説明

配管モジュール設計・生産支援システムおよび配管モジュールの製造方法

【課題】負荷変動を小さく抑えることができ、安定した品質を確保しつつ、エネルギ効率の向上を図ることができる配管モジュール設計・生産支援システムおよびこの配管モジュール設計・生産支援システムを用いた配管モジュールの製造方法を提供する。
【解決手段】配管モジュール設計・生産支援システム100は、少なくとも1つの端部にフレア加工が施された配管ピースに対応する配管ピースデータと、配管ピースを加工することで作製可能な加工配管ピースに対応する加工配管ピースデータとを含む各種情報が格納された記憶装置111と、作製する配管モジュールに対応する配管モジュールデータを含む各種情報を入力可能な入力部115と、配管モジュールデータの一部に配管ピースデータと加工配管ピースデータとの少なくとも一方を割り付けるCPU110と、CPU110の処理結果を出力する出力部112とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管モジュール設計・生産支援システムに関し、特に、配管モジュールの構築を支援する配管モジュール設計・生産支援システムおよび配管モジュール設計・生産支援システムを用いた配管モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラント等の配管モジュールの工期短縮や現場での作業量の低減等を目的として、所謂プレファブ工法が多用されている。プレファブ工法は、予め部材を工場で生産・加工し、建設現場等で組み立てる工法である。
【0003】
そして、このプレファブ工法により配管工事を行う場合には、受注を受けた後に、まず、配管図をつくる。配管図から配管ピースに分割したアイソメトリック図を作成する。その後、各配管ピースを工場に発注して、各配管ピースを作製し、現場に搬送する。
【特許文献1】特開平8−235235号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来のプレファブ工法においては、受注が重なると、工場における配管ピースの生産負荷が大きくなる。その一方で、受注が少ない時期や受注がない時期においては、工場における負荷が極端に小さくなり、時期によって工場における負荷が大きく変動してしまう。
【0005】
工場における負荷が大きくなると、品質にばらつきが生じやすく、エネルギ効率も悪くなる。
【0006】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、負荷変動を小さく抑えることができ、安定した品質を確保しつつ、エネルギ効率の向上を図ることができる配管モジュール設計・生産支援システムおよびこの配管モジュール設計・生産支援システムを用いた配管モジュールの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の配管モジュール設計・生産支援システムは、少なくとも1つの端部にフレア加工が施された配管ピースに対応する配管ピースデータと、配管ピースを加工することで作製可能な加工配管ピースに対応する加工配管ピースデータとを含む各種情報が格納された記憶部と、作製する配管モジュールに対応する配管モジュールデータを含む各種情報を入力可能な入力部と、配管モジュールデータの一部に配管ピースデータと加工配管ピースデータとの少なくとも一方を割り付ける処理部と、処理部の処理結果を出力する出力部とを備える。
【0008】
好ましくは、上記処理部は、配管モジュールデータのうち、配管ピースデータと加工配管ピースデータとで割り付けられない領域に、新規に製作する部分として、新規製作配管ピースデータを割り付ける。
【0009】
好ましくは、上記工配管ピースは、分岐部を規定する分岐配管ピースと、屈曲部を規定する屈曲配管ピースとを含み、記憶部には、分岐配管ピースに対応する分岐配管ピースデータと屈曲配管ピースに対応する屈曲配管ピースデータとが格納される。そして、上記処理部は、配管モジュールデータの分岐部に対応する分岐配管ピースデータを割り付け、配管モジュールデータの屈曲部に対応する屈曲配管ピースデータを割り付け、分岐部および屈曲部に対応する分岐配管ピースデータおよび屈曲配管ピースデータがないときに、分岐点または屈曲部に新規に作製する部分として、新規製作配管ピースデータを割り付ける。
【0010】
本発明に係る配管モジュールの製造方法は、配管の端部のうち、少なくとも1つの端部にフレア加工を施した配管ピースを準備する工程と、請求項1から請求項3のいずれかに記載の配管モジュール設計・生産支援システムを用いて割付処理を行う工程と、割付処理により配管モジュールに割り付けられた複数の加工配管ピースを、配管ピースを加工して製作する工程と、配管ピースと加工配管ピースの少なくとも一方を用いて、配管モジュールを製作する工程とを備える。
【0011】
なお、本明細書中において、配管モジュールとは、たとえば、各種建築物における熱源機械室、屋上部分、シャフト(垂直配管)内等に配置される配管設備や、プラントにおける主要な据付構成要素としての配管設備を含む概念である。さらに、配管設備に到らなくとも、配管モジュールは、複数の配管を組み合わせることで構築される配管ユニットを含む概念である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る配管モジュール設計・生産支援システムおよび配管モジュールの製造方法によれば、負荷変動を小さく抑えることができ、安定した品質を確保しつつ、エネルギ効率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1から図12を用いて、本実施の形態に係る配管モジュール設計・生産支援システムおよび配管モジュール設計・生産支援システムを用いた配管モジュールの製造方法について説明する。
【0014】
図1は、配管モジュール設計・生産支援システムのブロック図である。この図1に示すように、配管モジュール設計・生産支援システム100は、記憶装置111と、各種データ処理可能なCPU110と、液晶表示装置およびプリンタ等の出力部112と、キーボード等の入力部113と、施工図等の図面データを取り込み可能な入力部115とをを備えている。
【0015】
記憶装置111は、既に一部加工が施された配管ピース120の在庫情報が蓄積された在庫データベース121と、配管ピース120を加工することで製作することができる加工配管ピースおよびその属性情報等が格納された製作可能配管データベース122とを含む。なお、本実施の形態においては、在庫データベース121を記憶装置111内に格納しているが、これに限られず、たとえば、実際に配管ピースや加工配管ピースを製作する工場内に設けられたシステムの記憶部内に格納するようにしてもよい。
【0016】
図2は、複数の種類の配管ピース120の断面図であり、図3は、配管ピース120を加工することで製作可能な加工配管ピース300を示す断面図である。
【0017】
図2に示すように、配管ピース120には、複数の種類があり、この図2においては、その一部を例示する。
【0018】
配管ピース120には、フレア短管201、分岐用フレア短管202、両フレア規格長管203、片フレア長管204、エルボ205、フレアエルボ206、45度エルボ207、およびチーズ管208等がある。
【0019】
そして、いずれの配管ピース120においても、管の端部のうち少なくとも1つの端部には、フレア加工が施されている。なお、両フレア規格長管203においては、両端部にフレア加工が施されている。ここで、フレア加工とは、管本体の周面から外側に広げるように、管の開口部を加工して、円環状のフレア(鍔部)を形成する加工である。そして、記憶装置111には、管種・管径や長さ等の属性情報と、出力部112の液晶表示部等に出力され、配管ピース120を模式的に示す配管ピースモデルに関するデータとを含む配管ピースデータが、配管ピース120ごとに格納されている。
【0020】
図3に示すように、加工配管ピース300は、配管ピース120を組み合わせたり、配管ピース120に加工を施すことで製作されている。なお、図3には、加工配管ピース300の一例を示すものであり、加工配管ピース300は、この図3に示す例に限られない。
【0021】
ここで、加工配管ピース302は、分岐用フレア短管202と両フレア規格長管203とを組み合わせることで、製作可能となっている。加工配管ピース303は、片フレア長管204の長さを調整し、その後、端部にフレア加工を施すことで作製可能となっている。加工配管ピース304は、加工配管ピース303に分岐用フレア短管202を接続することで、作製可能となっいる。
【0022】
加工配管ピース305は、片フレア長管204の長さを調整し、長さ調整された片フレア長管204とエルボ205とを溶接することで作製可能となっている。加工配管ピース306は、長さ調整された片フレア長管204とフレアエルボ206とを溶接することで製作される。加工配管ピース307は、片フレア長管204と45度エルボ207とを溶接することで製作可能となっている。加工配管ピース308は、片フレア長管204とチーズ管208とを接続することで製作可能となっている。
【0023】
ここで、たとえば、備蓄された片フレア長管204から加工配管ピース303を製作する場合に要する労力は、加工配管ピース303を通常の長管から製作する場合に要する労力の略50%程度となっている。さらに、他の加工配管ピースにおいても、備蓄された配管ピース120から製作することで、その製作労力の低減を図ることができる。
【0024】
すなわち、予め一端にフレア加工が施された配管ピース120を備蓄しておくことで、作製が要するようになった加工配管ピース300を小さな労力で製作することができ、短期間で加工配管ピース300を完成させることができる。このため、たとえば、受注が重なったときなどのように、膨大な数の加工配管ピース300を製作する必要があるときにおいても、短期間のうちに必要な加工配管ピース300を製作することができる。そして、たとえば、受注が少ないとき、または、受注がない時期に、配管ピース120を製作し、備蓄する。これにより、工場に加えられる負荷変動の軽減を図ることができ、負荷の均一化を図ることができる。
【0025】
さらに、配管ピース120を先行工場内で製作し備蓄しておくことで、作製作業の大半を予め済ませることができ、トータル工期の短縮を図ることができる。
【0026】
また、予め配管ピース120を計画的に製作することで、限られた資源およびエネルギの中においても最大限に資源およびエネルギの活用を図ることができ、広くは、地球環境の保護をも図ることができる。
【0027】
その上、配管モジュール設計・生産支援システム100によれば、予め配管ピース120を工場内で製作することで、ゆとりのある労働負荷の中で、品質の高い配管ピース120を製作することができ、その結果として、高精度および高品質な設備の構築を図ることができる。
【0028】
なお、記憶装置111の製作可能配管データベース122には、各加工配管ピース300を製作する過程で切断位置や屈曲角度等を調整することで製作可能な形状データおよび属性情報等の形態情報と、加工配管ピース300を模式的に示す加工配管ピースモデルに関するデータとを含む加工配管データが格納されている。
【0029】
さらに、記憶装置111は、汎用品および市販品等の部材データベース123が格納されており、この部材データベース123には、各汎用品、市販品等の図面データおよび属性情報等と、汎用品ごとに当該汎用品を模式的に示す汎用品モデルに関するデータと、市販品ごとに当該市販品を模式的に示す市販品モデルに関するデータとが格納されている。
【0030】
図4は、配管モジュール設計・生産支援システム100の動作フローを示すフロー図である。この図4および図1を用いて、加工配管ピース300を利用して、管割し、発注するまでのフローについて説明する。まず、配管モジュール設計・生産支援システム100の入力部115から、たとえば、設備業者等が作製した施工図CAD(Computer Aided Design)データを取り込み、CPU110が図面データを読み出す(STEP10)。
【0031】
図5は、STEP10の詳細を示すフロー図である。この図5に示すように、まず、入力部115から入力された図面データに属性データが入力されているか否かを判断する(STEP11)。
【0032】
CPU110は、属性データが入力されている場合には、入力された施工図CADデータから、たとえば、DXF(Drawing Interchange file format)データ等によって示された3次元図面データ等の形状ファイルと、属性データファイルとを出力する(STEP13)。ここで、一般に、施工図CADデータは、配管やダクトといった各種設備部材の属性情報を内部データとして保有しているが、異なるCADソフト間では、2次元の絵形状を中心としたデータ交換になり、データを交換しても属性情報が欠落する場合がある。そこで、本実施の形態に係る配管モジュール設計・生産支援システム100においては、部材属性を伴ったCADデータの交換を可能とするデータ交換ソフトとして、たとえば、BE‐Bridge(Building Equipment - BRief Integrated format for Data exchange)等を採用している。なお、「BE-Bridge」は、建築図面を読み込む際に好適であり、たとえば、プラント図面を読み込む際においては他のデータ交換ソフトを用いることとする。
【0033】
そして、CPU110は、属性データファイルと、部材データベース123とを照合し(STEP15)、読み込んだ部材が部材データベース123に登録されているか否かを判断する(STEP17)。
【0034】
そして、CPU110は、読み込んだ属性データファイルの部材が、部材データベース123に登録されていると判断すると、属性データファイルに基づいて、出力部112に出力する(STEP19)。
【0035】
また、CPU110は、読み込んだ図面CADデータに属性が入力されていない場合や、属性データファイルの部材が、部材データベース123内に登録されていない場合には、形状ファイルに基づいて出力部112に出力する(STEP21)。図8に、図面CADデータを読み込んで、配管モジュールを示す配管モジュールモデル400を出力部112に出力したときの様子を示す。なお、この際、CPU110は、配管モジュールの寸法等の各種情報と、当該配管モジュールの形状情報とを記憶装置111の図面データ格納部124に格納する。
【0036】
そして、図4に示すように、CPU110は、出力された配管モジュールの図面データについて、各種チェックを行う(STEP30)。
【0037】
具体的には、CPU110は、出力された配管モジュールモデル400において、たとえば、表示されたシンボルの配置基準点に配管が存在しないとき、同径の配管が分割されているとき、配管同士が重なり合っているとき等に、その旨のエラー表示を出力部112に出力する。
【0038】
この際、ユーザは、入力部113を用いて、図面データ格納部124に格納された図面データを加工したり、当該エラーを無視することができる。
【0039】
そして、図4において、CPU110は、ユーザによる入力部113の操作によって、エラー部分の修正等が完了した旨の指令を入力部113から受けると、修正後の図面データを、たとえば、DWGファイル形式等によって出力する。
【0040】
この際、ユーザは、入力部113等を操作することで、たとえば、作図範囲を分割することができ、たとえば、配管系統ごとに作図範囲を分割することができる。そして、CPU110は、選択された部分ごとに、たとえば、DWGファイル形式等で書きだす(STEP40)。なお、図9は、選択された配管系統モジュールを示す配管系統モジュールモデル410を書き出したときの様子を示す図である。本実施の形態においては、図面CADデータにおいて、配管系統を構成する配管系統モジュールごとに区分した例について説明する。
【0041】
そして、CPU110は、配管系統を構成する配管系統モジュールを示すファイルを記憶装置111の図面データ格納部124に格納する(STEP60)。この取り込みの際、CPU110は、弁類やレジューサのシンボルや配管ルートについても取り込むことができる。
【0042】
ユーザは、書き出された配管系統モジュールのデータにおいて、弁類・レジューサのシンボルの交換、通り芯の作成、および属性の設定等を行うことができる。なお、DWGファイルとして書き出された図面データ上に、施工図CADデータの芯−芯寸法等の情報を表示させることもできる(STEP60)。図10は、通り芯、弁およびレジューサ等を出力部112に表示したときの配管系統モジュールモデル410の一部を示す。なお、図10に示された配管系統モジュールモデル410には、施工図CADデータ内に格納された寸法L1と、シンボルSYが表示されている。
【0043】
CPU110は、出力部112の液晶表示部に示された配管系統モジュールモデル410に、加工配管ピース300に対応する加工配管ピースモデルを割り付ける(STEP70)。CPU110は、所定の規則にしたがって、配管系統モジュールモデル410に管割を施す。
【0044】
管割りの手法としては、たとえば、図6および図7に示すように、まず、CPU110は、配管系統モジュールモデル410に示された配管系統モジュールの分岐点を選出する(STEP71)。CPU110は、製作可能配管データベース122にアクセスして、選出された分岐点に対応する加工配管ピースの有無を判断する(STEP72,73)。
【0045】
CPU110は、対応する加工配管ピースがある場合には、加工配管ピースモデルを配管系統モジュールモデル410に当てはめる(STEP74)。CPU110は、対応する加工配管ピースがない場合には、部材データベース123にアクセスして、汎用品や市販品の中に、分岐点に対応する配管があるか否かを判断する(STEP75)。CPU110は、汎用品や市販品の中に対応する配管があると判断すると、当該汎用品や市販品に該当する汎用品モデルまたは市販品モデルを配管系統モジュールモデル410に割り付ける。(STEP76)。CPU110は、製作可能配管データベース122および部材データベース123内に分岐点に対応するものが見当たらないときには、新規に作成する部分として判断して、新規作成配管ピースモデルを配管系統モジュールモデル410の当該分岐点に割り付ける(STEP77)。なお、記憶装置111には、新規製作成配管ピースに関する形状データおよび属性情報等が格納される。
【0046】
CPU110は、配管系統モジュールモデル410内における屈曲点を選出する(STEP78)。そして、CPU110は、製作可能配管データベース122にアクセスして(STEP79)、当該屈曲点に対応する加工配管ピースの有無を判断する(STEP80)。CPU110は、当該屈曲点に対応する加工配管ピースがあると判断した際には、当該加工配管ピースに対応する加工配管ピースモデルを当該屈曲点に割り付ける(STEP81)。CPU110は、屈曲点に対応する加工配管ピースがないと判断すると、部材データベース123にアクセスして、汎用品や市販品の中に、当該屈曲点に対応する配管があるか否かを判断する(STEP82)。汎用品や市販品の中に当該屈曲点に対応する配管があると判断すると、当該汎用品の汎用品モデルまたは市販品モデルが配管系統モジュールモデル410に割り付けられる(STEP83)。
【0047】
CPU110は、製作可能配管データベース122および部材データベース123内に対応する配管がないと判断すると、新規に作成する部分として判断して、これに対応する新規作成配管ピースモデルを当該分岐点に当てはめる(STEP84)。この際、記憶装置111には、新規作成配管ピースに関する形状情報および属性情報が格納される。
【0048】
CPU110は、配管系統モジュールモデル410に配置された弁やレジューサ等の機器を示すシンボルと、分岐点と、屈曲点とを選出する。ここで、シンボルおよび分岐点間と、シンボルおよび屈曲点間と、シンボル同士間と、分岐点および屈曲点間と、分岐点同士間と、屈曲同士間に位置する部分は、主に直管で構築することができる。そこで、CPU110は、上記区間を所定の長さの直管の加工配管ピースを割り当てる(STEP85)。そして、出力部112に出力された配管系統モジュールモデル410には、当該長管の加工配管ピース300を示す加工配管ピースモデルが割り付けられる。
【0049】
加工配管ピース300を割付可能か否かを判断する前に、配管ピース120を割付可能か否かを判断するようにしてもよい。この場合、記憶装置111は、配管ピース120の形状および属性データが格納されたデータベースを備える。そして、CPU110は、まず、当該データベースにアクセスして、配管系統モジュールモデル410内における直線部分に、割付可能な配管ピース120の有無を判断する。そして、割付可能な配管ピース120がある場合には、出力部112に示された配管系統モジュールモデル410上に、当該配管ピース120の配管ピースモデルが割り付けられる。これにより、図2に示す両フレア規格長管203を優先的に割り付けることができ、必要な加工工程を低減することができる。このようにして、CPU110は、選択された配管モジュールの管割を完了する。
【0050】
なお、上記のような管割の手法は、一例であって、この管割の手法に限られない。たとえば、従来の自動管割と同様に、まず、配管モジュールモデルを複数の配管(分割配管)に分割する。そして、CPU110は、製作可能配管データベース122および部材データベース123にアクセスして、各分割配管に対応する配管ピースの有無を判断する。
【0051】
そして、CPU110は、分割配管に対応する配管ピースがある場合には、当該分割配管にかえて、検出された配管ピースモデルを配管系統モジュールモデル410に割り当てる。CPU110は、分割配管に対応する配管ピースがないと判断すると、部材データベース123にアクセスして、汎用品や市販品の中に、対応する配管の有無を検索する。そして、汎用品や市販品の中に、分割配管に対応する配管があると判断すると、当該既成品に該当する汎用品モデルまたは市販品モデルを割り当てる。
【0052】
CPU110は、分割配管に対応する加工配管ピース300または汎用品や市販品の配管ピースがないと判断すると、新規に製作する部分として、新規作成配管ピースモデルを割り当てる。
【0053】
CPU110は、管割が完了すると、加工配管ピースモデル、配管ピースモデルまたは新規作成配管ピースモデルによって分割された配管系統モジュールモデル410を出力部112に表示する。なお、図11は、自動管割が完了したときの出力部112を示す。なお、この図11に示された配管系統モジュールモデル410においては、各加工配管ピースの寸法L2等も表示されている。
【0054】
その後、図4において、CPU110は、各配管ピースまたは、配管ピースおよび新規作成配管ピースに配管番号を付与する(STEP89)。図12は、配管番号Pを付与する様子を示す出力部112を示す。
【0055】
なお、製作可能配管データベース122および部材データベース123には、各配管番号Pごとに属性情報や形状データが格納されている。
【0056】
ここで、CPU110は、在庫データベース121にアクセスして、割り付けられた各配管ピースに対応する配管ピース120の有無を判断してもよい
CPU110は、配管番号Pを付与したのち、各配管番号Pごとに、手配情報を入力する入力フォームを出力部112に表示する。ユーザは、入力部113を操作することで、入力フォームにしたがって、手配情報を記入し、記憶装置111に記憶させることができる(STEP90)。
【0057】
なお、この手配情報には、各配管番号Pごとに、対応する配管ピースの属性データ等が表示され、ユーザは、入力部113を用いて入力および変更可能となっている。そして、配管ピース120の在庫の有無の情報も、および、対応する配管ピース120に関する情報も、この手配情報に含めてもよい。
【0058】
CPU110は、ユーザの入力部113の操作によって、手配情報の入力が完了したことを確認すると、手配範囲の設定を行う設定フォームを出力部112に表示する(STEP100)。
【0059】
CPU110は、手配範囲の選択が完了したことを確認すると、手配選択された各配管ピースの属性データ等について入力漏れがないかをチェックする(STEP110)。
【0060】
CPU110は、入力漏れがないことを確認すると、たとえば、DWGファイル形式等で一品図を作成して、記憶装置111に格納する。さらに、一品図を出力部112のプリンタから出力する(STEP120〜122)。
【0061】
加工配管ピースの作製依頼書等と共に、工場等に作製を依頼する加工配管ピース300のデータを送信する(STEP130)。なお、図2に示す両フレア規格長管203が管割によって用いられる場合には、両フレア規格長管203に関する作製依頼書が作製されると共に、作製依頼のデータが送信される。さらに、CPU110は、部材集計を行う(STEP140)。工場においては、受信した加工配管ピースのデータに基づいて、依頼された加工配管ピースを作製する。
【0062】
そして、依頼された加工配管ピース300に対応する配管ピース120の在庫がある場合には、当該配管ピース120に加工を加えることで、依頼された加工配管ピースを製作することができる。
【0063】
ここで、工場においては、各加工配管ピース300ごとに、配管ピース120からの作製工程を示すデータベースを用意し、当該標準化された作製工程に準じて加工配管ピースを製作することで、さらに短い期間で依頼された加工配管ピースを製作することができる。
【0064】
さらに、工場において、依頼された新規作成配管ピースを作製すると共に、依頼された両フレア規格長管203等の配管ピース120を現場に搬送する。
【0065】
ここで、現場において、ルート変更や加工を行う必要が生じた場合には、変更後の配管系統図データを、配管モジュール設計・生産支援システム100に入力し、記憶装置111に格納する。そして、CPU110は、変更後の配管系統図データに基づいて、上記STEP70と同様に、管割を行う。
【0066】
そして、変更後の加工配管ピースおよび新規作成配管ピースと、変更前の加工配管ピースおよび新規作成配管ピースとを比較して、変更となった加工配管ピースおよび新規作成配管ピースとを特定する。
【0067】
その後、上記STEP89からSTEP120と同様の処理を行って、CPU110は
変更後の加工配管ピースおよび新規作成依頼配管ピースの作製依頼書および加工配管ピースのデータを工場に送信する。
【0068】
工場においては、ルート変更等により新たに製作が必要となった加工配管ピースについては、配管ピース120を加工することで短期間に製作することができる。
【0069】
これにより、現場において、ルート変更が生じたとしても、短期間で対応することができ、作業負荷の変動を解消することができる。このように、配管モジュール設計・生産支援システム100によれば、現場でルート変更等の必要が生じたとしても、そのルート変更等に伴う作業を工場内で処理することができ、現場での作業を大幅に低減することができ、現場における安全性の向上を図ることができる。
【0070】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、配管モジュールの製作を支援するための配管モジュール設計・生産支援システムに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】配管モジュール設計・生産支援システムのブロック図である。
【図2】複数の種類の半加工配管ピースの断面図である。
【図3】半加工配管ピースを加工することで製作可能な配管ピースを示す断面図である。
【図4】配管モジュール設計・生産支援システムの動作フローを示すフロー図である。
【図5】管割の制御フローを示すフロー図である。
【図6】管割の制御フローを示すフロー図である。
【図7】STEPの詳細を示すフロー図である。
【図8】図面CADデータを読み込んで出力したときの出力部の画面である。
【図9】選択された配管系統モジュールを示す配管系統モジュールモデルを書き出したときの様子を示す図である。
【図10】配管系統モジュールモデルの一部の出力部の画面である。
【図11】自動管割が完了したときの出力部の画面である。
【図12】配管番号を付与する様子を示す出力部の画面である。
【符号の説明】
【0073】
100 配管モジュール設計・生産支援システム、111 記憶装置、112 出力部、113,115 入力部、120 半加工配管ピース、121 在庫データベース、122 製作可能配管データベース、123 部材データベース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの端部にフレア加工が施された配管ピースに対応する配管ピースデータと、前記配管ピースを加工することで作製可能な加工配管ピースに対応する加工配管ピースデータとを含む各種情報が格納された記憶部と、
作製する配管モジュールに対応する配管モジュールデータを含む各種情報を入力可能な入力部と、
配管モジュールデータの一部に前記配管ピースデータと前記加工配管ピースデータとの少なくとも一方を割り付ける処理部と、
前記処理部の処理結果を出力する出力部と、
を備えた、配管モジュール設計・生産支援システム。
【請求項2】
前記処理部は、前記配管モジュールデータのうち、前記配管ピースデータと前記加工配管ピースデータとで割り付けられない領域に、新規に製作する部分として、新規製作配管ピースデータを割り付ける、請求項1に記載の配管モジュール設計・生産支援システム。
【請求項3】
前記加工配管ピースは、分岐部を規定する分岐配管ピースと、屈曲部を規定する屈曲配管ピースとを含み、
前記記憶部には、前記分岐配管ピースに対応する分岐配管ピースデータと前記屈曲配管ピースに対応する屈曲配管ピースデータとが格納され、
前記処理部は、前記配管モジュールデータの分岐部に対応する前記分岐配管ピースデータを割り付け、前記配管モジュールデータの屈曲部に対応する前記屈曲配管ピースデータを割り付け、前記分岐部および前記屈曲部に対応する分岐配管ピースデータおよび屈曲配管ピースデータがないときに、前記分岐点または前記屈曲部に新規に作製する部分として、新規製作配管ピースデータを割り付ける、請求項1または請求項2に記載の配管モジュール設計・生産支援システム。
【請求項4】
配管の端部のうち、少なくとも1つの端部にフレア加工を施した配管ピースを準備する工程と、
請求項1から請求項3のいずれかに記載の配管モジュール設計・生産支援システムを用いて割付処理を行う工程と、
前記割付処理により配管モジュールに割り付けられた複数の加工配管ピースを、前記配管ピースを加工して製作する工程と、
前記配管ピースと前記加工配管ピースの少なくとも一方を用いて、前記配管モジュールを製作する工程と、
を備えた、配管モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−277134(P2009−277134A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129740(P2008−129740)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(000148726)株式会社多久製作所 (8)
【Fターム(参考)】