説明

配位ポリマーを備えるポリマー電解質膜

本発明は、特に燃料電池の、ポリマー電荷質膜、およびポリマー電解質膜の使用に関する。本発明はさらに、好ましくは燃料電池の、ポリマー電解質膜、特にプロトン伝導性ポリマー電解質膜を製造するための方法に関する。そのポリマー電解質膜は、配位ポリマー(金属有機骨格)を含むポリマー電解質膜によってさらに展開される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に燃料電池の、ポリマー電解質膜、ならびにポリマー電解質膜の使用に関する。さらに、本発明は、好ましくは燃料電池の、特にプロトン伝導性のポリマー電解質膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、従来のエネルギー発生方法に対する将来を見通した低排出の代替と考えられる。ポリマー電解質膜燃料電池(PEM)は、移動体利用について特に関心がもたれている。プロトン伝導性ポリマー膜は、この種の燃料電池の中心的な構成要素である。デュポン(DuPont)によって製造されたスルホン酸側基を有するペルフルオロポリマーであるナフィオン(Nafion;登録商標)およびアサヒ(Asahi)からの同様の製品は、この目的にとって主要な膜材料であり続けている。
【0003】
燃料電池の膜材料として他のポリマーを使用することについて多数の調査が存在する。しかし、これらのポリマーは、ほとんど専らスルホン化された材料であり、これらのプロトン伝導性は、スルホン酸基に起因し得る。
【0004】
モノマーとしてペルフルオロビニルオキシ置換ホスホン酸に基づき、次いでテトラフルオロエチレンおよびペルフルオロプロピルビニルエーテルと共重合される、ホスホン酸側基を有するペルフルオロポリマーの合成は、刊行物(非特許文献1)に記載されている。燃料電池におけるこれらの種類のポリマーの使用については、特許文献1に記載されている。
【0005】
ホスホン酸側基を有するポリマー由来の他の燃料電池の膜は、例えば、特許文献2に記載されている。燃料電池における使用のための他のポリマーは、特許文献3に記載されている。これらは、スルホン酸基とホスホン酸基との混合官能基化を有するフッ素を含有しないスチレンコポリマーである。
【0006】
ポリマー電荷質膜燃料電池(PEM燃料電池)は、2つの電極からなり、これはプロトン伝導性膜(ポリマー電荷質膜またはプロトン交換膜)によって互いに分離されている。この電極は、例えば、炭素マットからなり、これは白金で蒸着され、外部の電気回路を介して互いに結合されている。水素と酸素とから水への変換が起こり得るために、プロトン伝導性膜は、湿らせ(moisten)なければならない。水素燃料は、常に陽極に供給される。陰極は、常に酸素が供給される。2つのタイプのPEM燃料電池が、開発中である:低温電池(約90℃まで)および高温電池(約180℃まで)。
【0007】
低温電池は60年代に開発された。その当時、スルホン化ポリスチレン膜が電解質としての役目を果した。1969年から、デュポン(DuPont)によって開発されたナフィオン(Nafion;登録商標)膜が、PEM燃料電池に取り付けられてきた。低温電池は、一酸化炭素(CO)に対して敏感に反応する。このガスは、陽極触媒を妨害し得、電力損失をもたらす。この膜は、プロトンを伝導させ得るために湿らせなければならない。
【0008】
高温電池は、COおよび他の不純物に対して敏感に反応しない。燃料電池のより高い作動温度は、発生させた熱のより有効な利用を可能とするので家庭エネルギーとして関心がもたれている。この膜はプロトンを水なしで伝導させるので、湿らせる必要はない。
【0009】
高温電池用の膜に関して既に解決策が提案されている。例えば、特許文献4には、高温電池に対して直列の膜が示唆されており、これはポリマーと有機または無機材料との組合せ(無機−有機複合膜)からなる。
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,087,032号明細書
【特許文献2】米国特許第5,422,411号明細書
【特許文献3】米国特許第5,679,482号明細書
【特許文献4】米国特許第6,387,230号明細書
【非特許文献1】M.ヤマベ(M. Yamabe)、K.アキヤマ(K. Akiyama)、Y.アカツカ(Y. Akatsuka)、M.カトウ(M. Kato)、「新規なホスホン化ペルフルオロカーボンポリマー(Novel phosphonated perfluorocarbon polymers)」、Eur.Polym.J.36(2000年)1035〜41頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、高温、特に100℃を超える温度で燃料電池を作動させることができるプロトン伝導性の膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、特に燃料電池の、ポリマー電解質膜によって解決され、これはさらに、そのポリマー電解質膜が配位ポリマー(金属有機骨格)を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、電気化学的利用のための新規なプロトン伝導性(proton-conducting or proton-conductive)膜が提供され、これは、ポリマー/MOF混合物(MOF:金属有機骨格)からできていて、高温電池に好適である。
【0014】
本発明によれば、既知のポリマー電解質のプロトン伝導性をMOFの混合物によって高温でかなり増加させることができる。
【0015】
本発明による膜を製造するために、例えば、スルホン化ポリ(エーテルエーテルケトン)、すなわちSPEEKでできているポリマーを最初に極性有機溶媒に溶解する。次いで、微細な結晶性MOF粒子をこの溶液に加える。キャスティング後、このように製造された複合膜を乾燥する。
【0016】
本発明の決定的な利点は、MOFを用いる複合膜が、PEM燃料電池用膜として使用されなかったことである。さらに、高温で、本発明による膜のプロトン伝導性が、例えば、ナフィオン(Nafion;登録商標)でできている従来の膜についてより高いことである。
【0017】
本来なら膜製造の標準のポリマーに配位ポリマーを加えることによって、新しい特性を有するポリマー電解質膜を製造することができる。これらの特性は、それでできた膜の高い透過性および高い選択性を可能にする。永続的な多孔性を有する有機金属骨格構造である配位ポリマーを第1のポリマーに加えると、複合材料または対応する複合膜の気体透過性は従来の膜と比べて同じ厚みで増加させることができる。これは、有機金属骨格構造(以後MOFという)の多孔性によってもたらされる、複合材料の内部の比較的大きな、接近し得る容積のためである。
【0018】
配位ポリマーは、好ましくは結晶形態、特に結晶クラスターで利用できる。結晶クラスターは、好ましくは約0.1μmから50μm、特に好ましくは0.4μmから10μmの伸長を有する。複合膜に関して、伸長は、好ましくは0.1μmから1μmの範囲、特に0.5μmである。配位ポリマーは、好ましくは触媒活性である。選択性は、対応する吸着選択性骨格構造を用いる場合、対応して増加させることができる。対応する配位ポリマーまたは有機金属骨格構造(金属有機骨格のMOF)の場合、多くの低分子リガンドでできている主鎖を含み、金属錯体によって、従って配位結合またはイオン結合によって一緒に維持されるポリマーが提供される。配位ポリマーの金属中心の除去は通常、低分子製品についてポリマー鎖の分解とともに起こる。
【0019】
膜は、好ましくは共有結合して、負に帯電した官能基を有する。すなわち、膜は、多価電解質層を有し、ここで、そのイオン性基は、ペルフルオロおよび/または炭化水素ベースのポリマー骨格またはポリマーに結合される。
【0020】
特にプロトン伝導性のポリマー電荷質のための膜として用いることができる具体的なポリマーには、ナフィオン(Nafion;登録商標)ならびに/あるいは、特にスルホン化、ホスホン酸化またはドープされた、ポリ(アミドイミド)、ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(エーテルエーテルケトン)、ポリ(エーテルケトンケトン)、ポリ(エーテルイミド)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(フェノキシベンゾイルフェニレン)、ポリ(ベンゾイミダゾール)およびポリ(アゾール)などがある。
【0021】
これについて、膜ポリマーは、酸伝導性基、例えば、スルホンカルボキシル、ホスホン、スルホンイミドまたはホウ酸の基を有する。ポリ(アミドイミド)、ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(エーテルエーテルケトン)、ポリ(エーテルイミド)、ポリ(ホスファゼン)およびポリ(フェノキシベンジルフェニレン)でできているポリマーは、それによりスルホン、カルボキシル、ホスホンまたはスルホンイミドの基を含む。ポリ(ベンゾイミダゾール)またはポリ(アゾール)でできているポリマーは、スルホン、カルボキシル、ホスホン、スルホンイミドまたはホウ酸の基を含むことができる。
【0022】
特に好ましいポリマー材料は、スルホン化ポリ(エーテルエーテルケトン)、SPEEKであり、これは以下の構造:
【化1】

の繰返し単位を有する。
【0023】
SPEEKの好ましいスルホン化レベルは、70%未満、特に60%未満、および好ましくは50%未満である。約50%のスルホン化レベルを有するSPEEK膜が、ナフィオン(Nafion;登録商標)に比べて直接メタノール燃料電池(DMFC)に関してより良好な性能を有することが研究により示されている(ヤン B.(Yang B.)、マンシラム A.(Manthiram A.)、「直接メタノール燃料電池用スルホン化ポリ(エーテルエーテルケトン)膜(Sulfonated Poly(ether ether ketone) membranes for direct methanol fuel cells)」、Electrochemical and Solid-State Letters 6(2003年)A229〜A231頁)を参照)。
【0024】
好ましい微細多孔粒子は、配位ポリマー、すなわち、いわゆる金属有機骨格(MOF)の粒子である。配位ポリマーまたはMOFは、有機リンカーおよび遷移金属、またはクラスターでできており、ここで両単位は三次元オープン骨格構造を有するブロックを形成する。分子的に形成されたブロックからのこれらの合成は、目標とされたその特性の改良の可能性を与え、これは、その金属、その結合または結合リガンドによって決定することができる。作り出された中空領域の大きさおよび化学的環境は、有機単位の長さおよび官能性によって規定される。
【0025】
多孔性固体の既知の物質クラスは、金属有機骨格(MOF)または配位ポリマーと呼ばれる。アルフレッド ウェルナー(Alfred Werner)によって開発された配位結合の理論[A.ウェルナー(A. Werner)、Z.Anorg.Allg.Chem.3(1893年)267頁]は、錯体無機化学の実験結果を理解することを始めて可能にした。安定なMOFは、ジアミンまたは二価酸のような錯体形成可能な有機分子を溶解塩に加えることによって得られる。配位中心としての金属イオンによって与えられる格子点間の距離は、特に有機成分の構造によって広範囲に設定し、細孔性ないしメソ多孔性の物質をもたらすことができる。有機成分の官能基の距離間隔は、主に孔径を規定し;金属成分の種類は触媒特性の可能性を決定する。したがって、MOFまたは配位ポリマーを変化させることができ、実質的に文書で証明されている[S.キタガワら(S. Kitagawa et al.)、Angew. Chem. Int. Ed.43(2004年)2334頁]。
【0026】
配位ポリマーの構造によって、気体および蒸気の吸着および凝縮のために大きな、内部容積を用いることができる。他の可能性がある用途は、MOFの金属成分に由来する。金属または金属塩の触媒特性はまた、MOFへの化学変換中に元の状態のままであるか、または変化する。改善された触媒特性はまた、容易に接近し得る内部表面によって作り出すことができる。MOFは一般に、300℃を超えるまで耐温度性であり、格子距離または孔径に依って0.8から0.2g/cmの低密度を有する。触媒特性を有するMOFは、例えば、ヒドロホルミル化および水和[フォックス(Fox)およびペサ(Pesa)に付与された米国特許第4,504,684号明細書]またはエポキシ化[ミュラーら(Muller et al.)に付与された米国特許第6,624,318B1号明細書]のための触媒として記載されている。
【0027】
MOFは、無機塩および有機結合、例えば、ジアミンおよび二価酸からなるので、エラストマーおよびガラス状ポリマーとのその混和性は、ゼオライトおよびカーボンモレキュラーシーブのような純無機物質との混和性よりも非常に大きい。現在まで、このクラスの結合は、ポリマーにまだ加えられたことがなく、その混和性または変化した特性を、気体透過性および選択性の点に関して調査した。
【0028】
より大きな孔を有するMOFは有機修飾または官能基化に利用できる中心を有するので、0.3nmから1.5nmの孔径を有するMOFが好ましく、これによりプロトン輸送が促進される。
【0029】
好ましい二価遷移金属は、Zn、Cu、Co、Ni、Cd、Fe、Mo、RhおよびMnである。しかし、三価のAl(アルミニウム)および、四価または五価のV(バナジウム)も重要である。
【0030】
MOFの合成に用いられる好ましい有機リンカーは以下である:
【0031】
i)例えば、以下の式を有するホスホン酸塩:
【化2】

ii)例えば、以下の構造式を有するテレフタル酸またはカルボン酸塩:
【化3】

iii)例えば、以下の構造式を有するジアザビシクロオクタンまたは窒素ドナー錯体。
【化4】

【0032】
ちょうど、リガンドからなる骨格構造によって妨害されない配位点を有するMOFのように、孔壁の内部に配位点および水分子を有するMOFが好ましい。
【0033】
多孔性配位ポリマーまたは錯体の、小さい径および有機特性の両方は、ポリマーとの界面混和性を改善させる。粒子充填率は、均一な複合膜を形成するために低いことが好ましい。したがって、粒子充填率((粒子の重量)対(ポリマーおよび粒子の重量)の比×100%として表される)は、ポリマー含量に関して20重量%以下、好ましくは10重量%未満、特に3重量%以下である。
【0034】
さらに、ポリマー/粒子組成物が主として均一に設計されるように粒子がポリマー層にわたってよく分布していれば好ましい。これについて、粒子を含む分散液または溶液が、特にフィルムが注がれる前に十分に撹拌されるかまたはされるであろうことが好ましい。
【0035】
これらの優れた熱特性のために、配位ポリマーに基づく膜は、燃料をさらに湿らすことなく100℃、特に120℃を超える温度で燃料電池の電解質膜として陽極に加えることができる。燃料電池中へエネルギーを発生させるための操作は、十分に知られており、当業者によく知られている。
【0036】
陽極へ供給される燃料電池の媒体は、水素、メタノール(液体、または気体のメタノール/水混合物)またはエタノール(液体、または気体のエタノール/水混合物)であり得る。
【0037】
燃料電池におけるより高い運転温度は、高価な金属充填の低減およびコストのかかる気体の調整または清浄の簡易化を可能とする一方、液体供給の要求は減少し、これにより系を加圧する必要性を回避することができる。
【0038】
本発明によれば、陽極に供給される燃料のさらなる液体供給なく100℃より高温で高いプロトン伝導性を有する膜が提供される。
【0039】
膜は気体/液体拡散の障壁として機能するが、ここで、プロトンは通り抜けることができる。電解質を介するプロトンの流れは、外側環を通る電荷の流れによって均衡させなければならず、この均衡は、電気エネルギーを発生させる。
【0040】
膜中のプロトンの動きは、膜の水含量と関連し、または連動する。双極子モーメントを有するメタノールと水との類似の特性に基づいて、水分子に類似したメタノール分子は、電気浸透力および拡散に基づいて陰極に運ばれる。陰極で、メタノールは燃料電池容量を低下させる。本発明は、メタノールに対して透過性が低い膜を提供する。
【0041】
本発明による膜は、陽極に供給される燃料をさらに湿らせることなく100℃より高い温度での高いプロトン伝導性と好適なメタノール透過性とを兼ね備える。
【0042】
以下の実施例によって本発明をより詳細に述べる。これらの実施例は、利用分野を決して限定することなく本発明を明確にすることを意図する。
【実施例】
【0043】
実施例1
ポリマー合成
51%のスルホン化度(イオン交換容量1.57meq/g)を有するスルホン化ポリ(エーテルエーテルケトン)(SPEEK)ポリマーを、ウィジャー M.C.(Wijers M.C.)、「重金属の除去用支持液体膜:透過性、選択性および安定性(Supported liquid membranes for removal of heavy metals:permeability、selectivity and stability)」、Dissertation、University of Twente、オランダ、1996年に報告された方法について調製した。粒状物としてビクトレックス(Victrex)によって提供されたポリ(エーテルエーテルケトン)を真空下90℃で一晩乾燥した。次いで、20gのポリマーを1リットルの濃硫酸(95%から98%)に溶解し、室温で45時間攪拌した。次いで、pH価が中性になるまで機械的攪拌下、このポリマー溶液をKCO含有氷水中で沈殿させた。この沈殿ポリマーを一晩放置した。次いで、この沈殿ポリマーを濾過し、蒸留水で数回洗浄し、そして80℃で12時間乾燥した。ノルテ R.(Nolte R.)、レジェフ K.(Ledjeff K.)、バウエル M.(Bauer M.)、ムルハプト R.(Mulhapt R.)、「部分スルホン化ポリ(アリーレンエーテルスルホン)−最新エネルギー変換技術のための様々なプロトン伝導性膜材料(Partially sulfonated poly(arylene ether sulfone)-a versatile proton conducting membrane material for modern energy conversion technologies)」、J.Memb.Sci.83(1993年)211〜220頁に記載されたように、スルホン化度を元素分析によって決定した。
【0044】
ポリマーの清浄
1リットルの水に18gのポリマー材料を含有するポリマー懸濁液を乾燥し、攪拌した。このポリマー懸濁液を濾過し、室温で10×24時間蒸留水で洗浄した。次いで、このポリマー懸濁液を80℃で12時間乾燥した。
【0045】
ポリマー膜の調製
2.3gのポリマーを33gのジメチルスルホキシドに溶解した(7重量%)。この溶液を、液体を蒸発させるために60℃のガラス板上に注いだ。この前に、このガラス板は、オクタデシルトリクロルシランで疎水化した。注いだ後、SPEEK膜を真空下80℃で12時間乾燥した。膜の最終厚みは、83μmであった。キャスト膜を2N硫酸中に室温で24時間浸漬することによって、このスルホン化膜をその酸形態に変換し、その後2×24時間水中に浸漬し、残存硫酸の完全な除去を確実にした。
【0046】
実施例2
MOFの合成
MOF(Cu(BTC)(HO).xHO)を、シュリヒテ K.(Schlichte K.)、クラッケ T.(Kratzke T.)、カスケル S.(Kaskel S.)、「金属−有機骨格化合物Cu(BTC)の改良された合成、熱安定性および触媒特性(Improved synthesis, thermal stability and catalytic properties of the metal-organic framework compound Cu(BTC))」、Microporous and Mesoporous Materials 73(2004年)、81〜88頁に記載のとおりに合成した。0.857g(3.6mmol)のCu(NO.3HOを12mlの脱イオン水に溶解し、0.42g(2.0mmol)のトリメシン酸と混合し、これを12mlのメタノールに溶解した。この溶液を40mlのテフロン(登録商標)容器中に注ぎ入れ、オートクレーブ内に置いて120℃に12時間加熱した。この合成温度(120℃)は、Cu2+イオンの還元を回避するのでCuOの形成を抑制することができる。このMOFは、窒素の物理吸着およびX線回折法によって特徴づけをした。窒素の物理吸着測定は、Micromeritics ASAP 2000装置を用いて77Kで行った。X線粉末回折記録は、位置検知形検出器(Braun、6°)およびCuKα放射線を用いた遷移モードのゲルマニウム一次線モノクロメーターを備えたSTOE回折計を用いて記録した。MOFのX線粉末回折記録は、反射を示し、これを結晶学的データで構成された計算サンプルと比較した(垂直および対角線のO−Oの距離は、それぞれ8.25および10.67Å(オングストローム)である)。銅原子について同じ幾何学的形が得られたが、対応するCu−Cuの距離は、それぞれ11.3および16.0Å(オングストローム)であった。0.41cmgの比細孔容積および10.7Å(オングストローム)の円筒形モデルのHorvath−Kawazoe(HK)孔径を有する細孔網状組織について、I型等温線が観察される。熱安定性は、TG/DTAによって調べた。シュリヒテ K.(Schlichte K.)、クラッケ T.(Kratzke T.)、カスケル S.(Kaskel S.)、「金属−有機骨格化合物Cu(BTC)の改良された合成、熱安定性および触媒特性(Improved synthesis, thermal stability and catalytic properties of the metal-organic framework compound Cu(BTC))」、Microporous and Mesoporous Materials 73(2004年)、81〜88頁に既に報告されたように、この網状組織の溶解が350℃で起こった。
【0047】
実施例3
複合膜の調製
2.3gのポリマーを33gのジメチルスルホキシドに溶解した(7重量%)。次いで、0.12gのMOFをこのポリマー溶液に加えた(MOFの重量/(ポリマーおよびMOFの重量)×100%で表して5重量%)。この溶液を6時間攪拌し、溶媒を除去するために60℃のガラス板上に注いだ。この前に、このガラス板をオクタデシルトリクロルシランで疎水化した。注いだ後、5%のMOFを含むSPEEK膜を真空炉中80℃で10時間乾燥した。この膜の最終厚みは、96μmであった。このキャスト膜を2N硫酸中に室温で24時間浸漬することによって、このスルホン化複合膜をその酸形態に変換し、その後水中の浸漬浴2×24時間によって残存硫酸の完全な消滅を確実にした。
【0048】
実施例4
プロトン伝導度の測定
プロトン伝導度は、信号振幅≦100mVで周波数範囲10から10Hzで交流インピーダンス分光法によって測定し、零相シフト(高周波側)でのインピーダンス値から得た。このサンプルのプロトン伝導度を、40℃から140℃の範囲にわたる温度、および100%相対湿度で決定した。インピーダンス測定は、5つの膜を有する積み重ね(約500μmの同様な累積厚み)に対して行った。相対湿度は、チューブを介して一緒に結合され、異なる温度で保持された、2つの円筒形内部区域からなる錆なしの密閉スチールセルを用いて調べた。冷たい内部区域は水を含み、一方熱い内部区域は検査すべき膜を収容した。相対湿度は通常、冷たい区画および熱い区画の温度の飽和水蒸気の圧力間の比から計算した。
【0049】
ナフィオン(Nafion;登録商標)膜の調製
35gの5重量%ナフィオン(Nafion;登録商標)溶液(デュポン(DuPont))を、溶媒を蒸発させるために60℃のガラス板上に注いだ。この前にガラス板を、オクタデシルトリクロルシランを用いて疎水化した。注いだ後、このナフィオン(Nafion;登録商標)膜を真空炉中80℃で12時間乾燥した。膜の最終厚みは、41μmであった。
【0050】
MOFを用いて調製した複合膜は、すべての温度範囲で単純膜より高いプロトン伝導性値を有するが、この理由は、MOFがその中空の空間に水を保存することができるからである。リガンドを受ける配位点の大部分が骨格構造によって妨害される他の有機金属の骨格構造に比べて、Cu(BTC)(主な孔径10.7オングストローム)は、ルイス酸配位点および水分子(1つの孔当たり12個の水分子)が孔壁の内部上にある利点を有する。Cu2+イオンは、弱い結合で結合され、残りの配位点は、孔の内部に面する弱く結合された水分子で満たされる。これらの弱い水素結合構造のために、プロトン輸送のための分離および結合過程が促進される。
【0051】
実施例5
水およびメタノールについての膜透過性
水およびメタノールの透過性は、47mm膜直径を有するミリポアセル(milipore cell)を用いて55℃で透過蒸発によって膜を通して測定する。1.5Mのメタノール溶液を供給側に加えた。透過側を排出させた。この透過物を、液体窒素中に沈められたトラップに1から3時間の時間間隔で収集した。透過物の量の重さをはかり、組成をガスクロマトグラフィーによって決定した。測定の前に、膜サンプルを供給溶液中に沈めた。表1に結果を示す。
【0052】
【表1】

【0053】
5重量%のMOFを有するSPEEK膜のメタノール透過性は、単純SPEEK膜のものより高く、さらにナフィオン(Nafion;登録商標)115のものより低い(ガオウェン Z.(Gaowen Z.)およびチェンタオ Z.(Zhentao Z.)、「DMFCにおける利用のための有機/無機複合膜(Organic/inorganic membranes for application in DMFC)」、J.Memb.Sci.(2005年)を参照)。
【0054】
図1は、40℃から140℃の100%相対湿度で測定し、SPEEK膜の温度に応じた、3種類の膜SPEEK、SPEEK+5%MOFおよびナフィオン(Nafion;登録商標)115のプロトン伝導度の代表例を示す。図1において、5%MOFを有するSPEEK膜が、40℃から140℃の温度範囲で他の2つの膜に関して、明らかにまたは著しく高いプロトン伝導度(ファクター1.5から2を超える)を有することが理解される。例えば、5%MOFを有するSPEEK膜のプロトン伝導度は、120℃で約5.0×10−2S/cmである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】3種類の膜SPEEK、SPEEK+5%MOFおよびナフィオン(Nafion;登録商標)115のプロトン伝導度の代表例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー電解質膜が配位ポリマー(金属有機骨格)を備えて構成されることを特徴とする、特に燃料電池の、ポリマー電解質膜。
【請求項2】
ポリマー電解質膜が、共有結合して負に帯電した官能基および/またはポリマー電解質の層を備えて構成され、好ましくはそのイオン性基が、ペルフルオロ化および/または炭化水素をベースとした、ポリマー骨格またはポリマーに結合していることを特徴とする、請求項1に記載のポリマー電解質膜。
【請求項3】
膜ポリマーが、ナフィオン(Nafion;登録商標)、および/または、特にスルホン化、ホスホン化もしくはドープ化された、ポリ(アミドイミド)および/またはポリ(エーテルスルホン)および/またはポリ(エーテルエーテルケトン)および/またはポリ(エーテルケトンケトン)および/またはポリ(エーテルイミド)および/またはポリ(フェノキシベンゾイルフェニレン)および/またはポリ(ベンゾイミダゾール)、および/またはポリ(アゾール)を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のポリマー電解質膜。
【請求項4】
膜ポリマーが、スルホン化ポリ(エーテルエーテルケトン)、SPEEKであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリマー電解質膜。
【請求項5】
SPEEKのスルホン化レベルが、70%未満、特に60%未満で、好ましくは50%未満であることを特徴とする、請求項4に記載のポリマー電解質膜。
【請求項6】
配位ポリマーの基本セルが、0.3〜15nmの範囲のサイズを有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリマー電解質膜。
【請求項7】
有機リンカーでできている配位ポリマーが、少なくとも1個のホスホン酸基および/またはカルボン酸基および/または窒素ドナー錯体を備えて構成されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリマー電解質膜。
【請求項8】
配位ポリマーには、孔壁の内部上に配位点および水分子が備えられることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリマー電解質膜。
【請求項9】
配位ポリマーが、MOFリガンドでできていない配位点をもって構成されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリマー電解質膜。
【請求項10】
20重量%未満、特に10重量%未満、好ましくは3重量%未満の充填率での配位ポリマーが、膜ポリマー中に含まれることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリマー電解質膜。
【請求項11】
燃料電池において請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリマー電解質膜を使用する方法。
【請求項12】
好ましくは、燃料電池の、特にプロトン伝導性のポリマー電解質膜の製造方法であって:
a)好ましくは極性の、有機溶液中にポリマーを溶解するステップ、
b)上記方法ステップa)のポリマー溶液中に配位ポリマー(金属有機骨格)を溶解または懸濁させるステップ、
c)上記方法ステップb)の溶液または懸濁液をフィルムに注ぐステップ、および
d)上記方法ステップc)のフィルムを乾燥させるステップ
を備える方法。
【請求項13】
ナフィオン(Nafion;登録商標)、および/または、特にスルホン化、ホスホン化もしくはドープ化された、ポリ(アミドイミド)および/またはポリ(エーテルスルホン)および/またはポリ(エーテルエーテルケトン)および/またはポリ(エーテルケトンケトン)および/またはポリ(エーテルイミド)および/またはポリ(フェノキシベンゾイルフェニレン)および/またはポリ(ベンゾイミダゾール)、および/またはポリ(アゾール)が、膜ポリマーとして有機溶液中に溶解されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
スルホン化ポリ(エーテルエーテルケトン)、SPEEKが、膜ポリマーとして溶解されることを特徴とする、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
SPEEKのスルホン化レベルが、70%未満、特に60%未満、および好ましくは50%未満であることを特徴とする、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−517806(P2009−517806A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541598(P2008−541598)
【出願日】平成18年9月9日(2006.9.9)
【国際出願番号】PCT/EP2006/008799
【国際公開番号】WO2007/059815
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(504187593)ゲーカーエスエス・フォルシュングスツェントルム ゲーストアハト ゲーエムベーハー (14)
【Fターム(参考)】