説明

配管固定具

【課題】配管をタンクの注入口に確実に固定することのできる配管固定具を提供すること。
【解決手段】タンクの壁面に設けられた液体の注入口に給液用の配管を固定する配管固定具であって、前記注入口の周縁部に着脱自在に固定されるための固定部を有する本体部と、この本体部に設けられ、配管の振れを規制するための規制部と、を備えるように配管固定具を構成する。そうすることで注入口に配管を固定するためのベルトを掛けたり配管を足で踏みつけたりするなどの作業を行わなくても配管の姿勢を保ち、タンク内へ液体の注入作業の効率化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は給液用の配管を、タンク例えばタンクローリの頂部に設けられた液体の注入口に固定する配管固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば工場の構内に配置されたあるいはタンクローリに備えられた、液体薬品や廃液などを貯留するタンクの上部の壁面10には例えば図6に示すようなフランジ部11を有する注入口12が設けられている。図中14は前記壁面10においてフランジ部11の近くに設けられた傾倒自在のボルトであり、このボルト14を介して例えば注入口12上にフランジ部11の形状に対応するように形成された注入口12の蓋(不図示)が固定されるようになっている。
【0003】
タンク内に例えば前記液体を注入して貯留する場合には、先ず注入口12の蓋を外した後、給液用のホース13を例えば図6に示すようにL字状に折り曲げてそのホース13の先端の開口部を注入口12内に差し込む。そして例えばボルト14を起こし、このボルト14とホース13とにベルトを掛けてホース13を例えばフランジ部11に押しつけるように固定した後に、このホース13からタンク内へ給液するようにしていた。
【0004】
しかし一般にこのベルトを掛ける作業はかなり煩わしいものであり、このベルトの架け方についての巧拙は個人差が大きい。またユーザごとに使用するホースは異なり、それらのホースは夫々異なった径を有していることも加わって、既述のベルトにより押しつけられたホースは安定した状態で固定されているとは言いがたく例えばタンクへの給液中にホース13内を流通する液体の圧力によってホース13が揺れてベルトが外れるおそれがあった。このようにベルトが外れるとホース13の先端部が注入口12の外へ飛び出してホース13から供給される液体が注入口の周囲に飛び散るおそれがあり、このような液体の飛散によって例えばタンクが設置されている工場の構内が汚染されると面倒な清掃作業が必要になる。また上述のようにベルトを用いずにタンクへの給液中に作業者が例えば自分の足でホース13をフランジ部11上に踏みつけて押えることも行われているが、足場の悪い高所で長時間ホース13を踏みつける作業は作業者の負担になるし、またホース13の固定が不安定であるという同様の問題がある。
なお特許文献1には配管固定具について示されているがこの配管固定具は床下に設置される配管を固定するためのものであり、既述のような問題を解決するものではない。
【0005】
【特許文献1】特開2005−113583(段落0016、0022)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は配管をタンクの注入口に確実に固定することのできる配管固定具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の配管固定具はタンクの壁面に設けられた液体の注入口に給液用の配管を固定する配管固定具であって、前記注入口の周縁部に着脱自在に固定されるための固定部を有する本体部と、この本体部に設けられ、配管の振れを規制するための規制部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
この配管固定具の一例としては規制部は、配管の上面を押える押え部材を含む。また前記規制部は前記押え部材の高さを調整する高さ調整機構を有していてもよい。さらに押え部材は高さ調整機構にボールジョイントを介して設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の配管固定具は、前記注入口の周縁部に着脱自在に固定される固定部を有する本体部と、前記本体部に設けられ配管の振れを規制するための規制部と、を備える。このため注入口に配管を固定するためのベルトを掛ける作業や作業者が給液中に足で配管を注入口の周縁部に押しつける行為などが不要になる。従って配管を固定するための労力を低下させることができ、タンク内へ液体の注入作業の効率化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係る配管固定具の実施形態について、図1を用いて説明する。図1は本発明に係る配管固定具2を示した斜視図である。図中21はこの配管固定具2の本体部であり、この本体部21は例えば金属板が、その長手方向の中央部が頂部となるようにU字状に折り曲げられている。このU字状の本体部21は左右に対向する垂直部21a,21aがタンクの注入口の中に収まるように、また取り扱う配管の内最大径の配管の外形よりも少し大きい距離だけ離間するように成形されている。またこの本体部21の垂直部21a,21aには注入口の周縁部に着脱自在に固定されるための固定部をなす水平板23が左右に伸長して設けられている。従って前記本体部21の垂直部21a,21aの下部側は後述するようにこの配管固定具2をタンクの注入口に設置したときに当該注入口内に進入することとなる。
【0011】
続いて配管の振れを規制するための規制部の構成について説明する。本体部21の上部から前方側へ(図1における奥側へ)向かって例えば支持板31が水平に伸長している。この支持板31の周辺の構造について図2をも用いて説明すると、支持板31の前後方向の中央部の上面には、内周面にねじが切ってあるねじ受け部33が突設されていて、この中が支持板31を貫通する貫通孔33aに連通している。そして高さ調節部の一部をなすねじ棒32がねじ受け部33内に挿入されてねじ受け部33内のねじと螺合している。このねじ棒32の上端にはハンドル34が接続される一方で、このねじ棒32の下端にはボールジョイント35が接続されている。
図中36は第1の押え板であり、図中37は前記第1の押え板36の下面に設けられたゴム板である。この第1の押え板36は配管の外周面に沿うように湾曲しており、前記ハンドル34を回転させることによってねじ棒32を介して昇降するようになっている。図中38は第1の押え板36の上部に設けられた前記ボールジョイント35の受け部であり、またこれらの第1の押え板36、ゴム板37及び受け部38は配管の上面を押える押え部材を構成している。受け部38はボールジョイント35の表面を摺動できるようになっており、この受け部38を介して第1の押え板36はその向きを配管の伸長方向に沿うように変更できるように構成されている。このような構成とすることで後述するように配管を押える際に配管の傾きに合せて前記ゴム板37が配管の外周面上部に沿った状態でつまりフィットした状態で押さえつけることができるようになっている。
【0012】
図中41は第2の押え板であり、例えば本体部21の上部から後方側へ(図1における表側へ)例えば水平方向に伸長しており、前記第1の押え板35が昇降できる位置よりも高い位置に設けられている。図中42は第2の押え板41の下面に設けられたゴム板である。これらの第2の押え板41及びゴム板42もまた配管の上面を押える押え部材を構成している。また第2の押え板41は配管の外周面に沿うように湾曲しており、従ってゴム板42は第2の押え板41の形状に沿って湾曲されている。後述するようにこの第2の押え板41は例えば前記第1の押え板35により注入口の周縁部に押しつけることができないような大きい径を有する配管を固定する場合に用いられ、第1の押え板35または第2の押え板41を用いることで当該配管固定具2は例えば30mm〜92mmの径を有する配管を注入口に固定できるようになっている。
【0013】
続いて配管固定具2により例えば配管であるホース51をタンクの壁面に設けられたフランジ部52を有する注入口53に固定する方法について図3を参照しながら説明する。先ず例えば注入口53の蓋(不図示)を外し、配管固定具2の本体部21の先端部を注入口53内に差し込み、両側の固定部23,23を注入口53の周囲に設けられたフランジ部52上に載置する。なお図3では図示の便宜上、他方の固定部23の止め具54については図示していない。そして例えば万力状の止め具54を用いて固定部23,23をフランジ部52上に固定する。続いてホース51をその端部が例えば第1の押え板36の下方を通り注入口53内へと向かい、本体部21の垂直部21a,21aとの間に位置するように設置する。
【0014】
既述のようにホース51を設置した後、ハンドル34を回転させて第1の押え板36を下降させ、この押え板36に設けられたゴム板37の弾性によりホース51を例えばフランジ部52上に押しつけて固定した後、このホース51から注入口53に液体を注入する。
【0015】
また例えばホース51の径が大きく、既述のように配管固定具2を注入口53に設置したときに第1の押え板36とフランジ部52との間を通すことができない場合は図4に示すようにホース51をその端部が第2の押え板41の下方を通って注入口53に向かい、例えば本体部21の垂直部21a,21aとの間に位置するように設置し、ゴム板42の弾性により当該ホース51をフランジ部52上に押し付けて固定するようにしてもよい。
【0016】
なおこの配管固定具2により固定される配管としては折り曲げることができるホースに限らず、例えば折り曲げることができない塩化ビニルにより構成されたパイプ(この場合、先端がL字状に曲げられている)であってもよい。
また固定部23をフランジ部52上に固定する方法としては固定部23がフランジ部52に着脱自在であれば既述の止め具54を用いるような固定方法を用いることに限られず、例えば固定部21に孔を穿孔し、またフランジ部52上にその孔と対応するようにねじ穴を穿孔して、そのねじ穴と対応したボルトにより固定部23をフランジ部52上に固定してもよい。
なお図で示した注入口53の形状は一例であり、例えばこの配管固定具2が固定される注入口の周縁部は既述のようなフランジ状に形成されていなくてもよい。
【0017】
このような配管固定具2は給液用のホース51などの配管を注入口53にて下方に屈曲された屈曲部の根元部分の頭を下に押し付けるものであるから、配管内に液が勢いよく流れてその液流の力により屈曲部が暴れようとしても、屈曲部の姿勢が安定しており、タンクの外へ液が漏れるおそれがない。このため作業者が足場の悪い高所で給液中に足で配管を踏みつける行為などが不要になるため、作業者の負担を軽減させることができ、タンク内へ液体の注入作業の効率化を図ることができる。
【0018】
また配管固定具2は固定される配管の径にあわせて第1の押え板35の高さを調節できるため種々の径の配管を注入口53の周縁部に押し付けて固定することができ、汎用性が大きい。
さらに配管固定具2は第1の押え板35が移動できる高さよりも高い位置に設けられた第2の押え板41により、前記第1の押え板35により押えることができない大きさを有する径を備えた配管を固定できるため、より適用範囲が広い。
【0019】
また注入口に挿入された配管の両側には本体部21の垂直部21a,21aが位置しているため仮に押え板35,41による押し付けに不具合が生じても配管の左右の振れが垂直部21a,21aにより規制されるので、注入口から配管の先端部が外れて配管から供給される液体が注入口の周囲に飛散することを防ぐことができる。
【0020】
なお本発明の配管固定具の配管の振れを規制する規制部としては配管の上面を注入口の周縁部に押しつけて固定する構成とすることに限られない。図5(a)に示した配管固定具7は既述の配管固定具2の規制部とは異なる構成を持った規制部を有しており、先ずこの配管固定具7の各部の構成について説明すると図中71は本体部であり、72は固定部である。これらは既述の配管固定具2における本体部21及び固定部22と夫々同様の役割を果たす。73は本体部の側壁から例えば水平方向に夫々伸長した一対の支持部であり、各支持部73の内方には夫々対向するように押え板74が設けられている。図中75は押え板74に接続されたネジ部、図中76はハンドルであり、ハンドル73を回転させることによりネジ部75を介して押え板74が内方側へ移動するようになっている。これらの支持部73、押え板74、ネジ部75及びハンドル76によりこの配管固定具7の規制部が構成されている。
この配管固定具7を用いて注入口にホース77を固定する場合は例えば既述の配管固定具2と同様に当該配管固定具7を例えば既述の注入口53に設置した後、ホース77の端部を支持部73と支持部73との間を通して本体部71に向かうように設置し、その後図5(b)で示すように各ハンドル76を回転させて押え板74によりホース77を左右から挟むことによって当該ホース77を固定する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係る配管固定具の斜視図である。
【図2】前記配管固定具の支持板周辺の構造を示した縦断側面図である。
【図3】前記配管固定具を用いてホースを固定した様子を示した説明図である。
【図4】前記配管固定具を用いてホースを固定した様子を示した説明図である。
【図5】本発明の他の実施の形態に係る配管固定具の説明図である。
【図6】従来のタンクの注入口にホースを固定する様子を示した説明図である。
【符号の説明】
【0022】
2,7 配管固定具
21 本体部
23 水平板
31 支持板
36 第1の押え板
41 第2の押え板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクの壁面に設けられた液体の注入口に給液用の配管を固定する配管固定具であって、
前記注入口の周縁部に着脱自在に固定されるための固定部を有する本体部と、
この本体部に設けられ、配管の振れを規制するための規制部と、
を備えたことを特徴とする配管固定具。
【請求項2】
規制部は配管の上面を押える押え部材を含むことを特徴とする請求項1記載の配管固定具。
【請求項3】
規制部は前記押え部材の高さを調整する高さ調整機構を有する請求項2記載の配管固定具。
【請求項4】
押え部材は高さ調整機構にボールジョイントを介して設けられていることを特徴とする請求項3記載の配管固定具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−100793(P2007−100793A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−290136(P2005−290136)
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(000215615)鶴見曹達株式会社 (49)
【出願人】(505370589)アシオ運輸株式会社 (1)
【Fターム(参考)】