説明

配管のクランプ

【課題】より高い防振性を有すると共に配管を確実に保持することができる配管のクランプを提供する。
【解決手段】配管のクランプ1は、クッション材4の内周面47からこの内周面の法線方向に突出する複数の支持片48を備えており、この支持片48の先端側には、支持片48の厚みSよりも広い幅Dを有する配管当接部50が形成されている。この配管当接部50は、配管6が配管嵌合部22の中心から多少ずれた場合でも配管6に当接し続ける。そして、支持片48の基部から配管当接部50の先端部までの距離Hは、支持片48の厚みSよりも長い。これにより、配管6を配管当接部50によって確実に保持しつつ、配管6への振動の伝播を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の配管を保持するための配管のクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のエアコン等に用いる配管を所定の位置に保持するための配管のクランプが知られている。このクランプを使用する場合には、クランプ本体を車体の取付部に固定し、クランプに形成された配管嵌合部に配管を嵌合させることで配管を保持することができる。ここで、車体の振動がそのまま配管に伝達されてしまうと、配管と車体とが接触することによる騒音や、配管の破損、配管嵌合部へ嵌合している配管の離脱等の不具合を引き起こす虞がある。
【0003】
そこで、配管嵌合部に貫通孔が形成され、この貫通孔を介して、凹凸を有するクッション材が配管嵌合部と一体に形成された配管のクランプが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このクランプによると、車体の振動がクッション材によって吸収されるため、配管をクッション材で覆う等の手間やコストを要さずに防振性を向上させることを実現している。また、クッション材の凹凸が配管に当接するため、配管が滑ることなく強固に固定される。
【0004】
また、径が異なる複数種類の配管を保持するために、本体から配管嵌合部の内側へ延設される受け腕と、受け腕の先端部に設けられて配管と面接触する下壁とを備えたクランプが提案されている(例えば、特許文献2参照)。このクランプに配管を嵌合させると、受け腕は自身が延びる方向と垂直な方向へ配管の径に応じて屈曲する。そして、配管の進入方向と直交する方向への配管の移動が下壁によって規制される。これにより、径が異なる複数種類の配管を1つのクランプで保持することを可能にしている。
【特許文献1】特開2002−195457号公報
【特許文献2】特開2002−5337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の配管のクランプでは、クッション材の配管に対向する面に形成された凹凸は、車体の振動を十分に吸収できるだけの高さを有していないという問題点があった。また、特許文献2に記載のクランプには振動を吸収するクッション材が設けられていないことに加え、受け腕には自身が伸びる方向に対して垂直な方向の力が加わるため、配管がクランプに対して移動する。従って、防振性及び安定性が不足しているという問題点があった。
【0006】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、より高い防振性を有すると共に配管を確実に保持することができる配管のクランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明の配管のクランプは、樹脂材からなるクランプ本体に、配管を嵌合させて保持する配管嵌合部を形成すると共に、その配管嵌合部にゴム製のクッション材を取り付けた配管のクランプであって、前記クッション材の前記配管に対向する表面から当該表面の法線方向に突出し、前記配管の長さ方向に延びる複数の支持片と、当該支持片の先端部に設けられ、前記配管の周方向における幅が前記支持片の厚みよりも大きい配管当接部とを備え、前記支持片の基部から前記配管当接部の先端部までの長さが、前記支持片の厚みよりも長いことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に係る発明の配管のクランプは、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記支持片と前記配管当接部と前記配管の中心とが一直線上に位置していることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る発明の配管のクランプは、請求項1又は2に記載の発明の構成に加え、前記クランプ本体の下部には、ハの字状に延びる一対の突起であり、取り付け箇所の表面を押圧することで振動の伝播を防止する、可撓性を有する防振突起部が設けられ、当該防振突起部は、ゴム製のクッション材により被覆されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項4に記載の配管のクランプは、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記配管嵌合部を構成する樹脂材には、前記配管を挿入する開口部が形成され、当該開口部から前記配管嵌合部の内側へ延びるゴム製の前記クッション材の長さが前記配管の直径の長さ以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明の配管のクランプでは、クッション材の配管に対向する表面から当該表面の法線方向に突出する支持片が、配管の長さ方向に延設されている。そして、支持片の先端部には、支持片の厚みよりも幅が大きい配管当接部が形成されている。従って、配管が保持位置から多少ずれた場合でも、支持片が折れ曲がることなく配管当接部が配管に当接し続けるため、配管が確実に保持される。さらに、支持片の基部から配管当接部の先端部までの長さが支持片の厚みよりも長いため、十分な長さを有する支持片及び配管当接部によって振動が吸収される。よって、配管を確実に保持しつつ配管への振動の伝播を防止することができる。
【0012】
また、請求項2に係る発明の配管のクランプでは、請求項1に記載の発明の効果に加え、支持片、配管当接部、及び配管の中心が一直線上に位置しているため、配管から支持片へ加わる力のうち、支持片の突出方向に垂直な方向の力が弱くなる。よって、支持片が折れ曲がることなく、配管を確実に保持することができる。
【0013】
また、請求項3に係る発明の配管のクランプでは、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、取り付け箇所の表面を押圧する防振突起部がゴム製のクッション材により被覆されているため、取り付け箇所の振動がクッション材により吸収される。よって、樹脂材からなる防振突起部が取り付け箇所に直接当接する場合に比べて防振性を向上させることができる。さらに、ゴム製のクッション材は樹脂材とは異なり、時間の経過と共に劣化して反力が低下する虞が低いため、防振性をより長い時間保持することができる。
【0014】
また、請求項4に係る発明の配管のクランプでは、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明の効果に加え、樹脂材に形成された開口部から配管嵌合部の内側へ延びるクッション材の長さが、配管の直径の長さ以上であるため、配管嵌合部に取り付けられた配管が開口部に近づく方向へずれた場合でも、樹脂材の開口部が配管へ接触する虞を低下させることができる。すなわち、樹脂材の振動が直接配管へ伝播する虞を低下させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態である配管のクランプ1について、図面に基づいて説明する。この配管のクランプ1は、配管を所定の位置に保持するために用いられるものであり、例えば、自動車のエアコンに用いる配管を車体に対して保持する際に使用される。図1は、配管のクランプ1の斜視図であり、図2は、クランプ本体2の左側面図である。また、図3は、配管6を配管嵌合部22の中心で保持している配管のクランプ1の左側面図であり、図4は、配管6を配管嵌合部22の中心よりも開口部21側で保持している配管のクランプ1の左側面図である。尚、図1の右下側を「配管のクランプ1の前側」とし、左上側を「配管のクランプ1の後ろ側」とする。また、図2乃至図4の紙面手前側を「配管のクランプ1の左側」とし、紙面奥行き側を「配管のクランプ1の右側」とする。
【0016】
まず、図1を参照して、配管のクランプ1の構造について概略的に説明する。配管のクランプ1は、車体の取付孔7に固定される側面視略C字状のクランプ本体2と、該クランプ本体2と一体的に形成され、配管6を保持しつつ振動を吸収するクッション材4とから構成されている。クランプ本体2はポリアセタール等の合成樹脂材を成形することにより製造されており、適度な可撓性を有する。また、クッション材4は、振動の減衰に有効なエラストマー等のゴム材料により形成されている。
【0017】
次に、クランプ本体2について説明する。図1及び図2に示すように、クランプ本体2は側面視略C字状であり、左右方向に亘って一定の幅を有する。そして、図2に示すように、正面側には配管6を挿入するための開口部21が設けられており、この開口部21の内側に形成された側面視略C字状の配管嵌合部22で配管6を保持するようになっている。また、クランプ本体2は、自身の下部に形成された水平な底面23の中心部から下方へ突出し、車体の取付孔7に挿入される略円柱状の挿入胴部24と、該挿入胴部24の左右の側面に設けられて内側に撓むことができる一対の係止爪25,25(図面では左側の係止爪25のみを図示)とを備えている。尚、この挿入胴部24を取付孔7へ挿入して配管のクランプ1を押し込むと、係止爪25が内側に撓みながら取付孔7に沿って摺動した後、自身の撓みによる応力によって外側へ戻る。すると、係止爪25が取付孔7に係止して、配管のクランプ1が取付孔7に固定される(図3及び図4参照)。
【0018】
また、図2に示すように、底面23の前後には、側面視ハの字状に斜め下方へ延びる一対の防振突起部26,26が左右方向の全長に亘って設けられている。そして、クランプ本体2には左右方向に貫通する4つの貫通孔27〜30が穿設されると共に、左右両側には、外側に向けて突出する円柱状の突出部31がそれぞれ5つずつ形成されている。
【0019】
次に、クッション材4について説明する。図1及び図3に示すように、クッション材4はクランプ本体2の形状に合わせて側面視略C字状に形成され、左右方向に一定の幅を有する。このクッション材4は、図3に示すように、クランプ本体2の配管嵌合部22及び防振突起部26,26を覆うように、インサート成形によりクランプ本体2へ取り付けられている。そして、クッション材4とクランプ本体2とは、先述したクランプ本体2の貫通孔27〜30を介して一体的に繋がっている。さらに、クランプ本体2の左右両側に設けられた突出部31のそれぞれが、クッション材4の固定孔41に挿入される。これにより、クッション材4は接着剤等が使用されることなく、クランプ本体2に確実に固定されている。
【0020】
また、図3に示すように、クランプ本体2の上部の開口部21から配管嵌合部22の内側へは上壁部43が、下部の開口部21からは下壁部45が延設されている。そして、配管6は上壁部43と下壁部45との間の空間を通って配管嵌合部22の内側へ装着されて、上壁部43の後端側の上壁部当接面44、及び下壁部45の後端側の下壁部当接面46に当接する。ここで、図4に示すように、上壁部43及び下壁部45の後端からクランプ本体2の開口部21までの距離Lは、配管6の直径R以上の長さとなるように各部材が形成されている。これにより、配管6が配管嵌合部22の中心から開口部21側へずれた場合の、樹脂材であるクランプ本体2と配管6とが直接接触する可能性を低下させている。よって、車体の振動がクランプ本体2を介して配管6へ直接伝播する虞を低下させることができる。
【0021】
また、図3に示すように、クッション材4の配管6に対向する面、すなわち、側面視略C字状のクッション材4における内周面47には、この内周面47の法線方向に突出してクッション材4の左右方向に延びる複数の支持片48が間隔を置いて形成されている。そして、各支持片48の先端部には、配管6を保持する側面視略台形状の配管当接部50が設けられている。この配管当接部50の先端側において配管6に当接する当接面51は、配管6の表面の円弧に合わせて湾曲している。また、配管6の周方向における配管当接部50の幅Dは、支持片48の厚みSよりも大きい。さらに、支持片48と、配管当接部50と、及び配管6の中心とが、全て一直線上に位置するように形成されている。従って、振動等の影響で配管6が配管嵌合部22の中心からずれた場合でも、当接面51は配管6に当接し続けるため、支持片48が倒れることがない。よって、配管6は配管当接部50によって確実に保持される。
【0022】
さらに、図3に示すように、支持片48の基部(クッション材4における内周面47)から配管当接部50の先端部までの距離Hは、支持片48の厚みSよりも長くなるように形成されている。このように、距離Hを長くすることで、車体から配管6への振動を伝わりにくくしている。すなわち、配管のクランプ1の防振性を向上させている。
【0023】
また、図1、図3、及び図4に示すように、クッション材4の下部における前後の端部には、側面視ハの字状に斜め下方へ延びる一対の突起被覆部54,54が左右方向の全長に亘って設けられている。この突起被覆部54,54は、クランプ本体2に設けられた一対の防振突起部26,26の各々を覆うように形成されている。そして、配管のクランプ1が取付孔7に固定されると、突起被覆部54,54が車体の取付孔7近傍に当接する。よって、樹脂製のクランプ本体2に設けられた防振突起部26,26が車体に直接当接する場合よりも、車体から配管6への振動が伝わりにくい。さらに、樹脂製の防振突起部26,26の劣化による反力の低下を防止することができるため、防振性を長期間保つことができる。
【0024】
以上説明したように、本実施の形態の配管のクランプ1では、クッション材4の内周面47から配管当接部50の先端部までの距離Hが、支持片48の厚みSよりも長い。さらに、配管当接部50の幅Dが支持片48の厚みSよりも長い。これにより、配管6の保持力を低下させることなく防振性を向上させることを実現している。
【0025】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、各種の変形が可能である。例えば、配管当接部50の形状は変形が可能であり、側面視Y字状、T字状等に形成してもよい。また、本実施の形態ではクランプ本体2にクッション材4を固定するために4つの貫通孔27〜30を設けたが、貫通孔の数は4つでなくてもよいし、貫通孔を形成しなくてもよい。さらに、配管嵌合部22を半径方向に貫く貫通孔であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】配管のクランプ1の斜視図である。
【図2】クランプ本体2の左側面図である。
【図3】配管6を配管嵌合部22の中心で保持している配管のクランプ1の左側面図である。
【図4】配管6を配管嵌合部22の中心よりも開口部21側で保持している配管のクランプ1の左側面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 配管のクランプ
2 クランプ本体
4 クッション材
6 配管
21 開口部
22 配管嵌合部
26 防振突起部
43 上壁部
45 下壁部
47 内周面
48 支持片
50 配管当接部
51 当接面
54 突起被覆部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材からなるクランプ本体に、配管を嵌合させて保持する配管嵌合部を形成すると共に、その配管嵌合部にゴム製のクッション材を取り付けた配管のクランプであって、
前記クッション材の前記配管に対向する表面から当該表面の法線方向に突出し、前記配管の長さ方向に延びる複数の支持片と、
当該支持片の先端部に設けられ、前記配管の周方向における幅が前記支持片の厚みよりも大きい配管当接部とを備え、
前記支持片の基部から前記配管当接部の先端部までの長さが、前記支持片の厚みよりも長いことを特徴とする配管のクランプ。
【請求項2】
前記支持片と前記配管当接部と前記配管の中心とが一直線上に位置していることを特徴とする請求項1に記載の配管のクランプ。
【請求項3】
前記クランプ本体の下部には、ハの字状に延びる一対の突起であり、取り付け箇所の表面を押圧することで振動の伝播を防止する、可撓性を有する防振突起部が設けられ、
当該防振突起部は、ゴム製のクッション材により被覆されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の配管のクランプ。
【請求項4】
前記配管嵌合部を構成する樹脂材には、前記配管を挿入する開口部が形成され、
当該開口部から前記配管嵌合部の内側へ延びるゴム製の前記クッション材の長さが前記配管の直径の長さ以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の配管のクランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−286347(P2008−286347A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−133666(P2007−133666)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】