説明

配管のサポート構造

【課題】配管の熱伸びを許容しながらも、配管内を流通する流体の乱れの影響により生じる配管の振動を抑制することが可能な配管のサポート構造を提供する
【解決手段】高温の流体が流通する配管を構造物2に対して支持する配管のサポート構造10を、配管に固定されたサポート本体20と、該サポート本体20を両側から挟み込むように該サポート本体20に対して当接可能なストッパ40と、該ストッパ40をサポート本体20に向かって付勢するコイルバネ50とから構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温の流体が流通する配管を構造物に接続するためのサポート構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば石油化学プラント等の配管は、サポートを介して構造物に取り付けられる(例えば特許文献1参照)。
このような石油化学プラントの配管は、運転時に高温の流体が流通するため、この流体の熱の影響によって運転時にのみ熱膨張する。よって、配管を構造物に対して剛に接続した場合には、当該配管の熱伸びの影響により破損等を招くおそれがある。そのため、上記配管を支持するサポートを構造物に対して相対移動可能に載置する等して、配管を構造物に対して柔支持することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平7−4383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように配管系を構造物に対して柔支持した場合、配管系の固有振動数が低下するため、配管内を流通する流体の乱れによる加振力の影響を受け易くなってしまう。これによって配管が振動し易くなってしまうため、故障を招き易く、メンテナンスコストが多くかかってしまうという問題があった。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、配管の熱伸びを許容しながらも、配管内を流通する流体の乱れの影響により生じる配管の振動を抑制することが可能な配管のサポート構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を提供している。
即ち、本発明に係る高温の流体が流通する配管を構造物に対して支持する配管のサポート構造であって、前記配管に一体に設けられたサポート本体と、該サポート本体を両側から挟み込むように該サポート本体に対して当接可能なストッパと、該ストッパを前記サポート本体に向かって付勢する付勢部材とを備えることを特徴とする。
【0007】
このような特徴の配管のサポート構造によれば、付勢部材により付勢されたストッパがサポート本体を挟み込む構成のため、配管が熱伸びした際には付勢部材の付勢に抗してストッパが移動することで当該配管の熱伸びが許容される。また、配管が熱伸びした後は、ストッパを介しての付勢部材の付勢力によりサポート本体が被支持部に対して剛に保持されることになるため、配管系の固有振動数の低下を回避することができる。
【0008】
また、本発明に係る配管のサポート構造によれば、前記一対のストッパが当接する前記サポート本体の一対の受圧面が、前記配管の延在方向一方側に向かうに従って互いに近接するように傾斜していることが好ましい。
【0009】
これによって、配管の延在方向及び該延在方向に直交する方向の双方に向かっての配管の移動をストッパを介しての付勢部材の付勢力により規制することができる。したがって、配管に一体に設けられたサポート本体を構造物に対してより剛に接続させることができる。
【0010】
また、本発明に係る配管のサポート構造は、ストッパを前記付勢部材の付勢に抗して前記保持部材から離間させた状態で保持可能な保持手段をさらに備えることが好ましい。
【0011】
これにより、配管に高温の流体が流通していない際に保持手段によりストッパをサポート本体から離間して配置することで、配管に高温の流体が流通した後の配管の熱伸びをより確実に許容することができる。また、配管が熱伸びした後は、保持手段によるストッパの保持を解除することにより、該ストッパを介して確実にサポート本体を支持することができる。
【0012】
さらに、本発明に係る配管のサポート構造においては、前記付勢部材が、前記配管の延在方向他方側に向かって前記ストッパを付勢することが好ましい。
これによって、特に配管の延在方向への該配管の振動をより確実に抑えることが可能となる。
【0013】
また、本発明に係る配管のサポート構造においては、前記付勢部材が、前記配管の延在方向に直交する方向に向かって前記ストッパを付勢するものであってもよい。
これによって、特に配管の延在方向に直交する方向への該配管の振動をより確実に抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る配管のサポート構造によれば、付勢部材によって付勢された一対のストッパによって挟み込まれるようにサポート本体が保持されるため、配管の熱伸びを許容するとともに配管系の固有振動数の低下を回避することができ、配管内を流通する流体に基づく該配管の振動を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第一実施形態に係る配管及び当該配管に一体に設けられたサポート本体の斜視図である。
【図2】第一実施形態に係る配管サポート構造の概要を示す平面図である。
【図3】第二実施形態に係る配管サポート構造の概要を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1及び図2に示すように、第一実施形態の配管1のサポート構造10は、例えば石油化学プラント等に設置されて内部に高温の流体が流通する配管1を該プラントの構造物2に支持するための構造であって、サポート本体20と、枠体30と、ストッパ40と、コイルバネ(付勢部材)50と、保持ボルト(保持手段)60とを備えている。
【0017】
サポート本体20は、構造物2の表面と平行に延在する配管1を当該構造物2の表面上に支持する役割を有しており、配管1と構造物2の表面との間に配置されており、ベース部21と立設部23とから構成されている。
【0018】
ベース部21は、平板状をなす部材であって、構造物2の表面に沿って延在するように当該表面上に載置されている。このベース部21は、構造物2によって拘束されてはおらず、該構造物2の表面に沿った方向に相対移動可能とされている。これらベース部21と構造物2との相対移動を容易とすべく、ベース部21と構造物2との間に潤滑剤が介在されていてもよい。
【0019】
このベース部21における構造物2の表面に沿った方向を向く外周面、即ち、このベース部21の外周側における構造物2に対して垂直をなす面は、配管1の延在方向に延びて互いに反対側を向く一対の側面21aと、配管1の延在方向一方側を向く先端面21bと、上記一対の側面21aのそれぞれに接続されて配管1の延在方向他方側を向く後端面21cとを備えている。
【0020】
そして、ベース部21の外周面のうち、一対の側面21aと先端面21bとを接続する部分は、配管1の延在方向一方側に向かうに従って互いに近接するように傾斜する受圧面22とされている。
【0021】
立設部23は、ベース部21から構造物2の反対側に向かって該ベース部21から垂直に立ち上がるようにベース部21に設けられており、その先端が配管1に対して一体に固定されている。
このようなベース部21と立設部23とからなるサポート本体20によって、配管1が構造物2と間隔をあけた状態で支持されている。
【0022】
枠体30は、構造物2の表面に沿って延在するように該構造物2の表面に一体に固定された部材であって、配管1の延在方向に直交する方向に延在する前枠部31と、前枠部31の両端からそれぞれ配管1の延在方向他方側に向かって延在する一対の側枠部31と、これら側枠部31における配管1の延在方向他方側の端部から互いに近接する方向に延びる一対の後枠部33とを備えている。
【0023】
そして、配管1の延在方向に直交する方向に対向する一対の後枠部33の間は、配管1の延在方向他方側に向かって開口する枠体30内への入口部とされており、上記サポート本体20のベース部21はこの枠体30の表面における入口部に位置するように配置されている。
【0024】
ストッパ40は、上記枠体30に対して一対が取り付けられており、ガイド部41と、ストッパ本体42とを備えている。
ガイド部41は、上記枠体30の一対の側枠部31の内面、即ち、一対の側枠部31における互いに対向する面に設けられている。これら一対のガイド部41は、それぞれ側枠部31の延在方向に延びるレール状をなしている。
【0025】
ストッパ本体42は、一対のガイド部41のそれぞれに配管1の延在方向にスライド移動可能に取り付けられている。このストッパ本体42は、ガイド部41を介したスライド移動によって、サポートに対して当接、離間可能とされている。
また、これら一対のストッパ本体42における互いに対向する面の一部は、延在方向一方側に向かうに従って互いに近接する支持面43とされている。そして、ストッパ本体42がサポート本体20に当接する際には、各ストッパ40の支持面43がガイド部41の受圧面22に対して面接触するようになっている。
【0026】
コイルバネ50は、一対が設けられており、それぞれ枠体30の内部において一端が前枠部31に固定されるとともに他端がストッパ本体42に固定されている。これによって、コイルバネ50はストッパ本体42を配管1の延在方向他方側に向かって付勢している。
【0027】
保持ボルト60は、枠体30の一対の後枠部33のそれぞれを配管1の延在方向他方側から一方側に向かって挿通するように設けられた一対のボルトであって、回転させることによって配管1の延在方向に進退するように構成されている。これによって、保持ボルト60の先端はストッパ本体42に対して配管1の延在方向他方側から当接、離間可能とされている。
【0028】
次にこのような配管1のサポート構造10を備えたプラントを運転する際におけるサポート構造10の作用について説明する。
まず、プラントの運転前には、保持ボルト60を回転させることで該保持ボルト60の先端を配管1の延在方向一方側に進行させ、ストッパ本体42を押圧させる。これによって、ストッパ40をガイド部41に沿って配管1の延在方向一方側に移動させ、ストッパ本体42をサポート本体20のベース部21から離間させ、ストッパ本体42とのベース部21との間に隙間を形成する。この隙間の寸法は、プラントの運転時に想定される配管1の熱伸び量に応じて設定される。
【0029】
続いて、プラントの運転が開始されると配管1内部を高温の流体が流通する。これにより、配管1は特にその延在方向に熱伸びし始め、これに伴って、配管1に固定されたサポート本体20が例えばその延在方向一方側に向かって構造物2に対して相対移動する。
【0030】
そして、プラントの運転が定格運転に到達した際には、保持ボルト60を回転させることにより該保持ボルト60を配管1の延在方向他方側に後退させ、保持ボルト60の先端をストッパ本体42から離間させる。これによって、ストッパ本体42はコイルバネ50の付勢力にしたがって配管1の延在方向他方側に移動し、ストッパ本体42の支持面43がベース部21の受圧面22に面接触する。
【0031】
このようにして、サポート本体20のベース部21は一対のストッパ本体42によって両側から挟みこまれた状態となり、即ち、サポート本体20はストッパ40を介して伝達されるコイルバネ50の付勢力によって支持された状態となる。
【0032】
これによって、プラントの定格運転時に配管1がその延在方向に振動した際には、一対のコイルバネ50の付勢力によって配管1の動きが押さえ付けられる。
さらに、配管1が延在方向に直交する方向に加振された場合であっても、配管1を両側から挟み込むように保持するストッパ本体42によって当該配管1の振動が押さえ付けられる。また、特に本実施形態ではストッパ本体42はガイド部41に取り付けられているため配管1の延在方向に直交する方向の振動は、当該ガイド部41によって機械的に拘束される。
【0033】
以上のように、本実施形態の配管1のサポート構造10によれば、配管1に高温の流体が流通していない際に保持ボルト60によりストッパ40をサポート本体20から離間して配置することで、配管1に高温の流体が流通した後の当該配管1の熱伸びを許容することができる。
また、配管1が熱伸びした後は、保持ボルト60によるストッパ40の保持を解除することにより、該ストッパ40を介してコイルバネ50の付勢力により確実にサポート本体20を支持することができる。これにより、配管1の固有振動数の低下を回避することができるため、配管1内を流通する流体によって配管1が加振されることはなく、該配管1の振動を抑制することが可能となる。
【0034】
また、特に本実施形態では、サポート本体20のベース部21における受圧面22が配管1の延在方向に対して傾斜しているため、当該配管1の延在方向及び該延在方向に直交する方向の双方に向かっての配管1の移動をコイルバネ50の付勢力により規制することができる。したがって、配管1に一体に設けられたサポート本体20を構造物2に対して剛に接続させることができる。
【0035】
さらに、本実施形態では、コイルバネ50がストッパ本体42を配管1の延在方向に付勢する構成のため、特に配管1の延在方向への振動をより確実に抑えることができる。
【0036】
次に第二実施形態の配管1のサポート構造10について説明する。第二実施形態については第一実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。図3に示すように、第二実施形態のサポート構造10は、ストッパ40、コイルバネ50及び保持ボルト60の配置が第一実施形態と相違している。
【0037】
即ち、第二実施形態のストッパ40におけるガイド部41は、枠体30の前枠部31に対して該前枠部31の延在方向に沿って一対が設けられており、当該ガイド部41に沿ってストッパ本体42が配管1の延在方向に直交する方向にスライド移動可能とされている。
【0038】
また、第二実施形態のコイルバネ50は、それぞれ枠体30の内部において一端が一対の側枠部31のそれぞれに固定されるとともに他端がストッパ本体42に固定されている。これによって、コイルバネ50はストッパ本体42を配管1の延在方向に直交する方向に互いに近接させるように付勢している。
【0039】
さらに、第二実施形態の保持ボルト60は、枠体30の一対の側枠部31のそれぞれを枠体30の外側から内側に向かって配管1の延在方向に直交する方向に挿通するように一対が設けられている。このような保持ボルト60は回転させることにより進退するようになっており、その先端はストッパ40に対して一体に固定されている。
【0040】
以上のような第二実施形態の配管1のサポート構造10においても、配管1に高温の流体が流通していない際に保持ボルト60を後退させることでストッパ40をサポート本体20から離間させた状態で保持する。これにより、配管1に高温の流体が流通した後の当該配管1の熱伸びを許容することができる。
【0041】
また、配管1が熱伸びした後は、保持ボルト60によるストッパ40の保持を解除することにより、即ち、コイルバネ50の付勢力に従って保持ボルト60を回転させて前進させることで、ストッパ本体42を介してのコイルバネ50の付勢力により、サポート本体20を挟み込むようにして支持することができる。これによって、第一実施形態同様、配管1の固有振動数の低下を回避することができるため、配管1内を流通する流体に基づく該配管1の振動を抑制することが可能となる。
【0042】
さらに、本実施形態では、コイルバネ50がストッパ本体42を配管1の延在方向に直交する方向に付勢する構成のため、特に配管1の延在方向に直交する方向への振動をより確実に抑えることができる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、これらに限定されることはなく、多少の設計変更等も可能である。
例えば実施形態においては保持ボルト60を備えた配管1のサポート構造10について説明したが、当該保持ボルト60は必ずしも設けなくともよい。
【0044】
この場合、プラントの運転、非運転時にかかわらず、コイルバネ50の付勢力により付勢されたストッパ本体42がサポート本体20を挟み込むように当接する。よって、配管1が熱伸びした際にはコイルバネ50を圧縮させながらストッパ40が移動することで当該配管1の熱伸びが許容されることになる。また、配管1が熱伸びした後は、圧縮されて付勢力が上昇したコイルバネ50によりサポート本体20を剛に保持することができる。したがって、実施形態同様、配管1の熱伸びを許容しながら配管1の振動を抑えることが可能となる。
【0045】
また、例えばサポート本体20のベース部21の受圧面22とストッパ本体42の支持面43とは互いに摩擦力が大きくなるように粗面加工が施されていてもよい。これによって、ストッパ本体42によってより強固にベース部21材を支持することができる。
【0046】
さらに、実施形態においては、サポート本体20のベース部21を構造物2の表面に沿った方向の動きを支持する構成としたが、例えば構造物2の表面に垂直な方向への動きを規制する他のストッパ40等を設けてもよい。
【0047】
また、実施形態においては、保持手段として保持ボルト51を用いた例について説明したが、これに代えてボールネジ機構を用いてストッパ本体42の位置を保持可能としてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 配管
2 被支持部
10 サポート構造
20 サポート本体
21 ベース部
22 受圧面
23 立設部
30 枠体
31 前枠部
32 側枠部
33 後枠部
34 入口部
40 ストッパ
41 ガイド部
42 ストッパ本体
43 支持面
50 コイルバネ
51 保持ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温の流体が流通する配管を構造物に対して支持する配管のサポート構造であって、
前記配管に固定されたサポート本体と、
該サポート本体を両側から挟み込むように該サポート本体に対して当接可能なストッパと、
該ストッパを前記サポート本体に向かって付勢する付勢部材とを備えることを特徴とする配管のサポート構造。
【請求項2】
前記一対のストッパが当接する前記サポート本体の一対の受圧面が、前記配管の延在方向一方側に向かうに従って互いに近接するように傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の配管のサポート構造。
【請求項3】
前記ストッパを前記付勢部材の付勢に抗して前記保持部材から離間させた状態で保持可能な保持手段をさらに備えることを特徴とする配管のサポート構造。
【請求項4】
前記付勢部材が、
前記配管の延在方向他方側に向かって前記ストッパを付勢することを特徴とする請求項2又は3に記載の配管のサポート構造。
【請求項5】
前記付勢部材が、
前記配管の延在方向に直交する方向に向かって前記ストッパを付勢することを特徴とする請求項2又は3に記載の配管のサポート構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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