部材表面への転写箔の転写方法
【課題】従来技術では、部材などの皮革表面に転写箔を転写する際に、転写箔部分と非転写箔部分との境界が明確にならずに転写され、転写箔部分の所定形状の意匠性が損なわれることがある。また、皮革表面を深く窪ませて転写することができず、立体感に欠ける転写箔しか得られなかった。
【解決手段】転写箔シートに保護フイルムを被覆した転写フイルムから所定形状の転写箔を部材表面へ転写する転写箔の転写方法であって、所定形状の転写箔部分を残して、転写箔部分以外の非転写箔部分を予め転写する第1転写型を備えた第1転写型に、非転写箔の受け部材と転写フイルムをセットして加圧転写して、受け部材に非転写箔部分を転写し、所定形状の転写箔部分が残された転写フイルムを作成し、この作成した転写フイルムと上記部材とを、所定形状の転写箔部分を転写する第2転写型にセットして加圧転写して、部材表面に該転写箔部分を転写する。
【解決手段】転写箔シートに保護フイルムを被覆した転写フイルムから所定形状の転写箔を部材表面へ転写する転写箔の転写方法であって、所定形状の転写箔部分を残して、転写箔部分以外の非転写箔部分を予め転写する第1転写型を備えた第1転写型に、非転写箔の受け部材と転写フイルムをセットして加圧転写して、受け部材に非転写箔部分を転写し、所定形状の転写箔部分が残された転写フイルムを作成し、この作成した転写フイルムと上記部材とを、所定形状の転写箔部分を転写する第2転写型にセットして加圧転写して、部材表面に該転写箔部分を転写する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写フイルムの転写箔を加圧して、該転写フイルムから所定形状の転写箔部分を部材表面に転写する転写方法に関し、特に表面がクッション性を備えるソフト部材に、該所定形状の転写箔部分を押圧して、該部材表面を窪ませて加熱して転写する転写方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にサッカーボールやバレーボール、バスケットボール、ハンドボール等の球技用ボールの最外層表面パネル素材としては、大別して牛等の天然皮革、ポリウレタン或いはPVC等の人工皮革、天然ゴム及び合成ゴムなどが知られている。
【0003】
これらパネルの最外層表面には、種々のデザイン模様が印刷されている。また競技用ボールの表面には、これらの模様とは別に、商品名や製造者を表示するロゴマーク、サッカー協会の認定マーク等の記号等が印刷されている。この種の球技用ボールのデザイン模様や記号等(以下、単に記号と称す)は、例えば、これらの記号を転写可能な転写フイルムを加熱・加圧してボール表面に転写することによって形成されている。このように、転写フイルムの転写箔を球技用ボールの表面に転写する技術が、例えば特許文献1等に開示されている。
【0004】
特許文献1では、以下の内容が開示されている。一般的には、ホットスタンピング法、即ち加熱された模様形状の金型で、皮革表面に圧力を加えて転写箔を押し当てることにより、転写することが行われる。この転写方法では、金型のエッジ部で模様形状が鮮明に描けないという問題がある(即ち、模様の輪郭が鮮明にならない)。そのために、特許文献1では、基材フイルム上に昇華性染料及び顔料を含有したインキにて、スクリーン印刷又はオフセット印刷により所定形状の模様が印刷されてなる転写フイルムを予め作成し、この転写フイルムをボール皮革表面に重ねて加圧・加熱することにより上記模様を皮革表面に転写するようにしている。
【特許文献1】特開平8−196662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スクリーン印刷などで転写フイルム上に予め所定形状の転写箔を形成した場合、ボール表面に転写される転写箔の表面はフラットで光沢のある表面にならない。
【0006】
そのために、本発明では、印刷方法によらず従来のように所定形状の転写型を使って所定形状の転写箔を有する転写フイルムを得て、ボールなどの表面に転写する転写方法において、転写箔の所定形状の輪郭が鮮明になった転写方法について誠意研鑚を重ねた。その結果、本発明の目的は、転写箔シートと保護フイルムとが接合された通常のシート状の転写フイルムを用いて、この転写フイルムの転写箔から転写箔部分の輪郭の周囲にある非転写部分を予め取り除いた転写フイルムを形成し、次に転写型で加圧、或いは加熱・加圧して、ボールなどの部材表面に所定形状の転写箔を転写するようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
具体的には、転写箔シートに保護フイルムを被覆した転写フイルムを用いて、所定形状の転写箔部分を部材表面へ転写する転写箔の転写方法であって、該転写フイルムの該転写箔シートから該所定形状の該転写箔部分を残して、該転写箔部分の外周にある非転写箔部分を予め分離除去して、該所定形状の該転写箔部分が残された転写フイルムを作成し、この作成した転写フイルムと上記部材とを加圧して、該部材表面に該転写箔部分を転写することを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、該転写フイルムの該転写箔シートから該所定形状の該転写箔部分を残して、該転写箔部分の外周にある非転写箔部分を予め分離除去する際に、該転写箔部分と該非転写箔部分との境界を機械的に切断して分離除去することを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、転写箔シートに保護フイルムを被覆した転写フイルムを用いて、所定形状の転写箔部分を部材表面へ転写する転写箔の転写方法であって、該転写フイルムの該転写箔シートから該所定形状の該転写箔部分を残して、該転写箔部分の外周にある非転写箔部分を予め転写する第1転写部を備えた第1転写型に、該非転写箔部分の受け部材と該転写フイルムをセットして加圧して、該受け部材に該非転写箔部分を転写し、このことによって、該所定形状の該転写箔部分が残された転写フイルムを作成し、この作成した転写フイルムと上記部材とを、該所定形状の該転写箔部分を転写する第2転写型にセットして加圧して、該部材表面に該転写箔部分を転写することを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、部材表面がクッション性を備えるソフト部材であって、該転写フイルムの該転写箔部分を該部材表面に加圧して転写することによって、該表面が押圧されて窪み、該転写箔部分が窪んだ表面に形成されることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、上記転写箔シートが光沢を有するメタル箔からなる。
【0012】
請求項6の発明は、請求項3ないし5のいずれか1つに記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、該第1転写型の転写時間が該第2転写型の転写時間よりも短いことを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明は、請求項6記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、該第1転写型及び第2転写型は共に、加熱・加圧して転写する転写型であって、該第1転写型では、転写温度が80℃〜170℃で、転写時間が0.01〜5秒であり、該第2転写型では、転写温度が80℃〜170℃で、転写時間が0.1〜10秒であることを特徴とする。
【0014】
請求項8の発明は、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、さらに、上記転写箔シートから作成された上記所定形状の上記転写箔部分の上に重ねて転写される第2転写部分を備える第2転写箔シートに第2保護フイルムを被覆した第2転写フイルムを用意し、該第2転写フイルムの該第2転写箔シートから該第2転写箔部分を残して、該第2転写箔部分の外周にある第2非転写箔部分を予め分離除去して、該第2転写箔部分を有する第2転写フイルムとして作成し、該第2転写フイルムの該第2転写箔部分を、該部材の該表面に形成された上記転写箔部分の上に重ねて、第2転写箔部分を転写する別の転写型にセットして加圧して、該部材表面の該転写箔部分の上に該第2転写箔部分を転写することを特徴とする。
【0015】
請求項9の発明は、請求項3ないし7のいずれか1つに記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、さらに、上記転写箔シートから作成された上記所定形状の上記転写箔部分の上に重ねて転写される第2転写部分を備える第2転写箔シートに第2保護フイルムを被覆した第2転写フイルムを用意し、該第2転写フイルムの該第2転写箔シートから該第2転写箔部分を残して、該第2転写箔部分の外周にある第2非転写箔部分を予め転写する第3転写型にセットして加圧して、該第2転写箔部分を有する第2転写フイルムとして作成し、該第2転写フイルムの該第2転写箔部分を、該部材の該表面に形成された上記転写箔部分の上に重ねて、第2転写箔部分を転写する第4転写型にセットして加圧して、該部材表面の該転写箔部分の上に該第2転写箔部分を転写することを特徴とする。
【0016】
請求項10の発明は、請求項8又は9記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、該第2転写箔部分は、該所定形状の該転写箔部分の上に部分的に重ねられて形成され、該所定形状の該転写箔部分の一部と該第2転写箔部分とが部材表面に露出して形成されることを特徴とする。
【0017】
請求項11の発明は、請求項8ないし10のいずれか1つに記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、該所定形状の該転写箔部分と該第2転写箔部分の一方がメタル箔であって、他方が非メタル箔からなることを特徴とする。
【0018】
請求項12の発明は、請求項1ないし11のいずれか1つに記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、該部材が球技用のボールの皮革であることを特徴とする。
【0019】
請求項13の発明は、請求項1ないし12のいずれか1つに記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、上記転写型にセットして加圧する際に、高周波電圧を付与することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によれば、転写フイルムから非転写箔部分を取り除くので、転写箔部分を部材表面に転写した際に、転写箔部分の端部の切れが良く、優れた意匠性を備える部材を得ることができる。
【0021】
請求項2の発明によれば、転写フイルムから非転写箔部分を機械的に分離除去するので、簡単で、且つ確実に転写箔部分の輪郭部分が鮮明となり、優れた意匠性を備える部材を得ることができる。
【0022】
請求項3の発明によれば、第1転写型で非転写部分を取り除くので、転写箔部分を部材表面に転写した際に、転写箔部分の端部の切れが良く、転写箔部分の形状が明確に浮かび上がることができ、優れた意匠性を備える部材を得ることができる。
【0023】
請求項4の発明によれば、転写箔部分を部材表面に転写した際に、転写した部材表面の窪みを深くできるので、立体感に優れた部材を得ることができる。
【0024】
請求項5の発明によれば、転写箔部分の光沢感をくっきりと浮かび上がらせた部材を得ることができる。
【0025】
請求項6の発明によれば、転写フイルムから非転写箔部分を効果的に取り除くことができ、明確な形状の転写箔部分を得られる。
【0026】
請求項7の発明によれば、適切の温度及び時間で制御することによって、非転写部分の除去と転写部分の転写とを安定して得ることができる。
【0027】
請求項8の発明によれば、転写箔部分及び第2転写箔部分を明確に浮かび上がらせることができ、更に意匠性に優れた部材を得ることができる。また、複雑な形状の転写箔部分を高品質で得ることができる。
【0028】
請求項9の発明によれば、転写箔部分及び第2転写箔部分を明確に浮かび上がらせることができ、更に意匠性に優れた部材を得ることができる。また、複雑な形状の転写箔部分を高品質で得ることができる。更に、第1転写型ないし第4転写型を使用しているので、生産性に優れる。
【0029】
請求項10の発明によれば、意匠性に優れ、立体感に優れた部材を得ることができる。
【0030】
請求項11の発明によれば、光沢感に優れて意匠性に優れた部材を得ることができる。
【0031】
請求項12の発明によれば、意匠性に優れ、立体感に優れた競技用ボールを得ることができる。
【0032】
請求項13の発明によれば、転写フイルムから非転写部分をより確実に取り除くことができ、いっそう鮮明な形状の転写箔部分を得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(実施形態1)
図に基づいて本発明の実施形態1を説明する。図1は、球技用ボールの例としてバスケットボールを示す。図2は、このバスケットボールの皮革パネルを示す。図1および図2に示すように、バスケットボールBの最外表皮を形成する皮革パネル1が8枚からなり、その中の1枚には、例えば「M」の記号2が付与されている。5は表面シボ模様の凸形状を示す。この「M」記号2は、例えば図3(A)に示すように、文字幅がt1で「M」の記号を示す転写箔部分2からなるもの、図3(B)に示すように、文字幅がt1で「M」の記号を示す転写箔部分3とそれよりも少し小さ目の相似形で文字幅がt2で「M」を示す転写箔部分4が重ねて形成されたもの、図3(C)及び図3(D)に示すようなもの等がある。実施形態1では、図3(A)の文字を製造する場合を例として説明する。図3(B)、図3(C)及び図3(D)の例は、実施形態2、実施形態3として後で説明する。
【0034】
図4〜図10に基づいて、実施形態1の転写方法を説明する。まず、図4に示すように、透明な保護フイルム11、転写箔シート12、接着剤層13が積層された転写フイルム10(第1転写フイルム)を用意する。この場合、転写箔が黒色からなるものを用いた。転写箔の受け部材として、紙部材14を用意する。「M」記号の輪郭の外周を先に取り除くための第1転写型21を用意する。この第1転写型21は、「M」記号で示す転写箔部分2に対応する部位が凹部24として形成され、この転写箔部分2以外(即ち非転写部分)に対応する部位が凸状部23として形成されている。図10のフローチャートにおけるステップ1として、図5に示すように、第1転写型21の下型22のベース板材上に紙部材14及び転写フイルム10をセットする。ステップ2として、第1転写型21を加熱・加圧して、ホットスタンピングを行う。このときの転写温度は、130℃で転写時間は0.1秒とした。その結果、ステップ3として、図6に示すように、転写フイルム10に、転写箔シート12の中の一部が「M」記号の第1形状部分(転写箔部分)2として残され、この転写箔部分2の周囲の転写箔12'(非転写部分)と接着剤層13'が紙部材14に転写される。即ち、記号「M」の転写箔部分2のみが転写フイルム10に残され、記号「M」の端部2aが鮮明になった転写フイルム10が作成される。
【0035】
次に記号「M」の転写箔部分2を転写する第2転写型31を用意する。この第2転写型31は、記号「M」の転写箔部分2に対応する部位が凸状部34として形成され、転写箔部分2の輪郭の外周(非転写部分)に対応する部位が凹部33として形成されている。ステップ4として、図7に示すように、この第2転写型31の下型32の上に、バスケットボールの皮革パネルである部材1をセットし、その上に上記転写箔部分2が残された転写フイルム10をセットする。ステップ5として、第2転写型31を加熱・加圧してホットスタンピングを行う。このときの転写温度は、110℃で転写時間は6秒とした。その結果、ステップ6として、図8及び図9に示すように、部材1のシボ模様の凸形状5が押し潰されて窪みとなり、この窪みに転写箔部分2が転写して接合された皮革が得られる。
実施形態1では、第1転写型21によって、記号「M」の周囲を先に取り除いた転写フイルム10を用いて、部材1に記号「M」を転写するようにしたので、非転写部分が部材1に転写される恐れが無いので、記号「M」の輪郭形状がくっきりとした、即ち転写部分2の端部2aの輪郭線が鮮明になった転写箔が皮革表面に得られ、意匠性に優れた転写箔が得られた。
【0036】
特に、実施形態1では、非転写部分が部材1に転写される恐れが無いので、図9に示すように、シボ模様の凸状部5が押し潰されるだけでなく、凸状部の下面部分までも押し潰されるまで、加熱・加圧して深い窪みができるようにしても良く、この場合には、かなり深みのある「M」記号を得ることができる。
【0037】
実施形態1において、黒色の転写箔シートの代わりに、転写箔が光沢のある銀紙からなる転写箔シートを使用して、記号「M」を転写して作成した場合にも、鮮明で、浮かび上がったような記号「M」が得られた。なお、シボ模様、波模様等の凹凸模様のフイルムを転写フイルム10と第2転写型31の間に配置して押圧することで、転写箔部分4の表面に凹凸形状を付与するようにしても良い(図示省略)。
【0038】
(実施形態2)
次に、実施形態2の転写方法を説明する。実施形態2では、図3(B)に示ように、記号「M」が2重に重ねて形成された転写箔2を作成する。記号「M」の転写箔2は、文字幅がt1で「M」の記号を示す転写箔部分3とそれよりも少し小さ目の相似形で文字幅がt2で「M」を示す転写箔部分4が重ねて形成されている。転写箔部分3の作成は、基本的に実施形態1の転写箔部分2の作成方法と同じであり、即ち実施形態2のステップ11〜16は、実施形態1のステップ1〜6と同様であり、簡単な説明とする。また、同じ転写型や同じ転写フイルム等の同じ構成については同じ符号を使用し、詳細な説明を省略する。
【0039】
実施形態2の転写方法を以下に説明する。次に、ステップ11からステップ16は基本的に実施形態1のステップ1からステップ6と同じであり、実施形態2の転写箔3の製造方法は実施形態1の転写箔2の製造方法と同じであり、実施形態2の転写箔3の製造方法を、実施形態1の図4から図8を利用して説明する。まず、図4に示すように、実施形態1の転写フイルム10と同様に、透明な保護フイルム11、黒色の転写箔シート12、接着剤層13が積層された転写フイルム10(第1転写フイルム)を用意する。ステップ11として、図5に示すように、文字幅がt1である転写箔部分3に相当する部位が凹部24として形成され、転写箔部分3の輪郭の外周(即ち非転写部分)に相当する部位が凸状部23として形成された第1転写型21の下型22の上に紙部材14及び第1転写フイルム10をセットする。ステップ12として、転写温度130℃、転写時間0.1秒で第1転写型21を加熱・加圧してホットスタンピングを行う。その結果、ステップ13として、図6に示すように、転写箔部分3の周囲の非転写部分が紙部材14に写し取られる。ステップ14として、図7に示されるように、第2転写型31の下型32の上に、バスケットボールの皮革パネルである部材1をセットし、上記転写箔部分3が第1形状部分として残され、この転写箔部分3の輪郭外周の非転写部分12'が取り除かれた第1転写フイルム10をセットする。ステップ15として、転写温度110℃、転写時間6秒で、第2転写型31を加熱・加圧してホットスタンピングを行う(図示省略)。その結果、ステップ16として、図8に示すように、部材1のシボ模様の凸形状5が押し潰されて窪みとなり、この窪みに転写箔部分3が転写して接合される。
【0040】
次に、転写箔部分4の転写方法を説明する。基本的には、転写箔部分4の文字幅がt2であるだけで、文字幅t1の転写箔部分3の転写方法と同様であり、詳細な説明は省略する。まず、図11に示すように、透明な保護フイルム11a、光沢のある銀箔からなる転写箔シート12a、接着剤層13aが積層された転写フイルム10a(第2転写フイルム)を用意する。第1転写型21と同様な第3転写型21aを用意する。この第3転写型21aは、文字幅がt2の転写箔部分4に対応する部位が凹部24aとして形成され、転写箔部分4以外に対応する部位が凸状部23aとして形成されている。ステップ17として、図11に示すように、第3転写型21aの下型22aの上にベース材である紙部材14aと上記転写フイルム10aをセットする。ステップ18として、転写温度130℃、転写時間0.1秒で、第3転写型21aを加熱・加圧してホットスタンピングを行う。その結果、ステップ19として、転写フイルム10aに、転写箔シート12aの一部である転写箔部分4が第2形状部分として残され、この転写箔部分4の周囲の転写箔12a(非転写部分)が紙部材14aに転写される(図示省略)。
【0041】
次に、第4転写型31aを用意する。この第4転写型31aは第1実施形態の転写型31と同様な構成であって、文字幅がt2の転写箔部分4の転写部分に対応する部位が凸状部34aとして形成され、転写箔部分4以外(非転写部分)に対応する部位が凹部33aとして形成されている。ステップ20として、図12に示すように、第4転写型31aの下型32(第2転写型31の下型と同じ)の上に、転写箔部分3が転写された部材1をセットし、その上に上記転写箔部分4が残された転写フイルム10aをセットする。ステップ21として、転写温度110℃、転写時間6秒で、第4転写型を加熱・加圧してホットスタンピングを行う。その結果、ステップ22として、部材1の転写箔部分3の上に転写箔部分4が相似形で一回り小さく重ねて転写して接合され、図3(B)に示すような「M」の記号2が部材1の最表面に形成される。なお、図12に2点鎖線で示すように、シボ模様、波模様等の凹凸模様のフイルム15を転写フイルム10aと第4転写型31aの間に配置して押圧することで、転写箔部分4の表面に凹凸形状を付与するようにしても良い。
実施形態2では、転写箔部分3及び転写箔部分4の「M」の輪郭の外周転写箔を非転写箔部分として予め転写して除去した後に、皮革パネル1上に転写するので、転写箔部分3の端部3a及び転写箔部分4の端部4aの境界線(輪郭線)が鮮明に線引きされたように明確なラインで得られ、鮮明で意匠性に優れた「M」が得られる。特に、実施形態2では、転写箔部分3の上に転写箔部分4を重ねることで、より立体感に優れ、より意匠性に優れた部材を得ることができる。
【0042】
実施形態2では、転写箔部分3として黒色フイルム、転写箔部分4として光沢のある銀紙フイルムを使用したが、これに限られるものではなく、転写箔部分3を銀紙フイルム、転写箔部分4を黒色フイルムとしても良い。なお、黒色フイルムと銀紙フイルムに限られるものではなく、他の色箔やメタル箔を使用しても良い。両方とも光沢のある金色や銀色のメタル箔とすることもでき、逆に両方ともメタル箔でない色箔を使用することもできる。
【0043】
また、実施形態2では、先に転写した転写箔部分3と後から転写する転写箔部分4を相似形として形成し、鮮明に立体感を打ち出すようにしたが、両転写箔部分を非相似形として複雑な形状や複雑な色の組合せからなる転写箔部分を浮かび上がらせて形成するようにしても良い。
【0044】
(実施形態3)
実施形態3は、実施形態2と同様にして、記号「M」の転写箔部分3及び転写箔部分4を形成するものであり、実施形態2と異なる部分のみ説明し、共通部分の説明は省略する。図14及び図15に示すように、実施形態3が実施形態2と異なる部分は、第3転写型21a及び第4転写型31aで加熱・加圧して転写する際に、高周波電圧印可手段50によって、高周波電圧を付与して転写を行うことである。なお、転写箔12aとして導電性の銀紙を使用するので、図15に示すように、第4転写型31aでは、転写型転写フイルム10aの上に絶縁紙16をセットし、通電を遮断するようにする。このように、高周波電圧を付与すると、「M」の記号の境界(輪郭)が更にいっそう鮮明となり、更にいっそう浮かび上がった形状が得られた。
【0045】
なお、転写箔部分3を形成する第1転写金型及び第2転写金型についても、図示しないが、高周波電圧を付与するようにしても良い。
【0046】
また、実施形態3において、上記絶縁紙16を凹凸模様のフイルムとして形成し、転写フイルム10aと第4転写型31aの間に配置して押圧するようにして、転写箔部分4に対して、シボ模様、波模様等の凹凸形状を付与するようにしても良い(図示省略)。
【0047】
(実施形態4)
実施形態4は、図3(C)及び図3(D)に示すような記号「M」を転写して形成する場合であって、転写方法は、実施形態2又は実施形態3と同様であり、転写方法の詳細な説明は、省略する。
【0048】
図3(C)は転写箔部分の外観形状であって、図3(D)は図3(C)のA−A断面を示す。転写箔部分4'は、実施形態2の転写箔部分4と同じ形状であって、転写箔3'は実施形態2の転写箔3と異なり、転写箔4'の輪郭線に沿った形状に形成されている。即ち、転写箔4'の外側の輪郭線に沿って形成された大きめの「M」と、転写箔4'の内側の輪郭線に沿って形成された小さめの「M」とからなっている。断面形状としては、図3(D)に示すように、ベースの皮革に対して、まず転写箔3'が転写され、その上に、一部転写箔3'と重なるように転写箔4'が転写される。このような形状凹凸感を少なくして、2層の転写箔を鮮明に得ることができる。
【0049】
(その他実施形態)
その他の実施形態としては、第1転写フイルム(或いは第2転写フイルム)の転写箔シートから、所定形状の転写箔部分を残して、この転写箔部分の輪郭周囲を除去する方法として、第1転写型(或いは第3転写型)を使用しないで、化学エッチングや転写型による転写方法以外の機械的な方法で除去するようにしても良い。
【0050】
この実施形態の転写方法を図16に基づいて説明する。尚、実施形態1と同じものは同じ符号とし、その説明は簡略化する。第1ステップ1(S31)として、転写箔シートに保護フイルムを被覆した転写フイルムを用意する。ステップ2(S32)として、転写フイルムの転写箔シートから所定形状の転写箔部分を残して、転写箔部分の外周にある非転写箔部分を予め分離除去する。その結果、第3ステップ(S33)として、所定形状の転写箔部分が残された転写フイルムを作成する。ステップ4(S34)として、この作成した転写フイルムとパネル部材とを、所定形状の転写箔部分を転写する転写型にセットする。ステップ5(S35)として、転写型を加熱・加圧する。その結果、ステップ6(S36)として、部材パネル表面に転写箔部分が転写される。
【0051】
なお、ステップ4(S34)において、転写型を使用せずに、他の位置合わせ手段によって転写フイルムとパネル部材を押圧し転写しても良い。
【0052】
上記実施形態いずれにおいて、第1転写型(或いは第3転写型)では、予め転写箔部分2(3、4)の周囲を除去するだけであり、転写箔部分と非転写箔部分との熱伝達を防止するためには、この時の転写時間は短いほうが好ましく、短い時間とすればするほど転写温度を高くして、すばやく非転写部分を除去することできるので、より好ましい。特に、第1転写型(或いは第3転写型)の転写時間を第2転写型(或いは第4転写型)の転写時間よりも短くすることが転写箔3の端部3aや転写箔4の端部4aの境界を明確化する上で好ましい。なお、転写時間や転写温度は、部材表面の素材や転写部分の素材や形状・厚さなどによって異なるが、第1転写型(または第3転写型)では、転写時間は、非転写部分を受け部材に転写できる時間があれば良くて、非転写部分への影響をできるだけ少なくする上では短いほど好ましく、第1転写型(または第3転写型)では、転写温度が80℃〜170℃で転写時間が0.01〜5秒、特に転写温度が100℃〜150℃で転写時間が0.05〜2秒、とすることが好ましい。また、第2転写型(または第4転写型)では、転写時間は、転写部分を皮革などの部材に転写し、確実に接合するために、転写温度が80℃〜170℃で、転写時間が0.1〜10秒、特に転写温度が100℃〜150℃で、転写時間が0.5〜7秒とすることが好ましい。
【0053】
また、実施形態1又は2において、各転写型では、加熱・加圧して転写してホットスタンピングするようにしたが、実施形態3と同様に全部の金型で一部の金型でも高周波電圧をかけて転写するようにしても良い。高周波電圧を付与すると、転写される形状部分がより鮮明に浮かび上がるので好ましい。
【0054】
または、上記実施形態において、加熱・加圧する金型に替えて、加圧する金型のみにして、簡単な金型とし、コストダウンを図っても良い。この場合にも、高周波電圧を付加して鮮明さを出すようにしても良い。
【0055】
上記実施形態のいずれも、非転写部分を受ける受け部材として、コスト的に優れる紙部材を用いた。この受け部材は、非転写部分を転写フイルムから明確に取り除くためには、比較的に高硬度であり、即ち、転写するために受け部材に押付けた際に転写部分と非転写部分との沈み量の差が少なく、転写部分と非転写部分との境界が鮮明に区別されることが好ましく、紙部材に限らず、合成樹脂材などの他の板材(またはシート材)とすることも可能である。
【0056】
上記実施形態のいずれも、バスケットボールの皮革を転写される部材としているが、これに限られるものではなく、他の部材でも良い。特に、部材表面がクッション性を備えるソフト部材の場合には、転写のために転写箔をソフト部材に加熱・押圧した際に弾力性を有するので、転写箔の形状の鮮明さが浮かび上がり難いが、本発明は、このようなソフト部材であっても、鮮明な転写を可能とするものである。ソフト部材の好適な例としては、例えば球技用ボールのように、最表面に弾力性があるものや、表面にシボ模様等の凹凸があり、転写時に押圧するとシボ模様が部分的にでも全てでも潰れるものなどである。本発明での球技用ボールとしては、十分な表面磨耗強度および吸汗性が良好であるために優れたノンスリップ性を示すボール用皮革様パネルに好適であり、特にバスケットボール、アメリカンフットボール、ハンドボール、ラグビーボール等のボール用皮革に使用することが好ましい。
【0057】
上記実施形態のいずれも、転写箔「M」の形状は1例であって、この文字に限られるものではなく、他の文字、記号、図案、模様、印、またはそれらの組合せであっても良い。例えば、種々のデザイン模様、商品名や製造者のロゴマーク、キャッチフレーズ、商標名、各種球技協会の認定マーク、球技種目名などである。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上説明したように、本発明に関わる転写方法は、皮革材、繊維材、合成樹脂材等に利用可能である。特に、本発明に関わる転写方法は、表面が転写されることで窪むソフト部材や皮革部材、表面の凹凸が目立つ程度に形成されているソフト部材(例えば球技用ボール、靴、衣服等)に対しても、転写部分と非転写部分との境界(輪郭)を鮮明に打ち出すことが可能であり、立体性や意匠性を要求される転写を行うことを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施形態1に係わり、バスケットボールの外形形状を示す。
【図2】図1のバスケットボールの部分皮革パネルの外観図を示す。
【図3】図2の「M」を拡大表示した図を示す。図3(A)は1層の「M」、図3(B)は2層からなる「M」の例を拡大表示した図を示す。図3(C)及び図3(D)は、別の2層からなる「M」の例を拡大表示した図を示す。
【図4】実施形態1に係わり、転写フイルムの部分断面図を示す。
【図5】実施形態1に関わり、第1転写型での転写状態を説明する図を示す。
【図6】図5の転写後に得られた転写フイルムと受け部材の部分断面図を示す。
【図7】実施形態1に関わり、第2転写型での転写状態を説明する図を示す。
【図8】図7の転写後に得られた皮革パネルの部分断面図を示す。
【図9】図8の部分拡大断面図を示す。
【図10】実施形態1に関わり、転写方法を説明するステップを示す図である。
【図11】実施形態2に関わり、第3転写型での転写状態を説明する図を示す。
【図12】実施形態2に関わり、第4転写型での転写状態を説明する図を示す。
【図13】実施形態2に関わり、転写方法を説明するステップを示す図である。
【図14】実施形態3に関わり、第3転写型での転写状態を説明する図を示す。
【図15】実施形態3に関わり、第4転写型での転写状態を説明する図を示す。
【図16】別の実施形態に関わり、転写方法を説明するステップを示す図である。
【符号の説明】
【0060】
B ボール
1 部材
2 記号
3 転写箔
4 転写箔
5 凸形状
10 転写フイルム
11 保護フイルム
12 転写箔シート
13 接着剤層
14 受け部材
21 第1転写型
31 第2転写型
10a 第2転写フイルム
11a 保護フイルム
12a 第2転写箔シート
13a 第2接着剤層
21a 第3転写型
31a 第4転写型
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写フイルムの転写箔を加圧して、該転写フイルムから所定形状の転写箔部分を部材表面に転写する転写方法に関し、特に表面がクッション性を備えるソフト部材に、該所定形状の転写箔部分を押圧して、該部材表面を窪ませて加熱して転写する転写方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にサッカーボールやバレーボール、バスケットボール、ハンドボール等の球技用ボールの最外層表面パネル素材としては、大別して牛等の天然皮革、ポリウレタン或いはPVC等の人工皮革、天然ゴム及び合成ゴムなどが知られている。
【0003】
これらパネルの最外層表面には、種々のデザイン模様が印刷されている。また競技用ボールの表面には、これらの模様とは別に、商品名や製造者を表示するロゴマーク、サッカー協会の認定マーク等の記号等が印刷されている。この種の球技用ボールのデザイン模様や記号等(以下、単に記号と称す)は、例えば、これらの記号を転写可能な転写フイルムを加熱・加圧してボール表面に転写することによって形成されている。このように、転写フイルムの転写箔を球技用ボールの表面に転写する技術が、例えば特許文献1等に開示されている。
【0004】
特許文献1では、以下の内容が開示されている。一般的には、ホットスタンピング法、即ち加熱された模様形状の金型で、皮革表面に圧力を加えて転写箔を押し当てることにより、転写することが行われる。この転写方法では、金型のエッジ部で模様形状が鮮明に描けないという問題がある(即ち、模様の輪郭が鮮明にならない)。そのために、特許文献1では、基材フイルム上に昇華性染料及び顔料を含有したインキにて、スクリーン印刷又はオフセット印刷により所定形状の模様が印刷されてなる転写フイルムを予め作成し、この転写フイルムをボール皮革表面に重ねて加圧・加熱することにより上記模様を皮革表面に転写するようにしている。
【特許文献1】特開平8−196662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スクリーン印刷などで転写フイルム上に予め所定形状の転写箔を形成した場合、ボール表面に転写される転写箔の表面はフラットで光沢のある表面にならない。
【0006】
そのために、本発明では、印刷方法によらず従来のように所定形状の転写型を使って所定形状の転写箔を有する転写フイルムを得て、ボールなどの表面に転写する転写方法において、転写箔の所定形状の輪郭が鮮明になった転写方法について誠意研鑚を重ねた。その結果、本発明の目的は、転写箔シートと保護フイルムとが接合された通常のシート状の転写フイルムを用いて、この転写フイルムの転写箔から転写箔部分の輪郭の周囲にある非転写部分を予め取り除いた転写フイルムを形成し、次に転写型で加圧、或いは加熱・加圧して、ボールなどの部材表面に所定形状の転写箔を転写するようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
具体的には、転写箔シートに保護フイルムを被覆した転写フイルムを用いて、所定形状の転写箔部分を部材表面へ転写する転写箔の転写方法であって、該転写フイルムの該転写箔シートから該所定形状の該転写箔部分を残して、該転写箔部分の外周にある非転写箔部分を予め分離除去して、該所定形状の該転写箔部分が残された転写フイルムを作成し、この作成した転写フイルムと上記部材とを加圧して、該部材表面に該転写箔部分を転写することを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、該転写フイルムの該転写箔シートから該所定形状の該転写箔部分を残して、該転写箔部分の外周にある非転写箔部分を予め分離除去する際に、該転写箔部分と該非転写箔部分との境界を機械的に切断して分離除去することを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、転写箔シートに保護フイルムを被覆した転写フイルムを用いて、所定形状の転写箔部分を部材表面へ転写する転写箔の転写方法であって、該転写フイルムの該転写箔シートから該所定形状の該転写箔部分を残して、該転写箔部分の外周にある非転写箔部分を予め転写する第1転写部を備えた第1転写型に、該非転写箔部分の受け部材と該転写フイルムをセットして加圧して、該受け部材に該非転写箔部分を転写し、このことによって、該所定形状の該転写箔部分が残された転写フイルムを作成し、この作成した転写フイルムと上記部材とを、該所定形状の該転写箔部分を転写する第2転写型にセットして加圧して、該部材表面に該転写箔部分を転写することを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、部材表面がクッション性を備えるソフト部材であって、該転写フイルムの該転写箔部分を該部材表面に加圧して転写することによって、該表面が押圧されて窪み、該転写箔部分が窪んだ表面に形成されることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、上記転写箔シートが光沢を有するメタル箔からなる。
【0012】
請求項6の発明は、請求項3ないし5のいずれか1つに記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、該第1転写型の転写時間が該第2転写型の転写時間よりも短いことを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明は、請求項6記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、該第1転写型及び第2転写型は共に、加熱・加圧して転写する転写型であって、該第1転写型では、転写温度が80℃〜170℃で、転写時間が0.01〜5秒であり、該第2転写型では、転写温度が80℃〜170℃で、転写時間が0.1〜10秒であることを特徴とする。
【0014】
請求項8の発明は、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、さらに、上記転写箔シートから作成された上記所定形状の上記転写箔部分の上に重ねて転写される第2転写部分を備える第2転写箔シートに第2保護フイルムを被覆した第2転写フイルムを用意し、該第2転写フイルムの該第2転写箔シートから該第2転写箔部分を残して、該第2転写箔部分の外周にある第2非転写箔部分を予め分離除去して、該第2転写箔部分を有する第2転写フイルムとして作成し、該第2転写フイルムの該第2転写箔部分を、該部材の該表面に形成された上記転写箔部分の上に重ねて、第2転写箔部分を転写する別の転写型にセットして加圧して、該部材表面の該転写箔部分の上に該第2転写箔部分を転写することを特徴とする。
【0015】
請求項9の発明は、請求項3ないし7のいずれか1つに記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、さらに、上記転写箔シートから作成された上記所定形状の上記転写箔部分の上に重ねて転写される第2転写部分を備える第2転写箔シートに第2保護フイルムを被覆した第2転写フイルムを用意し、該第2転写フイルムの該第2転写箔シートから該第2転写箔部分を残して、該第2転写箔部分の外周にある第2非転写箔部分を予め転写する第3転写型にセットして加圧して、該第2転写箔部分を有する第2転写フイルムとして作成し、該第2転写フイルムの該第2転写箔部分を、該部材の該表面に形成された上記転写箔部分の上に重ねて、第2転写箔部分を転写する第4転写型にセットして加圧して、該部材表面の該転写箔部分の上に該第2転写箔部分を転写することを特徴とする。
【0016】
請求項10の発明は、請求項8又は9記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、該第2転写箔部分は、該所定形状の該転写箔部分の上に部分的に重ねられて形成され、該所定形状の該転写箔部分の一部と該第2転写箔部分とが部材表面に露出して形成されることを特徴とする。
【0017】
請求項11の発明は、請求項8ないし10のいずれか1つに記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、該所定形状の該転写箔部分と該第2転写箔部分の一方がメタル箔であって、他方が非メタル箔からなることを特徴とする。
【0018】
請求項12の発明は、請求項1ないし11のいずれか1つに記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、該部材が球技用のボールの皮革であることを特徴とする。
【0019】
請求項13の発明は、請求項1ないし12のいずれか1つに記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、上記転写型にセットして加圧する際に、高周波電圧を付与することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によれば、転写フイルムから非転写箔部分を取り除くので、転写箔部分を部材表面に転写した際に、転写箔部分の端部の切れが良く、優れた意匠性を備える部材を得ることができる。
【0021】
請求項2の発明によれば、転写フイルムから非転写箔部分を機械的に分離除去するので、簡単で、且つ確実に転写箔部分の輪郭部分が鮮明となり、優れた意匠性を備える部材を得ることができる。
【0022】
請求項3の発明によれば、第1転写型で非転写部分を取り除くので、転写箔部分を部材表面に転写した際に、転写箔部分の端部の切れが良く、転写箔部分の形状が明確に浮かび上がることができ、優れた意匠性を備える部材を得ることができる。
【0023】
請求項4の発明によれば、転写箔部分を部材表面に転写した際に、転写した部材表面の窪みを深くできるので、立体感に優れた部材を得ることができる。
【0024】
請求項5の発明によれば、転写箔部分の光沢感をくっきりと浮かび上がらせた部材を得ることができる。
【0025】
請求項6の発明によれば、転写フイルムから非転写箔部分を効果的に取り除くことができ、明確な形状の転写箔部分を得られる。
【0026】
請求項7の発明によれば、適切の温度及び時間で制御することによって、非転写部分の除去と転写部分の転写とを安定して得ることができる。
【0027】
請求項8の発明によれば、転写箔部分及び第2転写箔部分を明確に浮かび上がらせることができ、更に意匠性に優れた部材を得ることができる。また、複雑な形状の転写箔部分を高品質で得ることができる。
【0028】
請求項9の発明によれば、転写箔部分及び第2転写箔部分を明確に浮かび上がらせることができ、更に意匠性に優れた部材を得ることができる。また、複雑な形状の転写箔部分を高品質で得ることができる。更に、第1転写型ないし第4転写型を使用しているので、生産性に優れる。
【0029】
請求項10の発明によれば、意匠性に優れ、立体感に優れた部材を得ることができる。
【0030】
請求項11の発明によれば、光沢感に優れて意匠性に優れた部材を得ることができる。
【0031】
請求項12の発明によれば、意匠性に優れ、立体感に優れた競技用ボールを得ることができる。
【0032】
請求項13の発明によれば、転写フイルムから非転写部分をより確実に取り除くことができ、いっそう鮮明な形状の転写箔部分を得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(実施形態1)
図に基づいて本発明の実施形態1を説明する。図1は、球技用ボールの例としてバスケットボールを示す。図2は、このバスケットボールの皮革パネルを示す。図1および図2に示すように、バスケットボールBの最外表皮を形成する皮革パネル1が8枚からなり、その中の1枚には、例えば「M」の記号2が付与されている。5は表面シボ模様の凸形状を示す。この「M」記号2は、例えば図3(A)に示すように、文字幅がt1で「M」の記号を示す転写箔部分2からなるもの、図3(B)に示すように、文字幅がt1で「M」の記号を示す転写箔部分3とそれよりも少し小さ目の相似形で文字幅がt2で「M」を示す転写箔部分4が重ねて形成されたもの、図3(C)及び図3(D)に示すようなもの等がある。実施形態1では、図3(A)の文字を製造する場合を例として説明する。図3(B)、図3(C)及び図3(D)の例は、実施形態2、実施形態3として後で説明する。
【0034】
図4〜図10に基づいて、実施形態1の転写方法を説明する。まず、図4に示すように、透明な保護フイルム11、転写箔シート12、接着剤層13が積層された転写フイルム10(第1転写フイルム)を用意する。この場合、転写箔が黒色からなるものを用いた。転写箔の受け部材として、紙部材14を用意する。「M」記号の輪郭の外周を先に取り除くための第1転写型21を用意する。この第1転写型21は、「M」記号で示す転写箔部分2に対応する部位が凹部24として形成され、この転写箔部分2以外(即ち非転写部分)に対応する部位が凸状部23として形成されている。図10のフローチャートにおけるステップ1として、図5に示すように、第1転写型21の下型22のベース板材上に紙部材14及び転写フイルム10をセットする。ステップ2として、第1転写型21を加熱・加圧して、ホットスタンピングを行う。このときの転写温度は、130℃で転写時間は0.1秒とした。その結果、ステップ3として、図6に示すように、転写フイルム10に、転写箔シート12の中の一部が「M」記号の第1形状部分(転写箔部分)2として残され、この転写箔部分2の周囲の転写箔12'(非転写部分)と接着剤層13'が紙部材14に転写される。即ち、記号「M」の転写箔部分2のみが転写フイルム10に残され、記号「M」の端部2aが鮮明になった転写フイルム10が作成される。
【0035】
次に記号「M」の転写箔部分2を転写する第2転写型31を用意する。この第2転写型31は、記号「M」の転写箔部分2に対応する部位が凸状部34として形成され、転写箔部分2の輪郭の外周(非転写部分)に対応する部位が凹部33として形成されている。ステップ4として、図7に示すように、この第2転写型31の下型32の上に、バスケットボールの皮革パネルである部材1をセットし、その上に上記転写箔部分2が残された転写フイルム10をセットする。ステップ5として、第2転写型31を加熱・加圧してホットスタンピングを行う。このときの転写温度は、110℃で転写時間は6秒とした。その結果、ステップ6として、図8及び図9に示すように、部材1のシボ模様の凸形状5が押し潰されて窪みとなり、この窪みに転写箔部分2が転写して接合された皮革が得られる。
実施形態1では、第1転写型21によって、記号「M」の周囲を先に取り除いた転写フイルム10を用いて、部材1に記号「M」を転写するようにしたので、非転写部分が部材1に転写される恐れが無いので、記号「M」の輪郭形状がくっきりとした、即ち転写部分2の端部2aの輪郭線が鮮明になった転写箔が皮革表面に得られ、意匠性に優れた転写箔が得られた。
【0036】
特に、実施形態1では、非転写部分が部材1に転写される恐れが無いので、図9に示すように、シボ模様の凸状部5が押し潰されるだけでなく、凸状部の下面部分までも押し潰されるまで、加熱・加圧して深い窪みができるようにしても良く、この場合には、かなり深みのある「M」記号を得ることができる。
【0037】
実施形態1において、黒色の転写箔シートの代わりに、転写箔が光沢のある銀紙からなる転写箔シートを使用して、記号「M」を転写して作成した場合にも、鮮明で、浮かび上がったような記号「M」が得られた。なお、シボ模様、波模様等の凹凸模様のフイルムを転写フイルム10と第2転写型31の間に配置して押圧することで、転写箔部分4の表面に凹凸形状を付与するようにしても良い(図示省略)。
【0038】
(実施形態2)
次に、実施形態2の転写方法を説明する。実施形態2では、図3(B)に示ように、記号「M」が2重に重ねて形成された転写箔2を作成する。記号「M」の転写箔2は、文字幅がt1で「M」の記号を示す転写箔部分3とそれよりも少し小さ目の相似形で文字幅がt2で「M」を示す転写箔部分4が重ねて形成されている。転写箔部分3の作成は、基本的に実施形態1の転写箔部分2の作成方法と同じであり、即ち実施形態2のステップ11〜16は、実施形態1のステップ1〜6と同様であり、簡単な説明とする。また、同じ転写型や同じ転写フイルム等の同じ構成については同じ符号を使用し、詳細な説明を省略する。
【0039】
実施形態2の転写方法を以下に説明する。次に、ステップ11からステップ16は基本的に実施形態1のステップ1からステップ6と同じであり、実施形態2の転写箔3の製造方法は実施形態1の転写箔2の製造方法と同じであり、実施形態2の転写箔3の製造方法を、実施形態1の図4から図8を利用して説明する。まず、図4に示すように、実施形態1の転写フイルム10と同様に、透明な保護フイルム11、黒色の転写箔シート12、接着剤層13が積層された転写フイルム10(第1転写フイルム)を用意する。ステップ11として、図5に示すように、文字幅がt1である転写箔部分3に相当する部位が凹部24として形成され、転写箔部分3の輪郭の外周(即ち非転写部分)に相当する部位が凸状部23として形成された第1転写型21の下型22の上に紙部材14及び第1転写フイルム10をセットする。ステップ12として、転写温度130℃、転写時間0.1秒で第1転写型21を加熱・加圧してホットスタンピングを行う。その結果、ステップ13として、図6に示すように、転写箔部分3の周囲の非転写部分が紙部材14に写し取られる。ステップ14として、図7に示されるように、第2転写型31の下型32の上に、バスケットボールの皮革パネルである部材1をセットし、上記転写箔部分3が第1形状部分として残され、この転写箔部分3の輪郭外周の非転写部分12'が取り除かれた第1転写フイルム10をセットする。ステップ15として、転写温度110℃、転写時間6秒で、第2転写型31を加熱・加圧してホットスタンピングを行う(図示省略)。その結果、ステップ16として、図8に示すように、部材1のシボ模様の凸形状5が押し潰されて窪みとなり、この窪みに転写箔部分3が転写して接合される。
【0040】
次に、転写箔部分4の転写方法を説明する。基本的には、転写箔部分4の文字幅がt2であるだけで、文字幅t1の転写箔部分3の転写方法と同様であり、詳細な説明は省略する。まず、図11に示すように、透明な保護フイルム11a、光沢のある銀箔からなる転写箔シート12a、接着剤層13aが積層された転写フイルム10a(第2転写フイルム)を用意する。第1転写型21と同様な第3転写型21aを用意する。この第3転写型21aは、文字幅がt2の転写箔部分4に対応する部位が凹部24aとして形成され、転写箔部分4以外に対応する部位が凸状部23aとして形成されている。ステップ17として、図11に示すように、第3転写型21aの下型22aの上にベース材である紙部材14aと上記転写フイルム10aをセットする。ステップ18として、転写温度130℃、転写時間0.1秒で、第3転写型21aを加熱・加圧してホットスタンピングを行う。その結果、ステップ19として、転写フイルム10aに、転写箔シート12aの一部である転写箔部分4が第2形状部分として残され、この転写箔部分4の周囲の転写箔12a(非転写部分)が紙部材14aに転写される(図示省略)。
【0041】
次に、第4転写型31aを用意する。この第4転写型31aは第1実施形態の転写型31と同様な構成であって、文字幅がt2の転写箔部分4の転写部分に対応する部位が凸状部34aとして形成され、転写箔部分4以外(非転写部分)に対応する部位が凹部33aとして形成されている。ステップ20として、図12に示すように、第4転写型31aの下型32(第2転写型31の下型と同じ)の上に、転写箔部分3が転写された部材1をセットし、その上に上記転写箔部分4が残された転写フイルム10aをセットする。ステップ21として、転写温度110℃、転写時間6秒で、第4転写型を加熱・加圧してホットスタンピングを行う。その結果、ステップ22として、部材1の転写箔部分3の上に転写箔部分4が相似形で一回り小さく重ねて転写して接合され、図3(B)に示すような「M」の記号2が部材1の最表面に形成される。なお、図12に2点鎖線で示すように、シボ模様、波模様等の凹凸模様のフイルム15を転写フイルム10aと第4転写型31aの間に配置して押圧することで、転写箔部分4の表面に凹凸形状を付与するようにしても良い。
実施形態2では、転写箔部分3及び転写箔部分4の「M」の輪郭の外周転写箔を非転写箔部分として予め転写して除去した後に、皮革パネル1上に転写するので、転写箔部分3の端部3a及び転写箔部分4の端部4aの境界線(輪郭線)が鮮明に線引きされたように明確なラインで得られ、鮮明で意匠性に優れた「M」が得られる。特に、実施形態2では、転写箔部分3の上に転写箔部分4を重ねることで、より立体感に優れ、より意匠性に優れた部材を得ることができる。
【0042】
実施形態2では、転写箔部分3として黒色フイルム、転写箔部分4として光沢のある銀紙フイルムを使用したが、これに限られるものではなく、転写箔部分3を銀紙フイルム、転写箔部分4を黒色フイルムとしても良い。なお、黒色フイルムと銀紙フイルムに限られるものではなく、他の色箔やメタル箔を使用しても良い。両方とも光沢のある金色や銀色のメタル箔とすることもでき、逆に両方ともメタル箔でない色箔を使用することもできる。
【0043】
また、実施形態2では、先に転写した転写箔部分3と後から転写する転写箔部分4を相似形として形成し、鮮明に立体感を打ち出すようにしたが、両転写箔部分を非相似形として複雑な形状や複雑な色の組合せからなる転写箔部分を浮かび上がらせて形成するようにしても良い。
【0044】
(実施形態3)
実施形態3は、実施形態2と同様にして、記号「M」の転写箔部分3及び転写箔部分4を形成するものであり、実施形態2と異なる部分のみ説明し、共通部分の説明は省略する。図14及び図15に示すように、実施形態3が実施形態2と異なる部分は、第3転写型21a及び第4転写型31aで加熱・加圧して転写する際に、高周波電圧印可手段50によって、高周波電圧を付与して転写を行うことである。なお、転写箔12aとして導電性の銀紙を使用するので、図15に示すように、第4転写型31aでは、転写型転写フイルム10aの上に絶縁紙16をセットし、通電を遮断するようにする。このように、高周波電圧を付与すると、「M」の記号の境界(輪郭)が更にいっそう鮮明となり、更にいっそう浮かび上がった形状が得られた。
【0045】
なお、転写箔部分3を形成する第1転写金型及び第2転写金型についても、図示しないが、高周波電圧を付与するようにしても良い。
【0046】
また、実施形態3において、上記絶縁紙16を凹凸模様のフイルムとして形成し、転写フイルム10aと第4転写型31aの間に配置して押圧するようにして、転写箔部分4に対して、シボ模様、波模様等の凹凸形状を付与するようにしても良い(図示省略)。
【0047】
(実施形態4)
実施形態4は、図3(C)及び図3(D)に示すような記号「M」を転写して形成する場合であって、転写方法は、実施形態2又は実施形態3と同様であり、転写方法の詳細な説明は、省略する。
【0048】
図3(C)は転写箔部分の外観形状であって、図3(D)は図3(C)のA−A断面を示す。転写箔部分4'は、実施形態2の転写箔部分4と同じ形状であって、転写箔3'は実施形態2の転写箔3と異なり、転写箔4'の輪郭線に沿った形状に形成されている。即ち、転写箔4'の外側の輪郭線に沿って形成された大きめの「M」と、転写箔4'の内側の輪郭線に沿って形成された小さめの「M」とからなっている。断面形状としては、図3(D)に示すように、ベースの皮革に対して、まず転写箔3'が転写され、その上に、一部転写箔3'と重なるように転写箔4'が転写される。このような形状凹凸感を少なくして、2層の転写箔を鮮明に得ることができる。
【0049】
(その他実施形態)
その他の実施形態としては、第1転写フイルム(或いは第2転写フイルム)の転写箔シートから、所定形状の転写箔部分を残して、この転写箔部分の輪郭周囲を除去する方法として、第1転写型(或いは第3転写型)を使用しないで、化学エッチングや転写型による転写方法以外の機械的な方法で除去するようにしても良い。
【0050】
この実施形態の転写方法を図16に基づいて説明する。尚、実施形態1と同じものは同じ符号とし、その説明は簡略化する。第1ステップ1(S31)として、転写箔シートに保護フイルムを被覆した転写フイルムを用意する。ステップ2(S32)として、転写フイルムの転写箔シートから所定形状の転写箔部分を残して、転写箔部分の外周にある非転写箔部分を予め分離除去する。その結果、第3ステップ(S33)として、所定形状の転写箔部分が残された転写フイルムを作成する。ステップ4(S34)として、この作成した転写フイルムとパネル部材とを、所定形状の転写箔部分を転写する転写型にセットする。ステップ5(S35)として、転写型を加熱・加圧する。その結果、ステップ6(S36)として、部材パネル表面に転写箔部分が転写される。
【0051】
なお、ステップ4(S34)において、転写型を使用せずに、他の位置合わせ手段によって転写フイルムとパネル部材を押圧し転写しても良い。
【0052】
上記実施形態いずれにおいて、第1転写型(或いは第3転写型)では、予め転写箔部分2(3、4)の周囲を除去するだけであり、転写箔部分と非転写箔部分との熱伝達を防止するためには、この時の転写時間は短いほうが好ましく、短い時間とすればするほど転写温度を高くして、すばやく非転写部分を除去することできるので、より好ましい。特に、第1転写型(或いは第3転写型)の転写時間を第2転写型(或いは第4転写型)の転写時間よりも短くすることが転写箔3の端部3aや転写箔4の端部4aの境界を明確化する上で好ましい。なお、転写時間や転写温度は、部材表面の素材や転写部分の素材や形状・厚さなどによって異なるが、第1転写型(または第3転写型)では、転写時間は、非転写部分を受け部材に転写できる時間があれば良くて、非転写部分への影響をできるだけ少なくする上では短いほど好ましく、第1転写型(または第3転写型)では、転写温度が80℃〜170℃で転写時間が0.01〜5秒、特に転写温度が100℃〜150℃で転写時間が0.05〜2秒、とすることが好ましい。また、第2転写型(または第4転写型)では、転写時間は、転写部分を皮革などの部材に転写し、確実に接合するために、転写温度が80℃〜170℃で、転写時間が0.1〜10秒、特に転写温度が100℃〜150℃で、転写時間が0.5〜7秒とすることが好ましい。
【0053】
また、実施形態1又は2において、各転写型では、加熱・加圧して転写してホットスタンピングするようにしたが、実施形態3と同様に全部の金型で一部の金型でも高周波電圧をかけて転写するようにしても良い。高周波電圧を付与すると、転写される形状部分がより鮮明に浮かび上がるので好ましい。
【0054】
または、上記実施形態において、加熱・加圧する金型に替えて、加圧する金型のみにして、簡単な金型とし、コストダウンを図っても良い。この場合にも、高周波電圧を付加して鮮明さを出すようにしても良い。
【0055】
上記実施形態のいずれも、非転写部分を受ける受け部材として、コスト的に優れる紙部材を用いた。この受け部材は、非転写部分を転写フイルムから明確に取り除くためには、比較的に高硬度であり、即ち、転写するために受け部材に押付けた際に転写部分と非転写部分との沈み量の差が少なく、転写部分と非転写部分との境界が鮮明に区別されることが好ましく、紙部材に限らず、合成樹脂材などの他の板材(またはシート材)とすることも可能である。
【0056】
上記実施形態のいずれも、バスケットボールの皮革を転写される部材としているが、これに限られるものではなく、他の部材でも良い。特に、部材表面がクッション性を備えるソフト部材の場合には、転写のために転写箔をソフト部材に加熱・押圧した際に弾力性を有するので、転写箔の形状の鮮明さが浮かび上がり難いが、本発明は、このようなソフト部材であっても、鮮明な転写を可能とするものである。ソフト部材の好適な例としては、例えば球技用ボールのように、最表面に弾力性があるものや、表面にシボ模様等の凹凸があり、転写時に押圧するとシボ模様が部分的にでも全てでも潰れるものなどである。本発明での球技用ボールとしては、十分な表面磨耗強度および吸汗性が良好であるために優れたノンスリップ性を示すボール用皮革様パネルに好適であり、特にバスケットボール、アメリカンフットボール、ハンドボール、ラグビーボール等のボール用皮革に使用することが好ましい。
【0057】
上記実施形態のいずれも、転写箔「M」の形状は1例であって、この文字に限られるものではなく、他の文字、記号、図案、模様、印、またはそれらの組合せであっても良い。例えば、種々のデザイン模様、商品名や製造者のロゴマーク、キャッチフレーズ、商標名、各種球技協会の認定マーク、球技種目名などである。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上説明したように、本発明に関わる転写方法は、皮革材、繊維材、合成樹脂材等に利用可能である。特に、本発明に関わる転写方法は、表面が転写されることで窪むソフト部材や皮革部材、表面の凹凸が目立つ程度に形成されているソフト部材(例えば球技用ボール、靴、衣服等)に対しても、転写部分と非転写部分との境界(輪郭)を鮮明に打ち出すことが可能であり、立体性や意匠性を要求される転写を行うことを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施形態1に係わり、バスケットボールの外形形状を示す。
【図2】図1のバスケットボールの部分皮革パネルの外観図を示す。
【図3】図2の「M」を拡大表示した図を示す。図3(A)は1層の「M」、図3(B)は2層からなる「M」の例を拡大表示した図を示す。図3(C)及び図3(D)は、別の2層からなる「M」の例を拡大表示した図を示す。
【図4】実施形態1に係わり、転写フイルムの部分断面図を示す。
【図5】実施形態1に関わり、第1転写型での転写状態を説明する図を示す。
【図6】図5の転写後に得られた転写フイルムと受け部材の部分断面図を示す。
【図7】実施形態1に関わり、第2転写型での転写状態を説明する図を示す。
【図8】図7の転写後に得られた皮革パネルの部分断面図を示す。
【図9】図8の部分拡大断面図を示す。
【図10】実施形態1に関わり、転写方法を説明するステップを示す図である。
【図11】実施形態2に関わり、第3転写型での転写状態を説明する図を示す。
【図12】実施形態2に関わり、第4転写型での転写状態を説明する図を示す。
【図13】実施形態2に関わり、転写方法を説明するステップを示す図である。
【図14】実施形態3に関わり、第3転写型での転写状態を説明する図を示す。
【図15】実施形態3に関わり、第4転写型での転写状態を説明する図を示す。
【図16】別の実施形態に関わり、転写方法を説明するステップを示す図である。
【符号の説明】
【0060】
B ボール
1 部材
2 記号
3 転写箔
4 転写箔
5 凸形状
10 転写フイルム
11 保護フイルム
12 転写箔シート
13 接着剤層
14 受け部材
21 第1転写型
31 第2転写型
10a 第2転写フイルム
11a 保護フイルム
12a 第2転写箔シート
13a 第2接着剤層
21a 第3転写型
31a 第4転写型
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写箔シートに保護フイルムを被覆した転写フイルムを用いて、所定形状の転写箔部分を部材表面へ転写する転写箔の転写方法であって、
該転写フイルムの該転写箔シートから該所定形状の該転写箔部分を残して、該転写箔部分の外周にある非転写箔部分を予め分離除去して、該所定形状の該転写箔部分が残された転写フイルムを作成し、
この作成した転写フイルムと上記部材とを加圧して、該部材表面に該転写箔部分を転写することを特徴とする部材表面への転写箔の転写方法。
【請求項2】
請求項1記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、該転写フイルムの該転写箔シートから該所定形状の該転写箔部分を残して、該転写箔部分の外周にある非転写箔部分を予め分離除去する際に、該転写箔部分と該非転写箔部分との境界を機械的に切断して分離除去することを特徴とする部材表面への転写箔の転写方法。
【請求項3】
転写箔シートに保護フイルムを被覆した転写フイルムを用いて、所定形状の転写箔部分を部材表面へ転写する転写箔の転写方法であって、
該転写フイルムの該転写箔シートから該所定形状の該転写箔部分を残して、該転写箔部分の外周にある非転写箔部分を予め転写する第1転写部を備えた第1転写型に、該非転写箔部分の受け部材と該転写フイルムをセットして加圧して、該受け部材に該非転写箔部分を転写し、
このことによって、該所定形状の該転写箔部分が残された転写フイルムを作成し、
この作成した転写フイルムと上記部材とを、該所定形状の該転写箔部分を転写する第2転写型にセットして加圧して、該部材表面に該転写箔部分を転写することを特徴とする部材表面への転写箔の転写方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、
部材表面がクッション性を備えるソフト部材であって、該転写フイルムの該転写箔部分を該部材表面に加圧して転写することによって、該表面が押圧されて窪み、該転写箔部分が窪んだ表面に形成されることを特徴とする部材表面への転写箔の転写方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、
上記転写箔シートが光沢を有するメタル箔からなることを特徴とする部材表面への転写箔の転写方法。
【請求項6】
請求項3ないし5のいずれか1つに記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、
該第1転写型の転写時間が該第2転写型の転写時間よりも短いことを特徴とする部材表面への転写箔の転写方法。
【請求項7】
請求項6記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、
該第1転写型及び第2転写型は共に、加熱・加圧して転写する転写型であって、該第1転写型では、転写温度が80℃〜170℃で、転写時間が0.01〜5秒であり、該第2転写型では、転写温度が80℃〜170℃で、転写時間が0.1〜10秒であることを特徴とする部材表面への転写箔の転写方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1つに記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、
さらに、上記転写箔シートから作成された上記所定形状の上記転写箔部分の上に重ねて転写される第2転写部分を備える第2転写箔シートに第2保護フイルムを被覆した第2転写フイルムを用意し、
該第2転写フイルムの該第2転写箔シートから該第2転写箔部分を残して、該第2転写箔部分の外周にある第2非転写箔部分を予め分離除去して、該第2転写箔部分を有する第2転写フイルムとして作成し、
該第2転写フイルムの該第2転写箔部分を、該部材の該表面に形成された上記転写箔部分の上に重ねて、第2転写箔部分を転写する別の転写型にセットして加圧して、該部材表面の該転写箔部分の上に該第2転写箔部分を転写することを特徴とする部材表面への転写箔の転写方法。
【請求項9】
請求項3ないし7のいずれか1つに記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、
さらに、上記転写箔シートから作成された上記所定形状の上記転写箔部分の上に重ねて転写される第2転写部分を備える第2転写箔シートに第2保護フイルムを被覆した第2転写フイルムを用意し、
該第2転写フイルムの該第2転写箔シートから該第2転写箔部分を残して、該第2転写箔部分の外周にある第2非転写箔部分を予め転写する第3転写型にセットして加圧して、該第2転写箔部分を有する第2転写フイルムとして作成し、
該第2転写フイルムの該第2転写箔部分を、該部材の該表面に形成された上記転写箔部分の上に重ねて、第2転写箔部分を転写する第4転写型にセットして加圧して、該部材表面の該転写箔部分の上に該第2転写箔部分を転写することを特徴とする部材表面への転写箔の転写方法。
【請求項10】
請求項8又は9記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、該第2転写箔部分は、該所定形状の該転写箔部分の上に部分的に重ねられて形成され、該所定形状の該転写箔部分の一部と該第2転写箔部分とが部材表面に露出して形成されることを特徴とする部材表面への転写箔の転写方法。
【請求項11】
請求項8ないし10のいずれか1つに記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、該所定形状の該転写箔部分と該第2転写箔部分の一方がメタル箔であって、他方が非メタル箔からなることを特徴とする部材表面への転写箔の転写方法。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1つに記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、該部材が球技用のボールの皮革であることを特徴とする部材表面への転写箔の転写方法。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1つに記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、上記転写型にセットして加圧する際に、高周波電圧を付与することを特徴とする部材表面への転写箔の転写方法。
【請求項1】
転写箔シートに保護フイルムを被覆した転写フイルムを用いて、所定形状の転写箔部分を部材表面へ転写する転写箔の転写方法であって、
該転写フイルムの該転写箔シートから該所定形状の該転写箔部分を残して、該転写箔部分の外周にある非転写箔部分を予め分離除去して、該所定形状の該転写箔部分が残された転写フイルムを作成し、
この作成した転写フイルムと上記部材とを加圧して、該部材表面に該転写箔部分を転写することを特徴とする部材表面への転写箔の転写方法。
【請求項2】
請求項1記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、該転写フイルムの該転写箔シートから該所定形状の該転写箔部分を残して、該転写箔部分の外周にある非転写箔部分を予め分離除去する際に、該転写箔部分と該非転写箔部分との境界を機械的に切断して分離除去することを特徴とする部材表面への転写箔の転写方法。
【請求項3】
転写箔シートに保護フイルムを被覆した転写フイルムを用いて、所定形状の転写箔部分を部材表面へ転写する転写箔の転写方法であって、
該転写フイルムの該転写箔シートから該所定形状の該転写箔部分を残して、該転写箔部分の外周にある非転写箔部分を予め転写する第1転写部を備えた第1転写型に、該非転写箔部分の受け部材と該転写フイルムをセットして加圧して、該受け部材に該非転写箔部分を転写し、
このことによって、該所定形状の該転写箔部分が残された転写フイルムを作成し、
この作成した転写フイルムと上記部材とを、該所定形状の該転写箔部分を転写する第2転写型にセットして加圧して、該部材表面に該転写箔部分を転写することを特徴とする部材表面への転写箔の転写方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、
部材表面がクッション性を備えるソフト部材であって、該転写フイルムの該転写箔部分を該部材表面に加圧して転写することによって、該表面が押圧されて窪み、該転写箔部分が窪んだ表面に形成されることを特徴とする部材表面への転写箔の転写方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、
上記転写箔シートが光沢を有するメタル箔からなることを特徴とする部材表面への転写箔の転写方法。
【請求項6】
請求項3ないし5のいずれか1つに記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、
該第1転写型の転写時間が該第2転写型の転写時間よりも短いことを特徴とする部材表面への転写箔の転写方法。
【請求項7】
請求項6記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、
該第1転写型及び第2転写型は共に、加熱・加圧して転写する転写型であって、該第1転写型では、転写温度が80℃〜170℃で、転写時間が0.01〜5秒であり、該第2転写型では、転写温度が80℃〜170℃で、転写時間が0.1〜10秒であることを特徴とする部材表面への転写箔の転写方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1つに記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、
さらに、上記転写箔シートから作成された上記所定形状の上記転写箔部分の上に重ねて転写される第2転写部分を備える第2転写箔シートに第2保護フイルムを被覆した第2転写フイルムを用意し、
該第2転写フイルムの該第2転写箔シートから該第2転写箔部分を残して、該第2転写箔部分の外周にある第2非転写箔部分を予め分離除去して、該第2転写箔部分を有する第2転写フイルムとして作成し、
該第2転写フイルムの該第2転写箔部分を、該部材の該表面に形成された上記転写箔部分の上に重ねて、第2転写箔部分を転写する別の転写型にセットして加圧して、該部材表面の該転写箔部分の上に該第2転写箔部分を転写することを特徴とする部材表面への転写箔の転写方法。
【請求項9】
請求項3ないし7のいずれか1つに記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、
さらに、上記転写箔シートから作成された上記所定形状の上記転写箔部分の上に重ねて転写される第2転写部分を備える第2転写箔シートに第2保護フイルムを被覆した第2転写フイルムを用意し、
該第2転写フイルムの該第2転写箔シートから該第2転写箔部分を残して、該第2転写箔部分の外周にある第2非転写箔部分を予め転写する第3転写型にセットして加圧して、該第2転写箔部分を有する第2転写フイルムとして作成し、
該第2転写フイルムの該第2転写箔部分を、該部材の該表面に形成された上記転写箔部分の上に重ねて、第2転写箔部分を転写する第4転写型にセットして加圧して、該部材表面の該転写箔部分の上に該第2転写箔部分を転写することを特徴とする部材表面への転写箔の転写方法。
【請求項10】
請求項8又は9記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、該第2転写箔部分は、該所定形状の該転写箔部分の上に部分的に重ねられて形成され、該所定形状の該転写箔部分の一部と該第2転写箔部分とが部材表面に露出して形成されることを特徴とする部材表面への転写箔の転写方法。
【請求項11】
請求項8ないし10のいずれか1つに記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、該所定形状の該転写箔部分と該第2転写箔部分の一方がメタル箔であって、他方が非メタル箔からなることを特徴とする部材表面への転写箔の転写方法。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1つに記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、該部材が球技用のボールの皮革であることを特徴とする部材表面への転写箔の転写方法。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1つに記載の部材表面への転写箔の転写方法であって、上記転写型にセットして加圧する際に、高周波電圧を付与することを特徴とする部材表面への転写箔の転写方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−137202(P2008−137202A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−323875(P2006−323875)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000138244)株式会社モルテン (105)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000138244)株式会社モルテン (105)
【Fターム(参考)】
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