説明

部分放電判定方法及び部分放電判定装置

【課題】外来ノイズの影響を排除し、ガス絶縁機器で発生する部分放電の有無を精度良く判定する。
【解決手段】絶縁ガスが封入された円筒形の金属タンク1を絶縁スペーサ2で区画し、中心導体3を絶縁スペーサ2で支持して構成したガス絶縁機器の、金属タンク1の内部で発生する部分放電の有無を判定する部分放電判定方法において、絶縁スペーサ2の外周の周方向の複数箇所において電磁波検出器4により検出した電磁波信号から、TE11検波器8によってTE11モードのみが伝播する周波数帯域の信号を抽出し、抽出した信号の強度と円周方向の測定位置情報とから、検出装置10によって金属タンク1の外周方向の電磁波の強度分布を取得し、判定装置11によってTE11モード特有の分布と比較して部分放電の有無を判定するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガス絶縁機器の内部で発生する部分放電の有無を判定する部分放電判定方法及び部分放電判定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガス絶縁電気機器の内部で発生した絶縁異常の前兆となる部分放電を検出する従来の技術としては、例えば、絶縁性ガスを充填した密閉金属容器内部に高電圧導体を絶縁物により支持配置して成る絶縁電気装置において、その内部で発生する異常を診断するガス絶縁電気装置の異常診断方法として、密閉金属容器から高周波信号を取り込み、この高周波信号を複数の周波数領域別に分離してそれぞれの周波数領域別の各高周波信号の大きさを比較することにより、ガス絶縁電気装置での異常発生の有無、及び観測点から異常発生点までの距離を判断する技術が開示されている。信号分離手段によって分離される信号は、2導体系を伝播する基本モードのTEMモードに対し高次モードであるTE11,TE21,TM01,TM12及びTE31モード等であり、これら高周波信号の絶対強度若しくは相対強度を表示し、かつ必要に応じてこれらの高周波信号の強度を用いて演算を行い、ガス絶縁電気装置の異常の有無、さらに異常と判断した場合には観測点から異常発生点までの距離を判断するものである(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−102159号公報(第2頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来のガス絶縁診断方法では、部分放電によって発生する高周波信号を検出するセンサとして、導体を支持する絶縁スペーサに予め埋め込まれたシールド電極を使用している。このシールド電極は、絶縁スペーサの外周近傍の周方向に、絶縁スペーサを取り巻くようにリング状に設けられおり、金属容器を伝播してきた高周波信号を絶縁スペーサ部においてこのシールド電極で検出するように構成されている。高周波信号に含まれる各モードは中心導体の径と金属容器の径で決まる遮断周波数を利用してフィルタにより分離し、それらの周波数領域にエネルギーがあればそのモードかあると判断している。このように、部分放電による電磁波信号を周波数領域のみによって分離しているので、検出領域は単にそれらの高次モードが存在する可能性がある周波数領域を広くカバーしているだけであり、測定時に何らかのエネルギーが検出されたときに、それが部分放電に由来する信号か、単なる外来ノイズかの識別は難しく、現場環境ノイズの大きい変電所等における汎用の部分放電診断技術としては、ノイズ対策の面で課題が残されていた。
【0005】
この発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、部分放電によって発生する高周波信号のうち、ガス絶縁機器の構造によって決定される高次TEモードの中から、特にガス絶縁機器のタンクの円周方向に顕著な強度分布を持つ特徴を有意に活用できるTE11モード又はTE21モードに着目し、これらの信号を確実に検出することにより、外来ノイズに影響されることなく部分放電の有無を判定できる信頼性の高い部分放電判定方法及び部分放電判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係わる部分放電判定方法は、絶縁ガスが封入された円筒形の金属タンクを絶縁スペーサで区画し、中心導体を絶縁スペーサで支持して構成したガス絶縁機器を対象とし、金属タンクの内部で発生する部分放電の有無を判定する部分放電判定方法において、絶縁スペーサの外周の周方向の複数箇所において金属タンク内に伝播する電磁波信号を電磁波検出器により検出し、検出した電磁波信号から遮断周波数を利用してTE11モードが伝播しTE21モードが伝播しない周波数帯域の信号をTE11検波装置によって抽出し、抽出した信号の強度と電磁波検出器の周方向の位置情報とから金属タンクの外周方向の電磁波の強度分布を強度検出装置によって検出し、強度分布がTE11モード特有の分布を示すかどうかにより部分放電の有無を判定するものである。
【0007】
また、上記の部分放電判定方法に判定装置を加え、その判定装置によって、強度検出装置で得られた電磁波の強度分布とTE11モード特有の分布とを比較して部分放電の有無を判定するものである。
【0008】
また、この発明に係わる部分放電判定装置は、絶縁スペーサの外周の周方向の複数箇所において金属タンク内に伝播する電磁波信号を検出する電磁波検出器と、検出した電磁波信号を受信し遮断周波数を利用してTE11モードが伝播しTE21モードが伝播しない周波数帯域の信号を抽出するTE11検波装置と、抽出した信号の強度と電磁波検出器の周方向の位置情報とから金属タンクの外周方向の電磁波の強度分布を検出する強度検出装置とを備えたものである。
【0009】
また、上記の部分放電判定装置に、強度検出装置で検出した強度分布とTE11モード特有の分布とを比較して部分放電の有無を判定する判定装置を備えたものである。
【0010】
また、絶縁スペーサの外周の周方向の複数箇所において金属タンク内に伝播する電磁波信号を電磁波検出器により検出し、検出した電磁波信号から遮断周波数を利用してTE21モードが伝播しTE31モードが伝播しない周波数帯域の信号をTE21検波装置によって抽出し、抽出した信号の強度と電磁波検出器の周方向の位置情報とから金属タンクの外周方向の電磁波の強度分布を強度検出装置によって検出し、強度分布がTE21モード特有の分布を示すかどうかにより部分放電の有無を判定するものである。
【0011】
また、上記の部分放電判定方法に判定装置を加え、その判定装置によって、強度検出装置で得られた電磁波の強度分布とTE21モード特有の分布とを比較して部分放電の有無を判定するものである。
【0012】
また、この発明に係わる部分放電判定装置は、絶縁スペーサの外周の周方向の複数箇所において金属タンク内に伝播する電磁波信号を検出する電磁波検出器と、検出した電磁波信号を受信し遮断周波数を利用してTE21モードが伝播しTE31モードが伝播しない周波数帯域の信号を抽出するTE21検波装置と、抽出した信号の強度と電磁波検出器の周方向の位置情報とから金属タンクの外周方向の電磁波の強度分布を検出する強度検出装置とを備えたものである。
【0013】
更にまた、上記の部分放電判定装置に、強度検出装置で検出した強度分布とTE21モード特有の分布とを比較して部分放電の有無を判定する判定装置を備えたものである。
【発明の効果】
【0014】
この発明の部分放電判定方法又は部分放電判定装置によれば、絶縁スペーサの外周の周方向の複数箇所において電磁波信号を検出し、TE11モードが伝播しTE21モードが伝播しない周波数帯域の信号をTE11検波装置によって抽出し、抽出した信号の強度と電磁波検出器の周方向の位置情報とから金属タンクの外周方向の電磁波の強度分布を検出し、その強度分布がTE11モード特有の分布を示すかどうかにより部分放電の有無を判定するようにしたので、部分放電で発生する電磁波の中に含まれるTE11モードの信号を効率よく捕捉でき、そのモード特有の特徴を抽出できるので、外来ノイズの影響を抑制して部分放電の有無を判定できる信頼性の高い部分放電判定方法又は部分放電判定装置を提供できる。
【0015】
また、上記の部分放電判定方法及び部分放電判定装置において、部分放電の有無の判定は、判定装置を用いて強度検出装置で得られた電磁波の強度分布とTE11モード特有の分布とを比較して判定するようにしたので、上記の効果に加え、判定精度を上げることができる。
【0016】
また、絶縁スペーサの外周の周方向の複数箇所において電磁波信号を検出し、TE21モードが伝播しTE31モードが伝播しない周波数帯域の信号をTE21検波装置によって抽出し、抽出した信号の強度と電磁波検出器の周方向の位置情報とから金属タンクの外周方向の電磁波の強度分布を検出し、その強度分布がTE21モード特有の分布を示すかどうかにより部分放電の有無を判定するようにしたので、部分放電で発生する電磁波の中に含まれるTE21モードの信号を効率よく捕捉でき、そのモード特有の特徴を抽出できるので、外来ノイズの影響を抑制して部分放電の有無を判定できる信頼性の高い部分放電判定方法又は部分放電判定装置を提供できる。
【0017】
更にまた、上記の部分放電判定方法及び部分放電判定装置において、部分放電の有無の判定は、判定装置を用いて強度検出装置で得られた電磁波の強度分布とTE21モード特有の分布とを比較して判定するようにしたので、上記の効果に加え、判定精度を上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1による部分放電判定装置を図によって説明する。図1は、この発明の実施の形態1による部分放電判定装置をガス絶縁機器に取り付けた図である。判定対象とするガス絶縁機器の一例として、GIS(Gas Insulated Switchgear:ガス絶縁開閉装置)を例に説明する。GISは、断路器,遮断器等の開閉機器やこれらを保護する電気機器が母線により接続され、各機器の高電圧充電部は絶縁性ガスを充填した金属タンク内に収納されて構成されている。図は、このGISの母線タンク部分に部分放電判定装置を配置した場合を示している。
【0019】
図のように、円筒形状をした複数の金属タンク1が絶縁スペーサ2を介し連結され、この絶縁スペーサ2に支持された円筒状の中心導体3が金属タンク1と同軸に配置されて構成されている。そして、絶縁スペーサ2で区画された金属タンク1内には絶縁ガスが封入されている。
【0020】
次に、部分放電判定装置の構成について説明する。金属タンク1を連結する絶縁スペーサ2の外周部に、金属タンク1内に伝播する電磁波信号を検出する電磁波検出器4を配置する。この電磁波検出器4は、電磁波アンテナを主に構成されており、例えば、ループコイル,ダイポールアンテナ,ログペリアンテナ,ホーンアンテナ等が使用される。電磁波検出器4は、移動装置5によって絶縁スペーサ2の外周方向に移動可能となっており、外周の周方向の任意の位置で電磁波を測定し検出することができる。移動装置5により電磁波検出器4が絶縁スペーサ2の外周の周方向に移動したときの電磁波検出器4の位置情報は、移動角検出装置6に送られ、基点からの移動角θとして検出される。
【0021】
電磁波検出器4からの検出信号と移動角検出装置6からの移動角情報とは、判定部7に送信される。判定部7は、電磁波検出器4の検出信号から後述する遮断周波数を利用してTE11モードが伝播しTE21モードが伝播しない周波数帯域の電磁波信号を抽出するTE11検波装置8と、遮断周波数を演算するのに必要な金属タンク1と中心導体3の外径情報を入力する入力部9と、TE11検波装置8の出力信号及び移動角検出装置6からの移動角θを受信し、金属タンク1の外周方向の電磁波の強度分布を検出する強度検出装置10と、検出した強度分布とTE11モード特有の強度分布とを比較して部分放電の有無を判定する判定装置11とを備えている。上記4〜11までで、部分放電判定装置の主要部が構成されている。なお、例えばタンク内の異物等は、部分放電源13となる。
【0022】
図2は図1のII−II方向から見た断面図であり、移動装置5によって電磁波検出器4を移動させる場合の一例を示す図である。図のように、絶縁スペーサ2の外周部にガイドレール12を設け、電磁波検出器4側に設けた係合部をガイドレール12にスライド可能に係合させている。電磁波検出器4には駆動モータを設けており、移動装置5から指令によりガイドレール12上を移動できるようになっている。このときの周方向の位置情報を移動角検出装置6に取り込む。例えば、図の垂直下部の位置を基点とすると、4aの位置で測定する場合は、θを移動角として検出する。
なお、図2に示す移動装置は、一例であり、絶縁スペーサ2の外周の周方向に移動可能なものであれば、図の構造に限定しない。
【0023】
次に、本発明の部分放電判定装置によって部分放電を検知する方法について説明する。GISの母線タンクは、図1に示すように中心導体3とそれを被う金属タンク1からなる同軸構造となっている。このような同軸構造を伝播する電磁波のモードにはTEMモード、TEモード(TE11,TE21,TE31・・・)及びTMモードがあり、それぞれのモードは電磁波の異なる伝播形態を表しており、進行方向に対し電界や磁界のベクトルの有無で区別されている。このTEM,TE11モード、TE21モード・・・はそれぞれのモードごとに特定の周波数以上の領域に限定して存在していることが知られている。この特定の周波数は遮断周波数と呼ばれており、中心導体径やタンク径などの構成部品の形状や寸法によって、すなわちガス絶縁機器の形状や寸法に応じて決まるものである。例えば、金属タンク1の半径をa、中心導体3の半径をbとし、光速をcとすると、近似的にTEm1モードの遮断周波数fは式1のように表される。
f=c・m/〔π(a+b)〕・・・・・・・・・式1
但しm=1,2,3・・・
つまり、金属タンク1と中心導体3の形状が決定すれば、存在するモードと遮断周波数が特定できることになる。
【0024】
各モードのうち、TEMモードはタンク円周方向にピーク分布を持たない静電界と同じ電界分布である。これに対し、TE(m1)モードは円周方向にピーク分布を持つ電界分布を示す。図3は、同軸線路の場合のTEMモード,TE11モード,及びTE21モードの電磁界分布を模式的に示す図である。図のように、TE11モードは円周方向の180°対称の位置に強いピークを持つ電界分布を示し、TE21モードは円周方向の90°対称の位置にピークを持つ電界分布であることがわかる。
【0025】
図4は、金属タンク内で部分放電が生じている場合の電磁波強度の分布の一例を示す図である。周波数別の電磁波強度の強弱と金属タンクの壁面における分布状況を濃淡で表現している。この図は、発明者らの研究によって明らかにされた実験検証データ例であり、中心導体の長さが約2mの金属タンク内部で部分放電を発生させたものであり、縦軸は、放電源を基点(0°)とし金属タンク外周の円周方向の位置を角度で示し、横軸は、周波数(MHz)を示している。図において、色の濃い部分が電磁波信号の強い部分である。図の上部には、TEMモード,TE11モード,TE21モード及びTE31モードの電磁波信号が伝播する周波数帯域をそれぞれ横棒グラフで示している。
【0026】
図中に丸を付して例示しているように、TEMモードは円周方向に一様に信号を有しピーク値を持たないが、TE11モードは円周方向において180°対向する位置に2つの強度ピークを持ち、また、TE21モードは90°ピッチで4つのピークを持つことがよくわかる。従って、式1を用いて計算された各モードの周波数領域おいてこれらの強度分布が検証されれば、間違いなくそのモードの電磁波が存在していることを意味する。
【0027】
以上説明したように、部分放電による電磁波は、TEM領域から、より高次のモードの信号まで広くGIS内部に分布している。この分布形状を把握することで、GIS内部での部分放電の有無の判断が可能となる。ここで、どのモードに着目するかについては、パターンの見分け易さと、一方で信号処理のし易さとを考慮して決定していく必要がある。信号処理のし易さでは、より低い周波数帯を検出ターゲットとした方が好ましいが、最も周波数の低いところで存在するTEMモードは全周方向に亘り分布を示しているため特徴的な分布パターンは見出しにくい。一方で、高次モードになると、分布の形状が複雑になっていくため、より自然界には存在しないGIS固有のパターンを見出すことができるようになるが、複雑すぎると、部分放電判定装置の判定アルゴリズムが非常に高度・複雑なものとなり、また高周波信号処理も難しくなって、実際の診断には適さなくなる。そこで、本実施の形態では、比較的GIS固有の特長が見出せ、かつ、信号処理も容易な帯域であるTE11モードに着目した。なお、実際のGISタンクでのTE11モードの周波数帯について、式1で試算すると、タンク径によって異なるが200MHz〜1GHz程度である。
【0028】
先に、図1のTE11検波装置8によって、遮断周波数を利用してTE11モードが伝播しTE21モードが伝播しない周波数帯域の電磁波信号を抽出すると説明した周波数帯域とは、式1で求めたTE11モードの遮断周波数以上で、TE21モードの遮断周波数未満の範囲のことである。但し、式1は近似式であり、この式によってモードを完全に峻別できるわけではないので、厳密に範囲を区切る必要はなく前後に多少幅があっても良い。実運用においては、汎用性を考慮して幅を持たせる方が実用的でる。
【0029】
次に、具体的なガス絶縁機器での判定方法について説明する。図5は、この発明の部分放電判定装置を用いた部分放電判定方法を説明する図である。図の(a)は2個の絶縁スペーサ2a,2bで区画された直管の金属タンク1内で部分放電が発生した場合の発生位置を示し、(b)は部分放電発生位置のz軸に垂直方向の断面図であり、部分放電源13が、例えば水平方向を基準として角度θの位置に存在する場合を示している。また、(c)は部分放電による電磁波信号が直管の金属タンク1の接続部に設けた絶縁スペーサ2a又は2bで観測される際の、電磁波信号の周方向の強度分布を示すものである。
なお、部分放電源13は、分かりやすいために絶縁スペーサのすぐ近傍に図示しているが、金属タンク1内であればどこでもよい。また、電磁波信号の強度分布は、主にピークが現れる方向や現れ方を視覚的に分かりやすく説明するため単純化して表示しており、実測値を正確に表したものではない。以下の実施の形態の説明でも同様である。
【0030】
部分放電の測定は、電磁波検出器4を移動装置5によって絶縁スペーサ2aの周方向へ移動させながら、周方向の複数の位置で実施する。このとき、基準点からの測定位置の情報は移動角検出装置6によって角度情報θとして検出し、部分放電判定装置の判定部7へ送信する。
GISタンク内部に発生する部分放電源13が、例えば水平方向を基準として角度θの位置(13と180°対向する13aでも同じ)に存在した場合、電磁波信号も同じく角度θの方向に強く放射され、絶縁スペーサ2aにおいて、図の(c)に示すように、ほぼ角度θの位置に強い信号ピークを持つ分布が確認される。
【0031】
そこで、絶縁スペーサ2aの外周部の周方向の複数箇所で測定した電磁波検出器4からの電磁波信号を、図1で説明したような部分放電判定装置の判定部7に取り込み、信号処理をして円周方向の強度分布として表せば、TE11モードの電磁波が存在した場合、すなわち部分放電による電磁波である場合は、ほぼ180°対向する位置に強いピーク値が見られることになる。従って、検出結果の強度分布がこのようなTE11モード特有の分布を示すかどうかにより部分放電の有無を判定することができる。
【0032】
強度検出装置10の具体例としてパターン認識装置を使用した場合について説明する。図6は図1の部分放電判定装置の強度検出装置にパターン認識装置14を使用した場合のブロック図である。パターン認識装置14以外は図1と同じなので説明は省略する。TE11検波装置8からのTE11の信号と、移動角検出装置6からの移動角θの情報をパターン認識装置14へ入力するとパターン認識装置14では、絶縁スペーサ2の外周上の電磁波信号の強度分布パターンを生成する。強度分布パターンの一例を図7に示す。図の縦軸に信号強度、横軸に周方向の位置(角度)をとり、各位置での信号強度をグラフにすれば太線のような強度分布パターンが得られる。判定装置11では、例えば、θとθの間隔やピーク値から、TE11モード特有のモードかどうかを判定する。θ,θのような顕著なピーク値がほぼ180°対向する位置に確認できれば、TE11モード特有の分布であると判断でき、部分放電による電磁波が検出されたと判定できる。このように、絶縁スペーサ2の外周方向の測定において、ほぼ180°離れた位置に2つのピークが存在することを再現性をもって確認することで、外部ノイズではなく内部に部分放電が存在することを特定できる。
なお、パターン認識装置は、現在一般に行われている各種信号処理技術を利用することで対応できる。
【0033】
また、図5の(a)のように、金属タンク1の両端に絶縁スペーサ2aと絶縁スペーサ2bとが配置されている場合、この絶縁区画内部に部分放電源13が存在すると、上記のような2つのピークを持つ分布の形状は、直管の金属タンクであれば崩れることなく両側へ伝播し、隣接する絶縁スペーサ2a,2bで同じ位置にピーク値が現れる。
そこで、直管の金属タンク1において2つ以上の絶縁スペーサが存在する場合、絶縁スペーサ2aで測定した電磁波信号から、周方向でほぼ180°対称の位置にピーク値を有するTE11モードの信号を検出し、かつ、そのピーク値が隣接する絶縁スペーサ2bで同じ位置に確認できた場合に、電磁波検出器4が検出した信号は、金属タンク1の内部における部分放電信号であると判定する。両者のピーク位置が異なる場合には、部分放電によるものではなく外部ノイズであると判定する。
【0034】
また、上記の説明のように、ピーク信号は、部分放電源13の円周方向の位置と同じ方向に現れる。このことを利用し、測定したピーク信号が金属タンク1の円周方向のどの位置に立つかという位置(角度)情報によって、部分放電源13の円周方向の位置を推定することができる。但し、図5(b)で部分放電源が13にある場合と13aにある場合の区別や、金属タンク1側か中心導体3側かの区別はしない。
【0035】
上記までの説明では、電磁波検出器4によって絶縁スペーサ2の外周の周方向の複数箇所で測定するやり方として、移動装置5を用いて移動させる場合について説明したが、移動装置5によらずに、例えば、測定者が電磁波検出器4を絶縁スペーサ2の外周の周方向に移動させながら測定しても良い。また、位置(角度)情報も、移動角検出装置6から自動的に取り込むのではなく、測定者がその情報を強度検出装置10に入力するようにしても良い。
また、電磁波検出器4を移動させるのではなく、複数の電磁波検出器4を絶縁スペーサ2の外周上の周方向の所定位置に固定して配置しておいても良い。
また、遮断周波数を演算するために、金属タンク1と中心導体3の径情報を入力部9から入力するようにしたが、その都度入力するのではなく、予め記憶部に記憶させておいても良く、対象ガス絶縁機器が特定されているような場合は、径情報から計算される遮断周波数を直接利用しても良い。
【0036】
更にまた、測定結果から部分放電の有無を判定する際に、強度検出装置によって強度分布が得られた段階で、熟練者であれば強度分布を見れば、特に後段の判定装置を使用しなくても、部分放電の有無を判定することが可能である。例えば、強度検出装置として上述のようなパターン認識装置を使用し、結果を強度分布パターンとして視覚的に表示させれば、その図からTE11モードの存在を確認することが可能である。従って、部分放電判定装置として、判定部7の中の判定装置11は必須ではない。
【0037】
以上のように、本実施の形態の発明によれば、絶縁スペーサの外周の周方向の複数箇所において電磁波信号を検出し、TE11検波装置によってTE11モードが伝播しTE21モードが伝播しない周波数帯域の信号を抽出し、抽出した信号の強度と電磁波検出器の周方向の位置情報とから金属タンクの外周方向の電磁波の強度分布を検出し、その強度分布がTE11モード特有の分布を示すかどうかにより部分放電の有無を判定するようにしたので、部分放電で発生する電磁波の中に含まれるTE11モードの信号を効率よく捕捉でき、そのモード特有の特徴を抽出できるので、外来ノイズの影響を抑制して部分放電の有無を判定できる信頼性の高い部分放電判定方法又は部分放電判定装置を提供できる。
【0038】
また、部分放電の有無の判定は、判定装置を用いて強度検出装置で得られた電磁波の強度分布とTE11モード特有の分布とを比較して判定するようにしたので、上記の効果に加え、更に精度の良い判定を行うことができる。
【0039】
また、電磁波の検出は、移動装置により電磁波検出器を絶縁スペーサの外周の周方向へ移動させて測定するようにしたので、測定位置を自由に選択でき、また効率よく測定することができる。
【0040】
また、上記電磁波の検出は、絶縁スペーサの外周の周方向に複数個配置された電磁波検出器によって行うようにしたので、測定位置を決定する手間が省け、測定点の抜け漏れがなく、確実に測定を実施することができる。
【0041】
また、強度検出装置としてパターン認識装置を使用するようにしたので、視覚的に容易に部分放電の有無を判定することができる。
【0042】
また、出力がピークに達する外周位置を特定し、特定した外周位置から金属タンクの円周方向における部分放電源の位置を推定するようにしたので、GISのような内部を容易に見ることができないガス絶縁機器でも、部分放電源がタンク底面にあるのか、側面に付着したものかを識別することができる。
【0043】
また、金属タンクの径および中心導体の径の値を入力して遮断周波数を演算し、TE11検波装置により検波する周波数帯域を設定するようにしたので、対象とするガス絶縁機器に適合したTE11モードの周波数帯域を精度良く求められる。
【0044】
更にまた、直管の金属タンクの軸方向に設けた2個の絶縁スペーサのそれぞれにおいて測定して得た電磁波の強度分布を比較し、強度分布のピーク位置が同じであれば、直管内で部分放電が発生していると判定するようにしたので、直管タンクにおける部分放電の発生の有無を精度良く判定できる。
【0045】
実施の形態2.
図8〜図10はこの発明の実施の形態2による部分放電判定方法を説明する図である。図8,9の(a)はL字形状の金属タンクにおける部分放電の発生位置を示し、(b)は一方の絶縁スペーサ部での電磁波の強度分布、(c)は他方の絶縁スペーサ部での電磁波の強度分布を示している。図のように、L字形状の金属タンク1c、1dに対して、そのL字の屈折部の前後に絶縁スペーサ2c,2dがそれぞれ配置されている。金属タンク1c,1dがL字形状をしている以外の構成は、実施の形態1で説明した図1と同等であり、また部分放電判定装置も実施の形態1で説明した図と同等なので詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0046】
GISが直管の金属タンクから構成されている場合は、電磁波の挙動は実施の形態1で説明したように単純であったが、実際のGISではL字やT字の形状をしたタンクが複数組み合わさって構成されているため、このL字やT字の屈折部分で電磁波モードの変換が発生し、信号の円周方向の分布が崩れる。
【0047】
まず、図8のように、L字屈折部の手前側の金属タンク1c内部において部分放電源13が存在した場合について説明する。図中での方向を特定するために、金属タンク1c,1dの軸線を含む平面を基準面15とする。部分放電源13は、金属タンク1c側で軸心を通り基準面15に平行な方向(x軸方向)にある場合を説明する。
この場合、絶縁スペーサ2cにおいては図の(b)のように基準面15と平行な方向(x軸方向)にピーク値を持つTE11モードの強度分布が確認される。そして、L字部を通過した後の絶縁スペーサ2dにおいては、2cにおける分布とは異なり、図の(c)のように全周方向に亘って強度分布を示すことが発明者らの研究によって確認された。
【0048】
この結果、L字状の金属タンクの屈曲部の前後に絶縁スペーサ2c,2dが存在する場合には、両絶縁スペーサ2c,2dにおいて電磁波検出器4によってTE11モードの電磁波の強度分布を測定し、一方の絶縁スペーサ2cにおいて基準面15にほぼ平行な方向に2点のピーク値が存在した場合に、他方の絶縁スペーサ2dにおいて全周方向に亘る分布が再現性をもって存在することを確認できれば、外部ノイズではなく、当該金属タンク内部において部分放電が発生していると判定することができる。
【0049】
次に、図9は図8と同様にL字状の金属タンクであるが、(a)に示すように、部分放電源13が、金属タンク1c内で軸心を通り基準面15に垂直な方向(y軸方向)にある場合である。このとき、絶縁スペーサ2cにおいて観測される部分放電によるTE11モードの電磁波は図の(b)のように基準面15に垂直方向(y軸方向)にピーク値を有し、L字屈折部を通過した後の絶縁スペーサ2dで観測した信号でも、図の(c)のように基準面15に垂直方向にピーク値を持つ信号分布が確認される。
【0050】
この結果から、L字状の金属タンク1c,1dの双方に絶縁スペーサ2c,2dがある場合には、両絶縁スペーサ部で電磁波検出器4によってTE11モードの電磁波の周方向の強度分布を測定し、一方の絶縁スペーサ2cにおいて基準面15にほぼ垂直方向に2点のピーク値が存在した場合には、他方の絶縁スペーサ2dにおいて同じくほぼ垂直方向に2点のピーク値が再現性をもって存在することを確認すれば、当該金属タンク内部において部分放電が発生していると判定することができる。
【0051】
以上までは、部分放電信号が基準面15に対し垂直もしくは水平方向に侵入した場合について説明した。次に、部分放電源13が基準面15に対して斜め方向に位置している場合について説明する。斜め方向に信号が進入した場合については、斜め信号を水平成分と垂直成分に分離して考えることができることが確認された。次に、これを説明する。
【0052】
図10は、基準面に斜め方向に部分放電源13が存在した場合の、L字屈折部でのTE11モードの電磁波の分布の変化につい説明する図である。図の(a)に示すように、水平方向(基準面)を基準に角度θの位置に部分放電源13が存在した場合、部分放電源13がある金属タンク1c側の絶縁スペーサ2cでは図の(b)「入力」に示すように、水平成分と垂直成分の和として角度θの位置に強い信号ピークを持つ分布が確認される。これは、角度θで侵入した大きさAの信号は、水平成分(Acosθ)と、垂直成分(Asinθ)に分割し、これらを足し合わせた結果として考えることができる。一方、L字屈折部を通過した側の絶縁スペーサ2dでは、図の(b)「出力」に示すように、水平成分,垂直成分それぞれの屈折部でモードが変換された結果を足し合わせた右下のような分布を示すことが確認された。
そこで、実際の測定においては、L字屈折部の前後の絶縁スペーサで観測された信号の円周方向の分布が、ここで予測される分布と一致した場合、すなわち、一方の絶縁スペーサ部で傾斜を持つ方向に2点のピーク値を有する強度分布が確認され、かつ、他方の絶縁スペーサ部で垂直な方向の成分と全周方向の成分との和に相当する強度分布が確認された場合、当該金属タンク内部で部分放電が発生していると判定することができる。
【0053】
以上のように本実施の形態の発明によれば、L字状の屈曲部を有する金属タンクであって、屈曲部から2方に伸びる金属タンクの双方に絶縁スペーサを有する場合、L字状の金属タンクの軸線を含む平面を基準面とするとき、一方の絶縁スペーサ部で基準面にほぼ平行な方向に2点のピーク値を有する強度分布が確認され、かつ、他方の絶縁スペーサ部で全周に亘って信号を有する強度分布が確認された場合に、L字状の金属タンク内で部分放電が発生していると判定するようにしたので、L字状の金属タンク内の周方向で基準面に平行な位置に発生する部分放電の有無を精度良く判定することができる。
【0054】
また、L字状の一方の絶縁スペーサ部で基準面にほぼ垂直な方向に2点のピーク値を有する強度分布が確認され、かつ、他方の絶縁スペーサ部でも同様な方向にピーク値を有する強度分布が確認された場合に、L字状の金属タンク内で部分放電が発生していると判定するようにしたので、L字状の金属タンク内部の周方向で基準面に垂直な位置に発生する部分放電の有無を精度良く判定することができる。
【0055】
また、L字状の一方の絶縁スペーサ部で基準面と傾斜を持つ方向に2点のピーク値を有する強度分布が確認され、かつ、他方の絶縁スペーサ部で基準面に垂直な方向の成分と全周方向の成分との和に相当する強度分布が確認された場合に、L字状の金属タンク内で部分放電が発生していると判定するようにしたので、L字状の金属タンク内部の周方向で基準面に傾斜を持つ位置に発生する部分放電の有無を精度良く判定することができる。
【0056】
実施の形態3.
図11〜図14はこの発明の実施の形態3による部分放電判定方法を説明する図である。図の(a)はT字形状の金属タンクにおける部分放電の発生位置を示し、(b)〜(d)は各絶縁スペーサ部での電磁波の強度分布を示している。図のように、直管部とこの直管部の途中からT字状に分岐した分岐管部からなるT字形状の金属タンクに対して、分岐点から3方に伸びる金属タンク1e、1f,1gのそれぞれに絶縁スペーサ2e、2f,2gを備えている。金属タンクがT字形状をしている以外の構成は、実施の形態1で説明した図1と同等であり、また部分放電判定装置も実施の形態1で説明した図と同じなので詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0057】
図中での方向を特定するために、金属タンク1e〜1gの軸線を含む平面を基準面16とする。まず、図11のように、部分放電源13が金属タンク1e側でタンク軸心を通り基準面16に平行な方向にある場合を説明する。図のような位置に部分放電源13が存在した場合、絶縁スペーサ2eでは(b)に示すように基準面16に平行な方向(x軸方向)に2つのピーク値を持つTE11モードの信号分布が確認される。こにとき、分岐部を通過した後の分岐管1f側の絶縁スペーサ2fと直管1g側の絶縁スペーサ2gにおいては、絶縁スペーサ2eにおける分布とは異なり、(c)及び(d)のように全周方向に亘って強度分布を示すことがわかる。なお、部分放電源13が直管1g側の同方向にある場合も同様である。
【0058】
一方、図12の(a)に示すように、部分放電源13が、分岐管1f側で軸心を通り基準面16に平行な方向(z軸方向)に存在した場合は、絶縁スペーサ2fにおいては、(b)に示すように基準面に平行に2点のピーク値を持つ分布が確認され、分岐部を通過した後の直管1e,1g側の絶縁スペーサ2e,2gにおいては、(c)のように周方向で全周に亘って信号を有する強度分布を示すことがわかる。
【0059】
この結果、T字形状の金属タンクにおいて、図のように直管部の両側と分岐管側に絶縁スペーサが有る場合には、各絶縁スペーサ2e〜2gにおいて、電磁波検出器4により電磁波を検出し、TE11モードの周波数を検波してタンク周方向の強度分布として見た場合、いずれか1つの絶縁スペーサ部で基準面16にほぼ平行な方向に2点のピーク値を有する強度分布が確認され、かつ、残り2個の絶縁スペーサ部で全周に亘って信号を有する強度分布が再現性をもって確認された場合に、当該金属タンクの内部で部分放電が発生していると判定することができる。
【0060】
次に、部分放電源13が、タンク軸心を通り基準面16と垂直な方向(Y軸方向)に存在する場合について説明する。図13(a)に示すように、T字形状の金属タンクの直管1e側で基準面16に垂直な方向に部分放電源13がある場合である。この場合、部分放電源13がある金属タンク1e側の縁スペーサ2eにおいては、(b)のように部分放電によるTE11モードの電磁波は基準面16に対し垂直方向に2点のピーク値を持ち、さらに、分岐部を通過した後の分岐管1f側の絶縁スペーサ2fと直管1g側の絶縁スペーサ2gにおいても、電磁波信号は(c),(d)のように同じく基準面16に対し垂直方向に2点のピーク値を持つ強度分布が確認される。
【0061】
同様に、図14(a)に示すように、部分放電源13が分岐管1f側で軸心を通り基準面16に垂直な方向に存在した場合について説明すると、部分放電源13の存在するタンク側の絶縁スペーサ2fにおいては、部分放電によるTE11モードの電磁波は(b)のように基準面16に対し垂直方向に2点のピーク値を有し、分岐部を通過した後の直管1e,1gに設けた絶縁スペーサ2e,2gで観測した電磁波信号は、(c)のように同じく基準面16に垂直方向に2点のピーク値を有する強度分布が確認されている。
【0062】
これらの結果から、T字状の金属タンクの3方に絶縁スペーサが有る場合には、各絶縁スペーサ2e〜2gにおいて電磁波検出器4によって検出した電磁波信号を処理し、タンク周方向の強度分布を取得し、いずれか1つの絶縁スペーサ部において基準面16にほぼ垂直方向に2点のピーク値が存在した場合には、その他の絶縁スペーサ部において同じく基準面16にほぼ垂直方向に2点のピーク値が再現性をもって存在することを確認することで、すなわち、全ての絶縁スペーサ部において基準面16にほぼ垂直方向に2点のピーク値を有することを確認することで、当該金属タンクの内部で部分放電が発生していると判定する。
【0063】
以上までの説明では、簡単のために部分放電源が基準面16に対し垂直もしくは水平方向にある場合について説明した。部分放電源が基準面16に対し斜め方向にある場合については、実施の形態2で説明したと同様に、斜め方向の信号を水平成分と垂直成分に分離して、それぞれのモード変換結果を再度重ね合わせることによってTE11モードの強度分布が得られる。図示は省略するが、部分放電源13が基準面16に対し斜め方向に位置する場合、3個の絶縁スペーサ部の内の何れか一箇所で基準面16と傾斜を持つ方向に2点のピーク値を有する強度分布が確認され、かつ、残り2個の絶縁スペーサ部で全周方向の成分と垂直な方向の成分の和に相当する強度分布が確認されることを検証した。
従って、実際の測定では、T字状の金属タンクの各絶縁スペーサ部において、電磁波検出器4により電磁波を検出し、信号処理によって各絶縁スペーサ部の外周方向のTE11モードの電磁波の強度分布を取得し、その結果が上記のような強度分布を示した場合に、当該金属タンク内で部分放電が発生していると判定し、それ以外は外部ノイズであると判定することができる。
【0064】
以上のように、本実施の形態の発明によれば、T字状の金属タンクにおいて、金属タンクの軸線を含む平面を基準面とするとき、3個の絶縁スペーサの内の何れか一箇所で基準面にほぼ平行な方向に2点のピーク値を有する強度分布が確認され、かつ、残り2個の絶縁スペーサ部で全周に亘って信号を有する強度分布が確認された場合に部分放電有りと判定するようにしたので、T字状の金属タンク内部の周方向で、基準面に平行な位置に発生する部分放電の有無を精度良く判定することができる。
【0065】
また、3個の絶縁スペーサ部の全てにおいて基準面にほぼ垂直な方向にピーク値を有する強度分布が確認された場合に、T字状の金属タンク内で部分放電が発生していると判定するようにしたので、T字状の金属タンク内部の周方向で、基準面に垂直な位置に発生する部分放電の有無を精度良く判定することができる。
【0066】
更にまた、3個の絶縁スペーサの内の何れか一箇所で基準面と傾斜を持つ方向にピーク値を有する強度分布が確認され、かつ、残り2個の絶縁スペーサ部で全周方向の成分と基準面に垂直な方向の成分との和に相当する強度分布が確認された場合に、T字状の金属タンク内で部分放電が発生していると判定するようにしたので、T字状の金属タンク内部の周方向で、基準面に傾斜を持つ方向の位置に発生する部分放電の有無を精度良く判定することができる。
【0067】
実施の形態4.
次に実施の形態4による部分放電判定方法について説明する。部分放電判定装置そのものは実施の形態1で説明した図1と同等なので詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。測定対象のガス絶縁機器の金属タンクは、直管,L字形状,T字形状のいずれでも良い。本実施の形態は、特に、電磁波検出器の測定点に関するものである。
ガス絶縁機器として例えばGISを対象とした場合、GISに使用されている絶縁スペーサの数は、規模にもよるが1設備で数十個〜百個以上も有るので、それらの全箇所を全周に亘って測定するには非常な時間と労力を要する。そこで、測定の効率化を考える必要がある。
【0068】
絶縁スペーサの外周の周方向で電磁波検出器により金属タンク内を伝播する電磁波を検出する場合、周方向に連続して測定する方法や、所定のピッチで測定する方法がある。上記のような測定箇所の多さを考慮して、効率的な測定方法について検証した結果、実際の絶縁スペーサの外周の全周で検出する場合、円周を8分割した点で測定すれば実用上十分であることがわかった。すなわち、円周方向に45°間隔の位置で8箇所測定すれば、周方向の強度分布が得られることが検証できた。
そこで、効率的な測定方法の一つとして、電磁波検出器によって絶縁スペーサの外周の周方向で測定する測定位置は、絶縁スペーサの外周の周方向に均等に8箇所とするものである。当然、8分割以上の点で測定すれば、より確実に強度分布が得られる。
【0069】
更に、効率的な測定方法について説明する。これまでの実施の形態で説明してきたように、絶縁スペーサ部で観測されるTE11モードの電磁波の強度分布は、その絶縁スペーサを円形方向に見たとき、円の中心点を基準に点対称となっていることが分かる。このことに着目し、絶縁スペーサの外周部で電磁波検出器により電磁波を測定する場合、全周ではなく、まず半周を測定する。そして判定部により信号処理して得られた強度分布を確認し、この範囲においてTE11モード特有の電磁波の強度分布が見られたときのみ、次に残りの1/2を測定するものである。
【0070】
GISのようなガス絶縁機器は、高度の信頼性を要求される変電設備に使用されるで、相応の品質管理の下に製造し、保守管理されており、実際に部分放電が発生する頻度は非常に少ない。そこで、実現場における測定においては、絶縁スペーサの外周の周方向で電磁波検出器により測定する場合、いきなり全ての絶縁スペーサを全周に亘って測定しないで、先ず半周を測定する。そして、半周分の測定においてE11モード特有のピークの存在が確認できなかった場合は、部分放電が発生していないか、もしくはモード変換によって均一化されたことを意味しており、いずれにしてもその絶縁スペーサ部において詳細な部分放電診断をすることは意味が無い。すなわち、所定の強度分布が確認できる絶縁スペーサのみを問題とすれば良い。部分放電が金属タンク内に発生していれば所定の強度分布を示す絶縁スペーサが必ず存在し、半周の測定においてもその兆候を捕らえることは可能である。そこで、半周分の測定においてTE11モード特有の電磁波の強度分布の存在が見られたときのみ残り1/2を測定する。その結果、TE11モードの強度分布であることが確認できれば、この絶縁スペーサを基準として実施の形態1〜3のような方法で判定するものとする。したがって、実際の現場での測定においては、測定をほぼ半分に省力化できることになる。
【0071】
さらに効果的な測定方法について説明する。先述のように、絶縁スペーサの外周の周方向で電磁波検出器により測定する場合、全周であれば8箇所で可能であるという検証結果と、上記の半周分での測定の考え方を取り入れ、先ず、絶縁スペーサ外周の周方向で、45°間隔を空けて4箇所で測定し、この範囲においてTE11モード特有の電磁波の強度分布が見られたときのみ、次に、確認のために残りの周方向に45°間隔を空けて4箇所で測定するものである。このような測定方法を実現場における測定に適用しても、部分放電の発生の有無を判定することは十分に可能である。
【0072】
以上のように、本実施の形態の発明によれば、電磁波検出器によって絶縁スペーサの外周の周方向で測定する測定位置は、絶縁スペーサの外周の周方向に均等に8箇所としたので、効率的に測定を実施することができる。
【0073】
また、電磁波検出器による絶縁スペーサの外周の周方向の測定は、まず絶縁スペーサの全周の1/2の範囲で測定し、この範囲においてTE11モード特有の電磁波の強度分布が見られたときのみ、次に残りの1/2を測定するようにしたので、測定作業の省力化と効率化が図られ、特にGISのように絶縁スペーサをたくさん有するガス絶縁機器において、多大の効果を期待できる。
【0074】
更にまた、電磁波検出器による絶縁スペーサの外周の周方向の測定は、まず絶縁スペーサの外周の周方向に45°間隔を空けて4箇所で測定し、この範囲においてTE11モード特有の電磁波の強度分布が見られたときのみ、次に残りの周方向に45°間隔を空けて4箇所を測定するようにしたので、上記に比べ更に省力化と効率化が図れる。
【0075】
実施の形態5.
次に、実施の形態5による部分放電判定方法について説明する。図15は、GISの絶縁スペーサ部位におけるタンク軸線に垂直方向の断面図を示したものである。図15に示す部分以外は実施の形態1で説明した図1と同等なので、詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。本実施の形態では、電磁波検出器を2個使用し、第1の電磁波検出器17に対し第2の電磁波検出器18を絶縁スペーサ2の周方向で90°間隔を空けて配置し、両電磁波検出器17,18で同時に検出した2つの電磁波信号の差分を差分演算器19により演算し、その値を判定部7のTE11検波装置8へ入力するように構成したものである。
【0076】
TE11モードの電磁波を利用した部分放電判定方法においてはTE11モードの強度分布が絶縁スペーサの円周方向180°の位置に対向する特徴的なピーク値が存在していることを利用していることは既に説明してきた。従って、このような特徴的な分布を測定することによって確度高く部分放電の判定ができるが、例えば、第1の電磁波検出器17でピークを捕らえた場合、90°離れた第2の電磁波検出器18の位置ではTE11モードの強度はほとんど観測されないのは、これまでの説明で明らかである。第2の電磁波検出器18で得られる信号には、TE11モードの信号は含まれず環境ノイズのみを検出することになる。この環境ノイズは測定環境全体のノイズなので、当然、第1の電磁波検出器17でも同時に検出されている。従って、両電磁波検出器17,18の差分を差分演算器19で演算することで環境ノイズのみが消去され、その信号を判定部で処理すれば、環境ノイズに影響されない部分放電のTE11モードの強度分布を得ることができる。
なお、両電磁波検出器17,18を移動させる場合には、90°の間隔を保っておくことは言うまでもない。
【0077】
以上のように、本実施の形態の発明によれば、絶縁スペーサの外周の周方向において電磁波検出器により電磁波を検出するとき、第1の電磁波検出器と第2の電磁波検出器とを周方向で90°離して配置し、両電磁波検出器で同時に検出した2つの電磁波信号の差分を演算器により演算した情報をもとに判定するようにしたので、外部ノイズの影響を排除して、精度良く部分放電の有無を判定することができる。
【0078】
実施の形態6.
次に、実施の形態6による部分放電判定装置および部分放電判定方法について説明する。これまでの実施の形態では、部分放電により発生する電磁波のうち、TE11モードを利用するものであったが、本実施の形態では、より高次のTE21モードを利用するものである。
部分放電判定装置及びガス絶縁機器の構成は、実施の形態1で説明した図1と同等なので、詳細な説明は省略し、異なる部分を主に説明する。部分放電判定装置は図16に示すように構成されている。図1と異なるのは、図1のTE11検波装置8の代わりの、TE21検波装置20となっている点である。適宜、図1〜図4を参照しながら説明する。
【0079】
実施の形態1の図1での説明と同様に、電磁波検出器4を移動装置5によって絶縁スペーサ2の外周の周方向に移動させ、周方向の複数の位置において、金属タンク内を伝播する電磁波信号を検出する。このとき、測定位置の情報は移動角検出装置6によって角度情報θとして検出し、判定部7の強度検出装置10へ送信される。判定部7では、まず電磁波検出器4からの出力を受けたTE21検波装置20が、受信信号からTE21モードが伝播しTE31モードが伝播しない周波数帯域の電磁波信号を検波する。このとき、遮断周波数の演算に必要な情報として、入力部9より金属タンクと中心導体の径情報が入力できるようになっている。検波されたTE21モードの信号は強度検出装置10へ入力される。強度検出装置10では入力信号と位置情報θをもとに金属タンクの外周方向の電磁波の強度分布を得る。その強度分布とTE21モード特有の分布とを判定装置11で比較して部分放電の有無を判定するように構成されている。
【0080】
なお、上記のTE21検波装置20で検波するTE21モードが伝播しTE31モードが伝播しない周波数帯域とは、当該ガス絶縁機器の形状情報(金属タンクと中心導体の径)をもとに情報を縁機器のるおいて式1によって計算された、TE21モードの遮断周波数以上でTE31モードの遮断周波数未満の領域である。但し、実際の運用においては厳密に範囲内に限定する必要はなく前後に多少幅があっても良い。汎用性を考えればその方が実際的である。
【0081】
次に、この部分放電判定装置を用いた具体的な部分放電判定方法について説明する。図17は、この発明の部分放電判定装置を用いたガス絶縁診断方法を示す図である。図の(a)は2個の絶縁スペーサ2h,2iで区画された直管の金属タンク1h内で部分放電が発生した場合を模式的に表している。部分放電源13は、一例として、絶縁スペーサ2hに近い位置で、水平方向(x軸)に対しθの角度を持つ位置としている。(b)は部分放電発生部分のz軸に垂直方向の断面図である。また、(c)は部分放電による電磁波信号を絶縁スペーサ2h又は2i部で観測した電磁波信号強度分布である。
【0082】
図17の(a)に示すように、金属タンク1hにおいてx軸方向からθの位置で部分放電が発生したとすると、絶縁スペーサ2h部において観測されるTE21の電磁波の強度分布は、(c)のように部分放電源13の位置する角度θを中心として90°ピッチで4箇所に信号ピークが観測される。従って、絶縁スペーサ2h部で電磁波検出器4により測定して得た電磁波信号の強度分布が、周方向にほぼ90°ピッチの4つのピーク値を持つ強度分布であることを確認できれば、部分放電による信号であると判定することができる。
【0083】
また、この4つのピーク値を持つという分布の形状は、直管の金属タンクであれば崩れることなく伝播し、例えば隣接する絶縁スペーサ2iにおいても同様の位置にピーク値が存在する。従って、直管の金属タンク1hにおいて、隣接する2つの絶縁スペーサにおけるTE21信号の強度分布を比較し、同じ位置に存在する場合に、その電磁波は当該金属タンク内部における部分放電によるものであると判定する。なお、部分放電源13に対し、13a〜13cのどの位置でも同じピークの分布を示す。
【0084】
以上のように、TE11モードに替えて、TE21モードを利用して部分放電を判定することができる。このTE21モードはTE11モードより周波数帯域が高く、環境ノイズの影響を受けにくいという特徴がある。但し、信号処理や判定アルゴリズムは複雑になる。そこで、TE21モードを利用した部分放電判定装置及び判定方法を、有効に活用する方法について説明する。
【0085】
先に説明したTE11モードを利用した部分放電判定装置及び判定方法でも確度の高い部分放電の判定が可能である。TE11モードによる判定によって部分放電の発生が疑わしい金属タンクが特定できた時に、次の処置としては、金属タンクを開放して部分放電発生原因を除去することになる。このためには、GIS等のガス絶縁変電機器を長時間に亘って停電しなければならず、多大のコストと労力を要することになるので、間違い無く部分放電が発生していることを確認することが重要な作業となる。そこで、部分放電の発生を見つけたとき、更なる念押しの確認作業が要求される場合がある。
【0086】
この念押し作業として、まずTE11モードでの判定の後で、次に当該金属タンクに対して本実施の形態のTE21モードを利用した判定を追加すれば、判定の信頼性が格段に向上する。上述のようにTE21モードはTE11モードに比較してさらに周波数帯域が高く、環境ノイズの影響を受けにくいという特徴があるので、TE11モードでの検証の後にTE21モードによって検証し、そのピーク値から円周方向にほぼ90°,180°,270°の各位置でピーク値が存在することを確認することで念押し作業が実施できる。
【0087】
なお、図16では、電磁波検出器4を移動装置5によって移動さる場合について説明したが、移動装置によらずに作業員が移動させてもよく、予め所定の場所へ複数個配置しておいてもよい。
また、測定結果により部分放電の有無を判定するにあたり、強度検出装置10として例えばパターン認識装置を使用すれば、熟練者であれば強度分布パターンを見れば、特に後段の判定装置11を使用しなくても、部分放電の有無を判定することが可能である。従って、部分放電判定装置として、判定部7の中の判定装置11は必須ではない。
更にまた、金属タンクは直管の場合のみを説明したが、L字状やT字状の場合は、TE11モードの場合と同様な考え方で、TE21モードの場合の分岐部でのモード変換を確認して強度分布を求めておき、それと測定結果とを比較することで、部分放電の判定が可能である。
【0088】
以上のように、本実施の形態の発明によれば、絶縁スペーサの外周の周方向の複数箇所において電磁波信号を検出し、TE21検波装置によってTE21モードが伝播しTE31モードが伝播しない周波数帯域の信号を抽出し、抽出した信号の強度と電磁波検出器の周方向の位置情報とから金属タンクの外周方向の電磁波の強度分布を検出し、その強度分布がTE21モード特有の分布を示すかどうかにより部分放電の有無を判定するようにしたので、部分放電で発生する電磁波の中に含まれるTE21モードの信号を効率よく捕捉し、そのモード特有の特徴を抽出できるので、外来ノイズに影響されることなく部分放電の有無を判定できる信頼性の高い部分放電判定方法又は部分放電判定装置を提供できる。
また、この発明を、TE11モードを利用した部分放電判定方法の判定結果の確認作業として実施すれば、更に精度良く部分放電の有無を判定できる。
【0089】
また、部分放電の有無の判定は、判定装置を用いて強度検出装置で得られた電磁波の強度分布とTE21モード特有の分布とを比較して判定するようにしたので、上記の効果に加え、精度良く判定を行うことができる。
【0090】
更にまた、直管の金属タンクの軸方向に設けた2個の絶縁スペーサのそれぞれにおいて測定して得た電磁波の強度分布を比較し、強度分布のピーク位置が同じであれば直管内で部分放電が発生していると判定するようにしたので、直管タンクにおける部分放電の発生の有無を精度良く判定できる。
【0091】
実施の形態7.
次に実施の形態7について説明する。部分放電判定装置の全体の構成は実施の形態6と同等なので、詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。全体の構成図としては、実施の形態1で説明した図1と基本的に同等である。主な相違点は、図18に示すように、電磁波検出器を2個使用し、第1の電磁波検出器17に対し、45°の角度を空けて第2の電磁波検出器18を配置したところである。両電磁波検出器17,18の検出信号は差分演算器19に入力され、差分信号が判定部7に入力されるように構成されている。
【0092】
次に作用について説明する。TE21モードの電磁波を利用した部分放電判定方法においてはTE21の強度分布がスペーサの円周方向に90°の位置に対向する特徴的なピークを有することを利用している。従って、このような特徴的な分布を観測することによって精度良く診断できるが、測定時には環境ノイズも存在する。そこで、第2の電磁波検出器18によって環境ノイズを測定し、これを差し引いてノイズを除去するものである。電磁波の分布は上記のように90°の位置にピーク値を有するが、ピーク位置から45°離れた位置で第2の電磁波検出器18によって検出される信号はTE21モードはほとんどなく環境ノイズのみなので、両電磁波検出器17,18で同時に測定した信号の差分を利用して環境ノイズを除去した信号を取り出すものである。
なお、両電磁波検出器17,18を移動させる場合には、45°の間隔を保っておくことは言うまでもない。
【0093】
以上のように、本実施の形態の発明によれば、絶縁スペーサの外周の周方向において電磁波検出器により電磁波を検出するとき、第1の電磁波検出器と第2の電磁波検出器とを周方向で45°離れて配置し、両電磁波検出器で同時に検出した2つの電磁波信号の差分を演算器により演算し、その値をTE21検波装置へ入力するようにしたので、外部ノイズの影響を排除し、精度良く判定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
ガス絶縁開閉装置のような、円筒状の金属タンク内に同軸に配置された中心導体を有する電気機器において、内部で発生する部分放電の検出に広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】この発明の実施の形態1における部分放電判定装置をガス絶縁機器に取り付けた図である。
【図2】図1のII−IIから見た断面図である。
【図3】同軸線路におけるTEMモード,TE11モード,及びTE21モードの電磁界分布を模式的に示す図である。
【図4】金属タンク内で部分放電が生じている場合の電磁波強度の分布の一例を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態1による直管金属タンクの部分放電判定方法を説明する図である。
【図6】図1の部分放電判定装置の判定部の他の例を示す図である。
【図7】図6の判定部で得られる強度分布パターンの一例を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態2によるL字状金属タンクの部分放電判定方法を説明する図である。
【図9】この発明の実施の形態2によるL字状金属タンクの部分放電判定方法を説明する他の例を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態2によるL字状金属タンクの部分放電判定方法を説明する別の例を示す図である。
【図11】この発明の実施の形態3によるT字状金属タンクの部分放電判定方法を説明する図である。
【図12】この発明の実施の形態3によるT字状金属タンクの部分放電判定方法を説明する他の例を示す図である。
【図13】この発明の実施の形態3によるT字状金属タンクの部分放電判定方法を説明する別の例を示す図である。
【図14】この発明の実施の形態3によるT字状金属タンクの部分放電判定方法を説明する更に別の例を示す図である。
【図15】この発明の実施の形態5による縁スペーサ部の断面図である。
【図16】この発明の実施の形態6による部分放電判定装置を示す図である。
【図17】この発明の実施の形態6による直管金属タンクの部分放電判定方法を説明する図である。
【図18】この発明の実施の形態7による縁スペーサ部の断面図である。
【符号の説明】
【0096】
1,1c〜1g 金属タンク 2,2c〜2g 絶縁スペーサ
3 中心導体 4 電磁波検出器
5 移動装置 6 移動角検出装置
7 判定部 8 TE11検波装置
10 強度検出装置 11 判定装置
13 部分放電源 14 パターン認識装置
15,16 基準面 17 第1の電磁波検出器
18 第2の電磁波検出器 19 差分演算器
20 TE21検波装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁ガスが封入された円筒形の金属タンクを絶縁スペーサで区画し、中心導体を上記絶縁スペーサで支持して構成したガス絶縁機器を対象とし、上記金属タンクの内部で発生する部分放電の有無を判定する部分放電判定方法において、
上記絶縁スペーサの外周の周方向の複数箇所において上記金属タンク内に伝播する電磁波信号を電磁波検出器により検出し、検出した上記電磁波信号から遮断周波数を利用してTE11モードが伝播しTE21モードが伝播しない周波数帯域の信号をTE11検波装置によって抽出し、抽出した上記信号の強度と上記電磁波検出器の上記周方向の位置情報とから上記金属タンクの外周方向の電磁波の強度分布を強度検出装置によって検出し、上記強度分布がTE11モード特有の分布を示すかどうかにより部分放電の有無を判定することを特徴とする部分放電判定方法。
【請求項2】
絶縁ガスが封入された円筒形の金属タンクを絶縁スペーサで区画し、中心導体を上記絶縁スペーサで支持して構成したガス絶縁機器を対象とし、上記金属タンクの内部で発生する部分放電の有無を判定する部分放電判定方法において、
上記絶縁スペーサの外周の周方向の複数箇所において上記金属タンク内に伝播する電磁波信号を電磁波検出器により検出し、検出した上記電磁波信号から遮断周波数を利用してTE11モードが伝播しTE21モードが伝播しない周波数帯域の信号をTE11検波装置によって抽出し、抽出した上記信号の強度と上記電磁波検出器の上記周方向の位置情報とから上記金属タンクの外周方向の電磁波の強度分布を強度検出装置によって検出し、判定装置によって上記強度分布とTE11モード特有の分布とを比較して部分放電の有無を判定することを特徴とする部分放電判定方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の部分放電判定方法において、上記電磁波の検出は、移動装置により上記電磁波検出器を上記絶縁スペーサの外周の周方向へ移動させて測定することを特徴とする部分放電判定方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載の部分放電判定方法において、上記電磁波の検出は、上記絶縁スペーサの外周の周方向に複数個配置された上記電磁波検出器によって行うことを特徴とする部分放電判定方法。
【請求項5】
請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載の部分放電判定方法において、上記強度検出装置としてパターン認識装置を使用することを特徴とする部分放電判定方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の部分放電判定方法において、出力がピークに達する外周位置を特定し、特定した上記外周位置から上記金属タンクの円周方向における部分放電発生源の位置を推定することを特徴とする部分放電判定方法。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の部分放電判定方法において、上記金属タンクの径および上記中心導体の径の値を入力して上記遮断周波数を演算し、上記TE11検波装置により検波する周波数帯域を設定することを特徴とする部分放電判定方法。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の部分放電判定方法において、上記金属タンクは直管であり、上記金属タンクの両側に設けた2個の絶縁スペーサ部のそれぞれにおいて測定して得た電磁波の強度分布を比較し、上記両強度分布のピーク位置が同じであれば、上記直管内で部分放電が発生していると判定することを特徴とする部分放電判定方法。
【請求項9】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の部分放電判定方法において、上記金属タンクはL字状の屈曲部を有し、上記屈曲部から2方に伸びる金属タンクのそれぞれに上記絶縁スペーサを備えており、上記L字状の金属タンクの軸線を含む平面を基準面とするとき、一方の絶縁スペーサ部で上記基準面にほぼ平行な方向に2点のピーク値を有する強度分布が確認され、かつ、他方の絶縁スペーサ部で全周に亘って信号を有する強度分布が確認された場合に、上記L字状の金属タンク内で部分放電が発生していると判定することを特徴とする部分放電判定方法。
【請求項10】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の部分放電判定方法において、上記金属タンクはL字状の屈曲部を有し、上記屈曲部から2方に伸びる金属タンクのそれぞれに上記絶縁スペーサを備えており、上記L字状の金属タンクの軸線を含む平面を基準面とするとき、上記一方の絶縁スペーサ部で上記基準面にほぼ垂直な方向に2点のピーク値を有する強度分布が確認され、かつ、他方の絶縁スペーサ部でも上記基準面にほぼ垂直な方向に2点のピーク値を有する強度分布が確認された場合に、上記L字状の金属タンク内で部分放電が発生していると判定することを特徴とする部分放電判定方法。
【請求項11】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の部分放電判定方法において、上記金属タンクはL字状の屈曲部を有し、上記屈曲部から2方に伸びる金属タンクのそれぞれに上記絶縁スペーサを備えており、上記L字状の金属タンクの軸線を含む平面を基準面とするとき、一方の絶縁スペーサ部で上記基準面と傾斜を持つ方向に2点のピーク値を有する強度分布が確認され、かつ、他方の絶縁スペーサ部で上記基準面に垂直な方向の成分と全周方向の成分との和に相当する強度分布が確認された場合に、上記L字状の金属タンク内で部分放電が発生していると判定することを特徴とする部分放電判定方法。
【請求項12】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の部分放電判定方法において、上記金属タンクは直管部とこの直管部の途中からT字状に分岐した分岐管部とを有し、分岐点から3方に伸びる金属タンクのそれぞれに絶縁スペーサを備えており、上記T字状の金属タンクの軸線を含む平面を基準面とするとき、上記3個の絶縁スペーサ部のうちの何れか一箇所で上記基準面にほぼ平行な方向に2点のピーク値を有する強度分布が確認され、かつ、残り2個の絶縁スペーサ部で全周に亘って信号を有する強度分布が確認された場合に、上記T字状の金属タンク内で部分放電が発生していると判定することを特徴とする部分放電判定方法。
【請求項13】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の部分放電判定方法において、上記金属タンクは直管部とこの直管部の途中からT字状に分岐した分岐管部とを有し、分岐点から3方に伸びる金属タンクのそれぞれに絶縁スペーサを備えており、上記T字状の金属タンクの軸線を含む平面を基準面とするとき、上記3個の絶縁スペーサ部の全てにおいて上記基準面にほぼ垂直な方向に2点のピーク値を有する強度分布が確認された場合に、上記T字状の金属タンク内で部分放電が発生していると判定することを特徴とする部分放電判定方法。
【請求項14】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の部分放電判定方法において、上記金属タンクは直管部とこの直管部の途中からT字状に分岐した分岐管部とを有し、分岐点から3方に伸びる金属タンクのそれぞれに絶縁スペーサを備えており、上記T字状の金属タンクの軸線を含む平面を基準面とするとき、上記3個の絶縁スペーサ部のうちの何れか一箇所で上記基準面と傾斜を持つ方向に2点のピーク値を有する強度分布が確認され、かつ、残り2個の絶縁スペーサ部で上記基準面に垂直な方向の成分と全周方向の成分との和に相当する強度分布が確認された場合に、上記T字状の金属タンク内で部分放電が発生していると判定することを特徴とする部分放電判定方法。
【請求項15】
請求項1〜請求項14のいずれか1項に記載の部分放電判定方法において、上記電磁波検出器によって上記絶縁スペーサの外周の周方向で測定する測定位置は、上記絶縁スペーサの外周の周方向に均等に8箇所とすることを特徴とする部分放電判定方法。
【請求項16】
請求項1〜請求項14のいずれか1項に記載の部分放電判定方法において、上記電磁波検出器による上記絶縁スペーサの外周の周方向での測定は、まず上記絶縁スペーサの全周の1/2の範囲で実施し、この範囲においてTE11モード特有の電磁波の強度分布が見られたときのみ、次に残りの1/2を測定することを特徴とする部分放電判定方法。
【請求項17】
請求項1〜請求項14のいずれか1項に記載の部分放電判定方法において、上記電磁波検出器によって上記絶縁スペーサの外周の周方向での測定は、まず上記絶縁スペーサの外周の周方向に45°間隔を空けて4箇所で実施し、この範囲においてTE11モード特有の電磁波の強度分布が見られたときのみ、次に残りの周方向に45°間隔を空けて4箇所で測定することを特徴とする部分放電判定方法。
【請求項18】
請求項1〜請求項14のいずれか1項に記載の部分放電判定方法において、上記絶縁スペーサの外周の周方向において電磁波を検出す電磁波検出器は、第1の電磁波検出器と、この第1の電磁波検出器から90°間隔を空けて配置した第2の電磁波検出器とを備え、上記両電磁波検出器で同時に検出した2つの電磁波信号の差分を演算器により演算して上記TE11検波装置へ入力するようにしたことを特徴とする部分放電判定方法。
【請求項19】
絶縁ガスが封入された円筒形の金属タンクを絶縁スペーサで区画し、中心導体を上記絶縁スペーサで支持して構成したガス絶縁機器を対象とし、上記金属タンクの内部で発生する部分放電の有無を判定する部分放電判定装置において、
上記絶縁スペーサの外周の周方向の複数箇所において上記金属タンク内に伝播する電磁波信号を検出する電磁波検出器と、検出した上記電磁波信号を受信し遮断周波数を利用してTE11モードが伝播しTE21モードが伝播しない周波数帯域の信号を抽出するTE11検波装置と、抽出した上記信号の強度と上記電磁波検出器の上記周方向の位置情報とから上記金属タンクの外周方向の電磁波の強度分布を検出する強度検出装置とを備えたことを特徴とする部分放電判定装置。
【請求項20】
絶縁ガスが封入された円筒形の金属タンクを絶縁スペーサで区画し、中心導体を上記絶縁スペーサで支持して構成したガス絶縁機器を対象とし、上記金属タンクの内部で発生する部分放電の有無を判定する部分放電判定装置において、
上記絶縁スペーサの外周の周方向の複数箇所において上記金属タンク内に伝播する電磁波信号を検出する電磁波検出器と、検出した上記電磁波信号を受信し遮断周波数を利用してTE11モードが伝播しTE21モードが伝播しない周波数帯域の信号を抽出するTE11検波装置と、抽出した上記信号の強度と上記電磁波検出器の上記周方向の位置情報とから上記金属タンクの外周方向の電磁波の強度分布を検出する強度検出装置と、検出した上記強度分布とTE11モード特有の分布とを比較して部分放電の有無を判定する判定装置とを備えたことを特徴とする部分放電判定装置。
【請求項21】
絶縁ガスが封入された円筒形の金属タンクを絶縁スペーサで区画し、中心導体を上記絶縁スペーサで支持して構成したガス絶縁機器を対象とし、上記金属タンクの内部で発生する部分放電の有無を判定する部分放電判定方法において、
上記絶縁スペーサの外周の周方向の複数箇所において上記金属タンク内に伝播する電磁波信号を電磁波検出器により検出し、検出した上記電磁波信号から遮断周波数を利用してTE21モードが伝播しTE31モードが伝播しない周波数帯域の信号をTE21検波装置によって抽出し、抽出した上記信号の強度と上記電磁波検出器の上記周方向の位置情報とから上記金属タンクの外周方向の電磁波の強度分布を強度検出装置によって検出し、上記強度分布がTE21モード特有の分布を示すかどうかにより部分放電の有無を判定することを特徴とする部分放電判定方法。
【請求項22】
絶縁ガスが封入された円筒形の金属タンクを絶縁スペーサで区画し、中心導体を上記絶縁スペーサで支持して構成したガス絶縁機器を対象とし、上記金属タンクの内部で発生する部分放電の有無を判定する部分放電判定方法において、
上記絶縁スペーサの外周の周方向の複数箇所において上記金属タンク内に伝播する電磁波信号を電磁波検出器により検出し、検出した上記電磁波信号から遮断周波数を利用してTE21モードが伝播しTE31モードが伝播しない周波数帯域の信号をTE21検波装置によって抽出し、抽出した上記信号の強度と上記電磁波検出器の上記周方向の位置情報とから上記金属タンクの外周方向の電磁波の強度分布を強度検出装置によって検出し、判定装置によって上記強度分布とTE21モード特有の分布とを比較して部分放電の有無を判定することを特徴とする部分放電判定方法。
【請求項23】
請求項21又は請求項22記載の部分放電判定方法において、上記金属タンクは直管であり、上記金属タンクの両側に設けた2個の絶縁スペーサのそれぞれにおいて測定して得た電磁波の強度分布を比較し、上記両強度分布のピーク位置が同じであれば、上記直管内で部分放電が発生していると判定することを特徴とする部分放電判定方法。
【請求項24】
請求項21〜請求項23のいずれか1項に記載の部分放電判定方法において、上記絶縁スペーサの外周の周方向において電磁波を検出す電磁波検出器は、第1の電磁波検出器と、この第1の電磁波検出器から45°間隔を空けて配置した第2の電磁波検出器とからなり、上記両電磁波検出器で同時に検出した2つの電磁波信号の差分を演算器により演算して上記TE21検波装置へ入力するようにしたことを特徴とする部分放電判定方法。
【請求項25】
絶縁ガスが封入された円筒形の金属タンクを絶縁スペーサで区画し、中心導体を上記絶縁スペーサで支持して構成したガス絶縁機器を対象とし、上記金属タンクの内部で発生する部分放電の有無を判定する部分放電判定方法において、
上記絶縁スペーサの外周の周方向の複数箇所において上記金属タンク内に伝播する電磁波信号を検出する電磁波検出器と、検出した上記電磁波信号を受信し遮断周波数を利用してTE21モードが伝播しTE31モードが伝播しない周波数帯域の信号を抽出するTE21検波装置と、抽出した上記信号の強度と上記電磁波検出器の上記周方向の位置情報とから上記金属タンクの外周方向の電磁波の強度分布を検出する強度検出装置とを備えたことを特徴とする部分放電判定装置。
【請求項26】
絶縁ガスが封入された円筒形の金属タンクを絶縁スペーサで区画し、中心導体を上記絶縁スペーサで支持して構成したガス絶縁機器を対象とし、上記金属タンクの内部で発生する部分放電の有無を判定する部分放電判定装置において、
上記絶縁スペーサの外周の周方向の複数箇所において上記金属タンク内に伝播する電磁波信号を検出する電磁波検出器と、検出した上記電磁波信号を受信し遮断周波数を利用してTE21モードが伝播しTE31モードが伝播しない周波数帯域の信号を抽出するTE21検波装置と、抽出した上記信号の強度と上記電磁波検出器の上記周方向の位置情報とから上記金属タンクの外周方向の電磁波の強度分布を検出する強度検出装置と、検出した上記強度分布とTE21モード特有の分布とを比較して部分放電の有無を判定する判定装置とを備えたことを特徴とする部分放電判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−266820(P2006−266820A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−84305(P2005−84305)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】