部分放電計測装置及び部分放電計測システム
【課題】従来技術では、部分放電信号を精度良く検出することが難しかった。
【解決手段】インバータ装置と電気負荷を接続する電力線の一部に一端が接続され、インバータ装置の駆動によって発生し、部分放電信号に重畳される高周波ノイズの全部又は一部を除去するための「第一抵抗」2と、第一抵抗の他端と接続され、他のコンデンサと対となって部分放電電圧を分圧して低電圧にするための「第一コンデンサ」3と、第一コンデンサの他端と接続され、インバータ装置の駆動によって発生し、部分放電信号に重畳される高周波ノイズの全部又は一部を除去するための「第二抵抗」4と、第二抵抗の他端と接地との間に接続され、第一コンデンサと対となって前記分圧の機能を果たす「第二コンデンサ」5と、第二抵抗と第二コンデンサの両端にかかる電圧値を検出可能な「電圧検出センサ」6と、を有する「部分放電計測装置」1などを提案する。
【解決手段】インバータ装置と電気負荷を接続する電力線の一部に一端が接続され、インバータ装置の駆動によって発生し、部分放電信号に重畳される高周波ノイズの全部又は一部を除去するための「第一抵抗」2と、第一抵抗の他端と接続され、他のコンデンサと対となって部分放電電圧を分圧して低電圧にするための「第一コンデンサ」3と、第一コンデンサの他端と接続され、インバータ装置の駆動によって発生し、部分放電信号に重畳される高周波ノイズの全部又は一部を除去するための「第二抵抗」4と、第二抵抗の他端と接地との間に接続され、第一コンデンサと対となって前記分圧の機能を果たす「第二コンデンサ」5と、第二抵抗と第二コンデンサの両端にかかる電圧値を検出可能な「電圧検出センサ」6と、を有する「部分放電計測装置」1などを提案する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ装置と接続された電気負荷に発生する部分放電を計測する部分放電計測装置及び部分放電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
インバータサージは、電源に使われるスイッチング素子の動作に伴い発生するものであり、電圧波形の急峻な立ち上がりとして検出される。インバータサージを対象とした測定法としては、直列コンデンサを用いる残留電荷法が知られている。残留電荷法に関する先行技術として、例えば特許文献1に示す技術などが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−74981
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】IEC 60270 Ed3.0:"High-voltage test techniques - Partial discharge measurements"(2000)
【非特許文献2】JEC0401:「部分放電測定」、電気学会電気規格調査会 (1990)
【非特許文献3】絶縁試験法ハンドブック改訂委員会編:「高電圧試験ハンドブック」、電気学会、昭和58年3月(1983)
【非特許文献4】「インバータサージの絶縁システムへの影響」、電気学会技術報告第739号(1999.8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、インバータサージは、商用周波数の正弦波と比較すると波形が複雑であり、かつ波形に含まれる周波数は広帯域にわたる。また、回路現象として種々のノイズが派生的に発生するものである。このため、正弦波を対象とした部分放電測定と比較して、インバータサージの部分放電の検出は難しいものであった。従来技術の残留電荷法などでは、インバータサージによる波形と回路現象によるノイズ波形を区別することが難しく、インバータサージによる部分放電の適正な信号を検出することできなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、本発明は、インバータ装置と接続された電気負荷に発生する部分放電を計測する部分放電計測装置であって、インバータ装置と電気負荷を接続する電力線の一部に一端が接続され、インバータ装置の駆動によって発生し、部分放電信号に重畳される高周波ノイズの全部又は一部を除去するための第一抵抗と、第一抵抗の他端と接続され、他のコンデンサと対となって部分放電電圧を分圧して低電圧にするための第一コンデンサと、第一コンデンサの他端と接続され、インバータ装置の駆動によって発生し、部分放電信号に重畳される高周波ノイズの全部又は一部を除去するための第二抵抗と、第二抵抗の他端と接地との間に接続され、第一コンデンサと対となって前記分圧の機能を果たす第二コンデンサと、第二抵抗と第二コンデンサの両端にかかる電圧値を検出可能な電圧検出センサと、を有する部分放電計測装置を提案する。
【発明の効果】
【0007】
上記の構成をとる本発明では、部分放電信号に重畳される高周波の影響を抑制することができ、部分放電信号を高い精度で検出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の部分放電計測装置の構成を示した図
【図2】実施例1の部分放電計測装置の抵抗の機能を説明した図
【図3】シールドケースを付加した部分放電計測装置の構成を示した図
【図4】電気光変換システムを付加した部分放電計測装置の構成を示した図
【図5】同軸構造を有する部分放電計測装置の構成を示した図
【図6】実施例2の部分放電計測装置の構成を示した図
【図7】実施例3の部分放電計測装置の構成を示した図
【図8】実施例3の部分放電計測装置の他の構成を示した図
【図9】実施例4の部分放電計測装置の構成を示した図
【図10】実施例4の部分放電計測装置の他の構成を示した図
【図11】実施例5の部分放電計測装置の構成を示した図
【図12】実施例5の放電電荷算出部のハードウェア構成を示した図
【図13】実施例6の部分放電計測装置の構成を示した図
【図14】シールド電極を付加した部分放電計測装置の構成を示した図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例を説明する。実施例と請求項の相互の関係は、以下のとおりである。実施例1は主に請求項1、2、3などに関し、実施例2は主に請求項4などに関し、実施例3は主に請求項5などに関し、実施例4は主に請求項6などに関し、実施例5は主に請求項7などに関し、実施例6は主に請求項8などに関する。なお、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、様々な態様で実施しうる。
【実施例1】
【0010】
<概要>
本実施例の部分放電計測装置は、部分放電信号に重畳される高周波ノイズを、コンデンサの高圧側に配置された抵抗により抑制することができる。これにより、部分放電信号を高い精度で検出することが可能になる。
【0011】
<構成>
図1は、本実施例の部分放電計測装置の構成を示した図である。この図にあるように、本実施例の「部分放電計測装置」1は、「第一抵抗」2と、「第一コンデンサ」3と、「第二抵抗」4、「第二コンデンサ」5と、「電圧検出センサ」6と、から構成される。以下、本実施例の部分放電計測装置の各構成について説明する。
【0012】
「部分放電計測装置」は、「インバータ装置」41と接続された「電気負荷」42に発生する部分放電を計測する装置である。インバータ装置は、直流電力を交流電力に変換可能な装置である。電気負荷としては、モーターを備えた種々の機器が主として考えられるが、インバータ装置により駆動される装置であれば足りる。
【0013】
「第一抵抗」は、インバータ装置と電気負荷を接続する電力線の一部に一端が接続され、インバータ装置の駆動によって発生し、部分放電信号に重畳される高周波ノイズの全部又は一部を除去するための機能を有する。コンデンサには素子内部に残留インダクタンス成分が存在するためにコンデンサ単体では高周波ノイズが検出データに重畳されるが、抵抗をコンデンサの高圧側に配置することにより当該高周波ノイズの振動抑制を図ることが可能になる(図2)。
【0014】
「第一コンデンサ」は、第一抵抗の他端と接続され、他のコンデンサと対となって部分放電電圧を分圧して低電圧にするための機能を有する。高電圧のままでは以下に述べる電圧検出センサにて電圧値を検出することが困難であるため、第一コンデンサにより計測可能な電圧値にまで分圧する。第一コンデンサの容量としては、高圧側であることを鑑みて、「pF」程度のオーダーとすることが好ましい。なお、第一コンデンサには有意な値の残留抵抗が存在する場合もあり、当該残留抵抗を第一抵抗とみなすことも可能である。つまり、第一抵抗は第一コンデンサと独立な部品として設ける必要は必ずしもなく、第一コンデンサのみを部品として設ける構成も考えられる。
【0015】
「第二抵抗」は、第一コンデンサの他端と接続され、インバータ装置の駆動によって発生し、部分放電信号に重畳される高周波ノイズの全部又は一部を除去するための機能を有する。つまり、第一抵抗により第一コンデンサの高圧側で高周波ノイズを除去し、第二抵抗により第二コンデンサの高圧側でさらに高周波ノイズを除去する。
【0016】
「第二コンデンサ」は、第二抵抗の他端と接地との間に接続され、第一コンデンサと対となって前記分圧の機能を果たす。第二コンデンサは、低圧側であることを鑑みて、「μF」程度のオーダーとすることが好ましい。この場合、容量が小さいコンデンサと比較して素子内部の残留インダクタンス成分が強く効き、より高周波ノイズの振動が発生しやすくなるが、第二抵抗の機能により振動の抑制を図ることが可能になる。
【0017】
また、抵抗とコンデンサに対して外部の電磁場の影響を遮蔽するシールドを設け、外部からのノイズの侵入を抑制する構成も可能である。例えば、第二抵抗と第二コンデンサが低圧側にあることに起因して外部からのノイズの影響を受けやすいと判断される場合は、図3に示すように、「第二抵抗」4と「第二コンデンサ」5を覆う「シールドケース」21を別途設ける構成が考えられる。なお、「第一抵抗」2や「第一コンデンサ」3を覆う構成も同様に可能である。
【0018】
第一抵抗の値と第一コンデンサの容量の積である第一時定数と第二抵抗の値と第二コンデンサの容量の積である第二時定数がほぼ等しくする構成も可能である。このように第一時定数と第二時定数をほぼ等しくすることにより応答特性がほぼ等しくなり、部分放電信号をより高い精度で検出することが可能になる。例えば、第一コンデンサは第二コンデンサと比較して低容量である場合は、上記時定数がほぼ等しくなるように第一抵抗は第二抵抗と比較して高抵抗となるように調整する。
【0019】
また、図14に示すように、シールド電極を付加する構成も可能である。当該構成とすることにより、抵抗と大地又は近接導体との浮遊容量に基づく誤差を軽減することができ、応答特性をさらに向上させることが可能になる。具体的には、浮遊容量によって抵抗表面から大地に流出する充電電流を打ち消すだけの電流がシールド電極から抵抗表面に供給されるようにする。特に、シールド電極による静電位分布と、抵抗の抵抗値による電位分布とが一致するようにし、シールド電極の静電容量を小さくすることが好ましい。
また、図14の例では第一抵抗の上部と接地付近にシールド電極を設けたが、第二抵抗の上部と接地付近にシールド電極を設ける構成とすることも可能である。
【0020】
「電圧検出センサ」は、第二抵抗と第二コンデンサの両端にかかる電圧値を検出可能な機能を有する。第二抵抗と第二コンデンサの両端にかかる電圧値を計測することで、高周波ノイズが除去された信号を電圧値として検出することが可能になる。なお、電圧値に基づいて算出される電流値を時間積分することにより、放電電荷を算出することも可能である。
【0021】
なお、図4に示すように、「電圧検出センサ」6が「第二抵抗」4や「第二コンデンサ」5から離れた位置にある場合などは、電気信号を光信号に変換して伝送し、電圧検出センサ側で光信号から電気信号に逆変換可能な「電気光変換システム」22を設ける構成も可能である。当該構成とすることにより、信号に対するノイズの侵入が少なくなり、より精度の高いデータ検出が可能になる。
【0022】
また、第一抵抗と第一コンデンサの組み合わせ、又は/及び第二抵抗と第二コンデンサの組み合わせを同軸構造とすることも好ましい。図5は、第二抵抗と第二コンデンサの組み合わせを「同軸構造」23とした場合の一例を示す図である。このように、抵抗とコンデンサからなる組み合わせを同軸構造とすることにより、抵抗あるいはコンデンサの残留インダクタンスを低減でき、部分放電パルスに対する応答時間を改善できる。同時に、外部ノイズの影響を抑制することができ、部分放電信号の検出精度をさらに向上させることが可能になる。特に、第二コンデンサの容量を小さな値に設定する場合は、当該部分において高周波ノイズの影響を受けやすいため、第二抵抗と第二コンデンサの組み合わせを同軸構造とすることが好ましい。
【0023】
<効果>
以上のように、本実施例の部分放電計測装置により、部分放電信号に重畳される高周波の影響を抑制することができ、部分放電信号を高い精度で検出することが可能になる。
【実施例2】
【0024】
<構成>
図6は、本実施例の部分放電計測装置の構成を示した図である。この図にあるように、本実施例の「部分放電計測装置」1は、「第一抵抗」2と、「第一コンデンサ」3と、「第二抵抗」4、「第二コンデンサ」5と、「電圧検出センサ」6と、「並列保護回路」7と、から構成される。以下、実施例1との相違点である並列保護回路について説明する。
【0025】
「並列保護回路」は、第二抵抗と第二コンデンサの組み合わせと並列に配置され、所定の電圧閾値を超えた過電圧の通過を許容する機能を有する。第一コンデンサで高電圧を分圧してもなお第二抵抗と第二コンデンサの両端に高い電圧がかかる場合がある。この場合、第二抵抗と第二コンデンサの組み合わせと並列に並列保護回路を配置することにより、電圧検出センサに過電圧がかかる危険性を回避することが可能になる。並列保護回路としては、予め定められた電圧閾値を超過した場合に回路が閉じるように設計されたスイッチ回路が考えられる。
【0026】
<効果>
以上のように、本実施例の部分放電計測装置により、電圧検出センサの内部部品を過電圧から保護しつつ、部分放電信号を高い精度で検出することが可能になる。
【実施例3】
【0027】
<構成>
本実施例の部分放電計測装置は、実施例1の図1で示した構成と同様であり、「第一抵抗」と、「第一コンデンサ」と、「第二抵抗」と、「第二コンデンサ」と、「電圧検出センサ」と、から構成される。ただし、第一抵抗と第一コンデンサの組み合わせ、又は/及び第二抵抗と第二コンデンサの組み合わせを中心部から放射状に配置したことを特徴とする。図7は、「第二抵抗」4と「第二コンデンサ」5の組み合わせを「中心部から放射状に配置した構造」24の一例を示す図である。
【0028】
当該構成とすることにより軸対称性ができるため、第一抵抗と第一コンデンサの組み合わせや、第二抵抗と第二コンデンサの組み合わせに存在するインダクタンスを当該対称性により打ち消すことが可能になる。結果として、高周波ノイズの影響を抑制することが可能になり、部分放電を高い制度で検出することが可能になる。
【0029】
なお、第二抵抗と第二コンデンサの組み合わせを中心部から放射状に配置した構造に加えて、図8に示すように、外部の電磁界の影響を遮蔽する「シールドケース」21を設ける構成も可能である。当該構成とすることにより、外部からのノイズの侵入を抑制することが可能になる。また、上記の例では第二抵抗と第二コンデンサの組み合わせに関して中心部から放射状に配置した構造を示したが、第一抵抗と第一コンデンサの組み合わせについても同様の構成が可能である。
【0030】
<効果>
本実施例の部分放電計測装置により、高周波ノイズの影響をさらに抑えることができ、部分放電信号を高い精度で検出することが可能になる。
【実施例4】
【0031】
<構成>
図9は、本実施例の部分放電計測装置の構成の一例を示した図である。この図にあるように、本実施例の「部分放電計測装置」1は、「複数直列回路」8と、「第二抵抗」4、「第二コンデンサ」5と、「電圧検出センサ」6と、から構成される。以下、実施例1から3との相違点である複数直列回路について説明する。
【0032】
「複数直列回路」は、実施例1から3で説明した第一抵抗と第一コンデンサからなる直列回路を複数直列に接続した回路である。第一抵抗と第一コンデンサからなる直列回路単体だけでは分圧を効率的に行うことができない場合もある。この場合、第一抵抗と第一コンデンサからなる直列回路を複数直列に接続した回路に置き換えることにより、直列回路単体よりも効率的に分圧の機能を果たすことが可能になる。
【0033】
なお、上記の各直列回路を構成する第一抵抗と第一コンデンサの値は、直列回路ごとに異なる値を設定する構成も可能である。ただし、各直列回路を構成する第一抵抗の値と第一コンデンサの容量の積である時定数は直列回路ごとにほぼ等しくなるようにすることが好ましい。当該構成とすることにより、実施例1で説明したように、信号に対する応答特性の改善を図ることが可能になる。
【0034】
なお、図10に示すように、図9の構成に加えて抵抗とコンデンサからなる回路を覆うように、外部の電磁場の影響を遮蔽する「シールドケース」21を設ける構成も可能である。当該構成とすることにより、回路全体が大きくなっても外部ノイズの侵入を抑制することが可能になる。
【0035】
<効果>
本実施例の部分放電計測装置により、効率的に分圧を行うことができ、部分放電信号を高い精度で検出することが可能になる。
【実施例5】
【0036】
<構成>
図11は、本実施例の部分放電計測装置を含む全体の構成を示した図である。この図にあるように、本実施例の「部分放電計測装置」1は、「第一抵抗」2と、「第一コンデンサ」3と、「第二抵抗」4、「第二コンデンサ」5と、「電圧検出センサ」6と、「放電電荷算出部」9と、から構成される。以下、実施例1から4との相違点である放電電荷算出部について説明する。
【0037】
「放電電荷算出部」は、電圧検出センサで検出された電圧値から放電電荷を算出可能な機能を有する。電圧検出センサにより第二抵抗と第二コンデンサの両端にかかる電圧値を検出することが可能であるため、当該抵抗値とコンデンサの容量に基づいて電流値を算出することが可能になる。当該電流値を時間積分する処理を行うことにより、放電電荷を算出することが可能になる。
【0038】
当該放電電荷算出部の機能は、例えば図12に示すようなハードウェア構成を用いて実現することが可能である。この図に示すように、全体の制御を行う「CPU」31と、CPUにおいて実行されるプログラムなどを記録する「ROM」32と、各種データを一時的に記録し、かつ、CPUにおいてプログラムを実行する際の作業領域となる「メインメモリ(RAM)」33と、各種データを記録可能な「補助記憶装置」34と、外部装置とデータの入出力が可能な「入出力装置」35と、所望のデータを表示可能な「ディスプレイ装置」36と、操作入力操作を受け付け可能な「操作入力機器」37と、を有する構成が考えられる。また、これらの各構成は、「システムバス」38を介して相互にデータの送受信を行うことが可能である。
【0039】
CPUは、ROMからメインメモリに読み出した放電電荷算出プログラムを実行し、以下の処理を行う。まず、電圧検出センサから出力された電圧値のデータを入出力装置を介して取得し、メインメモリの所定のアドレスに格納する。次に、第二抵抗の値及び第二コンデンサの容量のデータとをメインメモリに読み出す。さらに、電圧値のデータ及び第二抵抗の値、第二コンデンサの容量に基づいて電流値を算出し、当該算出結果について時間積分を行って放電電荷を算出する処理を行い、その処理結果をメインメモリの所定のアドレスに格納する。さらに、当該処理結果をディスプレイ装置に対して出力する処理を行う。
【0040】
<効果>
本実施例の部分放電計測装置により、部分放電信号を高い精度で検出し、放電電荷を算出することが可能になる。
【実施例6】
【0041】
<構成>
図13は、本実施例の部分放電計測システムの構成を示した図である。この図にあるように、本実施例の「部分放電計測システム」10は、「部分放電電磁界検出部」11と、「部分放電計測装置」1と、「判断部」12と、「判定結果出力部」13と、から構成される。この図の例では、判断部と判定結果出力部が同一のハードウェアから構成される例を示しているが、別々とする構成も可能である。以下、実施例1から5との相違点である部分放電電磁界検出部と、判定部と、判定結果出力部について説明する。
【0042】
「部分放電電磁界検出部」は、部分放電によって生じ空中を伝搬する部分放電電磁界を検出する機能を有する。部分放電によって電磁場に擾乱が生じ電磁波として空中伝搬するため、当該電磁波を検出可能なアンテナ装置を上記部分放電電磁界検出部として利用することが考えられる。
【0043】
「部分放電計測装置」は実施例1から5で説明した部分放電計測装置又はその装置の機能を組み合わせたものを利用することが可能である。
【0044】
「判断部」は、部分放電電磁界検出部と部分放電計測装置の両者によって計測される検出信号の時間軸を調整し、放電由来のシグナルが同じタイミングで発生しているか判断する機能を有する。部分放電が発生した場合、部分放電電磁界検出部と部分放電計測装置の計測データ双方において同期する急峻な立ち上がりが見られることが想定される。よって、同じタイミングで放電由来のシグナルが発生しているか否かを判断することで、部分放電信号の発生を高い精度で検出することが可能になる。
【0045】
「判定結果出力部」は、判断部での判断結果が、放電由来のシグナルが同じタイミングで発生しているとの判断である場合に部分放電があったとの判定結果を出力する機能を有する。ここでの判定結果は、ディスプレイ装置を介して表示出力することも可能であるし、記録媒体にデータ出力することや、音声出力装置を介して音声出力したり、印刷出力装置を介して印刷出力したりする構成も可能である。
【0046】
当該判断部や判定結果出力部の機能は、実施例5の図12で示したものと同様のハードウェア構成を用いて実現することが可能である。
【0047】
CPUは、ROMからメインメモリに読み出した判断プログラムを実行し、以下の処理を行う。まず、部分放電電磁界検出部から出力された検出データを入出力装置を介して取得し、メインメモリの所定のアドレスに格納する。次に、電磁波の伝搬速度や電磁波発生源から部分放電電磁界検出部までの距離に基づいて部分放電計測装置にて計測したデータと時間軸を調整する処理を行う。次に、部分放電電磁界検出部と部分放電計測装置の各データについて部分放電由来と判定される急峻な時間変化のデータ箇所を検索し、当該放電由来のシグナルが同じタイミングで発生しているか否か判断する処理を行い、処理結果をメインメモリの所定のアドレスに格納する。
【0048】
また、CPUは、ROMからメインメモリに読み出した判定結果出力プログラムを実行し、以下の処理を行う。まず、判断プログラムの処理結果が放電由来のシグナルが同じタイミングで発生しているとの処理結果である場合は、部分放電があったとの判定結果をデータ出力する処理を行う。当該データは、補助記憶装置の所定のアドレスに出力することも可能であるし、ディスプレイ装置に対して表示出力したりすることも可能である。
【0049】
<効果>
本実施例の部分放電計測システムにより、部分放電信号をさらに高い精度で検出することが可能になる。
【符号の説明】
【0050】
1…部分放電計測装置、2…第一抵抗、3…第一コンデンサ、4…第二抵抗、5…第二コンデンサ、6…電圧検出センサ、7…並列保護回路、8…複数直列回路、9…放電電荷算出部、10…部分放電計測システム、11…部分放電電磁界検出部、12…判断部、13…判定結果出力部、21…シールドケース、22…電気光変換システム、23…同軸構造、24…中心部から放射状に配置した構造、25…シールド電極、31…CPU、32…ROM、33…メインメモリ、34…補助記憶装置、35…入出力装置、36…ディスプレイ装置、37…操作入力装置、38…システムバス、41…インバータ装置、42…負荷
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ装置と接続された電気負荷に発生する部分放電を計測する部分放電計測装置及び部分放電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
インバータサージは、電源に使われるスイッチング素子の動作に伴い発生するものであり、電圧波形の急峻な立ち上がりとして検出される。インバータサージを対象とした測定法としては、直列コンデンサを用いる残留電荷法が知られている。残留電荷法に関する先行技術として、例えば特許文献1に示す技術などが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−74981
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】IEC 60270 Ed3.0:"High-voltage test techniques - Partial discharge measurements"(2000)
【非特許文献2】JEC0401:「部分放電測定」、電気学会電気規格調査会 (1990)
【非特許文献3】絶縁試験法ハンドブック改訂委員会編:「高電圧試験ハンドブック」、電気学会、昭和58年3月(1983)
【非特許文献4】「インバータサージの絶縁システムへの影響」、電気学会技術報告第739号(1999.8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、インバータサージは、商用周波数の正弦波と比較すると波形が複雑であり、かつ波形に含まれる周波数は広帯域にわたる。また、回路現象として種々のノイズが派生的に発生するものである。このため、正弦波を対象とした部分放電測定と比較して、インバータサージの部分放電の検出は難しいものであった。従来技術の残留電荷法などでは、インバータサージによる波形と回路現象によるノイズ波形を区別することが難しく、インバータサージによる部分放電の適正な信号を検出することできなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、本発明は、インバータ装置と接続された電気負荷に発生する部分放電を計測する部分放電計測装置であって、インバータ装置と電気負荷を接続する電力線の一部に一端が接続され、インバータ装置の駆動によって発生し、部分放電信号に重畳される高周波ノイズの全部又は一部を除去するための第一抵抗と、第一抵抗の他端と接続され、他のコンデンサと対となって部分放電電圧を分圧して低電圧にするための第一コンデンサと、第一コンデンサの他端と接続され、インバータ装置の駆動によって発生し、部分放電信号に重畳される高周波ノイズの全部又は一部を除去するための第二抵抗と、第二抵抗の他端と接地との間に接続され、第一コンデンサと対となって前記分圧の機能を果たす第二コンデンサと、第二抵抗と第二コンデンサの両端にかかる電圧値を検出可能な電圧検出センサと、を有する部分放電計測装置を提案する。
【発明の効果】
【0007】
上記の構成をとる本発明では、部分放電信号に重畳される高周波の影響を抑制することができ、部分放電信号を高い精度で検出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の部分放電計測装置の構成を示した図
【図2】実施例1の部分放電計測装置の抵抗の機能を説明した図
【図3】シールドケースを付加した部分放電計測装置の構成を示した図
【図4】電気光変換システムを付加した部分放電計測装置の構成を示した図
【図5】同軸構造を有する部分放電計測装置の構成を示した図
【図6】実施例2の部分放電計測装置の構成を示した図
【図7】実施例3の部分放電計測装置の構成を示した図
【図8】実施例3の部分放電計測装置の他の構成を示した図
【図9】実施例4の部分放電計測装置の構成を示した図
【図10】実施例4の部分放電計測装置の他の構成を示した図
【図11】実施例5の部分放電計測装置の構成を示した図
【図12】実施例5の放電電荷算出部のハードウェア構成を示した図
【図13】実施例6の部分放電計測装置の構成を示した図
【図14】シールド電極を付加した部分放電計測装置の構成を示した図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例を説明する。実施例と請求項の相互の関係は、以下のとおりである。実施例1は主に請求項1、2、3などに関し、実施例2は主に請求項4などに関し、実施例3は主に請求項5などに関し、実施例4は主に請求項6などに関し、実施例5は主に請求項7などに関し、実施例6は主に請求項8などに関する。なお、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、様々な態様で実施しうる。
【実施例1】
【0010】
<概要>
本実施例の部分放電計測装置は、部分放電信号に重畳される高周波ノイズを、コンデンサの高圧側に配置された抵抗により抑制することができる。これにより、部分放電信号を高い精度で検出することが可能になる。
【0011】
<構成>
図1は、本実施例の部分放電計測装置の構成を示した図である。この図にあるように、本実施例の「部分放電計測装置」1は、「第一抵抗」2と、「第一コンデンサ」3と、「第二抵抗」4、「第二コンデンサ」5と、「電圧検出センサ」6と、から構成される。以下、本実施例の部分放電計測装置の各構成について説明する。
【0012】
「部分放電計測装置」は、「インバータ装置」41と接続された「電気負荷」42に発生する部分放電を計測する装置である。インバータ装置は、直流電力を交流電力に変換可能な装置である。電気負荷としては、モーターを備えた種々の機器が主として考えられるが、インバータ装置により駆動される装置であれば足りる。
【0013】
「第一抵抗」は、インバータ装置と電気負荷を接続する電力線の一部に一端が接続され、インバータ装置の駆動によって発生し、部分放電信号に重畳される高周波ノイズの全部又は一部を除去するための機能を有する。コンデンサには素子内部に残留インダクタンス成分が存在するためにコンデンサ単体では高周波ノイズが検出データに重畳されるが、抵抗をコンデンサの高圧側に配置することにより当該高周波ノイズの振動抑制を図ることが可能になる(図2)。
【0014】
「第一コンデンサ」は、第一抵抗の他端と接続され、他のコンデンサと対となって部分放電電圧を分圧して低電圧にするための機能を有する。高電圧のままでは以下に述べる電圧検出センサにて電圧値を検出することが困難であるため、第一コンデンサにより計測可能な電圧値にまで分圧する。第一コンデンサの容量としては、高圧側であることを鑑みて、「pF」程度のオーダーとすることが好ましい。なお、第一コンデンサには有意な値の残留抵抗が存在する場合もあり、当該残留抵抗を第一抵抗とみなすことも可能である。つまり、第一抵抗は第一コンデンサと独立な部品として設ける必要は必ずしもなく、第一コンデンサのみを部品として設ける構成も考えられる。
【0015】
「第二抵抗」は、第一コンデンサの他端と接続され、インバータ装置の駆動によって発生し、部分放電信号に重畳される高周波ノイズの全部又は一部を除去するための機能を有する。つまり、第一抵抗により第一コンデンサの高圧側で高周波ノイズを除去し、第二抵抗により第二コンデンサの高圧側でさらに高周波ノイズを除去する。
【0016】
「第二コンデンサ」は、第二抵抗の他端と接地との間に接続され、第一コンデンサと対となって前記分圧の機能を果たす。第二コンデンサは、低圧側であることを鑑みて、「μF」程度のオーダーとすることが好ましい。この場合、容量が小さいコンデンサと比較して素子内部の残留インダクタンス成分が強く効き、より高周波ノイズの振動が発生しやすくなるが、第二抵抗の機能により振動の抑制を図ることが可能になる。
【0017】
また、抵抗とコンデンサに対して外部の電磁場の影響を遮蔽するシールドを設け、外部からのノイズの侵入を抑制する構成も可能である。例えば、第二抵抗と第二コンデンサが低圧側にあることに起因して外部からのノイズの影響を受けやすいと判断される場合は、図3に示すように、「第二抵抗」4と「第二コンデンサ」5を覆う「シールドケース」21を別途設ける構成が考えられる。なお、「第一抵抗」2や「第一コンデンサ」3を覆う構成も同様に可能である。
【0018】
第一抵抗の値と第一コンデンサの容量の積である第一時定数と第二抵抗の値と第二コンデンサの容量の積である第二時定数がほぼ等しくする構成も可能である。このように第一時定数と第二時定数をほぼ等しくすることにより応答特性がほぼ等しくなり、部分放電信号をより高い精度で検出することが可能になる。例えば、第一コンデンサは第二コンデンサと比較して低容量である場合は、上記時定数がほぼ等しくなるように第一抵抗は第二抵抗と比較して高抵抗となるように調整する。
【0019】
また、図14に示すように、シールド電極を付加する構成も可能である。当該構成とすることにより、抵抗と大地又は近接導体との浮遊容量に基づく誤差を軽減することができ、応答特性をさらに向上させることが可能になる。具体的には、浮遊容量によって抵抗表面から大地に流出する充電電流を打ち消すだけの電流がシールド電極から抵抗表面に供給されるようにする。特に、シールド電極による静電位分布と、抵抗の抵抗値による電位分布とが一致するようにし、シールド電極の静電容量を小さくすることが好ましい。
また、図14の例では第一抵抗の上部と接地付近にシールド電極を設けたが、第二抵抗の上部と接地付近にシールド電極を設ける構成とすることも可能である。
【0020】
「電圧検出センサ」は、第二抵抗と第二コンデンサの両端にかかる電圧値を検出可能な機能を有する。第二抵抗と第二コンデンサの両端にかかる電圧値を計測することで、高周波ノイズが除去された信号を電圧値として検出することが可能になる。なお、電圧値に基づいて算出される電流値を時間積分することにより、放電電荷を算出することも可能である。
【0021】
なお、図4に示すように、「電圧検出センサ」6が「第二抵抗」4や「第二コンデンサ」5から離れた位置にある場合などは、電気信号を光信号に変換して伝送し、電圧検出センサ側で光信号から電気信号に逆変換可能な「電気光変換システム」22を設ける構成も可能である。当該構成とすることにより、信号に対するノイズの侵入が少なくなり、より精度の高いデータ検出が可能になる。
【0022】
また、第一抵抗と第一コンデンサの組み合わせ、又は/及び第二抵抗と第二コンデンサの組み合わせを同軸構造とすることも好ましい。図5は、第二抵抗と第二コンデンサの組み合わせを「同軸構造」23とした場合の一例を示す図である。このように、抵抗とコンデンサからなる組み合わせを同軸構造とすることにより、抵抗あるいはコンデンサの残留インダクタンスを低減でき、部分放電パルスに対する応答時間を改善できる。同時に、外部ノイズの影響を抑制することができ、部分放電信号の検出精度をさらに向上させることが可能になる。特に、第二コンデンサの容量を小さな値に設定する場合は、当該部分において高周波ノイズの影響を受けやすいため、第二抵抗と第二コンデンサの組み合わせを同軸構造とすることが好ましい。
【0023】
<効果>
以上のように、本実施例の部分放電計測装置により、部分放電信号に重畳される高周波の影響を抑制することができ、部分放電信号を高い精度で検出することが可能になる。
【実施例2】
【0024】
<構成>
図6は、本実施例の部分放電計測装置の構成を示した図である。この図にあるように、本実施例の「部分放電計測装置」1は、「第一抵抗」2と、「第一コンデンサ」3と、「第二抵抗」4、「第二コンデンサ」5と、「電圧検出センサ」6と、「並列保護回路」7と、から構成される。以下、実施例1との相違点である並列保護回路について説明する。
【0025】
「並列保護回路」は、第二抵抗と第二コンデンサの組み合わせと並列に配置され、所定の電圧閾値を超えた過電圧の通過を許容する機能を有する。第一コンデンサで高電圧を分圧してもなお第二抵抗と第二コンデンサの両端に高い電圧がかかる場合がある。この場合、第二抵抗と第二コンデンサの組み合わせと並列に並列保護回路を配置することにより、電圧検出センサに過電圧がかかる危険性を回避することが可能になる。並列保護回路としては、予め定められた電圧閾値を超過した場合に回路が閉じるように設計されたスイッチ回路が考えられる。
【0026】
<効果>
以上のように、本実施例の部分放電計測装置により、電圧検出センサの内部部品を過電圧から保護しつつ、部分放電信号を高い精度で検出することが可能になる。
【実施例3】
【0027】
<構成>
本実施例の部分放電計測装置は、実施例1の図1で示した構成と同様であり、「第一抵抗」と、「第一コンデンサ」と、「第二抵抗」と、「第二コンデンサ」と、「電圧検出センサ」と、から構成される。ただし、第一抵抗と第一コンデンサの組み合わせ、又は/及び第二抵抗と第二コンデンサの組み合わせを中心部から放射状に配置したことを特徴とする。図7は、「第二抵抗」4と「第二コンデンサ」5の組み合わせを「中心部から放射状に配置した構造」24の一例を示す図である。
【0028】
当該構成とすることにより軸対称性ができるため、第一抵抗と第一コンデンサの組み合わせや、第二抵抗と第二コンデンサの組み合わせに存在するインダクタンスを当該対称性により打ち消すことが可能になる。結果として、高周波ノイズの影響を抑制することが可能になり、部分放電を高い制度で検出することが可能になる。
【0029】
なお、第二抵抗と第二コンデンサの組み合わせを中心部から放射状に配置した構造に加えて、図8に示すように、外部の電磁界の影響を遮蔽する「シールドケース」21を設ける構成も可能である。当該構成とすることにより、外部からのノイズの侵入を抑制することが可能になる。また、上記の例では第二抵抗と第二コンデンサの組み合わせに関して中心部から放射状に配置した構造を示したが、第一抵抗と第一コンデンサの組み合わせについても同様の構成が可能である。
【0030】
<効果>
本実施例の部分放電計測装置により、高周波ノイズの影響をさらに抑えることができ、部分放電信号を高い精度で検出することが可能になる。
【実施例4】
【0031】
<構成>
図9は、本実施例の部分放電計測装置の構成の一例を示した図である。この図にあるように、本実施例の「部分放電計測装置」1は、「複数直列回路」8と、「第二抵抗」4、「第二コンデンサ」5と、「電圧検出センサ」6と、から構成される。以下、実施例1から3との相違点である複数直列回路について説明する。
【0032】
「複数直列回路」は、実施例1から3で説明した第一抵抗と第一コンデンサからなる直列回路を複数直列に接続した回路である。第一抵抗と第一コンデンサからなる直列回路単体だけでは分圧を効率的に行うことができない場合もある。この場合、第一抵抗と第一コンデンサからなる直列回路を複数直列に接続した回路に置き換えることにより、直列回路単体よりも効率的に分圧の機能を果たすことが可能になる。
【0033】
なお、上記の各直列回路を構成する第一抵抗と第一コンデンサの値は、直列回路ごとに異なる値を設定する構成も可能である。ただし、各直列回路を構成する第一抵抗の値と第一コンデンサの容量の積である時定数は直列回路ごとにほぼ等しくなるようにすることが好ましい。当該構成とすることにより、実施例1で説明したように、信号に対する応答特性の改善を図ることが可能になる。
【0034】
なお、図10に示すように、図9の構成に加えて抵抗とコンデンサからなる回路を覆うように、外部の電磁場の影響を遮蔽する「シールドケース」21を設ける構成も可能である。当該構成とすることにより、回路全体が大きくなっても外部ノイズの侵入を抑制することが可能になる。
【0035】
<効果>
本実施例の部分放電計測装置により、効率的に分圧を行うことができ、部分放電信号を高い精度で検出することが可能になる。
【実施例5】
【0036】
<構成>
図11は、本実施例の部分放電計測装置を含む全体の構成を示した図である。この図にあるように、本実施例の「部分放電計測装置」1は、「第一抵抗」2と、「第一コンデンサ」3と、「第二抵抗」4、「第二コンデンサ」5と、「電圧検出センサ」6と、「放電電荷算出部」9と、から構成される。以下、実施例1から4との相違点である放電電荷算出部について説明する。
【0037】
「放電電荷算出部」は、電圧検出センサで検出された電圧値から放電電荷を算出可能な機能を有する。電圧検出センサにより第二抵抗と第二コンデンサの両端にかかる電圧値を検出することが可能であるため、当該抵抗値とコンデンサの容量に基づいて電流値を算出することが可能になる。当該電流値を時間積分する処理を行うことにより、放電電荷を算出することが可能になる。
【0038】
当該放電電荷算出部の機能は、例えば図12に示すようなハードウェア構成を用いて実現することが可能である。この図に示すように、全体の制御を行う「CPU」31と、CPUにおいて実行されるプログラムなどを記録する「ROM」32と、各種データを一時的に記録し、かつ、CPUにおいてプログラムを実行する際の作業領域となる「メインメモリ(RAM)」33と、各種データを記録可能な「補助記憶装置」34と、外部装置とデータの入出力が可能な「入出力装置」35と、所望のデータを表示可能な「ディスプレイ装置」36と、操作入力操作を受け付け可能な「操作入力機器」37と、を有する構成が考えられる。また、これらの各構成は、「システムバス」38を介して相互にデータの送受信を行うことが可能である。
【0039】
CPUは、ROMからメインメモリに読み出した放電電荷算出プログラムを実行し、以下の処理を行う。まず、電圧検出センサから出力された電圧値のデータを入出力装置を介して取得し、メインメモリの所定のアドレスに格納する。次に、第二抵抗の値及び第二コンデンサの容量のデータとをメインメモリに読み出す。さらに、電圧値のデータ及び第二抵抗の値、第二コンデンサの容量に基づいて電流値を算出し、当該算出結果について時間積分を行って放電電荷を算出する処理を行い、その処理結果をメインメモリの所定のアドレスに格納する。さらに、当該処理結果をディスプレイ装置に対して出力する処理を行う。
【0040】
<効果>
本実施例の部分放電計測装置により、部分放電信号を高い精度で検出し、放電電荷を算出することが可能になる。
【実施例6】
【0041】
<構成>
図13は、本実施例の部分放電計測システムの構成を示した図である。この図にあるように、本実施例の「部分放電計測システム」10は、「部分放電電磁界検出部」11と、「部分放電計測装置」1と、「判断部」12と、「判定結果出力部」13と、から構成される。この図の例では、判断部と判定結果出力部が同一のハードウェアから構成される例を示しているが、別々とする構成も可能である。以下、実施例1から5との相違点である部分放電電磁界検出部と、判定部と、判定結果出力部について説明する。
【0042】
「部分放電電磁界検出部」は、部分放電によって生じ空中を伝搬する部分放電電磁界を検出する機能を有する。部分放電によって電磁場に擾乱が生じ電磁波として空中伝搬するため、当該電磁波を検出可能なアンテナ装置を上記部分放電電磁界検出部として利用することが考えられる。
【0043】
「部分放電計測装置」は実施例1から5で説明した部分放電計測装置又はその装置の機能を組み合わせたものを利用することが可能である。
【0044】
「判断部」は、部分放電電磁界検出部と部分放電計測装置の両者によって計測される検出信号の時間軸を調整し、放電由来のシグナルが同じタイミングで発生しているか判断する機能を有する。部分放電が発生した場合、部分放電電磁界検出部と部分放電計測装置の計測データ双方において同期する急峻な立ち上がりが見られることが想定される。よって、同じタイミングで放電由来のシグナルが発生しているか否かを判断することで、部分放電信号の発生を高い精度で検出することが可能になる。
【0045】
「判定結果出力部」は、判断部での判断結果が、放電由来のシグナルが同じタイミングで発生しているとの判断である場合に部分放電があったとの判定結果を出力する機能を有する。ここでの判定結果は、ディスプレイ装置を介して表示出力することも可能であるし、記録媒体にデータ出力することや、音声出力装置を介して音声出力したり、印刷出力装置を介して印刷出力したりする構成も可能である。
【0046】
当該判断部や判定結果出力部の機能は、実施例5の図12で示したものと同様のハードウェア構成を用いて実現することが可能である。
【0047】
CPUは、ROMからメインメモリに読み出した判断プログラムを実行し、以下の処理を行う。まず、部分放電電磁界検出部から出力された検出データを入出力装置を介して取得し、メインメモリの所定のアドレスに格納する。次に、電磁波の伝搬速度や電磁波発生源から部分放電電磁界検出部までの距離に基づいて部分放電計測装置にて計測したデータと時間軸を調整する処理を行う。次に、部分放電電磁界検出部と部分放電計測装置の各データについて部分放電由来と判定される急峻な時間変化のデータ箇所を検索し、当該放電由来のシグナルが同じタイミングで発生しているか否か判断する処理を行い、処理結果をメインメモリの所定のアドレスに格納する。
【0048】
また、CPUは、ROMからメインメモリに読み出した判定結果出力プログラムを実行し、以下の処理を行う。まず、判断プログラムの処理結果が放電由来のシグナルが同じタイミングで発生しているとの処理結果である場合は、部分放電があったとの判定結果をデータ出力する処理を行う。当該データは、補助記憶装置の所定のアドレスに出力することも可能であるし、ディスプレイ装置に対して表示出力したりすることも可能である。
【0049】
<効果>
本実施例の部分放電計測システムにより、部分放電信号をさらに高い精度で検出することが可能になる。
【符号の説明】
【0050】
1…部分放電計測装置、2…第一抵抗、3…第一コンデンサ、4…第二抵抗、5…第二コンデンサ、6…電圧検出センサ、7…並列保護回路、8…複数直列回路、9…放電電荷算出部、10…部分放電計測システム、11…部分放電電磁界検出部、12…判断部、13…判定結果出力部、21…シールドケース、22…電気光変換システム、23…同軸構造、24…中心部から放射状に配置した構造、25…シールド電極、31…CPU、32…ROM、33…メインメモリ、34…補助記憶装置、35…入出力装置、36…ディスプレイ装置、37…操作入力装置、38…システムバス、41…インバータ装置、42…負荷
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータ装置と接続された電気負荷に発生する部分放電を計測する部分放電計測装置であって、
インバータ装置と電気負荷を接続する電力線の一部に一端が接続され、インバータ装置の駆動によって発生し、部分放電信号に重畳される高周波ノイズの全部又は一部を除去するための第一抵抗と、
第一抵抗の他端と接続され、他のコンデンサと対となって部分放電電圧を分圧して低電圧にするための第一コンデンサと、
第一コンデンサの他端と接続され、インバータ装置の駆動によって発生し、部分放電信号に重畳される高周波ノイズの全部又は一部を除去するための第二抵抗と、
第二抵抗の他端と接地との間に接続され、第一コンデンサと対となって前記分圧の機能を果たす第二コンデンサと、
第二抵抗と第二コンデンサの両端にかかる電圧値を検出可能な電圧検出センサと、
を有する部分放電計測装置。
【請求項2】
第一抵抗の値と第一コンデンサの容量の積である第一時定数と第二抵抗の値と第二コンデンサの容量の積である第二時定数がほぼ等しくなることを特徴とする請求項1に記載の部分放電計測装置。
【請求項3】
第一抵抗と第一コンデンサの組み合わせ、又は/及び第二抵抗と第二コンデンサの組み合わせを同軸構造としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の部分放電計測装置。
【請求項4】
第二抵抗と第二コンデンサの組み合わせと並列に配置され、所定の電圧閾値を超えた過電圧の通過を許容する並列保護回路をさらに有する請求項1から3のいずれか一に記載の部分放電計測装置。
【請求項5】
第一抵抗と第一コンデンサの組み合わせ、又は/及び第二抵抗と第二コンデンサの組み合わせを中心部から放射状に配置したことを特徴とする請求項1から4のいずれか一に記載の部分放電計測装置。
【請求項6】
第一抵抗と第一コンデンサの組み合わせに代えて、第一抵抗と第一コンデンサからなる直列回路を複数直列に接続した複数直列回路としたことを特徴とする請求項1から5のいずれか一に記載の部分放電計測装置。
【請求項7】
電圧検出センサで検出された電圧値から放電電荷を算出可能な放電電荷算出部をさらに有する請求項1から6のいずれか一に記載の部分放電計測装置。
【請求項8】
部分放電によって生じ空中を伝搬する部分放電電磁界を検出する部分放電電磁界検出部と、
請求項1から7のいずれか一に記載の部分放電計測装置と、
部分放電電磁界検出部と部分放電計測装置の両者によって計測される検出信号の時間軸を調整し、放電由来のシグナルが同じタイミングで発生しているか判断する判断部と、
判断部での判断結果が、放電由来のシグナルが同じタイミングで発生しているとの判断である場合に部分放電があったとの判定結果を出力する判定結果出力部と、
を有する部分放電計測システム。
【請求項1】
インバータ装置と接続された電気負荷に発生する部分放電を計測する部分放電計測装置であって、
インバータ装置と電気負荷を接続する電力線の一部に一端が接続され、インバータ装置の駆動によって発生し、部分放電信号に重畳される高周波ノイズの全部又は一部を除去するための第一抵抗と、
第一抵抗の他端と接続され、他のコンデンサと対となって部分放電電圧を分圧して低電圧にするための第一コンデンサと、
第一コンデンサの他端と接続され、インバータ装置の駆動によって発生し、部分放電信号に重畳される高周波ノイズの全部又は一部を除去するための第二抵抗と、
第二抵抗の他端と接地との間に接続され、第一コンデンサと対となって前記分圧の機能を果たす第二コンデンサと、
第二抵抗と第二コンデンサの両端にかかる電圧値を検出可能な電圧検出センサと、
を有する部分放電計測装置。
【請求項2】
第一抵抗の値と第一コンデンサの容量の積である第一時定数と第二抵抗の値と第二コンデンサの容量の積である第二時定数がほぼ等しくなることを特徴とする請求項1に記載の部分放電計測装置。
【請求項3】
第一抵抗と第一コンデンサの組み合わせ、又は/及び第二抵抗と第二コンデンサの組み合わせを同軸構造としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の部分放電計測装置。
【請求項4】
第二抵抗と第二コンデンサの組み合わせと並列に配置され、所定の電圧閾値を超えた過電圧の通過を許容する並列保護回路をさらに有する請求項1から3のいずれか一に記載の部分放電計測装置。
【請求項5】
第一抵抗と第一コンデンサの組み合わせ、又は/及び第二抵抗と第二コンデンサの組み合わせを中心部から放射状に配置したことを特徴とする請求項1から4のいずれか一に記載の部分放電計測装置。
【請求項6】
第一抵抗と第一コンデンサの組み合わせに代えて、第一抵抗と第一コンデンサからなる直列回路を複数直列に接続した複数直列回路としたことを特徴とする請求項1から5のいずれか一に記載の部分放電計測装置。
【請求項7】
電圧検出センサで検出された電圧値から放電電荷を算出可能な放電電荷算出部をさらに有する請求項1から6のいずれか一に記載の部分放電計測装置。
【請求項8】
部分放電によって生じ空中を伝搬する部分放電電磁界を検出する部分放電電磁界検出部と、
請求項1から7のいずれか一に記載の部分放電計測装置と、
部分放電電磁界検出部と部分放電計測装置の両者によって計測される検出信号の時間軸を調整し、放電由来のシグナルが同じタイミングで発生しているか判断する判断部と、
判断部での判断結果が、放電由来のシグナルが同じタイミングで発生しているとの判断である場合に部分放電があったとの判定結果を出力する判定結果出力部と、
を有する部分放電計測システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−145132(P2011−145132A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5122(P2010−5122)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(599016431)学校法人 芝浦工業大学 (109)
【出願人】(504325667)株式会社 電子制御国際 (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(599016431)学校法人 芝浦工業大学 (109)
【出願人】(504325667)株式会社 電子制御国際 (9)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]