説明

部品供給装置および部品供給方法

【課題】トレー上に供給された軸状部品の重なりを簡単に解消してロボットのハンド部での把持を容易に実行するできる部品供給装置および部品供給方法を提供すること。
【解決手段】ワッシャ13を貯留したホッパーと、ホッパーから供給される複数のワッシャ13を並べるトレー32とを備え、トレー32上のワッシャ13を撮像し、この撮像された2次元画像に基づいて、ロボット本体のハンド部により当該ワッシャ13を把持して作業者用トレーに供給する部品供給装置において、トレー32を略水平に移動させる第1スライダー33及び第2スライダー35を備え、トレー32上にワッシャ13が互いに重なって供給された状態で、第1スライダー33及び第2スライダー35を動作させた場合、トレー32には、トレー32の底板51上面からワッシャ13の厚みよりも低い高さで突出し、当該ワッシャ13のトレー32上の移動を規制する突起56を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マニピュレータを用いてトレー上の筒状部品または板状部品を当該トレー外に供給する部品供給装置および部品供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車のエンジン等の組立ラインでは、作業員が組立作業を行う作業台または組立ロボット等の組立装置の周囲に部品供給装置が設置されている。この種の部品供給装置は、例えば、ナットやワッシャ等の部品を作業員または組立装置に供給するための装置であり、これら部品が山積みされたトレーを備え、このトレー上の部品を撮像し、この撮像された2次元画像に基づいて当該部品を把持してトレー外に供給するマニピュレータを備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2555842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、トレー上で重なり合った部品の中から一の部品を2次元画像で認識し、当該部品をマニピュレータで把持するためには、煩雑な画像処理を実行するとともに、この画像処理データと把持する部品形状に対応した照合モデルとのパターンマッチングを行い、最上部に位置する部品を認識して把持することを要し、構成が煩雑となるという問題がある。
一方、トレー上で部品が重なり合わずに並んで配置されている状態では、重なり合っているものに比べて簡易な構成で、部品を撮像した2次元画像に基づいて当該部品をマニピュレータで把持することが可能となる。このため、トレーに振動モータを取り付けることより当該トレーを振動させて部品の重なりを解くことが想定される。
しかし、例えば、ワッシャのような板状部品、もしくは、ナットのような板状部品は、部品同士が重なり合った場合に接触面積が大きいため、部品間の摩擦抵抗が大きく、単純にトレーを振動させるだけでは板状部品または板状部品同士の重なりを確実に解けないといった問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、トレー上に供給された筒状部品または板状部品の重なりを簡単に解消してマニピュレータでの把持を容易に実行するできる部品供給装置および部品供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述課題を解決するため、本発明は、筒状部品または板状部品を貯留したホッパーと、前記ホッパーから供給される複数の筒状部品または板状部品を並べるトレーとを備え、前記トレー上の前記筒状部品または板状部品を撮像し、この撮像された画像に基づいて、マニピュレータにより当該筒状部品または板状部品を把持して前記トレー外に供給する部品供給装置において、前記トレーを略水平に移動させる移動手段を備え、前記トレーは、当該トレー上に前記筒状部品または板状部品が互いに重なって供給された状態で、前記移動手段を動作させた場合に、前記筒状部品または板状部品の前記トレー上の移動を規制する移動規制手段を備えることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、移動手段を動作させた場合に、筒状部品または板状部品のトレー上の移動を規制する移動規制手段を備えるため、この移動規制手段により、移動が規制された筒状部品または板状部品に重なった部品は、規制された反動で下段の筒状部品または板状部品から離脱することにより、筒状部品または板状部品の重なりを解消することができる。このため、筒状部品または板状部品をトレー上に重なり合わずに並んで配置できるため、この筒状部品または板状部品をマニピュレータで容易に把持してトレー外に供給することができる。
【0008】
この構成において、前記移動規制手段は、前記トレーの供給面から前記筒状部品または板状部品の厚み以下の高さで突出した突起である構成としても良い。この構成によれば、互いに重なり合った最下段の筒状部品または板状部品のみが突起に衝突することにより、この衝突の衝撃で筒状部品または板状部品の重なりが崩れ、当該筒状部品または板状部品の重なりを容易に解消することができる。
【0009】
また、前記移動手段は、前記トレーを一方向に往復移動する第1移動手段と、前記一方向に略直交する他方向に前記トレーと往復移動する第2移動手段とを含み、前記トレーには、前記一方向及び前記他方向に沿って、複数の前記移動規制手段がそれぞれ形成されている構成としても良い。この構成によれば、トレー上に供給された筒状部品または板状部品を移動規制手段に接触させやすくなり、筒状部品または板状部品同士の重なりを早期に解消することができる。
【0010】
また、隣接する前記移動規制手段間の距離と前記筒状部品または板状部品の径との差以上の距離で、前記第1移動手段及び前記第2移動手段を、それぞれ前記一方向及び前記他方向に往復移動させる制御手段を備えても良い。この構成によれば、トレー上に供給された筒状部品または板状部品を確実に周囲の移動規制手段に接触させることができ、筒状部品または板状部品同士の重なりを早期に、かつ、確実に解消できる。
【0011】
また、前記トレーが円運動するように、前記第1移動手段及び前記第2移動手段の動作を制御する制御手段を備えても良い。この構成によれば、トレーを円運動させることにより、このトレー上の筒状部品または板状部品に生じる加速度の向きを常時変化させることができるため、この筒状部品または板状部品を容易に移動規制手段に接触させることができ、筒状部品または板状部品同士の重なりを早期に解消することができる。
【0012】
また、本発明は、筒状部品または板状部品が供給されるとともに、これら筒状部品または板状部品の移動を規制する移動規制手段が設けられたトレーを略水平に移動させる移動工程と、前記トレー上の筒状部品または板状部品をマニピュレータで把持して当該トレー外に供給する工程とを備えることを特徴とする。
【0013】
この構成において、前記筒状部品または板状部品を貯留して当該筒状部品または板状部品を前記トレーに供給するホッパーと、トレーを略水平に移動させる制御を行う制御手段とを備え、この制御手段には、前記移動工程及び前記トレー外に供給する工程を含む生産管理を実行する上位コンピュータが接続され、この上位コンピュータに、前記筒状部品または板状部品が前記ホッパー内から無くなる予定時刻を報知する工程と、この予定時刻に合わせて前記無くなりそうな筒状部品または板状部品を前記ホッパーの近傍に配送する配送工程と、前記ホッパーに当該無くなりそうな筒状部品または板状部品を投入する投入工程とを備えることを特徴とする。
この構成によれば、筒状部品または板状部品がそれぞれホッパーから無くなることがないので、生産ラインが止まることが防止され、ワークに対して、筒状部品または板状部品を定められた順番に滞りなくスムーズに組み付けることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、移動手段を動作させた場合に、筒状部品または板状部品のトレー上の移動を規制する移動規制手段を備えるため、この移動規制手段により、移動が規制された筒状部品または板状部品に重なった部品は、規制された反動で下段の筒状部品または板状部品から離脱することにより、筒状部品または板状部品の重なりを解消することができる。このため、筒状部品または板状部品をトレー上に重なり合わずに並んで配置できるため、この筒状部品または板状部品をマニピュレータで容易に把持してトレー外に供給することができる。
また、本発明によれば、互いに重なり合った最下段の筒状部品または板状部品のみが突起に衝突することにより、この衝突の衝撃で筒状部品または板状部品の重なりが崩れ、当該筒状部品または板状部品の重なりを容易に解消することができる。
また、本発明によれば、トレー上に供給された筒状部品または板状部品を移動規制手段に接触させやすくなり、筒状部品または板状部品同士の重なりを早期に解消することができる。
また、本発明によれば、トレー上に供給された筒状部品または板状部品を確実に周囲の移動規制手段に接触させることができ、筒状部品または板状部品同士の重なりを早期に、かつ、確実に解消できる。
また、本発明によれば、トレーを円運動させることにより、このトレー上の筒状部品または板状部品に生じる加速度の向きを常時変化させることができるため、この筒状部品または板状部品を容易に移動規制手段に接触させることができ、筒状部品または板状部品同士の重なりを早期に解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係る部品供給装置を示す全体構成図である。
【図2】部品供給装置の部分側面図である。
【図3】トレーの上面図である。
【図4】トレーの側断面図である。
【図5】Aは、互いに重なったワッシャが突起と衝突する状態を示す部分断面図であり、Bは、ワッシャの重なりが解消された状態を示す部分断面図である。
【図6】別の実施形態にかかるトレーの側断面図である。
【図7】別の実施形態にかかるトレーの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を添付した図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る部品供給装置を示す全体構成図である。
部品供給装置10は、図1に示すように、エンジン等のワークWの組立ライン(生産ライン)20に設置され、この組立ライン20の作業台21でワークWの組立作業を行う作業員Pにワッシャ(板状部材)やナット(筒状部材)を供給するものである。組立ライン20には、複数の作業台21、21・・が設けられ、これら作業台21は、それぞれ搬送コンベア22によって連結されている。ワークWは、この搬送コンベア22で搬送されて各作業台21を順次移動する。なお、図示はしないが、作業台21には、作業員Pの代わりにワークWの組立作業を行う作業装置(締付装置や多関節ロボット)が配置されていても良い。
部品供給装置10は、作業台21に隣接して配置されるロボット部11と、このロボット部11の周囲に配置される複数の部品供給部12とを備える。これら部品供給部12は、作業台21にて使用されるワッシャやナットの種類(例えば、適合するねじ径等)ごとに設けられ、本実施形態では、種類の異なる2種類のワッシャ13A,13Bに対応する2台の部品供給部12と、ナット14に対応する1台の部品供給部12の合計3台が設置されている。なお、これらワッシャ13A、13Bについて区分けが不要の場合には、単にワッシャ13と記載する。
【0017】
ロボット部11は、図2に示すように、先端にワッシャ13またはナット14を把持するハンド部15を有するロボット本体(マニピュレータ)16を備え、このロボット本体16は、ハンド部15を用いて各部品供給部12のトレー32(後述する)からそれぞれ所定数のワッシャ13A,13B及びナット14を取得し、これらワッシャ13A,13B及びナット14を所定の組立の順番に作業者用トレー(トレー外)23の上に並べる動作を行う。ロボット部11は、ロボット本体16のハンド部15がトレー32上のワッシャ13またはナット14に近遠接離できる位置に設けられていれば良い。
また、ロボット部11は、各トレー32の上方にそれぞれ配置されたカメラ(撮像手段)17と、各カメラ17により撮像された2次元画像に基づいて、ロボット本体16の動作を制御するロボット制御部18とを備える。このロボット制御部18は、上記したトレー32上に並べられたワッシャ13またはナット14の位置及び姿勢を認識し、この位置及び姿勢のワッシャ13またはナット14をハンド部15で把持できるようにロボット本体16の動作を制御する。
作業者用トレー23は、作業台21の近くで作業員Pの手元に設けられている。これにより、作業員Pは、作業者用トレー23に並べられたワッシャ13A,13B及びナット14の順番に従うことにより、ワークWに対して、ワッシャ13A,13B及びナット14を容易に定められた順番に組み付けることができる。
【0018】
部品供給部12は、図1に示すように、種類毎に分けられたワッシャ13またはナット14が貯留されるホッパー31と、このホッパー31から供給される複数のワッシャ13またはナット14を並べるトレー32と、このトレー32上に供給されたワッシャ13またはナット14同士の重なりを抑制するために、トレー32を一方向に往復移動させる第1スライダー(第1移動手段)33と、この第1スライダー33と略直交する他方向に往復移動する第2スライダー(第2移動手段)35と、これら第1及び第2スライダー33,35を含む部品供給部12全体の動作を制御する供給部制御部(制御手段)34とを備える。この供給部制御部34には、赤外線や電波等、その他の無線通信手段や有線通信手段を利用して、上記したロボット本体16の動作を制御するロボット制御部18が接続されており、このロボット制御部18は供給部制御部34とともに制御手段を構成する。
【0019】
ホッパー31には、このホッパー31内のワッシャ13またはナット14をトレー32に供給するための供給口31Aが形成され、この供給口31Aには、図2に示すように、当該供給口31Aを開閉するシャッタ機構36と、当該供給口31Aから排出されたワッシャ13またはナット14をトレー32に案内するシューター37とが設けられている。シャッタ機構36は、不図示の駆動モータの動作により、供給口31Aを開閉し、この供給口31Aが開放された際に、シューター37を介してワッシャ13またはナット14をトレー32上に供給する。駆動モータの動作タイミング及び駆動時間(シャッタの開閉時間)は供給部制御部34により制御されている。
また、ホッパー31は、このホッパー31の上方に図示しない変位センサを備え、ホッパー31の上方から当該変位センサによりワッシャ13やナット14類の最上位レベルを検知し、その検知結果を供給部制御部34に出力している。供給部制御部34は、ホッパー31内に貯留されるワッシャ13やナット14類の高さレベルの変化とシャッタ機構36の開放時間とから、ホッパー31内のワッシャ13やナット14類が、この後何分後に無くなるかを算出する。なお、ワッシャ13やナット14類が無くなる予定時刻を算出する方法は他の公知の算出方法を利用してもかまわない。
また、供給部制御部34は、図2に示すように、ワークWの組立ライン20の生産管理を実行する上位コンピュータ90に接続されており、供給部制御部34は、各ホッパー31内のワッシャ13やナット14類が無くなる予定時刻をそれぞれ算出し、これら各予定時刻を上位コンピュータ90に報知する。これにより、上位コンピュータ90は、各ホッパー31内のワッシャ13やナット14類が無くなる予定時刻に応じて、図示しない自動倉庫等に通知し、必要なワッシャ13A,13B及びナット14をこの自動倉庫等から出荷する。本構成では、出荷されたワッシャ13A,13B及びナット14は、図示しない自動搬送車(AGV)等により、当該ホッパー31の近傍に配送され(配送工程)、作業員Pや産業用ロボット、人型ロボット等によりホッパー31内に投入される(投入工程)。これにより、ワッシャ13A,13B及びナット14がそれぞれホッパー31から無くなることがないので、組立ライン20が止まることがないから、作業員Pは、ワークWに対して、ワッシャ13A,13B及びナット14を定められた順番に、滞りなくスムーズに組み付けることができる。
なお、図示はしないが、場合によってはトレー32の往復移動方向に複数のホッパー31を設ける構成としても良い。
【0020】
第1スライダー33は、図1に示すように、モータ40と、このモータ40に取り付けられるケース体41とを備え、このケース体41には、図2に示すように、ケース体41の上面から突出してトレー32に固定されるテーブル42が設けられる。このテーブル42は、ケース体41内に収容されてモータ40に連結されるボールねじ(不図示)のナット(不図示)に取り付けられ、当該モータ40の駆動により、ケース体41の長手方向に往復移動する。また第2スライダー35は、図1及び図2に示すように、上記した第1スライダー33の下方に、当該第1スライダー33の長手方向に略直交するように配置されている。この第2スライダー35は、モータ43と、このモータ43に取り付けられるケース体44とを備え、このケース体44には、図2に示すように、ケース体44の上面から突出して第1スライダー33のケース体41に固定されるテーブル45が設けられる。このテーブル45は、ケース体44内に収容されてモータ43に連結されるボールねじ(不図示)のナット(不図示)に取り付けられ、当該モータ43の駆動により、ケース体44の長手方向に往復移動する。
本実施形態では、第1スライダー33は、図2に示すように、ホッパー31からシューター37を通じてトレー32にワッシャ13またはナット14が供給される方向に対して略直交する方向に設けられ、第2スライダー35は、上記したワッシャ13またはナット14の供給方向に沿って設けられている。このため、ワッシャ13またはナット14が供給される方向、及び、この方向に対して略直交する方向にそれぞれトレー32を往復移動させることにより、トレー32上に供給されたワッシャ13またはナット14を素早く当該トレー32全面に分散させることができる。
【0021】
次に、トレー32について説明する。
図3は、トレー32、第1スライダー33、第2スライダー35及びシューター37を上方から見た上面図であり、図4は、トレー32の側断面図である。これら図3及び図4では、ワッシャ13が供給されたトレー32を例示して説明しているが、ナット14が供給されるトレー32でも同様である。
本構成では、ホッパー31からトレー32上に供給されたワッシャ13またはナット14を、カメラ17で撮像された2次元画像で認識し、ロボット本体16のハンド部15で把持して作業者用トレー23に供給するようになっている。このような構成では、トレー32上でワッシャ13またはナット14同士が重なり合わずに並んでいる方が容易に2次元画像に基づいて把持することができるため、ワッシャ13またはナット14同士の重なりを極力解消することが望ましい。一方、ワッシャ13のような板状の部品、もしくは、ナット14のような筒状の部品は、部品同士が重なり合った場合に接触面積が大きいため、部品間の摩擦抵抗が大きく、バイブレータ等で単純にトレー32を振動させるだけではワッシャ13またはナット14同士の重なりを確実に解くことができない。
【0022】
このため、本実施形態では、トレー32は、図3に示すように、底板51の周囲に立設された壁部52〜55を備え、トレー32内にワッシャ13が供給される領域32Aを形成するとともに、この領域32Aには、底板51の上面(供給面)から突出した複数の突起(移動規制手段)56が形成されている。トレー32は、例えば、MCナイロンなどの表面摩擦係数の低い樹脂性材料で一体に形成されている。このため、第1スライダー33および第2スライダー35の動作によりトレー32を移動させた場合に、このトレー32上に供給されたワッシャ13がトレー32の移動に基づいて当該トレー32上を容易に移動するようになっている。
また、突起56は、トレー32の移動に基づいて当該トレー32上を移動するワッシャ13と衝突して、当該ワッシャ13のそれ以上の移動を規制するものであり、本実施形態では、突起56は、第1スライダー33が往復移動する方向(図3中X方向)及び第2スライダー35が往復移動する方向(図3中Y方向)に沿って複数形成されている。これによれば、トレー32の移動方向に沿って複数の突起56が形成されているため、このトレー32上に供給されたワッシャ13が突起56に衝突しやすくなっている。
【0023】
具体的には、図3に示すように、突起56は、隣接する突起間の距離を距離L1、突起56と壁部52〜55との距離を距離L1よりも短い距離L2とする升目状に配置されており、これら距離L1、L2は、トレー32に供給される最大径のワッシャ13の直径D1よりも大きく形成されている。これにより、トレー32上に供給されたワッシャ13が隣接する突起56間、及び、突起56と各壁部52〜55との間に進入可能となり、トレー32の全面にワッシャ13を分散して配置できる。
また、突起56の直径D2は、トレー32に供給される最小径のワッシャ13の直径D1よりも小さく形成され、突起56の高さH1は、図4に示すように、トレー32に供給される最も高さの低いワッシャ13の厚みH2よりも低く形成されている。これにより、ワッシャ13が突起56上に乗り上げたままになることが防止されるとともに、互いに重なり合ったワッシャ13は、トレー32の底板51上を移動するワッシャ13のみを確実に突起56に衝突させることができる。
【0024】
第1スライダー33及び第2スライダー35は、それぞれ隣接する突起56間の距離L1とワッシャ13の直径D1との差(L1−D1)以上の移動距離L3で、トレー32を略水平に往復移動する。この移動距離L3は、トレー32に供給されるワッシャ13の直径D1が予め分かっているため、このワッシャ13の直径に応じて供給部制御部34により変更自在となっている。
【0025】
次に、動作について説明する。
供給部制御部34は、シャッタ機構36の駆動モータを駆動し、供給口31Aを開放して当該供給口31Aを通じてワッシャ13を排出する。このシャッタ機構36の開放される時間は、トレー32上に供給されるワッシャ13数がロボット本体16により一工程で取得されるワッシャ13数と同数もしくは若干多い数となる時間に設定されている。供給されるワッシャ数が一工程で取得されるワッシャ数よりも少ないと、トレー32上に一工程で取得されるワッシャ13が存在しないため、ホッパー31からトレー32に新たにワッシャ13が供給されるまでロボット本体16の動作が停止するため、その分、ワークWの組立作業が遅れてしまう。また、供給されるワッシャ数が一工程で取得されるワッシャ数よりも明らかに多いと、トレー32上のワッシャ13の重なりを解消できなくなるため、ロボット本体16のハンド部15でのワッシャ13の把持が困難となり、ワッシャ13を把持して作業者用トレー23に供給するまでの時間が多くかかり、ワークWの組立作業が遅れてしまう。
このため、本実施形態では、シャッタ機構36の開放される時間をトレー32上に供給されるワッシャ13数がロボット本体16により一工程で取得されるワッシャ13数と同数もしくは若干多い数となる時間に設定することにより、トレー32上には、常時、ワッシャ13同士の重なりを解消できるとともに必要最低限のワッシャ13を供給できるため、このトレー32上のワッシャ13をロボット本体16のハンド部15で把持して作業者用トレー23に迅速に供給することができる。なお、トレー32上に配置されるカメラ17により、トレー32上に配置されるワッシャ数を定期的に計数し、この計数した結果に応じて、シャッタ機構36の開放時間を調整しても良い。
【0026】
続いて、供給部制御部34は、図3に示すように、第1スライダー33及び第2スライダー35をそれぞれ駆動して、当該トレー32が移動する方向に隣接する突起56間の距離L1とワッシャ13の直径D1との差(L1−D1)以上の移動距離L3となるようにトレー32を略水平に往復移動する。本実施形態では、供給部制御部34は、第1スライダー33及び第2スライダー35を、それぞれ所定回数(例えば10回)ずつ往復移動する動作を交互に実行し、この往復移動が移動工程を構成する。
すると、図5Aに示すように、互いに重なり合ったワッシャ13は、底板51上を滑り、底板51上に設けられた突起56に衝突する。この際、突起56の高さH1は、ワッシャ13の厚みH2よりも低く形成されているため、底板51上を滑る最下段のワッシャ13のみが突起56に衝突する。このため、この衝突の衝撃により、上段のワッシャ13は、図5Bに示すように、最下段のワッシャ13上から移動し、ワッシャ13同士の重なりが解消される。
この往復移動の制御は、ホッパー31からトレー32にワッシャ13が供給されるたびに実行される。これにより、トレー32に供給されたワッシャ13は、その都度、重なりが解消した状態でトレー32上に並べられるため、後述するロボット本体16のハンド部15での把持動作を容易に行うことができる。
【0027】
続いて、ロボット制御部18は、ロボット本体16をトレー32上に移動させるとともに、このトレー32上に並べられたワッシャ13の位置及び姿勢を当該トレー32の上方に配置されたカメラ17により認識する。そして、ロボット制御部18は、認識したワッシャ13の位置及び姿勢に基づいて、ロボット本体16のハンド部15の動作を制御して、このワッシャ13を把持し、当該ワッシャ13を作業者用トレー23に供給する。ここで、ロボット制御部18は、一工程で必要なワッシャ数に達するまで、トレー32上のワッシャ13を把持して作業者用トレー23に供給する動作を繰り返し実行する。
【0028】
以上、説明したように、本実施形態によれば、ワッシャ13を貯留したホッパー31と、ホッパー31から供給される複数のワッシャ13を並べるトレー32とを備え、トレー32上のワッシャ13を撮像し、この撮像された2次元画像に基づいて、ロボット本体16のハンド部15により当該ワッシャ13を把持して作業者用トレー23に供給する部品供給装置10において、トレー32を略水平に移動させる第1スライダー33及び第2スライダー35を備え、トレー32上にワッシャ13が互いに重なって供給された状態で、第1スライダー33及び第2スライダー35を動作させた場合、トレー32には、トレー32の底板51上面からワッシャ13の厚みH2よりも低い高さH1で突出し、当該ワッシャ13のトレー32上の移動を規制する突起56が形成されているため、底板51上を滑る最下段のワッシャ13のみが突起56に衝突する。このため、この衝突の衝撃により、上段のワッシャ13が最下段のワッシャ13上から移動し、ワッシャ13同士の重なりを解消することができる。これにより、ワッシャ13をトレー32上に重なり合わずに並んで配置できるため、このワッシャ13をロボット本体16のハンド部15で容易に把持して作業者用トレー23に供給することができる。
【0029】
また、本実施形態によれば、トレー32を一方向に往復移動する第1スライダー33と、この第1スライダー33の移動方向に略直交する他方向にトレー32と往復移動する第2スライダー35とを備え、トレー32には、一方向及び他方向に沿って、複数の突起56がそれぞれ形成されているため、このトレー32上に供給されたワッシャ13を突起56に衝突させやすくなり、ワッシャ13同士の重なりを早期に解消することができる。
【0030】
また、本実施形態によれば、隣接する突起56間の距離L1とワッシャ13の直径D1との差(L1−D1)以上の移動距離L3で、第1スライダー33及び第2スライダー35を、それぞれ往復移動させるため、トレー32上に供給されたワッシャ13を確実に周囲の突起56と衝突させることができ、ワッシャ13同士の重なりを早期に、かつ、確実に解消できる。
【0031】
また、本実施形態によれば、第1スライダー33及び第2スライダー35は、ホッパー31からトレー32上にワッシャ13が供給されるごとに駆動されるため、トレー32に供給されたワッシャ13は、その都度、重なりが解消した状態でトレー32上に並べられるためロボット本体16のハンド部15での把持動作を容易に行うことができる。
【0032】
次に、別の実施形態について説明する。
図6は、別の実施形態にかかるトレー32の側断面図であり、図4に相当する。この別の実施形態では、上記した実施形態と図1〜図3について同一の構成を有するため説明を省略する。
上記した実施形態では、ワッシャ13の移動を規制する移動規制手段として、トレー32に形成された突起56を備える構成について説明したが、この別の実施形態では、突起の代わりに、トレー32の底板51に穴部57が形成され、この穴部57に磁石(移動規制手段)60が埋設されている。この磁石60は、底板51の上面と面一に埋設されており、この磁石60にワッシャ13が衝突するものではない。
ワッシャ13は、例えば、鉄等の磁性体により形成されており、磁石60の磁力により引きつけられる性質を有する。このため、トレー32上に供給されたワッシャ13は、第1スライダー33及び第2スライダー35の動作により、トレー32上を移動するが、このトレー32に埋設された磁石60上を通過した際に、この磁石60の磁力に引きつけられ、ワッシャ13のトレー32上の移動が規制される。
このため、上段のワッシャ13が磁石60に引きつけられた最下段のワッシャ13上からから移動し、ワッシャ13同士の重なりを解消することができる。これにより、ワッシャ13をトレー32上に重なり合わずに並んで配置できるため、このワッシャ13をロボット本体16のハンド部15で容易に把持して作業者用トレー23に供給することができる。
また、この別の実施形態では、トレー32の底板51に磁石60を埋設した構成としたが、この磁石60の代わりに、着脱可能な程度の粘着性を有する粘着シート(移動規制手段)を底板51の上面に貼付しても良い。
【0033】
また、別の実施形態について説明する。
図7は、別の実施形態にかかるトレー32の動作を説明するための上面図である。この実施形態においても、上記した実施形態と図1、図2、図4、図5について同一の構成を有するため説明を省略する。
上記した実施形態では、供給部制御部34は、第1スライダー33及び第2スライダー35をそれぞれ所定の移動方向に往復移動させるように制御していたが、この別の実施形態では、第1スライダー33及び第2スライダー35を同時に動作させて、トレー32が円運動するように制御している。
具体的には、4つの突起56に囲まれたエリア内で、各突起56から最も離間した位置、すなわち4つの突起56を対角に結んだ線の交点Aと突起56との距離L4と、ワッシャ13の半径D1/2との差以上の距離となる半径でトレー32を円運動させればよい。
この実施形態によれば、トレー32を円運動させることにより、このトレー32上のワッシャ13に生じる加速度の向きを常時変化させることができるため、このワッシャ13を容易に突起56と衝突させることができ、ワッシャ13同士の重なりを早期に解消することができる。
【0034】
なお、本発明は、上記実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは勿論である。本実施形態では、板状部品としてワッシャを例示して説明したが、これに限るものではなく、薄板状に形成されているものであれば他の部品であっても良い。また、本実施形態では、筒状部品としてナットを例示して説明したが、これに限るものではなく、例えば、カラー等に適用することもできる。
また、本実施形態では、トレー外の一例として、作業者用トレー23に供給する構成を説明したが、これに限るものではない。
また、本実施形態では、1つの作業台21に対して、ロボット本体16が1台配置した構成としているが、このロボット本体16を複数の作業台21に対して設けても良い。なお、トレー32上のワッシャ13の位置や姿勢を認識するカメラ17は、ホッパー31から供給を受けるトレー32の上方に配置されるものを例示したが、当該カメラ17は、ロボット本体16の腕に1台以上取り付けてもかまわない。
【符号の説明】
【0035】
10 部品供給装置
11 ロボット部
12 部品供給部
13、13A、13B ワッシャ(板状部品)
14 ナット(筒状部品)
15 ハンド部
16 ロボット本体(マニピュレータ)
17 カメラ(撮像手段)
18 ロボット制御部
20 組立ライン
21 作業台
22 搬送コンベア
23 作業者用トレー(トレー外)
31 ホッパー
32 トレー
33 第1スライダー(第1移動手段、移動手段)
34 供給部制御部(制御手段)
35 第2スライダー(第2移動手段、移動手段)
52〜55 壁部
56 突起(移動規制手段)
60 磁石(移動規制手段)
90 上位コンピュータ
P 作業員
W ワーク
L1 突起間の距離
L3 移動距離
D1 ワッシャの直径
H1 突起の高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状部品または板状部品を貯留したホッパーと、前記ホッパーから供給される複数の筒状部品または板状部品を並べるトレーとを備え、前記トレー上の前記筒状部品または板状部品を撮像し、この撮像された画像に基づいて、マニピュレータにより当該筒状部品または板状部品を把持して前記トレー外に供給する部品供給装置において、
前記トレーを略水平に移動させる移動手段を備え、
前記トレーは、当該トレー上に前記筒状部品または板状部品が互いに重なって供給された状態で、前記移動手段を動作させた場合に、前記筒状部品または板状部品の前記トレー上の移動を規制する移動規制手段を備えることを特徴とする部品供給装置。
【請求項2】
前記移動規制手段は、前記トレーの供給面から前記筒状部品または板状部品の厚み以下の高さで突出した突起であることを特徴とする請求項1に記載の部品供給装置。
【請求項3】
前記移動手段は、前記トレーを一方向に往復移動する第1移動手段と、前記一方向に略直交する他方向に前記トレーと往復移動する第2移動手段とを含み、前記トレーには、前記一方向及び前記他方向に沿って、複数の前記移動規制手段がそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の部品供給装置。
【請求項4】
隣接する前記移動規制手段間の距離と前記筒状部品または板状部品の径との差以上の距離で、前記第1移動手段及び前記第2移動手段を、それぞれ前記一方向及び前記他方向に往復移動させる制御手段を備えることを特徴とする請求項3に記載の部品供給装置。
【請求項5】
前記トレーが円運動するように、前記第1移動手段及び前記第2移動手段の動作を制御する制御手段を備えることを特徴とする請求項3に記載の部品供給装置。
【請求項6】
筒状部品または板状部品が供給されるとともに、これら筒状部品または板状部品の移動を規制する移動規制手段が設けられたトレーを略水平に移動させる移動工程と、前記トレー上の筒状部品または板状部品をマニピュレータで把持して当該トレー外に供給する工程とを備えることを特徴とする部品供給方法。
【請求項7】
前記筒状部品または板状部品を貯留して当該筒状部品または板状部品を前記トレーに供給するホッパーと、トレーを略水平に移動させる制御を行う制御手段とを備え、この制御手段には、前記移動工程及び前記トレー外に供給する工程を含む生産管理を実行する上位コンピュータが接続され、
この上位コンピュータに、前記筒状部品または板状部品が前記ホッパー内から無くなる予定時刻を報知する工程と、この予定時刻に合わせて前記無くなりそうな筒状部品または板状部品を前記ホッパーの近傍に配送する配送工程と、前記ホッパーに当該無くなりそうな筒状部品または板状部品を投入する投入工程とを備えることを特徴とする請求項6に記載の部品供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−236010(P2011−236010A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109221(P2010−109221)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】