説明

部材間の隙間を塞ぐ方法、隙間材、桟橋

【課題】ドルフィン桟橋を構成するコンクリート部材などの部材間の隙間を塞ぐ隙間材が外れてしまうのを防ぐ。
【解決手段】コンクリート部材11間の隙間を塞ぐ隙間材10は、中空に形成された柔軟な型材20と、型材20がコンクリート部材11間の隙間に挿入された状態で、型材20に充填された充填材30と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、桟橋を構成するコンクリート部材などの部材間を隙間材で塞ぐ方法に関する。また、本発明は、この方法で用いられる隙間材及びこの隙間材を備えた桟橋にも関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、桟橋として、海底に打設された鋼管杭やコンクリート杭などにより支持された複数のコンクリート部材からなるドルフィン桟橋が広く用いられている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このようなドルフィン桟橋は、高波や地震等により変形を受けても破損しないように、複数のコンクリート部材の間に隙間を設け、この隙間に挿入されたゴムなどの隙間材を介装している。そして、高波や地震等でコンクリート部材が移動した場合には、隙間材がこの移動に合わせて変形することにより、コンクリート部材の破損を防止することができる。
【特許文献1】特開2006−200146号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようにコンクリート部材間に介装された隙間材は、高波により流されてしまったり、強風により飛ばされてしまったりする虞があり、その場合には新たに隙間材を設置する必要があった。
【0005】
本発明は上記の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、ドルフィン桟橋を構成するコンクリート部材などの部材間の隙間を塞ぐ隙間材が外れてしまうのを防ぐことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の部材の隙間を塞ぐ方法は、隣接する部材間の隙間を塞ぐ方法であって、中空に形成された柔軟性を有する型材を前記隙間に挿入し、前記型材の中に流動性材料を充填することを特徴とする。上記の部材の隙間を塞ぐ方法であって、前記流動性材料は時間が経過すると硬化する性質を有してもよい。また、前記部材は、桟橋を構成するコンクリート部材であってもよい。
【0007】
また、本発明の隙間材は、隣接する部材間の隙間を塞ぐ隙間材であって、中空に形成された柔軟性を有する型材と、前記型材が前記隙間に挿入された状態で前記型材の中に充填された流動性材料と、を備えることを特徴とする。上記の隙間材は、前記部材の表面に係合するように、少なくとも上部に横方向に突出するように形成された係合部を備えてもよい。また、前記部材は、桟橋を構成するコンクリート部材であってもよい。
【0008】
また、本発明の桟橋は、隙間をあけて配置された複数のコンクリート部材と、中空に形成された柔軟性を有する型材、及び前記型材が前記コンクリート部材間の隙間に挿入された状態で前記型材の中に充填された流動性材料からなる隙間材と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、型材に流動性材料を充填することにより隙間材が部材間の隙間形状に合わせて隙間を塞ぐように変形する。これにより、隙間材が部材により挟持されるため、高波などにより隙間材が流れ出すことを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<第1実施形態>
以下、本発明の隙間材の第1実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態の隙間材10を示す図であり、図2〜図4は隙間材10を用いて桟橋を構築する方法を説明するための図である。図4に示すように、桟橋100は、ドルフィン桟橋であり、海底に打設された鋼管杭やコンクリート杭などの杭材12により支持され、隙間をあけて並置された数メートル程度の高さの複数のコンクリート部材11と、これらのコンクリート部材11の間の隙間に挿入された隙間材10とで構成される。
【0011】
図1に示すように、隙間材10はコンクリート部材11と略同じ高さ(すなわち、高さ数メートル)を有し、隙間材10の上方に水平方向に数十センチ程度突出した係合部10Aが形成されている。これらの係合部10Aがコンクリート部材11の上面に当接することにより、隙間材10はコンクリート部材11に支持されている。
【0012】
隙間材10は、中空に形成された型材20と、型材20内に充填された充填材30とからなる。型材20はゴムなどの柔軟性を有する材料からなり、上部に充填材30を充填するための充填口21が設けられている。また、充填材30はシリコンゴムなどの硬化性流動体からなり、型材20に充填される際には流動性を有するが、時間の経過とともに硬化して弾性体となる。
【0013】
隙間材10が充填材30が硬化することにより弾性体となるため、隣接するコンクリート部材11が高波や地震などの影響により相対的に移動しても、隙間材10がこの移動に合わせて変形することができ、コンクリート部材11の破損を防止できる。
【0014】
以下、上記説明した隙間材10を用いて桟橋を構築する方法を説明する。
まず、図2に示すように、海底に鋼管杭やコンクリート杭などの杭材12を打設し、打設した杭材12の上方に複数のコンクリート部材11を隙間を空けて設置する。
次に、図3に示すように、型材20をコンクリート部材11間の隙間に挿入する。この際、型材20には充填材30が充填されておらず、変形させることができるので、容易にコンクリート部材11の間の隙間に挿入することができる。
【0015】
次に、コンクリート部材11間に挿入した型材20の充填口21より充填材30を充填する。型材20に充填材30を充填することにより隙間材10が膨張する。充填材30は、流動性を有するため、コンクリート部材11の隙間に合わせて変形し、この隙間を塞ぐことができる。
【0016】
時間が経過し、型材20内に充填された充填材30が硬化することで、隙間材10は硬化した充填材30の周囲が弾性体である型材20で覆われたものとなる。これにより、隙間材10はコンクリート部材11の隙間に合致した形状となるように弾性変形し、コンクリート部材11によりしっかりと挟持される。さらに、隙間材10の上方の係合部10Aがコンクリート部材11に当接しているため、隙間材10が下方に抜けるのを防止できる。
以上の工程により、桟橋100を構築することができる。
【0017】
本実施形態によれば、充填材30を充填することにより隙間材10がコンクリート部材11の間の隙間の形状に合わせて変形し、この状態で充填材30が硬化することにより、隙間材10はコンクリート部材11の隙間に合致した形状の弾性体となる。これにより、隙間材10がコンクリート部材11によりしっかりと挟持されるため、高波や強風が隙間材10に作用しても、隙間材10が外れることがなくなる。
【0018】
さらに、隙間材10の上方に設けた係合部10Aがコンクリート部材11と当接するため、隙間材10が下方に抜け落ちるのを防止できる。
【0019】
なお、上記実施形態では、隙間材10の上方に係合部10Aを設ける構成としたが、これに限らず、隙間材10の下方にも係合部を設けてもよい。かかる構成によれば、上方及び下方に設けた係合部がコンクリート部材11を挟持するため、より強固に隙間材10がコンクリート部材11に固定される。
【0020】
また、上記実施形態では、隙間材10全体を中空である(すなわち、係合部10A)場合について説明したが、これに限らず、係合部10Aを中実な構成としてもよい。かかる構成によれば、充填剤30が硬化するまで、この係合部10Aがコンクリート部材11の上面に当接することにより、隙間材10の荷重を支持し、隙間材10が脱落することを防止できる。
【0021】
<第2実施形態>
以下、本発明の隙間材の第2実施形態を説明する。
図5は、本発明の隙間材の第2実施形態を示す図である。同図に示すように、本実施形態の隙間材50は、型材60と、型材60に充填されたシリコンゴムなどの硬化性流動体からなる充填材70とで構成される。型材60は、板状に形成されたゴムなどの柔軟性を有する材料からなり、中空の平板状に形成されている。上面の両端付近には吊り下げヒンジ62が設けられ、上面の中央付近には充填口61が設けられている。
【0022】
以下、この隙間材50を用いて、桟橋を構築する流れを説明する。
まず、海底に鋼管杭やコンクリート杭などの杭材12を打設し、打設した杭材12の上方に複数のコンクリート部材11を隙間を空けて配置する。
次に、図6に示すように、吊り下げヒンジ62に通したワイヤー63により型材60を揚重し、コンクリート部材11の間に型材60を挿入する。
【0023】
次に、型材60の充填口61より充填材70を充填する。充填材70は流動性を有するため、隙間材50がコンクリート部材11の間の隙間の形状に合わせて変形し、コンクリート部材11の間の隙間を塞ぐ。この状態で、充填材70が硬化することにより、隙間材10がコンクリート部材11の隙間に合致した形状の弾性体となり、コンクリート部材11によりしっかりと挟持される。
次に、図7に示すように、型材60の吊り下げヒンジ62を切断する。
以上の工程により桟橋200が構築される。
【0024】
本実施形態の隙間材50によれば、第1実施形態と同様に、隙間材50がコンクリート部材11によりしっかりと挟持されるため、高波や強風が隙間材50に作用しても、隙間材50が外れることが無くなる。
【0025】
なお、上記各実施形態では、充填材30,70を充填することによりコンクリート部材11の間の隙間に隙間材10、50を固定していたが、さらに、隙間材10、50のコンクリート部材11と当接する面に接着剤等を塗布してもよい。これにより、より強固に隙間材10、50をコンクリート部材11に固定することができる。
【0026】
また、上記各実施形態では、型材20、60を弾性体からなるものとしたが、これに限らず、コンクリート部材11の隙間に挿入することができ、充填材30,70を充填した際に膨張するような柔軟性を有する材料であればよい。また、充填材30,70をシリコンゴムからなるものとしたが、これに限らず、型材20、60を完全に密閉することができれば充填材30,70として時間が経過しても硬化しない液体や流動体を用いることも可能である。
【0027】
また、上記各実施形態では、桟橋100、200を新築する場合に隙間材10、50を用いる場合について説明したが、これに限らず、高波などにより隙間材10、50が流されてしまった際に桟橋100、200を補修する場合などにも用いることができる。また、桟橋に限らず、高架などの複数の部材により構成された構造物の部材間の隙間を塞ぐ場合に広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1実施形態の隙間材の構成を示す図である。
【図2】第1実施形態の隙間材を用いて桟橋を構築する方法を説明するための図(その1)である。
【図3】第1実施形態の隙間材を用いて桟橋を構築する方法を説明するための図(その2)である。
【図4】第1実施形態の隙間材を用いて桟橋を構築する方法を説明するための図(その3)である。
【図5】第2実施形態の隙間材の構成を示す図である
【図6】第2実施形態の隙間材を用いて桟橋を構築する方法を説明するための図(その4)である。
【図7】第2実施形態の隙間材を用いて桟橋を構築する方法を説明するための図(その5)である。
【符号の説明】
【0029】
10、50 隙間材
10A、10B 係合部
11 コンクリート部材
12 杭材
20、60 型材
21、61 充填口
30、70 充填材
62 吊り下げヒンジ
100,200 桟橋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する部材間の隙間を塞ぐ方法であって、
中空に形成された柔軟性を有する型材を前記隙間に挿入し、
前記型材の中に流動性材料を充填することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記流動性材料は時間が経過すると硬化する性質を有することを特徴とする請求項1記載の部材間の隙間を塞ぐ方法。
【請求項3】
前記部材は、桟橋を構成するコンクリート部材であることを特徴とする請求項1又は2記載の部材間の隙間を塞ぐ方法。
【請求項4】
隣接する部材間の隙間を塞ぐ隙間材であって、
中空に形成された柔軟性を有する型材と、
前記型材が前記隙間に挿入された状態で前記型材の中に充填された流動性材料と、を備えることを特徴とする隙間材。
【請求項5】
前記隙間材は、前記部材の表面に係合するように、少なくとも上部に横方向に突出するように形成された係合部を備えることを特徴とする請求項4記載の隙間材。
【請求項6】
前記部材は、桟橋を構成するコンクリート部材であることを特徴とする請求項4又は5記載の隙間材。
【請求項7】
隙間をあけて配置された複数のコンクリート部材と、
中空に形成された柔軟性を有する型材、及び前記型材が前記コンクリート部材間の隙間に挿入された状態で前記型材の中に充填された流動性材料からなる隙間材と、を備えることを特徴とする桟橋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−46811(P2009−46811A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−211039(P2007−211039)
【出願日】平成19年8月13日(2007.8.13)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(595095629)中電環境テクノス株式会社 (44)
【Fターム(参考)】