説明

部分的疎水性ケイ酸水分散体

本発明は、分散体pHが5〜12の範囲の場合に、部分的疎水性ケイ酸を含有するケイ酸分散体に関する。
【課題】先行技術の不利点を克服し、そして、5〜12のpH範囲での高固体含有量を有しつつ、そしてさらなる安定化剤の添加なしで、コロイドが安定でそしてこの故に貯蔵可能で、および5〜8のpH範囲において、いかなる局所のまたは絶対的粘度最高値を示さずに、しかしその代わりpHの低下とともに粘度の連続的増加を示す、シリカ分散体を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、5〜12の分散体pHにおいて、部分的疎水性シリカを含むことを特徴とする、シリカ分散体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部分的疎水性シリカの水分散体、これらを調製する方法、エマルションを安定化するためのこれらの使用、そして水系コーティング材料、接着剤、そしてシール剤の流動制御をするための添加剤としてのこれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
シリカの水分散体は、例えば半導体分野における、金属表面の化学機械的平滑化(planarizing)に、例えばインクジェット紙などの紙のコーティングに、水系塗料、コーティング、接着剤、そしてシール剤における流動性添加剤および/または沈殿防止剤として、手袋などのラテックス製品の製造に、ゲル電池の製造に、そして乳化剤無添加ピッカリング・エマルションの安定化に、その利用法を見つけている。
【0003】
シリカ水分散体の流動特性およびコロイド安定性は、pHによる決定的な影響を受ける。
このように、シリカの水分散体は、特に中性範囲のpHレベルにおいて、高い粘度および内在するコロイド不安定性を示す。
【0004】
シリカ水分散体は、一般に、シリカ粒子の表面電荷の変更によって静電気的に安定化される。
【0005】
この故に、親水性のシリカの、コロイドが安定でそして低粘度の分散体は、pHを塩基性の範囲に設定することによって得られ得ることが、特許文献1の明細書から公知である。
【0006】
ここでの不利点は、例えば非特許文献1の中で示されるように、多数の用途で必要とされる、中性点の範囲のpHレベル、即ちおよそ7のpHにおいて、該分散体は、粘度の制御できない増加またはゲル化でさえも見せることである。中性点を越えてさらにpHを下げると、次に粘度はさらに低下する。親水性シリカの水分散体の側のこの挙動は、例えば複雑な混合物の処方の間に生じ得る種類の、pHの小さな変化でさえ、処方物の流動特性の制御不能な変動をもたらし得るという不利点を有している。
【0007】
さらにその上、特許文献2、特許文献3および特許文献4の明細書から、シリカ水分散体は、アルミニウム塩を用いて安定化され得ること、そして、特許文献5からは、アルミン酸塩によって安定化され得ることが公知である。
ここでの不利点は、中性点の範囲、即ち7のpHでは、これらの分散体は不安定化しがちであり、これは粘度の制御されない増加またはゲル化でさえももたらし得ることである。
その上、例えば、インクジェット紙のコーティングおよび水系エポキシ樹脂の流動制御などの、ある種の用途において、アルミニウム塩の添加は不利な結果を有しえる。
【0008】
【特許文献1】独国特許発明第4,006,392号明細書
【特許文献2】欧州特許第1,124,693A1号明細書
【特許文献3】欧州特許第736,489号明細書
【特許文献4】独国特許発明第10,238,463A1号明細書
【特許文献5】米国特許第2,892,797号明細書
【非特許文献1】D.HeathおよびT.F.Tadros, J. Colloid Interface Sci. 1983年, 93巻, p.320
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、先行技術の不利点を克服し、そして、5〜12のpH範囲での高固体含有量を有しつつ、そしてさらなる安定化剤の添加なしで、コロイドが安定でそしてこの故に貯蔵可能で、および5〜8のpH範囲において、いかなる局所のまたは絶対的粘度最高値を示さずに、しかしその代わりpHの低下とともに粘度の連続的増加を示す、シリカ分散体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、5〜12の分散体pHにおいて、部分的疎水性シリカを含むことを特徴とする、シリカ分散体を提供する。
【0011】
コロイドが安定であるとは、4週間の貯蔵の間、分散体は粘度のいかなる顕著な増加も示さないこと、および動的光散乱によって測定される平均粒子直径が一定であることを意味する。コロイド安定性は、適切な貯蔵特性のための必要条件である。貯蔵の過程の中で、粘度の制御されない増加を示すか、またはゲル化さえする水分散体は、もはやさらなる加工に適切でないことが度々ある。それは、高粘度は、ポンプ運搬または撹拌などの加工操作に不利な影響を与えるからである。
【発明の効果】
【0012】
pHの低下に伴う粘度の連続的増加は、従来技術から知られるpH変動性よりも有利である。それは、一定のpHが設定される場合、望まれない、部分的に制御不能な高粘性の、そしてこの故により処理が困難な範囲が生じないからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
驚くべきことに、また当業者により決して予期されなかったことは、部分的疎水性シリカを使用した場合、5〜12のpH範囲で、長期の貯蔵の後でさえも良好なコロイド安定性を示し、そして5〜8のpH範囲で、局所のまたは絶対的粘度最高値を示さない、即ち粘度の連続的増加を示す、高固体含有量の分散体を調製することが可能なことが、現在見つかったことである。
【0014】
本明細書において、部分的疎水性シリカとは、欧州特許出願公開第1,433,749A1号明細書に記載される種類のシリカを意味する。本発明に従い使用されるシリカについては、これは、シリカの表面が完全には疎水化、即ちシリル化(silylated)されておらず、またシリカの表面は完全に親水性でも、即ち非シリル化(unsilylated)もされていないことを意味する。特に、これは、本発明に従い使用されるシリカは、0.9〜1.7シラノール基/nmの密度のシラノール基、0.1%〜2%の炭素含有量、および30より少ないメタノール数(methanol number)を有することを意味する。シラノール基密度は、G.W.Sears, Anal. Chem. 1956年, 第28巻, p.1981に与えられるような、酸に基づく滴定によって得られる;炭素含有量は、元素分析によって測定され得る;そしてメタノール数は、シリカの完全な濡れを達成するために、即ち試験液体中にシリカの完全な水没した混和を達成するために、水相に加える必要のあるメタノールの留分パーセンテージである。
【0015】
本発明の分散体を調製するためには、部分的疎水性シリカを7〜12のpHの、好ましくは8〜11のpHの、そしてより好ましくは8.5〜10.5のpHの水相に加え、そして自発的濡れによって、またはタンブルミキサーもしくは高速ミキサーなどを用いた振動によって、またはクロスアーム撹拌器もしくは溶解機(dissolver)などによる撹拌によって、混和する。このような情況においては、部分的疎水性シリカを添加する間、混和する間、そしてその後分散する間、規則的間隔で、pHをモニターすること、および、何らかの偏向があった場合、酸または塩基の添加によって、望まれる、目標のレベルにpHを修正することが有利であることがわかっている。pHレベルの調節または修正は、市販の通例の有機および無機の酸および塩基、即ち、水性もしくは気体HCl、水性もしくは無水HNO、HSO、HPO、p−トルエンスルホン酸、クエン酸などのブレーンステッド酸、または、水性もしくは気体アンモニア、水性もしくは無水NaOH、KOH、CaCO、CaO、ナトリウムメトキシドまたは有機アミンなどのブレーンステッド塩基を使用してなされ得る。
10重量%未満の低粒子濃度の場合、粒子を液体中へ混和するのには、単純撹拌で一般的に十分である。高剪断速度で液体中へ粒子を混和するのが好ましい。
【0016】
混和の前は、部分的疎水性シリカは、バッグの中などに包装された形態であり得、または、例えばサイロもしくは大型容器などの中に包装していない形態で貯蔵された状態であり得る。部分的疎水性シリカは、バッグ振動を経て、計量有りもしくは無しで計量供給サイロを経て、または、圧縮空気メンブレンポンプもしくはファンなどの適切な運搬装置によって、貯蔵サイロもしくは大型容器から直接運搬することによって、計量供給され得る。
【0017】
混和の後または混和と同時に、粒子を分散する。好ましいのは同時分散である。同時分散は、水相へのシリカの計量供給添加および混和の開始が、分散操作の開始を伴うことを意味する。これは、第一容器中の分散システムによって、または、分散部材を含む外部パイプライン中に、この容器からポンプによる循環をさせることによって(好ましくはこの容器への閉回路再循環が伴う)、なされてもよい。部分的再循環および部分的連続回収によって、この操作は、好ましくは連続的になされてもよい。
【0018】
これらの目的のために適切である器具としては、好ましくは、高速撹拌器、例えば1〜50m/sの周辺速度を有する高速溶解機、高速ローター−ステーターシステム、ソノレーター、シアリングギャップ(shearing gaps)、ノズルまたはボールミルが挙げられる。
【0019】
このシリカの混和および分散は、好ましくは、例えばYstralのConti TDS4などの、インダクターによって起こされ得る。そのような場合、微粉の、部分的疎水性シリカは、吸引によって、真空によってまたは、例えばポンプによる、強制的運搬によって、シアリングギャップへ直接に計量供給される。
【0020】
部分的疎水性シリカを分散するために特に適切なのは、5Hz〜500kHzの、好ましくは10kHZ〜100kHz、非常に特別に好ましくは15kHz〜50kHzの範囲の超音波の使用である;超音波分散は、連続的にもまたは不連続的にも起こされ得る。それは、超音波チップなどの、個々の超音波トランスデューサーによって、または、一つ以上の超音波トランスデューサーを含む連続流動システムの中で、望まれるならばパイプラインもしくはパイプ壁によってシステムを分離して、なされてもよい。
【0021】
分散は、適切であれば、異なる方法の組み合わせを通して起こされ得る;例えば、溶解機またはインダクターによる予備的な分散と、その後の超音波処理による微細な分散とである。
【0022】
本発明の調製は、バッチ式および連続式で起こされてもよい。好ましいのは連続式である。
【0023】
本発明の分散体を調製するためには、純水、好ましくは100μS/cmより低い電気伝導性を有する十分に脱イオン化した(DI)水を使用することが好ましい。
【0024】
本発明の方法は、実行するのが非常に容易で、かつ非常に高い部分的疎水性シリカ固体含有量を有する水分散体の調製を可能にするという利点を有する。
【0025】
本発明の分散体は、部分的疎水性シリカ含有量を、好ましくは5重量%〜50重量%、より好ましくは5重量%〜35重量%、特に好ましくは10重量%〜35重量%、および非常に特別に好ましくは15重量%〜30重量%有する。
【0026】
本発明の高い部分的疎水性シリカ含有量を有する水分散体は、特に、5〜12の、好ましくは7〜11の、特に好ましくは8〜10.5の範囲のpHを有することを特徴とする。
【0027】
本発明の高い部分的疎水性シリカ含有量を有する水分散体は、特に、5〜12の、好ましくは7〜11の、特に好ましくは8〜10.5の範囲のpHで低粘度の分散体が得られることを特徴とする。これは、5〜12の、好ましくは7〜11の、特に好ましくは8〜10.5の範囲のpHを有しおよび好ましくは5重量%〜50重量%のシリカ含有量を有する分散体が、1,000mPasより低い粘度、好ましくは800mPasより低い粘度、特に好ましくは700mPasより低い粘度、および非常に特別に好ましくは500mPasより低い粘度を有することを意味する(粘度は、25℃および100s-1の剪断速度で、105μmの測定間隔を有するコーン−プレートセンサーシステムを使用して、測定される)。
【0028】
本発明の高い部分的疎水性シリカ含有量を有する水分散体は、さらに、9から4への分散体pHの漸次のまたは連続的減少が、粘度の漸次の連続的増加を伴い、しかしいかなる重大な局所の粘度最高値(即ち、典型的な実験ばらつきを超えるもの)も発生させないことを特徴とする。これは、特に、pH9での剪断粘度(η)およびpH7での剪断粘度(η)から形成される、比η7/9=η/η、ならびに7のpHでの剪断粘度(η)および4のpHでの剪断粘度(η)から形成される、比η4/7=η/ηが、それぞれが1以上の値を、好ましくは1〜1,000の値を、より好ましくは1〜500の値を、そして非常に好ましくは1〜100の値を有することを意味する(粘度は、25℃および100s-1の剪断速度で、105μmの測定間隔を有するコーン−プレートセンサーシステムを使用して、測定される)。
【0029】
本発明の高い部分的疎水性シリカ含有量を有する水分散体は、さらに、良好な貯蔵安定性を示すことを特徴とする。これは、5〜12の、好ましくは7〜11の、特に好ましくは8〜10.5の範囲のpHを有する分散体の粘度が、40℃下で4週間の貯蔵時間の後、分散体の調製直後の粘度と比較して、5倍を超えない分だけ、好ましくは2.5倍を超えない分だけ、より好ましくは2.0倍を超えない分だけ、そして非常に好ましくは1.5倍を超えない分だけしか上昇しないことを意味する(粘度は、25℃および100s-1の剪断速度で、105μmの測定間隔を有するコーン−プレートセンサーシステムを使用して、測定される)。
【0030】
本発明の高い部分的疎水性シリカ含有量を有する水分散体は、さらに、良好な貯蔵安定性を示すことを特徴とする。これは、5〜12の、好ましくは7〜11の、特に好ましくは8〜10.5の範囲のpHを有する分散体が、40℃下で4週間の貯蔵時間の後、100Paより低い、好ましくは10Paより低い、より好ましくは1Paより低い、そして非常に好ましくは0.1Paより低い降伏点(それぞれの場合、Q.D.NguyenおよびD.Boger,J.Rheol.1985年,第29巻,p.335に従って、25℃下でvane法を使用して測定される)しか有さないことを意味する。
【0031】
本発明の分散体は、さらに、5〜12のpH範囲では負のζ電位を示すことを特徴とする。好ましくは、9のpHのζ電位は、−5mVより低い、より好ましくは−10mVより低い、そして非常に好ましくは−15mVより低い。ζ電位は、例えば、例えばDispersion Technologiesのζ電位プローブDT300を使用して、コロイド振動電位を測定することによって、またはMalvern InstrumentsのZetasizer ZSを使用したレーザーDoppler流速計法(laser Doppler velocimetry)により電気泳動移動度を測定することによって、測定され得る。
【0032】
本発明の分散体は、さらに、4より低いpHにおいて等電点(iep)を有することを特徴とする(等電点は、ζ電位が値0をとる分散体のpHと定義される)
【0033】
本発明の分散体は、さらに、分散された粒子が微細に分割された焼結凝集体(sinter aggregates)の形態をとることを特徴とする。これらの焼結凝集体は、準弾性光散乱による粒子サイズ測定の場合では、測定された流体力学的等価直径が、式a=6/ABET*d(式中、ABETは、DIN66131に従い窒素吸着によって測定される、初期の親水性シリカのBET比表面積であり、およびdは1次粒子の密度である)に従い算術的に得られる、1次粒子の直径よりも、少なくとも2倍、好ましくは2.5倍〜50倍、より好ましくは2.8倍〜30倍大きい(それぞれの場合100m/gの比表面積に基づく(より小さいまたはより大きい表面積の場合は、それに従って直線的に倍率は減少または増加する))ことを特徴とする。
【0034】
本発明の分散体は、さらに、望まれるならば、メチルイソチアゾロンまたはベンズイソチアゾロンなどの、殺真菌剤または殺細菌剤を含むことを特徴とする。
【0035】
本発明の水分散体中の、殺真菌剤または殺細菌剤以外のさらなる有機物補助剤の量は、好ましくは5重量%より少ない、より好ましくは1重量%より少ない、非常に好ましくは0.5重量%より少ない、そして特には0.1重量%より少ない量である。
【0036】
特に、本発明の水分散体中の界面活性剤または保護コロイドなどの分散助剤の量は、5重量%より少ない、好ましくは1重量%より少ない、より好ましくは0.5重量%より少ない量であり、そして特に好ましくは本発明の水分散体は分散助剤を含有しない。
【0037】
本発明の水分散体中の、NaCl、KClまたはAlClなどの、有機および無機の塩または有機および無機の電解質の量は、好ましくは5重量%より少ない、より好ましくは1重量%より少ない、非常に好ましくは0.1重量%より少ない、そして特には0.01重量%より少ない量である。非常に特別に好ましくは、本発明の分散体には、有機塩または無機塩は加えない。
【0038】
本発明の水分散体の9.5のpHでの電気伝導率は、好ましくは100mS/cmより低い、より好ましくは10mS/cmより低い、非常に好ましくは5mS/cmより低い、そして特には1mS/cmより低い値である。
【0039】
この部分的疎水性シリカ粒子は、好ましくは0.5nm〜1,000nmの、より好ましくは5nm〜100nmの、非常に好ましくは5nm〜50nmの、平均1次粒子サイズd−PPを有する。これを測定するのに適切な方法は、例えば、例えば電界放出モードの、透過型電子顕微鏡法または高分解能走査電子顕微鏡法である。
【0040】
この部分的疎水性シリカ粒子は、好ましくは、流体力学的等価直径として測定される、50nm〜5,000nmの、より好ましくは100nm〜800nmの、非常に好ましくは120nm〜500nmの、平均第2次構造粒子サイズまたは平均凝集体粒子サイズd−Aggrを有する。
これを測定する適切な方法は、例えば、0.01重量%より高い濃度を測定するために後方散乱中で行われ、および/または多重散乱に対する相互相関によって修正される、動的光散乱(dynamic light scattering)または光子相関スペクトロスコピー(photon correlation spectroscopy)である。
【0041】
本発明はさらに、本発明の分散体を使用した、粒子安定化O/Wエマルション(ピッカリング・エマルション)の調製物を提供する。
このような情況においては、以下の本文に記載される方法によって、最良の結果が与えられることがわかっている。
9のpHで低粘度を有する本発明の分散体を、例えば塩酸などの、プロトン性酸の添加によって5より低いpHに酸性化する。油相を次に、今やより高い粘度を有する、シリカ分散体中へ乳化作用によって混和する。乳化は、例えば溶解機、ローター−ステーターシステムなどの高速混合器具によって、またはウルトラソニケーターもしくは他の乳化機械中で、起こされる。望まれるならば、全量の油を混和した後に、加えて、水を計量供給し得る。これは、剪断条件下でまたは単純撹拌によってなされ得る。
望まれるならば、最初に油相を導入し、そして次に本発明の分散体を、例えば溶解機、ローター−ステーターシステムなどの高速混合器具によって、またはウルトラソニケーター中で、撹拌を伴う分散によって混和することも可能である。
望まれるならば、生じたエマルションを、その特性を改善するために、さらなる乳化操作に再びかけ得る。このような操作は、例えば高圧ホモジナイザーまたは連続流動超音波セル(continuous−flow ultrasound cells)中で、起こされる。
望まれるならば、得られたエマルションのpHは、望まれるレベルに、例えば塩酸などの酸、または例えばNaOH水溶液などの塩基の添加によって、調節され得る。これは、例えば溶解機中で、単純撹拌を用いまたは剪断条件下で、なされ得る。単純撹拌混和が好ましい。
【0042】
望まれるならば、このエマルションの水相のイオン強度は、エマルションの粘度を増加させるために、例えばNaClなどの電解質の添加によって、望まれるイオン強度に調節され得る。これは、例えば溶解機中で、単純撹拌を用いまたは剪断条件下で、なされ得る。単純撹拌混和が好ましい。
【0043】
粘度を増加させるためには、1・10−4mol/l〜10mol/lの、好ましくは0.5・10−3mol/l〜5mol/lの、そしてより好ましくは1・10−3mol/l〜1mol/lの電解質をエマルションに添加することが可能である。
【0044】
本発明は、本発明の水分散体の、例えば腐食制御の目的での、例えば金属類、スチールまたは鉄などの、鉱物性基体などの表面のコーティングにおける使用に関する。
【0045】
本発明は、本発明の水分散体の、特に水を基礎として製造される、塗料およびコーティングの調製物、合成樹脂、接着剤、およびシール剤における使用に関する。
【0046】
本発明は、本発明の水分散体の、特に流動性を調節しそして制御する目的のための、塗料およびコーティングの調製物、合成樹脂、接着剤、およびシール剤における使用に関する。
【0047】
本発明は、本発明の水分散体の、特に例えばキズ耐性(scratch resistance)を改善するなどの、その機械的特性の改善のための、塗料およびコーティングの調製物、合成樹脂、接着剤、およびシール剤における使用に関する。
【0048】
本発明は、本発明の水分散体の、印刷媒体、特に非接触印刷過程において使用されるような紙(例としては、インクジェットプリンタ用の紙および、特に、高光沢紙が挙げられる)のコーティングにおける使用に関する。
【実施例】
【0049】
実施例1
200m/gのBET比表面積を有する親水性出発シリカ(ワッカー・ケミー有限責任会社(ミュンヘン)から、HDK(登録商標)N20の名称で入手可能)を、欧州特許第1,433,749A1号明細書に従い、ジメチルジクロロシール剤反応させることによって得えられる、71%の残留シラノール含有量および0.95%の炭素含有量を有する部分的疎水性フュームドシリカ300gを、1,000gの十分に脱イオン化した(DI)水に、300〜600rpmの溶解機で、一部分ずつ撹拌することによって混和する。分散体のpHを、水性NaOHの計量供給添加によって、9〜9.5の範囲内に維持する。シリカの添加の完了後、分散を6,000rpmで30分間続ける。得られる低粘度分散体をその後、連続流動超音波セル(Hielscherから;24kHz;400W)を通して、5ml/分〜10ml/分の流速を使用して、ポンプで流出する。その結果、高度に流動的なシリカ分散体が得られ、その分析データを、表1にまとめる。
【0050】
実施例2
200m/gのBET比表面積を有する親水性出発シリカ(ワッカー・ケミー有限責任会社(ミュンヘン)から、HDK(登録商標)N20の名称で入手可能)を、欧州特許第1,433,749A1号明細書に従い、ヘキサメチルジシラザンと反応させることによって得えられる、65%の残留シラノール含有量および1.4%の炭素含有量を有する部分的疎水性フュームドシリカ500gを、1,000gの十分に脱イオン化した(DI)水に、300rpm〜600rpmの溶解機で、一部分ずつ撹拌することによって混和する。分散体のpHを、水性NaOHの計量供給添加によって、9〜9.5の範囲内に維持する。シリカの添加の完了後、分散を6,000rpmで30分間続ける。得られる低粘度分散体をその後、連続流動超音波セル(Hielscherから;24kHz;400W)を通して、5ml/分〜10ml/分の流速を使用して、ポンプで流出する。その結果、高度に流動的なシリカ分散体が得られ、その分析データを、表1にまとめる。
【0051】
実施例3
300m/gのBET比表面積を有する親水性出発シリカ(ワッカー・ケミー有限責任会社(ミュンヘン)から、HDK(登録商標)T30の名称で入手可能)を、欧州特許第1,433,749A1号明細書に従い、ジメチルジクロロシール剤反応させることによって得えられる、75%の残留シラノール含有量および1.3%の炭素含有量を有する部分的疎水性フュームドシリカ250gを、1,000gの十分に脱イオン化した(DI)水に、300rpm〜600rpmの溶解機で、一部分ずつ撹拌することによって混和する。分散体のpHを、水性NaOHの計量供給添加によって、9〜9.5の範囲内に維持する。シリカの添加の完了後、分散を6,000rpmで30分間続ける。得られる低粘度分散体をその後、連続流動超音波セル(Hielscherから;24kHz;400W)を通して、5ml/分〜10ml/分の流速を使用して、ポンプで流出する。その結果、高度に流動的なシリカ分散体が得られ、その分析データを、表1にまとめる。
【0052】
実施例4
200m/gのBET比表面積を有する親水性出発シリカ(ワッカー・ケミー有限責任会社(ミュンヘン)から、HDK(登録商標)N20の名称で入手可能)を、欧州特許第1,433,749A1号明細書に従い、ジメチルジクロロシール剤反応させることによって得えられる、71%の残留シラノール含有量および0.95%の炭素含有量を有する部分的疎水性フュームドシリカ300gを、1,000gの十分に脱イオン化した(DI)水に、300rpm〜600rpmの溶解機で、一部分ずつ撹拌することによって混和する。分散体のpHを、水性NaOHの計量供給添加によって、9〜9.5の範囲内に維持する。シリカの添加の完了後、HCl水溶液(1M)の添加によってpHを8に調節し、そして次に分散を6,000rpmで30分間続ける。得られる低粘度分散体をその後、連続流動超音波セル(Hielscherから;24kHz;400W)を通して、5ml/分〜10ml/分の流速を使用して、ポンプで流出する。その結果、高度に流動的なシリカ分散体が得られ、その分析データを、表1にまとめる。
【0053】
実施例5
200m/gのBET比表面積を有する親水性出発シリカ(ワッカー・ケミー有限責任会社(ミュンヘン)から、HDK(登録商標)N20の名称で入手可能)を、欧州特許第1,433,749A1号明細書に従い、ジメチルジクロロシール剤反応させることによって得えられる、71%の残留シラノール含有量および0.95%の炭素含有量を有する部分的疎水性フュームドシリカ300gを、1,000gの十分に脱イオン化した(DI)水に、300rpm〜600rpmの溶解機で、一部分ずつ撹拌することによって混和する。分散体のpHを、水性NaOHの計量供給添加によって、9〜9.5の範囲内に維持する。シリカの添加の完了後、NaOH水溶液(1M)の添加によってpHを10に調節し、そして次に分散を6,000rpmで30分間続ける。得られる低粘度分散体をその後、連続流動超音波セル(Hielscherから;24kHz;400W)を通して、5ml/分〜10ml/分の流速を使用して、ポンプで流出する。その結果、高度に流動的なシリカ分散体が得られ、その分析データを、表1にまとめる。
【0054】
実施例6(比較実施例)
200m/gのBET比表面積を有する親水性出発シリカ(ワッカー・ケミー有限責任会社(ミュンヘン)から、HDK(登録商標)N20の名称で入手可能)を、欧州特許第1,433,749A1号明細書に従い、ジメチルジクロロシール剤反応させることによって得えられる、71%の残留シラノール含有量および0.95%の炭素含有量を有する部分的疎水性フュームドシリカ300gを、1,000gの十分に脱イオン化した(DI)水に、300rpm〜600rpmの溶解機で、一部分ずつ撹拌することによって混和する。分散体のpHを、水性NaOHの計量供給添加によって、9〜9.5の範囲内に維持する。シリカの添加の完了後、HCl水溶液(1M)の添加によってpHを4に調節し、そして次に分散を6,000rpmで30分間続ける。得られる低粘度分散体をその後、連続流動超音波セル(Hielscherから;24kHz;400W)を通して、5ml/分〜10ml/分の流速を使用して、ポンプで流出する。その結果、シリカ分散体が得られ、その分析データを、表1にまとめる。
【0055】
【表1】

*)ηrel:40℃下で4週間の後の分散体の粘度を、調製直後の分散体の粘度で割って得られる比; それぞれの場合、完成した分散体のpHで、25℃下およびD=100s−1の剪断速度で、コーン−プレートシステムを使って測定する。
【0056】
− 分散体の固体含有量を以下の方法によって測定する:磁器皿中で、10gの水分散体を、等量のエタノールと混ぜ、そして重量が一定になるまで、Nを流す150℃の乾燥オーブン中で蒸発させる。乾燥残渣の質量mが、固体含有量を以下で与える:
固体含有量 /% = m * 100 / 10g
− 分散体のζ電位を以下の方法によって測定する:分散体を、シリカがおよそ1.5重量%になるまで、分散体のpHと同じpHを有するDI水を使用して、希釈する。Malvern InstrumentsからのZetasizer ZS上で、ζ電位を9.2〜2のpH範囲にわたって測定する。pH調節は、1のpHステップでautotitratorを使って、達成される。
− 分散体の粘度を、コーン−プレートセンサーシステム(測定間隔は105μm)を有するHaakeのRS600レオメーターを使用して、25℃下およびD=100s−1の剪断速度で、測定する。
− 焼結凝集体の平均直径を、光相関スペクトロスコピーよる以下の方法により測定する:分散体を、シリカがおよそ0.3重量%となるように、分散体のpHと同じpHを有するDI水を使用して、希釈する。試料を、後方散乱中25℃下で、Malvern InstrumentsのZetasizer ZS上で、測定する。凝集体の平均直径は、Z平均(キュムラント平均)であり、そしてシリカ凝集体の流体力学的等価直径に相当する。
− pHは、組み合わせpH電極を使って測定する。
【0057】
実施例7(エマルションの調製)
23重量%の固体含有量を有する実施例1に記載されたシリカ分散体54gを、500mlステンレス鋼ビーカーに満たす。水性HClを加え、pHをおよそ5にする。今やより高い粘度となった懸濁液をゆっくり、100mPasの粘度を有するポリジメチルシロキサン(ワッカー・ケミー有限責任会社(ドイツ、ミュンヘン)から、「AK100」の名称で入手可能)150gに、Ultraturraxを使用した10,000rpmの撹拌および水冷却下に、約15分の期間にわたって計量供給することで、混ぜる。この添加の間、混合物の温度は60℃を超えないようにすべきである。結果として生じた今や高い粘度の堅固な塊を、その後、同様に10,000rpmでそして15分の期間にわたってゆっくりと、108gのDI水に、混ぜる。この添加の間、混合物の温度は60℃を超えないようにすべきである。その結果、高度に流動的な、白色O/Wエマルションが得られ、その分析データを、表2にまとめる。
【0058】
【表2】

【0059】
− 平均小液滴直径d50を、セル測定を使用したSympatec Helos/BF上のフラウンホーファーレーザー回折によって、測定する。
− pHを組み合わせpH電極によって測定する。
エマルションの粘度を、コーン−プレートセンサーシステム(測定間隔は105μm)を有するHaakeのRS600レオメーターを使用して、25℃下およびD=10s−1の剪断速度で、測定する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5〜12の分散体pHにおいて、部分的疎水性シリカを含むことを特徴とするシリカ分散体。
【請求項2】
部分的疎水性シリカ含有量が5重量%〜50重量%の、請求項1に記載のシリカ分散体。
【請求項3】
5重量%〜50重量%のシリカ含有量および100s−1の剪断速度において、1,000mPasより低い粘度を有する、請求項2に記載のシリカ分散体。
【請求項4】
pHを9から4へ低下させる場合に、粘度が連続的に増加する、請求項1から3のいずれかに記載のシリカ分散体。
【請求項5】
9から4のpH範囲にわたって、局所的粘度最高値を有さない、請求項1から4のいずれかに記載のシリカ分散体。
【請求項6】
40℃下で4週間の貯蔵期間の後、5〜12の範囲のpHを有する前記分散体の前記粘度が、前記分散体の調製直後の前記粘度に比較して、5倍を超えない分だけしか上昇しない(前記粘度は、105μmの測定間隔を有するコーン−プレートセンサーシステムを使用して、25℃下および100s−1の剪断速度において測定される)貯蔵安定性を有する、請求項1または2に記載のシリカ分散体。
【請求項7】
部分的疎水性シリカ粒子が50nm〜5,000nmの、流体力学的等価直径として測定される、平均凝集体粒子サイズを有する、請求項1から6の1つ以上に記載のシリカ分散体。
【請求項8】
請求項1から7の1つ以上に記載のシリカ分散体を含む、O/W ピッカリング・エマルション。
【請求項9】
粘度を増加させるための電解質を含む、請求項8に記載のO/W ピッカリング・エマルション。
【請求項10】
請求項1から7の1つ以上に記載のシリカ分散体を含む、塗料、コーティング、合成樹脂、接着剤、シール剤または紙コーティング。

【公表番号】特表2008−533254(P2008−533254A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501203(P2008−501203)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際出願番号】PCT/EP2006/002181
【国際公開番号】WO2006/097240
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】