説明

部品供給装置

【課題】作業者の負担が小さく、且つ、作業効率の良い部品供給装置を提供する。
【解決手段】一方側に下降傾斜した傾斜搬入面10と、傾斜搬入面10の下流側に設けられた部品供給エリア20と、傾斜搬入面10の下方に設けられ、他方側に下降傾斜した傾斜返送面30とを備えた部品供給装置において、部品供給エリア20に、部品Wを保持する部品保持部(一対のガイドレール21)と、当該部品Wを載置していた搬送台Qを傾斜返送面30に落下させる開口部23とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、図9に示すような自動車のトランスミッションの組付ラインでは、コンベアC付近に設けられた部品供給装置100により、別の工場やラインで製造された部品W(例えばトルクコンバータ)が作業者付近に供給される。作業者は、部品供給装置100から部品Wを取り出して、コンベアC上を搬送されるパレットPの部品載置台に当該部品Wを搭載する。
【0003】
上記のような部品供給装置100は、例えば図10に示すように、作業者側(図中右側)へ向けて下降傾斜した傾斜搬入面101と、傾斜搬入面101の下流側に設けられた部品供給エリア102と、作業者から離反する側(図中左側)に下降傾斜した傾斜搬出面103とを備える。この種の部品供給装置100では、搬送性や傷付き防止の観点から、図示のように部品Wを搬送台Q’に載置した状態で搬送することが一般的である。搬送台Q’に搭載された部品Wは、重力により傾斜搬入面101上を滑って部品供給エリア102に搬入される。搬送台Q’の上から部品Wが搬出されると、作業者の手で空の搬送台Qが傾斜搬入面101から傾斜搬出面103に移載され(図中矢印X参照)、部品Wが傾斜搬出面103を滑って作業者から離反する側に返送される(図中矢印Y参照)。
【0004】
しかし、空の搬送台を移載する作業は作業者の負担となっていた。そこで、例えば特許文献1に示されている部品供給装置では、可動搬送面を設けることにより、空になった搬送台(部品箱)を簡単に移載可能とした。具体的には、搬入面から第1の傾斜位置の可動搬送面に部品を搭載した部品箱が搬入され、この部品箱から作業者が部品を取り出して組付作業等を行う。部品箱が空になったら、作業者がボタンを押して可動搬送面をアクチュエータにより第1傾斜位置から第2傾斜位置に移動させ、可動搬送面と搬出面とを接続することにより、空の部品箱を可動搬送面から搬出面に移載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−20406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1の部品供給装置では、空になった搬送台を搬出面に移載するために可動搬送面を移動させる必要があるため、少なくとも可動搬送面を移動させるためのスイッチ操作が必要となる。また、可動搬送台を移動させている間は搬送台から部品を取り出す作業ができないため、サイクルタイムの延長を招く。特に、一つの搬送台に部品が一つずつ搭載される場合、部品を一つ組み付けるたびに搬送台を移載する必要が生じるため、スイッチ操作の回数や可動搬送台の移動時間が長くなり、作業効率が大幅に低下する。
【0007】
本発明の解決すべき課題は、作業者の負担が小さく、且つ、作業効率の良い部品供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するためになされた本発明は、一方側に下降傾斜し、部品を搭載した搬送台が重力により下流側に搬送される傾斜搬入面と、傾斜搬入面の下流側に設けられた部品供給エリアと、傾斜搬入面の下方に設けられ、他方側に下降傾斜し、搬送台が重力により下流側に搬送される傾斜返送面とを備えた部品供給装置であって、部品供給エリアが、部品を保持する部品保持部と、当該部品を載置していた搬送台を傾斜返送面に落下させる開口部とを備えたことを特徴とするものである。
【0009】
この部品供給装置によれば、部品を搭載した搬送台が傾斜搬入面から部品供給エリアに搬入されると、部品保持部により部品が保持されると共に、搬送台のみが開口部から傾斜返送面に落下し、空の搬送台が傾斜返送面により返送される。これにより、作業者の手により空の搬送台を移載する作業や、可動搬送台を移動させるスイッチ操作等が一切不要となり、自動的に空の搬送台を返送することができるため、作業が簡略化される。また、部品を搭載した搬送台が部品供給エリアに搬入されたら自動的に搬送台が開口部から落下して傾斜返送面上を搬送され、しかも、搬送台が開口部から落下している間や、傾斜返送面上を搬送されている間でも、部品を部品保持部から取って作業を行うことができるため、搬送台の移載に伴う無駄な時間が生じず、サイクルタイムを短縮することができる。
【0010】
例えば、部品の幅方向寸法が搬送台の幅方向寸法よりも大きい場合、部品保持部として部品の幅方向両端部を下方から支持する一対の支持部材を設けると共に、この一対の支持部材の間に開口部を設ければ、部品を一対の支持部材で支持した状態で搬送台のみを開口部から落下させることができる。尚、「幅方向」とは、搬送方向と直交する水平方向のことを言う。
【0011】
上記の部品供給装置において、部品保持部に保持された部品と、その上流側の搬送台とを当接させることにより、傾斜搬入面上の部品及び搬送台を係止するようにすれば、部品保持部で保持された部品がストッパの役割を果たし、当該部品よりも上流側の搬送台及び部品が傾斜搬入面上にストックされる。これにより、搬送台及び部品を係止するための機構を別途設ける必要がなく、装置の構造を簡略化できる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明の部品供給装置によれば、部品供給エリアに設けた開口部から空になった搬送台が重力により自動的に傾斜返送面に落下するようにしたので、作業者により搬送台を移載する作業が不要となるため、作業者の負担が小さくなると共に作業効率が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る部品供給装置の側面図である。
【図2】上記部品供給装置の拡大図である。
【図3】図2の平面図である。
【図4】図2のIV−IV線における断面図である。
【図5】図2のV−V線における断面図である。
【図6】上記部品供給装置の使用状態を示す側面図である。
【図7】図6の平面図である。
【図8】上記部品供給装置の使用状態を示す側面図である。
【図9】部品供給装置を備えた組付ラインの平面図である。
【図10】従来の部品供給装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る部品供給装置1を示し、例えば図9に示す自動車のトランスミッションの組付ラインの部品供給装置100に替えて設けられるものである。部品供給装置1は、作業者側(図中右側)に下降傾斜した傾斜搬入面10と、傾斜搬入面10の下流側(図中右側)に設けられた部品供給エリア20と、傾斜搬入面10の下方に設けられ、作業者から離反する側(図中左側)に下降傾斜した傾斜返送面30とを主に備える。傾斜搬入面10の上流端に、部品Wを搭載した搬送台Qが搬入され、これらが重力で下流側に搬送されて部品供給エリア20に搬入される。そして、部品供給エリア20で部品Wが保持されると共に、搬送台Qが傾斜返送面30上を返送される。
【0016】
傾斜搬入面10は、図2及び図3に示すように、複数のローラ11で構成される。ローラ11は、幅方向(図2の紙面と直交する方向、図3の上下方向)の回転軸を有し、搬送方向に並べられる。本実施形態では、図3に示すように、搬送方向に並べられた2列のローラ11が幅方向に離隔して設けられ、このローラ11と搬送台Qの下面との接触部を含む面が傾斜搬入面10を構成する。ローラ11の上方で、且つ、幅方向両側には、傾斜搬入面10の全長にわたってガイド部12が設けられる。本実施形態のガイド部12は、図4に示すように、円筒状の中空パイプで構成される。傾斜搬入面10上を搬送される搬送台Qは、ガイド部12によって幅方向で位置決めされる。ローラ11はフリーローラであり、傾斜搬入面10上を搬送される搬送台Qとの摩擦により回転する。
【0017】
部品供給エリア20は、図3に示すように、部品保持部を構成する一対の支持部材(図示例では一対のガイドレール21)と、部品Wに作業者側から当接するストッパ22と、一対のガイドレール21とストッパ22とで囲まれた開口部23とを備える。ガイドレール21は、図5に示すように垂直部21a及び水平部21bを有する断面L字形状に形成される。垂直部21aの上端で部品Wの幅方向両端部を下方から支持すると共に、水平部21bが図示しない枠体に固定される。開口部23は、搬送台Qが落下可能な大きさとされ、具体的には、開口部23の搬送方向寸法L(すなわちストッパ22と傾斜搬入面10の下流端のローラ11との距離、図3参照)及び幅方向寸法M(すなわち一対のガイドレール21の垂直部21a間の距離、図3参照)が、搬送台Qの搬送方向寸法及び幅方向寸法よりも大きく設定される。
【0018】
傾斜返送面30は、図2に示すように複数のローラ31で構成される。本実施形態では、傾斜返送面30が部品供給装置1の搬送方向全長にわたって延び、すなわち、傾斜返送面30及び部品供給エリア20の下方に共通の傾斜返送面30が設けられる。ローラ31の上方で、且つ、幅方向両側には、傾斜返送面30の全長にわたってガイド部32が設けられる。本実施形態のガイド部32は、図5に示すように、円筒状の中空パイプで構成される。複数のローラ31の構成は、傾斜方向を除いて傾斜搬入面10のローラ11と同様であるため、重複説明は省略する。
【0019】
搬送台Qは、部品Wよりも幅方向寸法が小さく、部品Wの幅方向略中央部を支持する(図4参照)。搬送台Qの上面の下流側端部には、上方に突出した係止部qが設けられる(図6参照)。部品Wを搭載した搬送台Qが傾斜搬入面10上に載置されたとき、部品Wが搬送台Qに対して下流側に滑り落ちないように、係止部qにより係止される。搬送台Qは、部品Wを傷つけないように、部品Wよりも軟らかい材質(例えば樹脂)で形成される。
【0020】
以下、部品供給装置1を用いた部品の供給方法ならびに搬送台Qの返送方法について説明する。
【0021】
図6及び図7は、部品供給エリア20に部品W1が保持され、その上流側に複数の部品W2、W3がストックされた状態を示す。部品供給エリア20に保持された部品W1は、一対のガイドレール21の垂直部21a上に載置されている(図5参照)。この部品W1の下流側(図中右側)はストッパ22に当接し、部品W1の上流側は部品W2を搭載した搬送台Q2に当接している。搬送台Q2よりも上流側の部品W3及び搬送台Q3は、搬送台Q2に上流側から当接している。すなわち、傾斜搬入面10上の部品W2、W3及び搬送台Q2、S3は重力により下流側に移動しようとするが、部品供給エリア20に保持された部品W1と当接することにより下流側への移動が規制され、傾斜搬入面10上にストックされた状態となっている。
【0022】
そして、作業者は、部品供給エリア20に保持された部品W1を持ち上げて、この部品W1をコンベアC上のパレットP上に搭載する(図9参照)。このとき、部品W2、W3及び搬送台Q2、Q3は、部品W1による移動の規制が解除されるため、重力により下流側に搬送される。そして、図8に示すように部品W2及び搬送台Q2が部品供給エリア20に搬入されると、搬送台Q2が開口部23から落下して傾斜返送面30に移載される(図5及び図8の矢印A参照)と共に、部品W2が一対のガイドレール21上に載置される。この部品W2がストッパ22及び搬送台Q3に当接することにより、部品W3及び搬送台Q3の下流側への移動が規制される。傾斜返送面30に移載された空の搬送台Q2は、重力により自動的に作業者から離反する側に搬送される(図7の矢印B参照)。
【0023】
以上を繰り返すことにより、部品Wの部品供給エリア20への供給、及び、空になった搬送台Qの返送が順次行われる。これらの作業を、部品W及び搬送台Qの自由落下のみを利用して自動的に行うことで、作業者により搬送台Qを移載する動作が一切不要となり、作業工数の削減及びサイクルタイムの短縮が図られる。特に、本実施形態では、傾斜搬入面10上にストックされた部品W及び搬送台Qを、部品供給エリア20に保持された部品Wにより係止しているため、作業者が部品供給エリア20に保持された部品Wを持ち上げるだけで新たな部品Wの部品供給エリア20への搬入、及び、当該部品Wを搭載していた搬送台Qの傾斜返送面30への移載、返送を行うことができる。
【0024】
本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、上記実施形態では、傾斜搬入面10及び傾斜返送面30がローラ11、31で構成されているが、これに限らず、これらの一方又は双方を単なる平面で構成し、搬送台Qを滑らせながら搬送してもよい。あるいは、傾斜搬入面10及び傾斜返送面30を平面で構成し、搬送台Qの下面にローラを設けてもよい。
【0025】
また、上記実施形態では、各搬送台Qに部品Wを一つずつ搭載した場合を示したが、これに限らず、各搬送台Qに複数の部品を搭載してもよい。この場合、各搬送台Qに搭載された複数の部品が、部品供給エリア20の部品保持部に同時に搬入、保持される。
【0026】
また、上記実施形態では、傾斜搬入面10上では部品Wの幅方向中央部を搬送台Qで支持しているが、これに限らず、例えば部品Wの幅方向寸法が大きい場合には、部品Wの幅方向両端部付近を一対の搬送台Qで支持してもよい。この場合、部品保持部は、部品Wの幅方向中央部付近を支持するものとすればよい。
【0027】
また、上記実施形態では、トランスミッションに組み付ける部品Wを供給する場合を示したが、組付ラインの作業者付近に部品を供給する用途であれば部品の種類が限定されないことは言うまでも無い。
【符号の説明】
【0028】
1 部品供給装置
10 傾斜搬入面
11 ローラ
12 ガイド部
20 部品供給エリア
21 支持片
22 ストッパ
23 開口部
30 傾斜返送面
31 ローラ
32 ガイド部
C コンベア
P パレット
Q 搬送台
W 部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方側に下降傾斜し、部品を搭載した搬送台が重力により下流側に搬送される傾斜搬入面と、傾斜搬入面の下流側に設けられた部品供給エリアと、傾斜搬入面の下方に設けられ、他方側に下降傾斜し、搬送台が重力により下流側に搬送される傾斜返送面とを備えた部品供給装置であって、
部品供給エリアが、部品を保持する部品保持部と、当該部品を載置していた搬送台を傾斜返送面に落下させる開口部とを備えたことを特徴とする部品供給装置。
【請求項2】
部品の幅方向寸法が搬送台の幅方向寸法よりも大きく、部品保持部として部品の幅方向両端部を下方から支持する一対の支持部材を設けると共に、この一対の支持部材の幅方向間に前記開口部を設けた請求項1記載の部品供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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