力を印加すると同時に電磁泳動を開始する。
【0022】
本発明にあっては、前記誘導コイルに供給する電力を周期的に変化させることにより、前記金属融体に印加する磁場を周期的に変化させることによって、金属融体の電磁流動が十分成長しない内に粒子を分離することができる。
【0023】
磁場は間欠的に付与してもよい。この場合、金属融体の電磁流動の成長をより抑えることができる。
【0024】
電磁力を間欠的に付与する場合、印加時間は0.5〜2秒、停止時間は0.5〜2秒であることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に図面を参照して本発明の部分強化型金属基複合材料の製造方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0026】
図1は本発明の部分強化型金属基複合材料の製造方法における誘導コイルを用いた強化材粒子の集積の原理を説明する模式図であり、図1(a)は誘導コイルを取り付けた鋳型内の誘導電流及び電磁力の発生状況を示し、図1(b)は、強化材粒子の電磁集積の状況を示す。なお、図1では円筒形の鋳型(るつぼ)を用い、円筒形の誘導コイルを同心状に取り付けた例を示しているが、鋳型及び誘導コイルの形状は何ら円筒形に制限されるものではない。
【0027】
図1(a),(b)に示す如く、誘導コイル3に交流電流を通電することにより発生する交流磁場4と金属融体1中に誘導される誘導電流5との相互作用によって、電磁力6が生じ、電磁力が発生しない強化材粒子2には電磁力とは反対の方向に力がかかる。本発明では、この作用を利用して強化材粒子2を目的部位に集積させることができる。
【0028】
図2は本実施の形態に用いる試験装置の一例を示す断面図である。
【0029】
図2に示す装置は、るつぼ11が保護管12内に配置され、この保護管12の外周に誘導コイル13が設けられている。また、保護管12内のるつぼ11の周囲には、冷却用の水スプレー管14が設けられている。
【0030】
このように構成された試験装置において、まず、るつぼ11内に金属を投入し、誘導コイル13に交流電流を流して誘導加熱し、溶湯15とする。その後、一旦、誘導加熱を停止し、該溶湯15内に強化材粒子を投入して均一分散させる。次いで、再び誘導コイル13に交流電流を流して溶湯15に電磁力を作用させ、強化材粒子をるつぼ11の側壁側に集積させる。
【0031】
このとき、本実施の形態では誘導コイル13に交流電流を間欠的に通電し、図3のように間欠的な交流磁場を発生させる。
【0032】
交流電流の通電を停止し、次いで、水スプレー管14よりるつぼ11の側面に冷却水を噴射して溶湯15を凝固させる。このようにして、部分強化型金属基複合材料が得られる。
【0033】
なお、本実施の形態において、上記のように誘導コイル13に交流電流を間欠的に通電し、図3のような間欠的な交流磁場を発生させる理由は以下の通りである。
【0034】
誘導コイル13に交流電流を通電すると溶湯15に電磁力が生じるが、このとき、溶湯15の高さ方向に電磁力の分布が生じる。特に金属融体1の上端部及び下端部では、電磁力が集中する傾向がある。このように電磁力の高さ方向の分布があるため、溶湯15に電磁流動が生じる。この電磁流動は、磁場の周波数が低くなると激しくなる。この溶湯15の電磁流動のために、強化材粒子の集積が阻害される。
【0035】
しかし、電磁力を付与してから溶湯15が電磁流動を開始するまでの時間と、強化材粒子が電磁泳動を開始するまでの時間との間には時間差がある。即ち、溶湯15に慣性があるために、電磁流動は電磁力を印加した直後から次第に強くなっていく。一方、溶湯15中の強化材粒子は十分に小さいため、慣性はきわめて小さく、電磁力を印加すると同時に電磁泳動を開始する。そこで、電磁力を間欠的に印加することによって、電磁流動が十分成長しない内に粒子を分離することが可能になると考えられる。
【0036】
図3において、印加する磁場の印加時間tは0.5〜2秒であることが好ましく、停止時間tは0.5〜2秒であることが好ましい。印加時間tが2秒より長いと溶湯15の電磁流動の影響により集積層が形成され難く、0.5秒より短いと集積層の形成に長時間を要する。停止時間が2秒より長いと集積層の形成に長時間を要し、0.5秒より短いと溶湯15の電磁流動の影響により集積層が形成され難くなる。
【0037】
なお、本実施の形態では停止時間tにおいて磁場の印加を停止しているが、停止時間tにおいて小さい磁場を印加するようにしてもよい。この場合、印加時間tにおける磁場の強さHと停止時間(小磁場印加時間)tにおける磁場の強さHとの比H/Hは0.2以下であることが好ましい。
【0038】
本発明によれば、印加する磁場の強さを変化させることに加え、鋳型に対する誘導コイルの設置位置、誘導コイルの形状、誘導コイルに通電する交流電流量、周波数等を適宜設計することにより、所望の部位に所望の濃度で強化材粒子を集積させた、所望の形状の部分強化型金属基複合材料を製造することができる。
【0039】
また、鋳型内で金属の溶融、強化材粒子の集積、及び金属の凝固を行うことができ、操作は極めて簡単である。
【0040】
そして、例えば、円柱状材料の外周側面の表層部を強化材粒子で強化した部分強化型金属基複合材料の場合、鋳型に引き抜き装置を組み込むことによって、連続鋳造製造プロセスへの適用も可能となる。
【0041】
本発明を実施するための装置は、図2の装置に限定されるものではない。
【0042】
本発明で製造される部分強化型金属基複合材料の強化材粒子と母材金属との組み合わせは、両者に導電性の差があるものであれば良く、本発明は幅広い強化材粒子と母材金属との組み合わせを採用することができ、また、その強化材粒子の集積濃度等にも制限はない。
【0043】
母材金属としては、Al、Mg、Cu等が挙げられ、強化材粒子としては、SiC、Si、Al等のセラミックスなどが挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
【0044】
なお、強化材粒子は1種に限らず、2種以上用いることができ、この場合、用いた強化材粒子の導電性の差により、異なる強化材粒子を異なる部位に集積させた部分強化型金属基複合材料を製造することができる。
【0045】
本発明において、印加する磁場の周波数には特に制限はなく、特に金属融体の電磁流動が激しくなる3kHz以下であってもよい。
【0046】
このような本発明の方法により製造される部分強化型金属基複合材料は、均一系材料に比べて母材金属の軽量性、高熱伝導性、高延性等の特性を損なうことなく、必要部分にのみ強化材粒子による特性向上効果を得ることができ、加工性等に優れた機能性材料として、幅広い用途への適用が期待される。
【実施例】
【0047】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0048】
〈実施例1〉
図2に示す試験装置を用い、本発明に従って、SiC部分強化Al基複合材料を製造した。
【0049】
図2に示す装置は、SiO製るつぼ11が保護管12内に配置され、この保護管12の外周に誘導コイル13が設けられている。また、保護管12内のるつぼ11の周囲には、冷却用の水スプレー管14が設けられている。
【0050】
用いたるつぼ11の内径は40mmで、誘導コイル13の直径は94mm、コイル巻き数は6ターンで145mmの高さにわたって設けた。
【0051】
まず、るつぼ11内に約140gのAlを投入し、誘導加熱により溶解して800℃付近まで昇温した。その後、一旦、誘導加熱を停止してSiC粒子分散Al合金60gを投入して均一分散させた後、再び誘導コイル13に交流電流を流して溶融Alに電磁力を作用させた。このときのコイル電流は752A、電流周波数は3kHzであった。また、磁場印加時間tは1秒、磁場停止時間tは1秒で、るつぼ11内の溶湯15の高さは60mmであり、SiC粒子の平均粒径は21μm、SiC粒子初期濃度は7.3質量%であった。
【0052】
また、式(1)による表皮厚さδは、るつぼ11内の溶湯15部分の外周側面部分の表層4.71mmであった。
【0053】
上記間欠磁場を30秒(No.1)及び60秒(No.2)印加した後、水スプレー管14よりるつぼ11の側面に冷却水を噴射することにより溶湯を凝固させた。
【0054】
得られた材料の表層部(るつぼ壁面)付近の断面を顕微鏡により観察し、粒子集積層の厚さ及び粒子集積層中のSiC粒子の体積率を測定した。
【0055】
その結果、間欠磁場を30秒印加した試料(No.1)の粒子集積層の厚さは2mmであり、60秒印加した試料(No.2)の粒子集積層の厚さは4mmであった。また、試料(No.2)における粒子集積層の最大値は40vol%であった。このように、磁場を間欠的に印加することにより溶湯の激しい電磁流動が抑制され、表皮厚さδ(4.71mm)に近い粒子集積層が得られることがわかった。
【0056】
〈比較例1〉
コイル電流974A、電流周波数3kHzの交流電流を連続して30秒間通電することにより、磁場を連続して30秒間印加したこと以外は実施例1と同様の実験を行った。得られた材料の表面部(るつぼ壁面)付近の断面を顕微鏡により観察し、粒子集積層の厚さ及び粒子集積層中のSiC粒子の体積率を測定した。
【0057】
その結果、るつぼの側壁面にはSiC粒子がほとんど集積されなかった。また、粒子集積層の最大値は約20vol%であった。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の部分強化型金属基複合材料の製造方法における誘導コイルを用いた強化材粒子の集積の原理を説明する模式図であり、図1(a)は誘導コイルを取り付けた鋳型内の誘導電流及び電磁力の発生状況を示し、図1(b)は、強化材粒子の電磁集積の状況を示す。
【図2】実施例で用いた試験装置を示す模式的な断面図である。
【図3】溶湯に印加する磁場の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1 金属融体
2 強化材粒子
3 誘導コイル
4 交流磁場
5 誘導電流
6 電磁力
11 るつぼ
12 保護管
13 誘導コイル
14 水スプレー管
15 溶湯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳型と、該鋳型内部を貫くように磁力線を発生させる誘導コイルとを用い、
該鋳型内に強化材粒子が分散した金属融体を存在させ、
前記誘導コイルに交流電流を通電して該金属融体に磁場を印加し、該磁場と該金属融体中に発生する誘導電流との相互作用によって該金属融体に電磁力を付与することにより、該強化材粒子を該電磁力と反対方向に移動させ、
次いで該金属融体を凝固させることにより該強化材粒子が前記誘導コイルの中心軸から離反した部位に集積された部分強化型金属基複合材料を製造する部分強化型金属基複合材料の製造方法において、
前記誘導コイルに供給する電力を周期的に変化させることにより、前記金属融体に印加する磁場を周期的に変化させることを特徴とする部分強化型金属基複合材料の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、前記金属融体に前記磁場を間欠的に印加することを特徴とする部分強化型金属基複合材料の製造方法。
【請求項3】
請求項2において、前記磁場は、印加時間tが0.5〜2秒、停止時間tが0.5〜2秒であることを特徴とする部分強化型金属基複合材料の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、該金属融体の金属がアルミニウムであり、該強化材粒子が炭化珪素粒子であることを特徴とする部分強化型金属基複合材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−144437(P2007−144437A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−339642(P2005−339642)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年9月1日 社団法人日本鉄鋼協会発行の「材料とプロセス Vol.18(2005)No.4」に発表
【出願人】(502241051)株式会社ジェイテック (1)
【Fターム(参考)】