配管吊り金物
【課題】不安定になりがちな脚立上での作業数が少なくて済む配管吊り金物を提供する。
【解決手段】吊りボルト螺装用ナット1が縦軸芯まわりで回転自在に保持された上板部2とその両端から下方に折曲連設された一対の支持片3a,3bとを備えたターンバックル4と、ダクト等の配管5を抱持する吊りバンド6と、吊りバンドの両端に形成された立ち上がり片6a,6bをターンバックルの前記支持片に締め付け固定するボルト7・ナット8とから成る配管吊り金物において、前記支持片に形成されるボルト支持部9を上向きのフック状に形成するか、羽子板ボルト14と、ダクト等の配管を抱持する吊りバンドと、吊りバンドの両端に形成された立ち上がり片を前記羽子板ボルトの平板部14aに締め付け固定するボルト・ナットとから成る配管吊り金物の前記平板部に形成されるボルト支持部15を上向きのフック状に形成する。
【解決手段】吊りボルト螺装用ナット1が縦軸芯まわりで回転自在に保持された上板部2とその両端から下方に折曲連設された一対の支持片3a,3bとを備えたターンバックル4と、ダクト等の配管5を抱持する吊りバンド6と、吊りバンドの両端に形成された立ち上がり片6a,6bをターンバックルの前記支持片に締め付け固定するボルト7・ナット8とから成る配管吊り金物において、前記支持片に形成されるボルト支持部9を上向きのフック状に形成するか、羽子板ボルト14と、ダクト等の配管を抱持する吊りバンドと、吊りバンドの両端に形成された立ち上がり片を前記羽子板ボルトの平板部14aに締め付け固定するボルト・ナットとから成る配管吊り金物の前記平板部に形成されるボルト支持部15を上向きのフック状に形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダクト等の配管を天井スラブに吊下げ支持された状態に設置するのに用いる配管吊り金物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
配管吊り金物としては、図12に示すように、吊りボルト螺装用ナット1が縦軸芯まわりで回転自在に保持された上板部2とその両端から下方に折曲連設された一対の支持片3a,3bとを備えたターンバックル40と、ダクト等の配管5を包み持つ吊りバンド60と、吊りバンド60の両端に形成された立ち上がり片60a,60bを当該ターンバックル40の前記支持片3a,3bに締め付け固定するボルト7及びナット8とから構成されたものが一般的である。尚、図中の13は天井スラブ12に埋設された雌ねじ状のインサート金物、11は吊りボルトである。吊りバンド60は、略半円形の二つ割構造とされ、ヒンジ31により連結されている。
【0003】
そして、配管工事にあたっては、予め、配管予定箇所の天井スラブに、配管吊り金物を吊り下げておき、実際に配管5を固定する際に、ナット8を一旦取り去って、図12に仮想線で示すように、吊りバンド60の半分を開放させ、この状態で、配管5を所定位置まで持ち上げて、吊りバンド60で抱持させ、吊りバンド60の立ち上がり片60a,60bをターンバックル40の支持片3a,3bにボルト・ナットで締め付け固定している。
【0004】
しかしながら、図12に仮想線で示すように、吊りバンド60を半分が開放した状態に吊り下げた際、ボルト7が外れて吊りバンド60が落下する虞があるため、この状態で、ナット8を再びボルト7の先端部に螺着(仮止め)して、ボルト7の脱落による吊りバンド60の落下を防止している。
【0005】
そのため、配管5を固定する際、片手で仮止めナット8を外し、配管5を片手で支えたまま吊りバンド60を配管5に巻き付け、再度、ナット8をボルト7にねじ込んで本締めするといった面倒な作業が必要とされていた。
【0006】
このようなナット8の仮止めによる作業の煩雑さを回避するようにした配管吊り金物としては、特許文献1のように、ナットを吊りバンドにおける片側の立ち上がり片に溶接しておく一方、他方の立ち上がり片とターンバックルの支持片に挿通したボルトに抜止め用のピンを嵌着したものや、図13に示した従来例(特許文献2)のように、吊りバンド60における片側の立ち上がり片60aに形成するボルト挿入用の貫通孔を、ボルト径に対応する小径孔部とナット8よりも大きな大径孔部とからなるダルマ孔16に形成して、ボルト7に螺着したナット8を外さなくても、吊りバンド60の開閉を行えるようにしたものが知られている。
【0007】
しかしながら、前者による場合は、ナット8の溶接工程、ピンとその取付け工程が必要で、コストが高く付くという問題点があり、後者による場合は、ダルマ孔16の大径孔部にナット8を通過させる際、配管5を手で支えながらボルト7を下に傾けるといった面倒な作業が必要である。
【0008】
また、図14に示すように、ターンバックル40の支持片3a,3bに係止突起17を設ける一方、吊りバンド60の立ち上がり片60a,60bには、前記係止突起17と係合する係止孔18a,18bを形成し、両者の係合により、吊りバンド60をターンバックル40の支持片3a,3bに吊下げ支持させ、この状態で、ボルト7・ナット8を締め
付け操作するようにした配管吊り金物も特許文献3によって提案されている。
【0009】
この配管吊り金物によれば、配管重量をターンバックル40に預けた状態で、ボルト・ナットによる本締めを行うことができるが、吊りバンド60をターンバックル40の支持片3a,3bに吊下げ支持させてからでないと、ボルト7の挿入操作やボルト7に対するナット8の螺着操作を行うことができず、不安定になりがちな脚立上での作業数が増えるという問題点がある。
【0010】
また、上述した夫々の従来例に共通した別の問題点としては、ターンバックル40の上板部2に吊りボルト螺装用ナット1が軸芯まわりで回転自在に保持されているため、部品点数が多くて、コストが高く付くばかりでなく、配管5の振動や天井スラブ12の振動によってナット1が上板部2の孔縁部に小刻みに衝突して、異音が発生するという問題点を挙げることができる。
【0011】
【特許文献1】特開平9−317948号公報
【特許文献2】特開平11−201332号公報
【特許文献3】特開2005−9552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記の点に留意してなされたものであって、その目的とするところは、不安定になりがちな脚立上での作業数が少なくて済む配管吊り金物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明が講じた技術的手段は、次の通りである。即ち、請求項1に記載の発明による配管吊り金物は、吊りボルト螺装用ナットが縦軸芯まわりで回転自在に保持された上板部とその両端から下方に折曲連設された一対の支持片とを備えたターンバックルと、ダクト等の配管を抱持する吊りバンドと、吊りバンドの両端に形成された立ち上がり片をターンバックルの前記支持片に締め付け固定するボルト・ナットとから成り、前記支持片に形成されるボルト支持部を上向きのフック状に形成したことを特徴としている。
【0014】
請求項2に記載の発明による配管吊り金物は、羽子板ボルトと、ダクト等の配管を抱持する吊りバンドと、吊りバンドの両端に形成された立ち上がり片を前記羽子板ボルトの平板部に締め付け固定するボルト・ナットとから成り、前記平板部に形成されるボルト支持部を上向きのフック状に形成したことを特徴としている。
【0015】
請求項3に記載の発明による配管吊り金物は、請求項1又は2に記載の配管吊り金物であって、吊りバンドの前記立ち上がり片に形成されるボルト支持部のうち、一方のボルト支持部を貫通孔に形成し、他方のボルト支持部を下向きのフック状に形成したことを特徴としている。
【0016】
尚、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記吊りバンドとしては、従来通りヒンジにより連結された二つ割構造としてもよく、請求項4に記載の発明のように、一枚物の金属板で形成されてものでもよい。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明の構成によれば、例えば、天井スラブに埋設されたインサート金物に吊りボルトをねじ込む一方、床面近くの低位置で、ダクト等の配管に吊りバンドを巻き付けてボルト・ナットで仮止めしておき、この状態で、配管及び吊りバンドを所定高さ
まで持ち上げて、ボルトをターンバックルの支持片に形成された上向きフック状のボルト支持部に係止させ、配管重量をターンバックルに預けた状態で、ボルト・ナットの本締めを行うといった作業手順が可能であり、不安定になりがちな脚立上での作業数が少なくて済む。
【0018】
請求項2に記載の発明の構成によれば、例えば、天井スラブに埋設されたインサート金物に羽子板ボルトをねじ込む一方、床面近くの低位置で、ダクト等の配管に吊りバンドを巻き付けてボルト・ナットで仮止めしておき、この状態で、配管及び吊りバンドを所定高さまで持ち上げて、ボルトを羽子板ボルトの平板部に形成された上向きフック状のボルト支持部に係止させ、配管重量を羽子板ボルトに預けた状態で、ボルト・ナットの本締めを行うといった作業手順が可能であり、不安定になりがちな脚立上での作業数が少なくて済む。
【0019】
殊に、請求項2に記載の発明の構成によれば、吊りボルト螺装用ナットを備えたターンバックルに比して構成部材点数が少なくて経済的であり、しかも、ボルト・ナットの本締めを行った状態においては、羽子板ボルトの平板部とその両側に位置する吊りバンドの立ち上がり片の三者が密着し、ガタツキの生じる虞がないので、配管の振動や天井スラブの振動によって異音が発生するという問題点を回避できる。
【0020】
請求項3に記載の発明の構成によれば、吊りバンドの立ち上がり片に形成されるボルト支持部のうち、一方のボルト支持部を貫通孔に形成し、他方のボルト支持部を下向きのフック状に形成したので、天井スラブの所定位置に配管吊り金物が吊下げ支持された状態において、吊りバンドにおける下向きフック状のボルト支持部をボルトから外し、ナットを取り去ることなしに吊りバンドを開放状態にすることができる。また、逆の手順により、ナットを取り去ることなしに吊りバンドを閉じ状態にすることができる。
【0021】
請求項4に記載の発明の構成によれば、吊りバンドを容易かつ安価に製造でき、一層経済的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0023】
図1〜図7は、本発明に係る配管吊り金物の一例を示す。この配管吊り金物は、吊りボルト螺装用ナット1が縦軸芯まわりで回転自在に保持された上板部2とその両端から下方に折曲連設された一対の支持片3a,3bとを備えたターンバックル4と、ダクト等の配管5を抱持する吊りバンド6と、吊りバンド6の両端に折曲形成された連結用の立ち上がり片6a,6bをターンバックル4の前記支持片3a,3bに締め付け固定するボルト7・ナット8とから成り、前記支持片3a,3bに形成されるボルト支持部9は上向きのフック状に形成されている。具体的には、図2、図3に示すように、支持片3a,3bに斜め上方に開口する傾斜した切欠きを形成して、上向きフック状のボルト支持部9を構成してある。
【0024】
前記吊りバンド6は、弾性を有する一枚物の金属板(例えば、ステンレス鋼板、亜鉛引き鉄板等)で作製されており、吊りバンド6の両端に折曲形成される立ち上がり片6a,6bには、夫々、ボルト支持部10a,10bが形成されている。これらのボルト支持部10a,10bのうち、一方のボルト支持部10bは、ボルト径より若干大径の貫通孔に形成され、他方のボルト支持部10aは、下向きのフック状に形成されている。具体的には、図2、図5に示すように、立ち上がり片6aに斜め下方に開口する傾斜した切欠きを形成して、下向きフック状のボルト支持部10aを構成してある。11は前記ナット1に
螺装した吊りボルトであり、吊りボルト11の上端部は天井スラブ12に埋設した雌ねじ状のインサート金物13にねじ込まれている。吊りバンド6における立ち上がり片6a,6bと円弧状帯板との角部には、プレス加工による補強リブ6cが設けられている。
【0025】
上記の構成によれば、例えば、天井スラブ12に埋設されたインサート金物13に吊りボルト11をねじ込む一方、床面近くの低位置で、ダクト等の配管5に吊りバンド6を巻き付けてボルト7・ナット8で仮止めしておき、この状態で、配管5及び吊りバンド6を所定高さまで持ち上げて、ボルト7をターンバックル4の支持片3a,3bに形成された上向きフック状のボルト支持部9に係止させ、配管5の重量をターンバックル4に預けた状態で、ボルト7・ナット8の本締めを行うといった作業手順が可能であり、予め、ボルト7・ナット8を床面近くの低位置でセットしておくため、不安定になりがちな脚立上での作業数が少なくて済む。
【0026】
また、吊りバンド6の立ち上がり片6a,6bに形成されるボルト支持部10a,10bのうち、一方のボルト支持部10bを貫通孔に形成し、他方のボルト支持部10aを下向きのフック状に形成したので、天井スラブ12の所定位置に配管吊り金物が吊下げ支持された状態において、吊りバンド6における下向きフック状のボルト支持部10aをボルト7から外し、ナット8を取り去ることなしに吊りバンド6を開放状態にすることができ、逆の手順により、ナット8を取り去ることなしに吊りバンド6を閉じ状態にすることができる。
【0027】
図8〜図11は、本発明に係る配管吊り金物の他の例を示す。この配管吊り金物は、羽子板ボルト14と、ダクト等の配管5を抱持する吊りバンド6と、吊りバンド6の両端に折曲形成された連結用の立ち上がり片6a,6bを前記羽子板ボルト14の平板部14aに締め付け固定するボルト7・ナット8とから成り、前記平板部14aに形成されるボルト支持部15は上向きのフック状に形成されている。具体的には、図9に示すように、羽子板ボルト14の平板部14aに、通常設けられるボルト孔に代えて、斜め上方に開口する傾斜した切欠きを形成して、上向きフック状のボルト支持部15を構成してある。吊りバンド6の構成は、図1〜図7で示した実施形態と同一であるため、説明を省略する。
【0028】
上記の構成によれば、例えば、天井スラブ12に埋設されたインサート金物13に羽子板ボルト14をねじ込む一方、床面近くの低位置で、ダクト等の配管5に吊りバンド6を巻き付けてボルト7・ナット8で仮止めしておき、この状態で、配管5及び吊りバンド6を所定高さまで持ち上げて、ボルト7を羽子板ボルト14の平板部14aに形成された上向きフック状のボルト支持部15に係止させ、配管5の重量を羽子板ボルト14に預けた状態で、ボルト7・ナット8の本締めを行うといった作業手順が可能であり、予め、ボルト7・ナット8を床面近くの低位置でセットしておくため、不安定になりがちな脚立上での作業数が少なくて済む。
【0029】
殊に、上記の構成によれば、吊りボルト螺装用ナット1を備えたターンバックル4に比して構成部材点数が少なくて経済的であり、しかも、ボルト7・ナット8の本締めを行った状態においては、羽子板ボルト14の平板部14aとその両側に位置する吊りバンド6の立ち上がり片6a,6bの三者が密着し、ガタツキの生じる虞がないので、配管5の振動や天井スラブ12の振動によって異音が発生するという問題点を回避できる。
【0030】
尚、吊りバンド6としては、従来通りヒンジにより連結された二つ割構造としてもよいが、上述した夫々の実施形態に示した通り、一枚物の金属板で形成すれば、吊りバンド6を容易かつ安価に製造でき、一層経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る配管用吊り金物を例示する斜視図である。
【図2】上記配管用吊り金物の分解斜視図である。
【図3】上記配管用吊り金物におけるターンバックルの側面図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】上記配管用吊り金物における吊りバンドの側面図である。
【図6】取付け方法の説明図である。
【図7】取付け方法の説明図である。
【図8】本発明に係る配管用吊り金物の他の例を示す斜視図である。
【図9】上記配管用吊り金物の分解斜視図である。
【図10】取付け方法の説明図である。
【図11】取付け方法の説明図である。
【図12】従来例の説明図である。
【図13】従来例の説明図である。
【図14】従来例の説明図である。
【符号の説明】
【0032】
1 吊りボルト螺装用ナット
2 上板部
3a,3b 支持片
4 ターンバックル
5 配管(ダクト)
6 吊りバンド
6a,6b 立ち上がり片
7 ボルト
8 ナット
9 ボルト支持部
10a,10b ボルト支持部
11 吊りボルト
14 羽子板ボルト
14a 平板部
15 ボルト支持部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダクト等の配管を天井スラブに吊下げ支持された状態に設置するのに用いる配管吊り金物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
配管吊り金物としては、図12に示すように、吊りボルト螺装用ナット1が縦軸芯まわりで回転自在に保持された上板部2とその両端から下方に折曲連設された一対の支持片3a,3bとを備えたターンバックル40と、ダクト等の配管5を包み持つ吊りバンド60と、吊りバンド60の両端に形成された立ち上がり片60a,60bを当該ターンバックル40の前記支持片3a,3bに締め付け固定するボルト7及びナット8とから構成されたものが一般的である。尚、図中の13は天井スラブ12に埋設された雌ねじ状のインサート金物、11は吊りボルトである。吊りバンド60は、略半円形の二つ割構造とされ、ヒンジ31により連結されている。
【0003】
そして、配管工事にあたっては、予め、配管予定箇所の天井スラブに、配管吊り金物を吊り下げておき、実際に配管5を固定する際に、ナット8を一旦取り去って、図12に仮想線で示すように、吊りバンド60の半分を開放させ、この状態で、配管5を所定位置まで持ち上げて、吊りバンド60で抱持させ、吊りバンド60の立ち上がり片60a,60bをターンバックル40の支持片3a,3bにボルト・ナットで締め付け固定している。
【0004】
しかしながら、図12に仮想線で示すように、吊りバンド60を半分が開放した状態に吊り下げた際、ボルト7が外れて吊りバンド60が落下する虞があるため、この状態で、ナット8を再びボルト7の先端部に螺着(仮止め)して、ボルト7の脱落による吊りバンド60の落下を防止している。
【0005】
そのため、配管5を固定する際、片手で仮止めナット8を外し、配管5を片手で支えたまま吊りバンド60を配管5に巻き付け、再度、ナット8をボルト7にねじ込んで本締めするといった面倒な作業が必要とされていた。
【0006】
このようなナット8の仮止めによる作業の煩雑さを回避するようにした配管吊り金物としては、特許文献1のように、ナットを吊りバンドにおける片側の立ち上がり片に溶接しておく一方、他方の立ち上がり片とターンバックルの支持片に挿通したボルトに抜止め用のピンを嵌着したものや、図13に示した従来例(特許文献2)のように、吊りバンド60における片側の立ち上がり片60aに形成するボルト挿入用の貫通孔を、ボルト径に対応する小径孔部とナット8よりも大きな大径孔部とからなるダルマ孔16に形成して、ボルト7に螺着したナット8を外さなくても、吊りバンド60の開閉を行えるようにしたものが知られている。
【0007】
しかしながら、前者による場合は、ナット8の溶接工程、ピンとその取付け工程が必要で、コストが高く付くという問題点があり、後者による場合は、ダルマ孔16の大径孔部にナット8を通過させる際、配管5を手で支えながらボルト7を下に傾けるといった面倒な作業が必要である。
【0008】
また、図14に示すように、ターンバックル40の支持片3a,3bに係止突起17を設ける一方、吊りバンド60の立ち上がり片60a,60bには、前記係止突起17と係合する係止孔18a,18bを形成し、両者の係合により、吊りバンド60をターンバックル40の支持片3a,3bに吊下げ支持させ、この状態で、ボルト7・ナット8を締め
付け操作するようにした配管吊り金物も特許文献3によって提案されている。
【0009】
この配管吊り金物によれば、配管重量をターンバックル40に預けた状態で、ボルト・ナットによる本締めを行うことができるが、吊りバンド60をターンバックル40の支持片3a,3bに吊下げ支持させてからでないと、ボルト7の挿入操作やボルト7に対するナット8の螺着操作を行うことができず、不安定になりがちな脚立上での作業数が増えるという問題点がある。
【0010】
また、上述した夫々の従来例に共通した別の問題点としては、ターンバックル40の上板部2に吊りボルト螺装用ナット1が軸芯まわりで回転自在に保持されているため、部品点数が多くて、コストが高く付くばかりでなく、配管5の振動や天井スラブ12の振動によってナット1が上板部2の孔縁部に小刻みに衝突して、異音が発生するという問題点を挙げることができる。
【0011】
【特許文献1】特開平9−317948号公報
【特許文献2】特開平11−201332号公報
【特許文献3】特開2005−9552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記の点に留意してなされたものであって、その目的とするところは、不安定になりがちな脚立上での作業数が少なくて済む配管吊り金物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明が講じた技術的手段は、次の通りである。即ち、請求項1に記載の発明による配管吊り金物は、吊りボルト螺装用ナットが縦軸芯まわりで回転自在に保持された上板部とその両端から下方に折曲連設された一対の支持片とを備えたターンバックルと、ダクト等の配管を抱持する吊りバンドと、吊りバンドの両端に形成された立ち上がり片をターンバックルの前記支持片に締め付け固定するボルト・ナットとから成り、前記支持片に形成されるボルト支持部を上向きのフック状に形成したことを特徴としている。
【0014】
請求項2に記載の発明による配管吊り金物は、羽子板ボルトと、ダクト等の配管を抱持する吊りバンドと、吊りバンドの両端に形成された立ち上がり片を前記羽子板ボルトの平板部に締め付け固定するボルト・ナットとから成り、前記平板部に形成されるボルト支持部を上向きのフック状に形成したことを特徴としている。
【0015】
請求項3に記載の発明による配管吊り金物は、請求項1又は2に記載の配管吊り金物であって、吊りバンドの前記立ち上がり片に形成されるボルト支持部のうち、一方のボルト支持部を貫通孔に形成し、他方のボルト支持部を下向きのフック状に形成したことを特徴としている。
【0016】
尚、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記吊りバンドとしては、従来通りヒンジにより連結された二つ割構造としてもよく、請求項4に記載の発明のように、一枚物の金属板で形成されてものでもよい。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明の構成によれば、例えば、天井スラブに埋設されたインサート金物に吊りボルトをねじ込む一方、床面近くの低位置で、ダクト等の配管に吊りバンドを巻き付けてボルト・ナットで仮止めしておき、この状態で、配管及び吊りバンドを所定高さ
まで持ち上げて、ボルトをターンバックルの支持片に形成された上向きフック状のボルト支持部に係止させ、配管重量をターンバックルに預けた状態で、ボルト・ナットの本締めを行うといった作業手順が可能であり、不安定になりがちな脚立上での作業数が少なくて済む。
【0018】
請求項2に記載の発明の構成によれば、例えば、天井スラブに埋設されたインサート金物に羽子板ボルトをねじ込む一方、床面近くの低位置で、ダクト等の配管に吊りバンドを巻き付けてボルト・ナットで仮止めしておき、この状態で、配管及び吊りバンドを所定高さまで持ち上げて、ボルトを羽子板ボルトの平板部に形成された上向きフック状のボルト支持部に係止させ、配管重量を羽子板ボルトに預けた状態で、ボルト・ナットの本締めを行うといった作業手順が可能であり、不安定になりがちな脚立上での作業数が少なくて済む。
【0019】
殊に、請求項2に記載の発明の構成によれば、吊りボルト螺装用ナットを備えたターンバックルに比して構成部材点数が少なくて経済的であり、しかも、ボルト・ナットの本締めを行った状態においては、羽子板ボルトの平板部とその両側に位置する吊りバンドの立ち上がり片の三者が密着し、ガタツキの生じる虞がないので、配管の振動や天井スラブの振動によって異音が発生するという問題点を回避できる。
【0020】
請求項3に記載の発明の構成によれば、吊りバンドの立ち上がり片に形成されるボルト支持部のうち、一方のボルト支持部を貫通孔に形成し、他方のボルト支持部を下向きのフック状に形成したので、天井スラブの所定位置に配管吊り金物が吊下げ支持された状態において、吊りバンドにおける下向きフック状のボルト支持部をボルトから外し、ナットを取り去ることなしに吊りバンドを開放状態にすることができる。また、逆の手順により、ナットを取り去ることなしに吊りバンドを閉じ状態にすることができる。
【0021】
請求項4に記載の発明の構成によれば、吊りバンドを容易かつ安価に製造でき、一層経済的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0023】
図1〜図7は、本発明に係る配管吊り金物の一例を示す。この配管吊り金物は、吊りボルト螺装用ナット1が縦軸芯まわりで回転自在に保持された上板部2とその両端から下方に折曲連設された一対の支持片3a,3bとを備えたターンバックル4と、ダクト等の配管5を抱持する吊りバンド6と、吊りバンド6の両端に折曲形成された連結用の立ち上がり片6a,6bをターンバックル4の前記支持片3a,3bに締め付け固定するボルト7・ナット8とから成り、前記支持片3a,3bに形成されるボルト支持部9は上向きのフック状に形成されている。具体的には、図2、図3に示すように、支持片3a,3bに斜め上方に開口する傾斜した切欠きを形成して、上向きフック状のボルト支持部9を構成してある。
【0024】
前記吊りバンド6は、弾性を有する一枚物の金属板(例えば、ステンレス鋼板、亜鉛引き鉄板等)で作製されており、吊りバンド6の両端に折曲形成される立ち上がり片6a,6bには、夫々、ボルト支持部10a,10bが形成されている。これらのボルト支持部10a,10bのうち、一方のボルト支持部10bは、ボルト径より若干大径の貫通孔に形成され、他方のボルト支持部10aは、下向きのフック状に形成されている。具体的には、図2、図5に示すように、立ち上がり片6aに斜め下方に開口する傾斜した切欠きを形成して、下向きフック状のボルト支持部10aを構成してある。11は前記ナット1に
螺装した吊りボルトであり、吊りボルト11の上端部は天井スラブ12に埋設した雌ねじ状のインサート金物13にねじ込まれている。吊りバンド6における立ち上がり片6a,6bと円弧状帯板との角部には、プレス加工による補強リブ6cが設けられている。
【0025】
上記の構成によれば、例えば、天井スラブ12に埋設されたインサート金物13に吊りボルト11をねじ込む一方、床面近くの低位置で、ダクト等の配管5に吊りバンド6を巻き付けてボルト7・ナット8で仮止めしておき、この状態で、配管5及び吊りバンド6を所定高さまで持ち上げて、ボルト7をターンバックル4の支持片3a,3bに形成された上向きフック状のボルト支持部9に係止させ、配管5の重量をターンバックル4に預けた状態で、ボルト7・ナット8の本締めを行うといった作業手順が可能であり、予め、ボルト7・ナット8を床面近くの低位置でセットしておくため、不安定になりがちな脚立上での作業数が少なくて済む。
【0026】
また、吊りバンド6の立ち上がり片6a,6bに形成されるボルト支持部10a,10bのうち、一方のボルト支持部10bを貫通孔に形成し、他方のボルト支持部10aを下向きのフック状に形成したので、天井スラブ12の所定位置に配管吊り金物が吊下げ支持された状態において、吊りバンド6における下向きフック状のボルト支持部10aをボルト7から外し、ナット8を取り去ることなしに吊りバンド6を開放状態にすることができ、逆の手順により、ナット8を取り去ることなしに吊りバンド6を閉じ状態にすることができる。
【0027】
図8〜図11は、本発明に係る配管吊り金物の他の例を示す。この配管吊り金物は、羽子板ボルト14と、ダクト等の配管5を抱持する吊りバンド6と、吊りバンド6の両端に折曲形成された連結用の立ち上がり片6a,6bを前記羽子板ボルト14の平板部14aに締め付け固定するボルト7・ナット8とから成り、前記平板部14aに形成されるボルト支持部15は上向きのフック状に形成されている。具体的には、図9に示すように、羽子板ボルト14の平板部14aに、通常設けられるボルト孔に代えて、斜め上方に開口する傾斜した切欠きを形成して、上向きフック状のボルト支持部15を構成してある。吊りバンド6の構成は、図1〜図7で示した実施形態と同一であるため、説明を省略する。
【0028】
上記の構成によれば、例えば、天井スラブ12に埋設されたインサート金物13に羽子板ボルト14をねじ込む一方、床面近くの低位置で、ダクト等の配管5に吊りバンド6を巻き付けてボルト7・ナット8で仮止めしておき、この状態で、配管5及び吊りバンド6を所定高さまで持ち上げて、ボルト7を羽子板ボルト14の平板部14aに形成された上向きフック状のボルト支持部15に係止させ、配管5の重量を羽子板ボルト14に預けた状態で、ボルト7・ナット8の本締めを行うといった作業手順が可能であり、予め、ボルト7・ナット8を床面近くの低位置でセットしておくため、不安定になりがちな脚立上での作業数が少なくて済む。
【0029】
殊に、上記の構成によれば、吊りボルト螺装用ナット1を備えたターンバックル4に比して構成部材点数が少なくて経済的であり、しかも、ボルト7・ナット8の本締めを行った状態においては、羽子板ボルト14の平板部14aとその両側に位置する吊りバンド6の立ち上がり片6a,6bの三者が密着し、ガタツキの生じる虞がないので、配管5の振動や天井スラブ12の振動によって異音が発生するという問題点を回避できる。
【0030】
尚、吊りバンド6としては、従来通りヒンジにより連結された二つ割構造としてもよいが、上述した夫々の実施形態に示した通り、一枚物の金属板で形成すれば、吊りバンド6を容易かつ安価に製造でき、一層経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る配管用吊り金物を例示する斜視図である。
【図2】上記配管用吊り金物の分解斜視図である。
【図3】上記配管用吊り金物におけるターンバックルの側面図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】上記配管用吊り金物における吊りバンドの側面図である。
【図6】取付け方法の説明図である。
【図7】取付け方法の説明図である。
【図8】本発明に係る配管用吊り金物の他の例を示す斜視図である。
【図9】上記配管用吊り金物の分解斜視図である。
【図10】取付け方法の説明図である。
【図11】取付け方法の説明図である。
【図12】従来例の説明図である。
【図13】従来例の説明図である。
【図14】従来例の説明図である。
【符号の説明】
【0032】
1 吊りボルト螺装用ナット
2 上板部
3a,3b 支持片
4 ターンバックル
5 配管(ダクト)
6 吊りバンド
6a,6b 立ち上がり片
7 ボルト
8 ナット
9 ボルト支持部
10a,10b ボルト支持部
11 吊りボルト
14 羽子板ボルト
14a 平板部
15 ボルト支持部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊りボルト螺装用ナットが縦軸芯まわりで回転自在に保持された上板部とその両端から下方に折曲連設された一対の支持片とを備えたターンバックルと、ダクト等の配管を抱持する吊りバンドと、吊りバンドの両端に形成された立ち上がり片をターンバックルの前記支持片に締め付け固定するボルト・ナットとから成り、前記支持片に形成されるボルト支持部を上向きのフック状に形成したことを特徴とする配管吊り金物。
【請求項2】
羽子板ボルトと、ダクト等の配管を抱持する吊りバンドと、吊りバンドの両端に形成された立ち上がり片を前記羽子板ボルトの平板部に締め付け固定するボルト・ナットとから成り、前記平板部に形成されるボルト支持部を上向きのフック状に形成したことを特徴とする配管吊り金物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の配管吊り金物であって、吊りバンドの前記立ち上がり片に形成されるボルト支持部のうち、一方のボルト支持部を貫通孔に形成し、他方のボルト支持部を下向きのフック状に形成したことを特徴とする配管吊り金物。
【請求項4】
吊りバンドが一枚物の金属板で形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の配管吊り金物。
【請求項1】
吊りボルト螺装用ナットが縦軸芯まわりで回転自在に保持された上板部とその両端から下方に折曲連設された一対の支持片とを備えたターンバックルと、ダクト等の配管を抱持する吊りバンドと、吊りバンドの両端に形成された立ち上がり片をターンバックルの前記支持片に締め付け固定するボルト・ナットとから成り、前記支持片に形成されるボルト支持部を上向きのフック状に形成したことを特徴とする配管吊り金物。
【請求項2】
羽子板ボルトと、ダクト等の配管を抱持する吊りバンドと、吊りバンドの両端に形成された立ち上がり片を前記羽子板ボルトの平板部に締め付け固定するボルト・ナットとから成り、前記平板部に形成されるボルト支持部を上向きのフック状に形成したことを特徴とする配管吊り金物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の配管吊り金物であって、吊りバンドの前記立ち上がり片に形成されるボルト支持部のうち、一方のボルト支持部を貫通孔に形成し、他方のボルト支持部を下向きのフック状に形成したことを特徴とする配管吊り金物。
【請求項4】
吊りバンドが一枚物の金属板で形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の配管吊り金物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−192345(P2007−192345A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−12207(P2006−12207)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(000150615)株式会社長谷工コーポレーション (94)
【出願人】(506021743)株式会社ツバサ (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(000150615)株式会社長谷工コーポレーション (94)
【出願人】(506021743)株式会社ツバサ (1)
【Fターム(参考)】
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