説明

部分置換された動物性脂肪及び直接組み込まれたオリーブオイルを有する発酵させた乾燥又は半乾燥肉製品の製造方法

動物性脂肪が部分的に置換され、オリーブオイルが直接組み込まれている発酵された乾燥又は半乾燥肉製品の製造方法。オリーブオイルが直接組み込まれている発酵された乾燥又は半乾燥肉製品の製造方法。この方法は、(a)肉を糖、防腐剤、補助塩及び培養物と混合する工程;(b)オリーブオイル及び脂肪を混合する工程;(c)所望の肉−脂肪グレインが達成されるまで混合する工程;(d)肉ペーストを容器内に詰める工程;(e)その製品を相対湿度95〜80%及び温度25〜20℃のチャンバー内で発酵させる工程;(f)その製品を相対湿度80〜75%及び温度12〜17℃のチャンバー10内で脱水する工程;を含む。部分発酵加工製品のために、工程(e)及び(f)を(e’)その製品を相対湿度60〜75%及び温度25〜30℃のチャンバー内で24〜30時間発酵させる工程;(f’)その製品をコア温度55℃で加熱し、相対湿度80〜75%及び温度12〜17℃で脱水する工程;に変更する。この方法により製造された直接オリーブオイルを組み込まれた発酵させた乾燥又は半乾燥肉製品は、構造に関する観点(コンシステンシー)から優れた安定性を有し、オリーブオイルの物理的及び化学的な特徴を維持している。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、直接組み込まれたオリーブオイルを有する乾燥又は半乾燥の発酵肉製品の製造方法であって、以下の目的:
オリーブオイルを組み込んだその安定な組成物を目的とした発酵プロセス及びその後の脱水(乾燥)に供することができる固体肉ペーストの安定な組成物及び構造を達成すること、
特殊な差別化された要因(オリーブオイル)の感覚受容性(organoleptic)、物理的、化学的及び栄養的(nutritional)特徴を最大限維持する能力を達成すること、
のために、以下の主要な特徴:
1.添加された動物性脂肪の一部と置き換わるオリーブオイルを使用すること、
2.脂肪分の無い骨格組織(骨及び筋肉)を使用すること、
3.適切な技術的手法及び製造工程を実行すること
を有する方法に関する。
【0002】
合成又は天然の容器(casing)に詰め込まれた後の発酵加工製品(乾燥肉製品:空気硬化されたスジャック(sujuk)ソーセージなど)は天然又は人工的な環境で適切な脱水処理、おそらくスモーク、に供される。適切な環境で部分的発酵に供された後の部分発酵加工製品(半乾燥製品:ビールサラミ、ビールソーセージなど)は、続く熱処理、おそらくスモーク、に供される。
【0003】
この範疇の肉製品は、二つの技術的な面:発酵及び脱水(あるパーセンテージまでの水分の喪失)によって特徴付けられる。二つの特徴はこれら製品の保存及び貯蔵並びにそれらの品質において重要な役割を果たす。その理由は、感覚受容性の性質(味、風味、臭い、色、コンシステンシー)及びせん断(shearing)は、これら工程に依存するからである。乾燥製品は、それらの脂肪の外観、香辛料の味及び特定の風味に関して消費者に受け入れられている所定の構造及び組成を有する明確な製品の範疇を形成する。
【0004】
現在、安全、健康、栄養及びダイエットに関して需要が高まっており、低脂肪製品を摂取したいという消費者の希望が、植物性脂肪(オリーブオイル)を添加し、添加された動物性脂肪が低減された乾燥又は半乾燥肉製品を製造することを目的とするこの研究のための出発点となった。
【0005】
乾燥製品の発酵は基本的には生物学的現象である。即ち、それは様々な微生物の成長及び活動である。肉塊の発酵に有用且つ必要な微生物(Lactobacillus、Staphylococcus、Micrococcus)が存在する。一方、製品の性質を全く別のものとしてしまうか若しくは大きく変化させるか又は人体に病原性であるという理由で有害なシュードモナス科、腸内細菌科の微生物が存在する。肉塊の水分率を減少させること(脱水)によって製品のpHを5未満に減少させることで、望ましくない微生物の成長を妨げることができる。
【0006】
従来の技術を使用することによって達成できる従来の豚脂肪の添加と比較して、オイルの組み込みは、オイルの染み出し現象を通常与えるので、肉塊のみならず最終製品にも不安定な問題を与え又は不安定化させる傾向がある。
【0007】
現在まで、食肉産業において特許されている研究及び用途は、熱処理に起因した肉ベース製品及びそれに対するオリーブオイルの組み込みに関するものである。これらの製品に関して、様々な工程図が提案され、それら製品は熱処理に供される。この熱処理の間に殺菌と蛋白質の変性が行われ、この熱処理は最終製品の安定性に関して最も重要な要因となる。
【0008】
植物性脂肪の間接的な組み込みに関する特許技術も知られている。しかしこれら技術は100℃の温度レベルで予備熱処理工程を含む。特に、オリーブオイルの場合において、人体の栄養物としてその役割はシードオイル及び他の植物性オイルの間で明確であり、個々の天然化合物の有益な特徴が国際的に認められている(オメガ脂肪酸及びそれらの保護的役割、低コレステロール及びポリフェノール及びそれらの役割を参照されたい。)。オリーブオイルの低温混合は、その有益な特徴を不変状態で維持する。
【0009】
一方では、発酵又は部分発酵プロセス製品において動物性脂肪の一部と置き換わる成分としてオリーブオイルを特別の保護条件下で行い、その結果、ホスト製品への最大限の可能な特性の転換を保証することが適切であると考えられる。
【0010】
他方では、オリーブオイルの組み込みプロセスを用いて、乾燥又は半乾燥肉製品を製造する従来の技術を保証することも適切であると考えられる。この場合、化学的なデータは、系統的に考慮されなければならない。これらデータは肉の蛋白質やオリーブオイルの性質及び各成分の個々の性質に基づくそれらの混合物の性質に基づいている。
【0011】
肉製品の安定性は下記事項によって有意に影響されることを考慮しなければならない。
・肉ペーストのpH(初期pH及びこれの減少率)
・肉ペーストの初期微生物装填量
・製品に組み込まれる脂肪の源及び組成
・例えば、
−脂肪酸プロファイル(種類及び飽和度)
−SFI(固体脂肪インデックス)
−様々な製造段階において与えられる温度でのPUFA(ポリ不飽和脂肪酸)、MUFA(モノ不飽和脂肪酸)/SFA(飽和脂肪酸)比
等の物理的及び化学的性質
技術的な観点から、製品を熟成させ脱水する段階で安定な肉ペーストを調製する際に、豚脂肪とオリーブオイルとの違いは考慮されなければならないことが明らかである。
【0012】
オリーブオイルは低pH製品であり、製品の発酵を妨げない。これと反対に、オリーブオイルは水分の除去を促す肉蛋白質の変性を起こすので、それは脱水の促進に寄与する。それにもかかわらず、過剰量のオリーブオイルは、それが抽出筋肉アルブメンと脂肪との間に格子(最終製品のコンシステンシー及びせん断容量(shearing capacity)はそのような格子に依存する。)を形成することを妨げるpHの急速な低下及び蛋白質の速やかな変性を起こすという事実に起因して、否定的な結果を示している。
【0013】
オリーブオイルは微生物の成長数(バクテリア)の最も少ない製品である。その低酸度及び低水分活性(利用可能な水分−aw)に起因して、オリーブオイルは微生物の成長を可能にしていない。この事実が製品の発酵に寄与する。その理由は、オリーブオイルは肉ペーストの初期微生物数に影響されず、望ましくない微生物の成長に対して競合する。
【0014】
オリーブオイルを混合した乾燥又は半乾燥製品の特性を達成するには、以下の特定の条件でオリーブオイルを組み込むことが必要である。
−機械的なプロセスによって最大限可能なオイルの組み込みを行うこと(関連化合物の混合、均質化)
−製品におけるオイルの最大可能吸収及び保持を保証するためにこれら化合物の間の理想的な量比を計算すること、これと平行して、製品の適切な熟成、最終製品の安定性及びせん断容量を可能にする適切な物理的及び化学的条件を生成すること。添加された脂肪の計算量は10%を超えてはならない。
【0015】
−適切な発酵及び脱水条件を生成すること。これは混合したオリーブオイルで肉塊の適切な脱水に寄与し、所望の微生物の成長によって製品の適切な発酵に寄与する。
こうして、本発明はオリーブオイルを直接組み込んだ発酵乾燥肉製品を製造する方法を提供する。
【0016】
即ち、−4℃の温度で肉を(望ましい微生物の)出発培養物、糖、調味料(例えば、オレガノ、ペッパー、パプリカ、スパイス)及び補助塩(例えば、塩、ニトレート類、アスコルベート塩)とミキサー内で混合し、温度が−2℃に上昇したら、オリーブオイル及び脂肪の所定量をそこに加える。望ましい肉−脂肪グレインが達成されるまで混合を続ける。その後、混合物をスタッフィング機に移送し、減圧下(1000mbar)及び7kWの需要電力で容器(casing)にその混合物を詰める。続いて、それを熟成チャンバーに導く。これら特別のチャンバーは、相対湿度及び温度を制御し調節する自動システムを備えている。最初の数日間、相対湿度95〜80%、温度25〜20℃及び空気速度0.5〜0.8m/秒の間で変化させる。製品の発酵は、製品の直径により数週間から数ヶ月の間続く。その後、その肉製品(ソーセージなど)を特別な脱水チャンバーに移送する。それらの所望の脱水が起こり、色が安定し、望ましい臭いや風味が達成されるまで、製品をこれらチャンバー内に置く。これらチャンバーにおいて、相対湿度は80〜75%であり、温度は12〜17℃であり、空気速度は0.5〜0.1m/秒である。
【0017】
また、本発明はオリーブオイルを直接組み込んだ発酵半乾燥肉製品を製造する方法を提供する。
即ち、−4℃の温度で肉を(望ましい微生物の)出発培養物、糖、調味料(例えば、オレガノ、ペッパー、パプリカ、スパイス)及び補助塩(例えば、塩、ニトレート類、アスコルベート塩)とミキサー内で混合し、温度が−2℃に上昇したら、オリーブオイル及び脂肪の所定量をそこに加える。望ましい肉−脂肪グレインが達成されるまで混合を続ける。その後、混合物をスタッフィング機に移送し、減圧下(1000mbar)及び7kWの需要電力で容器(casing)にその混合物を詰める。続いて、それを熟成チャンバーに導く。これら特別のチャンバーは、相対湿度及び温度を制御し調節する自動システムを備えている。相対湿度75〜60%、温度25〜30℃及び空気速度0.5〜0.8m/秒の間で変化させる。製品の発酵は、24〜30時間続く。その後、その肉製品(ソーセージなど)をコア温度55℃で加熱する。この熱処理時間は0.5〜2時間で変化させ、その製品の直径に依存する。その後、肉製品を特別な脱水チャンバーに移送する。それらの所望の脱水が起こり、色が安定し、望ましい臭いや風味が達成されるまで、製品をこれらチャンバー内に置く。これらチャンバーにおいて、相対湿度は80〜75%であり、温度は12〜17℃であり、空気速度は0.5〜0.1m/秒である。
【0018】
本発明により製造されるオリーブオイルを有する乾燥又は半乾燥肉製品は、低脂肪の赤身の肉を使用し、低温処理し、減圧条件で調製したことにより、構造の観点(コンシステンシー)から優れた安定性を有する。製造工程の間低温処理されるので、これら製品に含まれるオリーブオイルの物理的及び化学的特性は変化せず維持される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物性脂肪に換わりオリーブオイルが組み込まれている(混合されている)ことを特徴とする発酵加工製品の製造方法であって、
(a)−4℃の肉を塩、糖、防腐剤、補助塩及び培養物と混合する工程;
(b)その後、油及び脂肪をその混合物に加える工程;
(c)所望の肉及び脂肪のグレインが達成されるまで混合する工程;
(d)続いて、その混合物をスタッフィング機に導き、そこで減圧条件下(1000mbar)容器内にそれを詰める工程;
(e)その製品を相対湿度95〜80%、温度25〜20℃及び空気速度0.5〜0.8m/秒に調節可能な熟成チャンバーに導く工程、ここで、熟成チャンバーに滞在する時間は製品のサイズに応じて変える;
(f)その後、その製品を相対湿度80〜75%、温度12〜17℃及び空気速度0.5〜0.1m/秒に調節可能な脱水チャンバーに導く工程;
を含む方法。
【請求項2】
請求項1の方法により製造されたオリーブオイルを組み込まれた発酵加工製品。
【請求項3】
請求項1のオリーブオイルが組み込まれている(混合されている)ことを特徴とする部分発酵加工製品の製造方法であって、工程(e)及び(f)に換えて、下記(e’)及び(f’):
(e’)その製品を相対湿度60〜75%、温度25〜30℃及び空気速度0.5〜0.8m/秒に調節可能な熟成チャンバーに導く工程、ここで、発酵は24時間続ける;
(f’)その後、その製品をコア温度55℃で加熱し、相対湿度80〜75%、温度12〜17℃及び空気速度0.5〜0.1m/秒に調節可能な脱水チャンバーに導く工程;
を行う方法。
【請求項4】
請求項1、2及び3の方法により製造されたオリーブオイルを組み込まれた部分発酵加工製品。

【公表番号】特表2007−508028(P2007−508028A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534836(P2006−534836)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【国際出願番号】PCT/GR2004/000050
【国際公開番号】WO2005/034652
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(503297213)“クレタ・ファーム・アノニモス・ヴィオミチャニキ・アンド・エンポリキ・エタイレイア” (6)
【Fターム(参考)】