説明

配管保護方法

【課題】 ステンレス鋼製の金属板を使用することなく、配管と配管用架台との接触部分に耐食加工を施すことができる配管保護方法を提供すること。
【解決手段】 ペースト状の耐食性樹脂10が土手部5の上端面に対して略面一となるように成型型シート2の充填凹部4内に充填される。その後、粘着しろ6から剥離紙7が剥がされ、施工キット1が配管50と架台52との間に差し入れ、充填凹部4内の耐食性樹脂10を被保護箇所に密着させ、成型型シート2の土手部5を配管50の外周面51に密着させるように成型型シート2を配管50に捲回し、粘着しろ6を配管50の外周面51に貼着させ、成型型シート2を配管50に固定する。そして、所定時間放置してペースト状の耐食性樹脂10を経時硬化させた後、配管50から粘着シート3が剥がされて成型型シート2が離型されると、配管50の外周面51に耐食保護層20が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設又は新設の配管外周面と配管用架台との接触部分に対して耐食加工を施すことで、配管及び配管用架台の腐食防止や、配管の漏れ対策にも使用可能な配管保護方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、鋳鉄製または鋼製の配管については、工場設備などの建設用配管や送水用の水圧鉄管などとして広く利用されているが、屋内外を問わず腐食による経年劣化が問題となっている。特に、これらの配管が架台に載置(載上)され固定されている場合、その配管の荷重、配管内の流体移動に伴う振動、及び、配管の熱収縮に伴う摩擦などによって、配管と架台との接触部分で、配管自体又はその塗膜に損傷が生じて、その損傷から発錆して腐食が進行することが問題となっている。
【0003】
また、配管と架台とが異種金属である場合には異種金属接触腐食(ガルバニック腐食)が起こって配管の腐食劣化を急速に進行させてしまうことがある。しかも、既設の配管にあっては、架台との接触部分に海塩粒子、ほこり、雨水等が溜まりやすく、これらの影響で配管の腐食劣化が更に加速される傾向にある。そこで、本願出願人は、上記した不具合を解消すべく、特許文献1記載において配管と架台との接触部分を防食することが可能な配管保護部材を提案している。
【特許文献1】特開平11−315993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した配管保護部材では、配管と架台との間に配管の外周曲面に合致した湾曲状のステンレス板を使用するため、かかるステンレス板を湾曲状に前加工する必要があり、ステンレス自体の素材価格も高価であることとも相俟って、施工コストが高額となってしまうという問題点があった。
【0005】
また、ステンレス鋼自体は、通常の炭素鋼に比べて耐食性が優位ではあるが、ステンレス鋼の不働態被膜が破壊される状況下、例えば、ステンレス板と架台との間に海塩粒子及び雨水等が入り込んだ状況下で長時間放置されると、そこから腐食が進行してしまうという問題点もあった。更に、ステンレス板と架台とが異種金属である場合にはガルバニック腐食により架台の方が腐食してしまうという問題点もあった。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、ステンレス鋼製の金属板を使用することなく、配管と配管用架台との接触部分に耐食加工を施すことができる配管保護方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために請求項1記載の配管保護方法は、既設又は新設の配管の外周面と配管用架台との接触部分に対して行われる方法であり、特に、所定の平面形状に凹設される有底状の充填凹部とその充填凹部の周囲を囲繞する土手部とが一面に形成され、且つ、他の樹脂材料に対する離型性と配管の外周面に沿って湾曲自在な柔軟性とを有した樹脂材料で形成される板状の成型型シートを使用してするものであって、経時硬化性を有するペースト状で且つ配管素材に対する接着性を有する耐食性樹脂を、成型型シートの充填凹部に充填する充填工程と、その充填工程後に前記成型型シートにおける充填凹部の凹設面を配管外周面に対向させ、その充填凹部内の耐食性樹脂を被保護箇所に密着させ、前記成型型シートの土手部を配管外周面に密着させるようにその成型型シートを配管外周に捲回し固定する固定工程と、その固定工程後に放置して前記充填凹部内にあるペースト状の耐食性樹脂を経時硬化させる硬化工程と、その硬化工程後に前記固定工程により配管外周に固定された前記成型型シートを離型する離型工程とを備えている。
【0008】
請求項2記載の配管保護方法は、請求項1記載の配管保護方法において、前記成型型シートに比べて平面サイズが大きな粘着面を有する粘着シートと、その粘着シートの粘着面における略中央部分に前記充填凹部の非凹設面が当着される前記成型型シートと、その成型型シートとの非当着部分にあたる前記粘着シートの粘着面であって前記成型型シートの周囲に設けられる所定幅の粘着しろと、その粘着しろの表面を被覆する剥離紙とを備えた施工キットを使用する配管の保護方法であり、前記固定工程は、前記施工キットにおける前記粘着しろから前記剥離紙を剥がして除去する剥離紙除去工程を備えており、その剥離紙除去工程により前記剥離紙が除去された前記粘着しろを配管の外周面に貼着させることによって、前記成型型シートを配管外周面に捲回させて固定するものである。
【0009】
請求項3記載の配管保護方法は、請求項1記載の配管保護方法において、前記成型型シートは前記土手部の表面が永久磁石化されており、前記固定工程は、前記土手部の磁力によって、その土手部を磁性体製の配管外周面に吸着させて、前記成型型シートを配管外周に固定するものである。
【0010】
請求項4記載の配管保護方法は、請求項1から3のいずれかに記載の配管保護方法において、前記充填工程は、前記ペースト状の耐食性樹脂を前記成型型シートに充填凹部に充填する場合、その耐食性樹脂を前記土手部に対して略面一状に充填するものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の配管保護方法によれば、成型型シートの充填凹部に充填されたペースト状の耐食性樹脂は充填凹部の深さと略等しい厚みで配管外周面の被保護箇所に接着硬化されるので、その硬化した耐食性樹脂によって配管外周面に厚みのある耐食保護層を形成することができる。よって、配管の配管用架台との接触部分に防食加工を施す場合や配管の漏れ補修を施す場合に、配管外周面にステンレス板を巻き付ける必要がなく、その分、配管の防食加工を安価に施工できるという効果がある。
【0012】
しかも、固定工程によって成型型シートを配管外周に捲回し固定させるだけで配管外周面の湾曲形状に合致した耐食保護層を接着できるので、ステンレス板を配管サイズに合わせて前加工する必要もなく、且つ、あらゆる外径サイズの配管外周に耐食保護層を容易に形成できるという効果がある。また、硬化後の耐食性樹脂が配管と配管用架台との間に介在することで、かかる両者のガルバニック腐食を防止でき、当然に耐食性樹脂と配管用架台のとの間部分で発生が危惧されるガルバニック腐食をも防止できるという効果がある。
【0013】
請求項2記載の配管保護方法によれば、請求項1記載の配管保護方法の奏する効果に加え、施工キットにおける成型型シートの周囲には粘着シートの粘着面からなる粘着しろが予め設けられている。よって、かかる粘着しろから剥離紙を剥がしさえすれば、成型型シートを配管外周面に捲回させながら、それと同時に配管外周面に粘着しろを貼着させて、短時間で手際よく成型型シートを配管外周面に容易に固定できるという効果がある。
【0014】
請求項3記載の配管保護方法によれば、請求項1記載の配管保護方法の奏する効果に加え、施工キットにおける成型型シートの土手部を磁性体製の配管外周面に密着させるだけで、その土手部の磁力によって成型型シートを配管外周面に捲回させながら吸着させることができ、短時間で手際よく成型型シートを配管外周面に容易に固定できるという効果がある。
【0015】
請求項4記載の配管保護方法によれば、請求項1から3のいずれかに記載の配管保護方法の奏する効果に加え、予め成型型シートに凹設される充填凹部の深さを、硬化後の耐食性樹脂で形成される耐食保護層に必要な厚みと略等しく設定しておけば、ペースト状の耐食性樹脂を土手部と略面一に充填凹部に充填するだけで、離型工程後に適正な厚みの耐食保護層を取得できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の配管保護方法の一実施例である配管保護工法に使用される施工キット1の斜視図であって、図中では剥離紙7が僅かに粘着シート6から剥がされた状態を図示している。図2は、施工キット1の平面図であり、図3は、図2のIII−III線における縦断面図である。施工キット1は、後述する耐食保護層20(図6参照)を配管50の外周面51に施工するための器具一式である。
【0017】
図1に示すように、施工キット1は、主として、成型型シート2と、粘着シート3とを備えている。成型型シート2は、配管保護工法に使用される耐食保護層20(図6参照)を成型するための成型型である。この成型型シート2は、他の樹脂材料に対する離型性と配管50の外周面51に沿って湾曲自在な柔軟性とを有した樹脂材料によって、平面視略正方形状(図2参照)の板状に形成されている。なお、成型型シート2の素材たる樹脂材料としては、例えば、シリコンゴム等のゴム系樹脂を使用することができ、成型型シート2の厚みは、例えば、略2mm程度でも良い。
【0018】
また、この成型型シート2には、その一面(図1中の上面)(以下「表面」ともいう。)に凹設される有底状の充填凹部4と、その充填凹部4の周囲を囲繞する土手部5とが形成されている。ここで、充填凹部4は、耐食性樹脂10(図5参照)を充填するための凹所であって、成型型シート2の表面中央に平面視略長方形状(図2参照)かつ略一定深さ(図3参照)で凹設されている。また、土手部5は、充填凹部4に充填された耐食性樹脂10が土手部5を越えて漏出しないように充分な幅が確保されている。
【0019】
具体的に、充填凹部4及び土手部5の寸法サイズは、配管50と架台52との間に形成される耐食保護層20に必要な寸法サイズによっても大小様々に変更可能であるが、例えば、成型型シート2の厚みが略1mm程度である場合に、成型型シート2の1辺は略100mm、充填凹部4の縦方向長さは略50mm、充填凹部4の横方向長さは略30mm、充填凹部4の縦方向両側にある土手部5の幅はそれぞれ略25mm、及び、充填凹部4の横方向両側にある土手部5の幅はそれぞれ略35mm、とされる。
【0020】
また、充填凹部4の深さは、耐食保護層20(図6参照)の厚みにほぼ相当するため、この耐食保護層20に要求される機械的強度によっても大小様々に変更可能であるが、例えば、成型型シート2の厚みが略2mmである場合に、略1mm程度とされる。
【0021】
粘着シート3は、成型型シート2を配管50の外周面51に固定させるものであり、その平面サイズが成型型シート2に比べて大きく形成されている(図2参照)。また、図3に示すように、粘着シート3は、その肉厚が成型型シート2に比べて薄肉状の樹脂フィルムで形成されており、配管50の外周面51に沿って湾曲自在な柔軟性を有している。そして、この粘着シート3の一面(図3中の上側面)には粘着面が形成されている。
【0022】
図2に示すように、粘着シート3の粘着面における略中央部分には、成型型シート2における充填凹部4の非凹設面(図3中の下側面)が当着されており、この当着によって成型型シート2が粘着シート3に固定されている。そして、粘着シート3における成型型シート2との非当着部分にあたる粘着面は、成型型シート2を配管50の外周面51に貼着させるための粘着しろ6とされている。
【0023】
粘着しろ6は、成型型シート2の周囲に一定幅で設けられており、例えば、成型型シート2の1辺が略100mm程度の場合に、成型型シート2の各縁辺から粘着シート6の各縁辺までの幅は略25mmとされる。また、この粘着しろ6の表面には、図3に示すように、粘着シート6の粘着面を被覆する剥離紙7が当着されており、この剥離紙7によって粘着しろ6の粘着剤が保護されている。
【0024】
次に、本実施例の配管保護工法に使用される耐食性樹脂10(図5参照)について説明する。耐食性樹脂10は、経時硬化性を有するペースト状の樹脂であって金属材料に対する高い接着力と、大きな硬度と、優れた防食性とを備えたものである。この耐食性樹脂10は、更に電気絶縁抵抗(体積抵抗率)が大きな絶縁体であり、耐食保護層20の施工部分に高い電気絶縁性を付与することができるものである。
【0025】
具体的に耐食性樹脂10としては、例えばアトメタルAM−A(株式会社アクセス製)を使用することが好適である。ここにアトメタルAM−Aは、各種レアメタル(希少金属)の金属粉末と、セラミックスと、特殊ポリマーとから組成される金属補修剤であり、ペースト状から硬化するまでの所要時間(硬化時間)が概ね略2時間以内(周囲気温20℃)という速乾性を有するものである。
【0026】
また、耐食性樹脂10としてのアトメタルAM−Aが硬化した場合の物性及び化学的性状は、比重が2.2、摩擦質量が52mg、体積抵抗率が1.4×1013〜5.1×1013Ωm、ロックウェル硬さ(Rスケール)が114、接着強度が23.6N/mm、引張剪断接着強さが20MPa、曲げ試験結果が79.5MPa、であった。また、毒性に関しては、HPLC分析法により毒性物質は検出されなかった。
【0027】
なお、上記試験結果について、比重はJIS K 5600-2-4に、摩擦質量はJIS K 5600-5-9に、体積抵抗率はJIS C 2151に、ロックウェル硬さ(Rスケール)はJIS K 7202に、接着強度はJIS K 6849に、引張剪断接着強さはJIS K 6850に、曲げ試験はJIS K 7171に、毒性はHPLC分析に、それぞれ準拠したものである。
【0028】
次に、図4から図6を参照して、施工キット1及び耐食性樹脂10を用いてする配管50と架台52との接触部分に対しての配管保護工法について説明する。ここに、図4は、配管50と架台52との設置状態を示す斜視図であり、配管50を断面視している。また、図5及び図6は、施工キット1を使用した配管20の保護工法を説明するための図であり、配管保護工法の工程手順を図5(a)から図5(c)、及び、図6(a)から図6(c)の順に図示したものである。
【0029】
図4に示すように、まず、ジャッキなどの起重機(図示せず)を用いて、配管50が架台52上(図4中の2点鎖線位置)から上方へ略100mm〜200mm程度持ち上げられて、図4中の実線位置で保持される。そして、配管50の外周面51に付着する汚れや錆などの酸化被膜が電動工具などを用いたケレン作業(2種ケレン)によって除去される。このケレン作業後、図5に示すように、施工キット1を用いた耐食性保護層20の施工が行われる。
【0030】
具体的には、図5(a)に示すように、へら等の工具を用いるなどして、ペースト状の耐食性樹脂10が成型型シート2の充填凹部4内に充填される(充填工程)。このとき、充填凹部4に気泡を残存させないように充填すると共に、図5(b)に示すように、充填凹部4内に充填された耐食性樹脂10が成型型シート2の土手部5の上端面に対して略面一となるよう調整される。ペースト状の耐食性樹脂10が成型型シート2の充填凹部4に充填された後は、図5(c)に示すように、施工キット1における粘着しろ6の全面から剥離紙7が剥がされ除去される(剥離紙除去工程)。
【0031】
この後、図6(a)に示すように、施工キット1が配管50と架台52との間に差し入れられて、施工キット1の充填凹部4が配管50の外周面51における架台52との接触部分に対向させられる。それから、図6(b)に示すように、その充填凹部4内の耐食性樹脂10が被保護箇所に密着させられ、成型型シート2の土手部5も配管50の外周面51に密着させられて、成型型シート2が配管50の外周面51に捲回される。そして、この捲回と同時に、粘着しろ6が配管50の外周面51に貼着されると、成型型シート2が配管50の外周面51に固定される(固定工程)。
【0032】
成型型シート2の固定後は、そのままの状態で所定時間(例えば2時間以上、好ましくは1日程度)放置され、充填凹部4内にあるペースト状の耐食性樹脂10が経時硬化させられる(硬化工程)。このように硬化させた後、配管50の外周面51から粘着シート3が剥がされて、配管50に固定されている成型型シート2が離型される(離型工程)。すると、図6(c)に示すように、配管50の外周面51に耐食性樹脂10の硬化物である耐食保護層20が強固に接着した状態で形成される。
【0033】
耐食保護層20の形成後は、必要に応じて耐食保護層20や配管50が所定の色の塗料で塗装され、その後、起重機によって配管50がゆっくりと下降されて、耐食保護層20が架台52の上に当接される。すると、配管50が耐食保護層20を介して架台52に載上され、この配管保護工法による施工作業が完了する。
【0034】
次に、図7及び図8を参照して、上記実施例の変形例について説明する。図7は、第2実施例の成型型シート30の斜視図である。第2実施例の成型型シート30は、上記した第1実施例の施工キット1に対して、配管に対する成型型シートの固定方式を変更したものであり、要するに、施工キットから粘着シートを排除した上で、成型型シートの土手部を永久磁石化したものである。以下、第1実施例と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
【0035】
図7に示すように、成型型シート30は、上記した耐食保護層20(図6参照)を配管50の外周面51に施工するための器具であって、第1実施例の施工キット1とは異なり粘着シート3が不要なものである。成型型シート30は平面視略正方形状の樹脂製シートによって形成されおり、その樹脂製シートは、他の樹脂材料に対する離型性に加えて、配管50の外周面51に沿って湾曲自在な可撓性や柔軟性を有している。なお、基材31の素材である樹脂製シートとしては、例えば、ゴムシートなどを使用することができる。
【0036】
また、基材31の一面(図1中の上面)(以下「表面」ともいう。)にはマグネットシート32が貼着されており、このマグネットシート32によって成型型シート30の土手部5が形成されている。更に、この土手部5により周囲を囲繞された中央部には、基材31の表面を底面とする有底状の充填凹部4が形成されている。
【0037】
ここで、この土手部5を形成するマグネットシート32は、永久磁石化された樹脂製シートであって、例えば、ストロンチウムフェライトなどのフェライト系の磁石粉末を樹脂材料に混合してシート状に成形したものであり、他の樹脂材料に対する離型性に加えて、配管50の外周面51に沿って湾曲自在な可撓性や柔軟性も有している。
【0038】
この第2実施例の成型型シートによれば、配管50が鉄などの磁性体で製造されている場合、ペースト状の耐食性樹脂10を充填している充填凹部4を配管50の被保護箇所に密着させ、且つ、成型型シート30の土手部5も配管50の外周面51に密着(当接)させて、成型型シート30を配管50の外周に捲回させると、成型型シート30は、自らの土手部5を形成するマグネットシート32が発する磁力によって、配管50の外周面51に吸着されて固定される。
【0039】
図8(a)は、第3実施例の施工キット40の分解斜視図であり、図8(b)は、第3実施例の施工キット40の縦断面図であって剥離紙41による粘着しろ6の被覆状態を示したものである。第3実施例の施工キット40は、上記した第1実施例の施工キット1に対して、剥離紙の形態を変更したものである。以下、第1実施例と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略し、異なる部分のみを説明する。第3実施例の施工キット40によれば、剥離紙41は、図8(a)に示すように粘着シート3と略等しい平面サイズを有しており、図8(b)に示すように、成型型シート2ごと粘着シート3の粘着面側を被覆する格好で粘着しろ6に当着されて、この粘着しろ6を保護している。
【0040】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、使用される素材、各部材の形状や寸法等について種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。また、上記実施例に基づいて説明した本発明の用途は、必ずしも上記したように配管と配管用架台との接触部分の耐食加工に限定されるものではなく、例えば、配管に耐食保護層を形成するような各種用途であれば、その他に配管補強や、配管減肉の補修や、配管の漏れ補修などにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の配管保護方法の一実施例である配管保護工法に使用される施工キットの斜視図である。
【図2】施工キットの平面図である。
【図3】図1のII−II線における縦断面図である。
【図4】配管と架台との設置状態を示す斜視図である。
【図5】施工キットを使用した配管の保護工法の工程を説明するための図である。
【図6】施工キットを使用した配管の保護工法の工程のうち、図5に示す工程の後になされるものを説明するための図である。
【図7】第2実施例の成型型シートの斜視図である。
【図8】(a)は、第3実施例の施工キットの分解斜視図であり、(b)は、第3実施例の施工キットの縦断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1,40 施工キット
2,30 成型型シート
3 粘着シート
4 充填凹部
5 土手部
6 粘着しろ(粘着しろ、粘着シートの粘着面)
7,41 剥離紙
10 耐食性樹脂
20 耐食保護層
31 基材
32 マグネットシート
50 配管
51 外周面(配管外周面)
52 架台(配管用架台)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設又は新設の配管の外周面と配管用架台との接触部分に対して行われる配管保護方法において、
所定の平面形状に凹設される有底状の充填凹部とその充填凹部の周囲を囲繞する土手部とが一面に形成され、且つ、他の樹脂材料に対する離型性と配管の外周面に沿って湾曲自在な柔軟性とを有した樹脂材料で形成される板状の成型型シートを使用する配管の保護方法であって、
経時硬化性を有するペースト状で且つ配管素材に対する接着性を有する耐食性樹脂を、成型型シートの充填凹部に充填する充填工程と、
その充填工程後に前記成型型シートにおける充填凹部の凹設面を配管外周面に対向させ、その充填凹部内の耐食性樹脂を被保護箇所に密着させ、前記成型型シートの土手部を配管外周面に密着させるようにその成型型シートを配管外周に捲回し固定する固定工程と、
その固定工程後に放置して前記充填凹部内にあるペースト状の耐食性樹脂を経時硬化させる硬化工程と、
その硬化工程後に前記固定工程により配管外周に固定された前記成型型シートを離型する離型工程とを備えていることを特徴とする配管保護方法。
【請求項2】
前記成型型シートに比べて平面サイズが大きな粘着面を有する粘着シートと、その粘着シートの粘着面における略中央部分に前記充填凹部の非凹設面が当着される前記成型型シートと、その成型型シートとの非当着部分にあたる前記粘着シートの粘着面であって前記成型型シートの周囲に設けられる所定幅の粘着しろと、その粘着しろの表面を被覆する剥離紙とを備えた施工キットを使用する配管の保護方法であり、
前記固定工程は、前記施工キットにおける前記粘着しろから前記剥離紙を剥がして除去する剥離紙除去工程を備えており、その剥離紙除去工程により前記剥離紙が除去された前記粘着しろを配管の外周面に貼着させることによって、前記成型型シートを配管外周面に捲回させて固定するものであることを特徴とする請求項1記載の配管保護方法。
【請求項3】
前記成型型シートは前記土手部の表面が永久磁石化されており、
前記固定工程は、前記土手部の磁力によって、その土手部を磁性体製の配管外周面に吸着させて、前記成型型シートを配管外周に固定するものであることを特徴とする請求項1記載の配管保護方法。
【請求項4】
前記充填工程は、前記ペースト状の耐食性樹脂を前記成型型シートに充填凹部に充填する場合、その耐食性樹脂を前記土手部に対して略面一状に充填するものであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の配管保護方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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