説明

配管ダクト

【課題】電源ケーブルや通信ケーブル等を容易に取出すことができて優れた施工性を発揮するケーブル取出し機能を有する配管ダクトを提供する。
【解決手段】上部を開口した断面コ字状のダクト本体1と前記開口を塞ぐ蓋体2からなるケーブル収納用の配管ダクトであって、前記ダクト本体1の側壁面1aにケーブル引出し用の膨出空洞部3を突設し、この膨出空洞部3にケーブル30を長手方向に対し45°以下の角度で引出す傾斜面5を設けた。前記膨出空洞部3は、平面視で直角三角形状であり直角部を頂点としてあるものとすることや、平面視で等脚台形状であり等脚部を傾斜面5としてあるものとすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源ケーブルや通信ケーブル等を容易に取出すことができて優れた施工性を発揮するケーブル取出し機能を有する配管ダクトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば鉄道の縦断管路の配管方式として、コンクリート製のダクト内に電源ケーブルや通信ケーブル等を収納させたものが知られている。一方、高速道路では縦断管路は地中に埋設したものが一般的であるが、最近では、再生プラスチックを原料とした軽量ダクト(特許文献1を参照)を用いた配管方式の採用が検討されている。この軽量ダクトは、成形性に優れており、また軽量性、難燃性、耐荷重性、耐衝撃性、耐腐食性等にも優れたものである。
【0003】
なお、前記ダクト内の電源ケーブルや通信ケーブル等は、必要に応じてダクトから取出されたうえ、本線上の設備に接続されている。このケーブル30の取出しは、図7に示されるように、ダクト31の側面に形成した孔32から取出すのが普通である。なお、33は分岐配管である。
【0004】
しかしながら、従来のケーブルの取出し方法ではケーブル30を90°曲げることになるので、ケーブルの屈曲半径を確保するためにケーブル外径の10倍相当以上のダクト巾が必要となり、ダクト31が大型化するという問題があった。また、複数本のケーブルが収納されている場合は、前記屈曲するケーブルを跨ぐ必要があり、ダクトの使用断面積が小さくなるという問題や、ケーブル30を引っ張って取出す際にケーブルを傷付ける現象が発生しやすいという問題もあった。また、上記のようにケーブル取出しのために巾の広い特別なダクトを準備したり、あるいは接続用のハンドホールを設置する必要がありコストアップを招くという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−261945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような問題点を解決して、ケーブルの取出しが容易にできて優れた施工性を発揮することができ、またケーブルを大きく屈曲させないのでダクトを小型化することができるうえ使用断面積も大きくすることができ、更には取出しの際にケーブルが傷付くのを防止することができる配管ダクトを提供することを目的として完成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明の配管ダクトは、上部を開口した断面コ字状のダクト本体と前記開口を塞ぐ蓋体からなるケーブル収納用の配管ダクトであって、前記ダクト本体の側壁面にケーブル引出し用の膨出空洞部を突設し、この膨出空洞部にケーブルを長手方向に対し45°以下の角度で引出す傾斜面を設けたことを特徴とするものである。
【0008】
膨出空洞部が平面視で直角三角形状であり、直角部を頂点としてあるのが好ましく、これを請求項2に係る発明とする。
【0009】
また、膨出空洞部が平面視で等脚台形状であり、等脚部を傾斜面としてあるものとすることもでき、これを請求項3に係る発明とする。
【0010】
前記膨出空洞部をダクト本体の両側壁面に突設することもでき、これを請求項4に係る発明とする。
【0011】
更に、前記ダクト本体内が、セパレータにより通信ケーブルの収納エリアと電源ケーブルの収納エリアに隔離されているものとすることもでき、これを請求項5に係る発明とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、ダクト本体の側壁面にケーブル引出し用の膨出空洞部を突設し、この膨出空洞部にケーブルを長手方向に対し45°以下の角度で引出す傾斜面を設けたので、従来のようにケーブルを大きく屈曲させずに、できる限りケーブルの流れ方向に沿って引出すことが可能となり、ダクトの巾を小型化することができ、また取出しの際にケーブルが傷付くのも防止できることとなる。
【0013】
請求項2に係る発明では、膨出空洞部が平面視で直角三角形状であり、直角部を頂点としてあるので、膨出空洞部の成形を簡単に行うことができ、また強度的にも丈夫なものとすることができる。
【0014】
請求項3に係る発明では、膨出空洞部が平面視で等脚台形状であり、等脚部を傾斜面としてあるので、同様に膨出空洞部の成形を簡単に行うことができ、また強度的にも丈夫なものとすることができる。
【0015】
請求項4に係る発明では、膨出空洞部をダクト本体の両側壁面に突設したので、複数のケーブルを同時に、かつ、いずれの方向にも分岐することができ便利である。
【0016】
また、請求項5に係る発明では、ダクト本体内が、セパレータにより通信ケーブルの収納エリアと電源ケーブルの収納エリアに隔離されているものとしたので、種類の異なったケーブルをスッキリと区分けでき、また任意に分岐させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態を示す斜視図である。
【図2】図1の平面断面図である。
【図3】図1で蓋体を外した状態の斜視図である。
【図4】その他の実施の形態を示す平面断面図である。
【図5】その他の実施の形態を示す平面断面図である。
【図6】その他の実施の形態を示す平面断面図である。
【図7】従来のケーブルの分岐例を示す平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態を示す。
図1は、本発明の配管ダクトの一例を示す斜視図、図2は図1の平面断面図、図3は図1で蓋体を外した状態の斜視図である。この配管ダクトは、高速道路等の端縁部に上面を地上に露出した状態で設置され、ダクト内に収納した電源ケーブルや通信ケーブル等を、必要に応じてダクトから取出したうえ、本線上の設備に接続するものである。
【0019】
図において、1は上部を開口した断面コ字状のダクト本体、2は前記開口を塞ぐ蓋体2であり、30はこの配管ダクト内に収納されるケーブルである。また、前記ダクト本体1と蓋体2は、従来のコンクリート製のダクトではなく、再生プラスチックを原料とした軽量ダクトであるため、成形性に優れており、後述する種々の形状からなるケーブル引出し用の膨出空洞部を形成することが可能である。
図示のものでは、ダクト本体1の大きさは長さが500〜2000mm、巾が150〜300mm、深さが150〜300mm程度のものであるが、これに限定されるものではない。
【0020】
前記ダクト本体1の側壁面1aには、ケーブル引出し用の膨出空洞部3が突設されている。また、この膨出空洞部3には、ケーブル30を長手方向に対し45°以下の角度で引出す傾斜面5が設けられている。
即ち、従来はケーブル30を90°曲げてダクトの側面に形成した孔から取出していたのにかえて、本発明ではケーブル30を長手方向に対し45°以下の角度で引出すことによりダクト本体1内でケーブル30を大きく曲げないようにしてある。45°より大きくなるとケーブル30の曲率半径が大きくなって、巾の広いダクト本体1が必要になるとか、ケーブル30を引出す際に傷をつける等の問題が生じるからである。好ましくは30°以下の角度で、なるべくケーブル30の長手方向と並行に近い角度で引出すことが好ましい。
【0021】
前述したように、ケーブル30を長手方向に対し45°以下の角度で引出すには、膨出空洞部3に透孔4付きの傾斜面5を設ける必要がある。この傾斜面5の存在により、ケーブル30を確実に固定して一定の方向へ引出すことが可能になるのである。なお、前記透孔4はケーブル30を引出す傾斜面5に対し後加工で形成するものであり、また雨水等の浸入を防止するように分岐配管33が装着される。
【0022】
前記膨出空洞部3は、具体的には膨出空洞部3が平面視で直角三角形状であり、直角部を頂点としたものとすることができる。
図1〜図3に示すものでは、膨出空洞部3は平面視で二等辺直角三角形状であり、直角部を頂点として等しい二辺を各々傾斜面5としている。これらの傾斜面5には、引出すケーブルに対応して各々透孔4を設けることができ、ケーブル30をいずれの方向にも、また複数本を同時に引出すことができるようになっている。また、透孔4には分岐配管33を装着して雨水等の浸入を防止している。図示の膨出空洞部3では、ケーブル30を長手方向に対し45°の角度で引出すことができる。
【0023】
図4では、膨出空洞部3が平面視で直角三角形状であり、直角部を頂点としたものが片側に2個ずつ突設してある。直角三角形の残りの角度は略60°、30°であり60°側の傾斜面5に透孔4を設けてケーブル30を長手方向に対し約30°の角度で引出すよう構成されている。なお、ケーブル30をいずれの方向にも、また複数本を同時に引出すことができることは勿論である。
【0024】
図5に示すものでは、膨出空洞部3が平面視で等脚台形状であり、等脚部をケーブル引出し用の傾斜面5としている。等脚部の角度はダクト本体1の長手方向に対し約60°であり、ここに透孔4を設けてケーブル30を長手方向に対し約30°の角度で引出すよう構成されている。なお、ケーブル30をいずれの方向にも、また複数本を同時に引出すことができることは勿論である。
【0025】
また、図示のものでは、膨出空洞部3がダクト本体1の両側壁面1a、1aに突設されており、ケーブル30をいずれの方向にも、また複数本を同時に引出すこともできるようになっているが、用途に応じて片方の側壁面1aにだけ突設したものとしてもよいことは勿論である。
【0026】
更に、図6に示すものでは、ダクト本体1内が、セパレータ6により通信ケーブル30aの収納エリアと電源ケーブル30bの収納エリアに隔離されたものとなっている。
ダクト本体1内に通信ケーブル30aと電源ケーブル30bを併設する場合は、両者を耐火性のある堅牢な隔壁で隔離することが義務付けられているが、この場合にも軽量ダクト製のセパレータ6により内部を分離し、各々の側壁面1a、1aに前記膨出空洞部3を突設しておけば、任意にケーブル30を長手方向に対し約30°の角度で引出すことが可能となる。
【0027】
以上のように構成された本発明の配管ダクトは、高速道路の端縁部に見えるように設置されて使用に供されるものであり、必要に応じてダクト本体内の電源ケーブルや通信ケーブル等が取出されたうえ、本線上の設備に接続される。
本発明では膨出空洞部の傾斜面を介してケーブルを長手方向に対し45°以下の角度で引出すよう構成されているので、ダクト本体内でケーブルを大きく曲げることがなくダクトの巾を小さくすることができる。また、従来のように屈曲したケーブルがダクト本体内を横切らないので、ダクトの使用断面積を小さくすることもない。また、ケーブルを引っ張って取出す際にもケーブルを大きく曲げないので傷付ける心配もない。更には、ケーブル取出しのために巾の広い特別な寸法のダクトを準備する必要がなく、普通のダクトとの互換性もあり必要に応じて任意の場所でケーブルの取出しを行うことができ、またダクトの巾を全て同一サイズに揃えることが可能で外観的にスッキリしてデザイン的にも優れている等の種々の利点を有している。
【符号の説明】
【0028】
1 ダクト本体
2 蓋体
3 膨出空洞部
4 透孔
5 傾斜面
6 セパレータ
30 ケーブル
30a 電源ケーブル
30b 通信ケーブル
33 分岐配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部を開口した断面コ字状のダクト本体と前記開口を塞ぐ蓋体からなるケーブル収納用の配管ダクトであって、前記ダクト本体の側壁面にケーブル引出し用の膨出空洞部を突設し、この膨出空洞部にケーブルを長手方向に対し45°以下の角度で引出す傾斜面を設けたことを特徴とする配管ダクト。
【請求項2】
膨出空洞部が平面視で直角三角形状であり、直角部を頂点としてある請求項1に記載の配管ダクト。
【請求項3】
膨出空洞部が平面視で等脚台形状であり、等脚部を傾斜面としてある請求項1に記載の配管ダクト。
【請求項4】
膨出空洞部がダクト本体の両側壁面に突設されている請求項1〜3のいずれかに記載の配管ダクト。
【請求項5】
ダクト本体内が、セパレータにより通信ケーブルの収納エリアと電源ケーブルの収納エリアに隔離されている請求項1〜4のいずれかに記載の配管ダクト。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−60698(P2012−60698A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198497(P2010−198497)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(391007460)中日本ハイウェイ・エンジニアリング名古屋株式会社 (47)
【Fターム(参考)】