説明

配管保温材

【課題】配管と配管を保温するために配管を被覆する保温材との間に空隙(空間)を形成し、保温材と配管を非接触状態で支持する支持構造を極めて簡易且つ確実に実現できる配管保温材を提供する。
【解決手段】配管保温材10は、円筒形状のものを長手方向に2分割した半円形状の保温材本体11からなるものであり、その内径を配管の外径よりも大きくした内面側12を形成するとともに、配管長手方向に亘って非連続(等間隔で3箇所)で配管の外周面と接触する突起部13を配管円周方向に2箇所形成している。同突起部13が配管の外周面81と接触し、保温材本体11の内面側12を配管の外周面と部分的に接触させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、配管と配管を保温するために配管を被覆する保温材との間に空隙(空間)を形成し、保温材を配管と非接触状態で支持する配管保温技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、配管を被覆する保温材は、配管の外周面に直接取り付けられていた。このため、保温材(保温材内側・内部・外側)に溜まる水分が、配管を腐食させる原因となっており、これを防止するために配管と保温材の間に空隙(空間)を設けることが好ましい。空隙(空間)を設けることで、配管表面(外周面)に付着した水分を乾燥させることができるからである。
【0003】
上記方法は、オランダの石油化学関連規格(Cini:CommissieIsolatie Nederlandse Industrie)にも記載されている。例えば、非特許文献1には、スペーサーをネジ止めした帯鋼(鉄製)を配管に巻き、その後線径3mm、目開き50mmの金網をセットし、最後に再度帯鋼で金網を固定する方法が開示されている。図9に、その概要を示す。しかしながら、非特許文献1に開示された技術は、工程が複雑で作業効率が悪かった。保温材を施工する配管は長尺なものも多く、作業効率が悪いと多大な時間とコストが掛かることになる。
【0004】
そこで、本願出願人(ニチアス株式会社)は、配管と保温材の間を非接触状態で支持し、簡単な施工にて空隙を形成することのできるスペーサー(支持部材)を発明した。詳しくは、特許文献1に開示されているように、配管90の外周面に対して放射状に立設させる複数の接触棒11と、その接触棒11を固定するとともに接触棒11の反配管90側において配管90の外周面から離れた周囲を周回して前記の断熱材40における配管90側の面を支持する帯板19と、前記接触棒11における反配管90側の端部において前記帯板19を固定する帯板固定部15とを備え、接触棒11は、非金属製(たとえばセラミック製)とし、パイプ形状に形成するものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Cini4.1.34 (2006年10月1日)
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−31948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これに対して、本願発明は、上記する本願出願人による特許文献1に記載の発明を更に発展させて、配管と保温材とを非接触状態で支持するための支持構造を極めて簡易且つ確実に実現できる配管保温材の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本願発明の第1の発明は、配管との間に空隙を形成しながら配管を被覆する配管保温材であって、配管の長手方向に沿って被覆する保温材本体が、配管の外周面と相対する保温材本体の内面側を配管の外周面と部分的に接触する形状に形成したことを特徴とするものである。
第2の発明は、保温材本体の内径を配管の外径よりも大きく形成した保温材本体の内面側に、配管長手方向に亘って非連続で配管の外周面と接触する突起部を配管円周方向に1又は複数形成したことを特徴とする同配管保温材である。
第3の発明は、保温材本体の内径を配管の外径よりも大きく形成した保温材本体の内面側に、配管長手方向に亘って連続して配管の外周面と接触する突条部を配管円周方向に1又は複数形成したことを特徴とする同配管保温材である。
第4の発明は、保温材本体の内面側を多角形状にし、多角形状の各辺を配管の外周面と接触するように形成したことを特徴とする同配管保温材である。
第5の発明は、保温材本体の内面側に形成された配管に対する非接触面と配管外周面との間隔を10mm以下になるように形成されたことを特徴とする同配管保温材である。
【発明の効果】
【0009】
本願発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)配管の長手方向に沿って被覆する保温材本体が、配管の外周面と相対する保温材本体の内面側を配管の外周面と部分的に接触する形状に形成したことで、配管を被覆するとともに配管との間に自ずと空隙を形成できるので、配管と保温材とを非接触状態で支持するための支持構造を極めて簡易且つ確実に実現できる。
(2)保温材本体の内径を配管の外径よりも大きく形成した保温材本体の内面側に、配管長手方向に亘って非連続で配管の外周面と接触する突起部を配管円周方向に1又は複数形成したことで、配管を被覆するとともに配管との間に自ずと安定した空隙を形成できる。
(3)保温材本体の内径を配管の外径よりも大きく形成した保温材本体の内面側に、配管長手方向に亘って連続して配管の外周面と接触する突条部を配管円周方向に1又は複数形成したことで、配管を被覆するとともに配管との間に自ずと安定した空隙を形成できる。
(4)保温材本体の内面側を多角形状にし、多角形状の各辺を配管の外周面と接触するように形成したことで、配管を被覆するとともに配管との間に自ずと安定した空隙を形成できる。
(5)保温材本体の内面側に形成された配管に対する非接触面と配管外周面との間隔を10mm以下になるように形成したことで、保温材の保温性能を低下させることなく、配管の腐食防止という目的を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本願発明の第1実施形態を示す説明図(1)。
【図2】本願発明の第1実施形態を示す説明図(2)。
【図3】本願発明の第2実施形態を示す説明図(1)。
【図4】本願発明の第2実施形態を示す説明図(2)。
【図5】本願発明の第3実施形態を示す説明図(1)。
【図6】本願発明の第3実施形態を示す説明図(2)。
【図7】本願発明の第4実施形態を示す説明図(1)。
【図8】本願発明の第4実施形態を示す説明図(2)。
【図9】従来技術を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1及び図2は、本願発明に係る第1の実施形態(第1実施形態)を図示したものであり、図3及び図4は、本願発明に係る第2の実施形態(第2実施形態)を図示したものであり、図5及び図6は、本願発明に係る第3の実施形態(第3実施形態)を図示したものであり、図7及び図8は、本願発明に係る第4の実施形態(第4実施形態)を図示したものである。
【0012】
まず、第1実施形態について説明する。図1に示すように、第1実施形態に係る配管保温材10は、円筒形状のものを長手方向に2分割した半円形状の保温材本体11からなるものである。なお、図示した保温材本体11は2分割されたものであるが、1又は複数の組合せで配管を被覆できるものであれば、これに限定されるものではない(その他の実施形態においても同じ)。また、保温材本体11は保温性に優れたものであればその材質は特に問わないが、加工性・施工性・コスト等を勘案するとけい酸カルシウム製のものが好ましい(その他の実施形態においても同じ)。
【0013】
保温材本体11は、その内径を配管の外径よりも大きくした内面側12を形成するとともに、配管長手方向に亘って非連続(等間隔で3箇所)で配管の外周面と接触する突起部13を配管円周方向に2箇所形成している。ここで、突起部13は金型成型の他に、保温材本体11の内面側12を切削加工することによって形成してもよいし、突起部材を同内面側12に取り付けることで形成してもよい。後者の場合、保温材本体11と突起部材は同材質のものであってもよいし、異材質のものであってもよい。
【0014】
図2は、配管保温材10の使用状態を図示した断面図である。図2に示すように、保温材本体11の内面側12に形成された突起部13が配管80の外周面81と接触し、保温材本体11の内面側12を配管80の外周面81と部分的に接触させることになる。これによって、配管保温材10は配管80を被覆するとともに配管80との間に自ずと空隙(空間)19を形成できて、配管80と配管保温材とを非接触状態で支持するための支持構造を極めて簡易且つ確実に実現できる。
【0015】
同様に、第2実施形態について説明する。図3及び図4に示すように、第2実施形態に係る配管保温材20は、第1実施形態と同じ半円形状の保温材本体21の内面側22に、配管長手方向に亘って連続して配管の外周面と接触する突条部23を配管円周方向に2箇所形成している。突条部23の材質や配管保温材10の使用状態は、第1実施形態の場合と同じであるので、その説明を省略する。
【0016】
次に、第3実施形態について説明する。図5に示すように、第3実施形態に係る配管保温材30は、第1実施形態と同じ半円形状の保温材本体31の内面側32を2体合わせて6角形の多角形状になるように形成するとともに、6角形状の各辺33を配管の外周面と接触するように形成したものである。ここで、内面側32の多角形状は金型成型の他に、保温材本体31の内面側32を切削加工することによって形成してもよい(第4実施形態において同じ)。
【0017】
図6は、配管保温材30の使用状態を図示した断面図である。図6に示すように、保温材本体31の内面側32に形成された6角形状の各辺33を配管80の外周面81と接触し、保温材本体31の内面側32を配管80の外周面81と部分的に接触させることになる。これによって、配管保温材30は配管80を被覆するとともに配管80との間に自ずと空隙(空間)39を形成できて、配管80と配管保温材とを非接触状態で支持するための支持構造を極めて簡易且つ確実に実現できる。
【0018】
同様に、第4実施形態について説明する。図7に示すように、第4実施形態に係る配管保温材40は、第1実施形態と同じ半円形状の保温材本体41の内面側42を2体合わせて8角形の多角形状になるように形成するとともに、8角形状の各辺43を配管の外周面と接触するように形成したものである。
図8は、配管保温材40の使用状態を図示した断面図であるが、その使用状態は図6に示す第3実施形態の場合と同じであるので、その説明は省略する。
【0019】
上記した第1実施形態〜第4実施形態によって、配管と配管保温材の間に簡易且つ確実に空隙(空間)を設けることができた。これによって配管の腐食を防止できることになるが、空隙(空間)の広さによっては保温材の保温性能を低下させることにつながり、保温材の目的を没却することになりかねない。従って、保温材の保温性を保持しつつ、配管の腐食を防止できる調和のとれた空隙(空間)を備えることが重要になる。そこで、保温材本体の内面側に形成された配管に対する非接触面と配管外周面との間隔を10mm以下になるように形成したことで、保温材の保温性能を低下させることなく、配管の腐食防止という目的を達成することが判明した。よって、本願発明に係る配管保温材は、保温材本体の内面側に形成された配管に対する非接触面と配管外周面との間隔を10mm以下になるように形成することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本願発明に係る配管保温材は、プラントその他各種配管の保温材として、特に温度の上下動の大きい枝管の腐食防止に広く利用できるものである。また、新設又は既設のいずれの配管にも利用できるものである。
【符号の説明】
【0021】
10 配管保温材(第1実施形態)
11 保温材本体
12 内面側
13 突起部
19 空隙(空間)
20 配管保温材(第2実施形態)
21 保温材本体
22 内面側
23 突条部
30 配管保温材(第3実施形態)
31 保温材本体
32 内面側
33 各辺
39 空隙(空間)
40 配管保温材(第4実施形態)
41 保温材本体
42 内面側
43 各辺
80 配管
81 外周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管との間に空隙を形成しながら配管を被覆する配管保温材であって、
配管の長手方向に沿って被覆する保温材本体が、配管の外周面と相対する保温材本体の内面側を配管の外周面と部分的に接触する形状に形成したことを特徴とする配管保温材。
【請求項2】
保温材本体の内径を配管の外径よりも大きく形成した保温材本体の内面側に、配管長手方向に亘って非連続で配管の外周面と接触する突起部を配管円周方向に1又は複数形成したことを特徴とする請求項1記載の配管保温材。
【請求項3】
保温材本体の内径を配管の外径よりも大きく形成した保温材本体の内面側に、配管長手方向に亘って連続して配管の外周面と接触する突条部を配管円周方向に1又は複数形成したことを特徴とする請求項1記載の配管保温材。
【請求項4】
保温材本体の内面側を多角形状にし、多角形状の各辺を配管の外周面と接触するように形成したことを特徴とする請求項1記載の配管保温材。
【請求項5】
保温材本体の内面側に形成された配管に対する非接触面と配管外周面との間隔を10mm以下になるように形成されたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の配管保温材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−7429(P2013−7429A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140068(P2011−140068)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】