説明

部品包装用トレイ

【課題】積み重ね状態の前後左右のいずれかの側面やコーナー部を外部から見て、トレイの向きを一目で識別でき、所定の積み重ね状態であるかどうかを容易に確認することができる部品包装用トレイを提供する。
【解決手段】外周にフランジ状縁2,2aを残して凸状部4により画された収納凹部を有し、部品収納状態で同じ向きあるいは交互に180度向きを変えて複数段に積み重ねて包装される平面矩形のトレイ1で、一辺のフランジ状縁2a又は隣接する二辺のフランジ状縁2aに、他の辺のフランジ状縁2とは外縁形状を異にする異形カットによる識別用異形部6としての切り欠き61を設けるか、一つのコーナー部7又は隣接する二つのコーナー部7の外縁を、他のコーナー部7の外縁71とは形状を異にする識別用の異形コーナー縁8として形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として電子部品等の各種部品を収納して積み重ね状態にして梱包し、保管及び輸送、運搬に供するための部品包装用トレイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、IC部品等の電子部品、液晶表示パネル(LCD)、携帯情報端末装置(PDA)、液晶盤等の各種部品の保管及び輸送、運搬に使用する部品包装用トレイとしては、熱可塑性樹脂の非発泡シートや発泡シートから真空成形等の熱成形加工手段により成形されてなるもので、包装対象の前記部品を収納する複数の収納凹部を有し、該収納凹部に部品を収納して多段に積み重ねた状態で、段ボール箱等の外装箱内に収容して梱包できるように形成されている。
【0003】
この包装トレイの積み重ねにおいては、全てのトレイを同じ向きにして積み重ねる場合(以下、正積みという)と、1段毎に交互にトレイの向きを180度反転して積み重ねる場合(以下、反転積みという)があり、収納される包装対象の部品の形状に応じて、前記積み重ね方式のいずれかが選択採用される。通常、包装用トレイの一部に積み重ねのための凹部や凸部等からなるスタック部が形成されており、該スタック部により上下のトレイ間に所定の間隔を保有するように支持することで、上段のトレイの収納凹部の下面が下段のトレイに収納された部品に当接しないように一定の間隔を保持して積み重ねることができるようになっている。
【0004】
例えば、特許文献1には、縦横に所定ピッチに設けられた複数の収納凹部に包装対象の電子部品を収納した状態で、トレイの向きを交互に180度反転して積み重ねて包装する絶縁樹脂シート製のトレイが示されており、収納凹部の側面にスタック用の支持凹部が設けられ、前記の積み重ねの際に、下段の収容凹部の下面が下段のトレイに収納された部品に当接しないように支持して積み重ねができるように工夫されている。
【0005】
ところで、この種の包装用トレイの外形は、積み重ね状態で段ボール箱等の外装箱に収容して梱包することから、基本的に平面矩形をなしており、トレイの向きを180度反転させた場合にも形状が変わらないのが普通である。
【0006】
そのため、各トレイの向きを同方向にする正積みの場合も、また、1段毎に交互にトレイの向きを180度反転する反転積みの場合も、積み重ね状態での前後左右の側面の形状を外部から見ただけでは、全てのトレイの方向を識別し、正積み又は反転積みが正しくなされているかどうかを確認することができない。
【0007】
仮に、トレイの正積み又は反転積みにおいて、トレイの方向違いが生じていると、積み重ね状態が不安定になったり、また上段のトレイの収納凹部の下面が下段のトレイに収納されている部品に当接し、部品を損傷させる等の虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−308192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなしたものであり、電子部品等の各種部品を収納して、積み重ねて梱包するための部品包装用トレイとして、各トレイの向きを同方向とする正積み、及び各トレイの向きを1段毎に180度反転する反転積みのいずれの場合にも、積み重ね状態の前後左右のいずれかの側面やコーナー部を外部から見てトレイの向きを一目で識別でき、所定の積み重ね状態であるかどうかを容易に確認することができるようにした部品包装用トレイを提供するものであり、これにより、積み重ね時の方向違いによる包装対象の電子部品等の損傷を防止するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の包装用トレイは、前記の課題を解決するものであり、外周にフランジ状縁を残して凸状部により画された複数の収納凹部を有し、部品収納状態で同じ向きあるいは交互に180度向きを変えて複数段に積み重ねて包装される合成樹脂シート製の平面矩形のトレイであって、四辺のうちの一辺のフランジ状縁又は隣接する二辺のフランジ状縁に、他の辺のフランジ状縁とは外縁形状を異にする識別用異形部が設けられてなることを特徴とする。
【0011】
前記の識別用異形部としては、直線状のフランジ状縁の外形線に対して円弧状又は角形状に凹入した切り欠きであるのが好ましく、また、前記識別用異形部が、フランジ状縁の長さ方向に間隔をおいて複数設けられているのが好ましい。
【0012】
前記の包装用トレイによれば、各トレイの向きを同方向にする正積み、及びトレイの向きを1段毎に180度反転する反転積みのいずれの場合にも、積み重ね状態において、一辺又は隣接する2辺のフランジ状縁の切り欠き等による識別用異形部の有無及び/又は並列状態を確認することにより、各トレイの方向を外部から識別することができ、ひいては正積み又は反転積みが正しくなされているかどうかを容易に確認することができる。
【0013】
特に、前記の切り欠き等よりなる識別用異形部が、隣接する2辺のフランジ状縁の双方に設けられていると、積み重ね状態の側面を縦横及び斜め方向のいずれの方向からみても、側面における前記識別用異形部の有無によりトレイの向きを識別することができ、積み重ね状態を容易に確認できる。前記切り欠き等の識別用異形部が複数個所に設けられていると、さらに確認し易くなる。
【0014】
本発明は、基本形状が前記と同様の収納凹部を有する平面矩形のトレイにおいて、前記の一辺又二辺のフランジ状縁の切り欠き等の識別用異形部に変えて、四つのコーナー部のうちの一つのコーナー部又は隣接する二つのコーナー部の外縁が、他のコーナー部の外縁とは形状を異にする識別用の異形コーナー縁として形成されてなるものとすることもできる。
【0015】
この発明の場合においても、各トレイの正積み及び反転積みのいずれの場合にも、積み重ね状態において、一つのコーナー部又は隣接する二つのコーナー部において、他のコーナー部とは形状を異にする異形コーナー縁の有無及び/又は並列状態を確認することにより、各トレイの方向を外部から識別することができ、ひいては正積み又は反転積みが正しくなされているかどうかを容易に確認することができる。
【0016】
特に、各コーナー部の前記異形コーナー縁の有無及び/又は並列状態を確認するだけでよいので、積み重ね状態のトレイに対し、前後左右及び斜めのいずれの方向からでも、少なくとも一つのコーナー部の外縁形状を見てトレイの方向を識別することができる。
【0017】
また、前記のフランジ状縁に切り欠き等の識別用異形部を設けた発明の包装用トレイにおいて、前記同様に、四つのコーナー部のうちの一つのコーナー部又は隣接する二つのコーナー部の縁部が、他のコーナー部の外縁とは形状を異にする識別用の異形コーナー縁として形成しておくこともできる。この場合、積み重ね状態において、少なくとも一つの側面におけるフランジ状縁の切り欠き等の識別用異形部の有無や並列状態と、少なくとも一つのコーナー部の前記異形コーナー縁の有無や並列状態のいずれかを確認すればよく、積み重ね状態の各トレイの方向を外部からさらに容易に識別することができる。
【0018】
前記の包装用トレイにおいて、前記のコーナー部の異形コーナー縁は、他のコーナー部の外縁のR形状に対して、半径を異にするR形状、又は、斜め形状をなす異形カット形状よりなるものとする。
【発明の効果】
【0019】
上記したように本発明の包装用トレイによれば、電子部品その他の各種の包装対象の部品を収納して、多数段に積み重ねて梱包する際、トレイの向きを同方向にする正積み時、及び、1段毎にトレイの向きを180度反転する反転積みのいずれの場合にも、積み重ね状態の各トレイの方向を、フランジ状縁に有する切り欠き等の識別用異形部の有無や並列状態、及び/又はコーナー部の識別用の異形コーナー縁の有無や並列状態を外部から見て確認することにより、容易に識別することができ、これにより選択し採用した積み重ね状態であるかどうかを確認でき、ひいては積み重ね時の方向違いによる包装対象の部品の損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の包装用トレイを略示的に示す斜視図である。
【図2】同上の包装用トレイの平面図である。
【図3】同上の積み重ね状態のスタック部の部分の一部の拡大断面図である。
【図4】同上の包装用トレイを正積みした状態の斜視図である。
【図5】同上の積み重ね方式での方向違いの例を示す一部の斜視図である。
【図6】同上の包装用トレイを反転積みした状態の略示斜視図である。
【図7】コーナー部の異形カット部の他の例を示す略示平面図である。
【図8】同上の包装用トレイの実用例の一例を示す平面図である。
【図9】同上の一部の断面図である。
【図10】同上の包装用トレイの実用例の他の例を示す平面図である。
【図11】同上の一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基いて説明する。
【0022】
図1〜図6は、説明の便宜上、本発明の部品包装用トレイの基本的な形態を略示的に示しており、これに基づいて以下の実施例の説明をする。
【0023】
部品包装用トレイ1は、熱可塑性の合成樹脂シート、好ましくは発泡シートを素材として、真空成形等の熱成形手段により一体に成形されてなる平面矩形のトレイであって、外周にフランジ状縁2,2aを残して内方に電子部品等の収納対象の部品bに対応した形状の収納凹部3が凸状部4により画されて縦横に複数並列して形成されている。前記収納凹部3には、底部31の周縁部等の所要の個所に、収納される部品bを受ける凸部32が形成されており、各収納凹部3に前記部品bを凸部32上に受支した状態で収納できるようになっている。前記収納凹部3の平面形状、方向、深さ等は、収納対象の部品bの形態に応じて設定される。図の場合は、底部31がフランジ状縁2,2aによるトレイ下面に対して僅かに浮いた状態をなしている。
【0024】
前記凸状部4は、下方ほど幅広のテーパ状をなして下方に開口しており、積み重ねの際に上段のトレイ1の凸状部4の下部が下段のトレイ1の凸状部4の上部に嵌合するように形成されている。さらに、前記凸状部4の所要の個所に、前記収納凹部3に部品bを収納した状態で前記トレイ1を多段に積み重ねるためのスタック構造が設けられている。
【0025】
前記のスタック構造としては、上段のトレイ1の収納凹部3の下面が下段のトレイ1の収納凹部3に収納された部品bに当接することなく積み重ねることができる種々のスタック構造による実施が可能であるが、図示する例では、周縁の凸状部4の外壁部の所要の個所に、また内方の凸状部4の側壁部の所要の個所(図示省略)に、該凸状部4の上面から内側に凸状をなしかつ所要高さ位置で段状をなすように凹設された平面略半円形の凹部よりなるスタック部5が設けられており、多段に積み重ねた際に、図3のように下段のトレイ1のスタック部5の上面部5aと、上段のトレイ1のスタック部5の段状の下面部5bとが肉厚分で上下に当接して着座することにより、収納された部品bに応じた所定の間隔を存して積み重ねることができるようになっている。
【0026】
前記スタック部5によるスタック構造がどのようなものであっても、包装対象の部品bの形態、及び収納凹部3の形態等に応じて選択され採用される積み重ね方式に適合するように設けられる。例えば、トレイ1の向きを全て同じ方向にする正積みを採用する場合には、各トレイを同方向にしたときに上下トレイのスタック部5,5同士が上下に対応位置して積み重ねられるように設けられ、また、各トレイ1の向きを1段毎に交互に180度方向を変える反転積みを採用する場合には、1段毎にトレイの向き反転したときに上下トレイのスタック部5、5同士が上下に対応位置して積み重ねられるように設けられる。また、前記正積み及び反転積みの双方の積み重ね方式に適合できるように、前記スタック部5等のスタック構造とすることもできる。
【0027】
そして、本発明の場合、前記トレイ1の積み重ねの際に、採用される積み重ね方式が正常であるかどうかを、外部から目視により容易に確認できるようにするために、例えば、図1〜図5のように、トレイ1の四辺のうちの隣接する二辺のフランジ状縁2aに、それぞれ所要の個所に、他の辺のフランジ状縁2とは外縁形状、すなわち素材シートからの成形における外周のトリミングによる外縁形状を異にする異形カットによる識別用異形部6が設けられている。図中の符号2aは識別用異形部6を設けたフランジ状縁を示し、符号2は他のフランジ状縁を示している。
【0028】
前記のフランジ状縁2aの識別用異形部6としては、該フランジ状縁2aの直線状の外形線に対して半円状又は三角や四角等の角形状の小さな突出縁(図示せず)を設けることもできるが、実施上は、積み重ね状態で段ボール箱等の外装箱に収納して梱包することから、余分な突出部を設けないほうがよく、そのため、図示するように、フランジ状縁2aの直線状の外形線に対して円弧状又は三角や四角等の角形状の異形カットによる切り欠き61を識別用異形部6として形成しておくのが好ましい。
【0029】
前記の隣接する二辺のフランジ状縁2aに、前記識別用異形部6としての切り欠き61が設けられていると、例えば、包装対象の部品を収納した状態でトレイ1の向きを全て同じ方向にして正積み方式で積み重ねた場合には、正常であれば、図4のように、前記切り欠き61を有するフランジ状縁2aによる側面の側では、全てのトレイ1のフランジ状縁2aの切り欠き61が揃って表れ、また反対側の側面の側では、前記切り欠き61が全く表れないことになる。そのため、積み重ね状態のいずれかの側面を見て、フランジ状縁2aの切り欠き61の有無を確認することにより、各トレイ1の向きが正しいかどうかを一目で識別し確認することができる。
【0030】
すなわち、仮に積み重ねられた多数のトレイ1の中に一つのトレイの向きが180度反転して逆方向になっていると、図5のように、切り欠き61を有するフランジ状縁2aの側面の側では、前記切り欠き61が揃っているフランジ状縁2aの中に切り欠き61を有さないフランジ状縁2が表れ、また反対側の側面には切り欠き61を有さないフランジ状縁2の中に切り欠き61を有するフランジ用縁2aが表れることになる。そのため、前記のトレイ1の方向違いを、積み重ね状態の前後左右、斜めのいずれの方向からでも目視により識別し確認できることになる。
【0031】
また、包装対象の部品を収納した状態でトレイ1の向きを1段毎に交互に180度方向を変えて反転積み方式で積み重ねた場合には、正常であれば、図6のように、各側面において、切り欠き61を有するフランジ状縁2aと切り欠き61を有さないフランジ状縁2とが交互に表れる。そのため、積み重ね状態のいずれかの側面を見て、フランジ状縁2の切り欠き61の並列状態、つまり1段おきに揃うことになる切り欠き61の並列状態を確認することにより、各トレイ1の向きを一目で識別し確認することができる。
【0032】
例えば、積み重ねられた多数のトレイ1の中に一つのトレイ1の向きが反転積みとしては方向違いになっていると、1段おきに存する切り欠き61が複数段連続して揃って表れたり、あるいは切り欠き61を有さないフランジ状縁2が複数段連続して表れることになるので(例えば図5参照)、この方向違いを前後左右及び斜めいずれの方向からでも目視により識別し確認できることになる。
【0033】
なお、図示していないが、前記フランジ状縁2の識別用異形部6としての切り欠き61は、一辺のフランジ状縁2aのみに設けて実施することも可能であり、この場合も、積み重ね状態において、切り欠き61を有するフランジ状縁2aによる側面と、これとは反対側の側面のいずれかを見て、該側面に表れる切り欠き61の有無及び/又は並列状態を確認することにより、正積みあるいは反転積みの積み重ね方式におけるトレイ1の方向を識別し、積み重ね状態を一目で確認することができる。
【0034】
いずれにしても、前記切り欠き61等の識別用異形部6は、フランジ状縁2aによる辺の一個所に設けることもできるが、実施上はフランジ状縁2aの長さ方向に間隔をおいて複数個所に設けておくのが外部からも目視し確認し易く好ましい。
【0035】
また、本発明は、基本形状が前記と同様の収納凹部3を有しかつ積み重ねのためのスタック構造を備える平面矩形のトレイ1において、前記二辺又は一辺のフランジ状縁2aの切り欠き61等の識別用異形部6に変えて、四つのコーナー部7のうちの一つのコーナー部7又は隣接する二つのコーナー部7の外縁が、他のコーナー部7とは外縁形状、すなわち素材シートからの成形における外周のトリミングによる外縁形状を異にする異形カットによる識別用の異形コーナー縁8として形成されてなるものとすることもできる。図中の71は通常のコーナー部7の外縁を示す。
【0036】
前記のコーナー部7における異形コーナー縁8としては、例えば、図1〜図6のように、他のコーナー部7の外縁71のR形状に対して、辺部のフランジ状縁2の外形線に対して所要の角度(例えば45度)をなす斜めのカット形状とするほか、図7のように、他のコーナー部7の外縁71のR形状に対して、半径を異にする(小さく又は大きい)R形状とする等、他のコーナー部6の外縁71とは形状を異にする等、種々の異形カット形状による実施が可能である。
【0037】
この発明の場合においても、例えば、包装対象の部品bを収納した状態でトレイ1の向きを全て同じ方向にして正積み方式で積み重ねた場合には、正常であれば、図4のように、前記識別用の異形コーナー縁8が一つのコーナー部7で揃って表れ、これと対角位置のコーナー部7では、前記異形コーナー縁8が全く表れないことになる。そのため、積み重ね状態のトレイ1の前後左右及び斜め方向から、少なくとも一つのコーナー部7の前記識別用の異形コーナー縁8の有無及び並列状態を確認することにより、各トレイ1の向きが正しいかどうかを一目で識別し確認することができる。
【0038】
例えば、積み重ねられたトレイ1の中に一つのトレイ1の向きが180度反転して逆方向になっていると、図5のように、外縁形状が前記異形コーナー縁8よりなるコーナー部7の部分に、通常の外縁71の形状をなすコーナー部7が混在して表れ、またこれと対角に位置する反対側のコーナー部7では、通常の外縁71の形状をなすコーナー部7が並ぶ中に、外縁形状が異なる異形コーナー縁8が混って表れるので、これを確認することにより、トレイ1の方向違いを前後左右及び斜めのいずれの方向からでも目視により識別し確認することができる。
【0039】
また、包装対象の部品を収納した状態でトレイ1の向きを1段毎に交互に180度方向を変えて反転積み方式で積み重ねた場合には、正常であれば、図6のように、積み重ね状態の前後左右のいずれか一つのコーナー部7及びこれと対角に位置するコーナー部7では、外縁形状が前記異形コーナー縁8よりなるコーナー部7と、通常の外縁71の形状をなすコーナー部7とが、交互に積み重ねられて表れる。そのため、積み重ね状態のトレイ1の前後左右及び斜め方向から、少なくとも一つのコーナー部7の前記識別用の異形コーナー縁8の並列状態を確認することにより、各トレイ1の向きが正しいかどうかを一目で識別し確認することができる。
【0040】
例えば、積み重ねられたトレイ1の中の一つのトレイ1の向きが反転積みとしては方向違いになっていると、1段おきに存する異形コーナー縁8が複数段連続して揃って表れたり、あるいは通常の外縁71の形状によるコーナー部7が複数段連続して表れることになるので、これにより、トレイの方向違いを前後左右及び斜め方向から、目視により容易に確認できる。
【0041】
このコーナー部7の外縁形状を異にする異形コーナー縁8による方向識別は、上記したフランジ状縁2aの切り欠き61等の識別用異形部6を有さないトレイ1においても、前記のようにして、積み重ね状態のトレイ1の方向を識別し確認することができるが、図1〜図6のように、フランジ状縁2に切り欠き61等の識別用異形部6を設けた発明の包装用トレイにおいて、一つのコーナー部7又は隣接する二つのコーナー部7の外縁を、他のコーナー部7とは形状を異にする異形カットによる異形コーナー縁8とすることにより、少なくとも一つの側面におけるフランジ状縁2aの前記識別用異形部6の有無や並列状態と、少なくとも一つのコーナー部7の前記異形コーナー縁8の有無や並列状態のいずれかを確認することで、さらに容易に積み重ね状態における各トレイの方向を外部から識別し確認することができる。
【0042】
なお、前記の方向違いが確認されたトレイ1については、これを積み直して正常な積み重ね状態とすればよく、これにより積み重ね時の方向違いによる包装対象の部品bの損傷を防止できる。
【0043】
また、上記した実施例の説明では、便宜上、トレイ1の形状、各収納凹部3の形状や深さ及び配置、スタック構造等の基本的な構成を簡略化して図示し説明したが、実際の包装用トレイは、収納対象の部品の形状、段ボール箱等の外装箱による梱包形態に対応した形状に形成される。
【0044】
図8は、実際上の包装用トレイ1の一例を示しており、上記したように、外周にフランジ状縁2,2aを残して収納対象の部品bに対応した形状の収納凹部3が凸状部4により画されて縦横に複数並列して形成され、各収納凹部3に部品bを収納できるようになっている。そして前記凸状部4の所要個所に有する有するスタック部5により、図9のように正積み及び/又は反転積みできるようになっている。この例の場合、四辺のうちの隣接する2辺のフランジ状縁2aに、他の辺のフランジ状縁2とは外縁形状を異にする異形カットによる識別用異形部6としての切り欠き61が形成されている。この図9の例では、四つのコーナー部7の外縁71の形状は全て同形とされている。
【0045】
図10は、実際上の包装用トレイ1の他の例を示し、上記したように、外周にフランジ状縁2,2aを残して収納対象の部品bに対応した形状の二つの収納凹部3が凸状部4により画されて形成されており、各収納凹部3に部品bを収納できるようになっている。そして前記凸状部4の所要個所に有する有するスタック部5により、図11のように正積み及び/又は反転積みできるようになっている。この例の場合、四辺のうちの隣接する2辺のフランジ状縁2aに、他の辺のフランジ状縁2とは外縁形状を異にする異形カットによる識別用異形部6としての切り欠き61が形成されるとともに、四つのコーナー部7のうちの隣接する二つのコーナー部7の外縁形状が、他のコーナー部7の外縁71の形状とは異なる異形カットによる異形コーナー縁8として形成されている。
【0046】
本発明の部品包装用トレー1の構成素材は、熱成形が可能な熱可塑性樹脂のシートであれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂の発泡シート、ポリスチレン系樹脂の発泡シート、ポリエステル系樹脂の発泡シートを用いることができる。発泡倍率は2〜10倍のものが好ましく用いられるが、これに限られるものではない。
【0047】
また、素材の熱可塑性樹脂には、合成樹脂に一般に使用される添加剤、例えば可塑剤、顔料や染料等の着色剤、充填材、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等を配合することができる。また、素材の熱可塑性樹脂の発泡シート材に、熱可塑性樹脂の非発泡のシートやフィルムを積層してもよい。これらの積層シートも、前記熱可塑性樹脂の発泡シートと同様に、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂を用いることができ、添加剤についても前記同様に配合できる。
【0048】
前記の各素材を適宜選定して使用することにより、収納対象の部品とトレイとの接触による摺れ傷の発生防止の効果、トレイ全体の強度、コスト、量産性、成形性、電気特性等を適宜要望に応じて設定できる。また、前記の素材を積層使用する場合、その組合せによりトレー強度、電気特性、成形性等更に向上できる。
【0049】
前記の合成樹脂発泡シートの厚みは、使用素材によっても異なるが、ポリエステル系樹脂発泡シートの場合、0.5〜8.0mm程度、好ましくは1.0〜3.0mm程度であり、発泡倍率は5〜50倍程度のものが好適である。厚みが前記より小さくなると、充分な支持強度が得られなくなり、また厚みが前記より大きくなると、ポリエステル系樹脂発泡シートからの成形が困難になる上に嵩高になる。また発泡倍率が5倍より小さいと、緩衝性が劣ることになる上、使用樹脂量が多くなり不経済であり、また発泡倍率が50倍より大きくなると、材料強度上問題がある。もちろん包装物品の種類または包装物品の使用素材によっては前記以外のものを使用することもできる。
【0050】
さらに、包装対象の物品の種類によっては、前記の合成樹脂の非発泡シートを用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、電子部品等の各種部品を収納して積み重ね状態にして梱包し、保管及び輸送、運搬に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0052】
1…部品包装用トレイ、2,2a…フランジ状縁、3…収納凹部、4…凸状部、5…スタック部、5a…上面部、5b…下面部、6…識別用異形部、61…切り欠き、7…コーナー部、71…通常の外縁、8…異形コーナー縁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周にフランジ状縁を残して凸状部により画された複数の収納凹部を有し、部品収納状態で同じ向きあるいは交互に180度向きを変えて複数段に積み重ねて包装される合成樹脂シート製の平面矩形のトレイであって、
四辺のうちの一辺のフランジ状縁又は隣接する二辺のフランジ状縁に、他の辺のフランジ状縁とは外縁形状を異にする識別用異形部が設けられてなることを特徴とする部品包装用トレイ。
【請求項2】
前記識別用異形部が、フランジ状縁の直線状の外形線に対して円弧状又は角形状に凹入した切り欠きである請求項1に記載の部品包装用トレイ。
【請求項3】
前記識別用異形部が、フランジ状縁の辺の長さ方向に間隔をおいて複数設けられてなる請求項1又は2に記載の部品包装用トレイ。
【請求項4】
外周にフランジ状縁を残して凸状部により画された複数の収容凹部を有し、包装対象物を収容した状態で同じ向きあるいは交互に180度向きを変えて複数段に積み重ねて包装される合成樹脂シート製の平面矩形のトレイであって、
四つのコーナー部のうちの一つのコーナー部又は隣接する二つのコーナー部の外縁が、他のコーナー部の外縁とは形状を異にする識別用の異形コーナー縁として形成されてなることを特徴とする部品包装用トレイ。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の包装用トレイにおいて、四つのコーナー部のうちの一つのコーナー部又は隣接する二つのコーナー部の縁部が、他のコーナー部の外縁とは形状を異にする識別用の異形コーナー縁として形成してなることを特徴とする部品包装用トレイ。
【請求項6】
前記のコーナー部の異形コーナー縁は、他のコーナー部の外縁のR形状に対して、半径を異にするR形状、又は、斜め形状をなす異形カット形状よりなる請求項4又は5に記載の部品包装用トレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−16557(P2011−16557A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162926(P2009−162926)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】