説明

部品内に軸部材を軸方向に固定するように取り付ける構成

【課題】部品内に軸部材を軸方向に固定するように取り付けるための好適な方法、及び、当該方法を実施するための装置、を提供すること。
【解決手段】本発明は、軸方向の固定が、ウォブルリベットによって形成可能なウォブル張出部(5)として形成されていることを特徴とする。本発明によれば、噛み合い式のコンパクトな結合が、部品のコールドプレス(冷間圧縮)によって形成される。これは、軸部材と部品との異なる熱膨張に対して耐性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求の範囲の請求項1の上位概念部分に従う、部品内に軸部材を軸方向に固定するように取り付ける構成に関する。さらに、本発明は、特許請求の範囲の請求項8の上位概念部分に従う、部品内に軸部材を軸方向に固定するように取り付ける方法に関する。さらに、本発明は、特許請求の範囲の請求項9の上位概念部分に従う、前記方法を実施するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
部品内に軸部材を軸方向に固定するように取り付けることは、様々な要求に依存する。例えば、互いに結合するべき部品が異なる材料からなる時、異なる熱膨張係数を有し得る。この場合、プレス嵌めのような結合では、問題が生じ得る。さらに、そのような結合は、できる限りコンパクトであるべきである。すなわち、できる限り僅かなスペースの応力で、設計されるべきである。これらの観点から、例えばフランジ結合は、追加のスペース及び重量のために、好適でない。また、結合するべき二つの部品のコールドプレス(冷間圧縮)に基づく結合が知られている。
【0003】
EP1476261B1によって、アルミニウムダイカストを他の部材と結合するための方法が知られている。当該他の部材は、好適には、別の材料からシート部材として構成されている。アルミニウムダイカストは、カラー(襟部)を有している。当該カラーは、ローラ工具のローリング(転がり)によって全周に形成され、シート部材が挟み込まれて、両部材間に噛み合い結合が形成される。あるいは、ローラ工具による形成の代わりに、ウォブルリベッティング(Taumelnietverfahren)のようなリベット技術が採用され得る。
【0004】
ウォブルリベッティングは、従来のリベット技術に対する公知の代替工法である。従来のリベット技術では、リベットの係止ヘッドが、リベット軸の方向に送られたリベット脚部(Nietstempel)(リベットドッパ(Nietdoepper )とも呼ばれる)によって形成(変形)される。この場合、不利なことに、比較的高い圧力と騒音が問題である。ウォブルリベッティングの場合には、リベットの係止ヘッドが、ウォブル運動を行うリベットドッパ(Nietdoepper )によって部分的に形成される。ここで、リベットドッパの前方側の作用面は、ドッパ面(Doepperflaeche)と呼ばれるが、平らに形成され得る。これにより、円錐状に形成されたリベットの係止ヘッドがもたらされる。DE102005040795A1には、そのようなウォブルリベッティング方法と、当該ウォブルリベッティング方法を実施するためのリベット装置と、を開示している。
【0005】
DE3315758A1によって、ウォブルリベッティングのための装置が知られている。その場合、リベット脚部は、ウォブル運動を行うと共に、凹状の作用面あるいはドッパ面を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、異なる材料や異なる熱膨張係数の部品の結合、特にはアルミニウムダイカストとスチールとの結合、が好適且つコンパクトに形成されるような、当該明細書の導入部分で述べたような類の構成を提供することである。また、本発明の課題は、部品内に軸部材を軸方向に固定するように取り付けるための好適な方法、及び、当該方法を実施するための装置、を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題は、特許請求の範囲の独立請求項1、8、9に記載された特徴によって解決される。更なる有利な実施の形態が、下位請求項から理解される。
【0008】
本発明によれば、軸部材の軸方向の固定が、ウォブル張出部(Taumelwulst)によって行われる。ウォブル張出部は、軸部材を受け入れる部品上に、ウォブルリベットによって形成される。これにより、噛み合い式のコンパクトな結合が、部品のコールドプレス(冷間圧縮)によって形成される。これは、軸部材と部品との異なる熱膨張に対して耐性を有する。
【0009】
好適な実施の形態によれば、前記部品は、アルミニウム材料、特にはアルミキャスト合金から製造されている。例えば、サンドキャスト部材やダイキャスト部材として形成されている。そのような部品は、変速機ハウジングのハウジング壁として形成され得る。当該ハウジング壁は、追加されるプレート状の部材としても、あるいは、ハウジングに一体の要素としても、形成され得る。ウォブル運動を行うリベット脚部によって実施されるウォブルリベッティング方法によって、キャスト部材として形成された部品が、その周囲において、次々に変形される。ここで、相対的に小さい変形力のみが発生するので、材料破断や材料断裂のリスクがほぼ除去される。
【0010】
さらなる好適な実施の形態では、好ましくはスチールで製造された軸部材が、第1の軸方向当接面を有するフランジ部を有しており、前記ウォブル張出部は、当該当接面に対して、軸方向に当接している。
【0011】
さらなる有利な実施の形態では、前記フランジ部は、第2の軸方向当接面を有しており、前記キャスト部材は、少なくとも一つの段部を有する段付き孔を有しており、当該段部が、前記第2の軸方向当接面に対して、軸方向に当接している。これにより、軸部材は、軸方向の両方向に関して、部品(キャスト部材)に対して噛み合い式に固定される。
【0012】
さらなる有利な実施の形態では、軸部材は、中空軸として形成され得る。特には、変速機軸として形成され得る。
【0013】
また、本発明の課題は、特許請求の範囲の請求項8に記載された特徴によって解決される。本発明の方法によれば、フランジ部を有する軸部材が、少なくとも一つの当接面を有する部品内において、軸方向に停止するまで挿入される。その後、段付き孔の外側の前方側の縁部が、ウォブルリベッティングと同様の方法によって、張出状に、いわゆるウォブル張出部に、変形される。変形のプロセスは、単一工程で行われるのではなく、当該周回りに進行する多数の順々の工程で行われる。従って、変形のための力と、それに関連するノイズとが、比較的小さくなる。材料の丁寧な(schonende)変形により、材料破断や材料断裂のリスクが存在しない。
【0014】
また、本発明の課題は、特許請求の範囲の請求項9に記載された特徴によって解決される。本発明によれば、変形ツール(変形工具)がリベット脚部として形成され、当該リベット脚部が、ウォブル運動を実施し、部品の周回りに進行(周回)する。好ましくは、リベット脚部は、段付き孔部あるいは軸部材直径に適合されたある直径を有するリング形状に形成される。
【0015】
本発明の一実施の形態が、図面に示されており、以下において、より詳しく説明される。当該図面及び/または当該説明から、本発明の更なる特徴及び/または利点が理解される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ある部品内に軸方向に固定された中空軸部材の軸方向断面図である。
【図2】図1のX部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、中空軸1として形成された軸部材を示している。当該中空軸1は、パネル状に形成された部品2に受容されており、軸方向に固定されている。当該部品2は、好ましくは、アルミキャスト材料から製造され、サンドキャスト(砂型鋳物)部材やダイカスト(ダイ鋳物)部材として構成されている。当該部品2は、変速機ハウジングの、分離したハウジング隔壁(Gehaeusezwischenwand)であり得るし、あるいは、一体のハウジング壁であり得る。当該部品2内において、好ましくは変速機軸として形成された中空軸1が、軸方向及び径方向に支持されている。中空軸1は、好ましくはスチールから製造され、アルミニウム材料からなる部品2よりも小さい熱膨張係数(約50%)を有する。部品2は、段部3aを有する段付き孔3を有している。中空軸1は、部品2内での軸方向固定のためのフランジ部4を有している。
【0018】
図2は、図1のX部の拡大図である。当該図によって、両部材1、2の軸方向固定が明瞭に理解される。中空軸1のフランジ部4は、第1の軸方向当接面4aと第2の軸方向当接面4bとを有している。中空軸1は、第2の軸方向当接面4bが部品2の段部3aに当接しており、これによって一方の軸方向について固定されている。逆方向の固定については、ウォブル張出部5によって行われる。ウォブル張出部5は、コールドプレス(冷間圧縮)によって、部品2から、径方向内側方向で第1の軸方向当接面4aに対する軸方向に、形成される。ウォブル張出部5は、従って、中空軸1のフランジ部4に対して遊び(クリアランス)無しで当接する(支持される)。これにより、中空軸1は、両軸方向について、部品2に対して固定される。ウォブル張出部5は、前面5aを有する。当該前面5aは、部品2の平坦面2aから内側に(図面においては右側に)変位されたものである。軸方向の当該寸法は、ウォブル深さtとして表されており、部品2のキャスト材料の軸方向変位の寸法を特徴付けている。
【0019】
部品2内への中空軸1の取り付けと軸方向固定とは、以下のような工程に従って行われる。中空軸1が、フランジ部4が段部3aに当接するまで、段付き孔3内に挿入される。続いて、不図示の、リベット脚部として形成された変形ツールが、部品2の平坦面2aに適用される。すなわち、軸方向に送り出される。当該不図示のリベット脚部は、好ましくは、リング状またはスリーブ状(huelsenfoermig)に形成され得て、その直径に関しては、前面2aにおける変形すべき環状面に適合され得る。変形の際には、当該リベット脚部が、ウォブルリベッティング(Taumelnietverfahren)から知られたウォブル運動を実施し、その際に同時に、ウォブル深さtが実現されるまで軸方向に送り出される。部品2の材料は、変形工程の終了時には、軸方向には平坦面5aにまで変形され、同時に径方向には内側に変形され、環状のウォブル張出部5が形成される。ウォブル張出部5は、軸1に対して、径方向に隙間(遊び)を有している。
【符号の説明】
【0020】
1 中空軸
2 部品
2a 平坦面
3 段付き孔
3a 段部
4 フランジ部
4a 第1の軸方向当接面
4b 第2の軸方向当接面
5 ウォブル張出部
5a 前面
t ウォブル深さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の固定が、ウォブルリベットによって形成可能なウォブル張出部(5)として形成されていることを特徴とする
部品(2)内、特にはハウジング壁内、に軸部材(1)を軸方向に固定するように取り付ける構成。
【請求項2】
前記軸部材(1)は、スチールから製造されている
ことを特徴とする請求項1に記載の取り付け構成。
【請求項3】
前記部品(2)は、アルミニウム材料、特にはアルミキャスト合金から製造されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の取り付け構成。
【請求項4】
前記軸部材(1)は、第1の軸方向当接面(4a)を有するフランジ部(4)を有しており、
前記ウォブル張出部(5)は、当該当接面(4a)に対して、軸方向に当接している
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の取り付け構成。
【請求項5】
前記フランジ部(4)は、第2の軸方向当接面(4b)を有しており、
前記部品(2)は、少なくとも一つの段部(3a)を有する段付き孔を有しており、
当該段部(3a)が、前記第2の軸方向当接面(4b)に対して、軸方向に当接している
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の取り付け構成。
【請求項6】
前記部品(2)は、特には変速機ハウジング内において、前記軸部材(1)を支持するためのキャストパネルとして形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の取り付け構成。
【請求項7】
前記軸部材(1)は、中空軸として形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の取り付け構成。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載されたような部品(2)及び軸部材(1)について、当該部品(2)内に、当該軸部材(1)を軸方向に固定するように取り付ける方法であって、
前記軸部材(1)は、前記部品(2)の段付き孔(3)内に、軸方向に停止するまで挿入され、
続いて、当該段付き孔(3)の前方側の縁部(2a)が、ウォブルリベッティングと同様の方法によって再成形される
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
ウォブル運動を実施する、好適にはリング状またはスリーブ状(huelsenfoermig)に形成されたリベット脚部を用いることを特徴とする請求項8による方法を実施するための装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−223430(P2010−223430A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60840(P2010−60840)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(592179300)ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト (56)
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】